説明

透明導電膜付き基体およびその製造方法

C光源ヘイズ率の高い、光透過性に優れた、高い導電性を有する透明導電膜付き基体およびその製造方法、上記基板を用いた光電変換素子の提供。 基体上に導電層が形成され、該導電層上に厚みが0.5〜10nmの酸化チタン層を有することを特徴とする透明導電膜付き基体。前記導電層が酸化スズ層であり、前記透明導電膜付き基体のC光源ヘイズ率が5〜90%であることが好ましい。前記基体と前記導電層との間に、基体側から高屈折率層、低屈折率層が順に積層されることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換効率の優れた光電変換素子(主に太陽電池)に用いる透明導電膜付き基体に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子である薄膜太陽電池には発電層の種類によりアモルファスシリコン(a−Si)系、微結晶シリコン系などがある。これらシリコン系の薄膜太陽電池では、その入射光側電極として透明導電膜が使用される。一般的な薄膜太陽電池の一例を図2に示す。薄膜太陽電池は、透明導電膜付き基板1(透明基板2および透明導電膜10)、光電変換層7および裏面電極8を積層した構造を有している。光電変換層7の材料としては、前述したとおり、アモルファスシリコンや微結晶シリコンが用いられ、原料ガスのグロー放電分解を用いたプラズマCVD法やホットワイヤCVD法等による気相成長により形成される。上記プラズマCVD法やホットワイヤCVD法は、大面積の薄膜形成が可能であるという利点を有する。
【0003】
また、透明導電膜10の材料としては、光透過性および導電性の点から、酸化インジウムスズ(以下、ITOという。)または酸化スズが用いられる。このうち、酸化スズが、表面凹凸構造が形成しやすく光閉じ込め効果が大きいため、光電変換効率が良好となる点で好ましい。しかし、酸化スズは、非晶質膜である光電変換層を形成するときに施される水素プラズマ処理により、還元性の高い環境にさらされ、酸化スズが還元し金属スズが析出することにより、光透過性が低下するという性質、つまり耐プラズマ性に劣る問題がある。
【0004】
上記課題を解決するために、透明導電膜10の光電変換層側の表面近傍を酸化させたり、2〜200nmの酸化亜鉛をオーバーコートしたりすることが開示されている(例えば、特許文献1または2参照。)。
【0005】
しかし、前者の方法では、透明導電膜10の表面の組成を微妙に調整することが困難であり、光閉じ込め効果が現れにくいという問題がある。また、後者の方法では、スパッタリング法を用いるため、真空装置を用いる等、製造工程が複雑になるという問題がある。
【0006】
一方、光電変換素子の光電変換効率を上げるために、屈折率が透明導電膜と光電変換層との中間の値を有する屈折率中間層を挿入し、光学干渉条件を利用するという手法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。しかし、この方法では、透明導電膜と光電変換層との界面が平坦でなければ光学干渉条件を満たすことはできず、必然的に界面の平坦性が要求される問題がある。また、光学干渉条件を満たすためには、屈折率中間層の厚みが20〜50nm必要であるが、屈折率中間層として用いられている酸化チタン層は元来絶縁性であり、導電層の抵抗値が上昇するという問題がある。
【0007】
また、導電性表面に酸化物半導体膜を形成することにより、実用性ある電極および太陽電池を形成できる旨が記載されている(例えば、特許文献4または5参照。)。しかし、これらの電極は色素増感型の太陽電池用であり、酸化物半導体膜は色素を吸着させるために形成するものである。よって、一般的に用いられる太陽電池としては不向きであるという問題がある。
【0008】
また、透明導電膜の上に保護膜を形成し、前記保護膜の厚さが前記透明導電膜の厚さの1%以上10%以下とすることで、耐プラズマ性が向上できることが記載されている(例えば、特許文献6参照。)。しかし、この方法では、透明導電膜として機能する材料と耐プラズマ性能を付加させるための材料とを精度よく混合する必要がある。よって、透明導電膜の特性の再現性の点で問題がある。
【0009】
また、ミクロの多数の凸部を有する透明導電性酸化物膜を形成することで、太陽光の全波長域で良好な散乱性能を有することができる旨が記載されている(例えば、特許文献7参照。)。しかし、この方法では耐プラズマ性の点で不十分である。
【特許文献1】特開平7−131044号公報
【特許文献2】特開平1−227307号公報
【特許文献3】特許第2939780号公報
【特許文献4】特開平10−92477号公報
【特許文献5】特開2002−145615号公報
【特許文献6】特開2001−60703号公報
【特許文献7】国際公開第2003/036657パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術が有していた上記課題を解決すべくなされたものであり、C光源ヘイズ率の高い、光透過性に優れた、導電性を維持できる透明導電膜付き基体およびその製造方法、上記基体を用いた光電変換素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の目的を達成するものであり、下記を特徴とする要旨を有する。
(1)基体上に導電層が形成され、該導電層上に厚みが0.5〜10nmの酸化チタン層を有することを特徴とする透明導電膜付き基体。
(2)前記導電層が酸化スズ層である上記(1)に記載の透明導電膜付き基体。
(3)上記(1)または(2)に記載の透明導電膜付き基体のC光源ヘイズ率が5〜90%である透明導電膜付き基体。
(4)前記基体と前記導電層との間に、基体側から高屈折率層、低屈折率層が順に積層されてなる上記(1)、(2)または(3)に記載の透明導電膜付き基体。
(5)前記導電層の下に、島状層を有する上記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(6)前記酸化チタン層の厚みが0.5〜5nmである上記(1)〜(5)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(7)前記透明導電膜付き基体が光電変換素子用である上記(1)〜(6)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(8)前記透明導電膜付き基体が微結晶層を有する結晶シリコン系の太陽電池光電変換素子用である上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(9)前記基体自体の400〜1200nmの波長領域の平均光透過率が80%以上である上記(1)〜(8)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(10)前記酸化チタン層中の酸化チタンの割合が90mol%以上である上記(1)〜(9)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(11)前記高屈折率層の厚みが5nm以上22nm未満である上記(4)〜(10)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(12)前記低屈折率層を形成する前の前記高屈折率層の算術平均粗さ(R)が2nm以下である上記(4)〜(11)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(13)前記低屈折率層の厚みが10nm〜50nmである上記(4)〜(12)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(14)前記導電層を形成する前の前記低屈折率層の算術平均粗さ(R)が1nm以下である上記(4)〜(13)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(15)前記導電層の厚みが0.5〜0.9μmである上記(1)〜(14)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(16)前記酸化スズ層にフッ素またはアンチモンがドープされている上記(2)〜(15)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(17)前記酸化スズ層の導電電子密度が5×1019〜4×1020cm−3の範囲である上記(2)〜(16)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(18)前記導電層のシート抵抗が5〜20Ω/□である上記(1)〜(17)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(19)前記島状層の高さが0.2〜2μm、底面径が0.2〜2μmおよび島ピッチが0.1〜2μmである助記(5)〜(18)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(20)前記透明導電膜付き基体の基体全体について見た場合にC光源ヘイズ率のばらつきが少ない上記(1)〜(19)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(21)前記透明導電膜付き基体の400〜1200nmの波長領域の平均光透過率が80%超以上である上記(1)〜(20)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(22)前記透明導電膜が常圧熱CVD法を用いて形成される上記(1)〜(21)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(23)前記基体がガラス製である上記(1)〜(22)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
(24)上記(1)〜(23)のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体を用いた光電変換素子。
(25)常圧熱CVD法を用いて、基体上に、導電層、厚みが0.5〜10nmの酸化チタン層を順に形成することを特徴とする透明導電性膜付き基体の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の透明導電膜付き基体は、C光源ヘイズ率が高く、かつ光透過性、特に400〜1200nmの波長域の光透過率が高く、導電性に優れる。本発明の透明導電膜付き基体を使用した太陽電池は、光電変換効率が大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の透明導電膜付き基体の1形態を示す断面図である。
【図2】図2は、図1の透明導電性基板を用いた太陽電池の断面図である。
【図3】図3は、本発明の太陽電池用導電性基板の別の1形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0014】
1:透明導電膜付き基体
2:基体
3:高屈折率層
4:低屈折率層
5:導電層
6:酸化チタン層
7:光電変換層
8:裏面電極
9:光電変換素子
10:透明導電膜
20:島状層
21:島状上層
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明を詳細に説明する。但し、図面は例示を目的とするものであり、本発明は図示した形態に限定されない。
【0016】
図1は、本発明の透明導電膜付き基体の1形態を示す断面図であり、入射光側が上側として示されている。
図1に示すように、本発明の透明導電膜付き基体1は、基体2上に、高屈折率層3、低屈折率層4、導電層5および酸化チタン層6からなる透明導電膜10が、該基体2側からこの順に積層して形成されている。なお、「上」とは、基体2からみて、透明導電膜10が形成されている方向を意味する。以下、各層について説明する。
【0017】
図1では、基体2の断面形状は平板である。しかし、本発明の透明導電膜付き基体1において、基体2の断面形状はこれに限定されず、該基板1を用いて製造される太陽電池の形状に応じて適宜選択することができる。したがって、曲面状であってもよく、また他の異型状であってもよい。
【0018】
本発明の透明導電膜付き基体1に使用可能な基体2としては、透光性(光透過性)および機械的強度に優れるものである限り特に限定されない。具体的には、例えば、ガラス製、プラスチック製等の基体2が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、透光性、機械的強度、耐熱性に優れ、かつコスト面でも優れることからガラス製の基体2が好ましい。基体2をなすガラス材料としては、無色透明なソーダライムシリケートガラス、アルミノシリケートガラス、ボレートガラス、リチウムアルミノシリケートガラス、石英ガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス、および、その他の各種ガラスから選択することができる。
【0020】
基体2がガラス製の基体2である場合、基体2の厚さは0.2〜6mmであることが好ましい。この範囲であると、基体2が機械的強度および透光性に優れている。
【0021】
透光性に関し、基体2は、400〜1200nmの波長領域の光透過率に優れていることが好ましい。具体的には400〜1200nmの波長領域の平均光透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であることがより好ましく、90%以上であることが特に好ましい。また、基体2は、絶縁性に優れていることが好ましく、化学的および物理的耐久性にも優れていることが好ましい。
【0022】
高屈折率層3は、透明導電膜付き基体の光透過率を向上させるために、低屈折率層4と組み合わせて用いられる。
高屈折率層3は、基体2よりも400〜1200nmの波長領域の光屈折率が高い層であり、具体的には酸化チタン層および酸化スズ層からなる群から選ばれる1層以上が例示される。酸化チタン層は酸化スズ膜と比較してより屈折率が高いため、層厚を薄くすることができる点で好ましい。また、高屈折率層は、主として常圧熱CVD法により形成されるが、高屈折率層として酸化スズ層を用いる場合、原料として用いる四塩化スズが基板であるガラスのアルカリ金属と反応し塩を生じるため、塩の発生を防止する下地層が必要となる場合が多い。酸化チタン層はそのような下地層が必要ではない点で好ましい。酸化チタン層は、実質的に酸化チタンのみからなる層であり、層中に含有される成分中酸化チタンの割合が90mol%以上、95mol%以上であり、98mol%以上であることが特に好ましい。
【0023】
高屈折率層3は、厚みが5nm以上22nm未満であることが好ましく、10〜20nmであることがより好ましい。高屈折率層3の厚みが5nm以上22nm未満であると、透明導電膜付き基体1全体として見た場合のC光源ヘイズ率のばらつきが少なく、かつ光透過率、特に400〜1200nmの波長領域の光透過率が高いため好ましい。
【0024】
高屈折率層3は、基体2との界面および低屈折率層4との界面が実質的に平坦であることが好ましい。特に基体2との界面が実質的に平坦であることが好ましい。基体2との界面および低屈折率層4との界面が実質的に平坦であれば、透明導電膜付き基体1を基体全体として見た場合のC光源ヘイズ率のばらつきが少なくすることが可能な点で優れている。高屈折率層3は、その上に低屈折率層4を形成する前の表面を原子間力顕微鏡(AFM)で測定した際の算術平均粗さ(R)が1nm以下、特に0.6nm以下であることが好ましい。
【0025】
低屈折率層4は、透明導電膜付き基体の光透過率を向上させるために、高屈折率層3と組み合わせて用いられる。低屈折率層は、基体2および導電層5よりも400〜1200nmの波長領域の光屈折率が低い層であり、具体的にはシリカ層が例示される。シリカ層は、実質的にシリカからなる層であり、層中に含有される成分中シリカの割合が90mol%以上、95mol%以上であり、98mol%以上であることが特に好ましい。
【0026】
低屈折率層4は、厚みが10〜50nmであることが好ましい。低屈折率層4の厚みが10〜50nmであると、透明導電膜付き基体1のC光源ヘイズ率が高く、C光源ヘイズ率のばらつきが少ない。低屈折率層4の厚みは、20〜40nmであることがより好ましく、20〜35nmであることが特に好ましい。
【0027】
低屈折率層4についても、高屈折率層3との界面および導電層5との界面が実質的に平坦であることが好ましい。導電層5との界面が実質的に平坦であれば、その上に積層される導電層5の結晶が面内均一に成長し、結果的に透明導電膜付き基体1のC光源ヘイズ率のばらつきを抑制することができる。低屈折率層4は、その上に導電層5を形成する前の表面を原子間力顕微鏡(AFM)で測定した際の算術平均粗さ(R)が2nm以下、特に1nm以下、さらには0.6nm以下であることが好ましい。
【0028】
なお、基体2がソーダライムシリケートガラスなどのナトリウムを含有するガラス製、または低アルカリ含有ガラス製の基体2の場合、低屈折率層4は、ガラス製の基体2から酸化スズ層5へのアルカリ成分の拡散を最小限にするためのアルカリバリア層としても作用する。
【0029】
本発明の透明導電膜付き基体1は、基体2と導電層5の間に、400〜1200nmの波長領域の光屈折率が基体2よりも高い高屈折率層3と、導電層5よりも光屈折率が低い低屈折率層4と、がこの順で形成されることが好ましい。これにより、基体2と導電層5との光屈折率の差異による影響、具体的には光屈折率の差異による入射光の反射損失が軽減され、光透過率、特に400〜1200nmの波長領域の光透過率が高い点で好ましい。
【0030】
導電層5は、透明でかつ導電性に優れる層であることが好ましく、具体的には酸化スズ層が挙げられる。導電層は、厚みが0.5〜0.9μmであることが好ましく、0.6〜0.8μmであることが特に好ましい。導電層の厚みが0.9μmを超えると、導電層による吸収率が増加するため、透明導電膜付き基体1の透過率が低下する。導電層の厚みが0.5μm未満であると、導電層表面の凹凸が小さくなるため、ヘイズ率が5%以下となりやすく光閉じ込め効果が失われやすくなる。また、シート抵抗値が150Ω/□という高い値になりやすく、光電変換素子として使用した場合、曲線因子と変換効率が低下するため好ましくない。また、導電層5は、光透過率、特に400〜1200nmの波長領域の光透過率が特に高く、かつ、導電性が高い。なお、ここでいう導電層5の厚みは、後述する表面の凹凸を含んだ値である。
【0031】
導電層5は、その表面全体にわたって凹凸が均一に形成されていることが好ましい。該凹凸は、高低差(凸部と凹部の高低差)が0.2〜0.5μmであることが好ましい。また、上記凸部間のピッチ(隣接する凸部の頂点と頂点の距離)は0.2〜0.75μmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.45μmである。
【0032】
導電層5の表面に凹凸が形成されていれば、光散乱により透明導電膜付き基体1のヘイズ率が高められる。また、この凹凸がその導電層5の表面全体にわたって均一に形成されていれば、基板1全体として見た場合にヘイズ率のばらつきが少ない。
【0033】
導電層5である酸化スズ層は、主として酸化スズからなり、導電性を発現するための物質がドープされていることが好ましい。酸化スズ層は、層中に含有される酸化スズの割合が90mol%以上であることが好ましく、より好ましくは95mol%以上である。ドープされる物質としては、フッ素またはアンチモンが使用することができ、これらの中でもフッ素が好ましい。より具体的には、酸化スズ層は、酸化スズ1molに対してフッ素が0.01〜4mol%ドープされていることが好ましい。
【0034】
酸化スズ層は、導電性を発現するための物質がドープされていることにより、導電電子密度が向上されるため好ましい。酸化スズ層は、導電電子密度が5×1019〜4×1020cm−3の範囲であることが好ましく、1×1020〜2×1020cm−3の範囲であることがより好ましい。酸化スズ層の導電電子密度が上記の範囲であれば、酸化スズ層での光吸収量が少なく、高透明である。また、活性水素種に対して高い耐久性があるので、薄膜シリコン系太陽電池を形成する際に一般に用いられる水素プラズマ照射を実施しても透明性が損なわれない。
【0035】
導電性に関して、導電層は、シート抵抗が5〜20Ω/□であることが好ましく、5〜12Ω/□であることがより好ましい。
【0036】
導電層5の下に島状層(海の中の島のような形状が点々と形成されている層)をさらに形成してもよい。さらに形成することによりC光源ヘイズ率を高めることができる点で好ましい。島状層を有する透明導電膜付き基体を、図3を用いて説明する。図3は、本発明の透明導電膜付き基体の別の1形態を示す断面図であり、入射光側が上側として示されている。
【0037】
図3に示すように、本発明の透明導電膜付き基体1は、基体2上に、高屈折率層3、低屈折率層4、島状層20、島状上層21、導電層5および酸化チタン層6が、該基体2側からこの順に積層して形成されている。そして、基体2、高屈折率層3、低屈折率層4、導電層5および酸化チタン層6については、前述したとおりである。これらの膜は、同一の装置内で成膜できるため、生産性に優れ、かつ欠点なく成膜が可能な点で優れている。一方、常圧熱CVDにより形成される透明導電膜上に、真空蒸着法の一種である電子ビーム法により酸化チタン膜を形成するという不連続な製造工程を経て形成することも可能だが、工業的に効率よく製造しにくくなるだけでなく、欠点なく均一に成膜しにくくなる。
【0038】
島状層20は、高さ0.2〜2μm、底面径0.2〜2μmおよび島ピッチが0.1〜2μmであることが、C光源ヘイズ率を良好とできる点で好ましい。さらに、島状層20上に、島状層20とは異なる島状上層21を、1〜50nmの厚みで形成することが好ましい。島状層20は、酸化スズ層、酸化インジウム層、酸化亜鉛層またはこれらの混合層などが具体的に挙げられるが、島状に形成でき、かつ光透過率が高ければ、材質は特に限定されない。また、島状上層21は、シリカなどが具体的に挙げられるが、島状層20とは材質が異なっており、かつ光透過率が高ければ、材質は特に限定されない。
【0039】
酸化チタン層6を設けることにより、酸化スズ層5の耐プラズマ性を向上させることができる。酸化チタン層の厚さは、0.5〜10nmであることが必要であり、さらに0.5〜5nmであることが透明性、導電性を維持できる点で好ましい。特に0.5nm以上2nm未満であれば、透明性および電気伝導性の点で特に優れている。酸化チタン層6の厚さが0.5〜10nmの範囲であれば、酸化スズ層の凹凸の高低差やピッチなどに与える影響は小さい。また、層の材料として酸化チタンを用いることにより、薄い層であっても導電性を維持でき、耐プラズマ性が良好とすることができ好ましい。また、最外層に酸化チタン層6を設けることで透明性、導電性を維持できる点で好ましい。
【0040】
本発明の透明導電膜付き基体は、上記構成であることにより、C光源ヘイズ率(JIS K7105−1981年)を適当な範囲とすることができる。具体的には、C光源ヘイズ率が5〜90%であることが好ましく、特には20〜90%、さらには40〜70%である。C光源ヘイズ率が5〜90%であると、基板全体で見た場合のC光源ヘイズ率のばらつきを少なくできる上で好ましい。
【0041】
さらに、本発明の透明導電膜付き基体は、基板全体について見た場合にC光源ヘイズ率のばらつきが少ない。具体的には、C光源ヘイズ率を基板の長手方向に10mm間隔で10点測定した際に、測定されたヘイズ率の最大値と、最小値との差が5%以下である。前記の差は3%以下であることがより好ましく、2%以下であることがさらに好ましい。
さらに、本発明の透明導電膜付き基体は、光透過率、特に400〜1200nmの波長領域の光透過率に優れている。具体的には、400〜1200nmの波長領域の平均光透過率が80%以上であることが好ましい。平均光透過率は83%以上であることがより好ましく、86%以上であることがさらに好ましい。
【0042】
本発明の透明導電膜付き基体は、スパッタ法、湿式法等の方法で形成することができるが、特に常圧熱CVD法を用いることがコスト等の面で好ましい。常圧熱CVD法を用いることにより、層を緻密に形成できるため、層厚を薄く形成しても性能を発揮しやすい点で優れている。以下、常圧熱CVD法を用いた本発明の透明導電膜付き基体の製造方法について、好適例により説明するが、以下に説明する方法に限定されない。
【0043】
一定方向に移動するガラス製の基体を、ベルトコンベア炉を用いて高温(例えば、500℃)に加熱する。この状態で、高屈折率層3である酸化チタン層の原料となるテトライソプロポキシチタンを気化させて、窒素ガスと混合させて基体表面に吹き付け、基体表面に酸化チタン層が形成される。
【0044】
次に、表面に酸化チタン層が形成された基体を高温に維持した状態で、低屈折率層4であるシリカ層の原料となるシランガスを基体表面に吹き付け、酸化チタン層上にシリカ層が形成される。
【0045】
さらに、酸化チタン層とシリカ層とが形成された基体を加熱し(例えば、520℃)、四塩化錫、水およびフッ化水素を同時に基体表面に吹き付け、シリカ層上に、導電層5であるフッ素がドープされた酸化スズ層が形成される。この手順で形成される酸化スズ層は、その表面全体にわたって凹凸を均一に有する。
【0046】
ここで、四塩化錫および水は、これらを同時に含有するガスの状態で基体に吹き付けることが好ましく、さらに一定方向に移動する基体に対して、その移動方向上流側と、下流側とで、四塩化錫と水との混合比を変えたガスを複数位置から吹き付けることが好ましい。この際、基体の移動方向に対して、上流側のガスは、四塩化錫に対する水濃度を下流側のガスよりも低くする。この手順は、C光源ヘイズ率が20%以上である透明導電膜付き基体を製造する上で好ましい。
【0047】
さらに、酸化チタン層、シリカ層および酸化スズ層とが形成された基体を加熱し(例えば、520℃)、酸化チタン層の原料となるテトライソプロポキシチタンを気化させて、窒素ガスと混合させて基体表面に吹き付け、基体表面に酸化チタン層6が形成される。
【0048】
本発明の透明導電膜付き基体は、アモルファスシリコン系か、または結晶シリコン系か、といった光電変換層の材質の違い、またはシングル構造か、またはタンデム構造か、といった構造の違いを問わず幅広い種類の太陽電池に使用することができる。従って、シングル構造のアモルファスシリコン系光電変換素子にも使用することができる。
また、本発明の透明導電膜付き基体は、微結晶層を有する結晶シリコン系の光電変換素子に特に有用である。C光源ヘイズ率を上記範囲とすることにより、長波長側、特に500〜1200nmの光をより多く反射することができるようになる。微結晶層は長波長側の光を吸収しやすいため、このような構成とすることでより光電変換効率の向上が期待できるとともに、光劣化が少なくなるため好ましい。前記微結晶層を有する結晶シリコン系の光電変換素子としては、微結晶層を有するシングル構造の光電変換素子、または微結晶層とアモルファスシリコン層とを有するタンデム構造の光電変換素子が例示される。
【実施例】
【0049】
以下、実施例(例1〜6、10〜15、19〜24)および比較例(例7〜9、16〜18、25〜27)を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されない。
【0050】
(1−1)透明導電膜付き基体の製造
(例1)
基体としてソーダライムガラス製の基体(30cm×40cm×1.1mm)を用意し、十分に洗浄を行う。該基体上に12nmの厚みの高屈折率層である酸化チタン層、32nmの厚みの低屈折率層であるシリカ層、0.7μmの厚みのフッ素がドープされた酸化スズ層、および1nmの厚みの酸化チタン層を該基体側からこの順に形成させる。
【0051】
具体的には以下の手順で行う。基体をベルトコンベア炉中で予め500℃に加熱する。一定方向に移動する基体に対して、酸化チタン層の原料ガスであるテトライソプロポキシチタンを吹き付けて、基体表面に酸化チタン層を形成する。テトライソプロポキシチタンは、90℃に保持したバブラータンクに入れ、ボンベから窒素を毎分10リットル(以下、Lという))供給して気化する。
つぎに毎分0.1Lのシランガスと毎分5Lの酸素ガスを基体上に形成された酸化チタン層表面に吹き付けてシリカ層を形成させる。
【0052】
さらに、シリカ層が形成された基体を520℃に加熱して、四塩化錫、水およびフッ化水素を同時に含有するガスを吹き付けて、フッ素が3.5mol%ドープされた酸化スズ層を形成させる。ここで、四塩化錫を45℃に保持したバブラータンクに入れ、ボンベから窒素を導入して気化させる。水は100℃以上に保持したボイラーから供給した。フッ化水素ガスは、40℃に加熱したボンベから気化させる。これらを混合したガスを2つのインジェクターを利用して、基体の移動方向に対して上流側と下流側の2個所で吹き付ける。四塩化錫と水との混合比は、上流側の第1のインジェクタでは四塩化錫:水=1:20であり、下流側の第2のインジェクタでは、四塩化錫:水=1:100とする。これにより、表面全体に微細な凹凸を均一に有する酸化スズ層が形成される。
【0053】
さらに、酸化スズ層が形成された基体を520℃に加熱して、テトライソプロポキシチタンを吹き付けて、基体表面に酸化チタン層を形成させる。テトライソプロポキシチタンは、90℃に保持したバブラータンクに入れ、ボンベから窒素を毎分0.5L供給して気化させる。
【0054】
その後、ガラス製の基体上に酸化チタン層、シリカ層、酸化スズ層および酸化チタン層が該基体側からこの順で形成された基体に低抵抗化処理を施す。具体的には、特開平2−168507号公報に記載されているように、上記基体を、酸素濃度が15ppm中の窒素雰囲気中で、350℃で10分間熱処理を行う。この処理により、過剰酸素が酸化スズ膜中から取り除かれ、導電層の低抵抗化が実現される。
このようにして、ガラス製の基体上に酸化チタン層、シリカ層、酸化スズ層および酸化チタン層が該基体側からこの順で形成された透明導電膜付き基体を形成する。
【0055】
(1−2)物性評価
得られた透明導電膜付き基体について、以下の物性評価を実施する。結果を表1に示す。
【0056】
(A)層厚(酸化チタン層、シリカ層、酸化スズ層、酸化チタン層)(以下、基体に近い酸化チタン層を酸化チタン第1層、基体から遠い酸化チタン層を酸化チタン第2層という。)
酸化チタン第1層および酸化チタン第2層の厚みは、後述する光電変換層を形成後、透過型電子顕微鏡(以下、TEMという。)により光電変換素子断面を観察、撮影し、該観察像のコントラストから酸化チタン第2層を判別し、酸化チタン第2層の厚みを算出する。シリカ層については、あらかじめ基板の上を一部マスキングしておき、成膜後そのマスクを除去して、段差をつくり、その段差を表面粗さ計により測定して層厚とする。酸化スズ層については、酸化スズ層を形成した後、一部の酸化スズ層にのみマスクをかぶせて、亜鉛粉末と希塩酸によりエッチングをして段差を作り、その段差を上記の表面粗さ計により測定して層厚とする。
【0057】
(B)C光源ヘイズ率
基板全面のC光源ヘイズ率(JIS K7105−1981年)を、ヘイズメータ(TC−H 3、東京電色製)で測定する。
【0058】
(C)平均光透過率(400〜1200nm)
波長400〜1200nmでの分光透過率の平均値を、ヘイズによる透過率の測定値の低下を補正する公知の方法(導電膜表面の凹凸による透過率測定値の低下を防止するために、導電膜の凹凸面と石英ガラス基板とを合わせ、これらの間に二ヨウ化メタン(CH)を挟みこみ透過率を測定する測定方法)(Jpn.J.Appl.Phys.27(1988)2053)を用い、積分球を用いた分光光度計(U−3410自記分光光度計:日立製)によって測定し、平均光透過率を算出する。
【0059】
(D)シート抵抗値
シート抵抗値は、4探針シート抵抗計(MCP−TESTER FP:三菱油化製)で測定する。
【0060】
(E)酸化スズ層中のフッ素濃度
酸化スズ層中のフッ素濃度は、酸化スズ層を亜鉛を含む塩酸中で溶解した後、ガスクロマトグラフィにより定量分析を行うことで求める。
【0061】
(例2〜9)
酸化チタン第2層の厚みをそれぞれ、1.5nm(例2)、2nm(例3)、3nm(例4)、5nm(例5)、10nm(例6)、11nm(例7)、30nm(例8)、0nm(つまり、酸化チタン第2層を形成しない。)(例9)とした以外は例1と同様の手順で、透明導電膜付き基体を得る。
得られた透明導電膜付き基体について、例1と同様に物性評価を実施する。結果を表1に示す。
【0062】
(例10)
例1と同様の手順で、酸化チタン第1層、シリカ層を形成する。
シリカ層上に酸化スズ層を形成する際、四塩化錫と水との混合比を、上流側の第1のインジェクタおよび下流側の第2のインジェクタの両方で四塩化錫:水=1:100とした以外は例1と同様の手順で酸化スズ層を形成する。その後、酸化チタン第2層を例1と同様の手順で形成し、例1と同様の低抵抗化処理を行い、透明導電膜付き基体を得る。
得られた透明導電膜付き基体について、例1と同様に物性評価を実施する。結果を表1に示す。
【0063】
(例11〜18)
酸化チタン第2層の厚みをそれぞれ、1.5nm(例11)、2nm(例12)、3nm(例13)、5nm(例14)、10nm(例15)、11nm(例16)、30nm(例17)、0nm(つまり、酸化チタン第2層を形成しない。)(例18)とした以外は例1と同様の手順で、透明導電膜付き基体を得る。
得られた透明導電膜付き基体について、例1と同様に物性評価を実施する。結果を表1に示す。
【0064】
(例19)
例1と同様の手順で、酸化チタン第1層、シリカ層を形成する。
次いで、四塩化スズ、水、塩化水素ガスを同時に吹付けることで島状の酸化スズ層を形成する。島状の酸化スズ層の高さは0.4〜0.7μmであり、底面径は0.4〜1μmであり、島ピッチが0.9〜1.1μmである。その後、毎分0.1Lのシランガスと毎分5Lの酸素ガスを基体上に形成された島状の酸化スズ層表面に吹き付けて20nmのシリカ層を形成する。さらに、酸化スズ層の厚みを0.6μmとした以外は例1と同様の手順で、酸化スズ層、酸化チタン第2層を形成し、例1と同様の低抵抗化処理を行い、透明導電膜付き基体を得る。
得られた透明導電膜付き基体について、例1と同様に物性評価を実施する。結果を表1に示す。
【0065】
(例20〜27)
酸化チタン第2層の厚みをそれぞれ、1.5nm(例20)、2nm(例21)、3nm(例22)、5nm(例23)、10nm(例24)、11nm(例25)、30nm(例26)、0nm(つまり、酸化チタン第2層を形成しない。)(例27)とした以外は例1と同様の手順で、透明導電膜付き基体を得る。
得られた透明導電膜付き基体について、例1と同様に物性評価を実施する。結果を表1に示す。
【0066】
酸化スズ層表面の凹凸高低差
走査型電子顕微鏡(SEM)(JSM−820:日本電子製)を用いて、酸化スズ膜表面を観察し、表面SEM像からランダムに採取した10個の凹凸の高低差を測定し、平均を算出する。凹凸高低差は、例1〜27において、0.25μmである。
【0067】
【表1】

【0068】
(2−1)光電変換素子の形成(シングル構造、アモルファスシリコン系)
次に、以下に示すような手順で光電変換素子を形成する。
(a)光電変換層の形成
例1〜27により形成された透明導電膜付き基体を40mm×40mmに切り出し、洗浄する。その後、図2に示すとおり、形成された透明導電膜10の上に光電変換層7を以下のとおり形成する。
透明導電膜10上に、p−i−n接合(p型半導体層、p/iバッファー層、i型半導体層、n型半導体層)を有する光電変換層7をプラズマCVD装置(SLCM−14:島津製作所製)により形成する。p−i−n接合の各層は下記のような条件で形成し、p型半導体層の厚みは11nm、p/iバッファー層の厚みは6nm、i型半導体層の厚みは350nm、n型半導体層の厚みは40nmである。なお、i型半導体層はアモルファスシリコン層である。
【0069】
<p型半導体層の形成>
基板表面温度:180℃
成膜圧力:40Pa
RF投入電力:30mW/cm
ガス流量SiH:10sccm
CH:20sccm
:20→120sccm
/H:100→0sccm(H中にBが1000ppm含有)
(HおよびB/Hガス流量は、成膜の途中で徐々に変化させる)。
【0070】
<p/iバッファー層の形成>
基板表面温度:180℃
成膜圧力:40Pa
RF投入電力:30mW/cm
ガス流量SiH:10sccm
CH:20→0sccm
:100sccm
(CHガス流量は、成膜の途中で徐々に変化させる)。
【0071】
<i型半導体層の形成>
基板表面温度:180℃
成膜圧力:27Pa
RF投入電力:30mW/cm
ガス流量SiH:10sccm。
【0072】
<n型半導体層の形成>
基板表面温度:180℃
成膜圧力:27Pa
RF投入電力:30mW/cm
ガス流量SiH:10sccm
:100sccm
PH/H:100sccm(H中にPHが1000ppm含有)。
【0073】
(b)裏面電極の形成
形成された光電変換層上に、5mm×5mmの面積で、ガリウムドープ酸化亜鉛層(GZO層)およびAg層からなる裏面電極8を下記の方法で形成する。
酸化亜鉛が酸化ガリウムと酸化亜鉛との合量に対して5.7質量%含有するGZOターゲットを用いて、直流スパッタ法によりGZO膜を40nm形成する。このとき、GZO層の組成は、ターゲットと同等である。スパッタ装置は、あらかじめ10−4Pa以下に減圧した後、Arガスを75sccm、COガスを1sccm導入し、スパッタ装置内の圧力を4×10−1Paに調整し、2.4W/cmのスパッタパワーで成膜を行う。
【0074】
次いで、銀ターゲットを用いて、Ag層を200nm形成する。このとき、Ag層の組成は、ターゲットと同等である。このとき、スパッタ装置にArガスを導入し、スパッタ装置内の圧力を4×10−1Paに調整し、1.4W/cmのスパッタパワーとして成膜を行う。
上記光電変換層7および裏面電極8を形成することにより、光電変換素子9を形成する。
【0075】
(2−2)物性評価
変換効率
得られた光電変換素子に、ソーラーシミュレータ(オプトリサーチ社製CE−24型)でAM(エアマス)1.5の光(光強度は100mW/cm)を照射し、電流−電圧特性を測定し、短絡電流、開放電圧、曲線因子および変換効率を求める。測定された短絡電流、開放電圧、曲線因子および変換効率を表2に示す。
耐プラズマ性
例1〜27の透明導電膜付き基体より形成された光電変換素子について耐プラズマ性について評価する。例1〜8、例10〜17、例19〜26については耐プラズマ性が良好であるが、例9、18、27(酸化チタン第2層が形成されていない素子)については、耐プラズマ性が実用上好ましくない。
【0076】
【表2】

【0077】
(3−1)光電変換素子の形成(シングル構造、微結晶系)
次に、以下に示すような手順で光電変換素子を形成する。
【0078】
(a)光電変換層の形成
例1〜27により形成された透明導電膜付き基体を40mm×40mmに切り出し、洗浄する。その後、図2に示すとおり、形成された透明導電膜10の上に光電変換層7を以下のとおり形成する。
透明導電膜10上に、p−i−n接合(p型微結晶シリコン層、p/i微結晶シリコンバッファー層、i型微結晶シリコン層、n型微結晶シリコン層)を有する微結晶シリコン光電変換層7をプラズマCVD装置(SLCM−14:島津製作所製)により形成する。p型微結晶シリコン層の厚みは15nm、p/i微結晶シリコンバッファー層の厚みは5nm、i型微結晶シリコン層の厚みは3μm、n型微結晶シリコン層の厚みは20nmである。
【0079】
(b)裏面電極の形成
形成された光電変換層上に、5mm×5mmの面積で、GZO層およびAg層からなる裏面電極8を下記の方法で形成する。
酸化亜鉛が酸化ガリウムと酸化亜鉛との合量に対して5.7質量%含有するGZOターゲットを用いて、直流スパッタ法によりGZO膜を40nm形成する。このとき、GZO層の組成は、ターゲットと同等である。スパッタ装置は、あらかじめ10−4Pa以下に減圧した後、Arガスを75sccm、COガスを1sccm導入し、スパッタ装置内の圧力を4×10−1Paに調整し、2.4W/cmのスパッタパワーで成膜を行う。
【0080】
次いで、銀ターゲットを用いて、Ag層を200nm形成する。このとき、Ag層の組成は、ターゲットを同等である。このとき、スパッタ装置にArガスを導入し、スパッタ装置内の圧力を4×10−1Paに調整し、1.4W/cmのスパッタパワーとして成膜を行う。
上記光電変換層7および裏面電極8を形成することにより、光電変換素子9を形成する。
【0081】
(3−2)物性評価
変換効率
得られた光電変換素子に、ソーラーシミュレータ(オプトリサーチ社製CE−24型)でAM(エアマス)1.5の光(光強度は100mW/cm)を照射し、電流−電圧特性を測定し、短絡電流、開放電圧、曲線因子および変換効率を求める。測定された短絡電流、開放電圧、曲線因子および変換効率を表3に示す。
耐プラズマ性
例1〜27の透明導電膜付き基体より形勢された光電変換素子について耐プラズマ性について評価する。例1〜8、例10〜17、例19〜26については耐プラズマ性が良好であるが、例9、18、27(酸化チタン第2層が形成されていない素子)については、耐プラズマ性が実用上好ましくない。
【0082】
【表3】

【0083】
(4)光劣化試験
例1〜27により形成された透明導電膜付き基体を用いて形成された光電変換素子(シングル構造、アモルファスシリコン系)、および例1〜27により形成された透明導電膜付き基体を用いて形成された光電変換素子(シングル構造、微結晶系)について、AM(エアマス)1.5の擬似太陽光が発生するシミュレータ下で光劣化を評価した。その結果、1000時間照射後において、光電変換素子(シングル構造、微結晶系)の光劣化率は2%程度であるのに対して、光電変換素子(シングル構造、アモルファスシリコン系)の劣化率は20%程度である。
【0084】
表1〜3から明らかなように、例1〜6、10〜15、19〜24の光電変換素子は、透明導電膜付き気体のC光源ヘイズ率が7〜65%という適当な値であり、平均光透過率が高く、シート抵抗値が低いため、光電変換効率が高い。また、酸化チタン第2層が存在するため、耐プラズマ性が向上しており、酸化チタン第2層が存在しない例9、18、27の光電変換素子と比較して、変換効率が高い。
【0085】
これに対し、例7、8、16、17、25、26は、酸化チタン第2層の厚みが大きすぎるため、シート抵抗が上昇することにより変換効率が低くなるため好ましくない。
また、微結晶系にすると、アモルファスシリコン系と比較して光劣化が少なく、特に有用であることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の透明導電膜付き基体は、C光源ヘイズ率が高く、かつ光透過性、特に400〜1200nmの波長域の光透過率が高く、導電性を維持できる。よって、本発明の透明導電膜付き基体を使用した太陽電池は、光電変換効率が大幅に改善され、光電変換素子の電極として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体上に導電層が形成され、該導電層上に厚みが0.5〜10nmの酸化チタン層を有することを特徴とする透明導電膜付き基体。
【請求項2】
前記導電層が酸化スズ層である請求項1に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の透明導電膜付き基体のC光源ヘイズ率が5〜90%である透明導電膜付き基体。
【請求項4】
前記基体と前記導電層との間に、基体側から高屈折率層、低屈折率層が順に積層されてなる請求項1、2または3に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項5】
前記導電層の下に、島状層を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項6】
前記酸化チタン層の厚みが0.5〜5nmである請求項1〜5のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項7】
前記透明導電膜付き基体が光電変換素子用である請求項1〜6のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項8】
前記透明導電膜付き基体が微結晶層を有する結晶シリコン系の太陽電池光電変換素子用である請求項1〜7のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項9】
前記基体自体の400〜1200nmの波長領域の平均光透過率が80%以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項10】
前記酸化チタン層中の酸化チタンの割合が90mol%以上である請求項1〜9のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項11】
前記高屈折率層の厚みが5nm以上22nm未満である請求項4〜10のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項12】
前記低屈折率層を形成する前の前記高屈折率層の算術平均粗さ(R)が2nm以下である請求項4〜11のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項13】
前記低屈折率層の厚みが10nm〜50nmである請求項4〜12のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項14】
前記導電層を形成する前の前記低屈折率層の算術平均粗さ(R)が1nm以下である請求項4〜13のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項15】
前記導電層の厚みが0.5〜0.9μmである請求項1〜14のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項16】
前記酸化スズ層にフッ素またはアンチモンがドープされている請求項2〜15のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項17】
前記酸化スズ層の導電電子密度が5×1019〜4×1020cm−3の範囲である請求項2〜16のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項18】
前記導電層のシート抵抗が5〜20Ω/□である請求項1〜17のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項19】
前記島状層の高さが0.2〜2μm、底面径が0.2〜2μmおよび島ピッチが0.1〜2μmである請求項5〜18のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項20】
前記透明導電膜付き基体の基体全体について見た場合にC光源ヘイズ率のばらつきが少ない請求項1〜19のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項21】
前記透明導電膜付き基体の400〜1200nmの波長領域の平均光透過率が80%超以上である請求項1〜20のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項22】
前記透明導電膜が常圧熱CVD法を用いて形成される請求項1〜21のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項23】
前記基体がガラス製である請求項1〜22のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体。
【請求項24】
請求項1〜23のいずれか1項に記載の透明導電膜付き基体を用いた光電変換素子。
【請求項25】
常圧熱CVD法を用いて、基体上に、導電層、厚みが0.5〜10nmの酸化チタン層を順に形成することを特徴とする透明導電性膜付き基体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【国際公開番号】WO2005/027229
【国際公開日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【発行日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−513832(P2005−513832)
【国際出願番号】PCT/JP2004/012387
【国際出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】