説明

遠心脱水方法およびその装置

【課題】長期に渡る使用によっても故障が少なく、かつ簡便に被脱水物を脱水装置に挿脱できる遠心脱水方法およびその装置を提供する。
【解決手段】被脱水物を回転台上に、その重心位置が回転軸から離隔した位置となるように載置し、前記回転軸の軸芯に対して前記被脱水物の重心側に衝止部材を設けて支承して遠心脱水を行う遠心脱水方法とし、当該遠心脱水方法を実現可能とする回転台、衝止部材、ガイド手段を備えた構成の遠心脱水装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄液で洗浄した後の被脱水物の遠心脱水方法およびその装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄液で洗浄後の折り畳み容器やパレット等(以下、被脱水物という)の脱水方法として、図5および図6に示したように、遠心力を利用して脱水を行う遠心脱水装置にあっては、被脱水物bを図示していない搬送手段により矢印xの方向からガイド部材7に沿って挿入され、衝止部材1に当接して回転台3上の略中央部に位置するように載置し、脱水動作時の遠心力により前記被脱水物bが回転台から振り落とされないように、該被脱水物bの前面b1を支承する衝止部材1と、側面b2を支承するガイド部材7と、後面b3を支承する係止部材4とを設けて支承する方法が用いられていた。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2000−218194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述のような遠心脱水装置においては、脱水動作時の遠心力により前記被脱水物bが回転台から振り落とされないように、該被脱水物bの前面b1を支承する衝止部材1と、側面b2を支承するガイド部材7と共に、後面b3を支承する係止部材4を設ける必要があった。また、前記衝止部材1と前記ガイド部材7とは回転台3に固着されているのに対し、後面b3を支承する係止部材4は被脱水物bの挿脱のために挿脱口12に開閉自在に取り付けなければならず、例えば蝶番による蝶着構造にする等の複雑な構造となり、脱水動作時の遠心力による加重を受けて、使用をしているうちに可動部が破損等して故障する原因ともなっていた。
【0004】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、長期に渡る使用によっても故障が少なく、かつ簡便に被脱水物を挿脱できる遠心脱水方法およびその装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
被脱水物を水平回転する略円盤状の回転台上に前記被脱水物の重心位置が前記回転台の回転軸から離隔した位置となるように載置し、前記回転軸に対して前記被脱水物の重心側に衝止部材を設けて支承し遠心脱水を行う遠心脱水方法とする。
【0006】
また、被脱水物を載置する略円盤状の回転台と、前記回転台に固着し前記回転軸に対して前記被脱水物の重心側に配設して被脱水物を支承する衝止部材とを備えた遠心脱水装置とする。
【0007】
更に、前記被脱水物の遠心脱水装置の回転台の周縁から略垂直方向に立設し回転台の半径方向に対して傾斜角を有する複数の羽根部材を備えた遠心脱水装置とする。
【発明の効果】
【0008】
被脱水物を水平回転する略円盤状の回転台上に前記被脱水物の重心位置が前記回転台の回転軸から離隔した位置となるように載置し、前記回転軸に対して被脱水物の重心側に衝止部材を設けて支承し遠心脱水を行う遠心脱水方法および前記方法を実現するための構成を有する遠心脱水装置としたことで、被脱水物に掛かる遠心力により該被脱水物は衝止部材方向の力を受けて衝止部材に当接した状態を維持するため、前記被脱水物の後面を支承する係止部材は不要となる。すなわち、係止部材が無くなることで遠心脱水装置の構造が簡単になり、従来例のような係止部材の可動部が破損等して故障することもなく、長期に渡って遠心脱水装置を使用することができる。更に、係止部材を無くしたことで被脱水物の挿脱をより迅速に行うことができると共に、製造コストを抑えてより安価な遠心脱水装置を提供することができる。
【0009】
また、前記遠心脱水装置の回転台の周縁から略垂直方向に立設し回転台の半径方向に対して傾斜角を有する複数の羽根部材を備えた遠心脱水装置とすることで、ケース体内にミストが滞留すること少なく、より効率的に被脱水物の脱水を行うことが可能となる、等の格別の効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための形態を、図1〜図4に基づき説明する。本実施例においては折り畳み容器を被脱水物として使用している。なお、各図において同じ符号を付した部材等は同一あるいは同種の部材等を表すものとする。
【実施例1】
【0011】
本発明の一実施例を図1および図2に示した。ケース体2の底面に取り付けられた回転手段5には鉛直方向の軸を持つ回転軸51が設けられ、該回転軸51の上端部には略円盤状で水平な回転台3が固着されている。該回転台3の上面には折り畳み容器を矢印x方向から所定の位置に挿入するための案内を行うガイド手段7、7が仮想線で示した折り畳み容器bの両側に取り付けられている。このガイド手段7は回転台3上に立設した複数のガイド棒72とガイド部材71とからなる。また、折り畳み容器の前面b1側には衝止部材1、1が立設されており、該衝止部材1と前記ガイド棒72は支持板31によりそれらの上端部で一体的に固着されている。
【0012】
なお、前記衝止部材1は、載置後の折り畳み容器の重心Pが回転軸51の軸芯に対して衝止部材1側となる位置に取り付けられている。
【0013】
次に、回転台3上に載置された折り畳み容器を上方より支承する手段について説明する。ケース体2の上面に取り付けられた昇降手段9には回転軸51と共通な軸上にある昇降および回転自在な昇降軸91が設けられ、該昇降軸91はケース体2および支持板31を貫通し、その下端部に押体8が固着されている。
【0014】
なお、該昇降軸91のケース体2の貫通部および支持板31の貫通部には前記昇降軸91がベアリングを介してケース体2に取り付けられており、前記昇降軸91が昇降および回転自在となるように支持されている。また、前記昇降軸91には支持棒10aを介してバランス体10bが取り付けられている。
【0015】
ところで、回転手段5と回転台3の間にはケース体2の水平断面全面にわたって基台6が固着されており、該基台6には排水孔11aが貫設され排水管11bが取り付けられている。また、回転軸51の基台6の貫通部には回転軸51がベアリングを介して基台6に取り付けられており、前記回転軸51が回転自在となるように支持されている。
【0016】
また、吸気手段14は回転台3が内設されている脱水室Cとケース体2の外部とが相通するように枠対2の側面に設けた吸気孔14aと、脱水室Cに送気する吸気管14bとからなる。
【0017】
更に、排気手段15は脱水室Cとケース体2の外部とが相通するようにケース体2の上面に設けた排気孔15aと、脱水室Cからケース体2の外部に排気する排気管15bとからなる。
【0018】
次に、実施例1における遠心脱水装置の動作について説明する。回転台3は挿脱口12がケース体2に取り付けられた扉21側となる位置で停止しており、押体8は搬送される折り畳み容器と干渉しない位置に待避している。そして、扉21を開放し、図示していない搬送手段により折り畳まれた折り畳み容器bが脱水室C内に搬送され、その前面b1が衝止部材1に当接するように回転台に載置される。ここで、積み上げられた折り畳み容器の重心Pは常に回転軸51の軸芯よりも衝止部材1側となるように載置されている。なお、本実施例においては被脱水物(折り畳まれた折り畳み容器b)を五段に積み上げた実施例が図示されているが、被脱水物は一段であってもよく、または数段に積み上げることもできる。
【0019】
折り畳まれた折り畳み容器が積み上げられ所定の位置に載置された後には昇降手段9により昇降軸91が下降し下端に固着した押体8によって前記折り畳まれた折り畳み容器の最上面b4を支承する。前記昇降手段9には図示はしていないが必要以上に押力が働かないように圧力検知体を取り付けて押力を制御している。
【0020】
次に、扉21を閉め回転手段5を作動させて回転台3を回転させることにより脱水を行う。この時、折り畳み容器には遠心力が働き、残留している洗浄液を放散させて脱水が行われる。放散された洗浄液は直接あるいは脱水室Cの内壁面を介して間接的に基台6上に落下し、排水手段11を通してケース体2の外部に排水される。脱水完了後は回転台3の回転を挿脱口12側が扉21側となる位置で停止させ、昇降手段9を上昇に切り替えて押体8を干渉しない位置まで待避させて扉21を開放し、図示していない搬送手段により折り畳み容器bがケース体2外に搬送されて脱水工程が完了する。
【0021】
なお、本実施例においては、被脱水物のである折り畳み容器の最上面b4を押体8により支承する構成としたが、該押体は無くても構わず、その場合、昇降手段9は不要となり昇降軸91を回転軸として使用することができる。
【0022】
ところで、被脱水物の重心Pが常に回転軸51の軸芯よりも衝止部材1側となるように載置したのは、被脱水物である折り畳み容器の重心Pが回転運動により回転軸51の軸芯から遠ざかるように遠心力を受けるため、折り畳み容器は衝止部材1の方向に力を受け、前記衝止部材1当接した状態を維持する。つまり、折り畳み容器が挿脱口12側に飛び出すことはないため従来のような折り畳み容器の挿脱口12側を支承する係止部材は不要となる。なお、衝止部材1を可動できる構造にして被脱水物の大きさに合わせて回転台3上への載置位置を調整できるようにしてもよい。
【0023】
また、バランス体10bを設けたのは、被脱水物の重心Pを回転軸51から離隔させる等、回転部位の非対称から生ずる回転時の振動を抑制するためである。なお、バランス体10bは例えば支持板31等の他の部位に設けてもよく、回転時の振動をより抑制できる位置に可動可能な構成として取り付けてもよい。
【実施例2】
【0024】
本発明の他の実施例について図3および図4を用いて説明する。基本的な構造および動作については実施例1と変わらないため省略するが、本実施例においては実施例1の遠心脱水装置に、回転台3上に複数の羽根部材16、16、・・・が配設されている。
【0025】
前記各羽根部材16は図4に示したように回転台3の半径方向に対して傾斜角θを持って略垂直方向に立設されており、各羽根部材16の上端部は支持板31に一体的に固着されている。
【0026】
次に、動作について説明する。実施例1記載の折り畳んだ折り畳み容器bが回転台3に積み上げて載置され、押体8により前記折り畳み容器の最上面b4を支承し、扉21を閉めて回転台3の回転開始により脱水が行われるが、回転台上に立設した複数の羽根部材16、16、・・・も同様に回転軸51を軸芯として回転し、前記した傾斜角θを持っているためミストを含んだ気体は羽根部材16、16、・・・に衝突してケース体2の側面方向に押し出される。故に軸芯側、つまり載置された折り畳み容器b側からケース体2の側面方向に向かって風流が発生する。この時、回転台3には図示していない多数の通孔が設けられているため、前記吸気手段14によって吸気された気体は前記通孔を通して回転台上方向に送り込まれ、更にミストを含みながら前記羽根部材16、16、・・・の間隙を通過し、排気手段15を通してケース体2の外部に排気される。
【0027】
前記複数の羽根部材16、16、・・・を設けたのは脱水された洗浄液のミストを強制的に排気することによって効率よく脱水を行い、短時間で脱水工程を完了させるためである。
【0028】
なお、実施例1および実施例2において被脱水物として折り畳み容器を使用したが、通常の搬送用容器あるいはパレット等であってもよく、同様の手段で脱水され同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例を説明するためのケース体を断面とした正面図である。
【図2】図1のA−A線の水平断面図である。
【図3】本発明の他の実施例を説明するためのケース体を断面とした正面図である。
【図4】図3のA’−A’線の水平断面図である。
【図5】従来の実施形態を説明するためのケース体を断面とした正面図である。
【図6】図5のB−B線の水平断面図である。
【符号の説明】
【0030】
b 被脱水物(折り畳み容器)
1 衝止部材
2 ケース体
3 回転台
4 係止部材
6 基台
7 ガイド手段
71 ガイド部材
8 押体
9 昇降手段
10b バランス体
11 排水手段
12 挿脱口
14 吸気手段
15 排気手段
16 羽根部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円盤状で水平回転をする回転台上に載置して遠心脱水を行う遠心脱水方法であって、被脱水物の重心位置を前記回転台の回転軸から離隔した位置となるように前記回転台上に載置し、前記回転軸に対して前記被脱水物の重心側に配設して、遠心脱水時に前記被脱水物に掛かる遠心力に抗して被脱水物を衝止部材により支承することを特徴とする遠心脱水方法。
【請求項2】
被脱水物を略円盤状で水平回転をする回転台上に載置して遠心脱水する遠心脱水装置であって、前記被脱水物を載置する回転台と、前記回転台に固着し前記回転軸に対して前記被脱水物の重心側に配設して被脱水物を支承する衝止部材とを備えたことを特徴とする遠心脱水装置。
【請求項3】
略円盤状で水平回転をする回転台上に載置して遠心脱水する遠心脱水装置であって、前記回転台の周縁から略垂直方向に立設し回転台の半径方向に対して傾斜角を有する複数の羽根部材を備えたことを特徴とする請求項2に記載の遠心脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−78121(P2006−78121A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−264117(P2004−264117)
【出願日】平成16年9月10日(2004.9.10)
【出願人】(301013583)株式会社イシダテック (2)
【Fターム(参考)】