説明

遠隔計測対象の遠隔計測方法とそれに用いる遠隔計測具

【課題】遠隔操作対象の2点間計測を、これら2点間との機械的な直接接触のもとに容易かつ確実に直接計測することができるようにする。
【解決手段】作業者Cの計測動作域Aから、作業者Cが直接触れ難い遠隔計測対象Bの一方の計測端B1に、計測触子1を止め付けた遠隔計測竿2と、計測動作位置Aから計測対象Bの他方の計測端b2に、計測触子3を止め付けた遠隔計測竿4と、の間で、それら遠隔計測竿2、4の計測元2a、4a側に寄って設定した交差点5を境にした計測触子1、3までの長さL1と計測元2a、2bまでの長さL1との予め知った比と、遠隔計測竿2、4の、計測動作域A側で得た計測元2a、2b間の距離値S1と、に基づき、計測端B1、B2間の長さや間隔S2を遠隔計測するようにして、上記の課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔計測対象の遠隔計測方法とそれに用いる遠隔計測具に関し、詳しくは、計測作業者の計測動作域からは、高所、危険域、障害物、大きな離隔などのために、作業者が直接触れ難い、遠隔計測対象の長さや間隔といった2点間計測を、これら2点間との機械的な接触のもとに容易かつ確実に直接計測する遠隔計測対象の遠隔計測方法とそれに用いる遠隔計測具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような遠隔計測対象の2点間の直接計測としては、下記の特許文献1に開示された計測技術が知られる。具体的には、伸縮自在な光ファイバを用い、この光ファイバの一端を、計測の対象となる一方の固定物に固定し、前記光ファイバの他端を他方の移動物に直接またはワイヤを介して固定することにより、計測対象物の2点間の伸縮を、この伸縮に対応する光ファイバの伸縮を反映した光ファイバ内を通過する光の光量変化、または反射波、干渉波を基に計測している。
【0003】
一方、下記特許文献2が開示する、レーザビームを用いた三角測距技術のような間接方式は多々知られている。
【0004】
また、下記特許文献3は、電柱またはマスト間に伸び懸垂する頭上の電導体を監視、具体的には懸垂量変化、増大を監視するのに、一方の電柱またはマストに取り付けたセンサ類によって、電導体の懸垂部に取り付けた位置情報体との間で、許容限界を検出し、無線通信などによって監視情報を監視者が入手できるようにする、間接計測技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−14952号公報
【特許文献2】特表2000−517072号公報
【特許文献3】特表平10−502730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載の計測技術は、計測2点が作業者の計測動作域に収まらない大きな離隔に対応して、計測2点間に伸縮できる光ファイバを張設し、計測2点間の伸縮が直接反映して光ファイバが伸縮するときの光情報を、それら計測2点の一方または双方から離れた位置にて電気的にモニタして計測できるようにしているため、計測2点間に伸縮性のある光ファイバを張設し、また、計測後は2点間から取り外し回収する、手間が必要である。しかも、光情報の電気的な計測データへの変換、計測データを可視化するデータ処理、出力器が必要であり、容易かつ確実に直接計測できる機械的計測技術とはいえない。
【0007】
特許文献2、3に記載の計測技術は、特許文献1に記載の計測技術以上に、容易かつ確実に直接計測できる機械的計測技術とは程遠いものといえる。
【0008】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、遠隔操作対象の2点間計測を、これら2点間との機械的な直接接触のもとに容易かつ確実に直接計測することができる遠隔計測対象の遠隔計測方法とそれに用いる遠隔計測具を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の遠隔計測対象の遠隔計測方法は、作業者の計測動作域から延ばして、この計測動作域から作業者が直接触れ難い遠隔位置にある遠隔計測対象の一方の計測端に、計測触子を止め付けた第1の遠隔計測竿と、計測動作位置から延ばして、前記計測対象域の他方の計測端に、計測触子を止め付けた第2の遠隔計測竿と、の間で、それら第1、第2の遠隔計測竿の計測元側に寄って設定した交差点を境にした計測触子までの長さと計測元までの長さとの予め知った比と、第1、第2の遠隔計測竿の、計測動作域側で得た計測元間の距離値と、に基づき、前記一方の計測端と、他方の計測端との間の長さや間隔を遠隔計測することを特徴としている。
【0010】
このような構成では、作業者の計測動作域から遠隔計測対象の一方および他方の計測端まで届く長さの第1、第2の遠隔計測竿を利用して、遠隔計測対象でもその一方および他方の計測端に計測触子を直接止め付け、各計測端上に安定させられる。この結果、各計測端上に安定した計測触子を基点に、それらの間の計測すべき長さや間隔に対し、第1、第2の遠隔計測竿同士の計測元側に寄った交差点を境に計測元間の距離が、第1、第2の遠隔計測竿の交差点を境にした計測触子までの長さと計測元までの長さとの比に応じた縮尺度で一義的、かつ不動、に関係付けられる。この比およびそれによる縮尺度は予め知り得るものであり、計測元間の距離は計測2点間に比し縮尺されているので作業者の計測動作域にて、従って、縮尺度によっては、作業者一人でも、その場で計測でき、その計測値の前記縮尺度に基づいた計測2点間の長さや間隔への換算を伴い、遠隔計測対象の各計測端2点間の長さや距離を遠隔計測することができる。
【0011】
上記において、さらに、第1、第2の遠隔計測竿の、計測元間の距離は、前記比に応じた縮尺度で実計測端間距離に換算した目盛りを持つ換算スケールによって、実計測端間距離として計測することができる。
【0012】
このような構成では、上記に加え、さらに、計測元間から、換算スケールに付した前記比に応じた縮尺度で実計測端間距離に換算した目盛りによって、各計測端間の長さや距離に換算された実値を計測値として読み取ることができる。
【0013】
本発明の遠隔計測具は、作業者の計測動作域から、この計測動作域からは作業者が直接触れ難い遠隔位置にある計測対象の一方の計測端まで延びてそれに接触させられる計測触子と、この計測触子を、前記接触させた前記計測端に対し遠隔操作にて止め付ける止め付け具と、を備えた第1の遠隔計測竿、計測作業域から前記計測対象の他方の計測端まで延びてそれに接触させられる計測触子と、この計測触子を、接触させた遠隔計測対象に遠隔操作にて止め付ける止め付け具と、を備えた第2の遠隔計測竿、これら第1、第2の遠隔計測竿を、それらの計測元側に寄って設定した交差点を中心に開閉できるように連結する連結具、を備えたことを特徴としている。
【0014】
このような構成によれば、第1、第2の遠隔計測竿間に必要な相互位置関係と操作性とを、それら第1、第2の遠隔計測竿間の交差点での連結により機械的に確保して、上記の遠隔計測方法を、手際よく高い計測精度で達成することができる。
【0015】
上記において、さらに、計測触子は、第1、第2の遠隔計測竿との連結基部から先へ延び、遠隔計測対象の計測端部に計測位置側から引っ掛けるフック部を有し、止め付け具は、第1、第2の遠隔計測竿の先端に固定されて、計測触子の基部に螺合し、第1、第2の連結基部上での計測元側から回転させる遠隔操作により、計測触子の基部上で、フック部に対し進退されて、フック部を遠隔操作対象の対応する計測端に止め付け、また止め付けを解除する回転進退部材を有したものとすることができる。
【0016】
このような構成では、上記に加え、さらに、計測触子は、対応する第1、第2の遠隔計測竿による計測元側からの遠隔操作によって、そのフック部を、遠隔計測対象の対応する計測端に、作業者の計測動作域側から簡単かつ確実に引っ掛けられる。このとき計測触子は、フック部の計測端への引っ掛かりによって対応する第1、第2の遠隔計測竿の軸線まわりに回り止めされる。そこで、計測位置にて対応する第1、第2の遠隔計測竿を連結具上で計測元側から特定の方向に回転させることにより、これに連結した止め付け具の回転進退部材を、フック部によって回り止めされた計測触子の基部上で、この基部との螺合関係を利用して、フック部側に進出するよう遠隔操作し、進出した回転進退部材により遠隔計測対象の計測端部をフック部との引っ掛かり位置に挟み付ける状態で止め付けられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の遠隔計測対象の計測方法によれば、作業者の計測動作域から遠隔計測対象の一方および他方の計測端まで届く長さの第1、第2の遠隔計測竿により、それらの先端の計測触子を、遠隔計測対象の対応する2点の計測端に直接止め付けられ、これにより、計測触子を基点に、それらの間の計測すべき長さや間隔に対し、第1、第2の遠隔計測竿同士の計測元側に寄った交差点を境にした、計測元間の距離が、第1、第2の遠隔計測竿の計測触子側長さと計測元側長さとの比に応じた縮尺度で一義的、かつ不動、に関連付けでき、既知な縮尺度と、縮尺側である計測元間の距離の、狭い計測動作域にて、従って一人の作業者でもその場で簡易に得られる実測値とに基づき、遠隔計測対象の各計測端2点間の長さや距離を、機械的な直接接触で容易かつ確実に遠隔計測することができる。
【0018】
上記に加え、さらに、計測元間の距離を、前記比に応じた縮尺度にて実計測端間距離に換算した、目盛りを持つ換算スケールによって、計測元間から直接に、各計測端間の長さや距離の実値を計測値として読み取れるので、特別な換算作業が不要となる。
【0019】
本発明の遠隔計測具によれば、第1、第2の遠隔計測竿間に必要な相互位置関係と操作性を機械的に確保して、上記の遠隔計測方法を、手際よく、容易かつ確実に達成することができる。
【0020】
上記に加え、さらに、第1、第2の遠隔計測竿による計測元側からの遠隔操作にて、フック部を、遠隔計測対象の対応する計測端に簡単かつ確実に引っ掛けるだけで、同時に、回り止め状態とし、後は、計測動作域にて第1、第2の遠隔計測竿を計測元側で回転させて止め付け具の回転進退部材を、回り止め状態のフック部の基部に対しフック部側に進出するよう遠隔操作すれば、回転進退部材により遠隔計測対象の計測端部をフック部により止め付けた計測状態となるので、簡単な構造によってさらに容易かつ短時間に遠隔計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る遠隔計測対象の遠隔計測具を計測状態で示す全体構成の斜視図である。
【図2】同計測具の計測元間距離の、計測状態の一例を示す一部の斜視図である。
【図3】同計測具の、計測触子を遠隔計測対象の測定端に止め付けるのに、計測触子のフック部を前記測定端に測定位置側からの遠隔操作で引っ掛けた状態を示す説明図である。
【図4】同計測具の、計測触子を遠隔計測対象の測定端に止め付けるのに、計測触子の回転進退部材を遠隔操作してフック部を前記測定端に止め付けた状態を示す説明図である。
【図5】図1に示す計測状態の遠隔計測具を第1の遠隔計測竿の側と、第2の遠隔計測竿の側とに2分し、かつそれらを伸縮させて持ち運びや取り扱いに便利にした状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態に係る遠隔操作対象の遠隔計測方法とそれに用いる遠隔計測具について、図1〜図5を参照しながら説明し本考の理解に供する。以下の説明は本発明の具体例であって、特許請求の範囲の記載事項を限定するものではない。
【0023】
本実施の形態の遠隔計測対象の計測方法につき、図1に示す遠隔計測具100の1つの例を参照して説明すると、作業者Cの計測動作域Aから延ばして、計測動作域Aからは作業者Cが直接触れ難い遠隔位置にある遠隔計測対象域Bの一方の計測端B1に、計測触子1を止め付けた第1の遠隔計測竿2と、計測動作域Aから延ばして、前記遠隔計測対象域Bの他方の計測端B2に、計測触子3を止め付けた第2の遠隔計測竿4と、の間で、それら第1、第2の遠隔計測竿2、4の計測元2a、4a側に寄って設定した交差点5を境にした計測触子1、3までの長さL1と計測元までの長さL2との予め知った比と、第1、第2の遠隔計測竿2、4の、計測動作域A側で得た計測元2a、4a間の距離値S1と、に基づき、前記一方の計測端B1と、他方の計測端B2との間の長さや距離S2を遠隔計測する。
【0024】
これにより、作業者Cの計測動作域Aから遠隔計測対象域Bの一方および他方の計測端B1、B2まで届く長さの第1、第2の遠隔計測竿2、4を利用して、計測動作域Aからは作業者Cが直接触れ難い遠隔計測対象域Bでもその一方および他方の計測端B1、B2に計測触子1、3を直接止め付け、遠隔計測対象域Bが長尺形態物であっても位置ずれしないように各計測端1、3上に安定させられる。この結果、各計測端B1、B2上に安定した計測触子1、3を基点に、具体的には、計測触子1、3の各計測端B1、B2への止め付け位置を基点に、それらの間の計測すべき長さや間隔S2に対し、第1、第2の遠隔計測竿2、4同士の計測元2a、4a側に寄った交差点5を境に計測元2a、4a間の距離S1が、第1、第2の遠隔計測竿2、4の交差点5を境にした計測触子1、3までの長さL1と、計測元2a、4aまでの長さL2と、の比に応じた縮尺度で一義的、かつ不動、に関連付けられる。この比およびそれによる縮尺度は予め知り得るものであり、計測元2a、2b間の距離は計測2点間に比し縮尺されているので作業者Cの計測動作域A内にて、従って、縮尺度によっては作業者一人の計測動作域内でも、遠隔計測でき、その計測値の前記縮尺度に基づいた実長さや間隔S2への換算を伴い、遠隔計測対象域Bの各計測端B1、B2である2点間の長さや距離S2を遠隔計測することができる。換算は、筆算や簡単な計算器でも簡単に行える。
【0025】
したがって、作業者Cの計測動作域Aから遠隔計測対象域Bの一方および他方の計測端B1、B2まで届く長さの第1、第2の遠隔計測竿2、4により、それらの先端の計測触子1、3を、遠隔計測対象域Bの対応する2点の計測端B1、B2に直接止め付けられ、これにより、計測触子1、3を基点に、それらの間の長さや間隔S2に対し、第1、第2の遠隔計測竿2、4同士の計測元2a、2b側に寄った交差点5を境にした、計測元2a、4a間の距離S1が、第1、第2の遠隔計測竿2、4の計測触子1、3側長さL1と計測元2a、4a側長さL2との比に応じた縮尺度で一義的、かつ不動、に関連付けでき、既知な縮尺度と、縮尺側である計測元2a、4a間の距離S1の、縮尺度に応じた狭い計測計測動作域Aにて、従って、縮尺度によっては、一人の作業者の計測作業域内でも簡易に得られる計測元2a、4a間の距離S1の実測値とに基づき、遠隔計測対象の各計測端2点間の長さや距離S2への換算を伴い、容易かつ確実に遠隔計測することができる。
【0026】
ここで、遠隔計測対象域Bは、図1に示す計測例のように、図示しない電柱間に敷設された架線D1といった長尺形態物の中途位置の2点間に限られることはなく、図1に示す平行な架線D1、D2などの間の互いに離れた2点間であってもよい。
【0027】
また、第1、第2の遠隔計測竿2、4の、計測元2a、4a間の距離S1は、前記比に応じた縮尺度で実計測端間距離S2に換算した図2に示すような一種以上の目盛り6a、6bを持つ換算スケール6によって計測することができる。これにより、計測元2a、4a間から、換算スケール6に付した前記比に応じた縮尺度で実計測端間距離S2に換算した目盛り6aや6bによって、各計測端B1、B2間の長さや距離S2に換算された実値を計測値として読み取ることができる。従って、計測元2a、4a間の距離S1を、前記比に応じた縮尺度にて実計測端間距離S2に換算した、目盛り6aや6bを持つ換算スケール6によって、計測元2a、4a間から直接に、各計測端間の長さや距離S2の実値を計測値として読み取れるので、筆算や各種計算器による特別な換算作業が不要となり、より簡単かつ迅速に、筆算ミス、データ入力ミスに起因した計算ミスもなしに遠隔計測を達成できる。
【0028】
遠隔計測竿2、4は長さ調節できなくても、作業者Cの遠隔動作域地面A1から高所にある遠隔操作対象域Bまでの離隔距離の大小に対して、遠隔計測竿2、4の長さL1+L2、あるいは、これに作業者Cによる持ち上げ可能分を加えた長さを限度に、過剰長さ分は、遠隔計測竿2、4の傾斜角の調整によって対応できる。従って、遠隔計測竿2、4は、先端側が計測触子1、3を有するだけの計測上の操作負荷の小さなものであることに対応して、先細形態での先端側の負荷軽減を伴い遠隔操作限界未満の最大長さに設定し、遠隔距離の違いに幅広く順応するようにできる。
【0029】
しかし、遠隔計測竿2、4を複数段階に長さ調節できるようにして遠隔距離の違いに対応すると、各種の遠隔距離に対応した、またはそれに近い長さで操作性よく利用できる。この場合、遠隔計測竿2、4の複数段階での長さ調節は、遠隔計測対象域Bの各計測端B1、B2間の長さまたは間隔S2に対する、計測元2a、4a間の距離S1の縮尺度が変化することを意味するが、これには、記述した複数の目盛り6a、6bなどの換算率を異ならせておき、対応するものを選択使用することで作業性よく対応できる。もっとも、遠隔計測竿2、4の長さは無段階に調節して、各種遠隔距離の違いにきめ細かく対応した操作性を得ることもできる。この場合の縮尺度の無段階な変化に換算スケール6の目盛りで対応するのは困難であるので、その都度、長さL1、L2の比率を実測し、縮尺度を得て、筆算や計算器による変換操作に適用するのがかえって好適となる。また、この変換操作は簡単であるので一般の携帯用計算器で十分対応できるし、場合によっては、ごく簡単な専用計算器にて対応することもできる。
【0030】
以上のような遠隔計測方法を達成するのに、本実施の形態に係る図1に示す例の遠隔計測具100は、作業者Cの計測動作域Aから、この計測動作域Aからは作業者Cが直接触れ難い遠隔位置にある遠隔計測対象域Bの一方の計測端B1まで延びてそれに接触させられる計測触子1と、この計測触子1を、前記接触させた前記計測端B1に対し遠隔操作にて止め付ける止め付け具7と、を備えた第1の遠隔計測竿2、計測作業域Aから前記遠隔計測対象域Bの他方の計測端B2まで延びてそれに接触させられる計測触子3と、この計測触子3を、接触させた計測端B2に遠隔操作にて止め付ける止め付け具8と、を備えた第2の遠隔計測竿4、これら第1、第2の遠隔計測竿2、4を、それらの計測元2a、4a側に寄って設定した交差点5を中心に開閉できるように連結する連結具9、を備えたものとしている。
【0031】
これにより、第1、第2の遠隔計測竿2、4間に上記方法に必要な相互位置関係と操作性を、それら第1、第2の遠隔計測竿2、4間の交差点5での連結具9による連結により機械的に確保して、上記の遠隔計測方法を、手際よく、容易かつ確実に達成することができる。特に、第1、第2の遠隔計測竿2、4の計測触子1、3を遠隔計測対象域Bの各計測端B1、B2に対応させるのを、連結構造を利用した計測元2a、4a側での遊びや位置ずれのない軽快な開閉操作にて容易かつ確実に行える。しかも、その開閉操作域は、縮尺度によって作業者C一人の計測動作域A内に収まるので、一挙動にて達成でき、地面A1上や台面上に載置して行えばずらし抵抗はあるものの重量負荷なしにゆっくりと無理なく行える。また、場合によっては、第1、第2の遠隔計測竿2、4の各計測触子1、3の各計測端B1、B2への止め付けを前作業と後作業に分けて実行することもできる。例えば、第1、第2の遠隔計測竿2、4を閉じ状態で取り扱い、先行させる第1の遠隔計測竿2の計測触子1を一方の計測端B1に位置合わせして止め付けた後、第1の遠隔計測竿2の操作元2aを各計測端B1、B2のほぼ中点に対応する地面A1上に持ち運びながら、第2の遠隔計測竿4を第1の遠隔計測竿2に対し開き操作して計測触子3を他方の計測端B2に位置合わせして止め付けることで、計測に必要な機械的関係を満足させられる。
【0032】
ここで、計測元2a、4a間の距離を換算スケール6によって計測するのに、計測時に第1、第2の遠隔計測竿2、4の下端2b、4bを地面A1などの上に載置して行うのが便利なことを考慮して、下端2b、4bよりも上の位置を計測元2a、4aに設定してある。また、計測元2a、4aには計測基台11、12を外嵌めしネジ止めするなどして装備し、一方の計測基台11に換算スケール6の目盛り起点をピン13により枢着して、第1の遠隔計測竿2に沿う起立位置と計測基台12側に伏倒した伏倒位置との間で回動させられるようにするのに併せ、他方の計測基台12に目盛り6a、6bなどの読み取りのための図2に示すような突起などによる指標14を設けてある。これにより、換算スケール6を計測基台12側に伏倒させるだけで、目盛り6a、6bが指標14に対向し遠隔計測対象域Bの各計測端B1、B2間の長さや間隔S2を即時に読み取れる。
【0033】
この読み取りを容易にするのに、他方の計測基台12に伏倒してくる換算スケール6を所定の伏倒位置に下方から受け止める例えば図1、図2、図5に示すようなU字状のスケール受15を設けて、読み取り位置に安定させられるようにしている。また、換算スケール6を起立位置に戻せば、第1の遠隔計測竿2に沿って張り出さなくなるので、非計即時の取り扱い上、邪魔になることはない。この起立位置に換算スケール6を安定させるため、第1の遠隔計測竿2の、計測基台11の上に、保持基台16を外嵌めしネジ止めするなどして装着し、この保持基台16に、起立してくる換算スケール6の自由端寄り部分を受け止めて離脱可能に弾性保持する図1、図5に示すようなU字状のスケール保持部17を設けている。弾性保持は、図示例のようなスケール保持部17のU字部開放端の少なくとも一方に設けた係合爪17aと、U字状のスケール保持部17が換算スケール6を受け入れるときに係合爪17aとの係合代分だけ弾性的に押し開かれ、係合爪17aより奥まで受け入れたときに弾性的に復元して係合爪17a内側が換算スケール6と係合する弾性作用とで可能にしている。
【0034】
さらに、計測触子1、3は図3、図4に示すように、第1、第2の遠隔計測竿2、4との連結基部1a、3aから先へ延び、遠隔計測対象域Bの計測端部B1、B2に計測動作域A側から引っ掛けるフック部1b、3bを有し、止め付け具7、8は、第1、第2の遠隔計測竿2、3の先端に固定されて、計測触子1、3の連結基部1a、3aに螺合して、計測触子1、3を第1、第2の遠隔計測竿2、4側に連結させるのに併せ、連結基部1a、3a上での計測元2a、3a側から回転させる遠隔操作により、計測触子1、3の連結基部1a、3aに対して進退しフック部1b、3bを遠隔操作対象域Bの対応する計測端B1、B2に止め付け、また止め付けを解除する回転進退部材7a、8aを有したものとしている。
【0035】
これにより、計測触子1、3は、対応する第1、第2の遠隔計測竿2、4による計測元2a、4a側からの遠隔操作によって、そのフック部1b、3bを、遠隔計測対象域Bの対応する計測端B1、B2に計測動作域A側から図2に示すように簡単かつ確実に引っ掛けられる。このとき計測触子1、3は、フック部1b、3bの計測端B1、B2への引っ掛かりによって対応する第1、第2の遠隔計測竿2、4の軸線まわりに回り止めされる。そこで、計測動作域Aにて対応する第1、第2の遠隔計測竿2、4を連結具9上で計測元2a、4a側から特定の方向に回転させることにより、これに連結した止め付け具7、8の回転進退部材7a、8aを、フック部1b、3bによって回り止めされた計測触子1、3の連結基部1a、3aに対し、この連結基部1a、3aとの螺合関係を利用して、フック部1b、3b側に進出するよう遠隔操作し、回転進退部材7a、8aにより遠隔計測対象域Bの計測端部B1、B2をフック部1b、3bとの引っ掛かり位置に挟み付ける状態で止め付けられる。
【0036】
したがって、第1、第2の遠隔計測竿2、4による計測元2a、4a側からの遠隔操作にて、フック部1b、3bを、遠隔計測対象域Bの対応する計測端B1、B2に簡単かつ確実に引っ掛けるだけで、同時に、回り止め状態とし、後は、計測動作域Aにて第1、第2の遠隔計測竿2、4を計測元2a、4a側で回転させて止め付け具7、8の回転進退部材7a、8aを、回り止め状態のフック部1b、3bの連結基部1a、3aに対しフック部1b、3b側に進出するよう遠隔操作すれば、回転進退部材7a、8aにより遠隔計測対象域Bの計測端部B1、B2をフック部1b、3bにより止め付けた計測状態となるので、簡単な構造によってさらに容易かつ短時間に遠隔計測することができる。
【0037】
なお、連結具9は図1に示すように、一方の遠隔計測竿2に外嵌めしネジ止めなどして装着した装着基部9aと、この装着基部9aに交差点5上で回転できるように連結されたU字状の竿保持部9bとを有し、この竿保持部9bに他方の遠隔計測竿4を受け入れて離脱可能に弾性保持し、遠隔計測竿2、4同士を、交差点5を中心に開閉ができるようにしながら、竿保持部9bから遠隔計測竿4を離脱させることにより、図5に示すようにそれらを個別に取り扱えるようにする。取り扱いの単位負荷が半減する。弾性保持は、図示例のような竿保持部17のU字部開放端の少なくとも一方に設けた係合爪9b1と、U字状の竿保持部9bが遠隔計測竿4を受け入れるときに係合爪9b1との係合代分だけ弾性的に押し開かれ、係合爪9b1より奥まで受け入れたときに弾性的に復元して係合爪9b1内側が遠隔計測竿4に係合する弾性作用とで可能にしている。また、竿保持具9bに遠隔計測竿4を保持させるのに、交差点を境にした長さL1、L2の比が同一となって、縮尺度が簡易に設定されるよう、両遠隔計測竿2、4上の交差点5付近に、互いの長さ方向位置を位置合わせするための、割符的な目印2c、4cを目盛り状などとして設けてある。さらに、各遠隔計測竿2、4は図1に示すように、径の異なる単位竿21、22、23、24などの複数の組み合わせ、41、42、43、44などの複数の組み合わせ、によって、操作性のよい先細り形態と、互いの伸縮可能な嵌め合わせにより単独取り扱い時の取り扱い長さを短くしておける伸縮機能とを満足している。もっとも、これら遠隔計測竿2、4の伸縮機能は、計測の縮尺度を変更するのに適用できるし、その変更設定段数を伸縮の設定段数に一致させておけば、伸縮の設定段数から縮尺度の変更設定段数を一義的に決定して計測できるし、換算スケール6は縮尺度の各変更設定段に対応した変換目盛り6a、6bなどを持てばよい。この場合、1つの換算スケール6の軸線まわりに複数種の目盛りを振り分け表示する方法と、指標14に対向する同一面に複数種の目盛りを併記する方法とがあり、前者では、換算スケール6の枢着基部に対して目盛り側を軸線回りに回転させて、選択した目盛りを指標14に対向させて読み取れるようにすれば、3種以上となる場合に好適であり、後者ではそのような細工は不要となるが、併記された目盛りを読み分ける配慮が要る。もっとも、複数の換算スケール6に振り分けて表示し、必要な換算スケール6を選択して取り付け使用するか、同軸枢着した複数換算スケール6の内から選択したものだけを伏倒させて用いるかして対応することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、遠隔計測技術に実用して、2つの遠隔計測竿を計測元寄りに交差点を持たせたせるだけの構成で、それらの先端の計測触子にて遠隔計測対象の計測2点との直接接触にて、作業者の計測動作域内に収まる縮尺側とした計測元間距離の実測から簡易に計測できる。
【符号の説明】
【0039】
A 計測動作域
A1 地上
B 遠隔計測対象域
B1、B2 計測端
C 作業者
D1、D2 架線
L1、L2 長さ
S1 計測元間距離
S2 計測端間の長さや間隔
1、3 計測触子
2、4 遠隔計測竿
5 交差点
6 換算スケール
6a、6b 目盛り
7、8 止め付け具
9 連結具
13 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者の計測動作域から延ばして、この計測動作域から作業者が直接触れ難い遠隔位置にある遠隔計測対象の一方の計測端に、計測触子を止め付けた第1の遠隔計測竿と、計測動作位置から延ばして、前記計測対象域の他方の計測端に、計測触子を止め付けた第2の遠隔計測竿と、の間で、それら第1、第2の遠隔計測竿の計測元側に寄って設定した交差点を境にした計測触子までの長さと計測元までの長さとの予め知った比と、第1、第2の遠隔計測竿の、計測動作域側で得た計測元間の距離値と、に基づき、前記一方の計測端と、他方の計測端との間の長さや間隔を遠隔計測することを特徴とする遠隔計測対象の遠隔計測方法。
【請求項2】
第1、第2の遠隔計測竿の、計測元間の距離は、前記比に応じた縮尺度で実計測端間距離に換算した目盛りを持つ換算スケールによって、実計測端間距離として計測する請求項1に記載の遠隔計測対象の遠隔計測方法。
【請求項3】
作業者の計測動作域から、この計測動作域からは作業者が直接触れ難い遠隔位置にある計測対象の一方の計測端まで延びてそれに接触させられる計測触子と、この計測触子を、前記接触させた前記計測端に対し遠隔操作にて止め付ける止め付け具と、を備えた第1の遠隔計測竿、計測作業域から前記計測対象の他方の計測端まで延びてそれに接触させられる計測触子と、この計測触子を、接触させた遠隔計測対象に遠隔操作にて止め付ける止め付け具と、を備えた第2の遠隔計測竿、これら第1、第2の遠隔計測竿を、それらの計測元側に寄って設定した交差点を中心に開閉できるように連結する連結具、を備えたことを特徴とする遠隔計測具。
【請求項4】
計測触子は、第1、第2の遠隔計測竿との連結基部から先へ延び、遠隔計測対象の計測端部に計測位置側から引っ掛けるフック部を有し、止め付け具は、第1、第2の遠隔計測竿の先端に固定されて、計測触子の基部に螺合し、第1、第2の連結基部上での計測元側から回転させる遠隔操作により、計測触子の基部上で、フック部に対し進退されて、フック部を遠隔操作対象の対応する計測端に止め付け、また止め付けを解除する回転進退部材を有した請求項3に記載の遠隔計測具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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