通信装置
【課題】無線通信におけるサービス品質をより向上させることが可能な技術を提案する。
【解決手段】出力スケジューラ23が、各パケットキュー22の最古パケット入力時間と、そのパケットキュー22に該当するサービスの遅延情報の遅延許容時間とを比較して、その差が最も大きいパケットキュー22を特定し、特定したパケットキュー22のサービスと、当該パケットキュー22の先頭に格納されている最古のパケット情報の宛先に基づいて、通信方式情報部25からパケット連結数の計算用パラメータを取得し、当該取得した計算用パラメータを用いてパケット連結数を算出し、算出したパケット連結数だけ該当パケットキュー22からIPパケットを取り出して連結し、無線送信待機時間及びパケット連結数と共に無線アクセス制御部12へ渡す。
【解決手段】出力スケジューラ23が、各パケットキュー22の最古パケット入力時間と、そのパケットキュー22に該当するサービスの遅延情報の遅延許容時間とを比較して、その差が最も大きいパケットキュー22を特定し、特定したパケットキュー22のサービスと、当該パケットキュー22の先頭に格納されている最古のパケット情報の宛先に基づいて、通信方式情報部25からパケット連結数の計算用パラメータを取得し、当該取得した計算用パラメータを用いてパケット連結数を算出し、算出したパケット連結数だけ該当パケットキュー22からIPパケットを取り出して連結し、無線送信待機時間及びパケット連結数と共に無線アクセス制御部12へ渡す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一のネットワークから出力されたIPパケットを複数の通信方式の内のいずれかを使用した無線通信により他のネットワークへ送信する通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク上に存在する様々なデータには、それぞれ異なる性質があり、そのデータの通信に求められる通信品質も異なる。
例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)を利用して音声データを送受信するVoIP(Voice over Internet Protocol)では、データサイズは小さいものの、一定の帯域幅を継続的に確保することが求められる。これが実現されないと、音声のゆらぎや遅延などが発生する。
一方、電子メールを送信するSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)では、一定の帯域幅も必要なく、遅延などの影響もさほど関係ない。しかしながら、パケットロスが生じるとデータの再送が発生し、トラフィックの増加で他のデータ通信に影響を与える可能性がある。
【0003】
こうした問題に対し、音声通信、動画通信、メール通信などの種類の異なる複数の通信について、各通信の品質を適切に確保するためのQoS(Quality of Service;サービス品質保証)と呼ばれる技術が用いられている。QoSでは、通信の種類をサービスと定義し、サービスの種類に応じて、それぞれに通信帯域やデータ出力の優先を決定する。
【0004】
QoSの実現には、図7にQoSの概念イメージを示すように、(1)サービスの優先度を判別し、優先度に応じたパケットキューにIPパケットを追加(挿入)する優先度判別機能と、(2)IPパケットの出力順序を制御するスケジューリング機能の2つが必要となる。
図7の例では、ネットワークAとネットワークBとを通信回線(例えば、光ケーブルなどの有線回線)により接続した通信システムにおいて、ネットワークAに設けられた通信装置61(例えば、ネットワーク間でのパケット中継を行うルータ)に上記の優先度判別機能及びスケジューリング機能を設けることで、ネットワークA内の通信端末62(IP電話端末(a1)やPC(a2,a3)等)からネットワークB内の通信端末62(IP電話端末(b1)やPC(b2,b3)等)への送信データ(IPパケット)についてのQoSを実現している。
【0005】
現在では、一般的に、優先度判別機能には、受信したIPパケットの情報で優先順位を判断するDiffServ(Differentiated Services)と呼ばれる方式が採用され、スケジューリング機能には、PQ(Priority Queueing)、又は、LLQ(Low Latency Quality)スケジューリング方式が採用されている。
【0006】
図8には、DiffServの概要を示してある。
DiffServでは、IPパケットを受信すると、パケット情報を解析してサービス別に分類し、分類結果に応じた優先度を設定し、優先度の区分(カテゴリ)毎のパケットキューに格納する。優先度としては、例えば、遅延を最小にしたい音声通信のIPパケットに対して最も高い“1”が設定され、音声ほどではないが優先したい動画通信のIPパケットに対して2番目に高い“2”が設定され、多少は遅れても構わないメール通信のIPパケットに対して3番目に高い“3”が設定される。
【0007】
図9には、DiffServの対象となるIPパケットのフォーマットを示してある。
IPパケットは、20バイトのヘッダ部と、4〜1480バイトのペイロード部を有する。IPパケットのヘッダ部は、IPのバージョン及びIPのヘッダ長が格納される1バイトのフィールド(IP Version/Header Length)、パケットのサービスタイプが格納される1バイトのフィールド(Type Of Service)、パケット長が格納される2バイトのフィールド(Total Length)、パケットのIDが格納される2バイトのフィールド(Identification)、パケット分割(フラグメント)の状態が格納される2バイトのフィールド(Flag/Flagment Offset)、パケットの生存期間が格納される1バイトのフィールド(Time To Live)、トランスポート層のプロトコルのIDが格納される1バイトのフィールド(Protocol Number)、ヘッダ情報のチェックサム値が格納される2バイトのフィールド(Header CheckSum)、送信元のIPアドレスが格納される4バイトのフィールド(Source IP Address)、宛先のIPアドレスが格納される4バイトのフィールド(Destination IP Adress)を有する。
DiffServでは、例えば、IPパケットのヘッダ部の「Type Of Service」の設定値(サービスタイプ)を参照して、サービスの分類を行う。
なお、図9では、IPパケットを搬送するEthernet(登録商標)フレームのヘッダ部を示してあるが、このヘッダ部はDiffServによる処理の段階では除去されている。すなわち、パケットキューには、IPパケット部分のみが格納される。
【0008】
図10には、LLQスケジューリングの概要を示してある。
LLQでは、図10(a)に示すように、最も高い優先度のパケットキューからIPパケットを取り出す処理を優先的に行う。そして、図10(b)に示すように、現在遅延量(現時点での遅延量)が許容遅延量(許容される遅延量)を超えそうなパケットキューがあれば、そのパケットキューからIPパケットを取り出す処理を行う。
【0009】
ここで、IEEE802.11(無線LAN)で構築する無線ネットワークにおいては、電波干渉や、有線ネットワークとは異なるアクセス方式の使用などにより、DiffServなどを用いたQoSの実現が困難である。
そこで、IEEE802.11eのワーキンググループで、無線通信に適したQoSの検討が行われ、方式化されることになった。現在は、データの優先順位に応じた無線送信待機時間の制御を行うEDCA(Enhanced Distributed Channel Access)と呼ばれる方式が主流である。
【0010】
図11には、EDCA方式の概要を示してある。
EDCAでは、AIFS(Arbitration Inter Frame Space;送信待機時間)と、ランダム時間(=スロットタイム×乱数)の算出に使用する乱数を、優先度が高いサービスほど小さく設定するようにし、AIFSとランダム時間の合計だけ待機してからデータ送信を行う。これにより、優先度が高いサービスのデータについては、他のデータよりデータ送信開始までの時間を短くすることができる。
なお、EDCAに関しては、例えば、再送制御を行うことにより、通信の品質を高めることができるように改良された無線通信装置の発明が提案されている(特許文献1参照)。
【0011】
無線通信に適用される従来の通信装置(例えば、ネットワーク間でのパケット中継を無線通信により行う無線ルータ)61におけるQoSについて説明する。
図12には、従来の通信装置61の構成例を示してある。
図12の通信装置61は、ネットワーク部71、無線アクセス制御部72、無線信号処理部73、高周波部74を備えている。
ネットワーク部71は、主に、IP電話端末やPCなどの通信端末62や制御端末63とのインタフェースとなり、無線アクセス制御部72とのIPパケットのやりとりや送信待機時間の設定を行う。
無線アクセス制御部72は、ネットワーク部71から受けたIPパケットと送信待機時間を元に、無線回線が使用中かどうかを判定して、回線が未使用の場合に無線信号処理部73にIPパケットを渡す。また、無線通信間でデータが相手に確実に届いたかを判定し、必要に応じて、再送制御なども行う。
無線信号処理部73及び高周波部74は、無線アクセス制御部73から受けたIPパケットを、訂正符号付加や変調などの処理を施してアンテナにより無線空間に送信する。
【0012】
また、上記の送信動作の際、ネットワーク部71に配置されるQoS機能部75から、優先的に送信するIPパケットを選択し、同じ宛先のIPパケットであれば、複数のIPパケットを無線アクセス制御部72に渡すことで、一度に複数のIPパケットを無線で送信することも可能である。
また、通信装置61は、電源投入中にでも通信方式の変更ができる。通信方式の変更は、例えば、専用の制御端末63から、無線通信に使用する通信方式(アクセス方式)やデータキャリアなどを指示する通信方式指示情報が入力された場合に、ネットワーク部71に配置される通信方式制御部76が、入力された通信方式指示情報に従って無線アクセス制御部72、無線信号処理部73、高周波部74の設定を切り換えることで行われる。
【0013】
図13には、従来の通信装置61におけるQoS機能部75の構成例を示してある。
QoS機能部75は、IPパケットの入力を受けるパケット入力部に配置された入力スケジューラ81と、入力されたIPパケットを保管する優先度別(サービス別)のパケットキュー82と、パケットキュー82からIPパケットを取り出すパケット出力部に設けられた出力スケジューラ83を有する。
入力スケジューラ81は、DiffServによるQoSの優先度判別機能を実現する。また、出力スケジューラ83は、PQ方式によるデータのスケジューリング機能を実現する。
【0014】
IPパケットが入力されると、入力スケジューラ81が、IPパケットのTOSフィードの値(サービスの種類)に従って、該当するパケットキュー82にデータを追加(挿入)する。出力スケジューラ83は、優先度の高いパケットキュー82から順にIPパケットを取り出して無線アクセス制御部72に渡す。また、各パケットキュー82が持つ無線待機時間を無線アクセス制御部72に渡す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2011−135255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
これまで述べたように、従来の方式によっても、有線ネットワーク及び無線ネットワーク上でのQoSは実現できる。しかしながら、従来の方式では、無線ネットワーク上で通信方式の変更が発生した場合には、QoSを維持することが難しい。また、エンドツーエンドでのデータの遅延許容量を加味した無線側QoSの設定や、無線側の帯域を考慮した有線側のスケジューリング制御を行うことができない。このため、無線通信におけるQoSについて更なる検討を加えることが望まれている。
【0017】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて為されたものであり、無線通信におけるサービス品質をより向上させることが可能な技術を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明では、一のネットワークから出力されたIPパケットを複数の通信方式の内のいずれかを使用した無線通信により他のネットワークへ送信する通信装置に、同じ宛先のIPパケットを連結するパケット連結手段と、前記パケット連結手段によるIPパケットの連結数を、無線通信に使用する通信方式に応じて決定するパケット連結数決定手段と、を備えた。
【0019】
また、本発明では、前記パケット連結数決定手段は、更に、前記パケット連結手段によるIPパケットの連結数を、サブキャリアの使用率に応じて決定するようにした。
【0020】
また、本発明では、前記パケット連結数決定手段は、更に、前記パケット連結手段によるIPパケットの連結数を、IPパケットの宛先に応じて決定するようにした。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、同じ宛先のIPパケットを連結して送出するに際し、通信方式、サブキャリアの使用率、IPパケットの宛先といった要因を考慮してIPパケットの連結数が調整(決定)されるため、そのときの状況に応じた適切なパケット連結数とすることができ、無線通信におけるサービス品質をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る通信装置の構成例を示す図である。
【図2】本例の通信装置におけるQoS機能部の構成例を示す図である。
【図3】本例の通信装置における通信方式情報部の構成例を示す図である。
【図4】本例の通信装置における遅延情報部の構成例を示す図である。
【図5】本例の通信装置においてパケットキューに保持されるパケット情報のフォーマット例を示す図である。
【図6】本例の通信装置におけるQoS機能部の処理シーケンス例を示す図である。
【図7】QoSの概念イメージを示す図である。
【図8】DiffServの概要を示す図である。
【図9】IPパケットのフォーマットを示す図である。
【図10】LLQスケジューリングの概要を示す図である。
【図11】EDCA方式の概要を示す図である。
【図12】従来の通信装置の構成例を示す図である。
【図13】従来の通信装置におけるQoS機能部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る通信装置の構成例を示してある。
本例の通信装置1は、内部ネットワークを外部ネットワークと無線回線で接続する無線通信装置(例えば、ネットワーク間でのパケット中継を無線通信により行う無線ルータ)であり、QoS機能部15及び通信方式制御部16を有するネットワーク部11、無線アクセス管理部17を有する無線アクセス制御部12、無線信号処理部13、高周波部14を備えている。
なお、本例の通信装置1における各機能部11〜14の基本的な動作は、従来の通信装置61(図12参照)における機能部71〜74と同様であり、以下では、相違部分について主に説明する。
【0024】
本例の通信装置1では、通信方式制御部16が、外部の制御端末3から入力される通信方式指示情報や、無線アクセス制御部12から提供されるキャリア使用率(サブキャリアの使用率を示す値)や回線使用率(無線回線の使用率を示す値)などの情報に基づき、現時点における通信方式、キャリア使用率、回線使用率の各情報を格納した通信方式情報をQoS機能部15へ渡すようにしてある。
キャリア使用率は、一例として、下記(式1)により算出できる。
Cr=Cn/Cmax ・・・(式1)
ここで、Crはキャリア使用率であり、Cnは現在のキャリア使用数であり、Cmaxは通信装置で使用可能な最大キャリア数である。なお、本算出例は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)又はOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)で複数本のサブキャリアを使用することを前提とする。なお、各サブキャリアの品質(例えば等化誤差)を求め、品質の悪いサブキャリアを使用しないようにしてもよい。また、OFDMAで使用周波数の割り当てを行ってもよい。
また、回線使用率は、一例として、下記(式2)により算出できる。
回線使用率=単位時間あたりのキャリア検出時間 ・・・(式2)
ここで、単位時間としては、例えば1秒間が用いられる。
【0025】
図2には、本例の通信装置1におけるQoS機能部15の構成例を示してある。
本例のQoS機能部15は、IP電話端末やPCなどの通信端末2からIPパケットの入力を受けるパケット入力部に配置された入力スケジューラ21と、入力されたIPパケットを保管する優先度別(サービス別)のパケットキュー22と、パケットキュー22からIPパケットを取り出すパケット出力部に設けられた出力スケジューラ23と、遅延情報を保持する遅延情報部24と、通信方式情報を保持する通信方式情報部25(Communication Information Base;CIB)を有する。
すなわち、従来の通信装置61におけるQoS機能部75(図13参照)に、遅延情報部24と通信方式情報部25を追加した構成となっている。
【0026】
図3には、本例の通信装置1における通信方式情報部25の構成例を示してある。
本例の通信方式情報部25は、通信方式制御部16から渡された最新(現時点)の通信方式情報を保持する通信方式情報保管部31と、パケット連結数の計算用パラメータに用いられる重み付け値を保持する重み付け値保管部32と、パケット連結数の計算用パラメータを出力するパケット連結数計算用パラメータ送信部33を有する。
【0027】
通信方式情報保管部31は、通信方式情報として、通信方式、キャリア使用率、回線使用率の現在値を保持する。キャリア使用率は、「1」を100%とし、自己が使用可能な使用率に応じて0.00〜1の範囲で表される。また、回線使用率は、無線回線が自己或いは他者によって使用されている率であり、0.00〜1(1が100%)の範囲で表される。
重み付け値保管部32は、重み付け値として、通信方式別重み、サービス別重み、宛先別重みの設定値を保持する。通信方式別重みは、通信方式に応じて予め定められた重み付け値である。サービス別重みは、サービスに応じて予め定められた重み付け値である。宛先別重みは、宛先に応じて予め定められた重み付け値である。
【0028】
本例では、通信方式別重みとして、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)方式について“0.8”が設定され、プリアサイン方式について“1”が設定されている。なお、プリアサイン方式については後述する。
また、サービス別重みとして、音声データについて“0.2”が設定され、映像データについて“0.4”が設定され、メールデータについて“1.0”が設定されている。
また、宛先別重みとして、宛先Aについて“1”が設定され、宛先Bについて“0.8”が設定され、ブロードキャストについて“0”が設定されている。
本例では、0〜1の範囲の値が重み付け値として設定されている。なお、これら重み付け値は一例に過ぎず、運用形態などに応じて予め定めたものを用いればよい。
【0029】
パケット連結数計算用パラメータ送信部33は、出力スケジューラ23からの情報などにより特定される重み付け値(通信方式重み、サービス重み、宛先重み)、及び、現時点のキャリア使用率、回線使用率を、パケット連結数の計算用パラメータとしてパケット出力部23へ出力する。
【0030】
通信方式重みとしては、現在の通信方式(通信方式情報保管部31の通信方式の設定値)に対応する通信方式別重み(重み付け値保管部32の通信方式別重みの設定値)が出力される。図3の例では、現在の通信方式がCSMA/CAなので、これに対応する通信法識別重みの設定値である“0.8”が出力されている。
サービス重みとしては、出力スケジューラ23から与えられる送信予定サービスに対応するサービス別重み(重み付け値保管部32の通信方式別重みの設定値)が出力される。図3の例では、送信予定サービスがメールなので、これに対応するサービス別重みの設定値である“1”が出力されている。
宛先重みとしては、出力スケジューラ23から与えられる送信予定宛先に対応する宛先別重み(重み付け値保管部32の宛先別重みの設定値)が出力される。図3の例では、送信予定宛先が宛先Aなので、これに対応する宛先別重みの設定値である“1”が出力されている。
キャリア使用率としては、現在のキャリア使用率(通信方式情報保管部31のキャリア使用率の設定値)が出力される。図3の例では、現在のキャリア使用率である“1”が出力されている。
回線使用率としては、現在の回線使用率(通信方式情報保管部31の回線使用率の設定値)が出力される。図3の例では、現在の回線使用率である“0.00”が出力されている。
【0031】
図4には、本例の通信装置1における遅延情報部24の構成例を示してある。
本例の遅延情報部24は、遅延情報を保持する遅延情報保管部43と、遅延情報を更新する遅延情報更新部41,42,45と、遅延情報を送信する遅延情報送信部44を有する。
【0032】
遅延情報保管部43は、音声データ、動画データ、メールデータといったサービス別に、遅延情報として、パケット入力時間、パケット出力時間、現在のパケット格納率、遅延許容時間、パケット破棄時間、無線送信待機時間、許容超過時無線送信待機時間を保持する。
パケット入力時間は、該当するパケットキュー22に最後にIPパケットを追加(挿入)した時間(最終パケット入力時間)である。
パケット出力時間は、該当するパケットキュー22から最後にIPパケットを取り出した時間(最終パケット出力時間)である。
パケット格納率は、該当するパケットキュー22の現時点での格納率である。
遅延許容時間は、IPパケットの無線送信の遅延を許容する時間である。
パケット破棄時間は、IPパケットを破棄するまでの時間である。
無線送信待機時間は、IPパケットの無線送信を待機する時間である。
許容超過時無線送信待機時間は、該当するパケットキュー22でのパケット保持時間が遅延許容時間を越えたIPパケットについての無線送信待機時間である。
【0033】
遅延情報更新部42は、各サービスの遅延許容時間、パケット破棄時間、無線送信待機時間、許容超過時無線送信待機時間を設定する。この設定処理は、例えば、通信装置1の運用前に事前処理として実施される。
遅延情報更新部41は、IPパケットがパケットキュー22に追加(挿入)される度に、そのパケットキュー22に対応するサービスのパケット入力時間及びパケット格納率を更新する。
遅延情報更新部45は、パケットキュー22からIPパケットが取り出される度に、そのパケットキュー22に対応するサービスのパケット出力時間及びパケット格納率を更新する。
【0034】
図5には、本例の通信装置1においてパケットキュー22に保持されるパケット情報のフォーマットの例を示してある。
本例のパケット情報は、図9を参照して説明したIPパケットに、システム時間格納部を付加した構成になっている。なお、システム時間格納部は、通信装置1が起動してから該当IPパケットがパケットキュー22に追加(挿入)された時点までの経過時間(秒)が格納される4バイトのフィールドと、経過時間(ナノ秒)が格納される4バイトのフィールドを有する。
【0035】
図6には、本例の通信装置1におけるQoS機能部15の処理シーケンス例を示してある。
通信装置1では、事前処理として、通信方式情報部25に通信方式情報が設定される(処理T1)。また、遅延情報部24に遅延情報が設定される(処理T2)。遅延情報部24は、遅延情報の設定が更新された場合には、その旨を出力スケジューラ23へ通知する(処理T3)。出力スケジューラ23は、遅延情報の更新の通知を受けると、遅延情報部24から各サービスの遅延情報を取得する(処理T4)。なお、この段階で処理する遅延情報は、遅延許容時間、パケット破棄時間、無線送信待機時間、許容超過時無線送信待機時間であり、パケット入力時間、パケット出力時間、パケット格納率は、パケットキュー22に対するIPパケットの入出力に際して処理される。
【0036】
次に、通信端末2から送信されたIPパケットが通信装置1に入力された場合について説明する。
まず、入力スケジューラ21は、IPパケットの入力を受けると、そのサービスを判別して優先度を識別し(処理T5,T6)、IPパケットにその入力時間(システム時間)を付加したパケット情報を該当するパケットキュー22へ追加(挿入)する(処理T7,T8)。また、その際に、入力スケジューラ21は、遅延情報部24のパケット入力時間、パケット格納率を更新する。
【0037】
遅延情報部24は、いずれかのパケットキュー22へIPパケットが追加された際に、その前の時点で全てのパケットキュー22が空であった場合(IPパケットが格納されていなかった場合)には、パケット入力があった旨を出力スケジューラ23へ通知する(処理T9)。
出力スケジューラ23は、パケット入力があった旨の通知を受けたことに応じて作動し、以下の処理(処理T10〜T17)を行う。
【0038】
まず、サービスの優先順(例えば、音声、映像、チャット、メールの順)に各パケットキュー22の先頭に格納されている最古のパケット情報の入力時間(最古パケット入力時間)を取得する(処理T10)。
次に、各パケットキュー22の最古パケット入力時間とシステムの現在時間との差分(パケット保持時間)を求め、パケット保持時間がパケット破棄時間より大きいパケットキュー22がある場合には、該当パケットキュー22に保持されている最古のパケット情報を破棄する(処理T11)。この処理を、該当パケットキュー22について、パケット保持時間がパケット破棄時間より小さくなるまで繰り返す。
【0039】
次に、各パケットキュー22の最古パケット入力時間と、そのパケットキュー22に対応するサービスの遅延情報の遅延許容時間とを比較し、その差が最も大きいパケットキュー22を特定し、更に、当該特定したパケットキュー22の最古パケット入力時間が遅延許容時間を超えるか否かを調べ、超えない場合には遅延情報の無線送信待機時間を選択し、超える場合には遅延情報の許容超過時無線送信待機時間を選択して、無線送信待機時間として無線アクセス制御部12へ渡すことを決定する(処理T12)。
【0040】
次に、処理T12で特定したパケットキュー22のサービスと、当該パケットキュー22の先頭に格納されている最古のパケット情報の宛先に基づいて、通信方式情報部25からパケット連結数の計算用パラメータを取得し(処理T13)、当該取得した計算用パラメータを用いてパケット連結数を算出する(処理T14)。
次に、処理T12で特定したパケットキュー22から、算出したパケット連結数だけIPパケットを取り出して連結し(処理T15,T16)、当該連結したIPパケットと、処理T12で決定した無線送信待機時間及び処理T14で算出したパケット連結数とを無線アクセス制御部12へ渡す(処理T17)。
【0041】
ここで、本例では、パケット連結数を、下記(式1)を用いて算出する。
SPktn=SPktmax×Wc×Ws×Wd×Cn×(1−Bu) ・・(式1)
(式1)において、SPktmaxは最大パケット連結数(2以上)であり、Wcは通信方式重み(0〜1)であり、Wsはサービス重み(0〜1)であり、Wdは宛先重み(0〜1)であり、Cnは現在のキャリア使用率(0.00〜1)であり、Buは現在の回線使用率(0.00〜1)である。なお、算出結果(SPktn)の小数点以下は切り上げるものとする。また、算出結果(SPktn)が“0”の場合は、SPktn=“1”とする。
【0042】
すなわち、本例では、使用する通信方式に応じてパケット連結数を調整する。例えば、プリアサイン方式を使用する場合は、CSMA/CA方式を使用する場合に比べてパケット連結数が長くなるようにする。このように、使用する通信方式に応じてパケット連結数を調整することにより、通信方式の性能をより効果的に発揮させることが可能となり、無線通信におけるサービス品質の向上を図ることができる。
【0043】
また、本例では、サービスの種類に応じてパケット連結数を調整する。例えば、音声データ、動画データ、メールデータの順にパケット連結数が長くなるようにする。このように、サービスの種類に応じてパケット連結数を調整することにより、サービス毎に異なる要求品質に適した通信を行えるようになり、無線通信におけるサービス品質の向上を図ることができる。
【0044】
また、本例では、IPパケットの宛先に応じてパケット連結数を調整する。例えば、重要度が高い宛先ほどパケット連結数が長くなるようにする。このように、IPパケットの宛先に応じてパケット連結数を調整することにより、IPパケットの宛先の相違を考慮した通信を行えるようになり、無線通信におけるサービス品質の向上を図ることができる。
【0045】
また、本例では、現在のキャリア使用率(自己が使用可能なサブキャリアの率を示す値)に応じてパケット連結数を調整する。例えば、現在のキャリア使用率が高いほどパケット連結数が長くなるようにする。このように、ユーザ数や使用チャネル数などの変化に起因して変動するキャリア使用率に応じてパケット連結数を調整することにより、現在の通信状況に適した通信を行えるようになり、無線通信におけるサービス品質の向上を図ることができる。
【0046】
また、本例では、現在の回線使用率(無線回線の使用率を示す値)に応じてパケット連結数を調整する。例えば、現在の回線使用率が低いほどパケット連結数が長くなるようにする。このように、回線使用率に応じてパケット連結数を調整することにより、現在の通信状況に適した通信を行えるようになり、無線通信におけるサービス品質の向上を図ることができる。
【0047】
以上のような構成により、本例の通信装置1によれば、エンドツーエンドでの遅延許容量を満たすサービス品質の保証が可能になる。また、無線側の帯域(周波数帯)を考慮したデータ送信で、無線回線の占有やエンドツーエンド間の冗長な輻輳制御などを回避することができる。
【0048】
ここで、本例では、出力スケジューラ23の機能によりパケット連結手段が構成されており、出力スケジューラ23及び通信方式情報部25の機能によりパケット連結数決定手段が構成されている。
【0049】
なお、本例では、ROM(Read Only Memory)等の記憶部に格納された制御プログラムをプロセッサにより実行することで、上記のQoS機能部15を通信装置1上に実現しているが、専用のハードウェア回路により実現する構成にしてもよい。
また、本例では、通信装置1として無線ルータを用いているが、これに限定するものではなく、例えば、QoS機能のみを備えた専用装置(すなわち、無線ルータとは別体の装置)を用いる構成にしてもよい。
また、本例の通信装置1は、例えば、複数の無線機から構成され、1つ以上の無線機を経由して通信を行う無線通信システムに適用される。
【0050】
(プリアサイン方式について)
上記の説明で通信方式の一例に挙げたプリアサイン方式について説明する。
プリアサイン方式は、概略的に、予め応答順序が設定された複数の送受信局からなる無線通信システムにおいて、複数の送受信局の一つがデータを送信すると、当該データの送信元も含め、応答順序が上位の送受信局から当該データに対する応答信号を順次送信するように構成したものである。
このような構成によれば、送信元となる局と受信先となる複数の局との間の伝搬遅延、及び、各受信先からの応答信号の衝突回避を考慮した待ち時間を設定する必要が無く、応答信号の送信を効率的に行うことができる。
【0051】
プリアサイン方式による送受信シーケンスを説明する。
以下では、「#n」(n=1〜5)で表される応答順序(1を最上位とし、5を最下位とする)が設定された5局の送受信局を有する無線通信システムにおいて、送受信局#2から方式・情報(=送受信局#2が送りたい情報)の送信が開始された場合を例に説明する。
【0052】
送受信局#2から方式・情報(通信方式などを表すデータや、音声や画像などの情報を表すデータ)の送信がなされると、受信可能な各送受信局は送信された方式・情報の受信を行う。なお、他の送受信局の応答信号の送出も該送受信局において方式・情報の受信が完了することが前提となる。
【0053】
この受信を行った各送受信局のうち、まず応答順序最上位の送受信局#1が方式・情報の受信を完了するとACK信号を出力する。
この送受信局#1のACK信号を受けて、送受信局#1よりも下位の応答順序を持つものの内、最上位の(すなわち、次の順序の)送受信局#2がACK信号を出力する。ここで、送受信局#2は方式・情報を送信した送信元である。しかし、送信元であってもACK信号を出力することで、応答順序がより下位の送受信局にACK信号を出力することを促す点に本プリアサイン方式の特徴がある。
【0054】
送受信局#2のACK信号を受信した際に送受信局#3が送受信局#2からの方式・情報の受信を終えていれば、送受信局#2のACK信号への応答として、送受信局#3はACK信号を出力する。
以下同じ様に、応答順序が直近上位の送受信局のACK信号を受信したら、各送受信局はACK信号を出力する。
応答順序が自局か否かの判断は、受信した応答信号の数をカウントアップすることによって行う。また、応答信号に、当該応答信号の送信元の応答順序を示す情報を含め、受信した他局の応答信号に含まれる応答順序に基づいて自局の応答順序になったか否かを判断してもよい。
【0055】
応答順序最下位の送受信局#5からの応答信号の受信が終了すると、これ以上のACK信号は返ってこない。したがって、送信元である送受信局#2が送受信局#5のACK信号を受信すると、方式・情報の通信の終了信号を送信する。
この際、ACK信号の送信元を調べることで優先順位最下位の送受信局からの送信かを確認する、ACK信号の回数を自身の送信したものも含めてカウントして加入局数までのカウントアップした時点で全ての送受信局からの送信かを確認する、など確認方法は各種ある。どの手法を選択するかは設計事項である。
【0056】
次に、上記の送受信シーケンスにおいて、送受信局の1つがACK信号を受信できなかった場合について説明する。
各送受信局は常に応答タイミングでタイマをセットし、タイマを動作させる。タイムアウトまでの間に他の応答が来ればタイマをクリアし、再度タイマの動作を最初から開始する。一方、自身がACK信号を送出する場合、すなわち受け取ったACK信号が、応答順序が自局の順序の一つ前の送受信局からのものである場合には、ただちに、自身がACK信号を出力する動作に移行する(ただし方式・情報の完了が要件となる)。
【0057】
ここで、送受信局#3の出力したACK信号を送受信局#4が受信できなかった場合を想定する。
送受信局#4は、送受信局#2が出力したACK信号を受信したことで、タイマをリセットし、再度動作させる。その後、送受信局#3の出力するACK信号を待つこととなるが、送受信局#3の出力するACK信号が来ず、結果として、送受信局#4が動作させるタイマでタイムアウトが発生する。
このタイムアウトの発生により、送受信局#4は送受信局#3の出力するACK信号の受信に失敗したものとみなす。これにより送受信局#4は、自身が方式・情報の受信を完了していれば、ただちにACK信号を送出する。以降の措置は、上述した正常時(全ての送受信局がACK信号を受信できた場合)の処理シーケンスと同様である。
【符号の説明】
【0058】
1,61:通信装置、 2,62:通信端末、 3,63:制御端末、
11,71:ネットワーク部、 12,72:無線アクセス制御部、 13,73:無線信号処理部、 14,74:高周波部、 15,75:QoS機能部、 16,76:通信方式制御部、
21,81:入力スケジューラ、 22,82:パケットキュー、 23,83:出力スケジューラ、 24:遅延情報部、 25:通信方式情報部、
31:通信方式情報保管部、 32:重み付け値保管部、 33:パケット連結数計算用パラメータ送信部、
41,42,45:遅延情報更新部、 43:遅延情報保管部、 44:遅延情報送信部
【技術分野】
【0001】
本発明は、一のネットワークから出力されたIPパケットを複数の通信方式の内のいずれかを使用した無線通信により他のネットワークへ送信する通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク上に存在する様々なデータには、それぞれ異なる性質があり、そのデータの通信に求められる通信品質も異なる。
例えば、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)を利用して音声データを送受信するVoIP(Voice over Internet Protocol)では、データサイズは小さいものの、一定の帯域幅を継続的に確保することが求められる。これが実現されないと、音声のゆらぎや遅延などが発生する。
一方、電子メールを送信するSMTP(Simple Mail Transfer Protocol)では、一定の帯域幅も必要なく、遅延などの影響もさほど関係ない。しかしながら、パケットロスが生じるとデータの再送が発生し、トラフィックの増加で他のデータ通信に影響を与える可能性がある。
【0003】
こうした問題に対し、音声通信、動画通信、メール通信などの種類の異なる複数の通信について、各通信の品質を適切に確保するためのQoS(Quality of Service;サービス品質保証)と呼ばれる技術が用いられている。QoSでは、通信の種類をサービスと定義し、サービスの種類に応じて、それぞれに通信帯域やデータ出力の優先を決定する。
【0004】
QoSの実現には、図7にQoSの概念イメージを示すように、(1)サービスの優先度を判別し、優先度に応じたパケットキューにIPパケットを追加(挿入)する優先度判別機能と、(2)IPパケットの出力順序を制御するスケジューリング機能の2つが必要となる。
図7の例では、ネットワークAとネットワークBとを通信回線(例えば、光ケーブルなどの有線回線)により接続した通信システムにおいて、ネットワークAに設けられた通信装置61(例えば、ネットワーク間でのパケット中継を行うルータ)に上記の優先度判別機能及びスケジューリング機能を設けることで、ネットワークA内の通信端末62(IP電話端末(a1)やPC(a2,a3)等)からネットワークB内の通信端末62(IP電話端末(b1)やPC(b2,b3)等)への送信データ(IPパケット)についてのQoSを実現している。
【0005】
現在では、一般的に、優先度判別機能には、受信したIPパケットの情報で優先順位を判断するDiffServ(Differentiated Services)と呼ばれる方式が採用され、スケジューリング機能には、PQ(Priority Queueing)、又は、LLQ(Low Latency Quality)スケジューリング方式が採用されている。
【0006】
図8には、DiffServの概要を示してある。
DiffServでは、IPパケットを受信すると、パケット情報を解析してサービス別に分類し、分類結果に応じた優先度を設定し、優先度の区分(カテゴリ)毎のパケットキューに格納する。優先度としては、例えば、遅延を最小にしたい音声通信のIPパケットに対して最も高い“1”が設定され、音声ほどではないが優先したい動画通信のIPパケットに対して2番目に高い“2”が設定され、多少は遅れても構わないメール通信のIPパケットに対して3番目に高い“3”が設定される。
【0007】
図9には、DiffServの対象となるIPパケットのフォーマットを示してある。
IPパケットは、20バイトのヘッダ部と、4〜1480バイトのペイロード部を有する。IPパケットのヘッダ部は、IPのバージョン及びIPのヘッダ長が格納される1バイトのフィールド(IP Version/Header Length)、パケットのサービスタイプが格納される1バイトのフィールド(Type Of Service)、パケット長が格納される2バイトのフィールド(Total Length)、パケットのIDが格納される2バイトのフィールド(Identification)、パケット分割(フラグメント)の状態が格納される2バイトのフィールド(Flag/Flagment Offset)、パケットの生存期間が格納される1バイトのフィールド(Time To Live)、トランスポート層のプロトコルのIDが格納される1バイトのフィールド(Protocol Number)、ヘッダ情報のチェックサム値が格納される2バイトのフィールド(Header CheckSum)、送信元のIPアドレスが格納される4バイトのフィールド(Source IP Address)、宛先のIPアドレスが格納される4バイトのフィールド(Destination IP Adress)を有する。
DiffServでは、例えば、IPパケットのヘッダ部の「Type Of Service」の設定値(サービスタイプ)を参照して、サービスの分類を行う。
なお、図9では、IPパケットを搬送するEthernet(登録商標)フレームのヘッダ部を示してあるが、このヘッダ部はDiffServによる処理の段階では除去されている。すなわち、パケットキューには、IPパケット部分のみが格納される。
【0008】
図10には、LLQスケジューリングの概要を示してある。
LLQでは、図10(a)に示すように、最も高い優先度のパケットキューからIPパケットを取り出す処理を優先的に行う。そして、図10(b)に示すように、現在遅延量(現時点での遅延量)が許容遅延量(許容される遅延量)を超えそうなパケットキューがあれば、そのパケットキューからIPパケットを取り出す処理を行う。
【0009】
ここで、IEEE802.11(無線LAN)で構築する無線ネットワークにおいては、電波干渉や、有線ネットワークとは異なるアクセス方式の使用などにより、DiffServなどを用いたQoSの実現が困難である。
そこで、IEEE802.11eのワーキンググループで、無線通信に適したQoSの検討が行われ、方式化されることになった。現在は、データの優先順位に応じた無線送信待機時間の制御を行うEDCA(Enhanced Distributed Channel Access)と呼ばれる方式が主流である。
【0010】
図11には、EDCA方式の概要を示してある。
EDCAでは、AIFS(Arbitration Inter Frame Space;送信待機時間)と、ランダム時間(=スロットタイム×乱数)の算出に使用する乱数を、優先度が高いサービスほど小さく設定するようにし、AIFSとランダム時間の合計だけ待機してからデータ送信を行う。これにより、優先度が高いサービスのデータについては、他のデータよりデータ送信開始までの時間を短くすることができる。
なお、EDCAに関しては、例えば、再送制御を行うことにより、通信の品質を高めることができるように改良された無線通信装置の発明が提案されている(特許文献1参照)。
【0011】
無線通信に適用される従来の通信装置(例えば、ネットワーク間でのパケット中継を無線通信により行う無線ルータ)61におけるQoSについて説明する。
図12には、従来の通信装置61の構成例を示してある。
図12の通信装置61は、ネットワーク部71、無線アクセス制御部72、無線信号処理部73、高周波部74を備えている。
ネットワーク部71は、主に、IP電話端末やPCなどの通信端末62や制御端末63とのインタフェースとなり、無線アクセス制御部72とのIPパケットのやりとりや送信待機時間の設定を行う。
無線アクセス制御部72は、ネットワーク部71から受けたIPパケットと送信待機時間を元に、無線回線が使用中かどうかを判定して、回線が未使用の場合に無線信号処理部73にIPパケットを渡す。また、無線通信間でデータが相手に確実に届いたかを判定し、必要に応じて、再送制御なども行う。
無線信号処理部73及び高周波部74は、無線アクセス制御部73から受けたIPパケットを、訂正符号付加や変調などの処理を施してアンテナにより無線空間に送信する。
【0012】
また、上記の送信動作の際、ネットワーク部71に配置されるQoS機能部75から、優先的に送信するIPパケットを選択し、同じ宛先のIPパケットであれば、複数のIPパケットを無線アクセス制御部72に渡すことで、一度に複数のIPパケットを無線で送信することも可能である。
また、通信装置61は、電源投入中にでも通信方式の変更ができる。通信方式の変更は、例えば、専用の制御端末63から、無線通信に使用する通信方式(アクセス方式)やデータキャリアなどを指示する通信方式指示情報が入力された場合に、ネットワーク部71に配置される通信方式制御部76が、入力された通信方式指示情報に従って無線アクセス制御部72、無線信号処理部73、高周波部74の設定を切り換えることで行われる。
【0013】
図13には、従来の通信装置61におけるQoS機能部75の構成例を示してある。
QoS機能部75は、IPパケットの入力を受けるパケット入力部に配置された入力スケジューラ81と、入力されたIPパケットを保管する優先度別(サービス別)のパケットキュー82と、パケットキュー82からIPパケットを取り出すパケット出力部に設けられた出力スケジューラ83を有する。
入力スケジューラ81は、DiffServによるQoSの優先度判別機能を実現する。また、出力スケジューラ83は、PQ方式によるデータのスケジューリング機能を実現する。
【0014】
IPパケットが入力されると、入力スケジューラ81が、IPパケットのTOSフィードの値(サービスの種類)に従って、該当するパケットキュー82にデータを追加(挿入)する。出力スケジューラ83は、優先度の高いパケットキュー82から順にIPパケットを取り出して無線アクセス制御部72に渡す。また、各パケットキュー82が持つ無線待機時間を無線アクセス制御部72に渡す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2011−135255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
これまで述べたように、従来の方式によっても、有線ネットワーク及び無線ネットワーク上でのQoSは実現できる。しかしながら、従来の方式では、無線ネットワーク上で通信方式の変更が発生した場合には、QoSを維持することが難しい。また、エンドツーエンドでのデータの遅延許容量を加味した無線側QoSの設定や、無線側の帯域を考慮した有線側のスケジューリング制御を行うことができない。このため、無線通信におけるQoSについて更なる検討を加えることが望まれている。
【0017】
本発明は、このような従来の事情に鑑みて為されたものであり、無線通信におけるサービス品質をより向上させることが可能な技術を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明では、一のネットワークから出力されたIPパケットを複数の通信方式の内のいずれかを使用した無線通信により他のネットワークへ送信する通信装置に、同じ宛先のIPパケットを連結するパケット連結手段と、前記パケット連結手段によるIPパケットの連結数を、無線通信に使用する通信方式に応じて決定するパケット連結数決定手段と、を備えた。
【0019】
また、本発明では、前記パケット連結数決定手段は、更に、前記パケット連結手段によるIPパケットの連結数を、サブキャリアの使用率に応じて決定するようにした。
【0020】
また、本発明では、前記パケット連結数決定手段は、更に、前記パケット連結手段によるIPパケットの連結数を、IPパケットの宛先に応じて決定するようにした。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、同じ宛先のIPパケットを連結して送出するに際し、通信方式、サブキャリアの使用率、IPパケットの宛先といった要因を考慮してIPパケットの連結数が調整(決定)されるため、そのときの状況に応じた適切なパケット連結数とすることができ、無線通信におけるサービス品質をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る通信装置の構成例を示す図である。
【図2】本例の通信装置におけるQoS機能部の構成例を示す図である。
【図3】本例の通信装置における通信方式情報部の構成例を示す図である。
【図4】本例の通信装置における遅延情報部の構成例を示す図である。
【図5】本例の通信装置においてパケットキューに保持されるパケット情報のフォーマット例を示す図である。
【図6】本例の通信装置におけるQoS機能部の処理シーケンス例を示す図である。
【図7】QoSの概念イメージを示す図である。
【図8】DiffServの概要を示す図である。
【図9】IPパケットのフォーマットを示す図である。
【図10】LLQスケジューリングの概要を示す図である。
【図11】EDCA方式の概要を示す図である。
【図12】従来の通信装置の構成例を示す図である。
【図13】従来の通信装置におけるQoS機能部の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る通信装置の構成例を示してある。
本例の通信装置1は、内部ネットワークを外部ネットワークと無線回線で接続する無線通信装置(例えば、ネットワーク間でのパケット中継を無線通信により行う無線ルータ)であり、QoS機能部15及び通信方式制御部16を有するネットワーク部11、無線アクセス管理部17を有する無線アクセス制御部12、無線信号処理部13、高周波部14を備えている。
なお、本例の通信装置1における各機能部11〜14の基本的な動作は、従来の通信装置61(図12参照)における機能部71〜74と同様であり、以下では、相違部分について主に説明する。
【0024】
本例の通信装置1では、通信方式制御部16が、外部の制御端末3から入力される通信方式指示情報や、無線アクセス制御部12から提供されるキャリア使用率(サブキャリアの使用率を示す値)や回線使用率(無線回線の使用率を示す値)などの情報に基づき、現時点における通信方式、キャリア使用率、回線使用率の各情報を格納した通信方式情報をQoS機能部15へ渡すようにしてある。
キャリア使用率は、一例として、下記(式1)により算出できる。
Cr=Cn/Cmax ・・・(式1)
ここで、Crはキャリア使用率であり、Cnは現在のキャリア使用数であり、Cmaxは通信装置で使用可能な最大キャリア数である。なお、本算出例は、OFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)又はOFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)で複数本のサブキャリアを使用することを前提とする。なお、各サブキャリアの品質(例えば等化誤差)を求め、品質の悪いサブキャリアを使用しないようにしてもよい。また、OFDMAで使用周波数の割り当てを行ってもよい。
また、回線使用率は、一例として、下記(式2)により算出できる。
回線使用率=単位時間あたりのキャリア検出時間 ・・・(式2)
ここで、単位時間としては、例えば1秒間が用いられる。
【0025】
図2には、本例の通信装置1におけるQoS機能部15の構成例を示してある。
本例のQoS機能部15は、IP電話端末やPCなどの通信端末2からIPパケットの入力を受けるパケット入力部に配置された入力スケジューラ21と、入力されたIPパケットを保管する優先度別(サービス別)のパケットキュー22と、パケットキュー22からIPパケットを取り出すパケット出力部に設けられた出力スケジューラ23と、遅延情報を保持する遅延情報部24と、通信方式情報を保持する通信方式情報部25(Communication Information Base;CIB)を有する。
すなわち、従来の通信装置61におけるQoS機能部75(図13参照)に、遅延情報部24と通信方式情報部25を追加した構成となっている。
【0026】
図3には、本例の通信装置1における通信方式情報部25の構成例を示してある。
本例の通信方式情報部25は、通信方式制御部16から渡された最新(現時点)の通信方式情報を保持する通信方式情報保管部31と、パケット連結数の計算用パラメータに用いられる重み付け値を保持する重み付け値保管部32と、パケット連結数の計算用パラメータを出力するパケット連結数計算用パラメータ送信部33を有する。
【0027】
通信方式情報保管部31は、通信方式情報として、通信方式、キャリア使用率、回線使用率の現在値を保持する。キャリア使用率は、「1」を100%とし、自己が使用可能な使用率に応じて0.00〜1の範囲で表される。また、回線使用率は、無線回線が自己或いは他者によって使用されている率であり、0.00〜1(1が100%)の範囲で表される。
重み付け値保管部32は、重み付け値として、通信方式別重み、サービス別重み、宛先別重みの設定値を保持する。通信方式別重みは、通信方式に応じて予め定められた重み付け値である。サービス別重みは、サービスに応じて予め定められた重み付け値である。宛先別重みは、宛先に応じて予め定められた重み付け値である。
【0028】
本例では、通信方式別重みとして、CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access/Collision Avoidance)方式について“0.8”が設定され、プリアサイン方式について“1”が設定されている。なお、プリアサイン方式については後述する。
また、サービス別重みとして、音声データについて“0.2”が設定され、映像データについて“0.4”が設定され、メールデータについて“1.0”が設定されている。
また、宛先別重みとして、宛先Aについて“1”が設定され、宛先Bについて“0.8”が設定され、ブロードキャストについて“0”が設定されている。
本例では、0〜1の範囲の値が重み付け値として設定されている。なお、これら重み付け値は一例に過ぎず、運用形態などに応じて予め定めたものを用いればよい。
【0029】
パケット連結数計算用パラメータ送信部33は、出力スケジューラ23からの情報などにより特定される重み付け値(通信方式重み、サービス重み、宛先重み)、及び、現時点のキャリア使用率、回線使用率を、パケット連結数の計算用パラメータとしてパケット出力部23へ出力する。
【0030】
通信方式重みとしては、現在の通信方式(通信方式情報保管部31の通信方式の設定値)に対応する通信方式別重み(重み付け値保管部32の通信方式別重みの設定値)が出力される。図3の例では、現在の通信方式がCSMA/CAなので、これに対応する通信法識別重みの設定値である“0.8”が出力されている。
サービス重みとしては、出力スケジューラ23から与えられる送信予定サービスに対応するサービス別重み(重み付け値保管部32の通信方式別重みの設定値)が出力される。図3の例では、送信予定サービスがメールなので、これに対応するサービス別重みの設定値である“1”が出力されている。
宛先重みとしては、出力スケジューラ23から与えられる送信予定宛先に対応する宛先別重み(重み付け値保管部32の宛先別重みの設定値)が出力される。図3の例では、送信予定宛先が宛先Aなので、これに対応する宛先別重みの設定値である“1”が出力されている。
キャリア使用率としては、現在のキャリア使用率(通信方式情報保管部31のキャリア使用率の設定値)が出力される。図3の例では、現在のキャリア使用率である“1”が出力されている。
回線使用率としては、現在の回線使用率(通信方式情報保管部31の回線使用率の設定値)が出力される。図3の例では、現在の回線使用率である“0.00”が出力されている。
【0031】
図4には、本例の通信装置1における遅延情報部24の構成例を示してある。
本例の遅延情報部24は、遅延情報を保持する遅延情報保管部43と、遅延情報を更新する遅延情報更新部41,42,45と、遅延情報を送信する遅延情報送信部44を有する。
【0032】
遅延情報保管部43は、音声データ、動画データ、メールデータといったサービス別に、遅延情報として、パケット入力時間、パケット出力時間、現在のパケット格納率、遅延許容時間、パケット破棄時間、無線送信待機時間、許容超過時無線送信待機時間を保持する。
パケット入力時間は、該当するパケットキュー22に最後にIPパケットを追加(挿入)した時間(最終パケット入力時間)である。
パケット出力時間は、該当するパケットキュー22から最後にIPパケットを取り出した時間(最終パケット出力時間)である。
パケット格納率は、該当するパケットキュー22の現時点での格納率である。
遅延許容時間は、IPパケットの無線送信の遅延を許容する時間である。
パケット破棄時間は、IPパケットを破棄するまでの時間である。
無線送信待機時間は、IPパケットの無線送信を待機する時間である。
許容超過時無線送信待機時間は、該当するパケットキュー22でのパケット保持時間が遅延許容時間を越えたIPパケットについての無線送信待機時間である。
【0033】
遅延情報更新部42は、各サービスの遅延許容時間、パケット破棄時間、無線送信待機時間、許容超過時無線送信待機時間を設定する。この設定処理は、例えば、通信装置1の運用前に事前処理として実施される。
遅延情報更新部41は、IPパケットがパケットキュー22に追加(挿入)される度に、そのパケットキュー22に対応するサービスのパケット入力時間及びパケット格納率を更新する。
遅延情報更新部45は、パケットキュー22からIPパケットが取り出される度に、そのパケットキュー22に対応するサービスのパケット出力時間及びパケット格納率を更新する。
【0034】
図5には、本例の通信装置1においてパケットキュー22に保持されるパケット情報のフォーマットの例を示してある。
本例のパケット情報は、図9を参照して説明したIPパケットに、システム時間格納部を付加した構成になっている。なお、システム時間格納部は、通信装置1が起動してから該当IPパケットがパケットキュー22に追加(挿入)された時点までの経過時間(秒)が格納される4バイトのフィールドと、経過時間(ナノ秒)が格納される4バイトのフィールドを有する。
【0035】
図6には、本例の通信装置1におけるQoS機能部15の処理シーケンス例を示してある。
通信装置1では、事前処理として、通信方式情報部25に通信方式情報が設定される(処理T1)。また、遅延情報部24に遅延情報が設定される(処理T2)。遅延情報部24は、遅延情報の設定が更新された場合には、その旨を出力スケジューラ23へ通知する(処理T3)。出力スケジューラ23は、遅延情報の更新の通知を受けると、遅延情報部24から各サービスの遅延情報を取得する(処理T4)。なお、この段階で処理する遅延情報は、遅延許容時間、パケット破棄時間、無線送信待機時間、許容超過時無線送信待機時間であり、パケット入力時間、パケット出力時間、パケット格納率は、パケットキュー22に対するIPパケットの入出力に際して処理される。
【0036】
次に、通信端末2から送信されたIPパケットが通信装置1に入力された場合について説明する。
まず、入力スケジューラ21は、IPパケットの入力を受けると、そのサービスを判別して優先度を識別し(処理T5,T6)、IPパケットにその入力時間(システム時間)を付加したパケット情報を該当するパケットキュー22へ追加(挿入)する(処理T7,T8)。また、その際に、入力スケジューラ21は、遅延情報部24のパケット入力時間、パケット格納率を更新する。
【0037】
遅延情報部24は、いずれかのパケットキュー22へIPパケットが追加された際に、その前の時点で全てのパケットキュー22が空であった場合(IPパケットが格納されていなかった場合)には、パケット入力があった旨を出力スケジューラ23へ通知する(処理T9)。
出力スケジューラ23は、パケット入力があった旨の通知を受けたことに応じて作動し、以下の処理(処理T10〜T17)を行う。
【0038】
まず、サービスの優先順(例えば、音声、映像、チャット、メールの順)に各パケットキュー22の先頭に格納されている最古のパケット情報の入力時間(最古パケット入力時間)を取得する(処理T10)。
次に、各パケットキュー22の最古パケット入力時間とシステムの現在時間との差分(パケット保持時間)を求め、パケット保持時間がパケット破棄時間より大きいパケットキュー22がある場合には、該当パケットキュー22に保持されている最古のパケット情報を破棄する(処理T11)。この処理を、該当パケットキュー22について、パケット保持時間がパケット破棄時間より小さくなるまで繰り返す。
【0039】
次に、各パケットキュー22の最古パケット入力時間と、そのパケットキュー22に対応するサービスの遅延情報の遅延許容時間とを比較し、その差が最も大きいパケットキュー22を特定し、更に、当該特定したパケットキュー22の最古パケット入力時間が遅延許容時間を超えるか否かを調べ、超えない場合には遅延情報の無線送信待機時間を選択し、超える場合には遅延情報の許容超過時無線送信待機時間を選択して、無線送信待機時間として無線アクセス制御部12へ渡すことを決定する(処理T12)。
【0040】
次に、処理T12で特定したパケットキュー22のサービスと、当該パケットキュー22の先頭に格納されている最古のパケット情報の宛先に基づいて、通信方式情報部25からパケット連結数の計算用パラメータを取得し(処理T13)、当該取得した計算用パラメータを用いてパケット連結数を算出する(処理T14)。
次に、処理T12で特定したパケットキュー22から、算出したパケット連結数だけIPパケットを取り出して連結し(処理T15,T16)、当該連結したIPパケットと、処理T12で決定した無線送信待機時間及び処理T14で算出したパケット連結数とを無線アクセス制御部12へ渡す(処理T17)。
【0041】
ここで、本例では、パケット連結数を、下記(式1)を用いて算出する。
SPktn=SPktmax×Wc×Ws×Wd×Cn×(1−Bu) ・・(式1)
(式1)において、SPktmaxは最大パケット連結数(2以上)であり、Wcは通信方式重み(0〜1)であり、Wsはサービス重み(0〜1)であり、Wdは宛先重み(0〜1)であり、Cnは現在のキャリア使用率(0.00〜1)であり、Buは現在の回線使用率(0.00〜1)である。なお、算出結果(SPktn)の小数点以下は切り上げるものとする。また、算出結果(SPktn)が“0”の場合は、SPktn=“1”とする。
【0042】
すなわち、本例では、使用する通信方式に応じてパケット連結数を調整する。例えば、プリアサイン方式を使用する場合は、CSMA/CA方式を使用する場合に比べてパケット連結数が長くなるようにする。このように、使用する通信方式に応じてパケット連結数を調整することにより、通信方式の性能をより効果的に発揮させることが可能となり、無線通信におけるサービス品質の向上を図ることができる。
【0043】
また、本例では、サービスの種類に応じてパケット連結数を調整する。例えば、音声データ、動画データ、メールデータの順にパケット連結数が長くなるようにする。このように、サービスの種類に応じてパケット連結数を調整することにより、サービス毎に異なる要求品質に適した通信を行えるようになり、無線通信におけるサービス品質の向上を図ることができる。
【0044】
また、本例では、IPパケットの宛先に応じてパケット連結数を調整する。例えば、重要度が高い宛先ほどパケット連結数が長くなるようにする。このように、IPパケットの宛先に応じてパケット連結数を調整することにより、IPパケットの宛先の相違を考慮した通信を行えるようになり、無線通信におけるサービス品質の向上を図ることができる。
【0045】
また、本例では、現在のキャリア使用率(自己が使用可能なサブキャリアの率を示す値)に応じてパケット連結数を調整する。例えば、現在のキャリア使用率が高いほどパケット連結数が長くなるようにする。このように、ユーザ数や使用チャネル数などの変化に起因して変動するキャリア使用率に応じてパケット連結数を調整することにより、現在の通信状況に適した通信を行えるようになり、無線通信におけるサービス品質の向上を図ることができる。
【0046】
また、本例では、現在の回線使用率(無線回線の使用率を示す値)に応じてパケット連結数を調整する。例えば、現在の回線使用率が低いほどパケット連結数が長くなるようにする。このように、回線使用率に応じてパケット連結数を調整することにより、現在の通信状況に適した通信を行えるようになり、無線通信におけるサービス品質の向上を図ることができる。
【0047】
以上のような構成により、本例の通信装置1によれば、エンドツーエンドでの遅延許容量を満たすサービス品質の保証が可能になる。また、無線側の帯域(周波数帯)を考慮したデータ送信で、無線回線の占有やエンドツーエンド間の冗長な輻輳制御などを回避することができる。
【0048】
ここで、本例では、出力スケジューラ23の機能によりパケット連結手段が構成されており、出力スケジューラ23及び通信方式情報部25の機能によりパケット連結数決定手段が構成されている。
【0049】
なお、本例では、ROM(Read Only Memory)等の記憶部に格納された制御プログラムをプロセッサにより実行することで、上記のQoS機能部15を通信装置1上に実現しているが、専用のハードウェア回路により実現する構成にしてもよい。
また、本例では、通信装置1として無線ルータを用いているが、これに限定するものではなく、例えば、QoS機能のみを備えた専用装置(すなわち、無線ルータとは別体の装置)を用いる構成にしてもよい。
また、本例の通信装置1は、例えば、複数の無線機から構成され、1つ以上の無線機を経由して通信を行う無線通信システムに適用される。
【0050】
(プリアサイン方式について)
上記の説明で通信方式の一例に挙げたプリアサイン方式について説明する。
プリアサイン方式は、概略的に、予め応答順序が設定された複数の送受信局からなる無線通信システムにおいて、複数の送受信局の一つがデータを送信すると、当該データの送信元も含め、応答順序が上位の送受信局から当該データに対する応答信号を順次送信するように構成したものである。
このような構成によれば、送信元となる局と受信先となる複数の局との間の伝搬遅延、及び、各受信先からの応答信号の衝突回避を考慮した待ち時間を設定する必要が無く、応答信号の送信を効率的に行うことができる。
【0051】
プリアサイン方式による送受信シーケンスを説明する。
以下では、「#n」(n=1〜5)で表される応答順序(1を最上位とし、5を最下位とする)が設定された5局の送受信局を有する無線通信システムにおいて、送受信局#2から方式・情報(=送受信局#2が送りたい情報)の送信が開始された場合を例に説明する。
【0052】
送受信局#2から方式・情報(通信方式などを表すデータや、音声や画像などの情報を表すデータ)の送信がなされると、受信可能な各送受信局は送信された方式・情報の受信を行う。なお、他の送受信局の応答信号の送出も該送受信局において方式・情報の受信が完了することが前提となる。
【0053】
この受信を行った各送受信局のうち、まず応答順序最上位の送受信局#1が方式・情報の受信を完了するとACK信号を出力する。
この送受信局#1のACK信号を受けて、送受信局#1よりも下位の応答順序を持つものの内、最上位の(すなわち、次の順序の)送受信局#2がACK信号を出力する。ここで、送受信局#2は方式・情報を送信した送信元である。しかし、送信元であってもACK信号を出力することで、応答順序がより下位の送受信局にACK信号を出力することを促す点に本プリアサイン方式の特徴がある。
【0054】
送受信局#2のACK信号を受信した際に送受信局#3が送受信局#2からの方式・情報の受信を終えていれば、送受信局#2のACK信号への応答として、送受信局#3はACK信号を出力する。
以下同じ様に、応答順序が直近上位の送受信局のACK信号を受信したら、各送受信局はACK信号を出力する。
応答順序が自局か否かの判断は、受信した応答信号の数をカウントアップすることによって行う。また、応答信号に、当該応答信号の送信元の応答順序を示す情報を含め、受信した他局の応答信号に含まれる応答順序に基づいて自局の応答順序になったか否かを判断してもよい。
【0055】
応答順序最下位の送受信局#5からの応答信号の受信が終了すると、これ以上のACK信号は返ってこない。したがって、送信元である送受信局#2が送受信局#5のACK信号を受信すると、方式・情報の通信の終了信号を送信する。
この際、ACK信号の送信元を調べることで優先順位最下位の送受信局からの送信かを確認する、ACK信号の回数を自身の送信したものも含めてカウントして加入局数までのカウントアップした時点で全ての送受信局からの送信かを確認する、など確認方法は各種ある。どの手法を選択するかは設計事項である。
【0056】
次に、上記の送受信シーケンスにおいて、送受信局の1つがACK信号を受信できなかった場合について説明する。
各送受信局は常に応答タイミングでタイマをセットし、タイマを動作させる。タイムアウトまでの間に他の応答が来ればタイマをクリアし、再度タイマの動作を最初から開始する。一方、自身がACK信号を送出する場合、すなわち受け取ったACK信号が、応答順序が自局の順序の一つ前の送受信局からのものである場合には、ただちに、自身がACK信号を出力する動作に移行する(ただし方式・情報の完了が要件となる)。
【0057】
ここで、送受信局#3の出力したACK信号を送受信局#4が受信できなかった場合を想定する。
送受信局#4は、送受信局#2が出力したACK信号を受信したことで、タイマをリセットし、再度動作させる。その後、送受信局#3の出力するACK信号を待つこととなるが、送受信局#3の出力するACK信号が来ず、結果として、送受信局#4が動作させるタイマでタイムアウトが発生する。
このタイムアウトの発生により、送受信局#4は送受信局#3の出力するACK信号の受信に失敗したものとみなす。これにより送受信局#4は、自身が方式・情報の受信を完了していれば、ただちにACK信号を送出する。以降の措置は、上述した正常時(全ての送受信局がACK信号を受信できた場合)の処理シーケンスと同様である。
【符号の説明】
【0058】
1,61:通信装置、 2,62:通信端末、 3,63:制御端末、
11,71:ネットワーク部、 12,72:無線アクセス制御部、 13,73:無線信号処理部、 14,74:高周波部、 15,75:QoS機能部、 16,76:通信方式制御部、
21,81:入力スケジューラ、 22,82:パケットキュー、 23,83:出力スケジューラ、 24:遅延情報部、 25:通信方式情報部、
31:通信方式情報保管部、 32:重み付け値保管部、 33:パケット連結数計算用パラメータ送信部、
41,42,45:遅延情報更新部、 43:遅延情報保管部、 44:遅延情報送信部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一のネットワークから出力されたIPパケットを複数の通信方式の内のいずれかを使用した無線通信により他のネットワークへ送信する通信装置において、
同じ宛先のIPパケットを連結するパケット連結手段と、
前記パケット連結手段によるIPパケットの連結数を、無線通信に使用する通信方式に応じて決定するパケット連結数決定手段と、
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置において、
前記パケット連結数決定手段は、更に、前記パケット連結手段によるIPパケットの連結数を、サブキャリアの使用率に応じて決定する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の通信装置において、
前記パケット連結数決定手段は、更に、前記パケット連結手段によるIPパケットの連結数を、IPパケットの宛先に応じて決定する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項1】
一のネットワークから出力されたIPパケットを複数の通信方式の内のいずれかを使用した無線通信により他のネットワークへ送信する通信装置において、
同じ宛先のIPパケットを連結するパケット連結手段と、
前記パケット連結手段によるIPパケットの連結数を、無線通信に使用する通信方式に応じて決定するパケット連結数決定手段と、
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通信装置において、
前記パケット連結数決定手段は、更に、前記パケット連結手段によるIPパケットの連結数を、サブキャリアの使用率に応じて決定する、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の通信装置において、
前記パケット連結数決定手段は、更に、前記パケット連結手段によるIPパケットの連結数を、IPパケットの宛先に応じて決定する、
ことを特徴とする通信装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−106088(P2013−106088A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246765(P2011−246765)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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