説明

通線方法及び通線器

【課題】既設管路内に細径低摩擦インドア光ファイバを通線するときの作業性を向上できる通線方法を提供する。
【解決手段】光ファイバ心線とテンションメンバとを外被により一括して被覆してなる細径低摩擦インドア光ファイバを管路内に通線する際に、細径低摩擦インドア光ファイバの一端側から外被を除去してテンションメンバを所定長だけ露出させる。このテンションメンバの露出部分に被覆材を接着させるとともに、被覆材の外形が当該細径低摩擦インドア光ファイバの外形と同等以下になるように加工する。そして、この加工された部分を先端として管路内に押し込むことにより細径低摩擦インドア光ファイバを通線する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設管路内への通線作業に好適な細径低摩擦インドア光ファイバの通線方法及び通線器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信需要の増加に伴い、光ファイバを一般家庭に直接引き込んで高速通信サービスを実現するFTTH(Fiber To The Home)が急速に拡大している。既築の集合住宅においてFTTHを構築する場合、電話線などのメタルケーブルが布設されている既設管路の空きスペースを利用してインドア光ファイバを布設することが多い。
このように、既設管路内にインドア光ファイバを布設する場合、既設ケーブルをかいくぐってインドア光ファイバを通線することとなるため、既設ケーブルとの摩擦抵抗が大きいと通線作業が極めて困難となる。そこで、既設管路内にインドア光ファイバを効率よく多条布設するために、細径化・低摩擦化を実現した細径低摩擦インドア光ファイバ(以下、細径低摩擦インドア)が提案されている(例えば非特許文献1)。
【0003】
この細径低摩擦インドアを用いることで、管路内に細径低摩擦インドア自体を押し込んで通線する押込工法が可能となる。この押込工法では、細径低摩擦インドアの先端面が既設ケーブルに接触して既設ケーブル表面にキズが生じるのを防止するため、また、蛇腹状の管路の内面凹凸や曲がり部での引っかかりを回避するために、細径低摩擦インドアの先端部をほぼ180°折り返して、この折畳部分を管路内に押入して通線作業が行われている(図7参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】既存集合住宅における新たな光配線技術の開発,NTT技術ジャーナル 2009 vol.21 No.6
【非特許文献2】シーキューブ株式会社,細径インドア光ファイバ用キャップ,通信興業新聞,平成21年10月12日
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の通線方法では、細径低摩擦インドアの先端部を折り返して通線するため、折畳部分の高さが細径低摩擦インドアの高さの2倍以上となってしまい、管路内における占積率が大きくなってしまう。そして、布設する管路の途中に潰れ等の不具合が発生している場合には、この管路の潰れ部分で細径低摩擦インドアの先端部が行き場を失い詰まる確率が高くなる。
さらに、先端部の詰まりを回避するために、通線している細径低摩擦インドアを前後に動かす作業を行うと、折り返されていた先端面が既設ケーブルに接触して既設ケーブル表面を傷つけてしまう虞がある。また、折畳部分が既設ケーブルを挟み込むと、通線しようとしている細径低摩擦インドア自体の身動きが取れなくなり、管路内から取り除くことすらできなくなってしまう虞がある。
【0006】
このように、細径低摩擦インドアを引き戻すときの引っ掛かりを防止する技術として、先端部にキャップを取り付けることが提案されている(例えば非特許文献2)。しかしながら、キャップを取り付けることで少なからず外形が大きくなるので、管路の潰れ部分で細径低摩擦インドアが詰まる確率は高くなる。また、引き戻し時にキャップが外れてしまうと、管路内に異物として残ることとなり、その後の細径低摩擦インドアの布設に支障を来す虞がある。
【0007】
本発明は、既設管路内に細径低摩擦インドアを通線するときの作業性を向上できる細径低摩擦インドアの通線方法及び通線器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するためになされたもので、
光ファイバ心線とテンションメンバとを外被により一括して被覆してなる細径低摩擦インドア光ファイバを管路内に通線する通線方法であって、
前記細径低摩擦インドア光ファイバの一端側から前記外被を除去して前記テンションメンバを所定長だけ露出させ、
このテンションメンバの露出部分に被覆材を接着させるとともに、前記被覆材の外形が当該細径低摩擦インドア光ファイバの外形と同等以下になるように加工し、
この加工された部分を先端として管路内に押し込むことにより通線することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の通線方法において、前記被覆材の先端部に丸め加工を施すことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の通線方法において、前記被覆材は、所定の温度で径方向に収縮する熱収縮チューブで構成され、
前記テンションメンバの露出部分に前記熱収縮チューブを挿通し、この熱収縮チューブを加熱して収縮させることにより前記テンションメンバの露出部分に接着させるとともに、この熱収縮チューブの外形が当該細径低摩擦インドア光ファイバの外形と同等以下になるように加工することを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の通線方法において、前記熱収縮チューブと前記テンションメンバの間に接着性樹脂を配置することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、光ファイバ心線とテンションメンバとを外被により一括して被覆してなる細径低摩擦インドア光ファイバを管路内に通線する通線方法であって、
テンションメンバが前記細径低摩擦インドア光ファイバと同様の外被により被覆されて構成された通線器の一端側から前記外被を所定長だけ除去して前記テンションメンバを露出させ、
このテンションメンバの露出部分に被覆材を接着させるとともに、前記被覆材の外形が当該通線器の外形と同等以下になるように加工し、
この加工された部分を先端として管路内に押し込むことにより、当該通線器の他端側に接続された細径低摩擦インドア光ファイバを通線することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の通線方法において、前記被覆材の先端部に丸め加工を施すことを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の通線方法において、前記被覆材は、所定の温度で径方向に収縮する熱収縮チューブで構成され、
前記テンションメンバの露出部分に前記熱収縮チューブを挿通し、この熱収縮チューブを加熱して収縮させることにより前記テンションメンバの露出部分に接着させるとともに、この熱収縮チューブの外形が当該通線器の外形と同等以下になるように加工することを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の通線方法において、前記熱収縮チューブと前記テンションメンバの間に接着性樹脂を配置することを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載の発明は、光ファイバ心線とテンションメンバとを外被により一括して被覆してなる細径低摩擦インドア光ファイバを管路内に通線するための通線器であって、
テンションメンバが前記細径低摩擦インドア光ファイバと同様の外被により被覆されて構成され、
一端側から前記外被が所定長だけ除去され前記テンションメンバが露出した部分に被覆材が接着され、前記被覆材の外形が当該通線器の外形と同等以下になるように加工されていることを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の通線器において、前記被覆材の先端部に丸め加工が施されていることを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10に記載の通線器において、前記被覆材は、所定の温度で径方向に収縮する熱収縮チューブで構成され、
前記テンションメンバの露出部分に挿通された熱収縮チューブが加熱され収縮することにより前記テンションメンバの露出部分に接着するとともに、この熱収縮チューブの外形が当該通線器の外形と同等以下になるように加工されていることを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の通線器において、前記熱収縮チューブと前記テンションメンバの間に接着性樹脂層を有することを特徴とする。
【0020】
なお、請求項1における「被覆材の外形が当該細径低摩擦インドア光ファイバの外形と同等以下」又は請求項5,9における「被覆材の外形が当該通線器の外形と同等以下」とは、被覆材の太さが細径低摩擦インドア光ファイバ又は通線器と同じか細いということであり、細径低摩擦インドア光ファイバ又は通線器の本体部より、管路内の隙間を通線しやすい形状・寸法になっているということを意味する。つまり、細径低摩擦インドア光ファイバの断面に被覆材の断面が包含されていればよく(同一の場合を含む)、外側の形状が相似形である必要はない。
また、請求項5又は9における「細径低摩擦インドア光ファイバと同様の外被」とは、細径低摩擦インドア光ファイバの外被と材質及び形状が同じということであり、摩擦係数等の外形による通線性が同程度になっていることを意味する。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、従来のように通線時に細径低摩擦インドア光ファイバの先端部を折り返す必要はない上、先端部において細径が確保されているので、既設管路内に細径低摩擦インドア光ファイバをスムーズに通線することができる。また、細径低摩擦インドア光ファイバが管路内の潰れ部分で行き詰まった場合でも、容易に引き戻すことができ、引き戻し時に既設ケーブルに絡まることもない。したがって、通線時の作業性が格段に向上される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】細径低摩擦インドア光ファイバの一般的な構成を示す平面図である。
【図2】細径低摩擦インドア光ファイバの一般的な構成を示す断面図である。
【図3】第1実施形態に係る通線方法の一例を示す図である。
【図4】第2実施形態の通線作業に用いる通線器の構成を示す平面図である。
【図5】第2実施形態の通線作業に用いる通線器の構成を示す断面図である。
【図6】第2実施形態に係る通線方法の一例を示す図である。
【図7】従来の通線作業における細径低摩擦インドア光ファイバの先端形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1,2は、細径低摩擦インドア光ファイバの一般的な構成を示す図である。なお、一般には、幅2.0mm、高さ1.6mmの略矩形断面の外形を有し、動摩擦係数が従来のインドア光ファイバの1/5程度としたものが細径低摩擦インドア光ファイバと称される。
図1,2に示すように、細径低摩擦インドア1は、光ファイバ心線11と、その両側に配置された2本のテンションメンバ(抗張力体)12,12とが、外被13により一括して被覆され構成されている。
【0024】
光ファイバ心線11は、例えばφ0.25mmのSM(シングルモード)型光ファイバ心線である。図示のように単心で構成される場合もあれば、複数心で構成される場合もある。また、複数の光ファイバを横一列に並べて一体化したテープ心線の場合もあり得る。
テンションメンバ12は、例えばφ0.5mmの鋼線や繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)などで構成され、光ファイバ心線11に許容量以上の張力が加わるのを防止する。
外被13は、例えば難燃性樹脂で構成され、例えば滑剤を添加したり、摩擦係数の小さい樹脂などで形成したり、表面に小さな凸凹状を形成するなどして低摩擦化が図られている。また、外被13には、長手方向に沿ってノッチ13aが形成されており、布設時などに特殊な工具を使用することなく、光ファイバ心線11を取り出せるようになっている。
【0025】
[第1実施形態]
第1実施形態では、細径低摩擦インドア1自身を押込工法により既設管路内に通線する場合について説明する。第1実施形態のように押込工法を採用することで、通線器を用いた引込工法に比較して、通線工程が格段に簡略化される。
【0026】
図3は、第1実施形態に係る通線方法の一例を示す図である。
まず、図3(a)に示すように、細径低摩擦インドア1の一端側から外被13を除去して光ファイバ心線11及びテンションメンバ12を所定長だけ露出させる。露出させる長さは特に限定されないが、端末加工しやすい程度のテンションメンバ12を露出させるのが望ましい(例えば10mm)。
【0027】
次に、図3(b)に示すように、露出させたテンションメンバ12の長さよりも長く切り出した熱収縮性チューブ14を、テンションメンバ12の全体を覆うように挿通する。このとき、熱収縮チューブ14の端部が細径低摩擦インドア1の外被13と重ならないように配置する。熱収縮チューブ14が細径低摩擦インドア1の外被13に重なっていると、熱収縮したときにこの部分の外形が細径低摩擦インドア1の外形よりも大きくなるためである。逆に、熱収縮チューブ14と外被13との間に若干の隙間が形成されていても構わない。
ここで、熱収縮チューブとは、所定の温度(収縮温度)で加工歪みがとれて、径方向(円周方向)に収縮するチューブである。例えば、収縮温度が70〜90℃のエチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(EVA:Ethylence-Vinyl Acetate)等で構成される。本実施形態では、収縮前の外径が4.0mmで、収縮率が60%の熱収縮チューブを用いる。
【0028】
次に、図3(c)に示すように、熱収縮チューブ14内にペレット状の接着性樹脂15を充填する。接着性樹脂15は、熱収縮チューブを加熱するときに同時に溶融されるように、例えば融点が70〜90℃のEVA等で構成される。
【0029】
次に、図3(d)に示すように、ドライヤー等で70〜90℃に加熱することにより、熱収縮チューブ14を細径低摩擦インドア1とほぼ同寸法の幅2.0mm、高さ1.6mmまで収縮させる。図3に示すように、細径低摩擦インドア1では、外被13を除去した後でも、テンションメンバ12,12とファイバ11が露出して存在し、その幅は約1.5mm、高さ0.5mmとなっている。したがって、熱収縮チューブ14が収縮すると、両側のテンションメンバ12,12に先に接触し、幅方向の収縮が強制的に止められる。このとき、高さ方向では、まだテンションメンバ12に接触しない為に、さらに収縮が進行する。したがって、熱収縮チューブ14は、最終的に四角形状を形成することとなる。
なお、収縮後のチューブが温かいうちに、指先などで細径低摩擦インドア1の外形と同寸法程度に修正することで、より寸法精度を上げることができる。
【0030】
これにより、先端部が細径低摩擦インドア1の外形と同等以下の外形に加工される。このとき、熱収縮チューブ14の中に充填された接着性樹脂15が溶融されるので、熱収縮チューブ14とテンションメンバ12が強固に接着される。また、熱収縮チューブ14の収縮に伴って先端部から接着性樹脂15がオーバーフローするので、このオーバーフローした部分を指先や篦で丸く加工する。なお、熱収縮チューブ14及び接着性樹脂15を加熱する際に外被13が変形することはないので、インドアケーブル1の性能が劣化する虞はない。
そして、丸め加工された部分を先端として、押込工法により管路内に細径低摩擦インドア1を通線する。
【0031】
このように、第1実施形態では、細径低摩擦インドア1の一端側から外被13を除去してテンションメンバ12を所定長だけ露出させ、このテンションメンバ12の露出部分に被覆材(熱収縮チューブ14)を接着させるとともに、被覆材の外形が当該インドアケーブル1の外形と同等以下になるように加工し、この加工された部分を先端として管路内に押し込むことにより細径低摩擦インドア1を通線する。
【0032】
これにより、従来のように通線時に細径低摩擦インドア1の先端部を折り返す必要はない上、細径低摩擦インドア1の先端部においても細径が確保されているので、既設管路内に細径低摩擦インドア1をスムーズに通線することができる。また、細径低摩擦インドア1が管路内の潰れ部分で行き詰まった場合でも、容易に引き戻すことができ、引き戻し時に既設ケーブルに絡まることもない。したがって、通線時の作業性が格段に向上される。
また、管路内に潰れ部分があっても通線できる確率が格段に向上するので、細径低摩擦インドア1を効率よく多条布設することが可能となる。
【0033】
また、第1実施形態では、被覆材の先端部(熱収縮チューブ14の先端から圧出された接着性樹脂15)に丸め加工を施すようにしている。これにより、細径低摩擦インドア1を管路内に通線することで既設ケーブルに傷がつくのを効果的に防止できる。
【0034】
また、第1実施形態では、テンションメンバ12の露出部分に熱収縮チューブ14を挿通し、この熱収縮チューブ14を加熱して収縮させることによりテンションメンバ12の露出部分に接着させるとともに、この熱収縮チューブ14の外形が当該細径低摩擦インドア1の外形と同等以下になるように加工する。
このように極めて簡単な方法により細径低摩擦インドア1の先端加工を行うので、現場での作業効率が著しく低下することはない。
【0035】
また、第1実施形態では、熱収縮チューブ14とテンションメンバ12の間に接着性樹脂15を配置する。これにより、熱収縮チューブ14とテンションメンバ12が強固に接着されるので、通線時や引き戻し時に熱収縮チューブ14が外れて管路内に残留する可能性は極めて低くなる。
【0036】
[第2実施形態]
第2実施形態では、通線器を用いて細径低摩擦インドア1を既設管路内に通線する場合について説明する。この場合、通線器に細径低摩擦インドア1を接続する必要があり、第1実施形態で説明した押込工法に比較して工程は多くなるが、細径低摩擦インドア1よりも通線器の曲げ剛性は高いため、管路内の潰れ部分に通線できる確率が高くなる、すなわち管路内に効率よく多条布設できるという利点がある。
【0037】
図4,5は、第2実施形態の通線作業に用いる通線器の構成を示す図である。
図4、5に示すように、通線器2は、3本のテンションメンバ(抗張力体)21,21,21が、外被23により一括して被覆され構成されている。
テンションメンバ21は、例えば鋼線や繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)などで構成される。テンションメンバ21の材質や本数などの構成は、通線器2の曲げ剛性が細径低摩擦インドア1より高くなるように、また適度に曲がるように、適宜選定される。
外被23は、細径低摩擦インドア1と同様に、例えば難燃性樹脂で構成され、例えば滑剤を添加したり、摩擦係数の小さい樹脂などで形成したり、表面に小さな凸凹状を形成するなどして低摩擦化が図られている。また、外被23の外形は細径低摩擦インドア1と同じとされ、通線器としては必須でないが長手方向に沿ってノッチ23aが形成されている。
すなわち、通線器2は、図1,2に示す細径低摩擦インドア1において、光ファイバ心線11をテンションメンバ21に置換した構成となっている。
【0038】
なお、通線器2の長さは、例えば細径低摩擦インドア1を通線する既設管路の長さ+10m程度とすればよい。また、通線器2の片端には細径低摩擦インドア1が接続される。例えば、外被23を所定長だけ除去し、露出したテンションメンバ21のうち1本だけを残して、これに細径低摩擦インドア1のテンションメンバ12を接続する。また例えば、通線器2の片端に、細径低摩擦インドア1を容易に接続可能なコネクタ部を設け、これに細径低摩擦インドア1のテンションメンバ12を接続するようにしてもよい。
【0039】
このように、第2実施形態では、テンションメンバ21が細径低摩擦インドア1と同様の外被23により被覆されて構成された通線器2を用いる。
第1実施形態のように、押込工法で細径低摩擦インドア1を通線する場合、細径低摩擦インドア1の先端部に余計な負荷が加わることが多く、細径低摩擦インドア1が損傷する可能性を否定できない。これに対して、第2実施形態の通線器を用いることで、通線時に予期せぬ負荷が加わり細径低摩擦インドア1が損傷する可能性は極めて低くなる。通線器2を通線する際に、既設管路内に細径低摩擦インドア1が通線し得る通線路が確実に形成されるためである。逆に、既設管路内に細径低摩擦インドア1を通線できるスペースがないことも簡単に判別できる。
【0040】
図6は、第2実施形態に係る通線方法の一例を示す図である。
まず、図6(a)に示すように、通線器2の一端側から外被23を除去してテンションメンバ21を所定長だけ露出させる。露出させる長さは特に限定されないが、端末加工しやすい程度のテンションメンバ21を露出させるのが望ましい(例えば10mm)。
【0041】
次に、図6(b)に示すように、露出させたテンションメンバ21の長さよりも長く切り出した熱収縮性チューブ24を、テンションメンバ21の全体を覆うように挿通する。このとき、熱収縮チューブ24の端部が通線器2の外被23と重ならないように配置する。熱収縮チューブ24が通線器2の外被23に重なっていると、熱収縮したときにこの部分の外形が通線器2の外形よりも大きくなるためである。逆に、熱収縮チューブ24と外被23との間に若干の隙間が形成されていても構わない。
熱収縮チューブ24は、第1実施形態と同様に、例えば、収縮温度が70〜90℃のEVA等で構成される。
【0042】
次に、図6(c)に示すように、熱収縮チューブ24内にペレット状の接着性樹脂25を充填する。接着性樹脂25は、第1実施形態と同様に、例えば融点が70〜90℃のEVA等で構成される。
【0043】
次に、図6(d)に示すように、ドライヤー等で70〜90℃に加熱することにより、熱収縮チューブ24を通線器とほぼ同寸法の幅2.0mm、高さ1.6mmまで収縮させる。図6に示すように、通線器2では、外被23を除去した後でも、3本のテンションメンバ21が露出して存在し、その幅は約1.5mm、高さ0.5mmとなっている。したがって、熱収縮チューブ24が収縮すると、両側のテンションメンバ21,21に先に接触し、幅方向の収縮が強制的に止められる。このとき、高さ方向では、まだテンションメンバ21に接触しない為に、さらに収縮が進行する。したがって、熱収縮チューブ24は、最終的に四角形状を形成することとなる。
なお、収縮後のチューブが温かいうちに、指先などで通線器2(細径低摩擦インドア1)の外形と同寸法程度に修正することで、より寸法精度を上げることができる。
【0044】
これにより、先端部が通線器2の本体部の外形と同等以下の外形に加工される。このとき、熱収縮チューブ24の中に充填された接着性樹脂25が溶融されるので、熱収縮チューブ24とテンションメンバ21が強固に接着される。また、熱収縮チューブ24の収縮に伴って先端部から接着性樹脂25がオーバーフローするので、このオーバーフローした部分を指先や篦で丸く加工する。なお、熱収縮チューブ24及び接着性樹脂25を加熱する際に外被23が変形することはない。
そして、丸め加工された部分を先端として、押込工法により管路内に通線器2を通線する。通線器2の先端が管路の他端側に到達した後は、この通線器2を引っ張ることで、通線器2に接続された細径低摩擦インドア1を管路内に通線する。
【0045】
このように、第2実施形態では、テンションメンバ21が細径低摩擦インドア1と同様の外被23により被覆されて構成された通線器2の一端側から外被23を所定長だけ除去してテンションメンバ21を露出させ、このテンションメンバ21の露出部分に被覆材(熱収縮チューブ24)を接着させるとともに、被覆材の外形が当該通線器2の外形と同等以下になるように加工し、この加工された部分を先端として管路内に押し込むことにより、当該通線器2の他端側に接続された細径低摩擦インドア1を通線する。
【0046】
これにより、従来のように通線時に細径低摩擦インドア1の先端部を折り返す必要はない上、通線器2の先端部においても細径が確保されているので、既設管路内に細径低摩擦インドア1をスムーズに通線することができる。また、通線器2の曲げ剛性は細径低摩擦インドア1の曲げ剛性よりも高いので、管路内の空きスペースに通線器2を効率よく通線できる。また、通線器2が管路内の潰れ部分で行き詰まった場合でも、容易に引き戻すことができ、引き戻し時に既設ケーブルに絡まることもない。したがって、通線時の作業性が格段に向上される。
また、管路内に潰れ部分があっても通線できる確率が格段に向上するので、細径低摩擦インドア1を効率よく多条布設することが可能となる。
【0047】
また、第2実施形態では、被覆材の先端部(熱収縮チューブ24の先端から圧出された接着性樹脂25)に丸め加工を施すようにしている。これにより、通線器2を通線することで既設ケーブルに傷がつくのを効果的に防止できる。
【0048】
また、第2実施形態では、テンションメンバ21の露出部分に熱収縮チューブ24を挿通し、この熱収縮チューブ24を加熱して収縮させることによりテンションメンバ21の露出部分に接着させるとともに、この熱収縮チューブ24の外形が当該通線器2の外形と同等以下になるように加工する。
このように極めて簡単な方法により通線器2の先端加工を行うので、現場での作業効率が著しく低下することはない。
【0049】
また、第2実施形態では、熱収縮チューブ24とテンションメンバ21の間に接着性樹脂25を配置する。これにより、熱収縮チューブ24とテンションメンバ21が強固に接着されるので、通線時や引き戻し時に熱収縮チューブ24が外れて管路内に残留する可能性は極めて低くなる。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明を実施形態に基づいて具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
第1、第2実施形態では、熱収縮チューブ14,24内に充填した接着性樹脂15,25により、熱収縮チューブ14、24とテンションメンバ12,21を接着するようにしているが、両者を接着する方法はこれに限定されない。
例えば、テンションメンバ12,21には外被13,23と強固に接着するために接着性樹脂からなる層(接着層)が予め形成されているので、この接着層を残して外被13,23を除去すればよい。この場合、熱収縮性チューブ14,24内にポリエチレン等の熱可塑性樹脂のペレットを充填しておけば、加熱によりポリエチレンと接着層が溶融結合し、ポリエチレンと熱収縮チューブ(EVA)が溶融結合するので、熱収縮チューブ14,24とテンションメンバ12,21が強固に接着することとなる。
また、熱収縮チューブ14,24に接着性を付与した樹脂を用いることにより、熱収縮チューブ14,24そのものがテンションメンバ12,21と接着するようにしてもよい。さらには、これらの接着手法を組み合わせて適用すれば、熱収縮チューブ14,24とテンションメンバ12,21とを、より強固に接着することができる。
【0051】
また、細径低摩擦インドア1又は通線器2の先端部を、熱収縮チューブを用いて加工するのではなく、本体部よりも細径のキャップ部材を被せるようにしてもよい。ただし、作業面、コスト面から熱収縮チューブを用いるのが望ましい。
第2実施形態のように通線器2を用いて細径低摩擦インドア1を既設管路内に通線する場合には、通線作業が行われる現場において通線器2の先端加工を行うようにしてもよいし、予め先端加工がなされた通線器2を用いるようにしてもよい。
また例えば、熱収縮チューブ14,24として、接着性を付与し、且つ該熱収縮チューブの肉厚を厚くしたものを用いることもできる。この場合、熱収縮チューブを収縮させることでテンションメンバと熱収縮チューブを強固に接着することができる。
【0052】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0053】
1 細径低摩擦インドア光ファイバ
11 光ファイバ心線
12 テンションメンバ
13 外被
14 熱収縮性チューブ
15 接着性樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバ心線とテンションメンバとを外被により一括して被覆してなる細径低摩擦インドア光ファイバを管路内に通線する通線方法であって、
前記細径低摩擦インドア光ファイバの一端側から前記外被を除去して前記テンションメンバを所定長だけ露出させ、
このテンションメンバの露出部分に被覆材を接着させるとともに、前記被覆材の外形が当該細径低摩擦インドア光ファイバの外形と同等以下になるように加工し、
この加工された部分を先端として管路内に押し込むことにより通線することを特徴とする通線方法。
【請求項2】
前記被覆材の先端部に丸め加工を施すことを特徴とする請求項1に記載の通線方法。
【請求項3】
前記被覆材は、所定の温度で径方向に収縮する熱収縮チューブで構成され、
前記テンションメンバの露出部分に前記熱収縮チューブを挿通し、この熱収縮チューブを加熱して収縮させることにより前記テンションメンバの露出部分に接着させるとともに、この熱収縮チューブの外形が当該細径低摩擦インドア光ファイバの外形と同等以下になるように加工することを特徴とする請求項1又は2に記載の通線方法。
【請求項4】
前記熱収縮チューブと前記テンションメンバの間に接着性樹脂を配置することを特徴とする請求項3に記載の通線方法。
【請求項5】
光ファイバ心線とテンションメンバとを外被により一括して被覆してなる細径低摩擦インドア光ファイバを管路内に通線する通線方法であって、
テンションメンバが前記細径低摩擦インドア光ファイバと同様の外被により被覆されて構成された通線器の一端側から前記外被を所定長だけ除去して前記テンションメンバを露出させ、
このテンションメンバの露出部分に被覆材を接着させるとともに、前記被覆材の外形が当該通線器の外形と同等以下になるように加工し、
この加工された部分を先端として管路内に押し込むことにより、当該通線器の他端側に接続された細径低摩擦インドア光ファイバを通線することを特徴とする通線方法。
【請求項6】
前記被覆材の先端部に丸め加工を施すことを特徴とする請求項5に記載の通線方法。
【請求項7】
前記被覆材は、所定の温度で径方向に収縮する熱収縮チューブで構成され、
前記テンションメンバの露出部分に前記熱収縮チューブを挿通し、この熱収縮チューブを加熱して収縮させることにより前記テンションメンバの露出部分に接着させるとともに、この熱収縮チューブの外形が当該通線器の外形と同等以下になるように加工することを特徴とする請求項5又は6に記載の通線方法。
【請求項8】
前記熱収縮チューブと前記テンションメンバの間に接着性樹脂を配置することを特徴とする請求項7に記載の通線方法。
【請求項9】
光ファイバ心線とテンションメンバとを外被により一括して被覆してなる細径低摩擦インドア光ファイバを管路内に通線するための通線器であって、
テンションメンバが前記細径低摩擦インドア光ファイバと同様の外被により被覆されて構成され、
一端側から前記外被が所定長だけ除去され前記テンションメンバが露出した部分に被覆材が接着され、前記被覆材の外形が当該通線器の外形と同等以下になるように加工されていることを特徴とする通線器。
【請求項10】
前記被覆材の先端部に丸め加工が施されていることを特徴とする請求項9に記載の通線器。
【請求項11】
前記被覆材は、所定の温度で径方向に収縮する熱収縮チューブで構成され、
前記テンションメンバの露出部分に挿通された熱収縮チューブが加熱され収縮することにより前記テンションメンバの露出部分に接着するとともに、この熱収縮チューブの外形が当該通線器の外形と同等以下になるように加工されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の通線器。
【請求項12】
前記熱収縮チューブと前記テンションメンバの間に接着性樹脂層を有することを特徴とする請求項11に記載の通線器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−169941(P2011−169941A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−30982(P2010−30982)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(399040405)東日本電信電話株式会社 (286)
【Fターム(参考)】