説明

通信システム、通信装置および通信方法

【課題】通信装置間の情報伝送の自由度を向上させる。
【解決手段】親機(第1の通信装置)1と、一又は複数の子機(第2の通信装置で)2とを含み、親機1が、電源20と、電源20の出力に基づく交番磁界Mを介して電力Pを送電する送電部18と、人体の外表面に形成される静電界Eを伝送媒体として情報信号Tの送信及び/又は受信を行う通信部29と、を備え、子機2が、外部から到来する交番磁界Mを電気量に変換して電力Pを受電する受電部30と、人体の外表面に形成される静電界Eを伝送媒体として情報信号Tの受信及び/又は送信を行う通信部30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の表面に形成される静電界を利用した通信システム、通信装置及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
情報通信のワイヤレス化の一環として人体通信が知られている。人体通信は、人間の体を通信媒体とする通信方式である。人体通信システムの一つに、元々人間の人体等に帯電する静電界(準静電界)を近接・短距離通信に応用した、いわゆる静電界方式の通信システムが公知である(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4088896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の通信システムによれば、人体表面からその周囲等方に帯電状態が広がる人体をアンテナとして通信可能とすることにより、通信方向が制約されることなく、また通信強度が電極面積に依存することなく、通信の際における自由度を向上することができるとされる。この通信システムは、通信相手の情報装置の近傍に手をかざしただけで通信相手の通信装置に情報を伝送することができる。具体的には、駅の改札機に設置されたセンサーの近傍に手をかざしただけで検札処理を行うシステム等に応用可能である。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の通信システムには、通信距離に制約がある。すなわち、人体に存在する準静電界は人体の表面からおよそ数センチメートルの範囲に分布するため、その準静電界が及ぶ距離以上離れた位置にある通信装置に信号を到達させることはできない。
【0006】
また、上記特許文献1には、通信相手に対して無線給電を行う技術が開示されている。この無線給電方式は、情報信号の伝送方式と同じく準静電界を伝送媒体として利用するものであるため、上記同様に給電距離が準静電界の分布範囲の制約を受ける。
【0007】
本発明の課題は、電力と情報とを異なる伝送方式により伝送させ、通信装置間の情報伝送の自由度を向上させ得る情報通信システム、情報通信装置及び情報通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の情報通信システムの発明は、
第1の通信装置と、一又は複数の第2の通信装置とを含み、
前記第1の通信装置が、電源と、当該電源の出力に基づく交番磁界を介して電力を送電する送電部と、人体の外表面に形成される静電界を伝送媒体として情報信号の送信及び/又は受信を行う通信部と、を備え、
前記第2の通信装置が、外部から到来する交番磁界を電気量に変換して電力を受電する受電部と、人体の外表面に形成される静電界を伝送媒体として情報信号の受信及び/又は送信を行う通信部と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の通信装置の発明は、電源と、当該電源の出力に基づく交番磁界を介して電力を送電する送電部と、人体の外表面に形成される静電界を伝送媒体として情報信号の送信及び/又は受信を行う通信部と、を備えたことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の通信装置の発明は、外部から到来する交番磁界を電気量に変換して電力を受電する受電部と、人体の外表面に形成される静電界を伝送媒体として情報信号の受信及び/又は送信を行う通信部と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の通信方法の発明は、
第1の通信装置から一又は複数の第2の通信装置に対して電磁誘導方式により無線給電を行い、前記第1の通信装置と第2の通信装置との間、又は複数の第2通信装置相互間で人体通信方式により情報信号の送信及び/又は受信を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電力と情報とを異なる伝送方式により伝送するので、通信装置間の情報伝送の自由度を向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る情報通信システムの構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る情報通信装置の内部構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る情報通信システムの応用例を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る情報通信システムの他の応用例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
[情報通信システムの概要]
図1に、本発明に係る情報通信システムの概要を示す。
図1に示すように、この情報通信システムは、第1の情報通信装置としての親機1と、一又は複数の第2の情報通信装置としての子機2と、からなる。この情報通信システムは、親機1と子機2との間で静電界(準静電界)Eを信号伝達媒体として通信情報Tの送受信(人体通信)を行い、親機1から子機2に対して電磁界Mを介して無線送電Pを行うものである。
【0016】
[親機1の構成]
図2に、本実施の形態に係る情報通信システムのブロック図を示す。
図2に示すように、親機1はマイクロコンピュータを使用して構成される。親機1は、CPU11と、12と、RAM13と、入力装置14と、ディスプレイ15と、子機2との間で情報通信を行う通信部17と、電源20と、電源20の出力電力を子機2に無線で送電する送電部18と、を含む。上記各構成要素は、システムバス16を介して相互に通信可能に接続されている。
【0017】
ROM12には、CPU11のオペレーティングシステムや親機1を統括的に制御するための制御プログラム等が記憶されている。CPU11はROM12からこれらのプログラムを読み出してRAM12に展開し、展開された各プログラムと協働して子機と2との情報通信及び子機2への無線送電の制御を実行する。
【0018】
入力装置14は、親機1への各種設定、操作入力等を行うためのものである。
【0019】
ディスプレイ15は、入力装置14により入力された設定情報、各種の装置状態を示す情報、子機から送信された情報等を表示する。このディスプレイ15の表示画面上にタッチパネルを重畳させて入力装置14とディスプレイ15とを一体化させた、いわゆるタッチパネル式の入力/表示装置を構成することもできる。
【0020】
通信部17は、子機2に対して情報Tを送信する機能及び子機2から到来する情報Tを受信する双方向通信機能を有する。なお、通信部17は、親機1と子機2との間でいずれか一方にのみ通信を行う単方向通信方式であっても良い。
【0021】
通信部17は、送受信用のアンテナ電極(図示せず)を有する。通信部17は、このアンテナ電極を通じて親機1から子機2に送信すべき情報Tを人体に帯電する静電界Eを振動させることにより送信を行う。また通信部3は、静電界Eを介して子機2から送信された情報Tを上記アンテナ電極で受信し、電気信号に変換する。人体に帯電する静電界Eが分布する範囲は、人体表面の近傍(約数センチメートル程度)である。したがって、親機1と子機2との間の情報通信は、互いに静電結合できる環境下(静電界Eの分布範囲内)において行われなければならない。
【0022】
送電部18は、電源20からの出力電力に基づいて交番磁界を生成する磁界発生部と、その交番磁界を送電部18を中心とする周囲空間に形成し所定半径(例えば、数メートル〜十数メートル)の範囲に交番磁界(磁場)Mを生成するアンテナコイルと、を含む。この交番磁界Mの範囲内において親機1から子機2に対して無線で電力Pの供給が可能である。
したがって、子機2は交番磁界Mの範囲内に存在すれば、親機1との間の通信可能距離を越えた距離だけ離れた位置であっても互いに電磁結合されるので電力Pの供給を受けることができる。
その結果、子機2が複数ある場合、各子機2が交番磁界Mの及ぶ範囲に位置し、且つ子機2同士が互いに通信可能な静電界Eの及ぶ範囲に位置すれば、子機2が自装置内に独立した電源(電池等)をもたなくても互いに通信が可能なシステムを構築することができる。
【0023】
電源20は、電池21からの直流電圧を所定周波数の交流電圧に変換するインバータ(図示せず)を含む。なお、電源20は、コンセント22等を介して外部の商用電源から電力の供給を受ける構成であっても良い。
【0024】
[子機2の構成]
図2を参照して、子機2は、CPU21と、ROM22と、RAM23と、入力装置24と、ディスプレイ25と、親機1から送信された情報を再生する再生装置26と、音声出力のためのスピーカ27と、親機1との間で静電界Eによる静電結合で情報通信を行う通信部29と、親機の送電部18から交番磁界Mを介して無線送電された電力を電磁結合で受電するアンテナコイル31と、アンテナコイル31で電気量に変換された電力を子機装着補助具2の内部の各構成要素に供給する受電部30と、を含む。上記各構成要素は、システムバス28を介して相互に通信可能に接続されている。
【0025】
ROM22には、CPU21のオペレーティングシステムや子機2を統括的に制御するための制御プログラム等が記憶されている。CPU21はROM22からこれらのプログラムを読み出してRAM22に展開し、展開された各プログラムと協働して親機1(又は子機2が複数である場合は、他の子機)との情報通信の制御を実行する。
【0026】
入力装置24は、子機2に対する各種設定、操作入力を行うためのものである。
【0027】
ディスプレイ25は、入力装置24により入力された設定情報、各種の装置状態を示す情報、親機1から送信された情報等を表示する。このディスプレイ25の表示画面上にタッチパネルを重畳させて入力装置24とディスプレイ25とを一体化させた、いわゆるタッチパネル式の入力/表示装置を構成することもできる。
【0028】
通信部29は、親機1(又は子機2が複数である場合は、他の子機)との間で情報を送受信する双方向の通信機能を有する。通信部29は、静電界Eを介して静電結合により伝送される通信情報を電気信号に変換し、システムバス28を介してCPU21に転送する。
【0029】
受電部30は、アンテナコイル19と電磁結合をなすアンテナコイル31で受電された送電電力Pを直流電力に変換するAC/DCコンバータ(図示せず)を含み、子機2内の各構成要素に駆動電圧を供給する。
【0030】
以上のように、情報は親機1と子機2との間で電界方式(人体通信)により双方向(又は単方向)の伝送が行われる。一方、電力Pは通信情報とは別に単独で電磁界方式で無線伝送される。
【0031】
本実施形態によれば、情報通信の伝送方式と無線送電の伝送方式とを互いに独立した構成としたことにより、親機1が電力供給源と情報管理装置(すなわち、サーバ)と二つの機能を合わせもつシステムの構築が可能となる。この場合、電力Pの供給範囲は電界方式に比べてはるかに広い範囲(例えば、数メートル〜十数メートル)をカバーすることができるので、この送電範囲内において複数の子機同士が電池を内蔵することなく情報の通信を行うことができ、その結果、情報通信システムとしてより自由度の高いシステムを構築することができるのである。
【0032】
[応用例]
次に、本発明に係る情報通信システムの応用例を図3に示す。
この応用例に係る情報通信システムは、1台の親機100をサーバとし、この親機100に複数の子機200〜205を組み合わせたものである。
【0033】
この情報通信システムによれば、各子機200〜205を6人のゲームプレイヤーに持たせ、磁界Mが及ぶ範囲(無線送電範囲)において、各子機200〜205同士が親機100からの電力供給を受けながら、互いにあるいは親機100との間で情報の送受信によりゲームを行うことができる。
【0034】
例えば、子機200は親機100から電力P1を受け、子機200を携帯するゲームプレイヤーの静電界E1を介して親機100との間で情報T1の交信を行う。一方、子機201は、親機100から電力P2の供給を受け、子機200を携帯するゲームプレイヤーの静電界と子機201を携帯するゲームプレイヤーの静電界との和の静電界E2を介して情報T2の交信を行う。
【0035】
この組み合わせでは、子機201が親機100から直接的に情報を受信することはできないが、子機200を介して受け取ることができる。かくして受信された情報を子機200と201とが共有して互いにゲームを行うことができる。なお、どのようなゲームを行うかは、任意である。
【0036】
また、子機202と203の組み合わせでは、子機202及び203が電力P3及びP4の供給を受け、子機202、203を携帯するゲームプレイヤー同士で互いの静電界の和E3を介して情報T3の交信を行うことができる。したがって、子機202及び203が親機100からゲームに関する情報を受信し、互いに或いは親機100と交信しながらゲームを進行することができる。
【0037】
さらに、子機204と205の組み合わせでは、親機100と子機204及び205とが三つどもえ状態でゲームを展開することができる。子機204及び205は電力P5、P6の供給を受けながら、各ゲームプレーヤー相互間の静電界E4、E5、E6を介して情報の交信を行うことができる。
【0038】
以上の通り、自由な形態で情報通信システムを構築することができる。
【0039】
[他の応用例]
次に、本発明に係る情報通信システムの他の応用例を図4に示す。
この情報通信システムは、パソコン300を親機(サーバ)とし、人体に装着された携帯音楽プレーヤ400を第一の子機とし、伝送された情報を第二の子機であるヘッドフォン600に転送して音楽再生を行う例である。
【0040】
このシステムによれば、携帯音楽プレーヤ400及びヘッドフォン600共にパソコン300から磁場Mによる電力供給を受けることができるため、それぞれが電池を持つ必要がなく、軽量でコンパクトな再生システムを構築することができる。
【0041】
すなわち、パソコン300から送信された音楽データは、人体500の手をパソコン300の近傍にかざすことで人体500に帯電されている静電界Eを介して携帯音楽プレーヤ400に送信される。携帯音楽プレーヤ400で受信された音楽データは同じ人体500の静電界Eを介してヘッドフォン600に転送され、かくして音楽データはヘッドフォン600において音響信号に変換され再生される。
【符号の説明】
【0042】
1…親機
2…子機
17…通信部
18…送電部
20…電源
29…通信部
30…受電部
E…静電界
M…電磁界
T…通信情報
P…送電電力

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の通信装置と、一又は複数の第2の通信装置とを含み、
前記第1の通信装置が、電源と、当該電源の出力に基づく交番磁界を介して電力を送電する送電部と、人体の外表面に形成される静電界を伝送媒体として情報信号の送信及び/又は受信を行う通信部と、を備え、
前記第2の通信装置が、外部から到来する交番磁界を電気量に変換して電力を受電する受電部と、人体の外表面に形成される静電界を伝送媒体として情報信号の受信及び/又は送信を行う通信部と、
を備えたことを特徴とする情報通信システム。
【請求項2】
電源と、当該電源の出力に基づく交番磁界を介して電力を送電する送電部と、
人体の外表面に形成される静電界を伝送媒体として情報信号の送信及び/又は受信を行う通信部と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の情報通信装置。
【請求項3】
外部から到来する交番磁界を電気量に変換して電力を受電する受電部と、
人体の外表面に形成される静電界を伝送媒体として情報信号の受信及び/又は送信を行う通信部と、
を備えたことを特徴とする情報通信装置。
【請求項4】
第1の通信装置から一又は複数の第2の通信装置に対して電磁誘導方式により無線給電を行い、
前記第1の通信装置と第2の通信装置との間、又は複数の第2通信装置相互間で人体通信方式により情報信号の送信及び/又は受信を行うこと
を特徴とする情報通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−44775(P2011−44775A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189936(P2009−189936)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000003584)株式会社タカラトミー (248)
【Fターム(参考)】