運搬用容器
【課題】 ネスティング状態にある上段の運搬用容器の取り外しが簡単にでき、作業性が向上する。
【解決手段】
運搬用容器1の側壁部3に形成した一対の支持脚4の互いに対向する面である内側面に、下端が下面に到り且つ下に行くほど互いに離れるように傾斜した傾斜面6を形成する。ネスティング状態における上段の運搬用容器1の他端部B側を支点として一端部Aを持ち上げて該持ち上げた側に近い方の支持脚4の外側面の下端が対応するポケット部5よりも上方に位置した状態で、持ち上げた側から遠い側の支持脚4の内側面に形成した傾斜面6の少なくとも上端が対応するポケット部5の上端とほぼ同じ高さ又は上方に位置するように設定する。
【解決手段】
運搬用容器1の側壁部3に形成した一対の支持脚4の互いに対向する面である内側面に、下端が下面に到り且つ下に行くほど互いに離れるように傾斜した傾斜面6を形成する。ネスティング状態における上段の運搬用容器1の他端部B側を支点として一端部Aを持ち上げて該持ち上げた側に近い方の支持脚4の外側面の下端が対応するポケット部5よりも上方に位置した状態で、持ち上げた側から遠い側の支持脚4の内側面に形成した傾斜面6の少なくとも上端が対応するポケット部5の上端とほぼ同じ高さ又は上方に位置するように設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬用容器、詳しくは、複数の運搬用容器を積み上げ又は重ねるに当たって、内容物を収納した状態では背を高くして積み上げるスタッキング及び内容物を収納していない状態では背を低くして重ねるネスティングができる運搬用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から複数の運搬用容器1を積み重ねるに当たって、内容物を収納した状態では背を高くして積み上げるスタッキング、内容物を収納していない状態では背を低くして重ねるネスティングができる運搬用容器1が特許文献1により知られている。
【0003】
この特許文献1に示された従来の運搬用容器1は図23に示すようなものである。すなわち、上記運搬用容器1は、上方が開口した平面視長方形状をしており、運搬用容器1の上開口部の外周部にはフランジ部2が形成してある。運搬用容器1の対向する両側壁部3の外面部の各両端部付近の下部にはそれぞれ側壁部3の外面より突出した支持脚4が設けてある。一方、フランジ部2にはこれと対向する側壁部3に点対称に形成された支持脚4をはめ込むことのできるポケット部5が形成してある。そして、2つの運搬用容器1を同一向きで積み上げた状態では下段の運搬用容器1のフランジ部2上に支持脚4の下端部が載置され、下段の運搬用容器1に対して平面視180°回転して上段の運搬用容器1を重ねた状態では下段の運搬用容器1のポケット部に上段の運搬用容器1の支持脚4が没入されるように構成されたものである。
【0004】
上記のような構成の運搬用容器1は内容物を入れて上下に多段に積み上げる場合には、上記のように下段の運搬用容器1のフランジ部2上に支持脚4の下端部が載置されて背を高くしてスタッキング状態に積み上げる。
【0005】
一方運搬用容器1に内容物を入れない空の状態で多段に積み重ねるには(つまりネスティング状態にするには)、上記のように下段の運搬用容器1に対して上段の運搬用容器1を平面視で180°回転して重ねることで下段の運搬用容器1のポケット部に上段の運搬用容器1の支持脚4を没入させて背を低くして多段に重ねる。
【0006】
このようなネスティング状態にある上段の運搬用容器1を他端部Bを支点として一端部Aを持ち上げて、上段の運搬用容器1を下段の運搬用容器1から抜き取る際に、持ち上げた側から遠い方の支持脚4が対応するポケット部に引っ掛からないようにするために、同一側壁部3に形成した一対のポケット部の互いに対向する側である内側面に、上に行くほど互いに近づくような傾斜面20を形成してある。
【0007】
しかしながら、上記従来例にあっては、ネスティング状態にある上段の運搬用容器1を他端部Bを支点として一端部Aを持ち上げて、持ち上げた側に近い方の支持脚4を対応するポケット部5から引き上げる際、持ち上げた側から遠い方の支持脚4を対応するポケット部の内側面に形成した傾斜面20をガイドとして引き上げることはできるが、その後、上段の運搬用容器1を、持ち上げた側から遠い方の支持脚4を下段の運搬用容器1のフランジ部2上をスライドさせながら手前側に引きながら取り外す際、当該フランジ部2上をスライドさせている支持脚4が下段の運搬用容器1の手前側のポケット部に落下して図23のようになるおそれがある。
【0008】
この図23のように支持脚4が下段の運搬用容器1の手前側のポケット部に落下すると、当該ポケット部には外側面に傾斜面20が形成してないので、ポケットの外側面に支持脚4が当たって矢印ハ方向に引いても支持脚4が引っ掛かり、再度少し持ち上げるか、強い力で引かなくてはならないという問題がある。
【0009】
したがって、上記従来例にあっては、ネスティング状態にある上段の運搬用容器1を他端部Bを支点として一端部Aを持ち上げることで、支持脚4をポケット部から容易に引き抜くことはできるが、そのまま支持脚4をフランジ部2上をスライドさせて取り外すことはできず、作業者は途中で、両手で運搬用容器1全体を持ち上げるか、強い力で引かなくてはならず、作業性が悪くなるという問題がある。
【特許文献1】特開平10−236482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、ネスティング状態にある上段の運搬用容器の取り外しが簡単にでき、作業性が向上する運搬用容器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る運搬用容器は、上方が開口した平面視長方形状をした運搬用容器1の上開口部の外周部にフランジ部2を形成し、対向する側壁部3の外面部の各両端部付近にそれぞれ側壁部3の外面より突出した支持脚4を設け、側壁部3に支持脚4をはめ込むことのできる上方及び内方に開口したポケット部5を形成し、2つの運搬用容器1を積み上げたスタッキング状態では下段の運搬用容器1のフランジ部2上に支持脚4の下端部が載置され、下段の運搬用容器1に対して平面視180°回転して上段の運搬用容器1を重ねたネスティング状態では下段の運搬用容器1のポケット部5に上段の運搬用容器1の支持脚4が没入されるように構成されたものにおいて、上段の運搬用容器1の支持脚4が下段の運搬用容器1のフランジ部2上をスライド自在とし、上記同じ側壁部3に形成した一対の支持脚4の互いに対向する面である内側面に、下端が下面に到り且つ下に行くほど互いに離れるように傾斜した傾斜面6を形成し、ネスティング状態における上段の運搬用容器1の他端部B側を支点として一端部Aを持ち上げて該持ち上げた側に近い方の支持脚4の外側面の下端が対応するポケット部5よりも上方に位置した状態で、持ち上げた側から遠い側の支持脚4の内側面に形成した傾斜面6の少なくとも上端が対応するポケット部5の上端とほぼ同じ高さ又は上方に位置するように設定して成ることを特徴とするものである。
【0012】
このような構成とすることで、ネスティング状態にある上段の運搬用容器1の他端部B側を支点として一端部Aを持ち上げて該持ち上げた側に近い方の支持脚4の外側面の下端が対応するポケット部5よりも上方に位置させると、持ち上げた側から遠い側の支持脚4の内側面に形成した傾斜面6の少なくとも上端が対応するポケット部5の上端とほぼ同じ高さ又は上方に位置するので、そのまま、一端部Aを持ち上げたまま手前側に引くことで、傾斜面6がポケット部5の開口の上端縁に当たりながら滑ることで持ち上げた側から遠い側の支持脚4がスムーズに対応するポケット部5から引き抜かれ、更に、一端部Aを持ち上げたまま手前側に引く作業を継続することで、引き上げられた持ち上げた側から遠い側の支持脚4が下段の運搬用容器1のフランジ部2上を滑りながら手前側にスライドし、手前側のポケット部5に到ると、支持脚4の下面のスライド方向の長さが当該ポケット部5の上開口の巾よりも長い場合はそのままスライドし、支持脚4の下面のスライド方向の長さが当該ポケット部5の上開口の巾よりも短い場合は、一旦当該ポケット部5に落ち込むが、落ち込んだ支持脚4の外側面に傾斜した傾斜面6が当該ポケット部5の開口の上端縁に当たることで、上記と同様に一端部Aを持ち上げた状態のまま手前に引く作業を継続することで、そのまま傾斜面6にガイドされながらスライドを継続し、上段の運搬用容器1を手前に引き取ることができる。
【0013】
また、同じ側壁部3に形成した一対の支持脚4の互いに対向する傾斜面6に、中央側に向けて突出する傾斜リブ7を該傾斜面6に沿って突出していることが好ましい。
【0014】
このような構成とすることで、傾斜面6に沿って設けた傾斜リブ7がポケット部5の開口の上端縁に当たりながら滑り、接触抵抗が少なく、持ち上げた側から遠い側の支持脚4が対応するポケット部5からよりスムーズに引き抜かれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記のように構成したので、ネスティング状態にある運搬用容器の他端部側を支点として一端部を持ち上げて該持ち上げた側に近い方の支持脚部の外側面の下端が対応するポケット部よりも上方に位置させてそのまま、一端部を持ち上げたまま手前側に引くことで、傾斜面をガイドとして持ち上げた側から遠い方の支持脚をスムーズにポケット部から引き抜くことができる。しかも、そのまま、手前に引き続けることで、該支持脚を下段の運搬用容器のフランジ部上を滑らせながら手前側にスライドして引き出して取り出すことができる。更に、スライドして引き出すに当って、手前側のポケット部に到ると、支持脚の下面のスライド方向の長さが当該ポケット部の上開口の巾よりも長い場合はそのままスライドしてスムーズに引き出すことができ、一方、支持脚の下面のスライド方向の長さが当該ポケット部の上開口の巾よりも短い場合は、一旦当該ポケット部に落ち込むが、落ち込んだ支持脚の外側面に傾斜した傾斜面が当該ポケット部の開口の上端縁に当たることで、一端部を持ち上げた状態のまま手前に引く作業を継続することで、そのまま傾斜面にガイドされながらスライドを継続し、上段の運搬用容器を手前にスムーズに引き取ることができる。これにより、上段の運搬用容器の一端部側、他端部側のどちらを手前側としても引き出すようにして取り外すことが可能となり、作業性が極めて良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0017】
図1乃至図9に本発明の運搬用容器1の一実施形態が示してある。この運搬用容器1は上方が開口していて上開口部の開口縁に外側方に向けてフランジ部2が形成してある。
【0018】
運搬用容器1の長辺側の側壁部3のうち一方の長辺側の側壁部3aの外面部の両側付近の下部にはそれぞれ支持脚4が突出して形成されている。ここで、両側の支持脚4のうち一方の支持脚4aは他方の支持脚4bよりも幅が狭くなっている。
【0019】
また、長辺側の他方の側壁部3bの上部には平面視で運搬用容器1の中心点O(図4、図5に示す)を中心として支持脚4a、4bと点対象の位置にそれぞれ支持脚4a、4bを嵌入することのできる上方及び内方に開口したポケット部5(支持脚4aを嵌入することができるポケット部5aと支持脚4bを嵌入することができるポケット部5b)が各々形成してある。
【0020】
同様に、長辺側の他方の側壁部3bの両側付近の下部にはそれぞれ支持脚4a、4bが形成してあり、また、長辺側の一方の側壁部3aの上部には該支持脚4a、4bが嵌入することのできるポケット部5a、5bが運搬用容器1の中心点Oを中心として支持脚4a、4bと点対象の位置に各々形成してある。
【0021】
また、短辺側の側壁部3のうち一方の短辺側の側壁部3cの外面部の両側付近の下部にはそれぞれ支持脚4c、4cが突出して形成されている。
【0022】
また、短辺側の他方の側壁部3dの上部には平面視で運搬用容器1の中心点Oを中心として支持脚4c、4cと点対象の位置にそれぞれ支持脚4c、4cが嵌入することのできるポケット部5c、5cが各々形成してある。
【0023】
同様に、短辺側の他方の側壁部3dの両側付近の下部にはそれぞれ支持脚4d、4dが形成してあり、また、短辺側の一方の側壁部3aの上部には該支持脚4d、4dが嵌入することのできるポケット部5d、5dが平面視で運搬用容器1の中心点Oを中心として点対象の位置に各々形成してある。
【0024】
ここで、支持脚4c、4c間の距離は支持脚4d、4d間の距離と異なる距離に設定してある。
【0025】
なお、上記各ポケット部5(5a、5b、5c、5d)はいずれも上方においてはフランジ部2に開口している。
【0026】
ここで、本発明においては、対向する側壁部3(添付図面に示す実施形態では対向する長辺側の側壁部3a、3b)には、それぞれ同じ側壁部3に形成した一対の支持脚4の互いに対向する面である内側面に、下端が下面に到り且つ下に行くほど互いに離れるように傾斜した傾斜面6を形成してある。
【0027】
傾斜面6としては図1乃至図9、図19に示すような湾曲した傾斜面6であっても、平面状をした傾斜面6であってもよい。更に、傾斜面6は、平面を組み合わせた多角形や平面と湾曲を組み合わせたものであってもよい。なお、傾斜面6は、フランジ部2に近づくにつれてフランジ部2と直交する方向にして、ポケット部5の上開口の巾を短くすることができる。このことによって、多段積みした運搬用容器1の搬送中に、上段の運搬用容器1が横ずれして下段の運搬用容器1の側面部やポケット部5に横方向の力が生じても、ポケット部5の巾が短いので破損することが無い。
【0028】
また、添付図面(図19に詳細を示している)に示すように、上記傾斜面6には中央側(一対の支持脚4を設けた側壁部3の中央側)に向けて突出する傾斜リブ7を、該傾斜面6に沿って突出形成するのが好ましい。
【0029】
上記のような構成の運搬用容器1は合成樹脂により一体に形成してあり、この運搬用容器1は例えば下段の運搬用容器1の上開口に上段の運搬用容器1の底部を嵌め込むと共に下段の運搬用容器1の上端のフランジ部2に上段の運搬用容器1の支持脚4(4a、4b、4c、4d)を載置して図10、図11のように背を高くして積み上げる(いわゆるスタッキングという)ことができ、内部に収納物を収納した状態で運搬用容器1を上下に積み上げることができるものである。このスタッキング積み状態では下段の運搬用容器1の上に上段の運搬用容器1を同一向きの姿勢で積み重ねるものである。
【0030】
一方、上段の運搬用容器1を平面視で180°回転した状態で下段の運搬用容器1内に上段の運搬用容器1を嵌め込み、上段の運搬用容器1の支持脚4a、4b、4a、4b及び支持脚4c、4c、4d、4dをそれぞれ下段の運搬用容器1のポケット部5a、5b、5a、5b及びポケット部5c、5c、5d、5dに嵌め込み、上段の運搬用容器1のポケット部5を下段の運搬用容器1のフランジ部2の上面に載置し、これにより図12、図13、図14のように背を低くして積み重ね(いわゆるネスティングという)て嵩張らないようにすることができる。このように、空の運搬用容器1をネスティング積みすることで、コンパクトに積み重ねた状態で多数の運搬用容器1を運搬したり、あるいは保管しておくことができる。
【0031】
このような図14に示すネスティング状態において、上段の運搬用容器1を下段の運搬用容器1から抜き取るに当たっては、上段の運搬用容器1の対向する両端部を両手で掴んで上段の運搬用容器1をほぼ垂直に持ち上げることで抜き取ることができるのはもちろんであるが、本発明においては、図15のように、上段の運搬用容器1の他端部B側を支点として一端部Aを持ち上げて、一端部Aを持ち上げたまま手前側に引くことで、持ち上げた側から遠い側の支持脚4を対応するポケット部5から引き抜き、引き続き該支持脚4をフランジ部2上でスライドさせながら引き取ることができるようになっている。
【0032】
本発明においては、図14のように、ネスティング状態における上段の運搬用容器1の他端部B(実施形態では長辺と平行な方向の他端部)側を支点として一端部A(実施形態では長辺と平行な方向の一端部)を図15の矢印イのように持ち上げて、該持ち上げた側に近い方の支持脚4の外側面の下端が対応するポケット部5よりも上方に位置した状態で、持ち上げた側から遠い側の支持脚4の内側面に形成した傾斜面6の少なくとも上端が対応するポケット部5の上端とほぼ同じ高さ又は上方に位置するように設定してある。
【0033】
すなわち、上段の運搬用容器1の長辺と平行な方向の他端部Bを支点として長辺と平行な方向の一端部Aを矢印イのように片手で持ち上げて支点となる他端部Bを中心に上方に回動すると、上段の運搬用容器1の同一側壁部3に設けた一対の支持脚4のうち、支点に近い方の支持脚4の内側面の下端の支点を中心にした回転半径が、支点から遠い方の支持脚4の外側面の下端の支点を中心にした回転半径よりも小さいため、上記回転により支点に近い方の支持脚4の内側面の下端が対応するポケット部5の内側面に当たり易い。しかしながら、本発明にあっては、支持脚4の内側面に傾斜面6を形成してあることで、上記支点を中心に回動させた際に、支点に近い方の支持脚4の内側面の下端が対応するポケット部5の内側面に回動を阻害するほど強く当たらないようにでき、これにより、図15のように、一端部Aを持ち上げて、持ち上げた側に近い方の支持脚4(支点から遠い方の支持脚4)の外面側の下端を対応するポケット部5よりも上方に引き上げる際に、持ち上げた側から遠い方の支持脚4(支点に近い方の支持脚4)の内面側の下端が対応するポケット部5の内側面に強く当たらず、持ち上げた側に近い方の支持脚4の外面側の下端を対応するポケット部5よりも上方にスムーズに引き上げることができる。
【0034】
しかも、上記のように、持ち上げた側に近い方の支持脚4(支点から遠い方の支持脚4)の外面側の下端を対応するポケット部5よりも上方に引き上げると、図15のように、持ち上げた側から遠い側の支持脚4(支点に近い方の支持脚4)の内側面に形成した傾斜面6の少なくとも上端が対応するポケット部5の上端とほぼ同じ高さ又は上方に位置するので、そのまま、上段の運搬用容器1を一端部Aを持ち上げたまま手前側(矢印ロ方向)に引くことで、傾斜面6がポケット部5の開口の上端縁に当たりながら滑り、持ち上げた側から遠い側の支持脚4をスムーズに対応するポケット部5から引き抜くことができる。更に、図16に示すように、一端部Aを持ち上げたまま手前側(矢印ロ方向)に引く作業を継続することで、引き上げられた持ち上げた側から遠い側の支持脚4が下段の運搬用容器1のフランジ部2上を滑りながら手前側にスライドする。
【0035】
ここで、引き出すためにスライドさせている途中で、持ち上げた側から遠い方の支持脚4が手前側のポケット部5に到ると、支持脚4の下面のスライド方向の長さが当該ポケット部5の上開口の巾よりも長い場合は、該支持脚4がポケット部5に落ち込むことなくそのままスライドして通過し、運搬用容器1を手前に引き出して取り外すことができる。
【0036】
また、支持脚4の下面のスライド方向の長さが当該ポケット部5の上開口の巾よりも短い場合は、スライドの途中で、一旦当該ポケット部5に落ち込むが、図17に示すように、落ち込んだ支持脚4の外側面に傾斜した傾斜面6が当該ポケット部5の開口の上端縁に当たることで、上記の説明と同様にして一端部Aを持ち上げた状態のまま手前側(矢印ロ方向)に引く作業を継続することで、そのまま傾斜面6にガイドされながらスライドを継続し、上段の運搬用容器1を手前に引き取ることができる。
【0037】
図18に示す実施形態では、上段の運搬用容器1の他端部Bを支点として一端部Aを矢印イに示すように、上方に少し持ち上げ、その後、一端部A側を手前側として矢印ハ方向にスライドさせて引き出すことで取り外す例を示したが、上段の運搬用容器1の一端部Aを支点として他端部Bを上方に少し持ち上げ、その後、他端部B側を手前側としてスライドさせて引き出すことで上記と同様にして取り外すこともできる。
【0038】
このように、本発明においては、上段の運搬用容器1の一端部A側、他端部B側のどちらを手前側としても引き出すようにして取り外すことが可能となり、作業性が極めて良くなる。
【0039】
上記実施形態では対向する長辺側の側壁部3a、3bの外面部の各両端部付近の下部にそれぞれ突出した一対の支持脚4a、4bの互いに対向する内側面に傾斜面6を形成した例を示したが、短辺側の側壁部3c、3dの外面部の各両端部付近の下部にそれぞれ突出した一対の支持脚4c、4c、又は4d、4dの互いに対向する内側面に傾斜面6を形成してもよいものである。
【0040】
ところで、本発明において、図19のように、傾斜面6には中央側(一対の支持脚4を設けた側壁部3の中央側)に向けて突出する傾斜リブ7を、該傾斜面6に沿って突出形成すると、傾斜面6に沿って設けた傾斜リブ7がポケット部5の開口の上端縁に当たりながら滑り、接触抵抗が少なく、持ち上げた側から遠い側の支持脚4が対応するポケット部5からよりスムーズに引き抜くことができ、よりいっそう軽い力でスムーズに支持脚4をポケット部5から引き上げることができる。
【0041】
更に、傾斜リブ7や水平リブ7a(傾斜リブ7下端の水平方向のリブ7a)よりスライドリブ25(図11に示すフランジ部2の内側に設けた内側リブ)の突出量を高くすることによって、水平リブ7aがスライドリブ25を乗り越えることがなく、上段の運搬用容器1が下段の運搬用容器1に落ちることがなくなる。
【0042】
また、一方のポケット部5より内側のポケット部5の上開口の巾は、一方のポケット部5の巾より短くできる。また、このポケット部5に挿入される傾斜面6の上方の垂直面は、他方より短くできる。
【0043】
ところで、上段の運搬用容器1の一端部A側や他端部B側を最小限持ち上げてスムーズにスライドさせるためには、支持脚4の傾斜面6とポケット部5の上開口端部の角度が緩い角度でかつ略同等(例えば45°)であるのが好ましいが、上記角度を緩い角度とするとポケット部5の上開口の巾が広くなり、横ずれ等の強度が弱くなる。
【0044】
そこで、ポケット部5の巾を狭くするために、傾斜面6の上部(フランジ部2側)を垂直面とすることで、ポケット部5の上開口の巾を狭くしているが、更に、図18のように図15に比べて、支点側から遠いポケット部5に挿入される支持脚4においては、更に、垂直面の高さH2を図15における垂直面の高さH1よりも長くすることができて、ポケット部5の上開口の巾を短くできる。
【0045】
つまり、一端部A又は他端部Bを持ち上げた時に支点からポケット部5が遠い方が支持脚4が高く持ち上げられ、この結果、一端部A又は他端部Bの持ち上げ高さは低くてもよく、持ち上げてスライドさせるという操作がしやすくなる。
【0046】
また、傾斜面6をポケット部5の上開口端部に近接又は当接させることにより、スライドがスムーズに行える。
【0047】
なお、添付図面に示す実施形態では支持脚4をリブで形成したが、図21のように内方側を開口させて外方側に面を形成してもよい。
【0048】
ところで、上記実施形態においては、2つの運搬用容器1を同一向きで積み上げた状態では下段の運搬用容器1のフランジ部2上に支持脚4の下端部が載置され、下段の運搬用容器1に対して平面視180°回転して上段の運搬用容器1を重ねた状態では下段の運搬用容器1のポケット部に上段の運搬用容器1の支持脚4が没入される同方向スタッキング及び異方向ネスティングの例で説明したが、図22に示すように、ポケット部5の下に支持脚4を形成することによって、同方向ネスティング及び異方向スタッキングも上記と同様な操作と効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の運搬用容器の斜視図である。
【図2】同上の正面図である。
【図3】同上の背面図である。
【図4】同上の平面図である。
【図5】同上の底面図である。
【図6】同上の右側面図である。
【図7】同上の左側面図である。
【図8】同上の側面断面図である。
【図9】同上の正面断面図である。
【図10】同上の運搬用容器をスタッキングした状態の正面図である。
【図11】同上のスタッキングした部分の拡大断面図である。
【図12】同上の運搬用容器をネスティングした状態の正面図である。
【図13】同上のネスティングした部分の側面断面図である。
【図14】同上のネスティングした部分の正面断面図である。
【図15】同上のネスティング状態で上段の運搬用容器の一端部を持ち上げて上段の運搬用容器を回動しながら抜き取る動作を示す説明図である。
【図16】同上のネスティング状態で上段の運搬用容器の一端部を持ち上げて上段の運搬用容器を回動しながら抜き取る動作を示す説明図である。
【図17】同上のネスティング状態で上段の運搬用容器の一端部を持ち上げて上段の運搬用容器を回動しながら抜き取る動作を示す説明図である。
【図18】同上のネスティング状態で上段の運搬用容器の図15とは反対側の端部を持ち上げて上段の運搬用容器を回動しながら抜き取る動作を示す説明図である。
【図19】傾斜リブを示し、(a)は拡大斜視図であり、(b)は拡大断面図である。
【図20】本発明の傾斜面の異なる例を示す運搬用容器の正面図である。
【図21】本発明の支持脚の異なる例を示す要部斜視図である。
【図22】本発明の運搬用容器の他の実施形態を示し、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は背面図である。
【図23】従来例においてネスティング状態で上段の運搬用容器の一端部を持ち上げて上段の運搬用容器をスライドさせながら引き出した際に、支持脚が手前側のポケット部に落ち込んだ場合の問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 運搬用容器
2 フランジ部
3 側壁部
4 支持脚
5 ポケット部
6 傾斜面
7 傾斜リブ
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬用容器、詳しくは、複数の運搬用容器を積み上げ又は重ねるに当たって、内容物を収納した状態では背を高くして積み上げるスタッキング及び内容物を収納していない状態では背を低くして重ねるネスティングができる運搬用容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から複数の運搬用容器1を積み重ねるに当たって、内容物を収納した状態では背を高くして積み上げるスタッキング、内容物を収納していない状態では背を低くして重ねるネスティングができる運搬用容器1が特許文献1により知られている。
【0003】
この特許文献1に示された従来の運搬用容器1は図23に示すようなものである。すなわち、上記運搬用容器1は、上方が開口した平面視長方形状をしており、運搬用容器1の上開口部の外周部にはフランジ部2が形成してある。運搬用容器1の対向する両側壁部3の外面部の各両端部付近の下部にはそれぞれ側壁部3の外面より突出した支持脚4が設けてある。一方、フランジ部2にはこれと対向する側壁部3に点対称に形成された支持脚4をはめ込むことのできるポケット部5が形成してある。そして、2つの運搬用容器1を同一向きで積み上げた状態では下段の運搬用容器1のフランジ部2上に支持脚4の下端部が載置され、下段の運搬用容器1に対して平面視180°回転して上段の運搬用容器1を重ねた状態では下段の運搬用容器1のポケット部に上段の運搬用容器1の支持脚4が没入されるように構成されたものである。
【0004】
上記のような構成の運搬用容器1は内容物を入れて上下に多段に積み上げる場合には、上記のように下段の運搬用容器1のフランジ部2上に支持脚4の下端部が載置されて背を高くしてスタッキング状態に積み上げる。
【0005】
一方運搬用容器1に内容物を入れない空の状態で多段に積み重ねるには(つまりネスティング状態にするには)、上記のように下段の運搬用容器1に対して上段の運搬用容器1を平面視で180°回転して重ねることで下段の運搬用容器1のポケット部に上段の運搬用容器1の支持脚4を没入させて背を低くして多段に重ねる。
【0006】
このようなネスティング状態にある上段の運搬用容器1を他端部Bを支点として一端部Aを持ち上げて、上段の運搬用容器1を下段の運搬用容器1から抜き取る際に、持ち上げた側から遠い方の支持脚4が対応するポケット部に引っ掛からないようにするために、同一側壁部3に形成した一対のポケット部の互いに対向する側である内側面に、上に行くほど互いに近づくような傾斜面20を形成してある。
【0007】
しかしながら、上記従来例にあっては、ネスティング状態にある上段の運搬用容器1を他端部Bを支点として一端部Aを持ち上げて、持ち上げた側に近い方の支持脚4を対応するポケット部5から引き上げる際、持ち上げた側から遠い方の支持脚4を対応するポケット部の内側面に形成した傾斜面20をガイドとして引き上げることはできるが、その後、上段の運搬用容器1を、持ち上げた側から遠い方の支持脚4を下段の運搬用容器1のフランジ部2上をスライドさせながら手前側に引きながら取り外す際、当該フランジ部2上をスライドさせている支持脚4が下段の運搬用容器1の手前側のポケット部に落下して図23のようになるおそれがある。
【0008】
この図23のように支持脚4が下段の運搬用容器1の手前側のポケット部に落下すると、当該ポケット部には外側面に傾斜面20が形成してないので、ポケットの外側面に支持脚4が当たって矢印ハ方向に引いても支持脚4が引っ掛かり、再度少し持ち上げるか、強い力で引かなくてはならないという問題がある。
【0009】
したがって、上記従来例にあっては、ネスティング状態にある上段の運搬用容器1を他端部Bを支点として一端部Aを持ち上げることで、支持脚4をポケット部から容易に引き抜くことはできるが、そのまま支持脚4をフランジ部2上をスライドさせて取り外すことはできず、作業者は途中で、両手で運搬用容器1全体を持ち上げるか、強い力で引かなくてはならず、作業性が悪くなるという問題がある。
【特許文献1】特開平10−236482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、ネスティング状態にある上段の運搬用容器の取り外しが簡単にでき、作業性が向上する運搬用容器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために本発明に係る運搬用容器は、上方が開口した平面視長方形状をした運搬用容器1の上開口部の外周部にフランジ部2を形成し、対向する側壁部3の外面部の各両端部付近にそれぞれ側壁部3の外面より突出した支持脚4を設け、側壁部3に支持脚4をはめ込むことのできる上方及び内方に開口したポケット部5を形成し、2つの運搬用容器1を積み上げたスタッキング状態では下段の運搬用容器1のフランジ部2上に支持脚4の下端部が載置され、下段の運搬用容器1に対して平面視180°回転して上段の運搬用容器1を重ねたネスティング状態では下段の運搬用容器1のポケット部5に上段の運搬用容器1の支持脚4が没入されるように構成されたものにおいて、上段の運搬用容器1の支持脚4が下段の運搬用容器1のフランジ部2上をスライド自在とし、上記同じ側壁部3に形成した一対の支持脚4の互いに対向する面である内側面に、下端が下面に到り且つ下に行くほど互いに離れるように傾斜した傾斜面6を形成し、ネスティング状態における上段の運搬用容器1の他端部B側を支点として一端部Aを持ち上げて該持ち上げた側に近い方の支持脚4の外側面の下端が対応するポケット部5よりも上方に位置した状態で、持ち上げた側から遠い側の支持脚4の内側面に形成した傾斜面6の少なくとも上端が対応するポケット部5の上端とほぼ同じ高さ又は上方に位置するように設定して成ることを特徴とするものである。
【0012】
このような構成とすることで、ネスティング状態にある上段の運搬用容器1の他端部B側を支点として一端部Aを持ち上げて該持ち上げた側に近い方の支持脚4の外側面の下端が対応するポケット部5よりも上方に位置させると、持ち上げた側から遠い側の支持脚4の内側面に形成した傾斜面6の少なくとも上端が対応するポケット部5の上端とほぼ同じ高さ又は上方に位置するので、そのまま、一端部Aを持ち上げたまま手前側に引くことで、傾斜面6がポケット部5の開口の上端縁に当たりながら滑ることで持ち上げた側から遠い側の支持脚4がスムーズに対応するポケット部5から引き抜かれ、更に、一端部Aを持ち上げたまま手前側に引く作業を継続することで、引き上げられた持ち上げた側から遠い側の支持脚4が下段の運搬用容器1のフランジ部2上を滑りながら手前側にスライドし、手前側のポケット部5に到ると、支持脚4の下面のスライド方向の長さが当該ポケット部5の上開口の巾よりも長い場合はそのままスライドし、支持脚4の下面のスライド方向の長さが当該ポケット部5の上開口の巾よりも短い場合は、一旦当該ポケット部5に落ち込むが、落ち込んだ支持脚4の外側面に傾斜した傾斜面6が当該ポケット部5の開口の上端縁に当たることで、上記と同様に一端部Aを持ち上げた状態のまま手前に引く作業を継続することで、そのまま傾斜面6にガイドされながらスライドを継続し、上段の運搬用容器1を手前に引き取ることができる。
【0013】
また、同じ側壁部3に形成した一対の支持脚4の互いに対向する傾斜面6に、中央側に向けて突出する傾斜リブ7を該傾斜面6に沿って突出していることが好ましい。
【0014】
このような構成とすることで、傾斜面6に沿って設けた傾斜リブ7がポケット部5の開口の上端縁に当たりながら滑り、接触抵抗が少なく、持ち上げた側から遠い側の支持脚4が対応するポケット部5からよりスムーズに引き抜かれる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上記のように構成したので、ネスティング状態にある運搬用容器の他端部側を支点として一端部を持ち上げて該持ち上げた側に近い方の支持脚部の外側面の下端が対応するポケット部よりも上方に位置させてそのまま、一端部を持ち上げたまま手前側に引くことで、傾斜面をガイドとして持ち上げた側から遠い方の支持脚をスムーズにポケット部から引き抜くことができる。しかも、そのまま、手前に引き続けることで、該支持脚を下段の運搬用容器のフランジ部上を滑らせながら手前側にスライドして引き出して取り出すことができる。更に、スライドして引き出すに当って、手前側のポケット部に到ると、支持脚の下面のスライド方向の長さが当該ポケット部の上開口の巾よりも長い場合はそのままスライドしてスムーズに引き出すことができ、一方、支持脚の下面のスライド方向の長さが当該ポケット部の上開口の巾よりも短い場合は、一旦当該ポケット部に落ち込むが、落ち込んだ支持脚の外側面に傾斜した傾斜面が当該ポケット部の開口の上端縁に当たることで、一端部を持ち上げた状態のまま手前に引く作業を継続することで、そのまま傾斜面にガイドされながらスライドを継続し、上段の運搬用容器を手前にスムーズに引き取ることができる。これにより、上段の運搬用容器の一端部側、他端部側のどちらを手前側としても引き出すようにして取り外すことが可能となり、作業性が極めて良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0017】
図1乃至図9に本発明の運搬用容器1の一実施形態が示してある。この運搬用容器1は上方が開口していて上開口部の開口縁に外側方に向けてフランジ部2が形成してある。
【0018】
運搬用容器1の長辺側の側壁部3のうち一方の長辺側の側壁部3aの外面部の両側付近の下部にはそれぞれ支持脚4が突出して形成されている。ここで、両側の支持脚4のうち一方の支持脚4aは他方の支持脚4bよりも幅が狭くなっている。
【0019】
また、長辺側の他方の側壁部3bの上部には平面視で運搬用容器1の中心点O(図4、図5に示す)を中心として支持脚4a、4bと点対象の位置にそれぞれ支持脚4a、4bを嵌入することのできる上方及び内方に開口したポケット部5(支持脚4aを嵌入することができるポケット部5aと支持脚4bを嵌入することができるポケット部5b)が各々形成してある。
【0020】
同様に、長辺側の他方の側壁部3bの両側付近の下部にはそれぞれ支持脚4a、4bが形成してあり、また、長辺側の一方の側壁部3aの上部には該支持脚4a、4bが嵌入することのできるポケット部5a、5bが運搬用容器1の中心点Oを中心として支持脚4a、4bと点対象の位置に各々形成してある。
【0021】
また、短辺側の側壁部3のうち一方の短辺側の側壁部3cの外面部の両側付近の下部にはそれぞれ支持脚4c、4cが突出して形成されている。
【0022】
また、短辺側の他方の側壁部3dの上部には平面視で運搬用容器1の中心点Oを中心として支持脚4c、4cと点対象の位置にそれぞれ支持脚4c、4cが嵌入することのできるポケット部5c、5cが各々形成してある。
【0023】
同様に、短辺側の他方の側壁部3dの両側付近の下部にはそれぞれ支持脚4d、4dが形成してあり、また、短辺側の一方の側壁部3aの上部には該支持脚4d、4dが嵌入することのできるポケット部5d、5dが平面視で運搬用容器1の中心点Oを中心として点対象の位置に各々形成してある。
【0024】
ここで、支持脚4c、4c間の距離は支持脚4d、4d間の距離と異なる距離に設定してある。
【0025】
なお、上記各ポケット部5(5a、5b、5c、5d)はいずれも上方においてはフランジ部2に開口している。
【0026】
ここで、本発明においては、対向する側壁部3(添付図面に示す実施形態では対向する長辺側の側壁部3a、3b)には、それぞれ同じ側壁部3に形成した一対の支持脚4の互いに対向する面である内側面に、下端が下面に到り且つ下に行くほど互いに離れるように傾斜した傾斜面6を形成してある。
【0027】
傾斜面6としては図1乃至図9、図19に示すような湾曲した傾斜面6であっても、平面状をした傾斜面6であってもよい。更に、傾斜面6は、平面を組み合わせた多角形や平面と湾曲を組み合わせたものであってもよい。なお、傾斜面6は、フランジ部2に近づくにつれてフランジ部2と直交する方向にして、ポケット部5の上開口の巾を短くすることができる。このことによって、多段積みした運搬用容器1の搬送中に、上段の運搬用容器1が横ずれして下段の運搬用容器1の側面部やポケット部5に横方向の力が生じても、ポケット部5の巾が短いので破損することが無い。
【0028】
また、添付図面(図19に詳細を示している)に示すように、上記傾斜面6には中央側(一対の支持脚4を設けた側壁部3の中央側)に向けて突出する傾斜リブ7を、該傾斜面6に沿って突出形成するのが好ましい。
【0029】
上記のような構成の運搬用容器1は合成樹脂により一体に形成してあり、この運搬用容器1は例えば下段の運搬用容器1の上開口に上段の運搬用容器1の底部を嵌め込むと共に下段の運搬用容器1の上端のフランジ部2に上段の運搬用容器1の支持脚4(4a、4b、4c、4d)を載置して図10、図11のように背を高くして積み上げる(いわゆるスタッキングという)ことができ、内部に収納物を収納した状態で運搬用容器1を上下に積み上げることができるものである。このスタッキング積み状態では下段の運搬用容器1の上に上段の運搬用容器1を同一向きの姿勢で積み重ねるものである。
【0030】
一方、上段の運搬用容器1を平面視で180°回転した状態で下段の運搬用容器1内に上段の運搬用容器1を嵌め込み、上段の運搬用容器1の支持脚4a、4b、4a、4b及び支持脚4c、4c、4d、4dをそれぞれ下段の運搬用容器1のポケット部5a、5b、5a、5b及びポケット部5c、5c、5d、5dに嵌め込み、上段の運搬用容器1のポケット部5を下段の運搬用容器1のフランジ部2の上面に載置し、これにより図12、図13、図14のように背を低くして積み重ね(いわゆるネスティングという)て嵩張らないようにすることができる。このように、空の運搬用容器1をネスティング積みすることで、コンパクトに積み重ねた状態で多数の運搬用容器1を運搬したり、あるいは保管しておくことができる。
【0031】
このような図14に示すネスティング状態において、上段の運搬用容器1を下段の運搬用容器1から抜き取るに当たっては、上段の運搬用容器1の対向する両端部を両手で掴んで上段の運搬用容器1をほぼ垂直に持ち上げることで抜き取ることができるのはもちろんであるが、本発明においては、図15のように、上段の運搬用容器1の他端部B側を支点として一端部Aを持ち上げて、一端部Aを持ち上げたまま手前側に引くことで、持ち上げた側から遠い側の支持脚4を対応するポケット部5から引き抜き、引き続き該支持脚4をフランジ部2上でスライドさせながら引き取ることができるようになっている。
【0032】
本発明においては、図14のように、ネスティング状態における上段の運搬用容器1の他端部B(実施形態では長辺と平行な方向の他端部)側を支点として一端部A(実施形態では長辺と平行な方向の一端部)を図15の矢印イのように持ち上げて、該持ち上げた側に近い方の支持脚4の外側面の下端が対応するポケット部5よりも上方に位置した状態で、持ち上げた側から遠い側の支持脚4の内側面に形成した傾斜面6の少なくとも上端が対応するポケット部5の上端とほぼ同じ高さ又は上方に位置するように設定してある。
【0033】
すなわち、上段の運搬用容器1の長辺と平行な方向の他端部Bを支点として長辺と平行な方向の一端部Aを矢印イのように片手で持ち上げて支点となる他端部Bを中心に上方に回動すると、上段の運搬用容器1の同一側壁部3に設けた一対の支持脚4のうち、支点に近い方の支持脚4の内側面の下端の支点を中心にした回転半径が、支点から遠い方の支持脚4の外側面の下端の支点を中心にした回転半径よりも小さいため、上記回転により支点に近い方の支持脚4の内側面の下端が対応するポケット部5の内側面に当たり易い。しかしながら、本発明にあっては、支持脚4の内側面に傾斜面6を形成してあることで、上記支点を中心に回動させた際に、支点に近い方の支持脚4の内側面の下端が対応するポケット部5の内側面に回動を阻害するほど強く当たらないようにでき、これにより、図15のように、一端部Aを持ち上げて、持ち上げた側に近い方の支持脚4(支点から遠い方の支持脚4)の外面側の下端を対応するポケット部5よりも上方に引き上げる際に、持ち上げた側から遠い方の支持脚4(支点に近い方の支持脚4)の内面側の下端が対応するポケット部5の内側面に強く当たらず、持ち上げた側に近い方の支持脚4の外面側の下端を対応するポケット部5よりも上方にスムーズに引き上げることができる。
【0034】
しかも、上記のように、持ち上げた側に近い方の支持脚4(支点から遠い方の支持脚4)の外面側の下端を対応するポケット部5よりも上方に引き上げると、図15のように、持ち上げた側から遠い側の支持脚4(支点に近い方の支持脚4)の内側面に形成した傾斜面6の少なくとも上端が対応するポケット部5の上端とほぼ同じ高さ又は上方に位置するので、そのまま、上段の運搬用容器1を一端部Aを持ち上げたまま手前側(矢印ロ方向)に引くことで、傾斜面6がポケット部5の開口の上端縁に当たりながら滑り、持ち上げた側から遠い側の支持脚4をスムーズに対応するポケット部5から引き抜くことができる。更に、図16に示すように、一端部Aを持ち上げたまま手前側(矢印ロ方向)に引く作業を継続することで、引き上げられた持ち上げた側から遠い側の支持脚4が下段の運搬用容器1のフランジ部2上を滑りながら手前側にスライドする。
【0035】
ここで、引き出すためにスライドさせている途中で、持ち上げた側から遠い方の支持脚4が手前側のポケット部5に到ると、支持脚4の下面のスライド方向の長さが当該ポケット部5の上開口の巾よりも長い場合は、該支持脚4がポケット部5に落ち込むことなくそのままスライドして通過し、運搬用容器1を手前に引き出して取り外すことができる。
【0036】
また、支持脚4の下面のスライド方向の長さが当該ポケット部5の上開口の巾よりも短い場合は、スライドの途中で、一旦当該ポケット部5に落ち込むが、図17に示すように、落ち込んだ支持脚4の外側面に傾斜した傾斜面6が当該ポケット部5の開口の上端縁に当たることで、上記の説明と同様にして一端部Aを持ち上げた状態のまま手前側(矢印ロ方向)に引く作業を継続することで、そのまま傾斜面6にガイドされながらスライドを継続し、上段の運搬用容器1を手前に引き取ることができる。
【0037】
図18に示す実施形態では、上段の運搬用容器1の他端部Bを支点として一端部Aを矢印イに示すように、上方に少し持ち上げ、その後、一端部A側を手前側として矢印ハ方向にスライドさせて引き出すことで取り外す例を示したが、上段の運搬用容器1の一端部Aを支点として他端部Bを上方に少し持ち上げ、その後、他端部B側を手前側としてスライドさせて引き出すことで上記と同様にして取り外すこともできる。
【0038】
このように、本発明においては、上段の運搬用容器1の一端部A側、他端部B側のどちらを手前側としても引き出すようにして取り外すことが可能となり、作業性が極めて良くなる。
【0039】
上記実施形態では対向する長辺側の側壁部3a、3bの外面部の各両端部付近の下部にそれぞれ突出した一対の支持脚4a、4bの互いに対向する内側面に傾斜面6を形成した例を示したが、短辺側の側壁部3c、3dの外面部の各両端部付近の下部にそれぞれ突出した一対の支持脚4c、4c、又は4d、4dの互いに対向する内側面に傾斜面6を形成してもよいものである。
【0040】
ところで、本発明において、図19のように、傾斜面6には中央側(一対の支持脚4を設けた側壁部3の中央側)に向けて突出する傾斜リブ7を、該傾斜面6に沿って突出形成すると、傾斜面6に沿って設けた傾斜リブ7がポケット部5の開口の上端縁に当たりながら滑り、接触抵抗が少なく、持ち上げた側から遠い側の支持脚4が対応するポケット部5からよりスムーズに引き抜くことができ、よりいっそう軽い力でスムーズに支持脚4をポケット部5から引き上げることができる。
【0041】
更に、傾斜リブ7や水平リブ7a(傾斜リブ7下端の水平方向のリブ7a)よりスライドリブ25(図11に示すフランジ部2の内側に設けた内側リブ)の突出量を高くすることによって、水平リブ7aがスライドリブ25を乗り越えることがなく、上段の運搬用容器1が下段の運搬用容器1に落ちることがなくなる。
【0042】
また、一方のポケット部5より内側のポケット部5の上開口の巾は、一方のポケット部5の巾より短くできる。また、このポケット部5に挿入される傾斜面6の上方の垂直面は、他方より短くできる。
【0043】
ところで、上段の運搬用容器1の一端部A側や他端部B側を最小限持ち上げてスムーズにスライドさせるためには、支持脚4の傾斜面6とポケット部5の上開口端部の角度が緩い角度でかつ略同等(例えば45°)であるのが好ましいが、上記角度を緩い角度とするとポケット部5の上開口の巾が広くなり、横ずれ等の強度が弱くなる。
【0044】
そこで、ポケット部5の巾を狭くするために、傾斜面6の上部(フランジ部2側)を垂直面とすることで、ポケット部5の上開口の巾を狭くしているが、更に、図18のように図15に比べて、支点側から遠いポケット部5に挿入される支持脚4においては、更に、垂直面の高さH2を図15における垂直面の高さH1よりも長くすることができて、ポケット部5の上開口の巾を短くできる。
【0045】
つまり、一端部A又は他端部Bを持ち上げた時に支点からポケット部5が遠い方が支持脚4が高く持ち上げられ、この結果、一端部A又は他端部Bの持ち上げ高さは低くてもよく、持ち上げてスライドさせるという操作がしやすくなる。
【0046】
また、傾斜面6をポケット部5の上開口端部に近接又は当接させることにより、スライドがスムーズに行える。
【0047】
なお、添付図面に示す実施形態では支持脚4をリブで形成したが、図21のように内方側を開口させて外方側に面を形成してもよい。
【0048】
ところで、上記実施形態においては、2つの運搬用容器1を同一向きで積み上げた状態では下段の運搬用容器1のフランジ部2上に支持脚4の下端部が載置され、下段の運搬用容器1に対して平面視180°回転して上段の運搬用容器1を重ねた状態では下段の運搬用容器1のポケット部に上段の運搬用容器1の支持脚4が没入される同方向スタッキング及び異方向ネスティングの例で説明したが、図22に示すように、ポケット部5の下に支持脚4を形成することによって、同方向ネスティング及び異方向スタッキングも上記と同様な操作と効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の運搬用容器の斜視図である。
【図2】同上の正面図である。
【図3】同上の背面図である。
【図4】同上の平面図である。
【図5】同上の底面図である。
【図6】同上の右側面図である。
【図7】同上の左側面図である。
【図8】同上の側面断面図である。
【図9】同上の正面断面図である。
【図10】同上の運搬用容器をスタッキングした状態の正面図である。
【図11】同上のスタッキングした部分の拡大断面図である。
【図12】同上の運搬用容器をネスティングした状態の正面図である。
【図13】同上のネスティングした部分の側面断面図である。
【図14】同上のネスティングした部分の正面断面図である。
【図15】同上のネスティング状態で上段の運搬用容器の一端部を持ち上げて上段の運搬用容器を回動しながら抜き取る動作を示す説明図である。
【図16】同上のネスティング状態で上段の運搬用容器の一端部を持ち上げて上段の運搬用容器を回動しながら抜き取る動作を示す説明図である。
【図17】同上のネスティング状態で上段の運搬用容器の一端部を持ち上げて上段の運搬用容器を回動しながら抜き取る動作を示す説明図である。
【図18】同上のネスティング状態で上段の運搬用容器の図15とは反対側の端部を持ち上げて上段の運搬用容器を回動しながら抜き取る動作を示す説明図である。
【図19】傾斜リブを示し、(a)は拡大斜視図であり、(b)は拡大断面図である。
【図20】本発明の傾斜面の異なる例を示す運搬用容器の正面図である。
【図21】本発明の支持脚の異なる例を示す要部斜視図である。
【図22】本発明の運搬用容器の他の実施形態を示し、(a)は平面図であり、(b)は正面図であり、(c)は背面図である。
【図23】従来例においてネスティング状態で上段の運搬用容器の一端部を持ち上げて上段の運搬用容器をスライドさせながら引き出した際に、支持脚が手前側のポケット部に落ち込んだ場合の問題点を示す説明図である。
【符号の説明】
【0050】
1 運搬用容器
2 フランジ部
3 側壁部
4 支持脚
5 ポケット部
6 傾斜面
7 傾斜リブ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口した平面視長方形状をした運搬用容器の上開口部の外周部にフランジ部を形成し、対向する側壁部の外面部の各両端部付近にそれぞれ側壁部の外面より突出した支持脚を設け、側壁部に支持脚をはめ込むことのできる上方及び内方に開口したポケット部を形成し、2つの運搬用容器を積み上げたスタッキング状態では下段の運搬用容器のフランジ部上に支持脚の下端部が載置され、下段の運搬用容器に対して平面視180°回転して上段の運搬用容器を重ねたネスティング状態では下段の運搬用容器のポケット部に上段の運搬用容器の支持脚が没入されるように構成されたものにおいて、上段の運搬用容器の支持脚が下段の運搬用容器のフランジ部上をスライド自在とし、上記同じ側壁部に形成した一対の支持脚の互いに対向する面である内側面に、下端が下面に到り且つ下に行くほど互いに離れるように傾斜した傾斜面を形成し、ネスティング状態における上段の運搬用容器の他端部側を支点として一端部側を持ち上げて該持ち上げた側に近い方の支持脚部の外側面の下端が対応するポケット部よりも上方に位置した状態で、持ち上げた側から遠い側の支持脚の内側面に形成した傾斜面の少なくとも上端が対応するポケット部の上端とほぼ同じ高さ又は上方に位置するように設定して成ることを特徴とする運搬用容器。
【請求項2】
同じ側壁部に形成した一対の支持脚の互いに対向する傾斜面に、中央に向けて突出する傾斜リブを該傾斜面に沿って突出して成ることを特徴とする請求項1記載の運搬用容器。
【請求項1】
上方が開口した平面視長方形状をした運搬用容器の上開口部の外周部にフランジ部を形成し、対向する側壁部の外面部の各両端部付近にそれぞれ側壁部の外面より突出した支持脚を設け、側壁部に支持脚をはめ込むことのできる上方及び内方に開口したポケット部を形成し、2つの運搬用容器を積み上げたスタッキング状態では下段の運搬用容器のフランジ部上に支持脚の下端部が載置され、下段の運搬用容器に対して平面視180°回転して上段の運搬用容器を重ねたネスティング状態では下段の運搬用容器のポケット部に上段の運搬用容器の支持脚が没入されるように構成されたものにおいて、上段の運搬用容器の支持脚が下段の運搬用容器のフランジ部上をスライド自在とし、上記同じ側壁部に形成した一対の支持脚の互いに対向する面である内側面に、下端が下面に到り且つ下に行くほど互いに離れるように傾斜した傾斜面を形成し、ネスティング状態における上段の運搬用容器の他端部側を支点として一端部側を持ち上げて該持ち上げた側に近い方の支持脚部の外側面の下端が対応するポケット部よりも上方に位置した状態で、持ち上げた側から遠い側の支持脚の内側面に形成した傾斜面の少なくとも上端が対応するポケット部の上端とほぼ同じ高さ又は上方に位置するように設定して成ることを特徴とする運搬用容器。
【請求項2】
同じ側壁部に形成した一対の支持脚の互いに対向する傾斜面に、中央に向けて突出する傾斜リブを該傾斜面に沿って突出して成ることを特徴とする請求項1記載の運搬用容器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2010−126171(P2010−126171A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300010(P2008−300010)
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000010054)岐阜プラスチック工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月25日(2008.11.25)
【出願人】(000010054)岐阜プラスチック工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]