説明

透明陶磁体とその製造方法並びに該透明陶磁体を利用した電子装置

【課題】成形及び加工が容易で、且つ3Dガラスに代わって電子装置の表示パネルとして使用できる透明陶磁体と、該透明陶磁体の製造方法、及び前記透明陶磁体を備えた電子装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る透明陶磁体は、酸化イットリウムと、酸化トリウムと、弗化リチウムと、酸化テルビウムと、を備えている。前記透明陶磁体の前記酸化イットリウムのモル含有量は85%〜94.99%であり、前記酸化トリウムのモル含有量は4.99%〜15%であり、前記弗化リチウム及び前記酸化テルビウムのモル含有量は0.003%〜0.007%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明陶磁体とその製造方法並びに該透明陶磁体を利用した電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信産業の発展に伴い、電子装置の各々の部品は絶えず開発されているが、該電子装置の中でも、特に表示装置が重視されている。
【0003】
現在、既存の電子装置の表示パネルは、殆んどガラス材料が使用されているが、最近立体構造を備え、ユーザーの視野角を増大し、且つ表示画面に立体感を出す3Dガラスからなる表示パネルが使用者に人気である。しかし、従来の3Dガラスは、通常ホットプレス成型法によって製造され、該方法は成形及び加工が容易ではないため、コストが高い。また、設計も難しいため、得た製品の性能が技術上の要求に適わない等の事態が発生している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の問題点に鑑みて、本発明は、成形及び加工が容易で、且つ3Dガラスに代わって電子装置の表示パネルとして使用できる透明陶磁体と透明陶磁体のその製造方法及び該透明陶磁体を備えた電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る透明陶磁体は、酸化イットリウムと、酸化トリウムと、弗化リチウムと、酸化テルビウムと、を備えている。前記透明陶磁体の前記酸化イットリウムのモル含有量は85%〜94.99%であり、前記酸化トリウムのモル含有量は4.99%〜15%であり、前記弗化リチウム及び前記酸化テルビウムのモル含有量は0.003%〜0.007%である。
【0006】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る透明陶磁体の製造方法は、モル含有量が85%〜94.99%である酸化イットリウムの粉状体と、モル含有量が4.99%〜15%である酸化トリウムの粉状体と、モル含有量が0.003%〜0.007%である弗化リチウムと、モル含有量が0.003%〜0.007%である酸化テルビウムと、を原料として提供し、且つ前記原料を均一に混合する工程と、均一に混合された前記原料を適量取って、圧力が240MPa〜300MPaで、保圧時間が30min〜80minの条件下において、冷間等方圧加圧成形を行って、前記原料を予備成形体に成形する工程と、焼結温度が1380℃〜1580℃で、焼結時間が30min〜400minである条件下において、前記予備成形体に対して無圧予備焼結を行う工程と、アルゴンガスを保護気体とし、処理温度が1950℃〜2150℃で、圧力が240MPa〜300MPaで、保圧時間が900min〜3600minである条件下において、予備焼結された後の予備成形体に対して熱間等静圧圧縮成形を行う工程と、を備えている。
【0007】
また、上記の目的を達成するために、本発明に係る電子装置は、本体及び前記本体に装着される表示パネルを備える。前記表示パネルは、透明陶磁体からなり、前記透明陶磁体は、酸化イットリウム、酸化トリウム、弗化リチウム及び酸化テルビウムを備える。前記酸化イットリウムのモル含有量は85%〜94.99%であり、前記酸化トリウムのモル含有量は4.99%〜15%であり、前記弗化リチウム及び前記酸化テルビウムのモル含有量は0.003%〜0.007%である。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、透明陶磁体を利用して電子装置の表示パネルを製造する。前記透明陶磁体の成形及び加工は3Dガラスの成形及び加工より製造技術が容易で、且つ安定的である。しかも、本発明の方法によって得た前記表示パネルは、高い光透過率、高硬度、耐酸性、耐塩基性及び耐食性を有し、且つ使用寿命も長いので、従来の3Dガラスに代わって使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態に係る電子装置の立体斜視図である。
【図2】図1に示した電子装置の表示パネルを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る透明陶磁体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜図3に示したように、本発明の実施形態に係る電子装置10は、本体12及び前記本体12に装着される表示パネル11を備える。前記表示パネル11は透明陶磁体13によって加工される。前記透明陶磁体13は酸化イットリウム(Y)及び酸化トリウム(ThO)を主成分とし、且つ少量の弗化リチウム(LiF)及び酸化テルビウム(Tb)も含有する。前記酸化イットリウムのモル含有量は85%〜94.99%であり、前記酸化トリウムのモル含有量は4.99%〜15%であり、前記弗化リチウム及び前記酸化テルビウムのモル含有量%は0.003%〜0.007%である。
【0011】
前記透明陶磁体13の結晶粒子のサイズは5μm〜20μmであり、気孔率は0.9%より低く、直線光透過率は85%以上に達し、抗湾曲強度は280MPa〜350MPaである。
【0012】
また、前記表示パネル11の表面粗度Raは0.05μmに達し、常温常圧の条件下において、良好な耐酸性、耐塩基性及び耐食性を有する。
【0013】
本発明の実施形態に係る透明陶磁体13の製造方法は、以下の工程を備える。
【0014】
第1の工程では、モル含有量が85%〜94.99%である酸化イットリウムの粉状体((粒径は60nm〜100nmであり、純度は99.99%より高い)、モル含有量が4.99%〜15%である酸化トリウムの粉状体(粒径は60nm〜100nmであり、純度は99.99%より高い)、モル含有量が0.003%〜0.007%の弗化リチウム及びモル含有量が0.003%〜0.007%の酸化テルビウムを原料として提供した後、前記原料を均一に混合する。
【0015】
第2の工程では、均一に混合された前記原料を適量取って、冷間等方圧加圧成形(cold isostatic pressing)して、予備成形体に成形する。この時の、前記冷間等方圧加圧成形の圧力は240MPa〜300MPaであり、保圧時間は30min〜80minである。
【0016】
第3の工程では、無圧焼結炉を使用して、前記予備成形体に対して予備焼結を行う。この時の焼結温度は1380℃〜1580℃であり、焼結時間は30min〜400minである。焼結過程において、前記酸化トリウムは、前記酸化イットリウム結晶粒子の表面エネルギーを小さくして、結晶粒界の転位速度及び不連続の結晶粒子の成長を効果的に抑制し、且つ沈殿構造を溶解することを介して、前記酸化イットリウムの粉状体を最も良い焼結密度に達するように促して、粘着剤(焼結密度を高める)及び抑制剤の役割を果たす。また、前記原料中の少量の前記弗化リチウムは焼結補助剤として使用され、前記原料中の少量の前記酸化テルビウムは焼結顆粒のサイズを小さくする。
【0017】
第4の工程では、予備焼結された後の前記予備成形体を熱静圧炉の中にセットして、保護気体としてアルゴンガスを注入し、処理温度が1950℃〜2150℃、圧力が240MPa〜300MPa、保圧時間が900min〜3600minである条件下において、熱間等静圧圧縮成形(hot isostatic pressing)を行って、相対密度が99.9%より大きい前記透明陶磁体13を得る。ここでの相対密度とは、多孔体の密度と無孔状態下での同成分材料の密度との比を指す。
【0018】
前記透明陶磁体13を電子装置の表示パネルに用いる際、CNC(コンピュータ数値制御)装置によって前記透明陶磁体13を機械加工して、前記透明陶磁体13を所望の表示パネルの形状に成形する。
【0019】
また、電子装置の表示パネルの表面光度の要求に応えるため、前記透明陶磁体13に対して、研磨及び艶出しをすることが必要である。そのため、前記表示パネル11の形状に基づいて、例えば、平面研磨機或いはスクロール式研磨機等の研磨設備を採用する。また、艶出し処理は、エメリー及び陶磁専用のラッピング液からなる混合物を使用する。テストした結果、上記の処理を経た前記透明陶磁体13の表面粗度Raは0.05μmに達した。
【0020】
本発明は、前記透明陶磁体13を介して電子装置の表示パネル11を製造する。前記透明陶磁体13の成形及び加工は3Dガラスの成形及び加工より製造技術が容易で、且つ安定的である。しかも、本発明の方法によって得た前記表示パネル11は、高い光透過率、高硬度、耐酸性、耐塩基性及び耐食性を有し、且つ使用寿命も長いので、従来の3Dガラスに代わって使用することができる。
【0021】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形、又は修正が可能であり、該変形、又は修正も本発明の特許請求の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0022】
10 電子装置
11 表示パネル
12 本体
13 透明陶磁体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化イットリウムと、酸化トリウムと、弗化リチウムと、酸化テルビウムと、を備えている透明陶磁体であって、前記透明陶磁体の前記酸化イットリウムのモル含有量は85%〜94.99%であり、前記酸化トリウムのモル含有量は4.99%〜15%であり、前記弗化リチウム及び前記酸化テルビウムのモル含有量は0.003%〜0.007%であることを特徴とする透明陶磁体。
【請求項2】
前記透明陶磁体の結晶粒子のサイズは5μm〜20μmであり、気孔率は0.9%より低く、直線光透過率は85%以上であり、抗湾曲強度は280MPa〜350MPaであり、相対密度は99.9%より大きいことを特徴とする請求項1に記載の透明陶磁体。
【請求項3】
本体及び前記本体に装着される表示パネルを備える電子装置であって、前記表示パネルは透明陶磁体からなり、前記透明陶磁体は、酸化イットリウムと、酸化トリウムと、弗化リチウムと、酸化テルビウムと、を備えており、前記酸化イットリウムのモル含有量は85%〜94.99%であり、前記酸化トリウムのモル含有量は4.99%〜15%であり、前記弗化リチウム及び前記酸化テルビウムのモル含有量は0.003%〜0.007%であることを特徴とする電子装置。
【請求項4】
前記表示パネルの表面粗度Raは、0.05μmに達し、前記表示パネルの直線光透過率は、85%以上であることを特徴とする請求項3に記載する電子装置。
【請求項5】
前記表示パネルは、前記透明陶磁体を研磨、艶出し及び機械加工することによって製造されることを特徴とする請求項3に記載の電子装置。
【請求項6】
モル含有量が85%〜94.99%である酸化イットリウムの粉状体と、モル含有量が4.99%〜15%である酸化トリウムの粉状体と、モル含有量が0.003%〜0.007%である弗化リチウムと、モル含有量が0.003%〜0.007%である酸化テルビウムと、を原料として提供し、且つ前記原料を均一に混合する工程と、
均一に混合された前記原料を適量取って、圧力が240MPa〜300MPaで、保圧時間が30min〜80minの条件下において、冷間等方圧加圧成形を行って、前記原料を予備成形体に成形する工程と、
焼結温度が1380℃〜1580℃で、焼結時間が30min〜400minである条件下において、前記予備成形体に対して無圧予備焼結を行う工程と、
アルゴンガスを保護気体とし、処理温度が1950℃〜2150℃で、圧力が240MPa〜300MPaで、保圧時間が900min〜3600minである条件下において、予備焼結された後の予備成形体に対して熱間等静圧圧縮成形を行う工程と、
を備えることを特徴とする透明陶磁体の製造方法。
【請求項7】
前記酸化イットリウムの粉状体及び前記酸化トリウムの粉状体の粒径は60nm〜100nmであり、純度は99.99%より大きいことを特徴とする請求項6に記載する透明陶磁体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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