説明

連続鋳造用浸漬ノズル

【課題】本発明は、筒状耐火物に設ける金属ケースを外側と内側の二重状とし、押し付け力や応力による筒状耐火物の首部の破損を防止することを目的とする。
【解決手段】本発明による連続鋳造用浸漬ノズルは、筒状耐火物(1)の外表面の一部又は全体に設けられた内側金属ケース(12)と、前記筒状耐火物(1)のテーパ状部(11a)に対応しかつ内側金属ケース(12)に形成された金属テーパ状部(12a)と、前記内側金属ケース(12)の外側に設けられた外側金属ケース(13)とを備え、前記各金属ケース(12,13)の少なくとも一部は接合している構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造用浸漬ノズルに関し、特に、筒状耐火物に設ける金属ケースを外側と内側の二重状とし、押し付け力や応力による筒状耐火物の首部の破損を防止するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属の最終製錬工程において溶融金属はタンディッシュ等の容器からスライドゲートプレートやストッパー等を用いた流量制御装置を経て鋳造用モールドへ注入され、決まった形状へと凝固していく。図示していないが、例えばスライドゲート装置の場合、タンディッシュの底部へ設置され、上ノズル、2〜3枚のスライドプレート、下ノズル、浸漬ノズルの組み合わせで使用される。溶融金属はタンディッシュ内部から上ノズル、スライドプレート、下ノズル、浸漬ノズルを経て鋳造用モールドへ注入される。
【0003】
これらの耐火物間(例えばスライドプレートと下ノズル、下ノズルと浸漬ノズルなど)には接合部が存在するが、その接合部から大気が進入して溶融金属を酸化、品質劣化させたり、また接合部から地金差しが発生、酷い場合には操業不能に陥ったりすることがある。
この問題を解決するためには、複数の耐火物を1つとする(例えば下ノズルと浸漬ノズルを一体化する)第1方法と、耐火物同士を固定するための押しつけ圧力を高くして耐火物同士を強く密着させる第2方法とがある。
【0004】
前述の第1方法の例として、上ノズルと上プレートを一体化する方法や、別々に製造した上ノズルと上プレートとを金属ケースを用いてセットして一体化する方法がある。また同様に下プレート、下ノズルと浸漬ノズルを一体化する方法も実施されている。例えば、特許文献1の図1と図5には、プレート煉瓦及び浸漬ノズルの一体化組立体の外周面を一体形の金属ケースに直接収容した構成からなる連続鋳造用耐火物ブロックが記載されている。また、特許文献1の図3と図4には、プレートから浸漬ノズルまでを一体形の耐火物として製造し、これをワンピースの金物ケースに直接収容した構成からなる連続鋳造用耐火物ブロックが記載されている。特に、鋳造中に流量制御装置に装着された浸漬ノズルを交換できる浸漬ノズル迅速交換装置付き流量制御装置用の浸漬ノズルでは、操作性の点から、下プレートから浸漬ノズルまでを一体化した浸漬ノズル(以下、一体化浸漬ノズル)が広く使用されている。
すなわち、図10に示されるように、長尺状の筒状耐火物1の外周を含む外表面は、第1金属ケース2及び第2金属ケース3によって覆われ、各金属ケース2、3は、その接合部4が溶接接続されることにより一体状に形成されている。
【0005】
【特許文献1】実開平6−553号公報
【特許文献2】特開2001−314949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の連続鋳造用浸漬ノズルは、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
前述の一体化浸漬ノズルでは、下プレートからモールドまでの間で耐火物の目地をなくすことができるが、耐火物の全長は長くならざるを得ない。この浸漬ノズルは使用中に、鋳造用モールド内で流動する溶鋼からの振動、また浸漬ノズルを交換する際に掛かる衝撃を受け物理的なダメージが与えられることがある。こうした振動や衝撃によって一時的に発生する押し上げ力による応力5(以下、動的応力と呼ぶ)は、特にノズル首部に集中し、その応力の大きさは浸漬ノズルの長尺化に比例して大きくなる。この使用中に掛かる振動や衝撃から浸漬ノズル首部を保護するためには、浸漬ノズルのフランジ部1aから本体部にわたる部分を図10のように金属ケースで補強する方法が有効である。すなわち、一体化浸漬ノズルにおいては、プレートから浸漬ノズルまでが一体形の耐火物で製造された目地なし構造であっても、その首部を金属ケースで補強することが有効である。
【0007】
金物ケースで補強する上では、応力緩和の点から、下プレートに相当する鍔状の部分(以下、フランジ部1a)から本体部に掛けてワンピースの金属ケースでなるべく広い範囲を保護するのが良いが、特に浸漬ノズル迅速交換装置付き流量制御装置用の浸漬ノズルでは、形状的に金属ケースの絞りが深くならざるを得ないことが多く、長さの長い金属ケースが製造できないことも屡々である。この様な場合、フランジ部用と本体部用に別々の金属ケースを製造して両者を溶接で繋ぐ方法が採られる。例えば、図10及び特許文献1の図2には、筒状の金属ケースに収容した浸漬ノズルと、別の金属ケースに収容したプレートれんがをパッキングを介して接合し、金属ケース同士を一体に溶接しているが、このように別々の金属ケースを上下に溶接して一体化させた場合、接続強度が不十分なことも多く、特許文献2に示される様に両者を補強金具で補強する方法も考えられている。しかし、こうした金物による補強は手間がかかると共にコストの面で不利であるだけでなく、全周を均等に補強できないという問題がある。
【0008】
また、前述の第2方法も有効な対処方法であるが、装置の能力、耐火物の強度の面から耐火物に加圧できる押しつけ圧力には限界があり、プレート、浸漬ノズル等の耐火物は、鋳造中にその内側を溶鋼流が通過するため内側より温度が上昇して膨張していく。このため、耐火物同士は溶鋼流が通過する内孔側で突っ張りあった状態となり周辺部には隙間が生じる。この状態で図11で示されるように、浸漬ノズルの外側が押し上げ力5によって下から上に押しつけられ、押しつけ圧力が大きくなればなるほど、耐火物の首部で発生する応力(以下、静的応力と呼ぶ)は大きくなる。浸漬ノズルの強度は、プレート、その他のノズルと比較して低いため、スライドゲート型の流量制御装置の場合には、プレートの押し付け用の加圧装置とは別に浸漬ノズル用の加圧装置を設けて浸漬ノズル材質が耐えうる範囲内で押しつけ圧力(8000〜10000MPa程度)を設定するのが一般的である。しかしながら時として過大に掛かる荷重に耐えられず浸漬ノズルの首部に亀裂が入って破損することがある。このため、耐火物を保護する目的で、前述の図10及び特許文献1と2に開示されているように、浸漬ノズルの首部を金属ケースで補強し、剛性を確保する対応が取られているが現状十分ではない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による連続鋳造用浸漬ノズルは、容器からの溶融金属を鋳造用モールドに注入すると共に筒状耐火物からなる連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、前記筒状耐火物のテーパ状部に対応しかつ前記内側金属ケースに形成された金属テーパ状部を持つ前記筒状耐火物の外表面の一部又は全体に設けられた内側金属ケースと、前記内側金属ケースの外側に設けられた外側金属ケースとを備え、前記外側金属ケースと内側金属ケースの少なくとも一部は接合している構成であり、また、前記外側金属ケースは、垂直板部と水平板部とからなる断面L字型よりなり、前記水平板部で外部下方からの応力を受ける構成であり、また、前記筒状耐火物のテーパ状部に対応する前記内側金属ケースの金属テーパ状部の傾斜角度が、前記筒状耐火物の使用時における鉛直方向に対して20°から60°の範囲に設定されている構成であり、また、前記内側金属ケースと外側金属ケースとの間には、金属ケース用耐火材料が充填されている構成であり、また、前記筒状耐火物の耐火材料は、アルミナ・カーボン又はアルミナ・シリカ・カーボンよりなり、前記筒状耐火物の耐火材料は互いに材質が異なる上層及び下層の二層で形成され、前記上層の耐火材料の材質の熱膨張率が前記下層の耐火材料の材質の熱膨張率よりも大である構成であり、また、前記上層と下層の前記耐火材料の熱膨張率の差が15%以上である構成であり、また、前記内側金属ケースは丸筒形よりなり、前記外側金属ケースは四角筒形よりなる構成であり、また、前記内側金属ケース及び外側金属ケースは、四角筒形をなす構成である。
【発明の効果】
【0010】
本発明による連続鋳造用浸漬ノズルは、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、容器からの溶融金属を鋳造用モールドに注入すると共に筒状耐火物からなる連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、前記筒状耐火物のテーパ状部に対応しかつ前記内側金属ケースに形成された金属テーパ状部を持つ前記筒状耐火物の外表面の一部又は全体に設けられた内側金属ケースと、前記内側金属ケースの外側に設けられた外側金属ケースと、を備え、前記外側金属ケースと内側金属ケースの少なくとも一部は接合している構成であるため、使用中に掛かる振動や衝撃によって発生する動的応力に十分対処でき、かつ、装置からの押しつけ力と耐火物の熱膨張によって発生する動的応力に対しても首部の破損を防ぐ十分な剛性を持つ、浸漬ノズルのフランジ部から本体部に至る部分の補強を十分に行うことができる。
また、請求項2の発明によれば、前記外側金属ケースは、垂直板部と水平板部とからなる断面L字型よりなり、前記水平板部で外部下方からの応力を受ける構成とした動的応力に耐えられる外側金属ケースを得ることができる。
また、請求項3の構成によれば、前記筒状耐火物のテーパ状部に対応する前記内側金属ケースの金属テーパ状部の傾斜角度が、前記筒状耐火物の使用時における鉛直方向に対して20°から60°の範囲に設定されているため、前述の応力に対して十分な強度を有することができる。
また、請求項4の構成によれば、前記内側金属ケースと外側金属ケースとの間には、金属ケース用耐火材料が充填されているため、より一層剛性を向上させることができる。
また、請求項5の構成によれば、前記筒状耐火物の耐火材料は、アルミナ・カーボン又はアルミナ・シリカ・カーボンよりなり、前記筒状耐火物の耐火材料は互いに材質が異なる上層及び下層の二層で形成され、前記上層の耐火材料の材質の熱膨張率が前記下層の耐火材料の材質の熱膨張率よりも大である浸漬ノズルは上部材質の位置で金属ケースに拘束することができる。
また、請求項6の構成によれば、前記上層と下層の前記耐火材料の熱膨張率の差が15%以上であるため、請求項5と同様の効果を得ることができる。
また、請求項7の構成によれば、前記内側金属ケースは丸筒形よりなり、前記外側金属ケースは四角筒形よりなるため、その間に耐火材料を充填することができる。
また、請求項8の構成によれば、前記内側金属ケース及び外側金属ケースは、四角筒形をなしているため、金属ケースが互いに重合した二重構造となり、剛性の向上となる。
【0011】
従って、浸漬ノズルのフランジ部から本体部に跨る2層構成の金属ケース構造を用いているため、流量制御装置に取り付けるための外側の金属ケースと、耐火物を支える内側の金属ケースから構成され、第1に、耐火物と直接接する内側の金属ケースを、円筒形(楕円形)で、且つ、直角に屈曲することのない絞りの浅い形状にすることで、高強度の鋼材でもワンピース(一体物)で十分な厚みと十分な長さを確保できるため、振動や衝撃で発生する動的応力に対する抵抗性が高い。第2に、内側の金属ケースのテーパ状すなわち漏斗状の部分が、浸漬ノズルを下方から押しつける力の向きを垂直方向から斜めに変えて耐火物に伝えるため、浸漬ノズル首部の屈曲点で発生する静的応力を抑制する効果をもつ。第3に、内側と外側の金属ケースが少なくとも部分的に接触した2層構成とすることで、金属ケース全体の剛性が著しく向上し、動的応力に対しても静的応力に対しても変形を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、筒状耐火物に設ける金属ケースを外側と内側の二重状とし、押し付け力や応力による筒状耐火物の首部の破損を防止するようにした連続鋳造用浸漬ノズルを提供することを目的とする。
【実施例】
【0013】
以下、図面と共に本発明による連続鋳造用浸漬ノズルの好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には同一符号を用いて説明する。
図1は本発明の第1形態を示すもので、図1において符号1で示されるものはスライドバルブで用いられる連続鋳造用浸漬ノズル10を構成するための長尺状の筒状耐火物であり、この筒状耐火物1の軸心位置にはノズル10aが貫通して形成されている。
【0014】
前記筒状耐火物1の外表面11は、上部のテーパ状部11aと、このテーパ状部11aの下部に形成された直線部11bとから構成されている。
前記外表面11の一部又は全体に設けられた金属部材12Aは、内側金属ケース12と外側金属ケース13とから構成されている。
【0015】
前記内側金属ケース12は、前記テーパ状部11aと直線部11bに沿って形成され、前記テーパ状部11aにはこの形状に沿う金属テーパ状部12aが形成されている。
前記金属テーパ状部12aの外周位置には、断面L字型をなし垂直板部13a及び水平板部13bからなる前記外側金属ケース13が設けられ、前記テーパ状部11aと前記外側金属ケース13との間に形成された断面三角形をなす空間14内には金属ケース用耐火材料15が充填されている。
【0016】
前記外側金属ケース13と内側金属ケース12は、溶接等によって少なくとも一部を接合、又は、全体が接合されており、前記内側金属ケース12及び外側金属ケース13は、前記筒状耐火物1に対してその外周全体に形成されている場合、又は、部分的に形成されている場合がある。
【0017】
図2は図1の連続鋳造用浸漬ノズル10の他の平面構成及び断面図を示す第2形態であり、前記外側金属ケース13は四角状をなすと共に前記内側金属ケース12は円筒状をなし、前記垂直板部13aと水平板部13bは、一体に曲折して形成されている。
【0018】
図3は本発明の第3形態であり、前記内側金属ケース12の上部に垂直部12Bが形成され、この垂直部12Bが前記垂直板部13aの内面に接合して構成されている。
また、図4は本発明の第4形態であり、前記垂直板部13aの内面に、前記金属テーパ状部12aを図1よりも短くした構成とし、互いに溶接等によって接合している。
【0019】
また、図5は本発明の第5形態であり、前述の筒状耐火物1を二層状とし、上層1Aと下層1Bで形成されている。
また、図6は本発明の第6形態であり、前述の内側金属ケース12と外側金属ケース13との間に前記金属ケース用耐火材料15を充填しない構成を示している。
【0020】
また、図7及び図8は本発明の第7形態であり、前述の内側金属ケース12と外側金属ケース13を共に四角状として互いに重合させた構成を示している。
【0021】
図9は本発明の第8形態を示し、前記筒状耐火物1を上層1Aと下層1Bとし、図9において、Aは上層1Aの長さ、Bは内側金属ケース12の金属テーパ状部12aの長さ、Cは内側金属ケース12の長さ、Dはフランジ部1aから曲折する変曲点を示し、tは内側金属ケース12の厚さを示している。
【0022】
発明の図1の第1の形態は、タンディッシュ等の容器から溶融金属を鋳造用モールドに注入する連続鋳造用浸漬ノズル10において、タンディッシュ側に位置する流量制御装置に取り付けて使用され、流量制御装置への取り付けと使用時の押し付けに合った外側金属ケース13と、全体或いは一部に金属テーパ状部12aからなる漏斗状部を持つフランジ部1aから本体部に跨る内側のワンピースの円筒形の内側金属ケース12とからなり、少なくとも両者の一部が接合した2層構成の金属ケースにより収容される連続鋳造用ノズルである。各金属ケース12、13の厚みは内側、外側共に1.5mm以上が好ましく、より好ましくは2.0mm以上である。内側金属ケースは浸漬ノズルの首部の屈曲点Dの上下に跨って垂直方向に60mm以上が好ましく、より好ましくは100mm以上である。また内側と外側の金属ケース12、13の少なくとも一部が直接接合していないと、十分な効果を得ることはできない。
【0023】
発明の図2の第2の形態は、上記の2層構成の金属ケース12、13において、内側金属ケース12の金属テーパ状部12aの角度が使用時に鉛直方向Eに対して20度から60度の範囲にある金属ケースにより収容される連続鋳造用ノズルである。浸漬ノズルの耐火物部材は内側金属ケース12中で角度の付いている金属テーパ状部12aで支持される。この角度が小さいほど内側金属ケース12の絞りが浅く形状上長尺化が容易である。しかしながら20度より小さくなると十分に耐火物部材を支持できなくなる。一方60度を超えると内側金属ケース12の絞りが深くなり、鉄皮厚みが不均一となったり、十分に長いワンピースの内側金属ケース12の製造が困難となる。
【0024】
発明の図3及び図4の第3、第4の形態は、上記の2層構成の金属ケース12、13において、特にフランジ部分が広い迅速交換用浸漬ノズルにおいて、フランジ部1aの補強を効率化するために、外側金属ケース13と内側金属ケース12の間をキャスタブル耐火物等の金属ケース用耐火材料15で充填した2層構成、または、外側金属ケース13と内側金属ケース12とを金属製のブリッジ(図示せず)により接合した2層構成の金属ケース12、13によって収容される連続鋳造用浸漬ノズル10である。外側金属ケース13と内側金属ケース12が直接接合することで静的な応力に対する十分な剛性を確保できるが、更に外側の鉄皮と内側の鉄皮の間をキャスタブル耐火物等の耐火材料で充填、金属製のブリッジ(図示せず)で接合することで剛性は3〜4倍まで上昇することができる。使用するキャスタブル耐火物は、溶鋼と直接接することはないため、一定の強度と面精度が得られるのであれば、材料の化学組成や構成原料を問わない。但し、熱膨張率が高すぎると、鋳造開始時の熱衝撃で割れたり、鋳造時に一体物浸漬ノズルのフランジ部1aを変形させたりする。そのため、キャスタブル耐火物の乾燥後の熱膨張率は、1000℃で0.20〜0.60%の範囲であることが好ましい。
【0025】
浸漬ノズルの材料には一般的にアルミナ・カーボン又はアルミナ・シリカ・カーボン材質が使用される。使用条件によって、1つの材料である場合もあるが、複数の材質を組み合わせて使用することもある。発明の図5及び図9の第5、第8の形態は、金属ケース12、13内の筒状耐火物1のアルミナ・カーボン又はアルミナ・シリカ・カーボン材質が上層1Aと下層1Bとで互いに異なる2層の材質で構成され、上層1Aの材質の熱膨張率が下層1Bの材質の熱膨張率よりも大きい連続鋳造用ノズルである。浸漬ノズル材質を金属ケースで被覆するには、モルタルを用いてセットする方法が一般的である。均一材質の浸漬ノズル材質の場合、浸漬ノズル材質は使用中に均等に内側の金属ケースにより拘束されるが、材質を上下異なる2層として上部の材質の熱膨張率が下部の材質の熱膨張率よりも大きくすることで、浸漬ノズルは上部材質の位置で金属ケースに拘束されるようになる。上部層を接合面から長くとも漏斗状部の3分の2以下の範囲に配設することで、浸漬ノズルフランジ部から本体部に至る首部への応力をより緩和することができる。この応力緩和は2つの材質の熱膨張率の差が15%以上あることが望ましい。
【0026】
代表的な浸漬ノズル材質の化学組成は、耐食性、耐熱スポール性を考慮して、アルミナ35〜90重量%、シリカ0〜30重量%、カーボン10〜35重量%の範囲とすることが多い。熱膨張率を大きくするには、この中のアルミナ成分の比率を大きくする方法が一般的であり、上層1Aの材質として適用することができる。また、シリコンやアルミニウム等の金属、炭化珪素等の珪化物、炭化硼素等の硼化物を添加することで熱膨張率を大きくしても良い。
浸漬ノズルの製造方法は、アルミナ、シリカ、カーボン等の原料をバインダーと共に混練、成型枠に充填して望ましくはCIPにて成型して、乾燥、焼成する。本発明に関して幾つかの実施形態を述べたが、本発明は上記実施形態に限定されず、当業者が容易に応用できる均等の範囲を含むものとする。
【0027】
【表1】

【0028】
前述の表1は、本発明で用いる耐火物の品質を示すもので、各材料1〜4の1000℃における熱膨張率を示している。
【0029】
【表2】

【0030】
前述の表2は、表1の材料を用いた本発明品において、浸漬ノズル首折損への抵抗性を応力計算で調べた結果である。実施例1は接合面から本体部まで同じ材料を使用した場合であり、実施例2〜5は、テーパ状部11aの上層1Aに下層1Bと異なる材質を使用した場合である。なお、ここで言うテーパ状部11aとは、フランジ部1aから本体部への変曲点Dから上の部分全体を指す。上下を異なる2層で構成した場合、上層1Aの材質の熱膨張率が下層1Bの材質のものより高いと、金属ケース12、13の拘束が上層1Aの材質に集中することで、下層1Bの材質にある首部の変曲点Dで発生する応力が減少した。
前述の表2のほか様々なケースについて検討した結果、上層1Aの材質の熱膨張率が下層1Bの材質の熱膨張率より15%以上大きい場合、首折損防止効果が特に顕著であった。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による連続鋳造用浸漬ノズルの第1形態を示す断面図である。
【図2】本発明の第2形態を示す平面と断面図である。
【図3】本発明の第3形態を示す平面と断面図である。
【図4】本発明の第4形態を示す平面と断面図である。
【図5】本発明の第5形態を示す平面と断面図である。
【図6】本発明の第6形態を示す平面と断面図である。
【図7】本発明の第7形態を示す平面と断面図である。
【図8】図7の矢印Cからの断面図である。
【図9】本発明の第8形態を示す断面図である。
【図10】従来の連続鋳造用浸漬ノズルを示す断面図である。
【図11】図10の要部の変形状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 筒状耐火物
1a フランジ部
D 変曲点
1A 上層
1B 下層
5 押し上げ力による応力
10 連続鋳造用浸漬ノズル
11 外表面
10a ノズル
11a テーパ状部
11b 直線部
12A 金属部材
12 内側金属ケース
12a 金属テーパ状部
E 鉛直方向
13 外側金属ケース
13a 垂直板部
13b 水平板部
15 金属ケース用耐火材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器からの溶融金属を鋳造用モールドに注入すると共に筒状耐火物(1)からなる連続鋳造用浸漬ノズルにおいて、
前記筒状耐火物(1)の外表面(11)の一部又は全体に設けられた内側金属ケース(12)と、前記筒状耐火物(1)のテーパ状部(11a)に対応しかつ前記内側金属ケース(12)に形成された金属テーパ状部(12a)と、前記内側金属ケース(12)の外側に設けられた外側金属ケース(13)と、を備え、
前記外側金属ケース(13)と内側金属ケース(12)の少なくとも一部は接合していることを特徴とする連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項2】
前記外側金属ケース(13)は、垂直板部(13a)と水平板部(13b)とからなる断面L字型よりなり、前記水平板部(13b)で外部下方からの応力を受ける構成としたことを特徴とする請求項1記載の連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項3】
前記筒状耐火物(1)のテーパ状部(11a)に対応する前記内側金属ケース(12)の金属テーパ状部(12a)の傾斜角度が、前記筒状耐火物(1)の使用時における鉛直方向(E)に対して20°から60°の範囲に設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項4】
前記内側金属ケース(12)と外側金属ケース(13)との間には、金属ケース用耐火材料(15)が充填されていることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項5】
前記筒状耐火物(1)の耐火材料は、アルミナ・カーボン又はアルミナ・シリカ・カーボンよりなり、前記筒状耐火物(1)の耐火材料は互いに材質が異なる上層(1A)及び下層(1B)の二層で形成され、前記上層(1A)の耐火材料の材質の熱膨張率が前記下層(1B)の耐火材料の材質の熱膨張率よりも大であることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項6】
前記上層(1A)と下層(1B)の前記耐火材料の熱膨張率の差が15%以上であることを特徴とする請求項5記載の連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項7】
前記内側金属ケース(12)は丸筒形よりなり、前記外側金属ケース(13)は四角筒形よりなることを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の連続鋳造用浸漬ノズル。
【請求項8】
前記内側金属ケース(12)及び外側金属ケース(13)は、四角筒形をなすことを特徴とする請求項1ないし6の何れかに記載の連続鋳造用浸漬ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−255120(P2009−255120A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106604(P2008−106604)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000001971)品川白煉瓦株式会社 (112)
【Fターム(参考)】