説明

遠方監視制御システムの時刻補正方法

【課題】各子局と親局の時刻同期に、外部時計やインターネットとの通信手段を不要にする。
【解決手段】1回目の補正時刻が入力されたとき、コンピュータの現在時刻を1回目の補正時刻として記憶しておき(S2)、この補正時刻から2回目の補正時刻までの時間差tとコンピュータの現在時刻がもつ誤差分±sとから、コンピュータに1秒の誤差が発生するのに要した期間naを求め(S4)、この補正期間na毎にコンピュータの時計を正負1秒ずつ補正する処理を繰り返してゆき(S6、S8)、3回目の補正時刻では2回目の補正における補正期間naでの補正値に、コンピュータに1秒の誤差が発生するのに要した期間naを調整した補正期間zaを求め、この補正期間za毎にコンピュータの時計を補正する処理を繰り返す(S7)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠方監視制御システムの時刻補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠方監視制御システムは、電力系統や水処理プラントなど、広域に分散される機器・設備の状態を各子局で監視情報(オン/オフ信号、計測情報)として収集して中央の親局に伝送し、親局では受信した多くの監視情報さらにはオペレータの操作信号を基にして生成した制御情報を各子局側に伝送し、各子局では制御情報に従って機器・設備を制御する。これら監視制御に必要な信号処理の大部分は制御用コンピュータによってディジタル的に処理される。
【0003】
ここで、各子局が収集する監視情報に時刻情報を付加して親局側に伝送する場合がある。例えば、配電系統の各区分所の負荷状況を各子局が収集して中央の管理室に伝送し、管理室ではこれらの集計などを日報として管理する場合がある。この場合、各子局では単位時間毎に負荷電力を集計し、これに時刻情報を付加して親局側に伝送する。各子局及び親局は時刻情報を基に負荷情報を集計及び管理するため、それぞれに内部時計、つまりハードウェアクロック(水晶発振器)を設けているが、この内部時計に遅れや進みがあると、正確な負荷状況の管理ができない。
【0004】
そこで、この種の監視制御システムでは、各子局と親局間に時刻同期装置を設け、各子局の監視信号に時刻同期を得た監視を可能にしている。この時刻同期装置は、各子局および親局のコンピュータがもつ内部時計に発生する時刻の狂い(例えば、1日当たり5秒程度)を、外部時計(FM、電波時計、GPS時刻情報)によって補正、またはインターネット上のNTPサービスのアクセスによって補正するようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平7−284181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の外部時計による時刻補正方式では、その受信機設置と時計信号処理デバイスなどのハードウェア費用とアンテナ設置工事が必要となる。
【0006】
一方、インターネット上のNTPサービスを利用する場合には、プロバイダとの毎月の契約費用およびウイルス対策が必要となる。
【0007】
本発明の目的は、上記の外部時計やインターネットとの通信手段を不要にして内部時計の時刻補正ができる時刻補正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記の課題を解決するため、任意のタイミングで補正時刻が入力されたとき、該補正時刻とコンピュータの内部時計の現在時刻との正負誤差分から、コンピュータに単位時間の誤差が発生するのに要した期間を求め、この期間を補正期間としてコンピュータの内部時計を単位時間ずつ補正し、この補正に際して前回の補正により生じたコンピュータの内部時計の誤差分を考慮した補正期間で補正するようにしたもので、以下の方法を特徴とする。
【0009】
(1)遠方監視制御システムの各子局および親局がもつコンピュータの内部時計の時刻補正方法であって、
前記コンピュータは、任意のタイミングで補正時刻が入力されたとき、該補正時刻とコンピュータの内部時計の現在時刻との正負誤差分から、コンピュータに単位時間の誤差が発生するのに要した期間を求め、この期間を補正期間としてコンピュータの内部時計を単位時間ずつ補正し、この補正に際して前回の補正により生じたコンピュータの内部時計の誤差分を調節した補正期間で補正する処理手順を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のとおり、本発明によれば、コンピュータがもつデータ処理機能を利用して、前回に時刻補正した補正を基に、内部時計を自己補正するようにしたため、従来の補正方法で必要な外部時計やインターネットとの通信手段を不要にして時刻補正ができる。
【0011】
しかも、補正に際して前回の補正により生じたコンピュータの内部時計の誤差分を調節した補正期間で補正するため、補正精度を高めた各子局と親局間の時刻同期が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施形態を示す時刻補正処理フローであり、時刻同期を必要とする遠方監視制御システムにおける各子局および親局が搭載するコンピュータの時刻同期ソフトウェア構成として実現される。
【0013】
本実施形態では、任意のタイミングで補正時刻が入力されたとき、コンピュータの内部時計が刻む現在時刻(PC時刻)を1回目の補正時刻として記憶しておき、この補正時刻から2回目の補正時刻までの時間差(t)とコンピュータの現在時刻(PC時刻)がもつ正負誤差分(±s)とから、コンピュータに1秒の誤差が発生するのに要した期間(na)を求め、この補正期間(na)毎にコンピュータの内部時計を正負1秒ずつ補正する処理を繰り返してゆき、3回目の補正時刻では2回目の補正における補正期間(na)での補正値(正負1秒)に、コンピュータに1秒の誤差が発生するのに要した期間(na)を調整した補正期間(za)を求め、この補正期間(za)毎にコンピュータの内部時計を正負1秒ずつ補正する処理を繰り返し、4回目以降の補正時刻では、3回目の補正と同じに過去に調整した補正を基に時刻補正を繰り返す。
【0014】
図2は、図1の補正方法による時刻補正の具体例を示し、以下、図1と図2を参照してコンピュータの時刻補正動作を処理手順(S1)〜(S10)に分けて説明する。
【0015】
(S1)任意のタイミングで1回目の補正時刻(現在時刻)を入力する。この補正時刻は、例えば、保守員が予め数値(年月日、時分秒)を設定しておき、テレビやラジオから発信される時報に合わせて入力操作する。または、保守員が電波時計などの受信機能をもつ時計を携帯している場合はその時刻を利用することでもよい。
【0016】
(S2)上記の(S1)では1回目の補正時刻入力になり、この補正時刻とコンピュータの現在時刻との誤差(±s)を算出し、補正時刻はコンピュータ時刻に補正後、今回補正時刻としてメモリ等に格納しておく。
【0017】
図2の例では、1回目の補正時刻「2005年1月8日、10時0分0秒」が入力され、このときのコンピュータ時刻が「2005年1月8日、10時3分0秒」とすると、誤差は「−3分」となる。また、今回補正時刻は「2005年1月8日、10時3分0秒」とする。
【0018】
(S3)前回補正入力ありか否かをチェックする。この段階では、1回目の補正時刻入力のため、前回の補正入力なし(N)となり、以下の(S9)にジャンプし、今回補正時刻を前回補正時刻にセットし、続いて(S10)により次の時刻補正入力を待つ。
【0019】
図2の例では、「2005年1月8日、10時3分0秒」が前回補正時刻として、補正周期の演算に供される。
【0020】
(S4)2回目の補正時刻入力がなされたとき(S1)、上記の(S2)によって誤差(±s)の算出と、コンピュータ時刻を今回補正時刻として格納し、(S3)では前回補正入力あり(Y)になる。
【0021】
このとき、補正周期の演算は、前回補正時刻と今回補正時刻との時間差(t)と誤差(±s)より、1秒の誤差が生じるに要した期間(na)を補正期間として求める。すなわち、na=|t÷s|の演算を行う。また、誤差(±s)が負であれば補正値(nh)は「−1秒」、正であれば「+1秒」とする。
【0022】
図2の例では、2回目の補正時刻が「2005年2月8日、10時10分10秒」に入力され、このときのコンピュータ時刻が「2005年2月8日、10時8分0秒」とすると、誤差(±s)は「+130秒」、1回目と2回目の補正時刻の時間差(t)は「2678880秒」となり、期間(na)は「20606秒」、補正値(nh)は「+1秒」となる。また、今回の補正時刻は「2005年2月8日、10時8分0秒」となる。
【0023】
(S5)前々回補正入力があるか否かをチェックする。この段階では、2回目の補正時刻入力のため、前々回の補正入力なし(N)となり、以下の(S6)にジャンプする。
【0024】
(S6)今回算出した補正期間(na)を補正周期(za)とし、補正値(nh)を補正値(zh)として(S8)にジャンプし、(S8)では補正周期(za)毎に補正値(zh)=±1秒の時刻補正をする。
【0025】
図2の例では2回目の補正時刻入力で求めた補正期間(na)=「20606秒」毎に、補正値(nh)=「+1秒」でコンピュータの時計時刻を補正し、コンピュータの内部時計の遅れを進めていく。
【0026】
(S7)3回目の補正時刻が入力された場合、(S2)、(S4)の処理が実行され、3回目での誤差(±s)および補正期間(na)が求められる。さらに、(S5)では前々回補正入力ありになる。この段階では、(S6)で置換された現在の補正周期(za)での補正値(zh)に、今回求められた補正期間(na)を以下の演算により調節する。
【0027】
w=|na÷za|×zh+nh、za=na÷w
この調節は、前回と今回の補正期間の比率|na÷za|に2回目の補正値(zh)を乗じたもので今回の補正値(nh)を調節した誤差分(w)を求め、この誤差分(w)で今回の補正期間(na)を除したものを補正期間(za)とし、誤差分(w)が負であれば補正値(zh)は−1秒、正であれば+1秒とする。
【0028】
図2の例では、3回目の補正時刻入力が「2005年3月3日、12時12分30秒」で、このときのコンピュータ時刻が「2005年3月3日、12時12分40秒」の場合、前回の補正時刻との時間差(t)=「1994550秒」で誤差(±s)=−10秒のため、「199455秒」周期で1秒進んだことになる。この周期で1秒戻しが必要になる前回の補正では「199455秒」周期当たり「9.68秒」の進み補正を行っているので、これを考慮すると今回では「8.68秒」の進みとすればよい。つまり、2回目と3回目の補正を考慮し、「22978秒」周期で1秒の進み補正をする。
【0029】
(S8)上記の(S6)または(S7)で求めた補正周期(za)毎に補正値(zh)でコンピュータの内部時計を時刻補正する。この補正は、図3に示す処理フローで実現され、補正周期(za)に時限設定されたタイマがタイムアップしたとき(S11)、補正値(zh)の正負をチェックし(S12)、負であればコンピュータの内部時計を1秒進め(S13)、正であればV1秒遅らせ(S14)、タイマの次回のタイムアップを待つ(S15)。
【0030】
(S9)補正時刻入力がなされたときに、今回補正時刻を前回補正時刻としてセットしておく。
【0031】
(S10)次の時刻補正入力を待つ。
【0032】
以上までに説明した本実施形態において、補正周期毎に±1秒の補正をする場合を示すが、システム構成に応じて±0.5秒など他の単位時間に適宜変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態を示す時刻補正処理フロー。
【図2】実施形態の補正方法による時刻補正の具体例。
【図3】実施形態におけるコンピュータの内部時計の時刻補正処理フロー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠方監視制御システムの各子局および親局がもつコンピュータの内部時計の時刻補正方法であって、
前記コンピュータは、任意のタイミングで補正時刻が入力されたとき、該補正時刻とコンピュータの内部時計の現在時刻との正負誤差分から、コンピュータに単位時間の誤差が発生するのに要した期間を求め、この期間を補正期間としてコンピュータの内部時計を単位時間ずつ補正し、この補正に際して前回の補正により生じたコンピュータの内部時計の誤差分を調節した補正期間で補正する処理手順を有することを特徴とする遠方監視制御システムの時刻補正方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−151556(P2008−151556A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337896(P2006−337896)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000006105)株式会社明電舎 (1,739)
【Fターム(参考)】