説明

速乾性エアコン用スプレー製品

【課題】エアコンに設けられたフィンに対して噴射する際に、エアゾール剤の液ダレや跳ね返りが少なく、洗浄力に優れ、かつ処理面での乾きが速い速乾性エアコン用スプレー製品を提供すること。
【解決手段】アルコールおよび噴射剤からなるエアゾール剤であって、アルコール/噴射剤(容積比)が30/140〜50/120であるエアゾール剤を充填したことを特徴とする速乾性エアコン用スプレー製品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアコンに設けられたフィンに対して噴射する速乾性エアコン用スプレー製品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家庭用エアコンの汚れや悪臭を除去するため、簡単に使用できるエアコン用スプレー製品が開発されている(例えば、特許文献1参照。)。
ところが、従来の製品においては、エアゾール剤(スプレーされる組成物)に水、界面活性剤等を含むために、エアコンに設けられたフィンに対して噴射する際にエアゾール剤の液ダレや跳ね返りがあり、床面や壁面、使用者にエアゾール剤が付着するという問題があった。また噴射した処理面での乾燥にある程度の時間が必要であり、改善の余地があった。
【特許文献1】特開平11−92795号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、エアコンに設けられたフィンに対して噴射する際に、エアゾール剤の液ダレや跳ね返りが少なく、洗浄力に優れ、かつ処理面での乾きが速い速乾性エアコン用スプレー製品を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、上記の目的を達成するために鋭意検討した結果、以下によって目的が達成されることを見出し本発明に至った。
1)アルコールおよび噴射剤からなるエアゾール剤であって、アルコール/噴射剤(容積比)が30/140〜50/120であるエアゾール剤を充填したことを特徴とする速乾性エアコン用スプレー製品。
2前記アルコールはエタノールであり、前記噴射剤は液化石油ガスおよびジメチルエーテルから選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の速乾性エアコン用スプレー製品。
3)前記エアゾール剤は、さらに、消臭剤、抗菌剤、防黴剤及び芳香剤から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする上記1)または2)に記載の速乾性エアコン用スプレー製品。
【発明の効果】
【0005】
本発明のエアコン用スプレー製品は、エアコンに設けられたフィンに対して噴射した際に、エアゾール剤の液ダレや跳ね返りを抑えることができる。またエアコンのフィンに対してエアゾール剤をむらなく噴射することができ、エアゾール剤を有効に塗布することが可能となるので、優れた洗浄効果を得ることができる。また、本発明は、アルコールと噴射剤からなるので処理面での速乾性に優れるので、処理後すぐにエアコンを使用することができる。更に、本発明は、界面活性剤や水を含有しないのでABS等のエアコン部材に対しての劣化がほとんどなく、またエアコン本体の電気系統への影響も防ぐことができる。
【0006】
本発明のエアコン用スプレー製品(以下、「本発明のスプレー製品」とも言う)は、アルコールおよび噴射剤からなるエアゾール剤を特定の容積比で噴射装置を備えたエアゾール容器に充填したものからなる。
本発明のスプレー製品は、アルコール/噴射剤(容積比)が30/140〜50/120であり、30/140〜40/130が好ましい。ここで、噴射剤の容積はガスが液化されたものの総量である。
該容積比が30/140より小さいと洗浄効果が低減する傾向にあり、50/120より大きいと液ダレ、跳ね返りが増加する傾向にあり、本発明の範囲で両方の効果を有効に両立することができる。
本発明のスプレー製品において、エアゾール剤はアルコールと噴射剤のみからなるものであっても、所期の添加剤を含むものであってもよい。
アルコールとしては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコールが好ましく、特にエタノールが好ましい。
噴射剤としては、液化ガスを使用するが、液化ガスと窒素、亜酸化チッ素、二酸化炭素、空気などの圧縮ガスを併用することができる。液化ガスとしては、炭化水素類{プロパン、ブタン、ペンタン等、液化石油ガス(LPG)}、ジメチルエーテル(DME)、ジフルオロモノクロロエタン、HFC−152a、HFC−134a等のハロゲン化炭化水素を用いることができる。
噴射剤としては、LPGおよびDMEから選択される少なくとも1種であることが好ましく、両者の混合が更に好ましい。混合比は、LPGが多ければ、ABS等のエアコン部材の保全に有利であるが、火気に対する安全性を高めるうえでDMEを混合することがよい。具体的には、LPG/DME(質量比)で100/0〜70/30が好ましく、95/5〜80/20が更に好ましい。
【0007】
本発明のスプレー製品は、エアコンのフィンは勿論、その内部にエアゾール剤を到達させるために、噴射力を49mN/5cm以上、好ましくは100mN/5cm以上、更には130mN/5cm以上とするのがよい。ここで噴射力とは、5cm離れたところから測定用のテンシロンに向かってエアゾール剤を直接噴射したときに、噴射されるエアゾール剤の進行方向にかかる力を測定した値である。
また、噴射量を30〜100g/30秒、好ましくは35〜70g/30秒とするのがよい。上記の噴射特性とすることでフィンに処理した際に速乾性と洗浄効果を得ることができる。
さらに本発明のスプレー製品の内圧は、25℃条件下で0.2〜0.9MPaに調整されることが好ましい。
このような噴射力や噴射量とするには、例えば、バルブのステムとアンダータップの穴径を大きくして、ベーパータップを小さくする又は無くしたり、内圧を上げる等して所期の条件に調整すればよい。具体的には、ステム穴径:0.5mm×1個以上、1.2mm×3個以下、アンダータップ穴径:1.2mm以上2.2mm以下、ベーパータップ穴径:0.7mm以下又は無し、噴射口:0.6〜1.2mm、が示される。
【0008】
本発明のエアゾール剤に含むことができる所期の添加剤としては、例えば、消臭剤、抗菌剤、防黴剤、芳香剤、防錆剤等が挙げられる。
消臭剤、抗菌剤、防黴剤としては、例えば、クロロキシレノール(PCMX)、3−ヨード−2−プロピニルブチルカーバメイト(IPBC)、イソプロピルメチルフェノール、金属イオン(銀イオン、銅イオン等の担持体や溶液等)、チモール、2−(4‘−チアゾリル)−ベンゾイミダゾール、ラウリルメタクリレート、ゲラニルクロトネート、ミリスチン酸アセトフェノン、グリオキザール、アビエチン酸、フラボノイド、ポリフェノール、柿抽出物、緑茶抽出物、グレープフルーツ抽出物、グレープフルーツ種子抽出物、ユズ抽出物、モウソウチク抽出物、モウソウチク乾留物、ユズ種子抽出物、オレンジ抽出物、ルイボス茶抽出物、ユッカ抽出物、オリーブ葉エキス末、キトサン、ウーロン茶抽出物、ブドウ種子エキス、ムルレイヤエキス、シソオイル、チャ乾留物、甘草油性抽出物、シソの実エキス、からし抽出物、ブロッコリーパウダー、ショウガ抽出物、エゴノキ抽出物、カワラヨモギ抽出物、ホオノキ抽出物、レンギョウ抽出物、モミガラ抽出物、ペッパー抽出物、柑橘種子抽出物、生大豆抽出物、ピメンタ抽出物、果実抽出物、果実種子抽出物等の各種植物抽出物、等の1種又は2種以上を組合わせて用いることができる。
これらの総量はアルコール及び噴射剤の総質量に対して0.1〜5質量%として用いることができる。
芳香剤としては、例えば、バラ油、シナモン油、ハッカ油、オレンジ油、レモン油、グレープフルーツ果皮抽出物、ブドウ果皮抽出物、ライム油、プチグレン油、ユズ油、ネロリ油、ベルガモット油、ラベンダー油、ラバンジン油、アビエス油、ベイ油、ボアドローズ油、イランイラン油、シトロネラ油、ゼラニウム油、ペパーミント油、スペアミント油、ユーカリ油、レモングラス油、パチュリ油、ジャスミン油、ローズ油、シダー油、ベチバー油、ガルバナム油、オークモス油、パイン油、樟脳油、芳樟油、テレビン油、クローブ油、クローブリーフ油、カシア油、ナツメグ油、カナンガ油、タイム油等の精油類;リナリルアセテート、C6〜C12の各種脂肪族アルデヒド、フェニルエチルアルコール、ベンジルアセテート、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメイト、バニリン、ニトロムスク類、ガラクソライド、トナリド、ペンタリド、サンタレックス、アミルサリシレート、アミルアセテート、γ−ウンデカラクトン、メチルフェニルグリシド酸エチル、ヘリオトロピン、ピネン、リナロール、メントール、シトラール、シトロネラール、ボルネオール等の芳香物質類;これらの混合物;これらの配糖体、等の1種又は2種以上を組合わせて用いることができる。
これらの総量はアルコール及び噴射剤の総質量に対して0.01〜1質量%用いられる。
上記の添加剤の中には、消臭剤、抗菌剤、防黴剤、芳香剤等に加えて、ウイルス不活化作用を有するものもあり、当該目的のために用いてもよく、例えば、グレープフルーツ種子抽出物、ユズ抽出物、モウソウチク抽出物等が挙げられる。
また必要に応じて、殺虫剤や忌避剤(虫除け剤)等をエアゾール剤に配合してもよく、例えば、天然ピレトリン、ベンジルアルコール、ハッカ油、シトロネラ油、ユーカリ油、ゲラニウム油、蚊連草等の天然物、さらにはピレスロイド系化合物等の安全性の高い成分を用いるのがよい。
更に、エアゾール剤に必要に応じて、アルコール以外の有機溶媒、消泡剤、コーティング等を用いることもできる。
この他にも、例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸アンモニウム、亜硝酸ナトリウム、安息香酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等の防錆剤、アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール等の安定化剤、パラオキシ安息香酸エステル、第四級アンモニウム塩、フェノキシエタノール等の防腐剤、カテキン等のアレルゲン不活化剤、微細酸化チタン等の光触媒、リン酸チタニア等の無光触媒、ジブチルヒドロキシトルエン、ジブチルヒドロキシアニソール等の酸化防止剤、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等の光安定化剤等を所望により含有することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に本発明のスプレー製品の好ましい態様を具体的に記載するが、これらに限定されるものではない。
本発明のスプレー製品として、以下の成分組成からなる実施例1〜5を製造した。
[実施例]
実施例1
柿抽出物0.04gをエタノールにて40mLにした原液と、LPG110mLとDME20mLを混合した噴射剤とからなるエアゾール剤を、以下の噴射装置を備えた300mLのエアゾール容器に充填し、内圧0.39MPaに調整して本発明のスプレー製品を製造した。
噴射装置仕様:ステム穴径:0.45mm×2個、アンダータップ穴径:1.6mm、ベーパータップ穴径:0.7mm、噴射口:0.8mm
実施例2
銀イオン溶液0.03gをエタノールにて30mLにした原液と、LPG118.5mLとDME21.5mLを混合した噴射剤とからなるエアゾール剤を、実施例1と同じ噴射装置を備えたエアゾール容器に充填し、内圧を0.39MPaに調整して本発明のスプレー製品を製造した。
実施例3
緑茶抽出物0.15gをエタノールにて50mLにした原液と、LPG101.5mLとDME18.5mLを混合した噴射剤とからなるエアゾール剤を、実施例1と同じ噴射装置を備えたエアゾール容器に充填し、内圧を0.39MPaに調整して本発明のスプレー製品を製造した。
実施例4
イソプロピルメチルフェノール0.06gをエタノールにて30mLにした原液と、LPG118.5mLとDME21.5mLを混合した噴射剤とからなるエアゾール剤を、実施例1と同じ噴射装置を備えたエアゾール容器に充填し、内圧を0.39MPaに調整して本発明のスプレー製品を製造した。
実施例5
柿抽出物0.04g、銀イオン溶液0.04g、緑茶抽出物0.12g及びイソプロピルメチルフェノール0.08gをエタノールにて40mLにした原液と、LPG110mLとDME20mLを混合した噴射剤とからなるエアゾール剤を、実施例1と同じ噴射装置を備えたエアゾール容器に充填し、内圧を0.39MPaに調整して本発明のスプレー製品を製造した。
[実施例]
試験例1
試験スプレ−製品の作製
表1に記載の成分からなるエアゾール剤を、実施例1と同様の噴射装置を備えたエアゾール容器に充填し、内圧0.39MPaに調整して、実施例6〜8及び比較例1〜2を作製した。なお噴射剤はLPG/DME=82.4/17.6(質量比)とした。また、参考例として従来品(「エアコン洗浄スプレー」アース製薬社製)を試験に供した。
従来品は、高級アルキルアミン系界面活性剤0.1%を含む水溶液からなる原液292.7mLと、液化石油ガス127.3mLからなるエアコン用スプレー製品であって、噴射力127mN/5cm、噴射量120g/30秒である。
1)液ダレ、跳ね返り試験
以下の(1)〜(3)の記載の順に試験を進めた。
(1)感熱紙をエアコン(SANYO社製)の直下1mに敷く。
(2)エアコンの冷却フィンを露出させ、検体を170mL満遍なく噴射する。なお、噴射条件は、噴射量:42g/30秒、噴射力:147mN/5cmである。
(3)エアゾール剤との反応で形成された黒シミの数を大きさごとにカウントする。カウントは、黒シミを円状と模して下記のように分別する。
A:直径3mm以上5mm未満
B:直径5mm以上10mm未満
C:直径10mm以上
結果を表1に示した。なお、実施例6〜8では液ダレはほとんど認められなかった。
2)洗浄試験
以下の(1)〜(3)の記載の順に試験を進めた。
(1)7.5cm×7.5cmのアルミプレートに線香のヤニを付着させる(アルミプレートは事前に質量を測定した)。
(2)検体を5秒×6回(30秒)断続的に地面に対して90度に固定したアルミプレート面に垂直方向に噴射する。なお噴射条件は試験1)と同じである。
(3)乾燥後のアルミプレート質量を測定する。
以下の式より洗浄率(%)を求めた。
洗浄率(%)=100×(ヤニ付着後質量−ヤニ洗浄後質量)/(ヤニ付着後質量−ヤニ付着前質量)
上記試験を2回行い、平均を算出しその結果を表1に示した。
3)速乾性試験
15cm×15cmのプラスチック化粧板に、15cmの距離から実施例7のスプレー製品と参考例(従来品)を5g噴射して乾燥時間を測定した。なおプラスチック化粧板は地面と水平に置き、試験条件は室温:22℃、RH:35%で行なった。
上記試験を2回行い、平均を算出しその結果を表1に示した。
【0010】
【表1】

【0011】
表1から、アルコール/噴射剤(容積比)が30/140〜50/120であるエアゾール剤を充填した本発明の実施例6〜8では、液ダレが見られず、さらに跳ね返りもほとんどなく、かつ高い洗浄効果を有することが分かる。
一方、界面活性剤を含む水溶液からなる原液を含む参考例(従来品)では、液ダレがみられ、跳ね返りも大きい傾向にあった。本発明のスプレー製品は、液ダレ、跳ね返りが顕著に抑制される一方、界面活性剤や水を含有していないにもかかわらず、洗浄効果は参考例と同等であった。そのうえ、本発明のスプレー製品は、噴射後、約135秒で処理面が乾燥したのに対して、参考例では30分後でも濡れが確認され、本発明のスプレー製品が従来と比べて格段に速乾性に優れることが分かる。
【0012】
試験例2
実施例1〜5を用いて、試験例1と同様の試験を行った結果、何れも実施例6〜8と同等の効果が得られた。さらに消臭剤や抗菌剤が配合されていることで、消臭、抗菌効果がより顕著なものとなることが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコールおよび噴射剤からなるエアゾール剤であって、アルコール/噴射剤(容積比)が30/140〜50/120であるエアゾール剤を充填したことを特徴とする速乾性エアコン用スプレー製品。
【請求項2】
前記アルコールはエタノールであり、前記噴射剤は液化石油ガスおよびジメチルエーテルから選択された少なくとも1種であることを特徴とする請求項1に記載の速乾性エアコン用スプレー製品。
【請求項3】
前記エアゾール剤は、さらに、消臭剤、抗菌剤、防黴剤及び芳香剤から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の速乾性エアコン用スプレー製品。

【公開番号】特開2009−155438(P2009−155438A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−334559(P2007−334559)
【出願日】平成19年12月26日(2007.12.26)
【出願人】(000100539)アース製薬株式会社 (191)
【Fターム(参考)】