説明

適応性免疫応答を向上させるためのアラビノガラクタン

本発明は、外来抗原への曝露段階の前、その段階の間、およびその段階の後に組成物を投与することにより外来抗原に対する被検体の適応性免疫応答を向上させるためのアラビノガラクタンを含有する組成物を開示する。更に、本発明は、アラビノガラクタンを含有する組成物およびワクチンを含むワクチン接種キットに関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明の主題は、外来抗原への曝露段階の前、その段階の間、およびその段階の後に組成物を投与することにより被検体の適応性免疫応答を向上させるためのアラビノガラクタンを含有する組成物である。更に、本発明は、アラビノガラクタンを含有する組成物およびワクチンを含むワクチン接種キットに関する。
【発明の背景】
【0002】
免疫系は、感染性作用物質(agent)および癌細胞に対して宿主を保護する幾つかのサブシステムの高度に複雑な結集である。免疫系は、監視を行い、適切に病原体を攻撃しなければならない;また、免疫系は、宿主に属する細胞を認識し免除することが可能でなければならない。免疫調節は、抗原性刺激に応答して攻撃を開始するように免疫系の感受性を選択的に変更するホルモンおよび他の分子の能力である。これは、宿主細胞へのダメージにつながり得る免疫系の過剰刺激(または過感受性)よりも優先する。免疫系は、二つの主要部、すなわち生得的アーム(arm)および適応性アームから構成される。
【0003】
前記適応性アームは、種々のタイプの免疫細胞、たとえば樹状細胞、T−細胞およびB−細胞など、並びに広範囲の免疫調節物質、たとえばサイトカインなどの複雑な相互作用に依存しており、抗体の産生をうまく開始する。しかし、免疫系が初めて外来抗原に遭遇した場合、その反応は、しばしば非常に遅い/非常に弱いため、前記抗原の最初の蔓延を止めることができない。よって、外来抗原の最初の遭遇に先立って、免疫系を「準備刺激された(primed)」または増強された待機状態に維持する必要がある。更に、免疫系ができるだけ早く外来抗原を体から除去するために、進行中の免疫応答を向上させる必要がある。
【0004】
免疫系が、潜在的に有害な侵入物をかわすことを助けるために、「ワクチン接種」と呼ばれる免疫応答の人工誘導法が、18世紀に初めて体系的に採用された。ワクチン接種は、疾患に対する免疫をつくるための抗原性材料(ワクチン)の投与である。ワクチンは、病原体による感染の効果を予防または改善することができる。ワクチン接種は、最も効果的で費用効果の高い感染症予防法であると一般に考えられる。投与される材料は、生であるが弱毒化された形態の病原体(細菌またはウイルス)、これら病原体の死滅形態もしくは不活化形態、またはタンパク質などの精製材料の何れかとすることができる。
【0005】
しかし、抗原性材料のみを用いたワクチン接種は、完全または部分的な免疫を伝えるのに十分な強さの免疫応答を誘発することがしばしばできない。よって、免疫応答を増強するためにアジュバントが使用される。大まかに言えば、アジュバントは、二つのクラスに分類される:無機アジュバントおよび有機アジュバント。
【0006】
無機アジュバントの典型例は、アルミニウム塩、たとえばリン酸アルミニウムおよび水酸化アルミニウムである。これらは、低い毒性または無毒性のために、ヒトのワクチン接種において最も広く使用されるアジュバントである。
【0007】
有機アジュバントは、細菌細胞壁の構成成分、たとえばリポ多糖類(LPS)など、およびエンドサイトーシスにより取り込まれる核酸、たとえば二本鎖RNA(dsRNA)、一本鎖DNA(ssDNA)、および非メチル化CpGジヌクレオチド含有DNAなどから一般的に選択される。この理由は、免疫系が、これら特異的な抗原の一部分を認識し反応するように進化したためである。
【0008】
よって、無毒性であると共に免疫応答の増強を助け、かつ被検体に重篤な副作用を引き起こさない追加のアジュバントに対する需要がある。
【0009】
カラマツのアラビノガラクタンは、約6:1の比のガラクトース単位とアラビノース単位から構成される高度に枝分かれしたポリサッカリドである。これは、中性風味のドライで薄茶色の微粉末であり、カラマツの木から抽出された場合、穏やかなマツのような香気がある。これは、水または分泌液に速やかに溶解する。
【0010】
成人による肺炎球菌ワクチンに対する応答の改良に関する研究は、ワクチン再接種、ワクチンへのコンジュゲートの添加、および代わりの抗原性物質を含む[1]。また、ワクチンに対する応答を増大させるために、亜鉛、ビタミンAおよびL-アルギニンなどのサプリメントの使用について実験が行われた[2,3]。幾つかの植物は、免疫系を調節する物質を含有することが知られている。一例として、ウンカリア・トメントサ(Uncaria tomentosa)植物の抽出物が、リンパ球/好中球の比を高め、ワクチンに対する抗体応答の持続性を増大させて、男性ボランティアにおいて肺炎球菌ワクチンに対する応答を向上させることが報告された[4]。
【0011】
幾つかの免疫向上性薬草、たとえばエキナセア・プルプレア(Echinacea purpurea)、バプティシア・ティンクトリア(Baptisia tinctoria)、ツヤ・オキシデンタリス(Thuja occidentalis)、アンジェリカ・アクチローバ(Angelica acutiloba)およびクルクマ・ロンガ(Curucuma longa)など、並びに薬用キノコのガノデルマ・ルシダム(Ganoderma lucidum)は、アラビノガラクタンとして公知の化合物を含有する[5]。カラマツのアラビノガラクタンは、インビトロおよびインビボにおいて免疫調節活性が実証されている[6,7]。しかし、前記免疫調節効果は、これまで免疫系の生得的アームに限られていた。技術水準のいずれも、カラマツのアラビノガラクタンが、免疫系の適応性アームを調節できることを示していない。
【発明の開示】
【0012】
上記で提示された技術的課題は、特許請求の範囲に規定されるとおり、被検体において適応性免疫応答を向上させるためのアラビノガラクタンを含有する組成物を使用することにより驚くべきことに解決される。
【0013】
具体的には、本発明は、外来抗原に対する適応性免疫応答を向上させるためのアラビノガラクタンを含有する組成物であって、前記組成物が、外来抗原への曝露段階の前、その段階の間、およびその段階の後に被検体に投与される組成物を開示する。
【0014】
本発明に従って「被検体」は、脊椎動物、好ましくは哺乳類および鳥類、より好ましくはブタ、家禽、肉牛、イヌ、ネコ、ヤギおよびウマ、最も好ましくはヒトである。
【0015】
本発明に従って「抗原」は、免疫系の適応性アームにより認識され得る任意の物質に関する。好ましくは、抗原は、外来性抗原または内因性抗原の何れでもよいが、自己抗原は除外される。好ましくは、本発明に従って抗原は、病原体、好ましくはウイルスまたは細菌に由来する。
【0016】
本発明に従って「ウイルス」は、ICTV分類により規定される5つの目、すなわちカウドウイルス目(Caudovirales)、ヘルペスウイルス目(Herpesvirales)、モノネガウイルス目(Mononegavirales)、ニドウイルス目(Nidovirales)、およびピコルナウイルス目(Picornavirales)のうちの一つのメンバーであるか、またはBaltimore分類の7つの群、すなわちdsDNAウイルス、ssDNAウイルス、dsRNAウイルス、(+)ssRNAウイルス、(-)ssRNAウイルス、ssRNA-RTウイルス、dsRNA-RTウイルスのうちの一つのメンバーである。好ましくは、本発明に従ってウイルスは、オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)のメンバー、より好ましくはインフルエンザ属A-Cのメンバー、更に好ましくはインフルエンザA、インフルエンザBまたはインフルエンザCウイルスの種のメンバー、最も好ましくはH1N1、H1N2、H2N2、H3N1、H3N2、H3N8、H5N1、H5N2、H5N3、H5N8、H5N9、H7N1、H7N2、H7N3、H7N4、H7N7、H9N2またはH10N7の血清型のメンバーである。
【0017】
本発明に従って「細菌」は、一般に、細菌ドメイン(domain Bacteriae)の原核生物メンバーをいう。より好ましくは、本発明に従って細菌は、現在知られている門、すなわちアクチノバクテリア門(Actinobacteria)、アクイフェックス門(Aquificae)、バクテロイデス門/クロロビウム門(Bacteriodetes/Chlorobi)、クラミジア門/ウェルコミクロビウム門(Chlamydiae/Verrucomicrobia)、クロロフレクサス門(Chloroflexi)、クリシオゲネス門(Chrysiogenetes)、シアノバクテリア門(Cyanobacteria)、デフェリバクター門(Deferribacteres)、ディノコッカス−サーマス門(Deinococcus-Thermus)、ディクチオグロムス門(Dictyoglomi)、フィブロバクター門/アシドバクテリア門(Fibrobacteres/Acidobacteria)、フィルミクテス門(Firmicutes)、フソバクテリア門(Fusobacteria)、ゲマティモナス門(Gemmatimonadetes)、ニトロスピラ門(Nitrospirae)、プランクトミケス門(Planctomycetes)、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)、スピロヘータ門(Spirochaetes)、シネルギステス門(Synergistetes)、テネリクテス門(Tenericutes)、サーモデスルフォバクテリウム門(Thermodesuflobacteria)およびテルモトガ門(Thermotogae)の一つに属する。
【0018】
更に好ましくは、本発明に従って細菌は、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、クラミジア属(Chlamydia)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、クロストリジウム属(Clostridium)、サルモネラ属(Salmonella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、レジオネラ属(Legionella)、カンピロバクター属(Campylobacter)、バチルス属(Bacillus)、エシェリヒア属(Escherichia)、エンテロコッカス属(Enterococcus)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)またはシュードモナス属(Pseudomonas)に属する。
【0019】
最も好ましくは、本発明に従って細菌は、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)菌株である。
【0020】
本発明に従って他の抗原は、毒素、プリオン、ウイロイドおよびサテライトを含む。
【0021】
本発明に従って「アラビノガラクタン」は、およそ100:1〜1:1の比、好ましくは6:1の比のガラクトース単位とアラビノース単位から構成される任意の化合物に関するものであると理解すべきである。具体的には、本発明に従ってアラビノガラクタンは、好ましくは、(1→3)連結-β-D-ガラクトピラノシル単位の骨格を有し、その各々がC-6位に置換基をもつことにより特徴づけられる。これら側鎖のほとんどは、(1→6)-β-D-連結を含有するガラクトビオシル単位、並びにα-L-アラビノフラノシル単位である。しかし、本発明の範囲は、アラビノガラクタン誘導体、たとえばアラビノガラクタンが種々の量のタンパク質と共有結合している誘導体も包含する(Classen et al.,“Characterization of an Arabinogalactan-protein isolated from pressed juice of Echinacea purpurea by precipitation with the β-glucosyl Yariv reagent”, Carbohydrate Research, 327 (2000), 497-504に記載されるアラビノガラクタン-タンパク質(AGPs))。他の誘導体は、アラビノガラクタンの4つ組(quaternized)形態または脂質付加(lipidated)形態を含む。
【0022】
本発明に従えば、アラビノガラクタンは、植物、すなわち双子葉植物および単子葉植物に由来することが好ましく、双子葉植物が好ましい。本発明に従ってアラビノガラクタンは、マツ植物門、より好ましくはマツ科に由来することが更に好ましい。本発明に従ってアラビノガラクタンは、カラマツの木(Larix spp.)、とりわけLarix laricinaに由来することが最も好ましい。
【0023】
本発明に従って「組成物」は、上記で規定されるアラビノガラクタンを、0.5 mg〜30 gの量、好ましくは0.5 g〜15 gの量、最も好ましくは1.0〜4.5 gの量で含む任意の組成物に関する。
【0024】
好ましくは、アラビノガラクタンを含有する組成物は、外来抗原への曝露段階の70日前、より好ましくは50日前、最も好ましくは30日前に投与される。
【0025】
アラビノガラクタンを含有する組成物は、外来抗原への曝露段階の92日後まで、より好ましくは72日後まで、最も好ましくは42日後まで投与されることが好ましい。
【0026】
アラビノガラクタンを含有する組成物は、液体または固体の形態で投与され得る。好ましくは、アラビノガラクタンは、機能性飲料、機能性食品、たとえばバー、朝食シリアルなどの形態で、またはダイエットサプリメント、たとえばカプセル剤、錠剤、ドライ粉末ブレンドまたはプレミックスとして投与される。
【0027】
好ましくは、アラビノガラクタンを含有する組成物は、1日ベースで被検体に投与される。しかし、アラビノガラクタンを含有する組成物は、より長い間隔またはより短い間隔で投与されることも好ましい。
【0028】
一般に、アラビノガラクタンを含有する組成物は、任意のワクチンと組み合わせて使用され得る。しかし、本発明に従ってワクチンは、細菌、ウイルス、毒素、プリオン、ウイロイドおよびサテライトからなる群より選択される作用物質に由来するか、またはその一部である抗原に対するものであることが好ましい。前記作用物質は、ワクチン接種において全体として、生の形態または不活化形態の何れかで使用され得る。
【0029】
ワクチンは、肺炎球菌ワクチンであることが好ましい。ワクチンは、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、スタフィロコッカス属(Staphylococcus)、クラミジア属(Chlamydia)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、クロストリジウム属(Clostridium)、サルモネラ属(Salmonella)、ヘモフィルス属(Haemophilus)、レジオネラ属(Legionella)、カンピロバクター属(Campylobacter)またはシュードモナス属(Pseudomonas)に由来する細菌、とりわけストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)菌株に対するものであることが更に好ましい。
【0030】
ワクチン接種の手順は、技術水準において公知の任意の手法を用いて行うことができる。具体的には、前記ワクチン接種の手順は、皮下、筋内、経口、鼻内、吸入またはパッチにより行われ得る。
【0031】
ワクチン接種の手順は、免疫応答を向上させるために繰返し行われることも好ましい。
【0032】
本発明の別の側面は、ワクチン、およびアラビノガラクタンを含有する組成物を含むキットに関する。前記キットは、ワクチン接種の際の適応性免疫応答を向上させるために使用され得る。
【0033】
本発明は、以下の非限定的な例において更に説明される。
【実施例】
【0034】
例1
研究製品
ResistaidTM製品は、カラマツの木 (Larix spp.、主にLarix laricina) から抽出されたアラビノガラクタンを含有する。アラビノガラクタンは、約6:1の比のガラクトース単位とアラビノース単位から構成される高度に枝分かれしたポリサッカリドである。ResistaidTMは、中性風味のドライで薄茶色の微粉末であり、穏やかなマツのような香気がある。これは、水または分泌液に速やかに溶解する。ResistaidTMは、水抽出の特許プロセス(US 5756098; EP 86608)によって製造される。ResistaidTM製品で使用されるカラマツのアラビノガラクタンは、FDAによりGRAS認証(Affirmed GRAS)であった(GRN000084)。
【0035】
プラセボは、マルトデキストリン (Maltin M100) とした。試験製品およびプラセボは、被検体が選択した飲料に粉末を混合することにより、最大72日間にわたって投与した。被検体は、1日に1回、午前中に朝食とともに、投薬量(4.5 g)を摂取するようにアドバイスされた。研究薬の最初の摂取を1日目とした。
【0036】
被検体
18才から65才の間の被検体を、通常の手法(被検体データベースおよびコミュニティー広告)で研究のために募集した。被検体は、スクリーニング訪問のスケジュールをたてる前に電話でスクリーニングした。
【0037】
被検体が、18〜65才の年齢であり、スクリーニング時にボディーマス指数(Body Mass Index)(BMI) が>18 kg/m2かつ<30 kg/m2であり、全ての研究訪問および訪問手順に同意し、バースコントロールの承認形態を使用することに同意し、かつ研究の間に運動または食事プログラムを開始/変更しないことに同意した場合、被検体に含めた。被検体が、肺炎球菌ワクチンを以前に接種したか、テスト製品に対するアレルギーをもっているか、重篤な全身性、炎症性または慢性疾患を有しているか、抗生物質もしくは抗ウイルス薬を必要とする活性な感染もしくは先月の感染を有しているか、ここ5年間に免疫抑制剤を使用したか、アルコール乱用もしくは薬物乱用であることが知られているか、妊娠中もしくは授乳中であるか、あるいは研究者の見解において被検体の治験参加を妨害する医学的状況を有している場合、被検体から除いた。
【0038】
研究計画
研究は、72日のアクティブ治験期間の、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照、並行グループの治験とした。第1の目的は、肺炎球菌性肺炎ワクチンによる抗原攻撃に直面した際の免疫機能の選択マーカーに対するResistaidTMの免疫調節効果を評価することであった。第1のエンドポイントは、7つの異なる肺炎球菌IgG抗体を含んでいた。第2の目的は、ResistaidTM製品が、直接的な抗原刺激が存在しない免疫系の他のアームを刺激するかどうかを決定することであった。第2のエンドポイントは、唾液IgA、白血球数、補体(C3およびC4)、および炎症性サイトカインレベルを含んでいた。研究は、Northridge, CAに位置するMedicus Research臨床研究サイトにおいて行った。IRB承認は、研究活動の開始前に取得した(Copernicus Group IRB, Cary, NC)。
【0039】
この研究のための包含/排除基準を満たす被検体は、ランダム化ブロックデザインを用いて、グループに割り当てた。二重盲検は、両方の治験製品(治験研究製品およびプラセボ)の同一のサシェ(sachet)、外側パッケージ、標識、色、およびコンシステンシー(consistency)により保証された。データ分析チームを含む全ての研究チームは、分析が完了するまで盲検のままであり;被検体は、治験を通して盲検のままであった。
【0040】
研究中に被検体は、72日間にわたって全部で5回の訪問(V1-V5)のために調査クリニックを訪れた。被検体は、スクリーニング訪問の際(V1−0日目)に、割り当てられた研究製品の最初の用量を摂取し、全研究にわたってそれを摂取し続けた。被検体は、製品またはプラセボを摂取し始めてから30日後(V2−30日目)に行われたベースライン訪問の際に、23価の肺炎球菌ワクチンを接種した。被検体は、ワクチン投与部位における反応を観察するために、ワクチン接種の翌日(V3−31日目)に安全性モニタリングのために訪問した。その後、被検体は、ワクチン接種から21日後(V4−51日目)に再度訪問し、ワクチン投与から42日後(V5−72日目)に最後に訪問した。研究訪問の際に、血液、尿および唾液を採取し、健康状態の変化について被検体に質問をした。更に、被検体は、インタビュー、日誌、および返却された研究製品ボトルの評価により、コンプライアンスについて評価された。
【0041】
最も可能性が高い免疫原性肺炎球菌抗体(Ab)は、UCLA Vaccine Center会議において、商業的に入手可能な23価の肺炎球菌ワクチンを用いたワクチン接種に最も応答しやすい抗体と決定された。これらの抗体は、4、6B、9V、14、18C、19F、および23Fを含んでいた。唾液IgAは、適応性免疫系に対する非特異的効果についてモニターするために測定した。
【0042】
免疫機能の他のマーカーは、白血球数(トータルおよびサブタイプ)、炎症性サイトカイン、および補体(C3およびC4)を含む免疫系の生得的アームを表すように選択された。安全性モニタリングは、以下のものを含んでいた:体温、血圧、心拍数、身体検査、尿検査、全血球計算 (CBC)、並びに腎臓および肝臓の機能テストを含む総合代謝パネル (CMP)。
【0043】
分析
Excel 2003 (Microsoft Corp, Redmond WA) は、データ入力、確認、再構成、経時的な変数の変化の計算、結果の再編成および再配列、並びにグラフ作成のために使用した。統計分析は、SPSS Base System ver. 17 (SPSS Inc., Chicago IL.) を用いて行った。
【0044】
データは、被検体内の平均比較については一対サンプルt−検定を用いて、グループ間の比較については独立サンプルt−検定を用いて、(プラセボ対アクティブグループを個別に)分析した。グループ内およびグループ間の比較についての差スコアは、(プラセボ対アクティブグループを個別に)適切なt−検定を用いて分析した。分析は、盲検の規約が破られる前に完了させた。
【0045】
結果
被検体
65人の被検体は、調査クリニックにおいて本人が直接スクリーニングされ、53人が、スクリーニング訪問(V1)の際にランダム化に適任とされた。53人のうち、8人が、V2のために戻らなかったため、トータル45人の被検体を、治療企図解析(intent-to-treat analysis)に含めた。被検体のベースライン特性を表1に示す。ベースラインにおいてグループ間に有意な差はなく、各グループとも研究の間に体重の有意な変化はなかった。
【表1】

【0046】
肺炎球菌IGG抗体
肺炎球菌IgG抗体サブタイプ4、6B、9V、14、18C、19F、および23Fを、0日目(V1)、51日目(V4)、および72日目(V5)に測定した。ベースライン(0日目)においてグループ間に有意な差はなかった。
【0047】
肺炎球菌IgGレベルは、ワクチンに応答して予想通りベースラインから増加した。ResistaidTMの補充により、肺炎球菌IgG抗体サブタイプ18Cおよび23Fは、51日目および72日目に、ベースラインから顕著に大きく増加した(表2)。グループ間の平均値も、Resistaidグループが、これら2つのサブタイプについて、51日目および72日目に有意に大きかった(表3)。
【0048】
ベースラインからの変化スコアおよび平均値は、プラセボよりResistaidグループが、Abサブタイプ4、6B、9V、および19Fにおいて、ほとんどの時点について大きかったが、これらの差は、統計的有意性に届かなかった。
【表2】

【表3】

【0049】
唾液IGA
各グループにおいて、0日目から51日目または0日目から72日目に、唾液IgAの増加に有意な変化はなかった。グループ間の平均値にも有意な差はなかった。
【0050】
白血球
0、30、31、51または72日目にアラビノガラクタングループとプラセボグループとを比較したところ、白血球数に有意な差はみられなかった。ベースライン0日目から72日目までの変化は、プラセボグループよりアラビノガラクタングループで有意に大きかったが(p=0.045)、変化スコアの大きさは、非常に小さく、臨床的に有意でなかった。
【0051】
あらゆる時点でグループ間の平均値を比較すると、リンパ球、好中球、単球、または好塩基球の数に有意な差はなかった。各時点においてベースラインからの変化を比較すると、リンパ球、好中球、または単球についてグループ間の差はなかった。好塩基球についてベースラインからの変化を比較すると、0日目から72日目までは、プラセボグループの方を選んで小さいが有意な差がみられたが(p=0.042)、0日目から72日目までの変化を除けば差はなかった。
【0052】
好酸球数は、アラビノガラクタングループの方を選んで、30日目(p=0.006)および51日目(p=0.014)にグループ間に差があった。また、ベースラインから31日目までの変化およびベースラインから51日目までの変化は、アラビノガラクタングループの方を選んで、有意であった(それぞれp=0.035およびp=0.006)。
【0053】
補体
アラビノガラクタングループとプラセボグループとの間の補体レベルについて平均値およびベースラインからの変化を比較すると、有意な差はなかった。
【0054】
サイトカイン
炎症性サイトカインレベルの分析は、サンドイッチイムノアッセイ(Affymetrix, San Diego, CA)を用いて行った。グループ間のサイトカインレベルを比較すると、上皮性好中球-活性化ペプチド(ENA)-78、エオタキシン、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM-CSF)、インターフェロン-ガンマ(IFNg)、インターロイキン(IL)-10、IL-12P40、IL-1RA、IL-2、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、単球走化性タンパク質(MCP)-1、MCP-3、血小板由来増殖因子(PDGF)-BB、または腫瘍壊死因子(TNF)-アルファについて、平均値に有意な差はみられなかった。グループ間のサイトカインのベースライン値からの変化を比較すると、0日目から31日目までのIL-6の変化のみが、アラビノガラクタングループの方を選んで有意な差を示した(p=0.046)。
【0055】
安全性
重篤な有害作用(adverse event)は、この研究の間に報告されなかった。9人の軽度ないし中程度の有害作用がみられた:アラビノガラクタングループで2人およびプラセボグループで7人。有害作用は、研究製品に関係がないと決定され、予め存在する医学的状況の悪化であった。全てのAEは、調査クリニックにおいて医療スタッフにより追跡された。
【文献】
【0056】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
外来抗原に対する適応性免疫応答を向上させるためのアラビノガラクタンを含有する組成物であって、前記組成物が、外来抗原への曝露段階の前、その段階の間、およびその段階の後に被検体に投与される組成物。
【請求項2】
前記投与が、外来抗原への曝露段階の70日前、より好ましくは50日前、最も好ましくは30日前に開始される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記投与が、外来抗原への曝露段階の92日後まで、より好ましくは72日後まで、最も好ましくは42日後まで行われる、請求項1および/または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、液体または固体の形態で、好ましくは機能性飲料、機能性食品、たとえばバー、朝食シリアルなどの形態で、またはダイエットサプリメント、たとえばカプセル剤、錠剤、ドライ粉末ブレンドまたはプレミックスとして投与される、請求項1〜3の何れかに記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、1日ベースで投与される、請求項1〜4の何れかに記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、個々の投与回数あたり0.5 mg〜30 gの量、より好ましくは0.5 g〜15 gの量、最も好ましくは1.0 g〜4.5 gの量で投与される、請求項1〜5の何れかに記載の組成物。
【請求項7】
外来抗原への曝露が、ワクチン接種により行われる、請求項1〜6の何れかに記載の組成物。
【請求項8】
ワクチン接種段階で使用されるワクチンが、細菌、ウイルス、毒素、プリオン、ウイロイドおよびサテライトからなる群より選択される作用物質に由来するか、またはその一部である抗原に対するものである、請求項1〜7の何れかに記載の組成物。
【請求項9】
前記作用物質が、ワクチン接種において全体として使用される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記作用物質が、生の形態または不活化形態で使用される、請求項9および/または9に記載の組成物。
【請求項11】
前記ワクチンが、肺炎球菌ワクチンである、請求項1〜10の何れかに記載の組成物。
【請求項12】
前記肺炎球菌ワクチンが、ストレプトコッカス属(Streptococcus)に由来する細菌、好ましくはストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)菌株に対するものである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ワクチン接種が、皮下、筋内、経口、鼻内、吸入またはパッチにより行われる、請求項1〜12の何れかに記載の組成物。
【請求項14】
前記ワクチン接種が、繰返し、好ましくは6ヶ月ごとに1回、より好ましくは1年に1回、最も好ましくは10年ごとに1回行われる、請求項1〜13の何れかに記載の組成物。
【請求項15】
アラビノガラクタンを含有する組成物およびワクチンを含むキット。
【請求項16】
前記ワクチンが、肺炎球菌ワクチン、好ましくはストレプトコッカス属(Streptococcus)に由来する細菌に対するワクチン、より好ましくはストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)菌株に対するワクチンである、請求項15に記載のキット。

【公表番号】特表2013−506625(P2013−506625A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−531280(P2012−531280)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/005940
【国際公開番号】WO2011/038898
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(391003864)ロンザ リミテッド (36)
【氏名又は名称原語表記】LONZA LIMITED
【Fターム(参考)】