説明

連結具

【課題】使用時に鈎部を閉じた状態にして用いる連結具であっても、何かの拍子に誤って鈎部が開放されて連結状態が外れてしまう不具合が発生しにくい構造の連結具を提供する。
【解決手段】フック部材13と、付勢部材24と、スライドバー25と、ガイド溝23と、把持部26を備えている。スライドバー25が鈎部11の先端面11aに当接している状態のときに、把持部26が出入り自在な段差溝61,62が前記ガイド溝23の左右両側で対向する位置に形成されている。把持部26が段差溝61に入るとスライドバー25の軸方向の移動が制限される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種物体に取り付けられたリングやロープに引掛けて連結するための鈎部を備えた連結具に関し、さらに詳細には使用時に鈎部を閉じた状態にして用いる連結具に関する。
具体的には、例えば、犬等の動物の首輪や胴輪(ハーネス)に取り付けたリングに引き綱を繋ぐ際に使用する連結具、または、ショルダバックに対し肩掛け用のベルトを着脱する際に使用する連結具に関する。さらには、ワイヤロープに繋がれた荷物をクレーンで運搬する際に、このワイヤロープを引掛けるクレーンフック(以後、クレーンフックも含めて連結具という)に関する。ここでいう連結具には、その形状によってはナス環と呼ばれるものもあるので、それらも含めて連結具と称する。
【背景技術】
【0002】
部材間を連結するときに、一方の部材に鈎部が形成された連結具を取り付けておき、他方の部材に取り付けられたリング等に対し、この連結具の鈎部を引掛けることで連結する方法が、いろいろな分野で利用されている。このような連結具では、使用中に鈎部の連結状態が容易に外れないようにするために、連結中は鈎部を閉じた状態にすることができる連結具が用いられている。
【0003】
例えば、図4は、犬の散歩用の引き綱を首輪に繋いだ状態を示す図である。引き綱51の先端部分には、C字状の鈎部11が形成された連結具50が取り付けられており、首輪52に取り付けられたリング53に対して鈎部11が着脱できるようにしてある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
図5は、この連結具50の構造を示す斜視図である。従来より、連結具50は、C字状の鈎部11とこれに続く軸部12とが一体形成されたフック部材13と、引き綱51が係止される連結リング14とからなる。フック部材13の軸部12には、鈎部11とは反対側の軸端において、大径部15、16に挟まれた小径部17が形成してある。一方、連結リング14には貫通孔14aが形成してある。そして小径部17が貫通孔14a内に嵌められるとともに、大径部15、16が貫通孔14aを両側から挟むようにしてあり、これにより連結リング14が軸部12(フック部材13)に対し、回転自在に取り付けてある。
【0005】
軸部12には、軸方向に沿って、鈎部11に近い先端面12aに開口21を有する有底の穴22が形成してある。また軸部12には開口21から軸方向に沿ってガイド溝23が形成してある。さらに穴22の内部にはコイルバネ24と軸方向に沿って移動可能なスライドバー25とが挿入してあり、スライドバー25がコイルバネ24により付勢されることで、鈎部11の先端面11aにスライドバー25の先端が当接するようにしてある。
スライドバー25には凸状の把持部26が一体に形成してあり、把持部26はガイド溝23から穴22の外側に突出するように取り付けてある。
【0006】
この連結具50では、コイルバネ24の付勢力に抗して、把持部26を一時的に接続リング14側にスライドさせることにより、スライドバー25の先端面と鈎部11の先端面11aとが分離され、これらの間に間隙が形成される。
したがって、間隙が形成された状態で、首輪52(図4)のリング53を鈎部11に引掛けることにより、リング53と鈎部11(フック部材13)とを連結することができる。その後、再びスライドバー25の先端面を鈎部11の先端面11aに当接させ、鈎部11がスライドバー25で閉じられた状態で使用する。
【0007】
鈎部が形成された連結具は、鞄等においても広く使用されている(例えば特許文献2参照)。図6は、ショルダバックの肩掛け用のベルトに使用された連結具を示す図である。この連結具60は、ナス環61と、ベルト62が係止される連結リング63とからなる。 連結リング63には貫通孔63aが形成してある。一方、ナス環61の基端には、大径部64、65に挟まれた小径部66が形成してある。そして小径部66が貫通孔63a内に嵌められるとともに、大径部64、65が貫通孔63aを両側から挟むようにしてあり、これにより連結リング63がナス環61(フック部材)に対し、回転自在に取り付けてある。
【0008】
ナス環61は、開口部67を有するナス環本体61aと、弾性部材で形成され開口部67を閉じるように、ナス環本体61aの先端61bに対し付勢するように取り付けられる係止片68とを備えている。
この連結具60では、付勢力に抗して係止片68を押圧することにより、係止片68とナス環本体61aの先端61bとが分離し、これらの間に間隙が形成される。したがって、間隙が形成された状態で、ショルダバッグ69の係止リング70を引掛けることで、リング70とナス環61(フック部材)とを連結することができる。その後は、ナス環本体61aが係止片68により閉じられた状態で使用する。
【0009】
また、上述した以外にも、例えば建設機械であるクレーンにおいて玉掛け作業等で用いる連結具(クレーンフック)においても、ワイヤロープを引掛ける鈎部に対し鈎部を閉じるための係止片を備えた類似の形状の連結具が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−141205号公報
【特許文献2】特開平11−235223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述した従来の連結具では、いずれも、他の部材と連結中はスライドバーや係止片等が作用して鈎部(ナス環)が閉じられるようにしてある。これらが正常に作動している限りは、安全に連結状態を保つことができる。
しかしながら、スライドバーや係止片を備えた連結具を使用した場合でも、誤って連結が解除されてしまうことがあった。
【0012】
例えば、図4、図5で説明したような犬の散歩用の引き綱に用いられている連結具50では、犬が動き回り、首輪のリング53が把持部26を押すような状態になることがある。そのような状態で、犬が引き続き不規則に動くと、何かの拍子に、スライドバー25が移動して間隙が形成され、リング53が外れてしまうことがあった。
同様の現象は、ショルダバッグ等の鞄に設けられた連結具(ナス環等)やクレーン用の連結具(クレーンフック)においても発生することがありうる。
【0013】
そこで、本発明は、使用時に鈎部を閉じた状態にして用いる連結具であっても、何かの拍子に誤って鈎部が開放されて連結状態が外れてしまう不具合が発生しにくい構造の連結具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するためになされた本発明の接続具は、鈎部11と軸部12とが一体に形成されるとともに鈎部11の先端面11aが軸部12の先端面12aに対向するように形成されたフック部材13と、軸部12の先端面12aから軸方向に沿って形成された穴22に内蔵される付勢部材24と、前記付勢部材24により穴22から一部が押し出されることにより先端が鈎部11の先端面11aに当接するスライドバー25とを備え、さらに、前記軸部12の先端面12aから前記穴22に沿ってガイド溝23が形成され、前記スライドバー25の側面に把持部26が形成され、前記把持部26を前記ガイド溝23の外側に突出させた状態でガイド溝23に沿ってスライドさせることによりスライドバー25の先端面25aと鈎部11の先端面11aとの間に間隙が形成される連結具であって、前記ガイド溝23の片側には、付勢部材24の付勢力に抗して把持部26をスライドさせて前記間隙を半開き状態にしたときの把持部26の移動位置を始端にしてガイド溝23から分岐し、把持部26が移動可能なロック溝31が形成され、前記ロック溝31の終端側は、把持部26がロック溝31側に入った状態でスライドバー25の先端面25aが鈎部11の先端面11aに付勢部材24によって当接される位置まで形成され、把持部26がロック溝31側に入った状態でスライドバー25の先端面25aが鈎部11の先端面11aに付勢部材24によって当接された状態で停止するとともに、把持部26が停止しているときは把持部26の軸方向の移動と回転方向の移動とがロック溝31と把持部26との接触により制限され、前記ガイド溝23のロック溝31が形成された側とは反対側には、把持部26がガイド溝23に入り、かつ、スライドバー25が鈎部11の先端面11aに当接している状態のときに、把持部26が出入り自在な段差溝61が形成され、把持部26が段差溝61に入るとスライドバー25の軸方向の移動が制限されるようにしている。
【0015】
ここで、鈎部11の形状は、C字状やナス環状が好ましいが、連結対象物に取り付けられたリング等に対して連結できる形状であれば、他の形状であってもよい。
付勢部材24はコイルバネが好ましいが、スライドバー25に付勢力を与えることができれば特に限定されない。
【0016】
本発明によれば、付勢部材24の付勢力に抗して把持部26をガイド溝23に沿ってスライドさせ、スライドバー25と鈎部11の先端面11aとの間隙を半開きにした状態の把持部26の移動位置を始端にして、ガイド溝23から分岐するロック溝31が形成してある。スライドバー25と一体に形成された把持部26は始端からロック溝31側に移動できるようにしてある。
また、ロック溝31の終端側は、把持部26がロック溝31側に入ったときにスライドバーの25の先端面25aが鈎部11の先端面11aに付勢部材24によって当接される位置まで形成してある。したがって、把持部26がロック溝31に入り終端側に近づくと、スライドバー25の先端面25aが鈎部11の先端面11aに付勢部材24によって当接される位置で停止する。このとき鈎部11はスライドバー25により閉じた状態で保持されるようになる。把持部26がロック溝31に入った状態では、ロック溝31の溝壁と把持部26との接触により、スライドバー25の軸方向への移動と回転方向の移動とが制限されるようにしてあるので、たとえ把持部26やスライドバー25を軸方向に移動させる何らかの力が働いたとしても、ロック溝31と把持部26との接触によって把持部の軸方向および回転方向の移動が制限され、その結果スライドバー25の軸方向および回転方向の移動も制限され、スライドバーの先端面25aと鍵部の先端面11aとの間が大きく開いて突発的に連結状態が外れてしまう不具合が発生しなくなる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ガイド溝23の片側にロック溝31が形成され、反対側に段差溝61が形成されるので、把持部26がガイド溝23に入っている状態(すなわち把持部26がロック溝に入れていない状態)で、何かの拍子に、把持部26が軸方向に沿って押された場合でも、通常は把持部26が軸方向だけではなく横方向にも押されているので、把持部26が段差溝61に入るか、あるいは、ロック溝31に入るようになり、スライドバー25の軸方向の移動を制限することができる。
なお、ロック溝31はガイド溝23の左右いずれに設けてもよい。
【0018】
(その他の課題を解決するための手段及び効果)
上記発明において、鈎部11と軸部12とが一体に形成されるとともに鈎部11の先端面11aが軸部12の先端面12aに対向するように形成されたフック部材13と、軸部12の先端面12aから軸方向に沿って形成された穴22に内蔵される付勢部材24と、付勢部材24により穴22から一部が押し出されることにより先端が鈎部11の先端面11aに当接するスライドバー25とを備え、さらに、軸部12の先端面12aから穴22に沿ってガイド溝23が形成され、スライドバー25の側面に把持部26が形成され、把持部26をガイド溝23の外側に突出させた状態でガイド溝23に沿ってスライドさせることによりスライドバー25の先端面25aと鈎部11の先端面11aとの間に間隙が形成される連結具であって、スライドバー25が鈎部11の先端面11aに当接している状態のときに、把持部26が出入り自在な段差溝61、62がガイド溝23の左右両側で対向する位置に形成され、把持部26が段差溝61に入るとスライドバー25の軸方向の移動が制限されるようにしてもよい。
これにより、ガイド溝23の両側に段差溝61、62が形成されるので、把持部26がガイド溝に入っている状態で、何かの拍子に、把持部26が軸方向に沿って押された場合でも、通常は把持部26が軸方向だけではなく横方向にも押されるので、把持部26が対向する段差溝61、62のいずれかに入るようになり、スライドバー25の軸方向の移動を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態である連結具の構造を示す斜視図。
【図2】図1の連結具の変形例を示す斜視図。
【図3】本発明の他の一実施形態である連結具を示す斜視図。
【図4】従来からの連結具を用いた散歩用引き綱の使用状態を示す図。
【図5】従来からの連結具の構造を示す斜視図。
【図6】従来からの連結具の構造を示す斜視図。
【図7】本発明の他の一実施形態である連結具を示す斜視図。
【図8】図7の連結具の平面図。
【図9】本発明の他の一実施形態である連結具を示す斜視図。
【図10】図9の連結具の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が
含まれることはいうまでもない。
【0021】
(実施形態1)
図1は、本発明の第1実施形態を示す連結具1の斜視図であり、図1(a)はその通常状態、図1(b)はロック状態へ移行する過渡状態、図1(c)はロック状態を示す。
ここでは犬等の散歩用の引き綱に用いる連結具を例に説明を行うが、引き綱および連結リングの形状を変更すれば、ショルダバッグ等の鞄用の連結具としても、そのまま利用することができる。また、全体的に寸法を拡大するとともに、引き綱をワイヤロープにすることにより、クレーン用の連結具(クレーンフック)としても利用することができる。
なお、図1において、図4、図5で説明した内容と同じ部分については同符号を付すことにより、説明の一部を省略する。
【0022】
連結具1は、C字状の鈎部11および軸部12が一体形成されたフック部材13と、引き綱51が繋がれる連結リング14とからなる。フック部材13および連結リング14は鉄等の金属材料で形成される。あるいは、アルミ等のダイキャストや樹脂で形成するようにしてもよい。軸部12には、鈎部11とは反対側の軸端において、大径部15、16に挟まれた小径部17が形成してある。一方、連結リング14には貫通孔14aが形成してある。そして小径部17が貫通孔14a内に嵌められるとともに、大径部15、16が貫通孔14aを両側から挟むようにしてあり、これにより連結リング14が軸部12(フック部材13)に対し、回転自在に取り付けてある。
【0023】
軸部12には、軸方向に沿って、鈎部11に近い先端面12aに開口21を有する有底の穴22が形成してある。また軸部12には開口21から軸方向に沿って線状のガイド溝23が形成してある。さらに穴22の内部にはコイルバネ24と、軸方向に沿って移動可能な棒状のスライドバー25とが挿入してあり、スライドバー25がコイルバネ24により付勢されることで、鈎部11の先端面11aにスライドバー25の先端面25aが当接するようにしてある。
スライドバー25は、側面に凸状の把持部26が形成してあり、把持部26はガイド溝23から穴22の外側に突出するように取り付けてある。
【0024】
なお、スライドバー25を穴22に挿入する時点では、鈎部11の先端面11aが軸部12の先端面12aに対向する位置から外れた位置にくるようにしておき、スライドバーを挿入した後から、鈎部11の先端面11aと軸部12の先端面12aとが対向するように鈎部11を変形するようにしている。
【0025】
また、ガイド溝23から分岐して、軸部12の軸方向に垂直な方向の横溝32、および、横溝32から軸部12の先端側に向けて直角に屈曲する縦溝33からなるL字状のロック溝31が形成される。横溝32が形成される位置は、コイルバネ24に抗してスライドバー25を軸方向にスライドさせて、スライドバー25が鈎部11から離れたときに把持部26がくる位置となるようにしてある。これにより、一旦スライドバー25をスライドさせなければ横溝32に入れないようにすることで、把持部26が突発的に横溝32に入り込まないようにしてある。なお、横溝32を形成する位置を軸部12の先端側から遠ざけるほど、把持部26をロック溝31に移行する際に大きな力を加える必要が生じることになる。
【0026】
次に、連結具1を使用する際の典型的な動作について説明する。連結具1は、使用していないときに、図1(a)に示した通常状態にしてある。
首輪52のリング53(図4)に連結具1を連結するときは、スライドバー25が完全に穴22の内部に入り込むまで、把持部26をガイド溝23に沿って強くスライドさせる。これにより、鈎部11の先端面11aと軸部12の先端面12aとの間が大きく開くので、この状態でリング53に引掛ける。
【0027】
リング53に引掛けた後、再び把持部26を元に戻していくときに、図1(b)に示すように、把持部26が横溝32の位置にきた状態で、把持部26を横溝32の方向に移動させる。そして横溝32の先まで移動させると、コイルバネ24による付勢力でスライドバー25が押され、図1(c)に示すように、把持部26が縦溝33に沿って移動するようになる。そして、スライドバー25の先端面25aが鈎部11の先端面11aに当接した位置で把持部26が停止する。
【0028】
その後は、把持部26が軸方向に移動できる範囲が縦溝33の内側に制限されることになり、たとえ把持部26が軸方向に押されてスライドバー25が軸方向に移動したとしても、スライドバー25の移動量が制限され、半開き状態にしかならない。なお、半開きになった状態での鈎部11の先端面11aとスライドバー25の先端面25aとの間隙の最大長さが、リング53の肉厚よりも小さくなるように、リング53に合わせて横溝32と縦溝33との形状を設定しておけば、半開き状態でもリング53が外れてしまう不具合を完全になくすこともできる。
また、把持部26にスライドバー25を回転させる方向の力が加わった場合であっても、同時に軸方向の力が加わらないかぎりは、縦溝33により把持部26の回転方向の移動が制限され、スライドバー25は開かない。
【0029】
一方、リング53を閉じた鈎部11から外したいときは、把持部26を縦溝33に沿って軸方向にスライドさせ、続いて、横溝32に沿って回転させる一連の動作を行うと、把持部26をガイド溝23に戻すことができる。その後、ガイド溝23内で把持部26を強くスライドさせて、鈎部11の先端面11aと軸部12の先端面12aとの間を大きく開いたときにリング53を取り外すことができる。続いて、把持部26を離すと、コイルバネ24の付勢力によって図1(a)の状態に戻される。
【0030】
図2は、連結具1を、ショルダバッグの肩掛け用ベルト62に使用するときの変形例である。この場合は、連結リング14に代えて、幅広の連結リング63を用いればよい。
【0031】
(実施形態2)
図3は、本発明の他の実施形態を示す連結具2の斜視図であり、図3(a)はその通常状態、図3(b)はロック状態へ移行する過渡状態、図3(c)はロック状態を示す。なお、図1で説明した内容と同じ部分については同符号を付すことにより、説明の一部を省略する。
本実施形態で説明する連結具2と実施形態1(図1)で説明した連結具1とは、ガイド溝23から分岐するロック溝41の形状が異なる。
【0032】
すなわち、連結具2のロック溝35は、軸部12の先端面12aに近い側に、ガイド溝23から離れるにつれて先端面12a側に近づくような傾斜壁41が形成される。
さらに、ロック溝35における軸部12の先端面12aから遠い側に、段差部42を挟んで中間壁43、停止壁44からなる二段壁が形成される。
停止壁44は、把持部26がこの停止壁44に接する位置に到達したときに、把持部26の軸方向の動きが段差部42との接触によって制限されるような寸法にしてある。
【0033】
次に、連結具2を使用する際の典型的な動作について説明する。連結具2は、使用していないときに、図3(a)に示した通常状態にしてある。
首輪52のリング53(図4)に連結具2を連結するときは、スライドバー25が完全に穴22の内部に入り込むまで、把持部26をガイド溝23に沿って強くスライドさせる。これにより、鈎部11の先端面11aと軸部12の先端面12aとの間が大きく開くので、この状態でリング53に引掛ける。
【0034】
リング53に引掛けた後、再び把持部26を元に戻していくときに、図3(b)に示すように、把持部26がガイド溝23とロック溝35との分岐位置にきた状態で、把持部26をロック溝35の方向に移動させる。すると把持部26は傾斜壁41に当接し、コイルバネ24の付勢力が働いて、把持部26は傾斜壁41に沿って自動的に誘導される。そして、段差部42を超えてロック溝35の奥にある停止壁44に当接する。そして、図3(c)に示すように、スライドバー25の先端面25aが、鈎部11の先端面11aに当接した状態でスライドバー25および把持部26が停止する。
【0035】
その後は、把持部26が軸方向に移動できる範囲が、停止壁44と段差部42により大きく制限されることになり、たとえ把持部26が軸方向に押されたとしてもほとんど移動することができない。その結果、鈎部11の先端面11aと軸部12の先端面12aとの間は開かれず、したがってリング53が外れてしまうことがなくなる。
【0036】
逆に、リング53を閉じた鈎部11から外したいときは、把持部26を傾斜壁41に沿って斜め方向にスライドさせ、段差部42を超えて把持部26がガイド溝23に入るようにする。その後、ガイド溝23内で把持部26を強くスライドさせて、鈎部11の先端面11aと軸部12の先端面12aとの間を大きく開けるとリング53を取り外すことができる。続いて把持部26を離すと、コイルバネ24の付勢力によって図3(a)の状態に戻される。
【0037】
(実施形態3)
図7、図8は、本発明の他の実施形態を示す連結具3の斜視図、平面図であり、図7(a)、図8(a)は通常状態、図7(b)、図8(b)は把持部が一時的に段差溝に入った状態、図7(c)、図8(c)は把持部をスライドさせた状態を示す。なお、図1で説明した内容と同じ部分については同符号を付すことにより、説明の一部を省略する。
本実施形態で説明する連結具3と実施形態1(図1)で説明した連結具1とは、ガイド溝23から分岐するロック溝41の他に、段差溝61を設けた点が異なる。
【0038】
すなわち、連結具3は、付勢部材24によってスライドバー25の先端面25aが鈎部11の先端面11aに当接している状態のときに、把持部26がガイド溝23内で停止している位置に段差溝61を設けるようにしてある。段差溝61は、ロック溝31を形成した側と反対側に形成され、軸方向に対し横向きの力が加わってスライドバー25が段差溝61側に回転したときに、把持部26が入るようになっている。
【0039】
このように、ガイド溝23を挟んで片側にロック溝31、反対側に段差溝61を設けることにより、把持部26がガイド溝に入った状態で、何らかの力で把持部26が軸方向に押されたときにも、軸方向に対して横向きの力が少しでも働けば、把持部26が段差溝61、または、ロック溝31に入るようになり、誤って連結状態が解除されてしまう危険性を減らすことができる。
【0040】
(実施形態4)
図9、図10は、本発明の他の実施形態を示す連結具4の斜視図、平面図であり、図9(a)、図10(a)は通常状態、図9(b)、図10(b)は把持部が一時的に段差溝に入った状態、図9(c)、図9(c)は把持部をスライドさせた状態を示す。
なお、図1で説明した内容と同じ部分については同符号を付すことにより、説明の一部を省略する。
本実施形態で説明する連結具4と実施形態3(図7、図8)で説明した連結具3とは、ガイド溝23から分岐するロック溝41の代わりに、段差溝62を設けた点が異なる。
【0041】
すなわち、連結具4は、付勢部材24によってスライドバー25の先端面25aが鈎部11の先端面11aに当接している状態のときに、把持部26がガイド溝23内で停止している位置に段差溝61、62を設けるようにしてある。段差溝61と段差溝62とは、ガイド溝23を挟んで反対側に形成され、軸方向に対し横向きの力が加わってスライドバー25が回転したときに、把持部26がいずれかの段差溝61、62に入るようになっている。
【0042】
このように、ガイド溝23を挟んで両側に段差溝61、62を設けることにより、把持部26がガイド溝に入った状態で、何らかの力で把持部26が軸方向に押されたときにも、軸方向に対して横向きの力が少しでも働けば、把持部26が段差溝61、または、段差溝62に入るようになり、誤って連結状態が解除されてしまう危険性を減らすことができる。
【0043】
なお、連結具2、3、4についても、連結リング14を幅広の連結リング63に代えることにより、そのままショルダバッグの肩掛けベルト用の連結具として使用することができる。
【0044】
さらに、連結具1〜4は、同じ形状で全体のサイズを拡大することにより、クレーン用フックのような他の用途の連結具としても利用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上説明したように、本発明にかかる連結具は、使用時に鈎部を閉じた状態にして用いる連結具として利用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1、2、3、4 連結具
11 鈎部
12 軸部
13 フック部材
14 連結リング
22 穴 23 ガイド溝
24 コイルバネ(付勢部材)
25 スライドバー
26 把持部
31 ロック溝
32 横溝
33 縦溝
35 ロック溝
41 傾斜壁
42 段差部
43 中間壁
44 停止壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鈎部(11)と軸部(12)とが一体に形成されるとともに鈎部(11)の先端面(11a)が前記軸部(12)の先端面(12a)に対向するように形成されたフック部材(13)と、
前記軸部(12)の前記先端面(12a)から軸方向に沿って形成された穴(22)に内蔵される付勢部材(24)と、
前記付勢部材(24)により前記穴(22)から一部が押し出されることにより先端が前記鈎部(11)の前記先端面(11a)に当接するスライドバー(25)とを備え、
さらに、前記軸部(12)の前記先端面(12a)から前記穴(22)に沿ってガイド溝(23)が形成され、
前記スライドバー(25)の側面に把持部(26)が形成され、
前記把持部(26)を前記ガイド溝(23)の外側に突出させた状態で前記ガイド溝(23)に沿ってスライドさせることにより前記スライドバー(25)の前記先端面(25a)と前記鈎部(11)の前記先端面(11a)との間に間隙が形成される連結具であって、
前記スライドバー(25)が前記鈎部(11)の前記先端面(11a)に当接している状態のときに、前記把持部(26)が出入り自在な段差溝(61,62)が前記ガイド溝(23)の左右両側で対向する位置に形成され、
前記把持部(26)が前記段差溝(61)に入ると前記スライドバー(25)の軸方向の移動が制限されることを特徴とする連結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−229806(P2012−229806A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−129607(P2012−129607)
【出願日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【分割の表示】特願2009−533024(P2009−533024)の分割
【原出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】