説明

道床タンピング装置

【目的】 タンピングツール部などの自重を利用してビータをバラスト内に挿入し、ビータの根元部分のバラストを支点としてタンピングツール部を梃子のようにこじりながらビータ先端を枕木の下方に押し込むことで、バラストからの反力が少なく、簡単な構成で小型軽量化された道床タンピング装置を提供する。
【構成】 振動モータ2によって振動するビータ3を有するタンピングツール部1と、装置の架台4に上下方向に設けられたガイド部材5と、ガイド部材5に昇降可能に支持されたスライダ6を有する。架台4とこのスライダの間に昇降用シリンダ13を設け、スライダ6をガイド部材5に沿って昇降させる。スライダ6に設けられた支軸を中心として、先端が上下方向に回動するリンク7を設ける。リンク7の先端に支軸を介して回動自在に支持部材8を支持する。支持部材8とタンピングツール部1とを防振部材を介して連結手段9により連結する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、軌道に敷設されたバラストをつき固めるための道床タンピング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、軌道の枕木を支持するために道床にはバラストが敷設されているが、このバラストを枕木の下に押し込んでつき固めるための装置として、道床タンピング装置が使用されている。このタンピング装置の基本的な構造は、振動モータによって振動する前後一対のビータと、前後のビータを開閉させ、昇降させるためのシリンダなどの開閉及び昇降手段を備えたものである。このタンピング装置によってバラストをつき固めるには、まず、装置の下部に設けられた一対のビータを枕木の前後から挟むようにしてバラスト内に挿入し、振動モータを利用してこのビータを振動させる。次に、開閉手段により前後のビータを枕木を挟んで開閉させ、ビータ先端を枕木の下方に押し込むようにして、バラストを枕木の下側に押し込んでつき固める。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前記のような道床タンピング装置としては各種のものが提案されているが、従来の装置は、装置の架台に設けた油圧シリンダの駆動力によりビータをバラスト内に挿入するものであるため、ビータ挿入時のバラストからの反力が油圧シリンダ、タンピングツール部の支持部、装置の架台などに伝わり、これら各部に高い強度が要求され、装置の大型化の原因になっていた。
【0004】また、従来の装置は、バラスト内に挿入したビータを開閉させてバラストを枕木の下方に押し込むに当たっても専用の油圧シリンダを使用していたが、この場合のバラストの反力もタンピングツール部の支持部や装置の架台で受けていたため、この理由からも装置の小型軽量化が困難であった。さらに、従来のようにビータのバラスト内への挿入と枕木下方への押し込みとを油圧シリンダで行うためには、挿入用と開閉用の2つの油圧シリンダが必要であって、装置の構成を複雑化していた。
【0005】また、従来の装置では、タンピングツール部と装置の架台との間に設ける防振手段の機能が低く、振動モータによるタンピングツール部の振動が装置の架台に伝達され、装置の耐久性を損なったり、作業環境を悪化させる原因になっていた。特に、ビータをバラスト内に挿入した場合に、バラストからの反力を受けてタンピングツール部は前後左右何れの方向にも振動するため、このような複雑な方向に発生する振動を効果的に緩和する手段の開発が望まれていた。
【0006】本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたもので、その第1の目的は、ビータのバラスト内への挿入動作と枕木側への開閉動作とを1つの昇降用シリンダによって行うことによって、タンピングツール部の支持部や装置の架台に加わるバラストからの反力を軽減するとともに、装置の小型軽量化、装置の構成の単純化を可能とした道床タンピング装置を提供することにある。
【0007】本発明の第2の目的は、スライダとリンク、このリンクとタンピングツール部の支持部材との連結部分の振動を効果的に緩和できる道床タンピング装置を提供することにある。
【0008】本発明の第3の目的は、バラストに対するビータの角度を適切に保つことができる道床タンピング装置を提供することにある。
【0009】本発明の第4の目的は、ビータの支持部材に伝わる直行する二方向からの振動を緩和することができる道床タンピング装置を提供することにある。
【0010】本発明の第5の目的は、ある一方向の大きな振動を緩和でき、さらにそれ以外の方向の通常の振動を緩和することができる道床タンピング装置を提供することにある。
【0011】本発明の第6の目的は、あらゆる方向の振動を効果的に緩和できる道床タンピング装置を提供することにある。
【0012】本発明の第7の目的は、平地における軌道であっても、さらに傾斜地における軌道であってもバラストに対するビータの角度を適切に保つことができる道床タンピング装置を提供することにある。
【0013】本発明の第8の目的は、タンピング位置を合わせるために、軌道上の装置を移動させ停止させた時に、移動時の振動によりタンピングツール部が揺れることを防止できる道床タンピング装置を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、振動モータおよびこの振動モータによって振動するビータを有するタンピングツール部と、このタンピングツール部を設けた架台を備えた道床タンピング装置において、前記架台に上下方向に設けられたガイド部材と、このガイド部材に昇降可能に支持されたスライダと、装置の架台と前記スライダの間に設けられ、このスライダを前記ガイド部材に沿って昇降させる昇降用シリンダと、前記スライダに対して設けられた支軸を中心として、先端が上下方向に回動するリンクと、このリンクの先端に支軸を介して回動自在に支持された支持部材と、この支持部材と前記タンピングツール部とを防振部材を介して連結する連結手段とを設けたことを特徴とする。
【0015】請求項2の発明は、スライダとリンク、このリンクとタンピングツール部の支持部材とを連結する支軸部に、防振部材を配設したことを特徴とする。
【0016】請求項3の発明は、スライダと支持部材に対する前記リンクの回動角度を規制するストッパを設けたことを特徴とする。
【0017】請求項4の発明は、タンピングツール部とその支持部材との間に設ける連結手段を、直交方向に配置された第一と第二の連結軸と、各連結軸とタンピングツール部またはその支持部材の間にそれぞれ設けられた防振部材から構成したことを特徴とする。
【0018】請求項5の発明は、第一と第二の連結軸に設ける防振部材のいずれか一方を連結軸の軸方向に沿った振動を緩和するブロック状防振部材とし、他方の連結軸に設ける防振部材を連結軸を周囲から包む筒形防振部材としたことを特徴とする。
【0019】請求項6の発明は、第一と第二の連結軸に設ける両方の防振部材を、それぞれの連結軸を周囲から包む筒形防振部材としたことを特徴とする。
【0020】請求項7の発明は、前記スライダと前記タンピングツール部または前記支持部材との間に、前記タンピングツール部を架台側に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする。
【0021】請求項8の発明は、前記スライダと前記タンピングツール部との間の互いに対向する位置に、弾性のある緩衝部材および表面が滑らかに加工された平滑部材を設けたことを特徴とする。
【0022】
【作用】上記のような構成を有する請求項1の発明においては、スライダによって支持されたタンピングツール部全体をガイドの上方に引き上げた状態で昇降用シリンダをフリー状態とする。すると、タンピングツール部全体がスライダと共にその自重でガイドに沿って落下し、その勢いとビータの振動でビータがバラスト内に挿入される。このようにタンピング装置を構成するビータ、振動モータ、リンクなどの自重によりビータをバラスト内に挿入するようにしたので、ビータをバラスト内に挿入するための昇降用シリンダなどの駆動手段が小型化される。また、ビータの挿入時にバラストから加わる反力を受けるための機構が不要となり、タンピングツール部の支持部が小型軽量化できる。
【0023】また、前記のようにしてバラスト内にビータを挿入した後、ビータによってバラストを枕木下方に押し込むには、ビータの根元部分とバラストの接触箇所を支点とし、昇降用シリンダを駆動してリンクを回動させタンピングツール部を梃子のようにこじりながら動かすことにより、ビータ先端を枕木の下方に移動させる。この時、バラストを押し込む反力は、支点となるバラスト自体で受けるので、タンピングツール部の支持部に反力が伝わることがなくなり、支持部の小型軽量化ができる。
【0024】さらに、タンピングツール部とその支持部とを、防振部材を有する連結手段によって連結しているので、この防振部材によりタンピングツール部側から支持部材や装置の架台に伝達する振動が緩和される。
【0025】請求項2の発明では、ビータをバラスト内に挿入したときにビータの先端がバラストに当たっても、リンクや支持部材の支軸部が防振構造になっているため、ビータ先端がバラストから容易に外れてバラスト間に挿入される。その結果、大きな反力を受けることなくバラスト内にビータを容易に挿入できる。
【0026】請求項3の発明では、リンクの回動範囲がストッパによって制限されるので、ビータをバラスト内に挿入する際に、バラストに対するビータの角度を適切に保つことが可能となり、ビータの挿入作業が円滑かつ有効に行われる。
【0027】請求項4の発明では、タンピングツール部とその支持部材との間に設ける防振手段として、直交方向に配置された第一と第二の連結軸のそれぞれに防振部材を設けたので、ビータの支持部材に伝わるいずれの方向からの振動も緩和することが可能となる。特に、ゴムなどの防振部材は、その形状によりバネ定数に方向性があることから、直交するねじれの方向に2つの防振部材を配置することにより、合成ばね定数が小さくなり、防振効果が向上する。
【0028】請求項5の発明では、ブロック状防振部材はその軸方向に沿った大きな振動を吸収することができ、筒形防振部材はその支軸を中心として放射状に広がる全方向の振動を吸収することができる。従って、一方の連結軸に設けたブロック状防振部材によってその軸方向に沿った大きな振動を緩和し、他方の連結軸に設けた筒形防振部材によってブロック状防振部材が緩和する以外の方向の振動を緩和することができる。
【0029】請求項6の発明では、直交する方向に配置された2つの筒形防振部材により、すべての方向の振動を効果的に吸収できる。
【0030】請求項7記載の発明では、スライダとタンピングツール部との間に設けられた付勢手段によりタンピングツール部が架台側に付勢されているので、傾斜面のバラストをタンピングする際には、タンピングツール部が架台とともに傾斜面に対してほぼ直行する方向に向く。したがって、ビータによる枕木の下へのバラストの押し込み作業が平地と同様に確実に行える。
【0031】請求項8記載の発明では、スライダとタンピングツール部との間の対向する位置に、弾性のある緩衝部材および表面が滑らかに加工された平滑部材が設けられているので、装置を移動させる際の振動によるタンピングツール部の揺れを防止することができる。
【0032】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に従って具体的に説明する。
【0033】(1)第一実施例の構成■全体の構成・・・図1〜図4図1ないし図4は第一実施例の基本的な構成を示す側面図で、図1はタンピングツール部の上昇時、図2はビータのバラストへの挿入時、図3はビータによるバラストの押し込み時の状態、図4は枕木間隔の異なる場合の作業例を示す。
【0034】図1に示すように、第一実施例の道床タンピング装置は、枕木Tを挟んで前後一対設けられていて、前後のタンピング装置のビータ先端を枕木Tの両側からその下方に押し込むことにより、枕木Tの下方にバラストをつき固めるものである。枕木Tの前後に配置される各タンピング装置は、振動モータ2とビータ3とを備えたタンピングツール部1、装置の架台4に上下方向に設けられたガイド部材5、およびこのガイド部材5に対して昇降可能に支持されたスライダ6とを有する。
【0035】スライダ6には、リンク7を介してタンピングツールの支持部材8が取り付けられ、この支持部材8に連結手段9を介してタンピングツール部1が支持されている。すなわち、スライダ6に設けられた支軸6aにリンク7の基部が回動自在に取り付けられ、このリンク7の先端とタンピングツール部1の支持部材8は支軸8aによって回動自在に連結されている。
【0036】スライダ6には、スライダ6に対するリンク7の回動範囲を規制する一対のストッパ10,11が設けられている。タンピングツール部1の支持部材8には、タンピングツール部1とリンク7との回動範囲を規制するストッパ12,12aが設けられている。架台4には、昇降用シリンダ13の基部が取り付けられている。この昇降用シリンダ13のピストンロッドの先端は、前記スライダ6に連結されている。
【0037】■連結手段と防振部材の構成・・・図5〜図9図5および図6の拡大図、図9の分解斜視図により、前記タンピングツール部1とその支持部材8、およびこれらの連結手段9の詳細を説明する。
【0038】タンピングツール部1は、平行に配置された一対の支持枠21,22を備え、この支持枠21,22の間に振動モータ2が固定され、一方の支持枠21の下部にビータ3の上部が固定されている。支持枠21,22の上部は取付板23によって連結され、支持枠21,22、振動モータ2及び取付板23によって枠状をしたタンピングツール部1が形成されている。
【0039】一方、タンピングツール部1の支持部材8は全体として角筒状の部材で、その上部にはリンク7との連結用の支軸8aが挿入されている。この支持部材8の相対する端面板30,30の中段、すなわちビータ3の開閉方向と直交する面の中段には、第一の取付孔31,31が設けられている。一方、支持部材8の相対する側面板32,32の下部、すなわちビータの開閉方向と平行な面の下部には、第二の取付孔33,33が設けられている。なお、本実施例では、端面板30,30のうち、第一の取付孔31,31を設けた部分は、他の部分より一段内側に凹んだ位置になっている。
【0040】前記のようなタンピングツール部1と支持部材8とを連結する連結手段9は、直交する第一および第二の連結軸41,42とこれらの連結軸41,42を挿入するための第一と第二のブロック43,44とを備えている。第一と第二のブロック43,44は、図9の斜視図に示すように、それぞれ直方体形であって、その中央部には第一と第二の連結軸41,42を挿入するための軸孔43a,44aが開口している。この第一と第二のブロック43,44は、それぞれに設けた軸孔43a,44aが直交する方向に上下に重ね合わされた状態で一体化されている。このうち、上方に位置する第一のブロック43の天井面に、タンピングツール部1の上部に設けられた取付板23が固定されている。
【0041】上方に位置する第一のブロック43の軸孔43aには、第一の連結軸41がねじ込まれている。第一の連結軸41はその径が比較的細い軸であって、この連結軸41には第一のブロック43を挟むように、例えばゴムのような弾性部材によって構成された一対のブロック状防振部材45,45が挿入されている。このブロック状防振部材45,45をはめ込んだ第一の連結軸41の両端は、それぞれ前記支持部材8の端面板30に形成された第一の取付孔31に挿入され、端面板30の外側からはめ込んだ板材46およびナット47によって両側の端面板30に固定されている。その結果、図7の断面図に示すように、第一のブロック43は支持部材8に対して第一の連結軸41を介して連結され、しかも第一のブロック43と支持部材8の端面板30,30との間にブロック状防振部材45,45が挟みこまれている。
【0042】下方に位置する第二のブロック44の軸孔44aには、第二の連結軸42が挿入されている。第二の連結軸42はその径が比較的太い軸であって、第二の連結軸42の中央部には筒形防振部材48がはめ込まれ、この筒形防振部材48の部分で第二のブロック44と第二の連結軸42とが一体化されている。この場合、筒形防振部材48と第二のブロック44とは、第二のブロック44の両面に設けたリング49およびボルト50によって固定されている。第二の連結軸42には第二のブロック44を挟むように、一対のカラー51,51が挿入されている。
【0043】第二の連結軸42の両端のカラー51,51は、前記支持部材8の側面板32,32に形成された第二の取付孔33に挿入されていて、筒形防振部材48が連結軸42の軸方向へのずれを防止し、側面板32,32の外側からはめ込んだリング52およびナット53によって固定されている。その結果、図8の断面図に示すように、第二のブロック44は支持部材8に対して第二の連結軸42を介して連結され、しかも第二のブロック44と第二の連結軸42の間には筒形防振部材48が、第二のブロック44と支持部材8の端面板30との間にはカラー51が挟みこまれている。
【0044】(2)第一実施例の作用上記のような構成を有する第一実施例の装置において、道床のタンピング作業は次のようにして行われる。
【0045】■バラストの押し込み作業タンピング装置の回送時などにおいては、図1に示すように、前後のタンピング装置のそれぞれについて、昇降用シリンダ13のピストンロッドを引き込んでスライダ6をガイド部材5に沿って上昇させておく。すると、このスライダ6にリンク7を介して連結されているタンピングツール部1も軌条の上方に引き上げられ、収納状態となる。この時、タンピングツール部1はその自重により下降しようとするが、スライダ6に設けられたストッパ10によってリンク7の回動範囲が規制されているので、リンク7は斜め下方に回動した位置に保持され、スライダ6とリンク7とが一定の角度で屈曲した状態になっている。また、支持部材8に設けられたストッパ12がリンク7の上面と接して、タンピングツール部1はその動きが規制されている。
【0046】道床のタンピング作業を行うには、まず振動モータ2を駆動してビータ3を振動させてから、タンピングツール部1を支持している昇降用シリンダ13をフリー状態にする。すると、上昇位置にあるスライダ6およびこれに連結されたタンピングツール部1がその自重によりガイド部材5に沿って下降し、図2に示すように、ビータ3はタンピングツール部1などの自重および落下の加速度によってバラスト内に勢い良く挿入される。また、ビータ先端の振動により、より深くバラスト中に沈降する。さらに、バラストの粒上にビータ3の先端が乗り、ビータ3が沈降不可能になる場合、リンク7はスライダ6に設けられた支軸6aとタンピングツール部1の支持部材8の支軸8aとの連結部に防振部材6b,8bが配設されているので、これらの防振部材6b,8bの変形により適度にビータ3の先端がずれ、前記のバラスト粒を回避してバラスト内に挿入することができる。
【0047】このようにしてビータ3がバラスト内に挿入された状態で、昇降用シリンダ13を駆動しそのピストンロッドを伸ばすと、この昇降用シリンダの力によってスライダ6が更に下降する。この時、タンピングツール部1はビータ3がバラスト内に挿入されてバラストの抵抗により下降速度が低下する。これにより、スライダ6を介して昇降用シリンダ13の押圧力はリンク7をタンピングツール部1側の支軸8aを中心として回動させる方向に働く。その結果、図3に示すように、リンク7がストッパ11により規制され、スライダ6とリンク7との角度が180度に近くなって、タンピングツール部1の上部がスライダ6から離れる方向に押圧される。これに伴って、ビータ3はその根元部分に接しているバラストを支点として梃子のように動き、ビータ3の先端は枕木Tの下方にバラストを押し込む方向に移動する。この時、ビータ3は支持部材8に設けられたストッパ12aがリンク7に接して規制されるまで回動する。
【0048】以下、昇降用シリンダ13によるスライダ6の昇降動作を繰り返すことにより、スライダ6、リンク7およびタンピングツール部1の角度を変化させ、ビータ3をその根元部分のバラストを支点として枕木Tに対して開閉させる。
【0049】前記の説明は、枕木Tを挟んで前後(レールの長手方向)に配置した各タンピング装置を同時に駆動し、枕木Tを前後から挟みこむようにしてバラストのつき固めを行った場合であるが、例えばポイントや踏切部分のように枕木Tの間隔が異なったり、障害物がある場合には、図4に示すように、一方のタンピング装置のみを使用してバラストのつき固めを行うことも可能である。また、図示しないが、タンピング装置全体をガイドに沿って移動可能としておき、カードレールがある場合には、シリンダによって枕木Tの長手方向に移動させてもよい。
【0050】■防振機能前記のようにして、バラストのつき固めを行う場合、振動モータ2によってビータ3が振動するのと同時に、タンピングツール部1全体も振動する。本実施例では、連結手段9部分に設けたブロック状防振部材45および筒形防振部材48によってタンピングツール部1側の振動が支持部材8やリンク7側に伝わることが緩和される。すなわち、タンピングツール部1の振動は、その上部の取付板23に固定された第一のブロック43およびこれに一体化された第二のブロック44に伝達される。
【0051】ところが、第一のブロック43と支持部材8の端面板30との間には、第一の連結軸41にはめ込まれたブロック状防振部材45が配置されているので、第一の連結軸41の軸方向に沿った振動はこのブロック状防振部材45が変形することによって吸収緩和される。また、このブロック状防振部材45によっては吸収できない他の方向の振動(第一の連結軸41の軸方向と直交する方向の振動)は、第二の連結軸42の周囲にはめ込んだ筒形防振部材48が変形することにより吸収される。すなわち、筒形防振部材48は半径方向の肉厚が変化することにより振動を吸収するものであるから、第二の連結軸42を中心とした放射状の全方向に対する振動を吸収することができる。さらに、本実施例では、第二の連結軸42の軸方向に沿った振動は、筒形防振部材48の軸方向のせん断変形によって吸収することができる。
【0052】このように第一実施例によれば、第一の連結軸41に設けたブロック状防振部材45と、これと直交する第二の連結軸42に設けた筒形防振部材48との組み合わせによって、いずれの方向の振動も効果的に緩和することができる。特に、タンピング装置では、ビータのバラスト挿入時や開閉時において、ビータの横方向のずれを規制しバラストのつき固め力に耐えるために、タンピングツール部1とその支持部材8との間の防振部材には高剛性が要求される。しかし、本実施例によれば、前記のような直交する第一と第二の連結軸に設ける2種類の防振部材により、高剛性の防振部材を使用しながら連結手段9全体の合成ばね定数を小さくすることができ、防振効果を向上させることができる。
【0053】さらに、スライダ6とリンク7とを連結する支軸6a部分、およびリンク7と支持部材8を連結する支軸8a部分に防振部材を設け、タンピングツール部1全体をリンク7によって吊り下げることによって、タンピングツール部1側の振動が装置の架台側に伝達することをより効果的に防止できるとともに、ビータ3の挿入時にビータ3の先端がバラスト粒に当たっても、支軸6aと支軸8aの防振部材によって、ビータ3の先端がバラスト粒から外れ、容易にバラスト間にビータ3の先端が入る効果がある。
【0054】(3)第二実施例の構成以上のような第一実施例の構成においては、支軸8aを中心とするタンピングツール部1の回動の自由度が高い。したがって、傾斜面におけるタンピング作業を行う場合には、図10に示すように、タンピングツール部1は支軸8aを中心として回動し、鉛直方向に向く。すると、枕木Tに対する位置合わせがしにくく、また、枕木T直下のバラストのタンピング作業を行うことが困難となる。これに対処するため提案されたものが、第二実施例である。以下、この第二実施例を図面に従って説明する。図11ないし図12は、第二実施例の基本的な構成を示す側面図で、図11は車両に装備された本実施例の側面図、図12は本実施例におけるスライダおよびタンピングツール部の側面拡大図を示す。また、第一実施例と同一の部材は同一の符号を付し、説明を省略する。
【0055】図11に示すように、軌道U上を走行可能な車両60の前方に、取付用フレーム61が設けられている。車両60の後方には、操作ボックス62および操作用シート63が、支柱パイプによって固定されている。このような車両60の左右(軌道Uの幅方向)に、架台4が取付用フレーム61によって垂直に支持されている。左右の架台4の前後には、第一実施例と同様に、スライダ6、リンク7、支持部材8を介してタンピングツール部1が設けられている。そして、前後のタンピングツール部1の支持部材8には、図12に示すように、コイルバネ64の一端が接続されている。このコイルバネ64の他端はスライダ6の下端に接続され、タンピングツール部1はコイルバネ64によって架台4側に付勢されている。
【0056】架台4側の支持枠66には、スライダ6に対向する箇所にウレタンゴム製あるいは耐摩耗性を有する弾性体の緩衝部材67が設けられている。一方、スライダ6におけるタンピングツール部1側の側面は、板68によって形成されている。この板68の下部には、タンピングツール部1側の緩衝部材67に接する位置に、自己潤滑性樹脂製の平滑部材69が設けられている。自己潤滑性樹脂は一般のナイロンよりも耐摩耗性に優れた素材であり、これを素材とする平滑部材69は、緩衝部材67と接する面が滑らかに加工されている。
【0057】(4)第二実施例の作用以上のような構成を有する第二実施例においては、道床のタンピング作業は次のようにして行う。なお、本実施例は、平地における作業は第一実施例と同様に行うことができるので、説明は省略する。すなわち、図13に示すように、まず、操作員が操作シート63に乗り操作ボックス62を操作して、斜面の軌道U上にある車両を走行させ、架台4が目的の枕木Tの上方に来るように位置合わせをする。このとき、架台4は軌道Uおよび斜面に対して直交する方向に向いている。谷側のタンピングツール部1はコイルバネ64によって架台4側に付勢されているので、架台4が斜面に対して直交する方向に向くと、タンピングツール部1も斜面に対してほぼ直交する方向に向く。また、山側のタンピングツール部1は、緩衝部材67および平滑部材69によって下方への回動を規制されるので、架台4が斜面に対して直交する方向に向くと、タンピングツール部1も斜面に対してほぼ直交する方向に向く。すると、ビータ3は架台4の直下にある目的の枕木Tを挟んで前後に位置する。この状態で、第一実施例と同様に、スライダ6を下降させてタンピング作業を行う。ビータ3は平地と同様に枕木Tを挟んで前後に位置しているので、平地と同様のタンピング作業を行うことができる。
【0058】さらに、他の枕木Tの下のタンピング作業を行う場合には、スライダ6を上昇させてタンピングツール部1のビータ3を地面から抜く。そして、車両を走行させて、所望の枕木Tの上方に移動させる。このとき、支持枠66に設けられた緩衝部材67とスライダ6に設けられた平滑部材69とが接しているので、移動中の振動は緩衝部材67によって吸収され、タンピングツール部1の揺れが防止される。したがって、枕木Tに対するビータ3の位置合わせを、正確に行うことができる。また、平滑部材65の表面は滑らかに加工されているので、タンピング作業時のタンピングツール部1の回動は滑らかにおこなわれる。
【0059】(5)他の実施例本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、図14〜図18に示すような他の実施例も包含する。すなわち、この第三実施例は、直交する第一と第二の連結軸42a,42にそれぞれ筒形防振部材48を設けたものである。この場合、前記第一実施例の第二の連結軸42のように、連結軸42a,42の中央部分にそれぞれ筒形防振部材48を設け、この筒形防振部材48を介して第一、第二のブロック43a,44と各連結軸42a,42をはめ合わせる。また、各連結軸42a,42の両端部には、各ブロック43a,44を挟むようにカラー51a,51をはめ込み、支持部材8と各ブロック43a,44との間にカラー51a,51を配置する。このような第三実施例においても、直交方向に配置され2つの筒形防振部材48によって振動モータによって生じる全方向の振動を効果的に吸収、緩和することができる。
【0060】また、第二実施例において、タンピングツール部1を架台4側に付勢する付勢手段は、コイルバネ64には限定されず、板バネ等をタンピングツール部1とスライダ6との間に設ける構成にしてもよい。そして、緩衝部材67をスライダ6側面の板68側に設け、平滑部材69をタンピングツール部1の支持枠66側に設ける構成としてもよい。さらに、緩衝部材67の材料は、ウレタンゴムに限定されず、弾性を有する材料であればよい。また、平滑部材69の材料は、自己潤滑性樹脂には限定されず、摩擦熱に強く表面を滑らかに加工できる素材であればよい。
【0061】
【発明の効果】以上の通り、本発明は、タンピングツール部などの自重を利用してビータをバラスト内に挿入すると共に、ビータの根元部分のバラストを支点としてタンピングツール部を梃子のようにこじりながらビータ先端を枕木の下方に押し込むようにしたので、バラストからの反力が少なく、簡単な構成で小型軽量化された道床タンピング装置を提供することができる。
【0062】より具体的に述べると、請求項1の発明においては、タンピング装置の自重によりビータをバラスト内に挿入できるため、駆動手段を小型化できるという効果が得られる。また、ビータの挿入時にバラストから加わる反力を受けるための機構が不要となり、しかも、ビータの挿入後、バラストを枕木下方に押し込む際の反力がタンピングツール部の支持部に伝わることがなくなるため、タンピングツール部の支持部を小型軽量化できるという効果も得られる。さらに、タンピングツール部とその支持部とを、防振部材を有する連結手段によって連結しているため、タンピングツール部側から支持部材や装置の架台に伝達する振動を緩和できるという効果も得られる。
【0063】請求項2の発明では、リンクや支持部材の支軸部が防振構造になっているため、ビータ先端を容易にバラストから外すことができ、その結果、大きな反力を受けることなくバラスト内にビータを容易に挿入できるという効果が得られる。
【0064】請求項3の発明では、リンクの回動範囲をストッパによって制限できるため、バラストに対するビータの角度を適切に保つことが可能となり、ビータの挿入作業を円滑かつ有効に行うことができるという効果が得られる。
【0065】請求項4の発明では、直交方向に配置された第一と第二の連結軸のそれぞれに防振部材を設けているため、ビータの支持部材に伝わるいずれの方向からの振動も緩和できるという効果が得られる。
【0066】請求項5の発明では、一方の連結軸に設けたブロック状防振部材によってその軸方向に沿った大きな振動を緩和し、他方の連結軸に設けた筒形防振部材によってブロック状防振部材が緩和する以外の方向の振動を緩和することができ、その結果、これらの防振部材によって全方向の振動を緩和することができるという効果が得られる。
【0067】請求項6の発明では、直交配置された2つの筒形防振部材により、全方向の振動を吸収できるという効果が得られる。
【0068】請求項7の発明では、傾斜面のバラストをタンピングする際に、架台が傾斜面に直行する方向に向いても、付勢手段があるために、タンピングツール部に設けられたビータも傾斜面に対してほぼ直交する方向に向く。したがって、斜面であっても枕木の下へのバラストの押し込み作業が確実に行えるので、装置の適用範囲が広い。
【0069】請求項8の発明では、装置を移動させる際のビータの振動によるタンピングツール部の揺れを、緩衝部材および平滑部材によって防止することができるので、枕木に対するビータの位置合わせを確実におこなうことができ、作業効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の道床タンピング装置の第一実施例を示す側面図で、タンピングツールの収納状態を示す。
【図2】第一実施例において、バラストにビータを挿入した状態を示す側面図。
【図3】第一実施例において、ビータ先端を枕木下方に押し込んだ状態を示す側面図。
【図4】第一実施例において、枕木間隔が異なる場所での作業状態を示す側面図。
【図5】第一実施例におけるタンピングツール部の拡大側面図。
【図6】第一実施例におけるタンピングツール部の拡大正面図。
【図7】図6のY−Y線断面図。
【図8】図5のX−X線断面図。
【図9】第一実施例における連結手段部分の分解斜視図。
【図10】斜面のバラストをタンピングする際の第一実施例を示す側面図。
【図11】本発明の道床タンピング装置の第二実施例を示す側面図で、軌道を走行する車両に設けられたものを示す。
【図12】第二実施例におけるタンピングツール部およびスライダの拡大側面図。
【図13】斜面のバラストをタンピングする際の第二実施例を示す側面図。
【図14】本発明の第三実施例におけるタンピングツール部の拡大側面図。
【図15】第三実施例におけるタンピングツール部の拡大正面図。
【図16】図11のY−Y線断面図。
【図17】図10のX−X線断面図。
【図18】第三実施例における連結手段部分の分解斜視図。
【符号の説明】
1…タンピングツール部
2…振動モータ
3…ビータ
4…架台
5…ガイド部材
6…スライダ
6a,8a…支軸
6b,8b…防振部材
7…リンク
8…支持部材
9…連結手段
10…ストッパ
13…昇降用シリンダ
21,22,65,66…支持枠
23…取付板
30…端面板
31…取付孔
32…側面板
41…第一の連結軸
42…第二の連結軸
43,44…ブロック
43a,44a…軸孔
45…ブロック状防振部材
48…筒形防振部材
51…カラー
60…車両
61…取付用フレーム
62…操作用ボックス
63…操作用シート
64…コイルスプリング
67…緩衝部材
68…板
69…平滑部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】 振動モータおよびこの振動モータによって振動するビータを有するタンピングツール部と、このタンピングツール部を設けた架台を備えた道床タンピング装置において、前記架台に上下方向に設けられたガイド部材と、このガイド部材に昇降可能に支持されたスライダと、装置の架台と前記スライダの間に設けられ、このスライダを前記ガイド部材に沿って昇降させる昇降用シリンダと、前記スライダに対して設けられた支軸を中心として、先端が上下方向に回動するリンクと、このリンクの先端に支軸を介して回動自在に支持されたタンピングツール部の支持部材と、この支持部材と前記タンピングツール部とを防振部材を介して連結する連結手段とを設けたことを特徴とする道床タンピング装置。
【請求項2】 スライダとリンク、このリンクとタンピングツール部の支持部材とを連結する支軸部に、防振部材を配設したことを特徴とする請求項1の道床タンピング装置。
【請求項3】 スライダとタンピングツール部の支持部材に対する前記リンクの回動角度を規制するストッパを設けたことを特徴とする請求項1または請求項2の道床タンピング装置。
【請求項4】 タンピングツール部とその支持部材との間に設ける連結手段を、直交方向に配置された第一と第二の連結軸と、各連結軸とタンピングツール部またはその支持部材の間にそれぞれ設けられた防振部材とから構成したことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3の道床タンピング装置。
【請求項5】 第一と第二の連結軸に設ける防振部材のいずれか一方を連結軸の軸方向に沿った振動を緩和するブロック状防振部材とし、他方の連結軸に設ける防振部材を連結軸を周囲から包む筒形防振部材としたことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4の道床タンピング装置。
【請求項6】 第一と第二の連結軸に設ける両方の防振部材を、それぞれの連結軸を周囲から包む筒形防振部材としたことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5の道床タンピング装置。
【請求項7】 前記スライダと前記タンピングツール部または前記支持部材との間に、前記タンピングツール部を架台側に付勢する付勢手段を設けたことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5または請求項6の道床タンピング装置。
【請求項8】 前記スライダと前記タンピングツール部との間の互いに対向する位置に、弾性のある緩衝部材および表面が滑らかに加工された平滑部材を設けたことを特徴とする請求項7の道床タンピング装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図4】
image rotate


【図6】
image rotate


【図7】
image rotate


【図5】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【図10】
image rotate


【図16】
image rotate


【図17】
image rotate


【図11】
image rotate


【図12】
image rotate


【図13】
image rotate


【図14】
image rotate


【図15】
image rotate


【図18】
image rotate