説明

運搬装置、および太陽光発電装置の運搬設置方法

【課題】障害物を跨いで走行することができ、装置本体を下降させた状態での全高を低下させることができる運搬装置を提供する。
【解決手段】運搬装置10は、運搬物としての太陽光発電装置1が載置される装置本体40と、装置本体40を昇降させる複数の昇降機構60と、複数の昇降機構60を介して装置本体40に取付けられる複数の走行機構50とを備える。複数の昇降機構60は、装置本体40を、その底端が走行機構50の天端よりも低くなる高さを最下位として昇降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬装置、および太陽光発電装置の運搬設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
荷台や作業台を昇降させるパンタグラフ等の昇降機構と、クローラー(無限軌道)等の走行機構とを備える運搬車や作業車等が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。特許文献1〜3に記載の運搬車や作業車等では、本体フレームやエンジンが左右の走行機構の間に配され、その上のフレームや台に、荷台や作業台が昇降機構を介して支持されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5―5564号公報
【特許文献2】特開2010−100203号公報
【特許文献3】特開平9−58987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、運搬車や作業車の走行路に、地面から突出した基礎等の障害物が存在する場合が考えられるが、上述の運搬車や作業車は、左右の走行機構の間に本体フレームやエンジンが昇降不能に配されていることから、上記の障害物を跨いで走行することができない。また、上述の運搬車や作業車は、左右の走行機構の間に昇降不能に配された本体フレームの上に、昇降機構を介して荷台や作業台が支持されていることから、荷台や作業台を下降させた状態での全高を低くすることについての制限が大きい。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、障害物を跨いで走行することができ、荷台を下降させた状態での全高を低下させることができる運搬装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る運搬装置は、運搬物が載置される装置本体と、前記装置本体を昇降させる複数の昇降機構と、前記複数の昇降機構を介して前記装置本体に取付けられる複数の走行機構と、を備える。
【0007】
上記運搬装置において、複数の昇降機構の各々が、前記複数の走行機構の各々に対応して設けられてもよい。
【0008】
上記運搬装置において、前記複数の昇降機構は、前記装置本体を、その底端が前記走行機構の天端よりも低くなる高さを最下位として昇降させてもよい。
【0009】
上記運搬装置において、前記昇降機構は、シリンダ部と該シリンダ部に沿って摺動するピストン軸部とを備えるシリンダ装置を備えてもよく、前記シリンダ部及び前記ピストン軸部の何れか一方は、その下端の高さが前記走行機構の天端よりも低くなるように前記走行機構側に固定され、前記シリンダ部及び前記ピストン軸部の何れか他方は、前記装置本体の側に固定されてもよい。
【0010】
上記運搬装置において、前記装置本体は、平面視にて矩形状に構成されていてもよく、前記走行機構は、前記装置本体の四方端の近傍に配されてもよい。
【0011】
上記運搬装置は、前記複数の走行機構を旋回させる複数の旋回機構を備えてもよい。
【0012】
上記運搬装置において、前記装置本体は、前記昇降機構に支持された本体部と、前記本体部の上に平面移動可能に配され、前記運搬物が載置される可動部と、を備えてもよい。
【0013】
また、本発明に係る太陽光発電装置の運搬設置方法は、複数の太陽電池パネルと、前記複数の太陽電池パネルを支持する架台とを備える太陽光発電装置を、基礎が設けられた設置場所まで運搬し、前記基礎の上に設置する方法であって、運搬物が載置される装置本体と、前記装置本体を昇降させる複数の昇降機構と、前記複数の昇降機構を介して前記装置本体に取付けられる複数の走行機構とを備える運搬装置を使用して前記太陽光発電装置を前記設置場所まで運搬し、前記基礎の上に設置する。
【発明の効果】
【0014】
上記運搬装置によれば、障害物を跨いで走行することができ、荷台を下降させた状態での全高を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態に係る運搬装置を使用して多数の太陽光発電装置を設置したメガソーラー発電所を示す平面図である。
【図2】太陽光発電装置を示す斜視図である。
【図3】一実施形態に係る運搬装置を示す平面図である。
【図4】一実施形態に係る運搬装置を示す正面図である。
【図5】一実施形態に係る運搬装置を示す正面図である。
【図6】一実施形態に係る運搬装置を示す側面図である。
【図7】他の実施形態に係る運搬装置を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、一実施形態に係る運搬装置10を使用して多数の太陽光発電装置1を設置したメガソーラー発電所100を示す平面図である。この図に示すように、メガソーラー発電所100では、多数の太陽光発電装置1が、縦横に並べて設置されている。
【0017】
図2は、太陽光発電装置1を示す斜視図である。この図に示すように、太陽光発電装置1は、縦横に配列された複数の太陽電池パネル12と、複数の太陽電池パネル12が据付けられる架台20とを備えている。本実施形態では、各太陽光発電装置1は、40枚の太陽電池パネル12が4行10列(縦方向に4枚、横方向に10枚)で配列されている。
【0018】
太陽電池パネル12は、裏面と周縁部とは金属で形成され、表面はガラスで形成されており、表裏面の間に光起電力素子が収容されている。また、架台20は、太陽光発電装置10の設置場所に構築された複数組の基礎22、23と、複数組の基礎22、23に支持された架構24と、架構24と太陽電池パネル12との間に配された複数の母屋材26とを備えている。
【0019】
本実施形態では、6組の基礎22、23が6列で配列されている。この基礎22、23は、太陽光発電装置10の設置場所の上に載置されており、ボルト穴を有するインサートが埋設されている。また、架構24は、複数の母屋材受け材28と、各母屋材受け材28を各組の基礎22、23に支持する複数組の支柱30、31、32とを備えている。
【0020】
各母屋材受け材28は、列方向(縦方向)に沿って配されており、複数の母屋材受け材28は、行方向(横方向)に所定間隔おきに配されている。支柱30は、基礎22上に固定されて鉛直に立てられており、母屋材受け材28の一端側を支持している。支柱30の下部にはブラケット30Aが設けられており、このブラケット30Aと基礎22に埋設されたインサートとがボルトで締結されている。
【0021】
また、支柱31は、支柱30よりも長尺であって、基礎23上のブラケット23Aに固定されて鉛直に立てられており、母屋材受け材28の他端側を支持している。支柱31の下部にはブラケット31Aが設けられており、このブラケット31Aと基礎23に埋設されたインサートとがボルトで締結されている。さらに、支柱32は、支柱31よりも長尺の斜材であって、基礎23に固定されて斜めに立てられており、母屋材受け材28の他端側を支持している。支柱32の下部は支柱31の下部にボルトで締結されている。
【0022】
ここで、母屋材受け材28の他端側を支持する支柱31が、母屋材受け材28の一端側を支持する支柱30よりも長尺であることから、母屋材受け材28は、地面に対して傾斜しており、母屋材受け材28の一端部の地上高さは、他端部の地上高さよりも低くなっている。
【0023】
各母屋材26は、断面L字状の梁材であり、行方向(横方向)に沿って配されており、複数の母屋材26は、列方向(縦方向)に間隔を空けて配されている。母屋材26と母屋材受け材28とは、互の交点において連結されている。
【0024】
ここで、複数の母屋材26は、複数組(本実施形態では4組)に分けられ、各組の母屋材26が、各行の複数(本実施形態では5枚)の太陽電池パネル12の裏面に対向して配されており、各行の複数の太陽電池パネル12の裏面と各組の母屋材26の上面とがボルトで締結されている。従って、各行の複数の太陽電池パネル12が、地面に対して傾斜した状態で架台20に支持されている。
【0025】
図3は、運搬装置10を示す平面図であり、図4、図5は、運搬装置10を示す正面図であり、図6は、運搬装置10を示す側面図である。これらの図に示すように、運搬装置10は、太陽光発電装置10が載置される装置本体40と、装置本体40の周囲に互に離間して配された4個の走行機構50と、各走行機構50に対応して各々設けられ装置本体40を昇降させる4個の昇降機構60と、各走行機構50に対応して各々設けられ各走行機構50を旋回させる4個の旋回機構70と、装置本体40の中央部に配されたパワーユニット80とを備える装軌車両である。ここで、走行機構50と昇降機構60と旋回機構70とはユニット化されており、運搬装置10は、走行機構50と昇降機構60と旋回機構70とを備える複数の駆動ユニット11を備えている。
【0026】
装置本体40は、メインフレーム42と、メインフレーム42上に水平面内で移動可能に配された可動フレーム44とを備えている。メインフレーム42は、矩形状に配置された4本の鉄骨の柱部42Aや、この4本の柱部42Aの間に架渡されてこれらを連結する鉄骨の梁部42B、42C等を備えている。
【0027】
各柱部42Aは、各走行機構50に対応してその近傍に配されている。また、梁部42Bは梁部42Cよりも長尺であり、矩形状のフレームの長辺を構成する。また、梁部42Cの長さは、太陽光発電装置1の支柱30、31の間隔よりも短く設定されている。また、梁部42B、42Cは上下に配されており、下側の梁部42B、42Cは、柱部42Aの下端部に結合され、上側の梁部42B、42Cは、柱部42Aの中間部に結合されている。ここで、パワーユニット80は、メインフレーム42の中央に配されており、下側の一対の梁部42B等に固定されて支持されている。
【0028】
また、可動フレーム44は、矩形状に配置された2対の梁部44A、44B等を備えている。梁部44Aは梁部44Bよりも長尺であり、矩形状のフレームの長辺を構成する。また、また、梁部44Aは、メインフレーム42の梁部42Bよりも短尺であり、梁部44Bは、メインフレーム42の梁部42Cよりも長尺である。即ち、可動フレーム44の長辺は、メインフレーム42の長辺よりも短く、可動フレーム44の短辺は、メインフレーム42の短辺よりも長くなっている。
【0029】
また、可動フレーム44の四方端及び各辺中央には、太陽光発電装置1が載置される複数の受け台46、47、48が固定されている。受け台46は、一対の梁部44Aの一方の両端及び中央に設けられ、受け台47は、一対の梁部44Bの中央に設けられ、また、受け台48は、一対の梁部44Aの他方の両端及び中央に設けられている。受け台46、47、48の上面は、水平面に対して傾斜した斜面となっている。
【0030】
ここで、受け台46、47、48は、高さが異なっており、受け台46の高さが最も低く、受け台48の高さが最も高くなっている。また、受け台46、47、48の斜面は、面一、即ち、互いに段差が無い状態になっており、太陽光発電装置1の太陽電池パネル12を、受け台46、47、48の斜面で受けることができるようになっている。
【0031】
メインフレーム42上には、可動機構41が設けられている。この可動機構41は、可動フレーム44の四方端及び各辺中央に固定された複数(本実施形態では8個)のフリーベアリング43と、各フリーベアリング43に対応して設けられメインフレーム42上に固定された複数(本実施形態では8個)の台座45とを備えている。
【0032】
フリーベアリング43は、複数のボールトランスファーユニットが下向きに配されたボールテーブルである。また、台座45は、フリーベアリング43のボールを受ける矩形状の平面である座面45Aを有する。ここで、可動フレーム44の四方端に対応して設けられた4個の台座45には、フリーベアリング43の台座45からの落下を防止するためのL字状の壁部45Bが形成されている。
【0033】
走行機構50は、起動輪、転輪、遊動輪を囲むゴム製のクローラー52を起動輪で回転させることによって移動する無限軌道である。この走行機構50の長手方向(動輪の配列方向)の中央部には、旋回機構70が取付けられている。また、メインフレーム42の長手方向の両側には、一対の梁71が配されている。この梁71は、メインフレーム42の梁部42Cと平行に配されている。
【0034】
旋回機構70は、走行機構50を梁71の端部に鉛直な旋回軸72Aの周りに旋回可能に支持する旋回支持部72と、走行機構50を旋回軸72Aの周りに旋回させるステアリングシリンダ74とを備えている。旋回支持部72は、走行機構50のフレームに固定された逆U字状のブラケット72Bと、ブラケット72Bの上面から鉛直上方に延びる旋回軸72Aと、梁71の端部に固定され旋回軸72Aを回転可能に支持する軸受部72Cとを備えている。
【0035】
また、ステアリングシリンダ74は、油圧シリンダであって、梁71から張り出したブラケット71Aに鉛直軸の周りに回動可能に支持されたシリンダ部74Aと、ブラケット72Bに鉛直軸周りに回動可能に支持されたピストン軸部74Bとを備えている。ステアリングシリンダ74が伸縮することにより、走行機構50は旋回軸72Aの周りに旋回する。
【0036】
ここで、図3中に実線で示すように、ステアリングシリンダ74が最も収縮した状態で、クローラー52は、メインフレーム42の梁部42Bと平行になる。この状態から、ステアリングシリンダ74が伸長すると、クローラー52は、旋回軸72Aの周りに回転する。そして、ステアリングシリンダ74が最長になった状態で、クローラー52は、メインフレーム42の梁部42Cと平行になる。
【0037】
4個のクローラー52を、メインフレーム42の梁部42Bと平行にして駆動させることにより、運搬装置10をその長手方向に走行させることができ、4個のクローラー52を、メインフレーム42の梁部42Cと平行にして駆動させることにより、運搬装置10をその長手方向と直交する方向に走行させることができる。
【0038】
昇降機構60は、旋回軸72Aと支柱42Aとの間におけるこれらの近傍に配されている。この昇降機構60は、梁71の端部と支柱42Aとの間に配されたガイド軸62と、このガイド軸62に隣設された昇降シリンダ64とを備えている。ガイド軸62は、梁71の端部と支柱42Aとの間に配され梁71の端部と一体化された軸受部71Bに鉛直方向へ摺動可能に支持されている。また、昇降シリンダ64は、軸受部71Bに固定されている。
【0039】
ガイド軸62の下端は、支柱42Aの下端に、ガイド軸62の上端は、支柱42Aの上端にそれぞれ固定されている。また、昇降シリンダ64は、油圧シリンダであって、上端を軸受部71Bに固定されたシリンダ部64Aと、上端をガイド軸62の上端に固定されたピストン軸部64Bとを備えている。メインフレーム42の四方端に配された4個の昇降シリンダ64が一斉に伸縮することにより、装置本体40は、ガイド軸62に沿って昇降する。
【0040】
ここで、図4〜図6に示すように、シリンダ部64Aの下端は、クローラー52の起動輪の軸よりも低位に配されており、昇降シリンダ64が最も収縮した状態で、ガイド軸62の下端は、クローラー52の起動輪の軸より低位に位置する。これにより、昇降シリンダ64が最も収縮した状態で、装置本体40の底部は、クローラー52の起動輪の軸よりも低位に位置する。
【0041】
また、昇降シリンダ64が最も収縮した状態で、装置本体40の底部は、基礎22、23の天端よりも低位に位置し、受け台46、47、48の斜面は、太陽電池パネル12の下側に位置する。この状態から、昇降シリンダ64が伸長すると、装置本体40は、ガイド軸62に沿って上昇する。そして、図5に示すように、昇降シリンダ64が最長になった状態で、装置本体40の底部は、基礎22、23よりも高位に位置し、受け台46、47、48の斜面は、太陽電池パネル12の設置高さより高位に位置する。
【0042】
パワーユニット80は、走行機構50を駆動させるエンジンや、昇降シリンダ64及びステアリングシリンダ74を駆動させる油圧ポンプ等を収容する直方体状の筐体82を備えており、装置本体40と共に昇降する。ここで、筐体82は、メインフレーム42の梁部42Bに支持されており、太陽電池パネル12の下側の空間に収まるように、その高さが設定されている。
【0043】
また、図3に示すように、メインフレーム42の梁部42Bの両側に位置する一対のガイド軸62の間隔は、運搬装置10が3個の基礎22(または23)を跨いだり、一対の基礎22、23を跨いだりすることができるように設定されている。
【0044】
以下、太陽光発電装置1の運搬方法及び設置方法について説明する。まず、太陽光発電装置1の組立工程では、太陽光発電装置1の基礎22、23以外の部分を組み立て、基礎22、23と同程度の高さの台の上に載置する。
【0045】
次に、運搬装置10を、装置本体40を最低位まで下降させ、且つ、受け台46、47、48の斜面と太陽電池パネル12とを平行にした状態で、太陽電池パネル12の下に移動させる。この状態では、受け台46、47、48と太陽電池パネル12との間、パワーユニット80と太陽電池パネル12との間に隙間ができる。
【0046】
そして、昇降シリンダ64により装置本体40を最高位まで上昇させることにより、運搬装置10で太陽光発電装置1を持ち上げる。この状態で、運搬装置10を、太陽光発電装置1の設置場所まで走行させる。この際、運搬装置10を、その長手方向にクローラー52を向けた状態で、一対の基礎22、23の間を走行させる。あるいは、運搬装置10を、その長手方向と直交する方向にクローラー52を向けた状態で、一列に並んだ3個の基礎22(または23)を跨ぐようにして走行させる。
【0047】
そして、図3に示すように、運搬装置10を、3組の基礎22、23に囲まれる領域で停止させ、昇降シリンダ64により装置本体40を最低位まで下降させることにより、太陽光発電装置1を、3組の基礎22、23の上に降ろす。ここで、太陽光発電装置1を支持する可動フレーム44は、フリーベアリング43を介して水平面内で移動可能にメインフレーム42に支持されており、その可動フレーム44を移動させて太陽光発電装置1の位置を微調整することで、支柱30のブラケット30Aと基礎22のインサート、支柱31のブラケット31Aと基礎23のインサートの位置合わせを行う。そして、支柱30のブラケット30Aと基礎22のインサート、支柱31のブラケット31Aと基礎23のインサートとをボルトで締結する。
【0048】
以上で太陽光発電装置1の基礎22、23上への設置が完了する。その後、運搬装置10を、太陽光発電装置1の組立工程が実施されている場所へ移動させる。この際、受け台46、47、48と太陽電池パネル12との間に隙間ができるように、装置本体40を下降させ、この状態で、運搬装置10を、太陽光発電装置1を設置した一対の基礎22、23の間を通り抜けるようにして走行させる。その後は、運搬装置10を、太陽光発電装置1の間や下を通り抜けるように、あるいは、太陽光発電装置1が設置されていない場所を通り抜けるようにして、太陽光発電装置1の組立工程が実施されている場所へ移動させる。この際、運搬装置10の走行路に、太陽光発電装置1が未設置の基礎22(または23)が存在する場合には、昇降シリンダ64により装置本体40を上昇させて、運搬装置10を、一列に並んだ3個の基礎22(または23)を跨ぐようにして走行させる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態に係る運搬装置10では、走行機構50を、昇降機構60を介して装置本体40に取付け、昇降機構60により装置本体40を昇降させるように構成している。これにより、運搬装置10の走行路に基礎22、23等の地表面から突出した障害物が存する場合に、4個の走行機構50の間に配された装置本体40及びパワーユニット80を、昇降機構60により障害物の上側まで上昇させた状態で、運搬装置10を走行させることができ、以って、運搬装置10を、地表面から突出した障害物を跨ぐようにして走行させることができる。また、最下位まで下降させた装置本体40の全高を抑えることができ、以って、運搬装置10を、太陽光発電装置1等の全高が低い運搬物の下側に移動させることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態に係る運搬装置10では、装置本体40を、昇降機構60により、底端が走行機構50の天端よりも低くなる高さを最下位として昇降させるように構成した。これにより、最下位まで下降させた装置本体40の全高を、より一層抑えることができる。
【0051】
また、本実施形態に係る運搬装置10では、昇降シリンダ64のシリンダ部64Aを、その下端の高さが走行機構50の天端より低くなるように走行機構50側に固定し、ピストン軸部64Bを装置本体40側に固定している。これにより、ピストン軸部64Bの可動範囲を、走行機構50の天端よりも低い位置(上記実施形態では、クローラー52の起動輪の軸よりも低位)までに設定でき、最下位まで下降させた装置本体40の全高を、効果的に抑えることができる。
【0052】
また、本実施形態に係る運搬装置10は、複数の走行機構50を旋回させる複数の旋回機構70を備えている。これにより、運搬装置10を縦横に走行させることができ、以って、基礎22(または23)を跨ぐようにして太陽光発電装置1を運搬した運搬装置10を、基礎22、23上に降ろした太陽光発電装置1の下を通り抜けるように走行させたりすることができる。
【0053】
また、本実施形態に係る運搬装置10では、装置本体40が、昇降機構60に支持されたメインフレーム42と、メインフレーム42の上に水平面内で移動可能に配され、太陽光発電装置1が載置される可動フレーム44とを備えている。これにより、太陽光発電装置1を基礎22、23上に降ろす際に、可動フレーム44を水平面内で移動させることで、太陽光発電装置1の位置を微調整することができ、太陽光発電装置1の支柱30、31を基礎22、23に固定する作業を容易化できる。
【0054】
図7は、他の実施形態に係る運搬装置200を示す平面図である。この図に示すように、運搬装置200は、走行機構50及び旋回機構70を各4個備えるのに対し、昇降機構60を2個備える。各昇降機構60は、梁71の軸方向中央部とメインフレーム42の梁部42Cの軸方向中央部とを連結するように設けられており、これらの昇降シリンダ64が一斉に伸縮することにより、装置本体40が昇降される。
【0055】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【0056】
例えば、上述の実施形態では、走行機構50として不整地に適した無限軌道(クローラー)を例に挙げて本発明を説明したが、不整地での使用を前提としていない場合等には車輪で走行するもの等の他の走行機構を採用してもよい。また、昇降機構60として油圧シリンダを備える構成を例に挙げたが、空圧シリンダやネジ式ジャッキ等の他の駆動装置を備える昇降機構を採用してもよい。また、シリンダ部64Aを走行機構50側に、ピストン軸部64Bを装置本体40側に設けたが、シリンダ部64Aを装置本体40側に、ピストン軸部64Bを走行機構50側に設けてもよい。
【0057】
また、上述の実施形態では、旋回機構70として油圧シリンダを備える構成を例に挙げて本発明を説明したが、電動モータ等の他の駆動装置を備える旋回機構を採用してもよい。また、1個の走行機構を旋回させる旋回機構を、各走行機構に対応して設けることは必須ではなく、例えば、2個の走行機構を一斉に旋回させることができる旋回機構を、走行機構2個毎に1個ずつ設ける等してもよい。
【0058】
さらに、上述の実施形態では、太陽光発電装置1を運搬する運搬装置10を例に挙げて本発明を説明したが、基礎等の障害物が地表面から突出した建設現場で資材を運搬する運搬車等の他の運搬装置にも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 太陽光発電装置(運搬物)、10 運搬装置、11 駆動ユニット、12 太陽電池パネル、20 架台、22、23 基礎、24 架構、26 母屋材、28 母屋受け材、30、31、32 支柱、30A、31A ブラケット、40 装置本体、41 可動機構、42 メインフレーム(本体部)、42A 柱部、42B、42C 梁部、43 フリーベアリング、44 可動フレーム(可動部)、44A、44B 梁部、45 台座、45A 座面、45B 壁部、46、47、48 受け台、50 走行機構、52 クローラー、60 昇降機構、62 ガイド軸、64 昇降シリンダ、64A シリンダ部、64B ピストン軸部、70 旋回機構、71 梁、71A ブラケット、71B 軸受部、72 旋回支持部、72A 旋回軸、72B ブラケット、74 ステアリングシリンダ、74A シリンダ部、74B ピストン軸部、80 パワーユニット、82 筐体、100 メガソーラー発電所、200 運搬装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬物が載置される装置本体と、
前記装置本体を昇降させる複数の昇降機構と、
前記複数の昇降機構を介して前記装置本体に取付けられる複数の走行機構と、
を備える運搬装置。
【請求項2】
複数の昇降機構の各々が、前記複数の走行機構の各々に対応して設けられている請求項1に記載の運搬装置。
【請求項3】
前記複数の昇降機構は、前記装置本体を、その底端が前記走行機構の天端よりも低くなる高さを最下位として昇降させる請求項1又は請求項2に記載の運搬装置。
【請求項4】
前記昇降機構は、シリンダ部と該シリンダ部に沿って摺動するピストン軸部とを備えるシリンダ装置を備え、
前記シリンダ部及び前記ピストン軸部の何れか一方は、その下端の高さが前記走行機構の天端よりも低くなるように前記走行機構側に固定され、
前記シリンダ部及び前記ピストン軸部の何れか他方は、前記装置本体の側に固定されている請求項1から請求項3までの何れか1項に記載の運搬装置。
【請求項5】
前記装置本体は、平面視にて矩形状に構成されており、
前記走行機構は、前記装置本体の四方端の近傍に配されている請求項1から請求項4までの何れか1項に記載の運搬装置。
【請求項6】
前記複数の走行機構を旋回させる複数の旋回機構を備える請求項1から請求項5までの何れか1項に記載の運搬装置。
【請求項7】
前記装置本体は、
前記昇降機構に支持された本体部と、
前記本体部の上に平面移動可能に配され、前記運搬物が載置される可動部と、
を備える請求項1から請求項6までの何れか1項に記載の運搬装置。
【請求項8】
複数の太陽電池パネルと、前記複数の太陽電池パネルを支持する架台とを備える太陽光発電装置を、基礎が設けられた設置場所まで運搬し、前記基礎の上に設置する方法であって、
運搬物が載置される装置本体と、
前記装置本体を昇降させる複数の昇降機構と、
前記複数の昇降機構を介して前記装置本体に取付けられる複数の走行機構と、
を備える運搬装置を使用し、
前記複数の走行機構により前記運搬装置を前記太陽光発電装置の下まで走行させ、前記複数の昇降機構により前記装置本体を上昇させることによって、前記運搬装置に前記太陽光発電装置を保持させ、
前記太陽光発電装置を保持した状態の前記運搬装置を、前記複数の走行機構により前記設置場所まで走行させ、前記複数の昇降機構により前記装置本体を下降させることによって、前記太陽光発電装置を前記基礎の上に設置させる太陽光発電装置の運搬設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−201248(P2012−201248A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−68280(P2011−68280)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)