説明

道路標識システム

【課題】表示板の取替えを行うことなく、時や場所等に応じて道路情報・案内等の識別情報を変更することができる道路標識システムを提供すること。
【解決手段】案内標識装置1A又は案内標識装置1Bの設置位置を移動させる毎にGPS受信部4A、4Bが作動し、位置情報が更新される。制御部30A、30Bは、更新された情報に基づいて識別情報信号をその都度設定し、識別情報を表示装置3A、3Bにより表示画像として投影させる。これにより、道路標識システムは、表示板の取替えのような作業を行うことなく自動的に、時や場所等に応じて道路情報・案内等の識別情報を変更することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路情報・案内等の識別情報を表示するための表示装置を有する道路標識システムに関する。
【背景技術】
【0002】
道路情報・案内等の識別情報を表示する標識として、正面側と背面側とで異なる文字や図柄からなる表示板を有し、回動操作を行う機構を設けることにより表示板の表示内容を取替える作業を容易にするものが知られている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2869779号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、道路情報・案内等の内容を表示する表示板について、回転動作等により、表示板の表面と裏面とで識別情報の切り替えが可能であっても、表示内容の変更には制限がある。このような制限のある態様では、例えば、道路の舗装工事現場での使用のように、場所や時の変化に応じて標識の表示内容を逐次変更する必要がある場合には十分な対応ができず、表示板ごと別の表示板に取替えて表示内容を変更する必要が依然生じる可能性がある。
【0004】
そこで、本発明は、表示板の取替えを行うことなく、場所や時等に応じて道路情報・案内等の識別情報を変更することができる道路標識システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る道路標識システムは、(a)全地球測位システムにより位置情報を取得する受信手段と双方向通信回路を設けた通信手段と前記位置情報に関連する識別情報を表示するための表示装置と前記表示装置により表示すべき識別情報を設定する制御手段とを有する案内標識手段と、(b)前記双方向通信回路を介して前記案内標識手段と交信可能であり、前記案内標識手段の前記受信手段が取得した前記位置情報を受け取り、当該位置情報に対応する地図情報を読み出すとともに前記案内標識手段の設置位置を基準とする道程演算を行い、当該道程演算の結果を前記案内標識手段に送信する情報提供手段とを備える。
【0006】
上記道路標識システムでは、情報提供手段が全地球測位システムにより取得した位置情報に対応する地図情報を読み出して道程演算を行い、案内標識手段の制御手段がこれに基づいて案内標識手段の表示装置により表示すべき識別情報を設定する。これにより、案内標識手段を用いる場所や時等に応じて適切な内容となるように道路情報・案内等を変更しつつ表示することができる。
【0007】
また、本発明の具体的な態様として、案内標識手段が、受信手段により位置情報の取得を行った結果として、自己の設置位置が変更されたと判断した場合に、通信手段により情報提供手段と交信して識別情報を更新する。この場合、案内標識手段の設置位置の変更に応じて識別情報を更新することができるので、案内標識手段を用いる場所が変更されるたびにこれに応じて適切な内容となるように道路情報・案内等を変更することができる。
【0008】
また、本発明の具体的な態様として、案内標識手段が、それぞれ受信手段、通信手段及び表示装置を有する複数の案内標識装置を備える。この場合、複数の案内標識装置は、各々の位置情報の取得が可能であり、さらに互いに通信も可能であるため、互いの位置関係に基づいて道路情報・案内等を変更することができる。
【0009】
また、本発明のさらに具体的な態様として、複数の案内標識装置のうち、1つの案内標識装置が、通信手段を介して情報提供手段と交信可能であるとともに制御手段を備え、通信手段により他の案内標識装置に当該他の案内標識装置に適合する識別情報を送信する。この場合、制御手段を備える案内標識装置により、複数の案内標識装置による道路情報・案内等の表示内容を統括して制御することができる。
【0010】
また、本発明のさらに具体的な態様として、複数の案内標識装置が、情報提供手段と交信可能であるとともに制御手段を備える第1の案内標識装置と、受信手段により取得した自己の位置情報を第1の案内標識装置に送信する第2の案内標識装置とを含み、制御手段が、各案内標識装置の位置関係に基づいて識別情報の設定を行う。この場合、第1の案内標識装置がマスター側の案内標識装置として機能し、各案内標識装置が取得した位置情報から算出される位置関係に基づいて適切な道路情報・案内等の識別情報の設定を行うことができる。
【0011】
また、本発明の具体的な態様として、道路標識システムが、受信手段により全地球測位システムから時間情報を取得し、当該時間情報に基づいて識別情報の切り替えタイミングを設定する計時装置をさらに備える。この場合、全地球測位システムが有する原子時計を基により正確な時間情報の取得が可能となり、識別情報の切り替えタイミングをより正確なものとすることができる。
【0012】
また、本発明の具体的な態様として、表示装置が、プロジェクタである。この場合、表示板を取替えることなく道路情報・案内等の変更十分対応する多彩な表示画像の形成が可能となる。
【0013】
また、本発明のさらに具体的な態様として、プロジェクタが、スクリーンの正面から投影を行うフロントタイプである。この場合、電源を必要とする光源側と道路情報・案内等の表示を行うスクリーン側とを空間的に離隔することができ、電源を安全、確実に確保できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
〔第1実施形態〕
図1(a)、(b)は、第1実施形態に係る案内標識装置について説明するための正面図及び側面図である。本実施形態の案内標識装置1は、道路標識システムに用いられる案内標識手段を構成するものであり、投射像を形成するための本体部2と、投射像が表示されるスクリーン3と、全地球測位システム(以下GPS)により位置情報を取得する受信手段であるGPS受信部4と、双方向通信回路による通信手段である無線通信部5と、耐水・耐光用のフード6と、本体部2等を上部で支える固定支持部材7と、移動用キャスター8とを備える。
【0015】
本体部2は、案内標識装置1の主要部であり、プロジェクション機構を備える。より具体的には、本体部2は、図1(b)に示すように、プロジェクタ本体2aを内蔵する。ここで、本実施形態におけるプロジェクタは、所謂リアプロジェクション方式によるものである。つまり、プロジェクタ本体2aから投射された投射画像は、本体部2内の反射ミラー2bにより所定の方向に反射されることでスクリーン3上に投影される。プロジェクタ本体2aとスクリーン3とは、多様な表示を可能にするプロジェクタとして機能し、識別情報を表示するための表示装置を構成する。尚、スクリーン3上に投影される識別標識としての投射画像の内容(図1(a)の例では、矢印と信号機)は、表示すべき道路情報・案内等により逐次変更される。
【0016】
GPS受信部4は、GPSにより案内標識装置1が設置された場所についての位置情報を取得することができる。通信手段5は、双方向通信が可能な携帯型の端末機器であり、後述するサーバからの情報提供を受けており、GPS受信部4により取得した位置情報に対応する地図情報等を得ることができる。通信手段5として具体的には、例えば、携帯型の電話機や無線通信機器等が考えられる。
【0017】
フード6は、本体部2の上部に取り付けられ、案内標識装置1の本体部2等を雨水や太陽光から保護する。つまり、耐水・耐光用の覆いである。固定支持部材7は、案内標識装置1下部に設けられ、主要部である本体部2等案内標識装置1全体を支える。移動用キャスター8は、固定支持部材7の下部に取り付けられており、案内標識装置1の移動のために用いられる。
【0018】
図2は、本実施形態に係る道路標識システムの一使用例を示す図であり、道路工事現場での使用を示している。道路標識システム100を構成する案内標識装置1A及び案内標識装置1Bは、ともに図1を用いて説明した案内標識装置1と同一の構造を有している。ただし、案内標識装置1A、1Bは、内部回路が多少異なっており、主従関係を有して動作するようになっている。本実施形態において、案内標識手段は、第1の案内標識装置を案内標識装置1Aとし、第2の案内標識装置を案内標識装置1Bとする一対の案内標識装置により構成される。より具体的には、図2に示すように、案内標識装置1A及び1Bは、道路20において、工事現場9を挟んで各々片側車線上に配備され、互いに連関して道路情報・案内等の識別情報を表示することで案内標識手段として機能する。尚、ここで、案内標識装置1Aから案内標識装置1Bまでの距離を道路間隔dとする。
【0019】
案内標識装置1A及び1Bは、それぞれに対応する車線上の通行車両10、11に対して交通情報を表示するとともに、道路間隔dや工事現場9付近の道路環境等に応じて交通道路20の交通整理を行う。つまり、案内標識装置1Aと案内標識装置1Bとが呼応して通行車両10、11の往来を制御する。
【0020】
図3は、本実施形態に係る道路標識システム100の制御系について説明するブロック図である。本実施形態の道路標識システム100は、既述の案内標識装置1A及び1Bと、情報提供手段であるサーバ50とを備える。
【0021】
案内標識装置1A、1Bは、識別情報を表示する表示装置3A、3Bと、それぞれの設置位置についての位置情報を取得するためのGPS受信部4A、4Bと、通信手段である無線通信部5A、5Bと、案内標識装置1A、1Bを制御する制御部30A、30Bとを備える。ここで、一対の案内標識装置のうち、案内標識装置1Aは、第1の案内標識装置であり、道路情報・案内等の表示内容のための識別情報信号を設定するマスター側の案内標識装置として機能し、制御部30Aは、マスター側の案内標識装置に組み込まれる制御手段として機能する。また、両案内標識装置1A、1Bは、移動体端子としての無線通信部5A、5Bを含んでおり、広域のネットワークを介して互いに双方向通信可能になっている。さらに、制御部30Aには、GPSを利用してより正確な時間を計時し、これに基づいて信号タイミングの制御を行うための計時装置31Aが内蔵されている。尚、ここで、表示装置3A、3Bは、例えば、図1(a)、(b)のプロジェクタ本体部2a及びスクリーン3に相当するものである。
【0022】
サーバ50は、案内標識装置1Aとの交信を行う無線通信部51と、道路交通についてのデータを収録する地図情報データ格納部52と、サーバ50の制御を行う制御部53とを備える。サーバ50は、広域の通信ネットワークを介して、移動体端子すなわち案内標識装置1Aに対して双方向通信可能に接続されている。
【0023】
案内標識装置1Aは、GPS受信部4Aにより、いわゆるGPS衛星と呼ばれる地球軌道上に複数配備された衛星のうち所定数の人工衛星40から電波を受信することで自己の現在地を割り出す。同様に、案内標識装置1Bは、GPS受信部5Bにより自己の現在地を割り出す。これにより、それぞれの設置位置についての位置情報が取得される。第2の案内標識装置である案内標識装置1Bは、取得した自己の位置情報を第1の案内標識装置である案内標識装置1Aに無線通信部5Bにより送信する。
【0024】
案内標識装置1Aは、案内標識装置1Bの無線通信部5Bにより送信された案内標識装置1Bの位置情報を無線通信部5Aにより受信する。さらに、案内標識装置1Aは、受信した案内標識装置1Bの位置情報と自ら取得した自己の位置情報とを併せて、これらの情報を無線通信部5Aによりサーバ50へ送信する。
【0025】
サーバ50は、無線通信部51により案内標識装置1Aからの位置情報を受け取り、地図情報データ格納部52から当該位置についての地図情報を読み出すとともに道程演算を行う。つまり、案内標識装置1Aからの位置情報を受け取ると、制御部53は、まず、地図情報データ格納部52を参照して案内標識装置1A、1Bの設置された場所に関する地図情報、即ち経路等の道路交通についてのデータを読み出す。さらに、この際、制御部53は、案内標識装置1A、1B間の道程演算即ち、図2における道路間隔dについての道程の算出を行う。図2では、道路20は、略直線路であるが、道路は一般に、カーブや起伏等により直線距離と道程とが大きく異なる場合が考えられる。従って、このように地図情報を参照することで、案内標識装置1A、1Bの設置位置について単に両案内標識装置1A、1B間の距離だけでなく、実際の道程や道路状況等をも含んだ情報がその都度算出される。算出された各種データは、案内標識装置1Aに送信される。
【0026】
案内標識装置1Aにおいて、制御手段である制御部30Aは、当該地図情報及び道程演算結果等のデータにより各案内標識装置1A、1B間の位置関係を把握し、これらに基づいて案内標識装置1A、1Bの表示装置3A、3Bにより表示すべき識別情報信号を設定する。より具体的には、例えば、図2のように、案内標識装置1A及び1Bが、各々片側車線上に配備され、案内標識装置1A側の車線上に工事現場9が存在し、片側交互通行が必要な場合が考えられる。このような場合、工事の区間や片側通行であること等の工事内容や交通情報を表示する。また、それに加えて、案内標識装置1A及び1Bを連関させて、図1に例示したような矢印と信号機により片側交互通行のための交通整理を行うことが考えられる。この際、サーバ50において算出された各種データに含まれる案内標識装置1A、1B間の道程としての道路間隔dや道路20での制限速度・時間帯での混雑状況等を加味することで、表示装置3A、3Bにより表示すべき識別情報信号として最適な信号を設定することができる。この際、さらに、案内標識装置1Aにおいて、人工衛星40が内蔵する高性能の原子時計により刻まれる時間情報をGPS受信部4Aにより受信することも考えられる。当該時間情報を制御部30Aの計時装置31Aを用いて識別情報信号の設定において利用すれば、さらに精密な信号タイミングの制御を行うこともできる。
【0027】
図4は、案内標識装置1Aの初期動作について説明するためのフローチャートである。また、図5は、案内標識装置1Bの初期動作について説明するためのフローチャートである。以下、本フローチャートに沿って道路標識システム100の起動時の動作について説明する。
【0028】
まず、図4により案内標識装置1Aの初期動作について説明する。案内標識装置1Aは、設置位置を定め、電源を入れることにより、案内標識装置1Aの本体部2等(図1参照)に設けた各機構が起動する(ステップS1a)。本体部2等の起動とともに図3のGPS受信部4Aが作動し、案内標識装置1Aの設置位置が認識される(ステップS2a)。また、この際、GPS受信部4Aは、併せて人工衛星40から時間情報についても取得する。制御部30Aは、GPS受信部4Aによる位置情報及び時間情報が取得されたか否かの判断を行う(ステップS3a)。制御部30Aは、位置情報及び時間情報を取得したと判断すると、当該情報をGPS情報としてこれに設けた記憶部に一時記憶する(ステップS4a)。
【0029】
次に、第1の案内標識装置である案内標識装置1Aは、第2の案内標識装置である案内標識装置1Bの位置情報を得るために、案内標識装置1Bに対して、GPS受信部4Bにより取得した位置情報であるGPS情報を案内標識装置1Aに送信させる命令信号を無線通信部5Aにより送信する(ステップS5a)。制御部30Aは、ステップS5aによる命令信号に対する案内標識装置1BからのGPS情報の返信(詳しくは、図5を用いて後述する。)を確認する(ステップS6a)。案内標識装置1Aは、ステップS6aにおいて取得された案内標識装置1Bの位置情報であるGPS情報とステップS4aで記憶した自己のGPS情報とを併せて、これらの情報を、無線通信部5Aを介してサーバ50へ送信する処理を行う(ステップS7a)。
【0030】
ここで、既述のように図3のサーバ50では、ステップS7aにより案内標識装置1Aから受信した位置情報に基づいて、地図情報データ格納部52から地図情報を読み出し、案内標識装置1A、1Bの位置関係が把握される。さらに、制御部53により地図情報から得られた当該位置関係から道程演算が行われる。このようにして得られた道程演算結果や交通情報等のデータが、サーバ情報として無線通信部53を介して案内標識装置1Aに送信される。
【0031】
案内標識装置1Aの動作に戻って、制御部30Aでは、上述したサーバ50から送信されたサーバ情報の取得を確認する(ステップS8a)。制御部30Aは、サーバ情報の取得を確認すると、取得された情報に基づいて案内標識装置1A、1Bの表示装置3A、3Bにより表示すべき識別情報信号を設定する表示画像設定処理を行う(ステップS9a)。つまり、上述のように、サーバ50において算出された各種データを基に、交通情報や工事内容あるいは通行車両の交通整理のための信号等の設定が行われる。また、これに伴い、制御部30Aは、設定された信号のうち、表示装置3Bにより表示すべき識別情報信号を案内標識装置1Bに送信する(ステップS10a)。ステップS9aにおいて設定された識別情報信号に基づいて識別情報の表示が、図1(a)、(b)のプロジェクタ本体2a及びスクリーン3を備える表示装置3Aにより行われる(ステップS11a)。
【0032】
次に、図5により案内標識装置1Bの初期動作について説明する。案内標識装置1Bは、設置位置を定め、電源を入れることにより、案内標識装置1Bの本体部2等(図1参照)に設けた各機構が起動する(ステップS1b)。本体部2等の起動とともにGPS受信部4Bが作動し、案内標識装置1Bの設置位置が認識される(ステップS2b)。制御部30Bは、GPS受信部4Bによる位置情報が取得されたか否かの判断を行う(ステップS3b)。制御部30Bは、位置情報を取得したと判断すると、当該情報をGPS情報としてこれに設けた記憶部に一時記憶する(ステップS4b)。
【0033】
ここで、図4を用いて説明したように、案内標識装置1Aは、同期的に繰り返されるステップS5aにおいて、案内標識装置1BのGPS情報を案内標識装置1Aに送信させる命令信号を送信する。図5に戻って、制御部30Bは、当該命令信号の受信を確認すると(ステップS5b)、自己の位置情報であるGPS情報を案内標識装置1Aに返信する処理を行う(ステップS6b)。
【0034】
案内標識装置1Bからの返信を確認した案内標識装置1A側の制御部30Aは、図4のステップS6a〜ステップS10aにおいて説明したように、案内標識装置1BのGPS情報に対応した識別情報信号を案内標識装置1Bに送信する。案内標識装置1Bの制御部30Bは、画像情報である当該識別情報信号の受信を確認すると(ステップS7b)、これに従って、表示装置3Bにより画像が投影される(ステップS8b)。
【0035】
以上で説明した表示装置3A、3Bによる画像投影において、当該識別情報信号は、第1の案内標識装置である案内標識装置1Aにより地図情報及び道程演算結果等のデータに基づいて設定されている。これにより、図2の案内標識装置1Aと案内標識装置1Bとが呼応して通行車両10、11の往来の制御が可能となっている。また、この際、当該車両10、11の往来に対処するために、制御部30Aは、計時装置31Aに基づいて、表示装置3A、3Bによる識別情報の切り替えタイミングの制御を行うように当該識別情報信号を設定してもよい。
【0036】
図2における工事が終了し、案内標識装置1A及び案内標識装置1Bを撤収して、別の場所に設置すると、上述した画像投影のための動作が再度繰り返される。従って、案内標識装置1A及び案内標識装置1Bは、新たに設置した場所で即座にその場所と時に適した識別情報の表示が可能となる。
【0037】
図6及び図7は、道路標識システム100の使用中における設定変更の動作について説明するためのフローチャートである。より具体的には、例えば、図2における工事の進捗状況等により工事現場9の領域が変更され、これに応じて案内標識装置1A又は案内標識装置1Bの設置位置も変更された場合の動作について説明するフローチャートである。これらのうち、図6は、案内標識装置1Aの動作について説明するためのフローチャートであり、図7は、案内標識装置1Bの動作について説明するためのフローチャートである。以下、本フローチャートに沿って図3の道路標識システム100の動作について説明する。尚、本動作は、初期動作における画像投影の開始(ステップS11a、ステップS8b)後、案内標識装置1A、1Bの電源がオフされるまでの間、常時行われるものとする。
【0038】
まず、図6について、マスター側の案内標識装置である案内標識装置1Aの設置箇所が変更されると、図3のGPS受信部4Aが作動する(ステップS12a)。これに伴い、制御部30Aは、GPS受信部4Aにより新たな位置情報が検出されたか否かの判断・確認を行う(ステップS13a)。一方、ステップS12aにおいてGPS受信部4Aの作動が認識されない場合には、案内標識装置1Bの新たなGPS情報(詳しくは図7で後述する)が受信されているか否かの確認を行う(ステップS14a)。上記ステップS13a、ステップS14aのいずれかが確認された場合、制御部30Aは、少なくとも案内標識装置1A又は案内標識装置1Bの一方について位置情報が更新されたものと判断し、案内標識装置1A及び1Bの双方についてGPS情報を確認し、新たな情報に更新する処理を行う(ステップS15a)。さらに、制御部30Aは、更新された情報を新たなGPS情報として記憶し(ステップS16a)、当該情報をサーバ50へ無線通信部5Aを介して送信するための処理を行う(ステップS17a)。サーバ50は、案内標識装置1Aから受信した新たな位置情報に基づいて、先と同様にして無線通信部53を介して案内標識装置1Aに当該地図情報及び道程演算結果等のデータを送信する。制御部30Aは、上述したサーバ50から送信された情報の取得を確認する(ステップS18a)。制御部30Aは、サーバ情報の取得を確認すると、取得された情報に基づいて案内標識装置1A、1Bの表示装置3A、3Bにより表示すべき識別情報信号を再度設定する処理を行う(ステップS19a)。さらに、表示装置3Bにより表示すべき新たな識別情報信号を案内標識装置1Bに送信する(ステップS20a)。ステップS19aにおいて設定された識別情報信号に基づいて識別情報の表示画像が表示装置3Aにより投影される(ステップS21a)。
【0039】
次に、図7について、スレイブ側の案内標識装置である案内標識装置1Bの設置箇所が変更されると、図3のGPS受信部4Bが作動する(ステップS9b)。これに伴い、制御部30Bは、GPS受信部4Bにより新たな位置情報が検出されたか否かの判断を行う(ステップS10b)。次に、制御部30Bは、GPS受信部4Bから位置情報を取得したと判断すると、当該情報を新たなGPS情報として記憶を更新し(ステップS11b)、更新されたGPS情報を案内標識装置1Aに送信する処理を行う(ステップS12b)。当該送信に対し、案内標識装置1Aは、図6で説明したように、サーバ50との送受信を行って更新されたGPS情報に対応した識別情報信号を再度設定し、案内標識装置1Bへ送信する。案内標識装置1Bの制御部30Bは、新たな画像情報である当該識別情報信号の受信の確認を行い(ステップS13b)、これに従って、表示装置3Bにより画像が投影される(ステップS14b)。
【0040】
以上のように、案内標識装置1A又は案内標識装置1Bの設置位置を移動させる毎にGPS受信部4A、4Bが作動し、位置情報が更新される。制御部30A、30Bは、更新された情報に基づいて識別情報信号をその都度設定し、識別情報を表示装置3A、3Bにより表示画像として投影させる。これにより、道路標識システムは、表示板の取替えのような作業を行うことなく自動的に、時や場所等に応じて道路情報・案内等の識別情報を変更することができる。
【0041】
尚、この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0042】
まず、本実施形態では、表示装置として、プロジェクタを用いたが、識別情報の表示はこれに限らず、必要な表示内容の変更に対応できるものであればよく、例えば、プロジェクタ以外のドットマトリクス方式の表示装置であってもよい。また、プロジェクタについても、液晶タイプのものやマイクロミラーを用いたもの等種々考えられる。
【0043】
また、本実施形態では、案内標識装置1A、1Bの2つの案内標識装置を案内標識手段として用いているが、案内標識装置の数は2つとは限られず、より複雑な交通整理に用いる場合等用途によってはもっと多くの案内標識装置を組み合わせて用いる場合も考えられる。また、逆に、高速道路の上り車線(あるいは下り車線)のみに使用する場合等においては、1つの案内標識装置のみ用いることも想定される。
【0044】
また、本実施形態では、2つの案内標識装置1A、1Bのうち一方をマスターとして識別情報の制御を行うものを示したが、制御手段による識別情報の設定方法は、道路情報・案内等を適切に行えるものであれば、これに限らず種々のものが考えられる。
【0045】
さらに、本実施形態の態様として、例えば、GPS機能を有する携帯型の電話機等を用いることも考えられる。この場合、携帯型の電話機は、GPS受信機能及び通信機能を兼ね備えることができ、GPSによる位置情報受信から地図情報等の送受信、表示装置による識別情報の表示にいたるまでを一手に行うことができる。
【0046】
また、地図情報を有する情報提供手段即ちサーバ50の機能をマスター側の案内標識装置1Aが内蔵或いは付随させる場合も考えられる。この場合、案内標識装置1Aは、ユーザによる入力を可能にする周辺装置を含むコンピュータを備える。逆に、本実施形態における情報提供手段であるサーバ50の有する地図情報は、今現在における道路状況に応じて分刻みで変化するものであり、それに応じて識別情報も分刻みで変化させるものであってもよい。
【0047】
〔第2実施形態〕
第1実施形態では、案内標識装置における表示装置として、図1のようにプロジェクタ本体2aとスクリーン3とを用いた所謂リアプロジェクタを用いたが、第2実施形態では、スクリーンの正面から投影を行うフロントタイプのプロジェクタを表示装置として案内標識装置に用いる。
【0048】
図8(a)、(b)は、第2実施形態に係る案内標識装置について説明するための正面図及び側面図である。本実施形態における案内標識装置101は、表示装置を備える本体部102と、識別情報が表示されるスクリーン103とGPS受信部104と、無線通信部105と、フード106と、固定支持部材107と、キャスター108とを備える。ここで、本体部102以外の構成要素については、同名のものは第1実施形態のものと同様であるから説明を省略する。
【0049】
本体部102は、図8(a)、(b)に示すように、プロジェクタ本体102aを備える。ここで、本実施形態におけるプロジェクタは、所謂フロントプロジェクション方式によるものであり、表示装置としてプロジェクタ本体102aとスクリーン103とを備える。つまり、プロジェクタ本体102aから投射された投射画像が、ミラー等を介さず直接スクリーン103上に投影される。
【0050】
本実施形態における案内標識装置101は、図1に示す第1実施形態の案内標識装置1とはプロジェクタの投影方式が異なるだけであり、通信システム等については同等であるから、案内標識装置1と同様に第1実施形態の道路標識システム100に適用することが可能である。従って、第1実施形態と同様に、表示板の取替えのような作業を行うことなく、場所や時等に応じて道路情報・案内等の識別情報を変更する道路標識システムを実現できる。特に、舗装道路工事等に用いる場合、必ずしも電源を安全、確実に確保できる場所に案内標識装置が設置されるとは限らない。しかし、本実施形態の場合、フロントタイプであることにより、案内標識装置101のうち、主に電源を必要とするプロジェクタ本体102aと、識別情報の表示部分、すなわち案内標識としての主要部分であるスクリーン103を含む部分とを空間的に離隔することができる。従って、例えば、案内標識装置101のうち、プロジェクタ本体102aのみ電源を安全、確実に確保できる場所に設置し、当該場所から工事現場等に設置されたスクリーン103を含む部分に対して投影を行ってもよい。これにより、危険な配線状態になることや、安全な配線のためにケーブルを引き回さなければならないといったことが避けられる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】(a)、(b)は、第1実施形態に係る案内標識装置について説明するための図である。
【図2】第1実施形態に係る道路標識システムの使用例について示す図である。
【図3】第1実施形態に係る道路標識システムについて説明するブロック図である。
【図4】第1実施形態に係る第1の案内標識装置の初期動作について説明するフローチャートである。
【図5】第1実施形態に係る第2の案内標識装置の初期動作について説明するフローチャートである。
【図6】第1実施形態に係る第1の案内標識装置の設定変更時の動作について説明するフローチャートである。
【図7】第1実施形態に係る第2の案内標識装置の設定変更時の動作について説明するフローチャートである。
【図8】(a)、(b)は、第2実施形態に係る案内標識装置について説明するための図である。
【符号の説明】
【0052】
1、1A、1B、101…案内標識装置、 2、102…本体部、2a、102a…プロジェクタ本体、 3、103…スクリーン、 3A、3B…表示装置 4、4A、4B…GPS受信部、 5、5A、5B…無線通信部、 30A、30B、53…制御部、 50…サーバ、 40…人工衛星、 100…道路標識システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全地球測位システムにより位置情報を取得する受信手段と、双方向通信回路を設けた通信手段と、前記位置情報に関連する識別情報を表示するための表示装置と、前記表示装置により表示すべき識別情報を設定する制御手段とを有する案内標識手段と、
前記双方向通信回路を介して前記案内標識手段と交信可能であり、前記案内標識手段の前記受信手段が取得した前記位置情報を受け取り、当該位置情報に対応する地図情報を読み出すとともに前記案内標識手段の設置位置を基準とする道程演算を行い、当該道程演算の結果を前記案内標識手段に送信する情報提供手段と、
を備える道路標識システム。
【請求項2】
前記案内標識手段は、前記受信手段により前記位置情報の取得を行った結果として、自己の設置位置が変更されたと判断した場合に、前記通信手段により前記情報提供手段と交信して前記識別情報を更新する請求項1記載の道路標識システム。
【請求項3】
前記案内標識手段は、それぞれ前記受信手段、前記通信手段及び前記表示装置を有する複数の案内標識装置を備える請求項1及び請求項2のいずれか一項記載の道路標識システム。
【請求項4】
前記複数の案内標識装置のうち、1つの案内標識装置は、前記通信手段を介して前記情報提供手段と交信可能であるとともに前記制御手段を備え、前記通信手段により他の案内標識装置に当該他の案内標識装置に適合する前記識別情報を送信する請求項3記載の道路標識システム。
【請求項5】
前記複数の案内標識装置は、前記情報提供手段と交信可能であるとともに前記制御手段を備える第1の案内標識装置と、前記受信手段により取得した自己の位置情報を前記第1の案内標識装置に送信する第2の案内標識装置とを含み、前記制御手段は、各案内標識装置の位置関係に基づいて前記識別情報の設定を行う請求項3記載の道路標識システム。
【請求項6】
前記受信手段により全地球測位システムから時間情報を取得し、当該時間情報に基づいて前記識別情報の切り替えタイミングを設定する計時装置をさらに備える請求項1から請求項5のいずれか一項記載の道路標識システム。
【請求項7】
前記表示装置は、プロジェクタである請求項1から請求項6のいずれか一項記載の道路標識システム。
【請求項8】
前記プロジェクタは、スクリーンの正面から投影を行うフロントタイプである請求項7記載の道路標識システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−33394(P2008−33394A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202922(P2006−202922)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】