説明

遠心分離機

【課題】ベルトの張力回復を容易且つ短時間に行うことができる遠心分離機を提供すること。
【解決手段】駆動源であるモータ4の駆動軸12に結着されたモータプーリとシャフトユニット7のシャフト15に結着されたシャフトプーリ間に無端状のベルト18を巻装して回転力伝達機構8を構成し、前記モータ4の回転を前記回転力伝達機構8を介して前記シャフト15に伝達し、該シャフト15に装着されたロータ6をロータ室5内で回転駆動する遠心分離装置1において、前記モータプーリと前記シャフトプーリを、互いに外径が異なる複数のプーリ13a,13bと17a,17bを上下方向に複数段に重ねて構成する。又、各段におけるモータプーリ13a,13bとシャフトプーリ17a,17bの外径d1,d2、D1,D2の比率(D1/d1),(D2/d2)を等しく設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に実験台等に設置される卓上型の遠心分離機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な構成の遠心分離機が提案されている。例えば、フレームのベースにモータベースがダンパを介して支持され、モータベース上にモータとシャフトユニットとを並べて配置し、モータベースの下側に駆動力伝達機構を配置して成る遠心分離機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような遠心分離機の一例を図5に示す。
【0003】
即ち、図5は従来の遠心分離機の縦断面図であり、図示の遠心分離機101は、外枠を構成する箱状のフレーム102内にボウル103、駆動源であるモータ104、ボウル103内に画成されたロータ室105内に収容されたロータ106、該ロータ106を回転可能に支持するシャフトユニット107、前記モータ104の回転を前記シャフトユニット107を介してロータ106に伝達するベルト伝動機構108等を収容して構成されている。
【0004】
又、フレーム内102のボウル103の下方にはモータベース110が複数のダンパ111を介してフレーム102の底部に支持されており、このモータベース110上には前記モータ104と前記シャフトユニット107が設置されている。そして、モータ104の垂直下方に延びる駆動軸112の下端に結着されたモータプーリ113とシャフトユニット107のシャフト115の下端に結着されたシャフトプーリ107との間には無端状のベルト118が巻装されており、これらのモータプーリ113とシャフトプーリ117及びベルト118によって前記ベルト伝動機構108が構成されている。
【0005】
以上のように構成された遠心分離機101において、不図示のスタートスイッチを押すことによってモータ104が起動されて駆動軸112が回転駆動されると、該回転軸112の回転はベルト伝動機構108を構成するモータプーリ113とベルト118及びシャフトプーリ117を経てシャフトユニット107のシャフト115に伝達され、該シャフト115とこれに装着されたロータ106が所定の速度で回転駆動される。このようにロータ106がボウル103内のロータ室105内で回転駆動されると、該ロータ106内に収容された試料が遠心分離される。
【特許文献1】特開2007−075727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ベルト伝動機構108を構成するベルト118の材質には一般的にはゴムが採用されており、遠心分離機101の運転が繰り返されるとベルト118が次第に伸びる。そして、ベルト118が伸びると、モータ104の回転がシャフト115に良好に伝達されず、ロータ106が設定回転数で回転しないために所要の遠心分離処理ができなくなってしまう。
【0007】
図5に示した従来の遠心分離機101では、或る程度運転されてベルト118が伸びてしまった場合には、モータ104とシャフト115の距離を調節し直さなければならないが、モータ104とシャフト115間の距離調節で対応できない場合は、ベルト118の交換が必要となる。交換用のベルト118をすぐに準備できない場合には、すぐに直すことができないため、病院等で緊急的に使用しなければならない場合の対応ができなかった。
【0008】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、ベルトの張力回復を容易且つ短時間に行うことができる遠心分離機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、駆動源であるモータの駆動軸に結着されたモータプーリとシャフトユニットのシャフトに結着されたシャフトプーリ間に無端状のベルトを巻装して回転力伝達機構を構成し、前記モータの回転を前記回転力伝達機構を介して前記シャフトに伝達し、該シャフトに装着されたロータをロータ室内で回転駆動する遠心分離装置において、前記モータプーリと前記シャフトプーリを、互いに外径が異なる複数のプーリを上下方向に複数段に重ねて構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、各段における前記モータプーリと前記シャフトプーリの外径の比率を等しく設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の発明によれば、遠心分離機が繰り返し運転されてベルトが伸び、その張力不足する場合には、ベルトを大径側のモータプーリとシャフトプーリ間に掛け替えることによってベルトの張力を容易且つ短時間に回復させることができる。
【0012】
請求項2記載の発明によれば、各段におけるモータプーリとシャフトプーリの外径の比率を等しく設定したため、ベルトを掛け替えてもシャフト及びロータの回転速度に変化が生じず、同じ条件で遠心分離処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0014】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る遠心分離機の縦断面図、図2(a),(b)はベルトの掛け替えを示す回転力伝達機構部分の側面図である。
【0015】
本実施の形態に係る遠心分離機1は、外枠を構成する箱状のフレーム2内にボウル3、駆動源であるモータ4、ボウル3内に画成されたロータ室5内に収容されたロータ6、該ロータ6を回転可能に支持するシャフトユニット7、前記モータ4の回転を前記シャフトユニット7を介してロータ6に伝達する回転力伝達機構(ベルト伝動機構)8等を収容して構成されている。
【0016】
上記ボウル3は上面が開口する有底円筒状に成形されており、その上面開口部は、フレーム2の上面開口部2aに開口しており、フレーム2の上面に設けられた蓋9によって開閉される。そして、このボウル3は、その底部が不図示の取付部材を介してフレーム2内の底部に固定されている。又、ボウル3の底部中心部には、前記シャフトユニット7が貫通するための挿通孔3aが形成されている。
【0017】
フレーム2内のボウル3の下方にはモータベース10が配されており、このモータベース10は、平面視三角形の頂点に配置された3つのダンパ11を介してフレーム2の底部に支持されている。そして、このモータベース10上の前記ボウル3の横には前記モータ4が縦置き状態で設置されており、該モータ4の垂直下方に延びる駆動軸12は、モータベース10に形成された挿通孔10aを貫通してモータベース10の下方へと突出している。そして、この駆動軸12のモータベース10から下方に突出する下端部には大小異径の上下2段のモータプーリ13a,13bが結着されている。ここで、上段のモータプーリ13bの外径d2は下段のモータプーリ13aの外径d1よりも大きく設定されている(d2>d1)。
【0018】
又、モータベース10上には前記シャフトユニット7が設置されており、このシャフトユニット7は、円筒状のハウジング14の内部に駆動軸であるシャフト15を鉛直方向に通し、該シャフト15を上下のベアリング16によって回転可能に支持して構成されている。そして、このシャフトユニット7は、ボウル3の底部中心に形成された前記挿通孔3aを下方から貫通してボウル3内のロータ室5内に臨んでおり、シャフト15の上端部には前記ロータ6が着脱可能に装着されている。尚、ロータ6内には、試料を収容した不図示の試験管が収納される。
【0019】
更に、シャフトユニット7のシャフト15は、モータベース10に形成された挿通孔10bを貫通してモータベース10の下方へと突出しており、その下端部には大小異径の上下2段のシャフトプーリ17a,17bが結着されている。ここで、上段のシャフトプーリ17bの外径D2は下段のシャフトプーリ17aの外径D1よりも大きく設定されている(D2>D1)。
【0020】
又、本実施の形態では、下段のシャフトプーリ17aの外径D1は下段のモータプーリ13aの外径d1よりも大きく設定されており(D1>d1)、上段のシャフトプーリ17bの外径D2は上段のモータプーリ13bの外径d2よりも大きく設定されている(D2>d2)。そして、下段のシャフトプーリ17aの外径D1と下段のモータプーリ13aの外径d1との比率(D1/d1)と、上段のシャフトプーリ17bの外径D2と上段のモータプーリ13aの外径d2との比率(D2/d2)とは等しく設定されている。
【0021】
つまり、モータプーリ13a,13bの外径d1,d2とシャフトプーリ17a,17bの外径D1,D2の関係をまとめると以下の通りである。
【0022】
d2>d1,D2>D1 … (1)
D1>d1,D2>d2 … (2)
D1/d1=D2/d2 … (3)
而して、本遠心分離機1においては、図1及び図2(a)に示すように、当初は下段のモータプーリ13aとシャフトプーリ17a間には無端状のベルト18が巻装されており、これらのモータプーリ13aとシャフトプーリ17a及びベルト17によって前記回転力伝達機構が構成されている。
【0023】
次に、以上のように構成された遠心分離機1の動作を説明する。
【0024】
不図示のスタートスイッチを押すことによってモータ4が起動されて駆動軸12が回転駆動されると、該回転軸12の回転は下段のモータプーリ13aとベルト18及び下段のシャフトプーリ17aを経て減速されてシャフトユニット7のシャフト15に伝達され、該シャフト15とこれに装着されたロータ6が所定の速度で回転駆動される。このようにロータ6がボウル3内のロータ室5内で回転駆動されると、該ロータ6内に収容された試料が遠心分離される。尚、ロータ6の回転によってシャフトユニット7とモータベース10及びモータ4は振動するが、それらの振動はダンパ11の減衰機能によって低減される。
【0025】
ところで、遠心分離機1が製造された当初は図1及び図2に示すようにベルト18は下段のモータプーリ13aとシャフトプーリ17a間に巻装されているが、該遠心分離機1が繰り返し運転されてベルト18が伸び、その張力不足となった場合には、図2(b)に示すように、ベルト18を大径側の上段のモータプーリ13bとシャフトプーリ17b間に掛け替えれば、ベルト18の張力を容易且つ短時間に回復させることができる。
【0026】
又、本実施の形態では、下段のシャフトプーリ13aの外径D1と下段のモータプーリ13aの外径d1との比率(D1/d1)と、上段のシャフトプーリ17bの外径D2と上段のモータプーリ13aの外径d2との比率(D2/d2)とを等しく設定したため(D1/d1=D2/d2)、モータ4の駆動軸12の回転の減速率が上段と下段において等しくなり、従って、ベルト18を下段のモータプーリ13aとシャフトプーリ17aから上段のモータプーリ13bとシャフトプーリ17bへと掛け替えてもシャフト15及びロータ6の回転速度に変化が生じず、同じ条件で遠心分離処理を行うことができる。
【0027】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図3及び図4に基づいて説明する。
【0028】
図3は本発明の実施の形態2に係る遠心分離機の縦断面図、図4(a)〜(c)はベルトの掛け替えを示す回転力伝達機構部分の側面図であり、これらの図においては図1及び図2に示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0029】
本実施の形態では、モータ4の駆動軸12の下端部には互いに外径が異なる上下3段のモータプーリ13a,13b,13cが結着されるとともに、シャフトユニット7のシャフト15の下端部にも外径が異なる上下3段のシャフトプーリ17a,17b,17cが結着されている。ここで、モータプーリ13a,13b,13cとシャフトプーリ17a,17b,17cは、下段から上段に向かうに従って外径d1,d2,d3及びD1,D2,D3が次第に大きく設定されており、各段(下段、中段、上段)においてはシャフトプーリ17a,17b,17cの外径D1,D2,D3の方がモータプーリ13a,13b,13cの外径d1,d2,d3よりも大きく設定されている(つまり、モータ4の駆動軸12の回転が減速されてシャフト15及びロータ6に伝達されるよう設定されている)。又、各段(下段、中段、上段)におけるシャフトプーリ17a,17b,17cの外径D1,D2,D3とモータプーリ13a,13b,13cの外径d1,d2,d3の比率(減速比)D1/d1,D2/d2,D3/d3が全て同一に設定されている。
【0030】
つまり、モータプーリ13a,13b,13cの外径d1,d2,d3とシャフトプーリ17a,17b,17cの外径D1,D2,D3の関係をまとめると以下の通りである。
【0031】
d3>d2>d1,D3>D2>D1 … (4)
D1>d1,D2>d2,D3>d3 … (5)
D1/d1=D2/d2=D3/d3 … (6)
而して、本遠心分離機1が製造された当初は図3及び図4(a)に示すようにベルト18は下段のモータプーリ13aとシャフトプーリ17a間に巻装されているが、該遠心分離機1が繰り返し運転されてベルト18が伸び、その張力不足となった場合には、図4(b)に示すように、ベルト18を大径側の中段のモータプーリ13bとシャフトプーリ17b間に掛け替えれば、ベルト18の張力を容易に回復させることができる。
【0032】
そして、中段のモータプーリ13bとシャフトプーリ17b間に巻装されたベルト18が伸び、その張力が不足した場合には、図4(c)に示すように、ベルト18を大径側の上段のモータプーリ13cとシャフトプーリ17c間に掛け替えれば、ベルト18の張力を容易に回復させることができる。このようにベルト18を2段階に掛け替えることができるようにすれば、ベルト18の伸び量に応じて、モータプーリ13a〜13c及びシャフトプーリ17a〜17cを選択することができるため、ベルト18の張力を確実に回復させることができる。
【0033】
又、本実施の形態では、下段のシャフトプーリ17aの外径D1と下段のモータプーリ13aの外径d1との比率(D1/d1)と、中段のシャフトプーリ17bの外径D2と中段のモータプーリ17bの外径d2との比率(D2/d2)及び上段のシャフトプーリ17cの外径D3と上段のモータプーリ13cの外径d3との比率(D3/d3)を等しく設定したため(D1/d1=D2/d2=D3/d3)、モータ4の駆動軸12の回転の減速率が上段と中段及び下段において全て等しくなり、従って、ベルト18を下段のモータプーリ13aとシャフトプーリ17aから中段のモータプーリ13bとシャフトプーリ17bへと掛け替え、更に中段のモータプーリ13bとシャフトプーリ17bから上段のモータプーリ13cとシャフトプーリ17cへと掛け替えてもシャフト15及びロータ6の回転速度に変化が生じず、同じ条件で遠心分離処理を行うことができる。
【0034】
尚、以上の実施の形態では、モータプーリとシャフトプーリを上下2段及び上中下の3段に重ねる構成を採用したが、モータプーリとシャフトプーリを重ねる段数に制限はなく、任意の段数とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1に係る遠心分離機の縦断面図である。
【図2】(a),(b)は本発明の実施の形態1に係る遠心分離機におけるベルトの掛け替えを示す回転力伝達機構部分の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係る遠心分離機の縦断面図である。
【図4】(a)〜(c)は本発明の実施の形態2に係る遠心分離機におけるベルトの掛け替えを示す回転力伝達機構部分の側面図である。
【図5】従来の遠心分離機の縦断面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 遠心分離機
2 フレーム
2a フレームの上面開口部
3 ボウル
3a ボウルの挿通孔
4 モータ
5 ロータ室
6 ロータ
7 シャフトユニット
8 回転力伝達機構
9 蓋
10 モータベース
10a,10b モータベースの挿通孔
11 ダンパ
12 駆動軸
13a〜13c モータプーリ
14 ハウジング
15 シャフト
16 ベアリング
17a〜17c シャフトプーリ
18 ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源であるモータの駆動軸に結着されたモータプーリとシャフトユニットのシャフトに結着されたシャフトプーリ間に無端状のベルトを巻装して回転力伝達機構を構成し、前記モータの回転を前記回転力伝達機構を介して前記シャフトに伝達し、該シャフトに装着されたロータをロータ室内で回転駆動する遠心分離装置において、
前記モータプーリと前記シャフトプーリを、互いに外径が異なる複数のプーリを上下方向に複数段に重ねて構成したことを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
各段における前記モータプーリと前記シャフトプーリの外径の比率を等しく設定したことを特徴とする請求項1記載の遠心分離機。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−183881(P2009−183881A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27144(P2008−27144)
【出願日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】