遺伝子発現の制御
【課題】非ヒトトランスジェニック生物の細胞等における遺伝子発現を変化させる。
【解決手段】一般にトランスジェニック生物、特に非ヒトトランスジェニック動物又は植物の細胞、組織又は器官における遺伝子発現を変化させる方法及び内因性遺伝子発現を変化させるための合成遺伝子。より具体的には、組換えDNA技術を利用して、生物の細胞、組織、器官又は生物全体における標的遺伝子の発現を転写後に修飾又は調節し、それにより新規な表現型を作成する。生物に導入されるとその生物の内因性遺伝子又は標的遺伝子の発現を抑制、遅延又はその他の方法で減少させることができる新規な合成遺伝子及び合成遺伝子構築物。
【解決手段】一般にトランスジェニック生物、特に非ヒトトランスジェニック動物又は植物の細胞、組織又は器官における遺伝子発現を変化させる方法及び内因性遺伝子発現を変化させるための合成遺伝子。より具体的には、組換えDNA技術を利用して、生物の細胞、組織、器官又は生物全体における標的遺伝子の発現を転写後に修飾又は調節し、それにより新規な表現型を作成する。生物に導入されるとその生物の内因性遺伝子又は標的遺伝子の発現を抑制、遅延又はその他の方法で減少させることができる新規な合成遺伝子及び合成遺伝子構築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、トランスジェニック生物、特にトランスジェニック動物又はトランスジェニック植物の細胞、組織又は器官における遺伝子発現を改変する方法並びに内因性遺伝子の発現を改変するための合成遺伝子に関する。より具体的には、本発明は、細胞、組織、器官又は全生物体における標的遺伝子の発現を転写後に改変又は調節するために、組換えDNA技術を利用し、それにより新規な表現型を創り出す。生物に導入された場合、該生物における内因性遺伝子又は標的遺伝子の発現を抑制し、遅延させ又はその他の方法で低減させることのできる新規な合成遺伝子並びに遺伝子構築物も提供される。
【背景技術】
【0002】
真核生物の代謝経路を制御することは、該生物において新規な特性を作りだすため又は該生物の特定の細胞、組織若しくは器官に新規な特性を導入するために望ましい。組換えDNA技術は真核性遺伝子発現を調節する機構の理解に重要な進展をもたらしてきたが、新規な特性を作りだすための遺伝子発現の実際の操作においてはほとんど進展はなかった。さらに、ヒトの介入により真核性遺伝子発現レベルを調節しうる手段はごく限られている。
遺伝子発現を抑制し、遅延させ又はその他の方法で低減させるための一つのアプローチは、核遺伝子の相補鎖から正常に転写され且つポリペプチドに翻訳され得るものへと転写されるmRNA分子を利用する。このアプローチに関与する正確な機構は確立されていないが、相補的なヌクレオチド配列間における塩基対形成により二本鎖のmRNAが生じ、低い効率で翻訳され及び/又は翻訳される前に細胞内リボヌクレアーゼ酵素により分解される複合体を産生すると仮定されてきた。
【0003】
または、細胞、組織又は器官における内因性遺伝子の一以上のコピー又は実質的に同様な遺伝子の一以上のコピーが該細胞に導入される場合、該遺伝子の発現は抑制されうる。この現象に関与する機構は確立されていないが、機構的に異種の工程が関与するらしい。例えば、このアプローチには、クロマチンの体細胞遺伝性の抑制状態が形成される、転写抑制が関与する、又はそうではなくて、通常転写の開始は起きるが共抑制された遺伝子のRNA産物がその後除外される、転写後サイレンシング(post-transcriptional silencing) が関与すると仮定されてきた。
特定遺伝子の発現の標的化におけるこれらの両アプローチの効率は非常に低く、通常、極めて多様な結果が得られる。遺伝子発現を標的化するために、遺伝子の異なる領域、例えば、5'−非翻訳領域、3'−非翻訳領域、コード領域又はイントロン配列を用いることにより、一貫性のない結果が得られる。従って、現在のところ、既存の技術を用いて遺伝子発現を抑制し、遅延させ又はその他の方法で低減させるための最も効率の良い手段を与える遺伝的配列の性質に関しては意見の一致は存在しない。さらに、世代間でこのような高い程度の差異が存在するため、遺伝子発現が著しく改変された生物の子孫における特定遺伝子の抑制レベルを予測することはできない。
【0004】
最近、ドレルとヘニコッフ(1994年)は、ショウジョウバエのゲノムにおける縦列反復した遺伝子コピーのサイレンシング並びにポリコーム(Polycomb) 遺伝子(即ち、Pc-G系;パル−バハドラら、1997年)による分散されたショウジョウバエのAdh遺伝子の転写抑制を証明した。しかし、特定遺伝子の発現を標的化できる配列がゲノムの分散された位置に導入され、このアプローチと遺伝子標的化技術との組み合わせを欠いている場合は、縦列反復した遺伝子コピーのこのようなサイレンシングは、動物細胞で組換え手段により遺伝子発現を操作する試みにおいてほとんど有用性がない。理論的には可能であるが、このような組み合わせは、単独で用いられる遺伝子標的化アプローチの低い効率に基づけば低効率でしか作用しないと予想され、さらに複雑なベクター系を必要とするであろう。さらに、ショウジョウバエのPc-G系のような転写抑制の利用は、任意の特定標的遺伝子の発現を調節できる調節機構についての何らかの知識を要するようであり、結果として、動物細胞において遺伝子発現を抑制し、遅延させ又は低減させるための一般的技術として実際に実行するのは困難であろう。
これらの現象に関与する機構についての理解の乏しさは、遺伝子発現のレベルを調節するための技術、特に組換えDNA技術を用いて特定遺伝子の発現を遅延させ、抑制し又はその他の方法で低減させるための技術の改良がほとんどなかったことを意味する。さらに、これらのアプローチが予測不可能である結果として、現在、真核生物又は原核生物における特定遺伝子の発現レベルを調節するための商業的に実行可能な手段はない。
従って、動物細胞へ新規な表現型特性を導入するために、遺伝子発現を調節する、特に動物細胞における遺伝子発現を抑制し、遅延させ又はその他の方法で低減させる改良された方法に対する必要性が存在する。特に、これらの方法は、同時に遺伝子標的化アプローチを行う必要なく、表現型の改変のための一般的手段を提供すべきである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】アン(An)ら、(1985)、EMBO J 4:277-284。
【非特許文献2】アームストロング(Armstrong)ら、Plant Cell Reports 9:335-339、1990。
【非特許文献3】アウスベル(Ausubel),エフ.エム.ら(1987)分子生物学の最新プロトコル、ヴィレー・インターサイエンス(ISBN 047140338)。
【非特許文献4】チャルフィー(Chalfie),エム.ら(1994)Science 263:802-805。
【非特許文献5】クリステンセン(Christensen),エイ.エイチ.とクエイル (Quail),ピー.エイチ.(1996)Transgenic Research 5:213-218。
【非特許文献6】クリストウ(Christou),ピー.ら、Plant Physiol 87:671-674、1988。
【非特許文献7】コルマック(Cormack),ビー.ら(1996)Gene 173:33-38。
【非特許文献8】クロスウェイ(Crossway)ら、Mol.Gen.Genet.202:179-185、1986。
【非特許文献9】ドレル(Dorer),ディー.アール.とヘニコッフ(Henikoff),エス.(1994)Cell 7:993-1002。
【非特許文献10】フロム(Fromm)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)82:5824-5828、1985。
【非特許文献11】グリーブ(Gleave),エイ.ピー.(1992)Plant Molecular Biology 20:1203-1207。
【非特許文献12】ハナハン(Hanahan),ディー.(1983)J.Mol.Biol.166:557-560。
【非特許文献13】ヘレラ−エステラ(Herrera-Estella)ら、Nature303:209-213、1983a。
【非特許文献14】ヘレラ−エステラら、EMBO J.2:987-995、1983b。
【非特許文献15】ヘレラ−エステラら、植物遺伝子工学、ケンブリッジ・ユニバーシティー・プレス、ニューヨーク、63〜93頁、1985。
【非特許文献16】イノウエ(Inouye),エス.とツジ(Tsuji),エフ.アイ.(1994)FEBS Letts.341:277-280。
【非特許文献17】ジャクソン(Jackson),アイ.ジェイ.(1995)Ann.Rev.Gent.28:189-217。
【非特許文献18】クレンス(Krens),エフ.エイ.ら、Nature 296:72-74、1982。
【非特許文献19】ウォン(Kwon),ビー.エス.ら(1988)Biochem.Biophys.Res.Comm.153:1301-1309。
【非特許文献20】パルーバハドラ(Pal-Bhadra),エム.ら(1997)Cell90:479-490。
【非特許文献21】パスズコヴスキー(Paszkowski)ら、EMBO J.3:2717-2722、1984。
【非特許文献22】プラシェル(Prasher),ディー.シー.ら(1992)Gene111:229-233。
【非特許文献23】サンフォード(Sanford),ジェイ.シー.ら、Particulate Science and Technology 5:27-37、1987。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、一つ以上の望ましい特性を示す細胞を作成でき、しかもプロモーターに機能的に連結された核酸分子を含む形質転換細胞からそれを選択し得るという本発明者らによる驚くべき発見であって、該核酸分子の転写産物がその発現を調節しようと意図する内因性又は非内因性標的遺伝子の転写産物のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列を含むものである発見に一部基づいている。この形質転換された細胞は、新規な特性、具体的にはウイルス耐性、及び内因性遺伝子の改変された発現を示すことのできる全組織、全器官又は全生物へと再生される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明の一つの側面は、動物の細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を調節する方法であって、標的遺伝子のmRNA産物の翻訳が改変されるのに充分な時間及び条件の下で、該mRNA産物の転写が必ずしも抑制又は低減されるとは限らないことを条件として、該標的遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列又はその一領域又はそれに相補的な配列の多重コピーを含む一つ以上の分散した核酸分子又は外来性核酸分子を該細胞、組織又は器官に導入する工程を少なくとも含む方法を提供する。
特に好ましい態様において、分散した核酸分子又は外来性核酸分子は、標的遺伝子のmRNA産物のヌクレオチド配列と実質的に同一なmRNA分子の多重コピーをコードするヌクレオチド配列を含む。標的分子の該複数コピーは縦列直列反復配列であることがより好ましい。
より具体的に好ましい態様において、分散した核酸分子又は外来性核酸分子は少なくとも転写してmRNAを産生することが可能であるような発現可能な形態で存在する。
【0008】
該標的遺伝子は、動物細胞にとって内因性である遺伝子、又はとりわけウイルス若しくは外来性の遺伝子配列などの外来性遺伝子でありうる。好ましくは、標的遺伝子はウイルスの遺伝子配列である。
本発明は真核性遺伝子発現の調節、特にヒト又は動物の遺伝子発現の調節、さらにより具体的には脊椎動物及び昆虫、水生動物などの無脊椎動物(例えば、魚、貝、軟体動物、カニ、ロブスター及びエビなどの甲殻類)、鳥類、並びにとりわけ哺乳類に由来する遺伝子の発現調節にとりわけ有用である。
適切な手法及び充分な数の形質転換細胞を用いて、多様な特性が選択可能である。このような特性には可視的な特性、病気耐性の特性、及び病原体耐性の特性が含まれるが、これらに限定されない。この調節効果は、例えば、がん遺伝子、転写因子、及び細胞の代謝に関与するポリペプチドをコードする他の遺伝子などの細胞の代謝、又は細胞の形質転換の原因となる内因性遺伝子を含む植物及び動物において発現する種々の遺伝子に適用可能である。
例えば、マウスの色素産生の改変は、マウスにおけるチロシナーゼ遺伝子の発現を標的化することにより遺伝子工学的に行うことができる。これは黒色マウスに色素欠乏症の新規な表現型を付与する。植物細胞又は動物細胞においてウイルス複製に必要な遺伝子を標的化することにより、ウイルスのレプリカーゼ、ポリメラーゼ、コートタンパク質、又はコート以外のタンパク質、又はプロテアーゼタンパク質をコードするヌクレオチド配列の多重コピーを含む遺伝子構築物をそれを発現する細胞に導入して、ウイルスに対する免疫性を該細胞に付与することができる。
【0009】
本発明の実施において、分散した核酸分子又は外来性の核酸分子は一般的に標的遺伝子配列に対して約85%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。しかし、相同性が高いほど標的遺伝子配列の発現をより効果的に調節するかも知れない。実質的に高い相同性、即ち約90%以上の相同性が好ましく、さらにより好ましくは約95%から完全な同一性であることが望ましい。
完全な相同性を必要としない、導入された分散した核酸分子又は外来性核酸分子の配列は、標的遺伝子の一次転写産物か又は標的遺伝子の完全にプロセシングされたmRNAのいずれかに関して全長である必要もない。全長より短い配列でも相同性が高ければ、より長いが相同性の低い配列に匹敵する。さらに、導入された配列はイントロン又はエキソンの同じパターンを有する必要はなく、そして非コード部分の相同性は同様に効果的である。通常、20〜100ヌクレオチドより大きな配列が使用されるべきであるが、約200〜300ヌクレオチドより大きな配列が好ましく、標的遺伝子の大きさに応じて、500〜1000ヌクレオチドより大きな配列が特に好ましい。
【0010】
本発明の第二の側面は、合成遺伝子でトランスフェクション又は形質転換された原核生物又は真核生物の細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を改変できる該合成遺伝子であって、該細胞、組織若しくは器官中で機能しうるプロモーター配列の制御下で機能しうるように配置された、標的遺伝子ヌクレオチド配列に実質的に同一なヌクレオチド配列、若しくはその誘導体、若しくはそれに相補的な配列の多重コピーを含む、分散した核酸分子又は外来性核酸分子を少なくとも含む合成遺伝子を提供する。
【0011】
本発明の第三の側面は、合成遺伝子でトランスフェクション又は形質転換された原核生物又は真核生物の細胞、組織又は器官において標的遺伝子の発現を改変できる該合成遺伝子であって、該合成遺伝子が少なくとも多重構造遺伝子配列を含み、該構造遺伝子配列のそれぞれが標的遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列、若しくはその誘導体若しくはそれに相補的な配列を含み、該多重構造遺伝子配列が該細胞、組織又は器官で機能しうる単独のプロモーター配列の制御下に機能しうるように配置されるものである合成遺伝子を提供する。
【0012】
本発明の第四の側面は、合成遺伝子でトランスフェクション又は形質転換された原核生物又は真核生物の細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を改変できる合成遺伝子であって、該合成遺伝子が少なくとも多重構造遺伝子配列を含み、該構造遺伝子配列のそれぞれが該細胞、組織又は器官で機能しうるプロモーター配列の制御下で機能しうるように配置され、該構造遺伝子配列のそれぞれが標的遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列、若しくはその誘導体、若しくはそれに相補的な配列を含むものである合成遺伝子を提供する。
【0013】
本発明の第五の側面は、形質転換又はトランスフェクションされた細胞、組織又は器官における内因性遺伝子又は標的遺伝子の発現を改変できる遺伝子構築物であって、少なくとも本発明の合成遺伝子及び一つ以上の複製起点及び/又は選択可能なマーカー遺伝子配列を含む遺伝子構築物を提供する。
【0014】
植物及び動物などの多細胞生物における多くの新規な特性、特に組織特異的な特性、又は器官特異的な特性、又は発生上で制御される特性を観察するためには、本明細書に記載される合成遺伝子及び遺伝子構築物を保持する形質転換された細胞を生物体へ再生させることが必要となる。当業者は、これが形質転換された植物細胞又は動物細胞、そのような細胞の集団、組織又は器官から完全な生物体を成長させることを意味することを承知しているであろう。単離された細胞及び組織から植物及び動物を再生させるための標準的方法は当業者に知られている。
こうして、本発明の第六の側面は、本明細書に記載される合成遺伝子及び遺伝子構築物を含む細胞、組織、器官又は生物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1はプラスミドpEGFP-N1 MCSの図式的表示である。
【図2】図2はプラスミドpCMV.cassの図式的表示である。
【図3】図3はプラスミドpCMV.SV40L.cassの図式的表示である。
【図4】図4はプラスミドpCMV.SV40LR.cassの図式的表示である。
【図5】図5はプラスミドpCR.Bgl-GFP-Bamの図式的表示である。
【図6】図6はプラスミドpBSII(SK+).EGFPの図式的表示である。
【図7】図7はプラスミドpCMV.EGFPの図式的表示である。
【図8】図8はプラスミドpCR.SV40Lの図式的表示である。
【図9】図9はプラスミドpCR.BEV.1の図式的表示である。
【図10】図10はプラスミドpCR.BEV.2の図式的表示である。
【図11】図11はプラスミドpCR.BEV.3の図式的表示である。
【図12】図12はプラスミドpCMV.EGFP.BEV2の図式的表示である。
【図13】図13はプラスミドpCMV.BEV2の図式的表示である。
【図14】図14はプラスミドpCMV.BEV3の図式的表示である。
【図15】図15はプラスミドpCMV.VEBの図式的表示である。
【図16】図16はプラスミドpCMV.BEV.GFPの図式的表示である。
【図17】図17はプラスミドpCMV.BEV.SV40L-Oの図式的表示である。
【図18】図18はプラスミドpCMV.O.SV40L.BEVの図式的表示である。
【図19】図19はプラスミドpCMV.O.SV40L.VEBの図式的表示である。
【図20】図20はプラスミドpCMV.BEVx2の図式的表示である。
【図21】図21はプラスミドpCMV.BEVx3の図式的表示である。
【図22】図22はプラスミドpCMV.BEVx4の図式的表示である。
【図23】図23はプラスミドpCMV.BEV.SV40L.BEVの図式的表示である。
【図24】図24はプラスミドpCMV.BEV.SV40L.VEBの図式的表示である。
【図25】図25はプラスミドpCMV.BEV.GFP.VEBの図式的表示である。
【図26】図26はプラスミドpCMV.EGFP.BEV2.PFGの図式的表示である。
【図27】図27はプラスミドpCMV.BEV.SV40LRの図式的表示である。
【図28】図28はプラスミドpCDNA3.Galtの図式的表示である。
【図29】図29はプラスミドpCMV.Galtの図式的表示である。
【図30】図30はプラスミドpCMV.EGFP.Galtの図式的表示である。
【図31】図31はプラスミドpCMV.Galt.GFPの図式的表示である。
【図32】図32はプラスミドpCMV.Galt.SV40L.Oの図式的表示である。
【図33】図33はプラスミドpCMV.Galt.SV40L.tlaGの図式的表示である。
【図34】図34はプラスミドpCMV.O.SV40L.Galtの図式的表示である。
【図35】図35はプラスミドpCMV.Galtx2の図式的表示である。
【図36】図36はプラスミドpCMV.Galtx4の図式的表示である。
【図37】図37はプラスミドpCMV.Galt.SV40L.Galtの図式的表示である。
【図38】図38はプラスミドpCMV.Galt.SV40L.tlaGの図式的表示である。
【図39】図39はプラスミドpCMV.Galt.GFP.tlaGの図式的表示である。
【図40】図40はプラスミドpCMV.EGFP.Galt.PFGの図式的表示である。
【図41】図41はプラスミドpCMV.Galt.SV40LRの図式的表示である。
【図42】図42はプラスミドpART7の図式的表示である。
【図43】図43はプラスミドpART7.35S.SCBV.cassの図式的表示である。
【図44】図44はプラスミドpBC.PVYの図式的表示である。
【図45】図45はプラスミドpSP72.PVYの図式的表示である。
【図46】図46はプラスミドpClapBC.PVYの図式的表示である。
【図47】図47はプラスミドpBC.PVYx2の図式的表示である。
【図48】図48はプラスミドpSP72.PVYx2の図式的表示である。
【図49】図49はプラスミドpBC.PVYx3の図式的表示である。
【図50】図50はプラスミドpBC.PVYx4の図式的表示である。
【図51】図51はプラスミドpBC.PVY.LNYVの図式的表示である。
【図52】図52はプラスミドpBC.PVY.LNYV.PVYの図式的表示である。
【図53】図53はプラスミドpBC.PVY.LNYV.YVPΔの図式的表示である。
【図54】図54はプラスミドpBC.PVY.LNYV.YVPの図式的表示である。
【図55】図55はプラスミドpART27.PVYの図式的表示である。
【図56】図56はプラスミドpART27.35S.PVY.SCBV.Oの図式的表示である。
【図57】図57はプラスミドpART27.35S.O.SCBV.PVYの図式的表示である。
【図58】図58はプラスミドpART27.35S.O.SCBV.YVPの図式的表示である。
【図59】図59はプラスミドpART7.PVYx2の図式的表示である。
【図60】図60はプラスミドpART7.PVYx3の図式的表示である。
【図61】図61はプラスミドpART7.PVYx4の図式的表示である。
【図62】図62はプラスミドpART7.PVY.LNYV.PVYの図式的表示である。
【図63】図63はプラスミドpART7.PVY.LNYV.YVPΔの図式的表示である。
【図64】図64はプラスミドpART7.PVY.LNYV.YVPの図式的表示である。
【図65】図65はプラスミドpART7.35S.PVY.SCBV.YVPの図式的表示である。
【図66】図66はプラスミドpART7.35S.PVYx3.SCBV.YVPx3の図式的表示である。
【図67】図67はプラスミドpART7.PVYx3.LNYV.YVPx3の図式的表示である。
【図68】図68はプラスミドpART7.PVYmultiの図式的表示である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般事項
本明細書で使用されるとき、「から由来する」という用語は、記載された完全体が、必ずしも直接的にとは限らないが、記載された特定の源又は種から得られうることを示すものと解釈されるべきである。
本明細書を通して、文脈が他の意味を要求しない限り、「含む」という用語は、述べられた工程若しくは要素、又は工程若しくは要素の集合を含むことを意味するが、他の任意の工程若しくは要素、又は、工程若しくは要素の集合を排除することを意味するわけではないことが理解されよう。
当業者は、本明細書に記載される発明が具体的に記述されるもの以外に変形及び改変され得ることを理解する筈である。本発明は全てのこのような変形物及び改変物を包含することが理解されるべきである。本発明は、本明細書で個々に又はまとめて言及される又は示される工程、特徴、組成物及び化合物の全て、及び任意の組み合わせ、及び該工程若しくは特徴の全ての組み合わせ、又は任意の二つ以上の組合せをも包含する。
本発明は、例示目的のみを意図して本明細書に記載される具体的な態様により範囲が限定されるものではない。機能的に等価な産物、組成及び方法は、本明細書に記載されるように明らかに本発明の範囲内にある。
【0017】
本明細書に含まれるヌクレオチド及びアミノ酸の配列情報を含む配列番号(SEQ ID NO)はパテントインプログラムを用いて作製された。各々のヌクレオチド又はアミノ酸の配列は、数値指標(<210>)とそれに続く配列識別子(例えば<210> 1、<210> 2等)により配列表中で同定される。各々のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列に対する配列の長さ、型(DNA、タンパク質(PRT)等)及び起源となった生物は、それぞれ、数値指標欄の<211>、<212>及び<213>で提供される情報により示される。本明細書で言及されるヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、数値指標欄の<400>とそれに続く配列識別子(例えば<400> 1、<400> 2等)中で提供される情報によって定義される。
本明細書で言及されるヌクレオチド残基の名称は、IUPAC-IUB生化学命名委員会により推奨されるものであり、Aはアデニンを表し、Cはシトシンを表し、Gはグアニンを表し、Tはチミンを表し、Yはピリミジン残基を表し、Rはプリン残基を表し、Mはアデニン又はシトシンを表し、Kはグアニン又はチミンを表し、Sはグアニン又はシトシンを表し、Wはアデニン又はチミンを表し、Hはグアニン以外のヌクレオチドを表し、Bはアデニン以外のヌクレオチドを表し、Vはチミン以外のヌクレオチドを表し、Dはシトシン以外のヌクレオチドを表し、そしてNは任意のヌクレオチド残基を表す。
本明細書で言及されるアミノ酸残基の名称は、IUPAC-IUB生化学命名委員会によって推奨されたもので、表1に列挙する。
【0018】
表1
【0019】
本発明は細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を調節する方法を提供する。該方法は、標的遺伝子のmRNA産物の翻訳を改変するのに充分な時間及び条件の下で、該mRNA産物の転写が必ずしも抑制又は低減されないことを条件として、該標的遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列若しくはその一領域若しくはそれに相補的なヌクレオチド配列の多重コピーを含む一つ以上の分散した核酸分子若しくは外来性核酸分子を該細胞、組織又は器官に導入する工程を少なくとも含む。
「多重コピー」とは、標的遺伝子の二つ以上のコピーが同方向又は異方向で同一の核酸分子上に密接な物理的関係で又は並列して存在すること、必要ならば各反復間で二次構造の形成を容易にするためにスタッファー(stuffer)断片又は遺伝子間領域により随意的に分離されていることを意味する。このスタッファー断片はヌクレオチド残基若しくはアミノ酸残基、炭水化物分子若しくはオリゴ糖分子、又は炭素原子、又はそれらのホモログ、類似体又は誘導体の任意の組み合わせを含みうるものであって、核酸分子に共有結合できるものである。
【0020】
好ましい態様では、このスタッファー断片はヌクレオチドの配列若しくはそのホモログ、類似体又は誘導体を含む。
より好ましくは、このスタッファー断片は少なくとも約10〜50ヌクレオチドの長さ、さらにより好ましくは少なくとも約50〜100ヌクレオチドの長さ、さらに一層より好ましくは少なくとも約100〜500ヌクレオチドの長さのヌクレオチド配列を含む。
分散した又は外来性の核酸分子がイントロン/エキソン・スプライシング連結配列を含むと、スタッファー断片は遺伝子の5'末端に近い方の構造遺伝子の3'スプライシング部位とその隣の下流単位の5'スプライシング部位との間に位置するイントロン配列として働きうる。または、分散した外来性の核酸分子の三つ以上の近接したヌクレオチド配列単位が翻訳されることが望まれる場合、当業者には明白なように、それらの間に位置するスタッファー断片は、スタッファー断片の両末端にイントロン/エキソン・スプライシング連結配列を持たない、枠内の翻訳停止コドンを含むべきでなく、又は各単位の5'末端には翻訳開始コドンの付加を含むべきでない。
【0021】
好ましいスタッファー断片は、検出可能なマーカータンパク質又はその生物学的に活性な類似体及び誘導体、例えば、中でもルシフェラーゼ、β−ガラクツロナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ又は緑色蛍光タンパク質をコードするものである。スタッファー断片の追加は排除されない。
この態様によれば、検出可能なマーカー又はその類似体又は誘導体は、特異的に検出可能な表現型、好ましくは視覚的に検出可能な表現型を細胞、組織又は器官に付与できる能力のため、細胞等において本発明の合成遺伝子の発現を示すのに役立つ。
本明細書で使用されるとき、「調節する」という用語は、本明細書に記載の発明方法を用いない遺伝子の発現と比較して、標的遺伝子の発現が量的に低減され、及び/又は遺伝子発現のタイミングが遅延し、及び/又は標的遺伝子の発現の発生上のパターン、又は組織特異的なパターン、又は細胞特異的なパターンが改変されることを意味すると解釈されるべきである。
【0022】
本明細書に記載される本発明の範囲を制限することはないが、本発明は、真核生物、特に単子葉植物若しくは双子葉植物などの植物、又はヒト若しくは他の動物、さらにより具体的には脊椎動物及び昆虫、水生動物などの無脊椎動物(例えば、中でも、魚、貝、軟体動物、カニ、ロブスター、及びエビなどの甲殻類)、鳥類、又は哺乳類の特定の細胞、組織又は器官での標的遺伝子の発現の程度における抑制、遅延又は低減を含む遺伝子発現の調節に関する。
より好ましくは、標的遺伝子の発現は、細胞、組織又は器官に導入された分散した核酸分子又は外来性の核酸分子により完全に不活性化される。
如何なる理論又は作用様式にも拘束されるものではないが、本発明の実施に起因する標的遺伝子発現の低減又消滅は、標的遺伝子のmRNA転写産物の翻訳の低減又は遅延に帰することができ、あるいは内因性の宿主細胞系による標的遺伝子のmRNA転写物の配列特異的分解の結果としての該mRNAの翻訳の阻止に帰することができる。
【0023】
最良の結果として、標的遺伝子のmRNA転写産物が通常翻訳される時若しくは段階の前か、又は標的遺伝子のmRNA転写産物が通常翻訳される時と同時のいずれかで、標的遺伝子のmRNA転写物の配列特異的な分解が生じることが特に好ましい。従って、導入された分散した核酸分子又は外来性核酸分子の発現を調節するために適切なプロモーター配列を選択することは、本発明の最適な実施を考慮する上で重要である。このため、導入された分散した核酸分子又は外来性核酸分子の発現を調節する際に強力な構成的プロモーター又は誘導可能なプロモーター系の使用がとくに好ましい。
本発明は、発現の低減であって、転写の低下によってもたらされる標的遺伝子の発現の低減をも明らかに包含する。ただし、転写の低減がそれが起きる唯一の機構ではなくそして転写の低減が定常状態のmRNAプールの翻訳の低減を少なくとも伴うことを条件とする。
【0024】
該標的遺伝子は動物細胞にとって内因性の遺伝子配列であってもよく、またウイルス若しくは他の外来性病原性生物に由来し且つ細胞に入り込むことができそして感染後に細胞の装置を用いることができる遺伝子配列のような非内因性遺伝子配列であってもよい。
標的遺伝子が動物細胞にとって非内因性の遺伝子配列である場合、標的遺伝子はウイルス若しくは他の病原体の複製又は増殖に必須の機能をコードするものであることが好ましい。このような態様において、本発明は特に動物細胞のウイルス感染の予防処置及び治療処置、あるいは該病原体に対する耐性の付与若しくは刺激に特に有用である。
標的遺伝子は、植物又は動物の細胞、組織又は器官のウイルス病原体の一つ以上のヌクレオチド配列を含むことが好ましい。
例えば、動物及びヒトの場合、ウイルス病原体はレトロウイルス、例えば免疫不全ウイルスなどのレンチウイルス、ウシのエンテロウイルス(BEV)又はシンドビス・アルファウイルスなどの一本鎖(+)RNAウイルスでありうる。又は、標的遺伝子は、とりわけ、ウシのヘルペスウイルス又は単純ヘルペスウイルスI(HSVI)などの二本鎖DNAウイルスといった(ただしこれらに限定されない)動物の細胞、組織又は器官のウイルス病原体の一つ以上のヌクレオチド配列を含むことができる。
植物の場合、ウイルス病原体は、ポチウイルス、カリモウイルス、バドナウイルス、ジェミニウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、ブニアウイルス、トスポウイルス、テヌイウイルス、トンブスウイルス、ルテオウイルス、ソベモウイルス、ブロモウイルス、ククモウイルス、アイラウイルス、アルファモウイルス、タバモウイルス、トブラウイルス、ポテックスウイルス、及びクロステロウイルスが好ましく、中でもCaMV、SCSV、PVX、PVY、PLRV、及びTMVが好ましいが、これらに限定されない。
【0025】
特にウイルス病原体に関して、当業者は、ウイルスがコードする機能は宿主細胞によりコードされるポリペプチドによって「イントランス」に補完されうることを承知している。例えば、宿主細胞におけるウシのヘルペスウイルスゲノムの複製は、不活性化されたウイルスのDNAポリメラーゼ遺伝子を補完することができる宿主細胞のDNAポリメラーゼにより促進されうる。
従って、標的遺伝子が動物細胞にとって非内因性の遺伝子配列である場合、本発明のさらなる代替の態様は、ウイルスに特異的な遺伝子配列などの宿主細胞の機能によって補完され得ないウイルスポリペプチド又は外来性ポリペプチドをコードする標的遺伝子を提供する。本発明のこの態様の典型的な標的遺伝子には、中でも、ウイルスコートタンパク質、非コートタンパク質、及びRNA依存性DNAポリメラーゼ、及びRNA依存性RNAポリメラーゼをコードする遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
本発明の特に好ましい態様において、標的遺伝子はBEVのRNA依存性RNAポリメラーゼ遺伝子又はそのホモログ、類似体若しくは誘導体、又はPVY・Niaプロテアーゼをコードする配列である。
【0026】
標的遺伝子の発現が改変される細胞は、多細胞の植物又は動物、それらの細胞及び組織の培養物に由来する任意の細胞でありうる。好ましくは、該動物細胞は昆虫、爬虫類、両生類、鳥類、ヒト又は他の哺乳類に由来する。典型的な動物細胞には、とりわけ、胚性幹細胞、培養された皮膚繊維芽細胞、神経細胞、体細胞、造血幹細胞、T細胞、及び不死化細胞株、例えばCOS、VERO、HeLa、マウスC127、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、WI-38、ベビーハムスター腎臓(BHK)又はMDBK細胞株が含まれる。このような細胞及び細胞株は当業者にとって容易に入手できる。従って、標的遺伝子の発現が改変された組織又は器官はこのような動物細胞を含む任意の組織又は器官であってもよい。
植物細胞は単子葉植物又は双子葉植物種又はそれらから誘導された細胞株に由来するものであることが好ましい。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「分散した核酸分子」という用語は、核酸分子が導入される細胞、組織又は器官に起源を有する遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一な又は相補的なヌクレオチド配列の一つ以上の多重コピー、好ましくは縦列直列反復を含む核酸分子であって、組換え手段により動物の細胞、組織又は器官に導入され、一般に染色体外核酸として又は該遺伝子に遺伝的に連結しない組込まれた染色体核酸として存在するという意味で非内因性である核酸分子、を指すと解釈されるべきである。さらに具体的には、「分散した核酸分子」は、縦列に連結しないため、又は同じ染色体上で異なる染色体の位置を占めるため、又は異なる染色体上に局在するため、又はエピソーム、プラスミド、コスミド又はウイルス粒子として細胞に存在するため、物理的地図中で目的の標的遺伝子に連結しない染色体又は染色体外の核酸を含む。
「外来性核酸分子」とは、外来性の核酸分子が導入された生物と異なる生物の遺伝子配列に由来するヌクレオチド配列の一つ以上の多重コピー、好ましくは縦列直列反復を有する単離された核酸分子を意味する。この定義は、核酸分子が導入された分類学上の群と同一の最下位の分類学上の群(即ち同一集団)の異なる個体に由来する核酸分子、並びにウイルス病原体に由来する遺伝子のように核酸分子が導入された分類学上の群と異なる分類学上の群の異なる個体に由来する核酸分子を包含する。
【0028】
従って、本発明の実施において、外来性核酸分子が作用する標的遺伝子は、形質転換又はイントログレッション(introgression)の技術を用いて、ある生物から他の生物へ導入された核酸分子であってもよい。本発明のこの態様の典型的な標的遺伝子には、クラゲのエクオリア・ビクトリアに由来する緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子(プラッシェルら、1992;国際特許公開番号WO95/07463)、チロシナーゼ遺伝子、特にネズミのチロシナーゼ遺伝子(ウォンら、1988)、lacZ遺伝子のポリペプチド抑制因子をコードできる大腸菌のlacI遺伝子、本明細書で例示されるブタのα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子(NCBI登録番号L36535)、及び本明細書で例示されるPVY及びBEVの構造遺伝子、又はそれらの遺伝子のホモログ、類似体、若しくは誘導体、又はそれらに相補的なヌクレオチド配列が含まれる。
本発明はさらに、例えば、共発現した標的遺伝子のそれぞれに実質的に同一なヌクレオチド配列を含む分散した核酸分子又は外来性の核酸分子を用いて、特定の細胞で共発現する幾つかの標的遺伝子の発現を同時に標的化するために有用である。
【0029】
「実質的に同一な」とは、本発明の導入された分散した核酸分子又は外来性核酸分子と標的遺伝子配列とが、標準的な細胞内条件下で両者間に塩基対の形成が可能となる程にヌクレオチド配列レベルで十分に同一であることを意味する。
本発明の分散した核酸分子又は外来性核酸分子における各反復のヌクレオチド配列と標的遺伝子配列の一部のヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列レベルで少なくとも約80〜85%同一であることが好ましく、少なくとも約85〜90%同一であることがより好ましく、少なくとも約90〜95%同一であることがさらにより好ましく、ヌクレオチド配列レベルで少なくとも約95〜99%又は100%同一であることがさらにより一層好ましい。
本発明は、本発明の分散した核酸分子又は外来性核酸分子における反復配列の正確な数によって制限されるわけではないが、本発明は細胞中で発現されるベき標的遺伝子配列の少なくとも二つのコピーを必要とすると理解されるべきである。
標的遺伝子配列の多重コピーは縦列逆反復配列及び/又は縦列直列反復配列として分散した核酸分子又は外来性核酸分子中に存在することが好ましい。このような配置はGalt、BEV又はPVYの遺伝子領域を含み本明細書に記載される「テストプラスミド」により例示される。
【0030】
細胞、組織又は器官に導入される分散した核酸分子又は外来性核酸分子はRNA又はDNAを含むことが好ましい。
分散した核酸分子又は外来性核酸分子は標的遺伝子によってコードされるアミノ酸配列をコードできるヌクレオチド配列又は相補的なヌクレオチド配列を含むことが好ましい。これらの核酸分子は一つ以上のATG又はAUGの翻訳開始コドンを含むことがさらにより好ましい。
標的遺伝子の発現を調節する目的で分散した核酸分子又は外来性核酸分子を細胞、組織又は器官に導入するため、標準的な方法が用いられうる。例えば、核酸分子は裸のDNA又はRNAとして導入されうるし、任意選択的にリポソーム内にカプセル化して、弱毒化されたウイルスとしてのウイルス粒子内に入れ、又はウイルス外被又は輸送タンパク質又は金などの不活性担体と結合させて又は組換えのウイルスベクター若しくは細菌ベクターとして又はとりわけ遺伝子構築物として導入されうる。
投与方法としては、とりわけ注射及び経口摂取(例えば、医薬用食品物質)が挙げられる。
【0031】
本核酸分子は、腸の微生物叢に取り込まれうる細菌内での発現に適した細菌発現系を用いるなど生きている送達系によっても送達されうる。又は、ウイルスの発現系が使用され得る。この点で、ウイルス発現の一つの形態は、感染に効果的な量の生きているベクター(例えば、ウイルス又は細菌)が動物に供給される場合、一般的に噴霧、飼料又は水による生きているベクターの投与である。ウイルス発現系の他の形態は細胞に感染できるが細胞内で複製できない非複製性ウイルスベクターである。この非複製性ウイルスベクターは、一過性の発現用に本遺伝物質をヒト又は動物の患者に導入する手段を提供する。このようなベクターを投与する様式は生きているウイルスベクターと同様である。
本核酸分子を宿主細胞に送達するのに利用される担体、賦形剤及び/又は希釈剤はヒト又は獣医の適用に許容されるべきものである。このような担体、賦形剤及び/又は希釈剤は当業者に周知である。獣医学的使用に適切な担体及び/又は希釈剤には、任意の及び全ての溶媒、分散媒、水溶液、被覆剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等が挙げられる。従来の媒体又は薬剤は活性成分との配合が禁忌であるものを除き、組成物でのその使用が意図される。補足の活性成分もこの組成物に組込まれ得る。
【0032】
別の態様において、本発明は、細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を調節する方法であって、少なくとも以下の工程、すなわち
(i)該標的遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列又はその一領域またはそれに相補的なヌクレオチド配列の多重コピーを含む一つ以上の分散した核酸分子又は外来性核酸分子を選択する工程、及び
(ii)標的遺伝子のmRNA産物の翻訳が改変されるのに充分な時間及び条件の下で、分散した核酸分子又は外来性核酸分子を細胞、組織又は器官に導入する工程であって、前記mRNA産物の転写が専ら抑制又は低減されるのではないことを条件とする前記工程、
を含む方法を提供する。
標的遺伝子の発現を標的化するのに適切なヌクレオチド配列を選択するため、幾つかのアプローチが用いられうる。一つの態様では、特性決定された遺伝子の特定の領域の多重コピーを、適切なプロモーターと機能しうるように連結させてクローニングし、標的遺伝子の発現を低減させる効果を検定する。または、遺伝子配列の多重コピーを含むショットガンライブラリーを作成し、標的遺伝子の発現を低減させるそれらの効果を検定する。後者のアプローチに伴う利点は、細胞の望ましくない表現型の発現における特定の標的遺伝子の重要性について何らの先行知識も有する必要がないことである。例えば、任意のウイルス遺伝子が宿主細胞の病因に果たす役割についての先行知識がなくとも、ウイルスのサブゲノム断片を含むショットガンライブラリーを使用して、動物宿主細胞にウイルスの免疫性を付与する能力を直接試験しうる。
【0033】
本明細書で用いられるとき、「ショットガンライブラリー」という用語は、多様なヌクレオチド配列の一組である。この一組の各構成要素は、細胞宿主の維持及び/又は複製に適した適切なプラスミド、コスミド、バクテリオファージ、又はウイルスベクター分子内に含まれていることが好ましい。「ショットガンライブラリー」という用語には、ヌクレオチド配列間の相違の程度が多大であるため該ヌクレオチド配列の由来する生物のゲノムの全配列が「一組」で存在する典型的なライブラリー、又は配列間の相違の程度がより少ない限定されたライブラリーが含まれる。「ショットガンライブラリー」という用語はさらに、ヌクレオチド配列がせん断により得られる、又は他のアプローチの中でも制限エンドヌクレアーゼを用いて例えばゲノムDNAの部分的消化により得られる、ウイルス又は細胞のゲノム断片を含む無作為ヌクレオチド配列を包含する。さらに、「ショットガンライブラリー」には、多様な一組の各ヌクレオチド配列を含む細胞、ウイルス粒子及びバクテリオファージ粒子が含まれる。
本発明のこの態様の好ましいショットガンライブラリーは、植物又は動物のウイルス病原体に由来する一組の縦列反復ヌクレオチド配列を含む「典型的なライブラリー」である。
とくに好ましい本発明の態様において、ショットガンライブラリーは、多様な一組のアミノ酸配列をコードする多様な一組の縦列反復ヌクレオチド配列を含む細胞、ウイルス粒子又はバクテリオファージ粒子を含む。この多様な一組のヌクレオチド配列の構成要素は、細胞中で該縦列反復ヌクレオチド配列の発現を指示することのできるプロモーター配列の制御の下で機能可能なように配置される。
【0034】
従って、縦列反復配列における各単位のヌクレオチド配列は少なくとも約1から200の長さのヌクレオチドを含みうる。より大きな断片の使用、特にウイルス、植物又は動物のゲノムに由来する無作為にせん断された核酸の使用は、除外されない。
導入された核酸分子は発現可能な形態であることが好ましい。
「発現可能な形態」とは、本核酸分子が少なくとも転写レベルで細胞、組織、器官又は生物全体で発現しうるような配置で存在することを意味する(即ち、それは動物細胞中で発現し、少なくともmRNA産物を生じ、該産物は任意的に翻訳可能であるか又は翻訳されて組換えのペプチド、オリゴペプチド又はポリペプチドの分子を生産する)。
例として、目的の細胞、組織又は器官内で分散した核酸分子又は外来性核酸分子を発現させるために、合成遺伝子又は該合成遺伝子を含む遺伝子構築物が作成される。この合成遺伝子はその中で発現を調節できるプロモーター配列と機能しうるように連結された上記記載のヌクレオチド配列を含む。こうして、本核酸分子は真核性の転写が起きるのに充分な一つ以上の調節要素と機能しうるように連結される。
【0035】
従って、本発明のさらに別の態様は動物の細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を調節する方法であって、少なくとも以下の工程、すなわち
(i) 標的遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列又はその一領域またはそれに相補的なヌクレオチド配列の多重コピー、好ましくはその縦列反復を含む一つ以上の分散した核酸分子又は外来性核酸分子を選択する工程、
(ii) 分散した核酸分子又は外来性核酸分子を含む合成遺伝子を作成する工程、
(iii) 該細胞、組織又は器官に該合成遺伝子を導入する工程、及び
(iv) 標的遺伝子のmRNA産物の翻訳が改変されるのに充分な時間と条件の下で、該合成遺伝子を該細胞、組織又は器官中で発現させる工程であって、前記mRNA産物の転写が専ら抑制又は低減されるのではないことを条件とする前記工程、
を含む方法を提供する。
【0036】
本明細書において「遺伝子」に対する言及は最も広い文脈で解釈されるべきであり、
(i)下記のものから成る古典的ゲノム遺伝子、すなわち、
転写及び/又は翻訳の調節配列及び/又はコード領域及び/又は非翻訳配列(即ちイントロン、5'-及び3'-の非翻訳配列)から構成される古典的なゲノム遺伝子、及び/又は
(ii) 該遺伝子のコード領域(即ちエキソン)及び5'-及び3'-の非翻訳配列に対応するmRNA又はcDNA、及び/又は
(iii)非翻訳配列及び/又は構造領域に発現特性を付与できる転写及び/又は翻訳の調節領域から成る異種のプロモーター配列をさらに任意に含むコード領域(即ちエキソン)に対応する該構造領域、
を含む。
【0037】
「遺伝子」という用語は、機能的産物の全部又は一部、特にセンス若しくはアンチセンスのmRNA産物、又はペプチド、オリゴペプチド若しくはポリペプチド又は生物活性タンパク質をコードする合成分子又は融合分子を記載するためにも使用される。
「合成遺伝子」という用語は、本明細書で先に定義されたように、構造遺伝子配列に機能的に連結させた少なくとも一つ以上の転写及び/又は翻訳の調節配列を含むことが好ましい非天然産の遺伝子を指す。
「構造遺伝子」という用語は、mRNAを産生するために伝達されることができ且つ任意的にペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド又は生物活性タンパク質分子をコードするヌクレオチド配列を指すと解釈されるべきである。当業者は、例えば、mRNAが機能的な翻訳開始シグナルを欠く場合、又はmRNAがアンチセンスmRNAである場合、全てのmRNAがペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に翻訳され得るわけではないことを承知している。本発明はペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド又は生物活性タンパク質をコードできないヌクレオチド配列を含む合成遺伝子を明らかに包含する。特に、本発明者らは、このような合成遺伝子が原核生物又は真核生物の細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を改変するのに有利でありうることを見出した。
【0038】
「構造遺伝子領域」という用語は、機能しうるように連結させたプロモーター配列の制御下に細胞、組織又は器官内で発現させる本明細書に記載の分散した核酸分子又は外来性核酸分子を含む合成遺伝子の部分を指す。構造遺伝子領域は単独のプロモーター配列又は多重のプロモーター配列の制御下で機能しうる一つ以上の分散した核酸分子及び/又は外来性核酸分子を含みうる。従って、合成遺伝子の構造遺伝子領域はアミノ酸配列をコードできるヌクレオチド配列又はそれに相補的なヌクレオチド配列を含みうる。この点で、本発明の実施で使用される構造遺伝子領域は、アミノ酸配列をコードするが機能的な翻訳開始コドン及び/又は機能的な翻訳終始コドンを欠き、結果として完全なオープン・リーディング・フレームを含まないヌクレオチド配列を含んでもよい。この文脈において、「構造遺伝子領域」という用語は、該遺伝子を発現する真核細胞中で通常翻訳されない遺伝子の5'-上流又は3'-下流の配列といった非コードヌクレオチド配列にまでも拡張される。
【0039】
従って、本発明の文脈において、構造遺伝子領域は、同一又は異なる遺伝子の二つ以上のオープン・リーディング・フレーム間の融合も含みうる。このような態様において、本発明は、一つの遺伝子の異なる非連続領域を標的化することにより該遺伝子の発現を調節するため、又は多重遺伝子ファミリーの異なる遺伝子などの幾つかの異なる遺伝子の発現を同時に調節するために使用されうる。動物細胞にとって非内因性であり且つ特にウイルス病原体に由来する二つ以上のヌクレオチド配列を含む融合核酸分子の場合、融合は、この幾つかの病原体における遺伝子の発現を標的化することにより該幾つかの病原体に対する同時免疫又は同時予防を付与するというさらなる利点を提供しうる。その代わりに又はそれに加えて、融合は、任意の病原体の一つ以上の遺伝子の発現を標的化することにより該病原体に対するより効果的な免疫を与えうる。
【0040】
本発明のこの側面の特に好ましい構造遺伝子領域は、少なくとも一つの翻訳可能なオープン・リーディング・フレームを含むものであり、より好ましくはさらに該オープン・リーディング・フレームの5'端(必ずしも構造遺伝子領域の5'-末端とは限らないが)に位置する翻訳開始コドンを含む。この点で、構造遺伝子領域は少なくとも一つの翻訳可能なオープン・リーディング・フレーム及び/又はAUG若しくはATGの翻訳開始コドンを含み得るが、このような配列を含むことは、本発明が標的遺伝子の発現を調節するため導入された核酸分子の翻訳を生じさせる必要があることを示唆するものではない。いかなる理論又は作用様式にも拘束されるものではないが、本核酸分子に少なくとも一つの翻訳可能なオープン・リーディング・フレーム及び/又は翻訳開始コドンを含ませることは、そのmRNA転写産物の安定性を増大するのに役立ちうるものであり、それにより、本発明の効率が改善される。
【0041】
本発明の合成遺伝子に関与しうる構造遺伝子配列の最適な数は、該構造遺伝子配列のそれぞれの長さ、方向、及び互いの同一性の程度に応じてかなり変動する。例えば、当業者は、パリンドローム構造のヌクレオチド配列がインビボで本来不安定であることそしてこのような配列がインビボで組換えを起こす傾向があるため、逆反復ヌクレオチド配列を含む長い合成遺伝子を構築するには困難が伴うことを知っている。このような難点にも関わらず、本発明の合成遺伝子に含まれるべき構造遺伝子配列の最適な数は、過度の実験を行うことなく、リコンビナーゼ欠損の細胞株を用い、組換え事象を除去又は最小限にするレベルまで反復配列の数を減らし、そして多重構造遺伝子配列の全長を許容される限界、好ましくは僅か5〜10kb、より好ましくは僅か2〜5kb、さらにより好ましくは長さを僅か0.5〜2.0kbに保つことにより、本発明の合成遺伝子を構築するような標準的手法に従い、当業者によって経験的に決定されうる。
構造遺伝子領域が二つ以上の分散した核酸分子又は外来性核酸分子を含む場合、本明細書では「多重構造遺伝子領域」または同様な用語を用いて言及する。明らかに、本発明は、好ましくは特定の構造遺伝子、分散した核酸分子又は外来性核酸分子、又はその断片の直列反復配列、逆反復配列又は分断されたパリンドローム配列を含む多重構造遺伝子領域の使用にまで拡張される。
【0042】
本合成遺伝子の多重構造遺伝子単位内に含まれる分散した核酸分子又は外来性核酸分子のそれぞれは、同じ生物での異なる標的遺伝子と実質的に同一なヌクレオチド配列を含みうる。ウイルス標的遺伝子の発現を改変することにより合成遺伝子が細胞、組織又は器官における病原体、とりわけウイルス病原体に対する防御を提供することを意図する場合、このような配置は特に有用でありうる。例えば、多重構造遺伝子が、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、Niaプロテアーゼ、及びコートタンパク質を含むリストから選択される二つ以上の標的遺伝子又はウイルスの感染力、複製又は増殖にに必須な他の標的遺伝子と実質的に同一なヌクレオチド配列(即ち、二つ以上の分散した核酸分子又は外来性核酸分子)を含みうる。しかし、この配置については、本合成遺伝子の多重構造遺伝子がプロモーター配列の制御下で発現するのとほぼ同じ時期に(又は後に)、実質的に同一の標的遺伝子(複数)が感染した細胞、組織又は器官内で正常に発現するように構造遺伝子単位が選択されることが好ましい。これは、ウイルス標的遺伝子が異なる感染段階で発現する場合、ウイルスの全生活環にわたって、多重構造遺伝子の発現を制御するプロモーターが細胞、組織又は器官における発現を行わせるように通常選択されることを意味する。
分散した核酸分子又は外来性核酸分子の各配列単位に関しては、多重構造遺伝子の個々の単位は相互に対して例えば、頭部から頭部、頭部から尾部、又は尾部から尾部の任意の方向で空間的に連結されうる、そしてこのような配置は全て本発明の範囲内にある。
真核細胞での発現のため、合成遺伝子は、本発明の核酸分子に加えて、一般にプロモーター及び任意選択的に分散した核酸分子又は外来性核酸分子の発現を促進するように設計された他の調節配列を含む。
【0043】
本明細書における「プロモーター」に対する言及は、最も広い文脈で解釈されるべきであり、正確な転写の開始に必要とされるTATAボックスを含み、CCAATボックス配列及び発生上の及び/又は外部の刺激に応答して又は組織特異的な様式で遺伝子発現を変化させる付加的調節因子(即ち、上流の活性化配列、エンハンサー及びサイレンサー)を備えた又は備えない古典的なゲノム遺伝子の転写調節配列を含む。プロモーターは、必ずではないが通常、その発現を制御する構造遺伝子領域の上流又は5'に位置する。さらに、プロモーターを含む調節因子は通常、遺伝子の転写の開始部位の2kb内に位置する。
本文脈において、「プロモーター」という用語は細胞における核酸分子の発現を付与し、活性化し、又は強化する合成分子又は融合分子又は誘導体を記述するためにも使用される。
好ましいプロモーターは、センス分子の発現をさらに強化するために及び/又は該センス分子の空間的発現及び/又は時間的発現を改変するために一つ以上の特異的な調節因子のさらなるコピーを含みうる。例えば、銅誘導性を付与する調節因子はセンス分子を発現させる異種のプロモーター配列に隣接して配置されることにより、該分子の発現に銅誘導性を付与する。
【0044】
プロモーター配列の調節的制御の下に分散した核酸分子又は外来性核酸分子を配置することは、その発現がそのプロモーター配列により制御されるように該分子を配置することを意味する。プロモーターは一般的にそれが制御する遺伝子の5'(上流)に位置する。異種のプロモーター/構造遺伝子の組み合わせの構築において、天然の環境でのプロモーターとそれが制御する遺伝子、即ちプロモーターが見出される遺伝子との間の距離とほぼ同じ遺伝子転写開始部位からの距離にプロモーターを配置することが一般的に好ましい。当分野で周知のように、プロモーター機能を喪失することなく、この距離のある程度の変動は許容される。同様に、その制御下に置かれるべき異種遺伝子に関する調節配列因子の好ましい配置は、天然環境、即ち該因子が見出される遺伝子のその配置により定められる。また、当分野で周知のように、この距離のある程度の変動も起こり得る。
【0045】
本発明の合成遺伝子における使用に適したプロモーターの例としては、ウイルス、菌類、細菌、動物及び植物に由来するプロモーターであって、植物、動物、昆虫、菌類、酵母又は細菌の細胞で機能しうるプロモーターが挙げられる。このプロモーターは、構成的に構造遺伝子構成要素の発現を調節し、あるいは、発現が起こる細胞、組織又は器官に関して、又は発現が起こる発生段階に関して、又はとりわけ生理的ストレス、又は病原体、又は金属イオンなどの外部刺激に応答して異なって構造遺伝子構成要素の発現を調節しうる。
このプロモーターは、少なくとも標的遺伝子が発現する時間の間中、より好ましくは細胞、組織又は器官で標的遺伝子の検出可能な発現の開始直前にも、真核生物の細胞、組織又は器官で核酸分子の発現を調節できることが好ましい。
従って、強力な構成的プロモーターが又はウイルス感染若しくは標的遺伝子の発現の開始により誘導されうるプロモーターが本発明の目的には特に好ましい。
植物及び動物で機能しうるプロモーターは本発明の合成遺伝子の使用に特に好ましい。好ましいプロモーターの例としては、バクテリオファージT7プロモーター、バクテリオファージT3プロモーター、SP6プロモーター、lacオペレーター−プロモーター、tacプロモーター、SV40後期プロモーター、SV40初期プロモーター、RSV-LTRプロモーター、CMV-IEプロモーター、CaMV35Sプロモーター、SCSVプロモーター、SCBVプロモーター等が挙げられる。
標的遺伝子の発現と同時に起きる又は標的遺伝子の発現に先行する高レベルな発現のための好ましい必要条件を考慮すると、プロモーター配列は、とりわけCMV-IEプロモーター配列又はSV40初期プロモーター配列、SV40後期プロモーター配列、CaMV35Sプロモーター、又はSCBVプロモーターなどの強力な構成的プロモーターであることが極めて望ましい。当業者は、具体的に記載されたもの以外の別のプロモーター配列にも容易に気付くはずである。
【0046】
本文脈において、「機能しうるように連結させた」又は「制御の下で機能しうる」又は同様な語は、構造遺伝子領域又は多重構造遺伝子領域の発現が細胞、組織、器官又は生物全体において空間的に連結させたプロモーター配列の制御の下にあることを意味すると解釈されるべきである。
本発明の好ましい態様において、構造遺伝子領域(即ち、分散した核酸分子又は外来性核酸分子)又は多重構造遺伝子領域は、該遺伝子が転写される場合、翻訳されるなら、標的遺伝子又はその断片のポリペプチド産物をコードできるmRNA産物が合成されるように、プロモーター配列に関してプロモーター方向に機能しうるように連結させて配置される。
しかし、本発明はこのような配置の使用に制限されるわけではなく、本発明は明らかに、合成遺伝子及び遺伝的構築物の使用であって、少なくともそのmRNA転写産物の一部が標的遺伝子又はその断片によってコードされるmRNAに相補的となるように、構造遺伝子領域又は多重構造遺伝子領域がプロモーター配列に関して「アンチセンス」方向に配置されるものである使用に拡張される。
分散した核酸分子、外来性の核酸分子又は多重構造遺伝子領域は標的遺伝子の縦列直列配列反復配列及び/又は逆反復配列を含むことは明らかであるから、上述の立体配置のあらゆる組み合わせが本発明により包含される。
【0047】
本発明の別の態様において、構造遺伝子領域又は多重構造遺伝子領域は第一プロモーター配列及び第二プロモーター配列の両方に機能しうるように連結される。該二つのプロモーターは、構造遺伝子領域または多重構造遺伝子領域の少なくとも一つの単位が第一プロモーター配列に関して「センス」方向に置かれ、且つ第二プロモーター配列に関して「アンチセンス」方向に置かれるように、その遠位及び近位の末端に配置される。この態様によれば、第一プロモーターと第二プロモーターは、それらに結合する細胞転写因子に対する両者間の競合を防ぐために異なっていることも好ましい。この配置の利点は、細胞内での標的遺伝子の発現を低減させる際に、試験される各ヌクレオチド配列にとっての最適な方向を決定するために、第一プロモーターと第二プロモーターからの転写の影響が比較されうることである。
合成遺伝子は、例えば転写終結配列など、効率的な転写のためのさらなる調節因子を含むことが好ましい。
【0048】
「ターミネーター」という用語は、転写の終結を知らせる転写単位の末端にあるDNA配列を指す。ターミネーターはポリアデニル化シグナルを含む3'−非翻訳DNA配列であり、ポリアデニル化シグナルは一次転写産物の3'−末端にポリアデニレート配列の付加を促進させる。植物細胞内で活性なターミネーターが知られており、文献に記載されている。ターミネーターは細菌、真菌、ウイルス、動物及び/又は植物から単離しうるし又はデノボ合成しうる。
プロモーター配列と同様に、ターミネーターは使用が意図される細胞、組織又は器官で機能しうる任意のターミネーター配列でありうる。
【0049】
本発明の合成遺伝子の使用に特に適切なターミネーターの例としては、中でも、SV40ポリアデニル化シグナル、HSV・TKポリアデニル化シグナル、CYC1ターミネーター、ADHターミネーター、SPAターミネーター、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのノパリンシンターゼ(NOS)遺伝子ターミネーター、カリフラワー・モザイク・ウイルス(CaMV)35S遺伝子のターミネーター、トウモロコシ由来のzein遺伝子ターミネーター、ルビスコ小サブユニット(SSU)遺伝子ターミネーター配列、サブクローバー・スタント・ウイルス(SCSV)遺伝子配列ターミネーター、任意のrho非依存性大腸菌ターミネーター、又はLacZアルファターミネーターが挙げられる。
特に好ましい態様において、このターミネーターは、動物の細胞、組織又は器官で機能しうるSV40ポリアデニル化シグナル又はHSV・TKポリアデニル化シグナル、植物の細胞、組織又は器官で活性なオクトピンシンターゼ(OCS)又はノパリンシンターゼ(NOS)のターミネーター、又は原核細胞で活性なlacZアルファターミネーターである。
当業者は、本発明を実施する際に使用に適しうるさらなるターミネーター配列に気付くであろう。このような配列は過度の実験をすることなく容易に使用される。
本明細書に記載される合成遺伝子又はそれを含む遺伝子構築物を細胞に導入する手段(即ち、トランスフェクション又は形質転換)は当業者に周知である。
【0050】
さらなる別の態様において、二つ以上の構造遺伝子領域又は多重構造遺伝子領域を含む遺伝子構築物が使用される。この構造遺伝子領域の各々はそれ自体のプロモーター配列の制御下で機能しうるように配置される。本明細書に記載される他の態様と同様に、各構造遺伝子領域の方向は標的遺伝子の発現に対する調節効果が最大になるよう変更されうる。
この態様によれば、構造遺伝子単位の発現を制御するプロモーターは、細胞転写因子とRNAポリメラーゼに対するそれらの間の競合を減少させるため異なるプロモーター配列であることが好ましい。好ましいプロモーターは先に言及したものから選択される。
当業者は、別個のプロモーター配列からの発現を調節するため、前述したような各構造遺伝子の配置又は立体配置をどのように改変すべきかを知っている。
前述の合成遺伝子は、例えば、それが発現する細胞、組織又は器官内で合成遺伝子の検出を容易にするため、検出可能なマーカー酵素をコードするマーカーヌクレオチド配列又はその機能的類似体又はその誘導体を含めることによりさらに改変できる。この態様にしたがって、マーカーヌクレオチド配列は、翻訳可能な型で存在し、例えば一つ以上の任意の構造遺伝子の翻訳産物との融合ポリペプチドとして、又は非融合ポリペプチドとして発現される。
【0051】
当業者は、本明細書に記載される合成遺伝子の作製方法、及び必要なときに所望の条件下で特定の細胞又は細胞のタイプでのそれを発現させるための必要条件を承知している。特に、本発明を実施するのに必要とされる遺伝子操作は本明細書に記載される遺伝子構築物またはその誘導体を大腸菌細胞などの原核細胞又は植物細胞又は動物細胞で増やすことを必要とすることは当業者に知られている。
本発明の合成遺伝子は、とりわけ細胞、ウイルス粒子又はリポソームなどの適切な担体内に任意選択的に含まれる遺伝子構築物の形態の直鎖状DNAとして、改変することなく、適切な細胞、組織又は器官に導入されうる。遺伝子構築物を作成するため、本発明の合成遺伝子は、後に導入される宿主の細胞、組織又は器官内で維持及び/又は複製及び/又は発現できるバクテリオファージベクター、ウイルスベクター又はプラスミド、コスミド又は人工染色体ベクターなどの適切なベクター又はエピソーム分子に挿入される。
【0052】
従って、本発明のさらなる側面は、本明細書に記載の一つ以上の態様の合成遺伝子、及び一つ以上の複製起点及び/又は選択可能なマーカー遺伝子配列を少なくとも含む遺伝子構築物を提供する。
遺伝子構築物は、ウイルス病原体に対する耐性特性を付与するほかに、真核細胞へ新規な遺伝的特性を導入するための該細胞の形質転換に特に適している。このようなさらなる新規な特性は、異なる遺伝子構築物中に、又は本明細書に記載の合成遺伝子を含む同じ遺伝子構築物上に導入されうる。当業者は、特に遺伝子操作及び組織培養の必要性の減少並びに費用効果の増大という点で、単独の遺伝子構築物にこのような付加的特性及び本明細書に記載の合成遺伝子をコードする遺伝子配列を含めることの大きな利点を認識するはずである。
細菌での使用に適した複製起点又は選択可能なマーカー遺伝子は、真核細胞での発現又はそれへの導入、又は真核細胞のゲノムへの取り込みが意図される遺伝子構築物に含まれるこれらの遺伝子配列から物理的に分離されているのが通常である。
【0053】
特に好ましい態様においては、複製起点は細菌細胞で機能しうるものであって、pUC又はColE1の起点を含み、又は複製起点は真核生物の細胞、組織で機能しうるものであり、より好ましくは2ミクロン(2μm)の複製起点又はSV40の複製起点を含む。
本明細書で使用されるとき、「選択可能なマーカー遺伝子」という用語は、本発明の遺伝子構築物又はその誘導体でトランスフェクション又は形質転換される細胞の同定及び/又は選択を容易にするために、それを発現する細胞に表現型を付与する任意の遺伝子を含む。
本明細書で意図される適切な選択可能なマーカー遺伝子には、とりわけ、アンピシリン耐性遺伝子(Ampr)、テトラサイクリン耐性遺伝子(Tcr)、細菌性カナマイシン耐性遺伝子(Kanr)、ゼオシン耐性遺伝子(ゼオシンはブレオマイシン・ファミリーの薬物であり、インビトロゲン社の商標である)、抗生物質のオーレオバシディンAに対する耐性を付与するAURI-C遺伝子、フォスフィノスリシン耐性遺伝子、ネオマイシン・フォスフォトランスフェラーゼ遺伝子(nptII)、ハイグロマイシン耐性遺伝子、β−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子又はルシフェラーゼ遺伝子が含まれる。
選択可能なマーカー遺伝子はnptII遺伝子又はKanr遺伝子又は緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子であることが好ましい。
当業者は本発明の実施に有用な他の選択可能マーカー遺伝子を承知しており、本発明は選択可能マーカー遺伝子の性質によって制限されるものではない。
【0054】
本発明は本質的に本明細書に記載の遺伝子構築物であって、原核生物又は真核生物における遺伝子構築物の維持及び/又は複製並びに/又は真核細胞又は真核生物のゲノムへの遺伝的構築物またはその一部の取り込みを目的とするさらなる遺伝子配列を含む遺伝子構築物全てに及ぶ。
分散した又は外来の核酸分子と同様に、上記の標準的方法は、標的遺伝子の発現を調節する目的で合成遺伝子及び遺伝子構築物を細胞、組織又は器官に導入するために用いてもよく、例えば、リポソームに媒介されるトランスフェクション若しくは形質転換、弱毒化されたウイルス粒子若しくは細菌細胞による細胞の形質転換、細胞接合、当分野で周知の又はアウスベルら(1992年)により記載された形質転換又はトランスフェクションの手法が用いられる。
植物の組織または細胞に組換えDNAを導入するためのさらなる手段には、CaCl2及びその変形を用いる形質転換、特にハナハン(1983年)によって記載された方法、プロトプラストへの直接的なDNA取り込み(クレンスら,1982、パスズコヴスキーら,1984)、プロトプラストへのPEG媒介取り込み(アームストロングら,1990)、微小粒子銃撃、電気穿孔(フロムら,1985)、DNAのマイクロインジェクション(クロスウェイら,1986)、組織の外植片又は細胞の微小粒子銃撃(クリストウら、1988、サンフォード,1988)、核酸による組織の減圧浸入、又は植物の場合、アンら(1985年)、ヘレラ−エストレラら(1983a、1983b、1985)により実質的に記述されたアグロバクテリウムから植物組織へのT-DNA媒介性の導入が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
細胞の微小粒子銃撃では、微小粒子が細胞に射ち込まれ形質転換細胞を生ずる。本発明を実施する際に、任意の適切な銃撃細胞形質転換方法及び装置が使用されうる。典型的な装置及び手法はストンプら(米国特許第5,122,466号)及びサンフォードとヴォルフ(米国特許第4,945,050号)により開示されている。銃撃性の形質転換手法を用いる場合、遺伝子構築物は形質転換される細胞中で複製できるプラスミドに組込まれうる。
このような系での使用に適する微小粒子の例には1から5μmの金の球が挙げられる。DNA構築物は沈降などの任意の適切な技術により微小粒子に沈着されうる。
【0056】
本発明のさらなる態様において、本明細書に記載の合成遺伝子及び遺伝子構築物は発現する細胞のゲノムへの組み込みに適合される。当業者は、宿主細胞のゲノムへの遺伝子配列又は遺伝子構築物の組み込みを達成するためにはある付加的な遺伝子配列が必要となることを承知している。植物の場合、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのTiプラスミドのT−DNAに由来する左側と右側の境界配列が一般に必要とされる。
本発明は、本明細書に記載の合成遺伝子を含む単離された細胞、組織若しくは器官又は同遺伝子を含む遺伝子構築物にもさらに拡大される。さらに、本発明は、該細胞、組織及び器官に由来する再生された組織、器官及び生物体、並びにそれらの繁殖体及び子孫にも拡大される。
例えば、植物はホルモンを含有する培地上で形質転換された植物の細胞、又は組織又は器官から再生しうる。再生された植物は、形質転換細胞と非形質転換細胞のキメラ、クローンの形質転換体(例えば、発現カセットを含むよう形質転換された全細胞)、形質転換された組織及び形質転換されていない組織の接木(例えば、柑橘種において形質転換されていない若枝に接木される形質転換された台木)などの多様な形態をとりうる。形質転換植物は、クローン繁殖又は古典的な育種技術などによる種々の方法により繁殖しうる。例えば、第一世代(即ちT1)の形質転換植物は同型接合の第二世代(T2)の形質転換植物をもたらすように自家受粉させてもよく、さらにT2植物は古典的な育種技術により繁殖させてもよい。
【0057】
本発明のいくつかの態様を以下に示す。
(1) 動物の細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を抑制し、遅延させ又はその他の方法で低減させる方法であって、該標的遺伝子のヌクレオチド配列又はその領域又はその相補的配列と実質的に同一なヌクレオチド配列の縦列コピーを含む分散した核酸分子又は外来性核酸分子の1以上を、該標的遺伝子のmRNA産物の翻訳が改変されるのに十分な時間及び条件の下で、該動物の細胞、組織又は器官に導入する工程を含む方法であるが、該mRNA産物の転写が専ら抑制又は低減されるのではないことを条件とする方法。
(2) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子が標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列の逆方向反復を含むものである(1)記載の方法。
(3) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子が該標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列の直列反復を含むものである(1)記載の方法。
(4) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子が該標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列の直列反復及び逆方向反復の両者を含むものである(1)記載の方法。
(5) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子中の標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列のコピー数が2である(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子中の標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列のコピー数が3である(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(7) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子中の標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列のコピー数が4である(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(8) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子中の標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列のコピー数が6である(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(9) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子中の標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列のコピー数が10である(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(10) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子が標的遺伝子配列の縦列反復を含み、そして該縦列反復の反復単位の1以上が別の単位とは離れており、核酸含有スタッファー断片となっているものである(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11) 該動物がマウスである(1)記載の方法。
(12) 該標的遺伝子が該動物の細胞、組織又は器官のゲノム内に含まれる遺伝子である(1)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13) 該標的遺伝子がα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼである(12)記載の方法。
(14) 該標的遺伝子が該動物の細胞、組織又は器官又は該細胞、組織又は器官を含む生物の病原体のゲノム由来のものである(1)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(15) 該病原体がウイルスである(14)記載の方法。
(16) 該ウイルスがBEVである(15)記載の方法。
(17) 該標的遺伝子の発現を有効に調節するその能力により該分散した核酸分子(単数又は複数)又は外来性核酸分子(単数又は複数)を選択する工程をさらに含む(1)〜(16)のいずれかに記載の方法。
(18) 動物の細胞、組織又は器官中の標的遺伝子の発現を抑制し、遅延させ又は他の方法で低減させる方法であって、
(i) 標的遺伝子のヌクレオチド配列又はその領域又はそれに相補的な配列と実質的に同一なヌクレオチド配列の縦列反復を含む分散した核酸分子又は外来性核酸分子の1以上を選択する工程、
(ii) 該動物の細胞、組織又は器官中で機能し得るプロモーター配列に機能しうるように連結した該分散した核酸分子又は外来性核酸分子を含む合成遺伝子を製造する工程、
(iii) 該細胞、組織又は器官に該合成遺伝子を導入する工程、及び
(iv) 該合成遺伝子を、該標的遺伝子のmRNA産物の翻訳が変更されるのに十分な時間及び条件の下で、ただし該mRNA産物の転写が専ら抑制又は低減されるのではないことを条件として、該細胞、組織又は器官内で発現させる工程、を含む方法。
(19) 動物の細胞、組織、器官又は生物全体に対しウイルス病原体に対する抵抗性又は免疫を付与する方法であって、ウイルス遺伝子のmRNA産物の翻訳が遅延され又は他の方法で低減されるのに十分な時間及び条件の下で、ただし該mRNA産物の転写が専ら抑制又は低減されるのではないことを条件として、ウイルス病原体由来のヌクレオチド配列又はそれに相補的な配列の縦列反復を含む分散した核酸分子又は外来性核酸分子の1以上を導入する工程を含む方法。
(20) 該ウイルスが動物病原体である(19)記載の方法。
(21) 該ウイルスがBEVである(20)記載の方法。
(22) 該動物の細胞、組織、器官又は生物に対する抵抗性又は免疫を付与するその能力により、該分散した核酸分子(単数又は複数)又は外来性核酸分子(単数又は複数)を選択する工程をさらに含む(19)〜(21)のいずれかに記載の方法。
(23) 動物の細胞、組織、器官又は生物全体に対しウイルス病原体への抵抗性又は免疫を付与する方法であって、
(i) ウイルス病原体由来のヌクレオチド配列又はそれに相補的な配列の縦列反復を含む分散した核酸分子又は外来性核酸分子の1以上を選択する工程、
(ii) 該細胞、組織、器官又は生物全体中で機能し得るプロモーター配列に機能しうるように連結された該分散した核酸分子又は外来性核酸分子を含む合成遺伝子を製造する工程、
(iii) 該合成遺伝子を、該細胞、組織、器官又は生物全体に導入する工程、及び
(iv) ウイルス遺伝子のmRNA産物の翻訳が変更されるのに十分な時間及び条件の下で、ただし該mRNA産物の転写が専ら抑制又は低減されるのではないことを条件として、該細胞、組織又は器官中で該合成遺伝子を発現させる工程、
を含む方法。
(24) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子が、ウイルスのレプリカーゼ、ポリメラーゼ、コートタンパク質又はコート以外のタンパク質の遺伝子をコードするヌクレオチド配列の縦列のコピーを含むものである(19)〜(23)のいずれかに記載の方法。
(25) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子がウイルスポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列の縦列のコピーを含むものである(24)記載の方法。
(26) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子がウイルスのコートタンパク質をコードするヌクレオチド配列の縦列のコピーを含むものである(25)記載の方法。
(27) 動物の細胞、組織、器官又は生物全体の中での標的遺伝子の発現を抑制し、遅延させ又は他の方法で低減させるため、(1)に記載の方法に従って使用される場合の合成遺伝子であって、該動物の細胞、組織、器官又は生物全体中で機能し得るプロモーター配列の制御の下で機能し得るように配置された該標的遺伝子のヌクレオチド配列又はその誘導体又はそれに相補的な配列と実質的に同一なヌクレオチド配列の縦列のコピーを含む分散した核酸分子又は外来性核酸分子を含む合成遺伝子。
(28) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子が、動物の細胞、組織、器官又は生物のゲノムにとって内因性である遺伝配列又は該動物の細胞、組織、器官又は生物の非内因性遺伝子由来の遺伝子配列の縦列逆方向反復及び/又は直列反復を含むものである(27)に記載の合成遺伝子。
(29) 該非内因性遺伝子が動物の細胞、組織、器官又は生物のウイルス病原体に由来するものである(28)に記載の合成遺伝子。
(30) 該非内因性遺伝子が動物ウイルスに由来するものである(29)に記載の合成遺伝子。
(31) 該動物ウイルスがBEVである(30)記載の合成遺伝子。
(32) 該非内因性遺伝子がBEVポリメラーゼ遺伝子に由来するものである(30)に記載の合成遺伝子。
(33) 該プロモーターがCMV−IEプロモーター配列又はSV40プロモーター配列である(32)に記載の合成遺伝子。
(34) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子がブタのα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子の縦列逆方向反復及び/又は直列反復を含むものである(27)又は(28)に記載の合成遺伝子。
(35) 該ブタのα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子がCMVプロモーター配列と機能しうるように連結して配置されているものである(24)に記載の合成遺伝子。
(36) 標的遺伝子のヌクレオチド配列の縦列のコピーが2以上のプロモーター配列に機能しうるように連結されているものである(27)〜(35)のいずれかに記載の合成遺伝子。
(37) 標的遺伝子のヌクレオチド配列の縦列のコピーのそれぞれが空間的に離れたプロモーター配列に機能し得るように連結されているものである(36)に記載の合成遺伝子。
(38) (27)〜(37)のいずれかに記載の合成遺伝子を含む遺伝子構築物。
(39) プラスミドpCMV.BEVx2、プラスミドpCMV.BEV.GFP.VEB、プラスミドpCMV.BEV.SV40L.BEV、及びプラスミドpCMV.BEV.SV40L.VEBを含むリストから選択される(38)に記載の遺伝子構築物。
(40) プラスミドpCMV.Galtx2、及びプラスミドpCMV.Galtx4から選択される(38)に記載の遺伝子構築物。
(41) 動物の細胞、組織、若しくは器官又は生物全体に対しBEVに対する免疫又は抵抗性を付与するための(39)に記載の遺伝子構築物の使用。
(42) そうでなければそれを発現するであろう動物の細胞、組織、器官又は生物全体中でのα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼの発現を遅延させ、抑制し又はその他の方法で低減させるための(40)に記載の遺伝子構築物の使用。
(43) (27)〜(37)のいずれかに記載の合成遺伝子又は(38)〜(40)のいずれかに記載の遺伝子構築物を含む動物の細胞、組織、器官又は生物全体。
【0058】
さらに、本発明は以下の非限定的な実施例を参照することにより記述される。
【実施例1】
【0059】
実施例1.CMVプロモーター配列及び/又はSV40Lプロモーター配列に連結させたBEVポリメラーゼ遺伝子配列を含む遺伝子構築物
1.市販のプラスミド
プラスミドpBluescriptII(SK+)
プラスミドpBluescriptII(SK+)はストラタジーン社から購入でき、LacZプロモーター配列及びlacZ-アルファ転写ターミネーターを含み、その中に構造遺伝子配列の挿入用に多重クローニング部位を備える。このプラスミドはColE1とflの複製起点及びアンピシリン耐性遺伝子をさらに含む。
【0060】
プラスミドpSVL
プラスミドpSVLはファルマシア社から購入でき、SV40後期プロモーター配列の供給源として役立つ。pSVLのヌクレオチド配列もゲンバンク受託番号U13868として一般に入手できる。
【0061】
プラスミドpCR2.1
プラスミドpCR2.1はインビトロゲン社から購入でき、LacZプロモーター配列及びlacZ−α転写ターミネーターを含み、それらの間に構造遺伝子配列の挿入用にクローニング部位を備えている。プラスミドpCR2.1は、ポリメラーゼ連鎖反応の間にTaqポリメラーゼによりしばしば合成されるA−オーバーハングにより核酸断片をクローニングするよう設計されている。この様式でクローニングされたPCR断片は両側に二つのEcoRI部位が隣接している。このプラスミドはColE1とf1の複製起点並びにカナマイシン耐性及びアンピシリン耐性の遺伝子をさらに含む。
【0062】
プラスミドpEGFP-N1・MCS
プラスミドpEGFP-N1・MCS(図1;クローンテック社)は、野生型の緑色蛍光タンパク質(GFP、プラッシェルら,1992、チャルフィーら,1994、イノウエとツジ,1994)をより明るい蛍光に最適化させた赤色シフトした変異体をコードするオープン・リーディング・フレームに機能しうるように連結させたCMV-IEプロモーターを含む。pEGFP-N1・MCSによってコードされたこの特定のGFP変異体はコルマックらにより開示された(1996年)。プラスミドpEGFP-N1・MCSは、CMV-IEプロモーターとGFPのオープン・リーディング・フレームとの間に位置するBglII部位とBamHI部位を含む多重クローニング部位及び多数の他の制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含む。多重クローニング部位にクローニングされた構造遺伝子は、機能的な翻訳開始部位を欠く場合、このような構造遺伝子の配列はタンパク質レベルで発現しない(即ち翻訳されない)けれども、転写レベルでは発現する。多重クローニング部位に挿入された機能的な翻訳開始部位を含む構造遺伝子配列は、GFPをコードする配列と共に枠をそろえてクローニングされる場合、GFP融合ポリペプチドとして発現する。このプラスミドは、CMV-IEプロモーター配列から転写されたmRNAの3'末端の適切なプロセシングを指示するため、GFPのオープン・リーディング・フレームの下流にSV40ポリアデニル化シグナルをさらに含む。このプラスミドは、動物細胞で機能するSV40の複製起点と、カナマイシン、ネオマイシン又はG418で形質転換細胞を選択するためのTn5(図1のKan/neo)に由来するネオマイシン/カナマイシン耐性遺伝子及びHSVチミジン・キナーゼ・ポリアデニル化シグナル(図1のHSV・TKポリ(A))に機能しうるように連結させたSV40初期プロモーター(図1のSV40・EP)を含むネオマイシン耐性遺伝子と、細菌細胞で機能するpUC19の複製起点(図1のpUC・Ori)と、そして一本鎖DNA生産のためのf1の複製起点(図1のf1・Ori)とをさらに含む。
【0063】
2.発現カセット
プラスミドpCMV.cass
プラスミドpCMV.cass(図2)は、CMV-IEプロモーター配列の制御下で構造遺伝子配列を発現させるための発現カセットである。プラスミドpCMV.cassは以下のようにGFPのオープン・リーディング・フレームを欠失させることによりpEGFP-N1・MCSから誘導した。プラスミドpEGFP-N1・MCSをPinAIとNotIで消化し、PfuIポリメラーゼを用いて平滑末端化した後、再連結した。構造遺伝子配列は、PinAI部位を欠くことを除いてpEGFP-N1・MCSの多重クローニング部位と同一である多重クローニング部位を用いてpCMV.cass中へクローニングする。
【0064】
プラスミドpCMV.SV40L.cass
プラスミドpCMV.SV40L.cass(図3)は、CMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列が同方向の転写を指示することができるように、合成のポリA部位と、SalI断片としてプラスミドpCMV.cass(図2)のSalI部位にサブクローニングされたプラスミドpCR.SV40L(図4)に由来するSV40L後期プロモーター配列とを含む。従って、SV40プロモーター配列の5’末端のこの合成ポリ(A)部位は、このプラスミドのCMV-IEプロモーターから発現される構造遺伝子に対する転写ターミネーターとして用いられる。このプラスミドは、SV40後期プロモーターと合成ポリ(A)部位との間に存在する多重クローニング部位により該構造遺伝子の挿入を可能とする(図5)。この多重クローニング部位はCMV-IEプロモーター及びSV40後期プロモーターの後方に位置し、BamHI部位及びBglII部位を含む。
【0065】
プラスミドpCMV.SV40LR.cass
プラスミドpCMV.SV40LR.cassは、CMV-IEプロモーター又はSV40後期プロモーターが望みのままにセンス又はアンチセンスの方向で構造遺伝子又は多重構造遺伝子単位を転写しうるように、SalI断片としてプラスミドpCMV.cass(図2)のSalI部位にサブクローニングされたプラスミドpCR.SV40Lに由来するSV40L後期プロモーター配列を含む。多重クローニング部位は、このプラスミドにおいて反対方向のCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列の間に位置し、構造遺伝子配列の導入を容易にする。このプラスミドから構造遺伝子配列を発現させるためには、このプラスミドで反対方向のCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列との間に位置する転写終結配列はないので、3’末端に位置するそれ自身の転写終結配列が導入されなければならない。pCMV.SV40LR.cassに導入される構造遺伝子配列又は多重構造遺伝子単位は下記のように5’と3’のポリアデニル化シグナルの両方を含むことが好ましい、即ち
(i)構造遺伝子配列又は多重構造遺伝子単位がCMV-IEプロモーター配列からセンスの方向で及び/又はSV40後期プロモーターからアンチセンスの方向で発現される場合5'−ポリアデニル化シグナルはアンチセンスの方向にあり、3'ポリアデニル化シグナルはセンスの方向にあり、そして
(ii) 構造遺伝子配列又は多重構造遺伝子単位がCMV-IEプロモーター配列からアンチセンスの方向で及び/又はSV40後期プロモーターからセンスの方向で発現される場合5'−ポリアデニル化シグナルはセンスの方向にあり、3'ポリアデニル化シグナルはアンチセンスの方向にある。
【0066】
その代わり又はそれに加えて、適切な方向を向いたターミネーター配列は図4に示すようにCMVプロモーター及びSV40Lプロモーターの5'末端に位置しうる。
又は、プラスミドpCMV.SV40LR.cassをさらに改変して、CMV-IEプロモーター又はSV40プロモーターの配列のいずれかからセンス又はアンチセンスの方向でそれらの間に位置する任意の構造遺伝子の発現を促進するよう適切な方向でCMV-IEプロモーター配列とSV40プロモーター配列との間に位置する2つのポリアデニル化シグナルを含む誘導体プラスミドを作成する。本発明は明らかにこのような誘導体を包含する。
又は、適切な方向を向いたターミネーターは、アンチセンス方向の2つのプロモーターのそれぞれが読み込まれた後に転写終結が起こるように、CMVプロモーター及びSV40Lプロモーターの上流に配置することができよう。
【0067】
3.中間構築物
pCR.Bgl-GFP-Bamプラスミド
pCR.Bgl-GFP-Bamプラスミド(図5)は、lacZプロモーターの制御下で機能しうるように配置されたpEGFP-N1・MCSプラスミド(図1)に由来するGFPオープン・リーディング・フレームの内部領域を含む。このプラスミドを作成するために、GFPオープン・リーディング・フレームの領域を増幅プライマーのBgl-GFP(配列番号:1)とGFP-Bam(配列番号:2)とを用いてpEGFP-N1・MCSから増幅し、pCR2.1プラスミドにクローニングした。pCR.Bgl-GFP-Bamプラスミドにおける内部GFPをコードする領域は機能的な翻訳開始コドン及び終始コドンを欠く。
【0068】
pBSII(SK+).EGFPプラスミド
pBSII(SK+).EGFPプラスミド(図6)は、lacZプロモーターの制御下で機能しうるように配置されたpEGFP-N1・MCSプラスミド(図1)に由来するEGFPオープン・リーディング・フレームを含む。このプラスミドを作成するために、pEGFP-N1・MCSのEGFPコード領域をNotI/XhoI断片として切り出し、pBluescriptII(SK+)プラスミドのNotI/XhoIクローニング部位にクローニングした。
【0069】
pCMV.EGFPプラスミド
pCMV.EGFPプラスミド(図7)はCMV-IEプロモーター配列の制御下でEGFP構造遺伝子を発現できる。このプラスミドを作成するため、pBSII(SK+).EGFPプラスミド由来のEGFP配列をBamHI/SacI断片として切り出し、pCMV.cassプラスミド(図2)のBglII/SacI部位にクローニングした。
【0070】
pCR.SV40Lプラスミド
pCR.SV40Lプラスミド(図8)はpCR2.1(ストラタジーン社)にクローニングされたpSVLプラスミド(ゲンバンク受託番号U13868、ファルマシア社)に由来するSV40後期プロモーターを含む。このプラスミドを作成するため、pCMV.cassへの増幅されたDNA断片のサブクローニングを容易にするためのSalIクローニング部位を含むプライマーのSV40-1(配列番号:3)及びSV40-2(配列番号:4)を用いて、SV40後期プロモーターを増幅した。このプライマーは5’末端に合成のポリ(A)部位も含むため、増幅産物はSV40プロモーター配列の5’末端に合成のポリ(A)部位を含む。
【0071】
pCR.BEV.1プラスミド
BEVのRNA依存性RNAポリメラーゼをコードする領域は、標準的な増幅条件の下でBEV-1(配列番号:5)とBEV-2(配列番号:6)と称するプライマーを用いて、同ポリメラーゼをコードする全長cDNAクローンから1385bpのDNA断片として増幅された。増幅されたDNAはBEV-1プライマー配列に由来する5'-BglII制限酵素部位及びBEV-2プライマー配列に由来する3'BamHI制限酵素部位を含んでいた。さらに、BEV-1プライマー配列は15〜17位に遺伝子工学的に導入された翻訳開始シグナル5'-ATG-3’を含むため、増幅されたBEVポリメラーゼ構造遺伝子はBEVポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列とともに枠内に開始部位を含む。こうして、増幅されたBEVポリメラーゼ構造遺伝子はBEVポリメラーゼをコードする配列に対してすぐ上流に(即ち並置して)ATG開始コドンを含む。増幅されたDNAに翻訳終始コドンはない。このプラスミドは図9に示す。
【0072】
pCR.BEV.2プラスミド
完全なBEVポリメラーゼをコードする領域はプライマーのBEV-1とBEV-3を用いて同ポリメラーゼをコードする全長のcDNAクローンから増幅された。プライマーBEV−3は5位から10位までにBamHI制限酵素部位及び11位から13位に翻訳終止シグナルの補完物を含む。結果として、翻訳開始シグナルと翻訳終止シグナルとを含むオープン・リーディング・フレームがBglIIとBamHIの制限部位の間に含められた。この増幅断片をpCR2.1(ストラタジーン社)にクローニングしてpCR2.BEV.2プラスミド(図10)を作成した。
【0073】
pCR.BEV.3プラスミド
翻訳できないBEVポリメラーゼ構造遺伝子を、増幅プライマーのBEV-3(配列番号:7)とBEV-4(配列番号:8)とを用いて全長のBEVポリメラーゼcDNAクローンから増幅した。プライマーBEV-4は5〜10位のBglIIクローニング部位を含み、このBglII部位の下流の配列はBEVポリメラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に相同である。プライマーのBEV-3とBEV-4で増幅されたDNA産物には機能的なATG開始コドンは存在しない。このBEVポリメラーゼはポリタンパク質の一部として発現され、その結果、この遺伝子にATG翻訳開始部位は存在しない。この増幅されたDNAをプラスミドpCR2.1(ストラタジーン社)にクローニングしてpCR.BEV.3プラスミド(図11)を得た。
【0074】
pCMV.EGFP.BEV2プラスミド
pCMV.EGFP.BEV2プラスミド(図12)は、BglII/BamHI断片としてのpCR.BEV.2由来のBEVポリメラーゼ配列をpCMV.EGFPのBamHI部位中へクローニングすることにより作成した。
【0075】
4.対照プラスミド
pCMV.BEV.2プラスミド
pCMV.BEV.2プラスミド(図13)は、CMV-IEプロモーター配列の制御下でBEVポリメラーゼの完全なオープン・リーディング・フレームを発現できる。pCMV.BEV.2を作成するために、pCR.BEV.2由来のBEVポリメラーゼ配列を、BglIIからBamHIまでの断片としてセンス方向でBglII/BamHIで消化したpCMV.cass(図2)中にサブクローニングした。
【0076】
pCMV.BEV.3プラスミド
pCMV.BEV.3プラスミド(図14)は、CMV-IEプロモーター配列の制御の下でセンス方向で翻訳され得ないBEVポリメラーゼ構造遺伝子を発現する。pCMV.BEVntを作成するため、pCR.BEV.3由来のBEVポリメラーゼ配列をBglII/BamHI断片としてセンス方向でBglII/BamHIで消化したpCMV.cass中にサブクローニングした(図2)。
【0077】
pCMV.VEBプラスミド
pCMV.VEBプラスミド(図15)は、CMV-IEプロモーター配列の制御の下でアンチセンスのBEVポリメラーゼのmRNAを発現する。pCMV.VEBプラスミドを作成するため、pCR.BEV.2由来のBEVポリメラーゼ配列をBglIIからBamHIまでの断片としてアンチセンス方向でBglII/BamHIで消化したpCMV.cass(図2)中にサブクローニングした。
【0078】
pCMV.BEV.GFPプラスミド
pCMV.BEV.GFPプラスミド(図16)は、pCR.Bgl-GFP-Bam由来のGFP断片をBglII/BamHI断片として、BamHIで消化したpCMV.BEV.2中にクローニングすることにより構築した。このプラスミドは幾つかの実験における対照として役立ち、そして中間構築物としても役立つ。
【0079】
pCMV.BEV.SV40-L.0プラスミド
pCMV.BEV.SV40-L.0プラスミド(図17)は、pCMV.SV40L.cassプラスミドのCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーターの配列の間にセンス方向で挿入されたpCR.BEV.2由来の翻訳可能なBEVポリメラーゼ構造遺伝子を含む。pCMV.BEV.SV40L-Oプラスミドを作成するため、BEVポリメラーゼ構造遺伝子をBglIIからBamHI断片としてBglIIで消化したpCMV.SV40L.cassDNA中にサブクローニングした。
【0080】
pCMV.O.SV40L.BEVプラスミド
pCMV.O.SV40L.BEVプラスミド(図18)は、pCMV.SV40L.cassプラスミドに存在する縦列のCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列との下流にクローニングされたpCR.BEV.2プラスミドに由来する翻訳可能なBEVポリメラーゼ構造遺伝子を含む。pCMV.O.SV40L.BEVプラスミドを作成するため、BEVポリメラーゼ構造遺伝子をBglIIからBamHIまでの断片としてセンス方向でBamHIで消化したpCMV.SV40L.cass DNA中にサブクローニングした。
【0081】
pCMV.O.SV40L.VEBプラスミド
pCMV.O.SV40L.VEBプラスミド(図19)は、pCMV.SV40L.cassプラスミドに存在する縦列のCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列の下流にクローニングされたpCR.BEV.2プラスミドに由来するアンチセンスのBEVポリメラーゼ構造遺伝子を含む。pCMV.O.SV40L.VEBプラスミドを作成するため、BEVポリメラーゼ構造遺伝子をBglIIからBamHIまでの断片としてアンチセンス方向でBamHIで消化したpCMV.SV.40L.cassDNA中にサブクローニングした。
【0082】
5.試験プラスミド
pCMV.BEVx2プラスミド
pCMV.BEVx2プラスミド(図20)は、CMV-IEプロモーター配列の制御の下で完全なBEVポリメラーゼのオープン・リーディング・フレームの直列反復を含む。少なくとも真核細胞では、CMV-IEプロモーターのより近くに位置するオープン・リーディング・フレームは翻訳可能である。pCMV.BEVx2を作成するために、pCR.BEV.2プラスミド由来のBEVポリメラーゼ構造遺伝子をBglIIからBamHIまでの断片としてセンス方向で既にその中に存在するBEVポリメラーゼ構造遺伝子のすぐ下流にあるBamHIで消化したpCMV.BEV.2中にサブクローニングした。
【0083】
pCMV.BEVx3プラスミド
pCMV.BEVx3プラスミド(図21)は、CMV-1Eプロモーターの制御下でBEVポリメラーゼの三つの完全なオープン・リーディング・フレームの直列反復を含む。pCMV.BEVx3を作成するため、pCR.BEV.2由来のBEVポリメラーゼ断片を、BglII/BamHI断片としてセンス方向で既にその中に存在するBEVポリメラーゼ配列のすぐ下流にあるpCMV.BEVx2のBamHI部位中にクローニングした。
【0084】
pCMV.BEVx4プラスミド
pCMV.BEVx4プラスミド(図22)は、CMV-IEプロモーターの制御の下でBEVポリメラーゼの四つの完全なオープン・リーディング・フレームの直列反復を含む。pCMV.BEVx4を作成するため、pCR.BEV.2由来のBEVポリメラーゼ断片を、BglII/BamHI断片として、センス方向で、既にその中に存在するBEVポリメラーゼ配列のすぐ下流にあるpCMV.BEVx3のBamHI部位中にクローニングした。
【0085】
pCMV.BEV.SV40L.BEVプラスミド
pCMV.BEV.SV40L.BEVプラスミド(図23)は、機能しうるように配置され且つそれぞれCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列の制御の下にある二つのBEVポリメラーゼ構造遺伝子を含む多重構造遺伝子単位を含む。pCMV.BEV.SV40L.BEVプラスミドを作成するため、pCR.BEV.2に存在する翻訳可能なBEVポリメラーゼ構造遺伝子を、BglIIからBamHIまでの断片としてセンス方向で、BamHIで消化したpCMV.BEV.SV40L-Oに存在するSV40後期プロモーター配列の後方にサブクローニングした。
【0086】
pCMV.BEV.SV40L.VEBプラスミド
pCMV.BEV.SV40L.VEBプラスミド(図24)は、機能しうるように配置され且つそれぞれCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列の制御の下にある二つのBEVポリメラーゼ構造遺伝子を含む多重構造遺伝子単位を含む。pCMV.BEV.SV40L.VEBプラスミドを作成するため、pCR.BEV.2に存在する翻訳可能なBEVポリメラーゼ構造遺伝子を、BglIIからBamHIまでの断片としてアンチセンス方向で、BamHIで消化したpCMV.BEV.SV40L-Oに存在するSV40後期プロモーター配列の後方にサブクローニングした。このプラスミドでは、BEVポリメラーゼ構造遺伝子はCMV-IEプロモーターの制御の下でセンス方向で発現して翻訳可能なmRNAを産生する一方、このBEVポリメラーゼ構造遺伝子はSV40プロモーターの制御の下でも発現してアンチセンスのmRNA種を産生する。
【0087】
pCMV.BEV.GFP.VEBプラスミド
pCMV.BEV.GFP.VEBプラスミド(図25)は、逆反復の各BEV構造遺伝子配列間にGFPオープン・リーディング・フレーム(スタッファー断片)の挿入によって分断されたBEV構造遺伝子の逆反復即ちパリンドロームを含む。pCMV.BEV.GFP.VEBプラスミドを作成するため、pCR.Bgl-GFP-Bam由来のGFPスタッファー断片を、まずBglIIからBamHIまでの断片としてBamHIで消化したpCMV.BEV.2中にセンス方向でサブクローニングしてpCMV.BEV.GFP中間プラスミドを得た。該BEVポリメラーゼをコードする配列と該GFPをコードする配列とは5'-BglIIからBamHI-3'までの同じ断片内に含まれる。次に、pCMV.BEV.2由来のBEVポリメラーゼ構造遺伝子を、BglIIからBamHIまでの断片としてアンチセンス方向で、BamHIで消化したpCMV.BEV.GFP中にクローニングした。pCMV.BEV.GFP.VEBプラスミドのCMV-IEプロモーター配列により近いBEVポリメラーゼ構造遺伝子は少なくとも真核細胞中で翻訳され得る。
【0088】
pCMV.EGFP.BEV2.PFGプラスミド
pCMV.EGFP.BEV2.PFGプラスミド(図26)は、逆反復の各GFP構造遺伝子の間にBEVポリメラーゼ配列を挿入することによって分断されたGFPパリンドロームを含む。このプラスミドを作成するため、pCR.Bgl-GFP-Bam由来のGFP断片を、BglII/BamHI断片として、CMVプロモーターに関してアンチセンス方向で、pCMV.EGFP.BEV2のBamHI部位中にクローニングした。
【0089】
pCMV.BEV.SV40LRプラスミド
pCMV.BEV.SV40LRプラスミド(図27)は、機能しうるように配置され且つ反対方向のCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列により別々に制御されている完全なBEVポリメラーゼのオープン・リーディング・フレームを含む構造遺伝子を含み、それにより、全長のBEVポリメラーゼ構造遺伝子の少なくとも両方の鎖に由来するBEVポリメラーゼの転写産物を潜在的に生産可能である。pCMV.BEV.SV40LRプラスミドを作成するために、pCR.BEV.2に存在する翻訳可能なBEVポリメラーゼ構造遺伝子を、BglIIからBmHIまでの断片として、BEVのオープン・リーディング・フレームがCMV-IEプロモーター配列に関してセンス方向に存在するように、pCMV.SV40LR.cassの唯一つのBglII部位にサブクローニングした。
【0090】
当業者は、このクローニング戦略を用いて、pCR.BEV.2に由来するBEVポリメラーゼ断片がCMV-IEプロモーター配列に関してアンチセンス方向に挿入されているプラスミドを作成することが可能であることを認めるはずである。本発明はこのような遺伝的構築物をも包含する。
【実施例2】
【0091】
実施例2.CMVプロモーター配列及び/又はSV40Lプロモーター配列に機能しうるように連結されたブタのα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ(Galt)構造遺伝子の配列又は配列群を含む遺伝子構築物
1.市販のプラスミド
pcDNA3プラスミド
pcDNA3プラスミドは、インビトロゲン社から購入でき、CMV-IEプロモーター及びBGHpA転写ターミネーターを含み、構造遺伝子配列を挿入するための多重クローニング部位を備えている。さらに、このプラスミドはColE1とflの複製起点及びネオマイシン耐性とアンピシリン耐性の遺伝子を含む。
【0092】
2.中間プラスミド
pcDNA3.Galtプラスミド
pcDNA3.Galtプラスミド(ブレサゲン社、南オーストラリア州、オーストラリア、図28)はpcDNA3プラスミド(インビトロゲン社)であり、CMV-IEプロモーター配列の制御の下で機能しうるブタのアルファ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ(Galt)遺伝子をコードするcDNA配列を含むので、Galtが該プラスミドから発現され得る。pcDNA3.Galtプラスミドを作成するために、ブタのアルファ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子のcDNAをEcoRI断片としてpcDNA3のEcoRIクローニング部位中にクローニングした。このプラスミドはColE1とf1の複製起点及びネオマイシンとアンピシリンの耐性遺伝子をさらに含む。
【0093】
3.対照プラスミド
pCMV.Galtプラスミド
pCMV.Galtプラスミド(図29)はCMV-IEプロモーター配列の制御の下でGalt構造遺伝子を発現することができる。pCMV.Galtプラスミドを作成するため、pcDNA3.Galtプラスミド由来のGalt配列をEcoRI断片として切り出し、pCMV.cassプラスミド(図2)のEcoRI部位にセンス方向でクローニングした。
【0094】
pCMV.EGFP.Galtプラスミド
pCMV.EGFP.Galtプラスミド(図30)はCMV-IEプロモーター配列の制御の下でGalt融合ポリペプチドとしてGalt構造遺伝子を発現できる。pCMV.EGFP.Galtプラスミドを作成するため、pCMV.Galt(図29)由来のGalt配列をBglII/BamHI断片として切り出し、pCMV.EGFPのBamHI部位中にクローニングした。
【0095】
pCMV.Galt.GFPプラスミド
pCMV.Galt.GFPプラスミド(図31)は、Galt・cDNAをpCDNA3由来のEcoRI断片としてセンス方向でEcoRIで消化したpCMV.EGFP中にクローニングすることにより作成した。このプラスミドは対照としても中間構築物としても役立つ。
【0096】
pCMV.Galt.SV40L.Oプラスミド
pCMV.Galt.SV40L.Oプラスミド(図32)は、pCMV.SV40L.cassに存在するCMVプロモーターの下流にクローニングされたGalt構造遺伝子を含む。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt・cDNA断片を、BglII/BamHIとしてBglIIで消化したpCMV.SV40L.cass中にセンス方向でクローニングした。
【0097】
pCMV.O.SV40L.tlaGプラスミド
pCMV.O.SV40L.tlaGプラスミド(図33)は、pCMV.SV40L.cassに存在するSV40Lプロモーターの下流にアンチセンス方向でGalt構造遺伝子クローンを含む。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt・cDNA断片を、BglII/BamHIとしてBamHIで消化したpCMV.SV40L.cass中にアンチセンス方向でクローニングした。
【0098】
pCMV.O.SV40L.Galtプラスミド
pCMV.O.SV40L.Galtプラスミド(図34)は、pCMV.SV40L.cassに存在するSV40Lプロモーターの下流にクローニングされたGalt構造遺伝子を含む。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt・cDNA断片を、BglII/BamHI断片としてBamHIで消化したpCMV.SV40L.cass中にセンス方向でクローニングした。
【0099】
4.試験プラスミド
pCMV.Galtx2プラスミド
pCMV.Galtx2プラスミド(図35)は、CMV-IEプロモーター配列の制御の下にGaltオープン・リーディング・フレームの直列反復を含む。少なくとも真核細胞において、CMV-IEプロモーターのより近くに位置するオープン・リーディング・フレームは翻訳可能である。pCMV.Galtx2を作成するため、pCMV.Galt由来のGalt構造遺伝子を、BglII/BamHI断片として切り出し、pCMV.GaltのBamHIクローニング部位中にセンス方向でクローニングした。
【0100】
pCMV.Galtx4プラスミド
pCMV.Galtx4プラスミド(図36)は、CMV-IEプロモーター配列の制御の下にGaltオープン・リーディング・フレームの四つの直列反復を含む。少なくとも真核細胞において、CMV-IEプロモーターのより近くに位置するオープン・リーディング・フレームは翻訳可能である。pCMV.Galtx4を作成するため、pCMV.Galtx2由来のGaltx2配列を、BglII/BamHI断片として切り出し、pCMV.Galtx2のBamHIクローニング部位中にセンス方向でクローニングした。
【0101】
pCMV.Galt.SV40L.Galtプラスミド
pCMV.Galt.SV40L.Galtプラスミド(図37)は、Galtの二つのセンスの転写産物を発現するよう設計される。すなわち、一方はCMVプロモーターにより駆動されたものであり、他方はSV40Lプロモーターにより駆動されたものである。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt・cDNA断片をBglII/BamHI断片としてBglIIで消化したpCMV.O.SV40.Galt中にセンス方向でクローニングした。
【0102】
pCMV.Galt.SV40L.tlaGプラスミド
pCMV.Galt.SV40L.tlaGプラスミド(図38)は、CMVプロモーターにより駆動されGaltのセンスの転写産物を発現し、かつ、SV40Lプロモーターにより駆動されアンチセンスの転写産物を発現するように設計される。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt・cDNA断片をBglII/BamHI断片としてBglIIで消化したpCMV.O.SV40.tlaG中にセンス方向でクローニングした。
【0103】
pCMV.Galt.GFP.tlaGプラスミド
pCMV.Galt.GFP.tlaGプラスミド(図39)は、逆反復の各Galt構造遺伝子の間がGFP配列の挿入により分断されたGaltパリンドロームを含む。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt・cDNAを、BglII/BamHI断片として、pCMV.Galt.GFPのBamHI部位にCMVプロモーターに関してアンチセンス方向でクローニングした。
【0104】
pCMV.EGFP.Galt.PFGプラスミド
pCMV.EGFP.Galt.PFGプラスミド(図40)は、逆反復の各GFP構造遺伝子の間がGalt配列の挿入により分断されたGFPパリンドロームを含み、その発現はCMVプロモーターにより駆動される。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt配列を、BglII/BamHI断片としてBamHIで消化したpCMV.EGFPにセンス方向でクローニングして中間体のpCMV.EGFP.Galt(未表示)を作成し、その後、pCR.Bgl-pCMV.EGFP.Galt由来のGFP配列をアンチセンス方向でさらにクローニングした。
【0105】
pCMV.Galt.SV40LRプラスミド
pCMV.Galt.SV40LRプラスミド(図41)は、pCMV.SV40LR.cass発現カセットにおいて反対方向のCMVプロモーターとSV40Lプロモーターとの間にクローニングされたGalT・cDNA配列を発現するように設計される。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt配列をBglII/BamHI断片としてBglIIで消化したpCMV.SV40LR.cassに35Sプロモーターに関してセンス方向でクローニングした。
【実施例3】
【0106】
実施例3.35Sプロモーター配列及び/又はSCBVプロモーター配列に機能しうるように連結させたPVY・Nia配列を含む遺伝子構築物
1.二元ベクター
pART27プラスミド
pART27プラスミドは二元ベクターであり、pART27発現カセットに適合するよう特別に設計されている。これは、大腸菌とアグロバクテリウム・ツメファシエンスの両方の細菌の複製起点、細菌の選択用のスペクティノマイシン耐性遺伝子、アグロバクテリウムから植物細胞へのDNA転移用の左側及び右側のT-DNA境界領域、及び形質転換した植物細胞を選択するためのカナマイシン耐性カセットを含む。カナマイシン耐性カセットは両T-DNA境界領域の間に位置し、pART27は、両T-DNA境界領域の間にクローニングされるべきpART7などのベクター中で調製された構築物のクローニングを可能とする唯一のNotI制限部位をも含む。pART27の構築はグリーブ、エイ.ピー.(1992年)に記述されている。
【0107】
このベクターにNotI挿入物をクローニングする場合、二つの挿入方向が得られ得る。以下の実施例全てにおいて、前記pART7構築物における35Sプロモーターの方向に関して同じ挿入方向を選択した。これは、異なる挿入方向をもつ異なる構築物の比較から生じうる実験上の人工産物を最小限にするために行った。
【0108】
2.市販のプラスミド
pBC(KS-)プラスミド
pBC(KS-)プラスミドはストラタジーン社から購入でき、構造遺伝子配列の挿入用の多重クローニング部位を備え、LacZプロモーター配列及びlacZ-アルファ転写ターミネーターを含む。このプラスミドはColE1とf1の複製起点及びクロラムフェニコール耐性遺伝子をさらに含む。
【0109】
pSP72プラスミド
pSP72プラスミドはプロメガ社から購入でき、構造遺伝子配列の挿入用の多重クローニング部位を含む。さらに、このプラスミドはColE1の複製起点及びアンピシリン耐性遺伝子を含む。
【0110】
3.発現カセット
pART7プラスミド
pART7プラスミドは35Sプロモーターの後方にクローニングされた配列の発現を駆動するよう設計された発現カセットである。これはクローニングを助けるためのポリリンカー及びオクティピンシンターゼのターミネーター領域を含む。35S発現カセットの両側は、唯一のNotI部位を含むpART27のような二元発現ベクターへのクローニングを行える二つのNotI制限部位が隣接している。この構築はグリーブ、エイ.ピー.(1992年)に記載され、地図は図42に示す。
【0111】
pART7.35S.SCBV.cassプラスミド
p35S.CMV.cassプラスミドは、一つのプラスミド中にクローニングされる二つの異なる遺伝子配列を発現するよう設計された。このプラスミドを作成するため、nosターミネーターとSCBVプロモーターに対応する配列をPCRにより増幅した後、35SプロモーターとOCSとの間にあるpART7のポリリンカーにクローニングした。
得られるプラスミドは以下の因子の配列を有する。
35Sプロモーター−ポリリンカー1−NOSターミネーター−SCBVプロモーター−ポリリンカー2−OCSターミネーター。
ポリリンカー1にクローニングされた配列の発現は35Sプロモーターにより制御され、ポリリンカー2にクローニングされた配列の発現はSCBVプロモーターにより制御される。
【0112】
NOSターミネーター配列は下記の二つのオリゴヌクレオチドを用いてpAHC27プラスミド(クリステンセンとクエイル,1996年)から増幅した。
NOS5'(前向きプライマー、配列番号:9)
5'-GGATTCCCGGGACGTCGCGAATTTCCCCCGATCGTTC−3'、及び
NOS3'(逆向きプライマー、配列番号:10)
5'-CCATGGCCATATAGGCCCGATCTAGTAACATAG-3'。
【0113】
NOS5'の1から17とNOS3'の1から15のヌクレオチド残基は、さらなる制限部位を加えることによる構築物調製を補助するよう設計された付加的なヌクレオチドを表す。NOS5'では、これらはBamHI、SmaI、AatII及びNruI部位の最初の4塩基であり、NOS3'では、これらはNcoIとSfiI部位である。各オリゴヌクレオチドに対する残りの配列は、pAHC27におけるNOS配列の5’末端と3’末端にそれぞれ相同である。
【0114】
SCBVプロモーター配列は下記の二つのオリゴヌクレオチドを用いてpScBV-20プラスミド(トザファーら,1998年)から増幅した。
SCBV5':5'−CCATGGCCTATATGGCCATTCCCCACATTCAAG−3’(配列番号:11)、及び
SCBV3':5'−AACGTTAACTTCTACCCAGTTCCAGAG−3’(配列番号:12)。
【0115】
SCBV5'の1から17のヌクレオチド残基は構築物の調製を助けるよう設計されたNcoIとSfiIの制限部位をコードし、残りの配列はSCMVプロモーター領域の上流配列に相同である。SCBV3'の1から9のヌクレオチド残基は構築物の調製を助けるよう設計されたPsp10461とHpaIの制限部位をコードし、残りの配列はSCBVの転写開始部位近くにある配列の逆向きかつ相補的配列に相同である。
PCRを用いてpScBV-20から増幅された配列及びpScBV-20をpCR2.1(インビトロゲン社)にクローニングして得られた配列は、それぞれpCR.NOSとpCR.SCBVであった。SmaI/SfiIで切断したpCR.NOSとSfiI/HpaIで切断したpCR.SCBVをSmaIで切断したpART7に連結し、適切な方向をもつプラスミドを選択してpART7.35S.SCBV.cassと名づけた。この構築物の地図は図43に示す。
【0116】
4.中間構築物
pBC.PVYプラスミド
PVYゲノムの領域は鋳型としてPVYに感染したタバコから単離された逆転写RNAを用いて標準的なプロトコルでPCRにより増幅し、pGEM3(ストラタジーン社)プラスミド中にクローニングしてpGEM.PVYを作成した。PVY株O配列(受託番号D12539、ゲンバンク)の1536〜2270位のSalI/HindIII 断片に対応するpGEM.PVY由来のSalI/HindIII 断片を次にpBCプラスミド(ストラタジーン社)にサブクローニングしてpBC.PVY(図44)を作成した。
【0117】
pSP72.PVYプラスミド
pSP72.PVYプラスミドは、EcoRI/SalIで切断したpSP72(プロメガ社)中にpBC.PVY由来のEcoRI/SalI断片を挿入することにより調製した。この構築物はPVY挿入物を挟んで両側にさらなる制限部位を含んでいる。これらの制限部位は後の操作を助けるために用いられた。この構築物の地図は図45に示す。
【0118】
ClapBC.PVYプラスミド
Cla・pBC.PVYプラスミドは、pSP72.PVY由来のClaI/SalI断片をClaI/SalIで切断したpBC(ストラタジーン社)中に挿入することにより調製した。この構築物はPVY挿入物を挟んで両側にさらなる制限部位を含む。これらの制限部位は後の操作を助けるために用いられた。この構築物の地図は図46に示す。
【0119】
pBC.PVYx2プラスミド
pBC.PVYx2プラスミドはpBC.PVYに由来するPVY配列の二つの直列の頭−尾反復を含む。このプラスミドはAccIで切断したpBC.PVY中にpSP72.PVY由来のAccI/ClaI・PVY断片をクローニングすることにより作成した。このプラスミドは図47に示す。
【0120】
pSP72.PVYx2プラスミド
pSP72.PVYx2プラスミドはpBC.PVYに由来するPVY配列の二つの直列の頭−尾反復を含む。このプラスミドはAccIで切断したpSP72.PVY中にpBc.PVY由来のAccI/ClaI・PVY断片をクローニングすることにより作成した。このプラスミドは図48に示す。
【0121】
pBC.PVYx3プラスミド
pBC.PVYx3プラスミドはpBC.PVYに由来するPVY配列の三つの直列の頭−尾反復を含む。このプラスミドはAccIで切断したpBC.PVYx2中にpSP72.PVY由来のAccI/ClaI・PVY断片をクローニングすることにより調製した。このプラスミドは図49に示す。
【0122】
pBC.PVYx4プラスミド
pBC.PVYx4プラスミドはpBC.PVYに由来するPVY配列の四つの直列の頭−尾反復を含む。このプラスミドはAccIで切断したpBC.PVYx2中にAccI/ClaI断片としてのpSP72.PVYx2由来のPVY配列の直列反復をクローニングすることにより調製した。このプラスミドは図50に示す。
【0123】
pBC.PVY.LNYVプラスミド
PVY配列の直列のパリンドロームを作成する試みは全て失敗した。おそらくこのような配列の配置は広く使用されている大腸菌のクローニング宿主では不安定らしい。しかしながら、分断されたパリンドロームは安定であることが分かった。
【0124】
PVY配列の分断されたパリンドロームを作成するために、約360bpの「スタッファー」断片をPVY配列の下流のCla・pBV.PVY中に挿入した。このスタッファー断片はつぎのように作製した。
4bのウイルス遺伝子を含むことが知られているレタス・ネクロッティック・イエローズ・ウイルス(LNYV)のゲノムRNA(ダイツゲンら,1989年)から調製されたcDNAライブラリーから当初得られたクローンを下記のプライマーを用いてPCRにより増幅した。
LNYV1:5'−ATGGGATCCGTTATGCCAAGAAGAAGGA−3'(配列番号:13)、及び
LNYV2:5'−TGTGGATCCCTAACGGACCCGATG−3'(配列番号:14)。
これらのプライマーの最初の9ヌクレオチドはBamHI部位をコードし、残りのヌクレオチドはLNYVの4bの遺伝子配列に相同である。
増幅後、この断片をpCR2.1(ストラタジーン社)のEcoRI部位にクローニングした。このEcoRI断片をCla・pBC.PVYのEcoRI部位にクローニングして図51に示すpBC.PVY.LNYV中間プラスミドを作成した。
【0125】
pBC.PVY.LNYV.PVYプラスミド
pBC.PVY.LNYV.PVYプラスミドはPVY配列の分断された直列反復を含む。このプラスミドを作成するために、SmaIで消化したpBC.PVY.LNYV中にpSP72由来のHpaI/HincII断片をクローニングし、センス方向をもつプラスミドを単離した。この構築物の地図は図52に示す。
【0126】
pBC.PVY.LNYV.YVPΔプラスミド
pBC.PVY.LNYV.YVPΔプラスミドはPVY配列の部分的に分断されたパリンドロームを含む。パリンドロームの一方のアームはpBC.PVY由来のPVY全配列を含み、他方のアームはpSP72.PVYのEcoRV部位とHincII部位間の配列に対応する、PVY由来の該配列の一部を含む。このプラスミドを作成するために、pSP72.PVY由来のEcoRV/HincII断片を、SmaIで消化したpBC.PVY.LNYV中にクローニングし、所望の方向をもつプラスミドを単離した。この構築物の地図は図53に示す。
【0127】
pBC.PVY.LNYV.YVPプラスミド
pBC.PVY.LNYV.YVPプラスミドはPVY配列の分断されたパリンドロームを含む。このプラスミドを作成するために、SmaIで消化したpBC.PVY.LNYV中にpSP72.由来のHpaI/HincII断片をクローニングし、アンチセンス方向をもつプラスミドを単離した。この構築物の地図は図54に示す。
【0128】
5.対照プラスミド
pART7.PVYプラスミド及びpART27.PVYプラスミド
pART7.PVYプラスミド(図55)は35Sプロモーターにより駆動されるPVY配列を発現するよう設計された。このプラスミドは、他の全ての構築物がそれと比較される、これらの実験での対照構築物として役立つ。このプラスミドを作成するため、ClaIで消化したpART7中にClapBC.PVY由来のClaI/AccI断片をクローニングし、PVYゲノムに関してセンスのPVY配列を発現することが予期されるプラスミドが選択された。35Sプロモーター、PVY配列及びOCSターミネーターから成る配列をNotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを選択してpART27.PVYと名づけた。
【0129】
pART7.35S.PVY.SCBV.Oプラスミド及びpART27.35S.PVY.SCBV.Oプラスミド
pART7.35S.PVY.SCBV.Oプラスミド(図56)を、トランスジェニック植物における1個のプラスミドからの多重構築物の共発現のための対照として役立つよう設計した。35SプロモーターはPVYのセンス配列を発現するよう設計し、一方、SCBVプロモーターは空とした。このプラスミドを作成するため、Cla・pBC.PVY由来のPVY断片を、XhoI/EcoRI断片として、XhoI/EcoRIで消化したpART7.35S.SCBV.cass中にクローニングしてp35S.PVY.SCBV.Oを作成した。センスのPVY配列を駆動する35Sプロモーター及びNOSターミネーター、及びSCBVプロモーター、及びOCSターミネーターから成る配列を、NotI断片として切り出し、pART27中にクローニングして所望の挿入方向を持つプラスミドを単離しpART27.35S.PVY.SCBV.Oと名づけた。
【0130】
pART7.35S.O.SCBV.PVYプラスミド及びpART27.35S.O.SCBV.PVYプラスミド
pART7.35S.O.SCBV.PVYプラスミド(図57)は、トランスジェニック植物における1個のプラスミドからの多重構築物の共発現のためのさらなる対照として作用するよう設計された。35Sプロモーターの後方に発現可能な配列はクローニングせず、一方、SCBVプロモーターはPVYのセンス断片の発現を駆動した。このプラスミドを作成するため、Cla・pBC.PVY由来のPVY断片を、ClaI断片として、ClaIで消化したpART7.35S.SCBV.cass中にクローニングし、センス方向にPVY配列を含むプラスミドを単離してp35S.O.SCBV.PVYと名付けた。35Sプロモーター及びNOSターミネーター、及びセンスのPVY配列を駆動するSCBVプロモーター及びOCSターミネーターから成る配列をNotI断片として切り出し、pART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを単離してpART27.35S.O.SCBV.PVYと名づけた。
【0131】
pART7.35S.O.SCBV.YVPプラスミド及びpART27.35S.O.SCBV.YVPプラスミド
pART7.35S.O.SCBV.YVPプラスミド(図58)を、トランスジェニック植物における1個のプラスミドからの多重構築物の共発現のためのさらなる対照として作用するよう設計した。発現可能な配列は35Sプロモーターの後方にはクローニングせず、一方、SCBVプロモーターはPVYのアンチセンス断片の発現を駆動した。このプラスミドを作成するため、Cla・pBC.PVY由来のPVY断片を、ClaI断片として、ClaIで消化したp35S.SCBV.cass中にクローニングし、アンチセンス方向にPVY配列を含むプラスミドを単離し、p35S.O.SCBV.YVPと名付けた。35Sプロモーター及びNOSターミネーター、及びセンスのPVY配列を駆動するSCBVプロモーター、及びOCSターミネーターから成る配列を、NotI断片として切り出し、pART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを単離してpART27.35S.O.SCBV.YVPと名づけた。
【0132】
6.試験プラスミド
pART7.PVYx2プラスミド及びpART27.PVYx2プラスミド
pART7.PVYx2プラスミド(図59)は、トランスジェニック植物で35Sプロモーターにより駆動されるPVY配列の直列反復を発現するよう設計された。このプラスミドを作成するため、pBC.PVYx2由来の直列反復を、XhoI/BamHI断片として、XhoI/BamHIで切断したpART7中にクローニングした。35Sプロモーター、PVYの直列反復、及びOCSターミネーターから成る配列を、pART7.PVYx2からNotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを選択してpART27.PVYx2と名づけた。
【0133】
pART7.PVYx3プラスミド及びpART27.PVYx3プラスミド
pART7.PVYx3プラスミド(図60)は、トランスジェニック植物で35Sプロモーターにより駆動される三つのPVY配列の直列反復を発現するよう設計された。このプラスミドを作成するため、pBC.PVYx3由来の直列反復を、XhoI/BamHI断片として、XhoI/BamHIで切断したpART7中にクローニングした。35Sプロモーター、PVYの直列反復、及びOCSターミネーターから成る配列を、pART.PVYx3からNotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを選択してpART27.PVYx3と名づけた。
【0134】
pART7.PVYx4プラスミド及びpART27.PVYx4プラスミド
pART7.PVYx4プラスミド(図61)は、トランスジェニック植物で35Sプロモーターにより駆動される四つのPVY配列の直列反復を発現するよう設計された。このプラスミドを作成するため、pBC.PVYx4由来の直列反復を、XhoI/BamHI断片として、XhoI/BamHIで切断したpART7中にクローニングした。35Sプロモーター、PVYの直列反復、及びOCSターミネーターから成る配列を、pART7.PVYx3からNotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを選択してpART27.PVYx3と名づけた。
【0135】
pART7.PVY.LNYV.PVYプラスミド及びpART27.PVY.LNYV.PVYプラスミド
pART7.PVY.LNYV.PVYプラスミド(図62)は、トランスジェニック植物で35Sプロモーターにより駆動される、PVY配列の分断された直列反復を発現するよう設計された。この構築物は、pBC.PVY.LNYV.PVY由来のPVYの分断された直列反復を、XhoI/XbaI断片として、XhoI/XbaIで消化したpART7中にクローニングすることにより調製した。35Sプロモーター、PVY配列の分断された直列反復、及びOCSターミネーターから成る配列を、pART7.PVY.LNYV.PVYからNotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを選択してpART27.PVY.LNYV.PVYと名づけた。
【0136】
pART7.PVY.LNYV.YVPΔプラスミド及びpART27.PVY.LNYV.YVPΔプラスミド
pART7.PVY.LNYV.YVPΔプラスミド(図63)は、トランスジェニック植物で35Sプロモーターにより駆動されるPVY配列の部分的に分断されたパリンドロームを発現するよう設計された。この構築物は、pBC.PVY.LNYV.YVPΔ由来のPVY配列の部分的に分断されたパリンドロームを、XhoI/XbaI断片として、XhoI/XbaIで消化したpART7中にクローニングすることにより調製した。35Sプロモーター、PVY配列の部分的に分断されたパリンドローム、及びOCSターミネーターから成る配列を、pART7.PVY.LNYV.YVPΔからNotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを選択してpART27.PVY.LNYV.YVPΔと名づけた。
【0137】
pART7.PVY.LNYV.YVPプラスミド及びpART27.PVY.LNYV.YVPプラスミド
pART7.PVY.LNYV.YVPプラスミド(図64)は、トランスジェニック植物で35Sプロモーターにより駆動されるPVY配列の分断されたパリンドロームを発現するよう設計された。この構築物は、pBC.PVY.LNYV.YVPΔ由来のPVY配列の分断されたパリンドロームを、XhoI/XbaI断片として、XhoI/XbaIで消化したpART7中にクローニングすることにより調製した。35Sプロモーター、PVY配列の分断されたパリンドローム、及びOCSターミネーターから成る配列を、pART7.PVY.LNYV.YVPからNotI断片として切り出し、pART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを選択してpART27.PVY.LNYV.YVPと名づけた。
【0138】
pART7.35S.PVY.SCBV.YVPプラスミド及びpART27.35S.PVY.SCBV.YVPプラスミド
pART7.35S.PVY.SCBV.YVPプラスミド(図65)は、トランスジェニック植物でセンス構築物とアンチセンス構築物を共発現するよう設計された。このプラスミドを作成するため、Cla・pBC.PVY由来のPVY断片を、XhoI/EcoRI断片として、XhoI/EcoRIで消化したp35S.SCBV.O.SCBV.YVP中にクローニングした。センスのPVY配列を駆動する35Sプロモーター、及びNOSターミネーター、及びアンチセンスのPVYを駆動するSCBVプロモーター、及びOCSターミネーターから成る配列を、NotI断片として切り出し、pART27にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを単離してpART27.35S.PVY.SCBV.YVPと名づけた。
【0139】
pART7.35S.PVYx3.SCBV.YVPx3プラスミド及びpART27.35S.PVYx3.SCBV.YVPx3プラスミド
pART7.35S.PVYx3.SCBV.YVPx3プラスミド(図66)は、トランスジェニック植物でPVYのセンス反復とアンチセンス反復を共発現するよう設計された。このプラスミドを作成するため、ClapBC.PVYx3由来の三重直列PVY反復を、ClaI/AccI断片として、ClaIで消化したp35S.SCBV.cass中にクローニングし、アンチセンス方向をもつプラスミドを単離することにより、中間体のpART7.35S.O.SCBV.YVPx3を構築した。p35S.PVYx3.SCBV.YVPx3のため、Cla・pBC.PVYx3由来の三重直列PVY反復を、KpnI/SmaI断片として、KpnI/SmaIで消化したp35S.O.SCBV.YVPx3中にクローニングしてp35S.PVYx3.SCBV.YVPx3を作成した。両方のプロモーターとターミネーター、及び直列のPVY反復を含む配列を、NotI断片として単離し、pART27中にクローニングした。適切な方向を持つプラスミドを選択してpART27.35S.PVYx3.SCBV.YVPx3と名づけた。
【0140】
pART7.PVYx3.LNYV.YVPx3プラスミド及びpART27.PVYx3.LNYV.YVPx3プラスミド
pART7.PVYx3.LNYV.YVPx3プラスミド(図67)は、分断されたパリンドロームとしてのPVY配列の三重反復を発現するよう設計された。このプラスミドを作成するため、pBC.PVY.LNYV.YVP由来のPVY.LNYV.YVP断片を、AccI/ClaI断片として、pART7.PVYx2.pART7.35S.PVYx3.LNYV.YVPx3プラスミド中にクローニングすることにより中間体のpART7x3.PVY.LNYV.YVを構築し、この中間構築物に、pBC.PVYx2由来のさらなるPVY直列反復を、AccI/ClaI断片として、ClaIで消化したpART7x3.PVY.LNYV.YVP中にクローニングした。35Sプロモーター,全PVY配列、及びOCSターミネーターを含むpART7.35S.PVYx3.LNYV.YVPx3由来の配列を、NotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングした。適切な方向を持つプラスミドを選択してpART27.35S.PVYx3.LNYV.YVPx3と名づけた。
【0141】
プラスミドpART7.PVYmulti及びプラスミドpART27.PVYmulti
プラスミドpART7.35S.PVYmulti(図68)はトランスジェニック植物でより高いオーダーのPVY配列の直列反復領域を発現するよう設計された。PVYに由来する72bpのPVY・Nia領域のより高いオーダーの直列反復は、以下の二つの一部相補的なオリゴヌクレオチドをアニーリングすることにより調製した。
PVY1:
5'-TAATGAGGATGATGTCCCTACCTTTAATTGGCAGAAATTTCTGTGGAAAGACAGGGAAATCTTTCGGCATTT-3'(配列番号:15)、及び
PVY2:
5'-TTCTGCCAATTAAAGGTAGGGACATCATCCTCATTAAAATGCCGAAAGATTTCCCTGTCTTTCCACAGAAAT-3'(配列番号:16)。
【0142】
このオリゴヌクレオチドをT4ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化し、加熱し、ゆっくり冷却して自己アニーリングさせ、T4DNAリガーゼで連結し、クレノウポリメラーゼで末端を充填し、pCR2.1(インビトロゲン社)中にクローニングした。多重反復を含むプラスミドを単離し、この配列をEcoRI断片として、EcoRIで消化したpART7中にセンス方向でクローニングして中間体のpART7.PVYmultiを作成した。pART27.PVYmultiを作成するため、35Sプロモーター、PVY配列、及びOCSターミネーターをNotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングした。適切な挿入方向をもつプラスミドを単離してpART27.PVYmultiと名付けた。
【実施例4】
【0143】
実施例4.哺乳類におけるウイルス遺伝子の発現の不活性化
ウイルスの免疫系統は安定に形質転換した細胞株でウイルス配列を発現することにより生じる。
特に、このアプローチには溶菌ウイルスが用いられる。その理由は、細胞の溶解は非常に単純な篩を提供し、且つウイルス免疫を生じうる極めてまれな形質転換事象を直接選択することを可能とするからである。単純な一本鎖RNAウイルス(ウシ・エンテロウイルス−BEV)又は複雑な二本鎖DNAウイルスのI型単純ヘルペスウイルス(HSVI)に由来するサブゲノムの断片を適切なベクターにクローニングし、形質転換細胞中で発現させる。哺乳類の細胞株は、強力なサイトメガロウイルス(CMV-IE)プロモーターにより駆動されるウイルスの配列を発現するよう設計された遺伝子構築物を用いて形質転換される。用いられる配列には特異的なウイルス複製酵素の遺伝子が含まれる。典型的なウイルス遺伝子を含む無作為な「ショットガン」ライブラリー、及びウイルス配列の発現を標的化するように導入された分散した核酸分子も用いられうる。
【0144】
BEVのRNA依存性RNAポリメラーゼ遺伝子に由来するヌクレオチド配列などの、この手法で使用される例示的な遺伝子構築物を本明細書で提示する。
ウイルスのポリメラーゼ構築物のため、多数(約100)の形質転換した細胞株を作成し、そして各ウイルスで感染させる。ショットガンライブラリーで形質転換した細胞に対して、非常に多数(数百)の形質転換系統が作成しそしてウイルス免疫について大規模にスクリーニングする。ウイルスを感染させた後、耐性のある細胞株を選択し、そして免疫を付与する配列を決定するためにさらに分析する。
耐性のある細胞株は、哺乳類の系において導入されたヌクレオチド配列がウイルス遺伝子の発現を不活性化する能力があることを支持する。
さらに、このような実験から得られる耐性系統は、観察される改変の分子的及び生化学的特性をより正確に規定するために使用される。
【実施例5】
【0145】
実施例5.トランスジェニック植物におけるウイルス耐性の導入
アグロバクテリウム・ツメファシエンスのLBA4404株を、三親交雑(tri-parental matings)を用いて、構築物のpART27.PVY、pART27.PVYx2、pART27.PVYx3、pART27.PVYx4、pART27.PVY.LNYV.PVY、pART27.PVY.LNYV.YVPΔ、pART27.PVY.LNYV.YVP、pART27.35S.PVY.SCBV.O、pART27.35S.O.SCBV.PVY、pART27.35S.O. SCBV.YVP、pART27.35S.PVY.SCBV.YVP、pART27.35S.PVYx3.SCBV.YVPx3、pART27.PVYx3.LNYV.YVPx3、及びpART27.PVYx10でそれぞれ形質転換した。これらの株から得られるDNAの微量調製物を調製し、NotIでの制限を試験し、これらが適切な二元ベクターを含むことを確認した。
【0146】
ニコチアナ・タバカム(W38品種)を、標準的手法を用いてこれらのアグロバクテリウム株で形質転換した。形質転換したと推定される苗条を切り出しカナマイシンを含有する培地上に根付かせた。これらの条件の下で、本発明者らは、トランスジェニック苗条のみがカナマイシン平板上に根付くことを一貫して観察した。根付いた苗条は土壌に移し樹立させた。二から三週間後、少なくとも三枚の葉をもつ丈夫な植物を選択し、PVYに感染させた。
ウイルスの接種材料は、予めウイルスに感染させたW38タバコから調製した。すなわち、明白なウイルスの症状を示す約2gの葉材料を100mMの燐酸Na緩衝液(pH7.5)の10ml中でカルバランダム(carbarundum)と共に粉砕した。この接種材料を追加の燐酸Na緩衝液で200mlまで希釈した。各トランスジェニック植物に由来する二枚の葉をカルバランダムと共に散布した後、0.4mlの接種材料を各葉にかけ、かなり激しく指で葉をこすった。この手法を用いて、非トランスジェニック対照植物の100%がPVYに感染した。
【0147】
ウイルス耐性及び免疫性を検定するため、トランスジェニック植物を症状の進行について監視する。PVY株(PVY-D、オーストラリアのPVY単離体)はW38タバコに明白な症状を与え、葉脈が透き通る症状は接種された葉の上方の二枚の葉に容易に観察され、それに続き葉は均一のクロロ障害を示す。症状の進行は6週間にわたって監視した。
ウイルスの症状の低減が示される場合、トランスジェニック株は耐性として記述した。そして、ウイルス症状の低減はクロロ障害を示す葉の減少として現れる。耐性は、植物でごく少数のウイルス病変しか観察されない非常に強い耐性から、植物成長の後期で見られる葉の症状の低減を示す弱い耐性までの範囲に及ぶ。
ウイルスの症状の証拠を全く示さないトランスジェニック植物は免疫体(immune)として分類した。これらの植物が免疫体であることを確証するため、ウイルスを再接種したところ、ほとんどの植物が免疫体のままであり、症状を示した小数の植物は耐性として再分類した。
【0148】
得られた植物系統についてサザン・ブロットを行い、次世代の耐性を監視し、耐性/免疫が伝達できることを測定する。さらに、該系統を他のPVY株で感染させることによりウイルス耐性の範囲を観察し、宿主範囲の感受性が変化するかどうかを測定する。
これらの実験から得られた結果を表2に記載する。これらのデータは、標的遺伝子配列の縦列反復を、パリンドローム又は直列反復配列として分断されたパリンドロームのいずれかで含む構築物がトランスジェニック植物にウイルス耐性及び/又は免疫を付与できることを示している。
従って、このような逆方向及び/又は直列の反復配列はトランスジェニック植物でウイルスの標的遺伝子の発現を変化させる。
直列及び逆方向の反復配列の使用を組み合わせた構築物、即ち、pART27.35S.PVYx3.SCBV.YVPx3とpART27.PVYx3.LNYV.YVPx3も遺伝子発現を変化させるのに有用である。
【実施例6】
【0149】
実施例6.動物細胞におけるGaltの不活性化
Galtの不活性化を検定するため、ブタのPK2細胞を関連のある構築物で形質転換した。PK2細胞は構成的にGalt酵素を発現し、Galt酵素の活性により、これらの細胞の細胞表面上に発現するある範囲のタンパク質に種々のα-1,3-ガラクトシル基が付加される。細胞はリポフェクチンを用いて形質転換し、安定に形質転換した系統をゲネテシンを用いて選択した。
最初の検定のように、Galtをコードするエピトープ、即ち細胞表面タンパク質を修飾するα-1,3-ガラクトシル部分が存在するか否かについて、細胞株をレクチンIB4を用いて探索した。IB4の結合はインサイチュ又はFACS選別のいずれかにより検定した。
インサイチュ結合では、細胞を冷メタノールを用いて固体の支持体に5分間かけて固定し、細胞をPBS(燐酸緩衝生理食塩水)で洗浄し、非特異的なIB4の結合をPBS中1%BSAで10分間ブロックした。固定した細胞を1%BSAのPBS中で室温で30分間かけて20μg/mlのIB4−ビオチン(シグマ社)を用いて探索し、次いで細胞をPBSで洗浄し、1:200のエキストラアビジン-FITC(シグマ社)PBS希釈液で30分間探索した後、さらにPBSで濯いだ。次に、PK2対照細胞の外表面が均一に緑色に染色される条件の下で、細胞を蛍光顕微鏡を用いて調べた。
FACS分析では、細胞をトリプシン処理後懸濁し、HBSS/ヘペス(20mMのヘペスを添加したハンクの緩衝生理食塩水、pH7.4)で洗浄し、HBSS/ヘペス中で4℃で45分間かけて10μg/mlのIB4−ビオチン(シグマ社)で探索した。細胞をHBSS/ヘペスで洗浄し、1:200のエキストラアビジン-FITC(シグマ社)HBSS/ヘペス希釈液で4℃で45分間かけて探索し、FACS選別の前に冷HBSS/ヘペスで濯いだ。
このアプローチを用いて、形質転換した細胞株をGaltの不活性化について検定し、構築物の効率の定量的評価を求める。さらに、Galtの不活性化を示す細胞株を単離し、さらなる分子学的分析にかけ、遺伝子不活性化の機構を決定する。
【0150】
表2
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に、トランスジェニック生物、特にトランスジェニック動物又はトランスジェニック植物の細胞、組織又は器官における遺伝子発現を改変する方法並びに内因性遺伝子の発現を改変するための合成遺伝子に関する。より具体的には、本発明は、細胞、組織、器官又は全生物体における標的遺伝子の発現を転写後に改変又は調節するために、組換えDNA技術を利用し、それにより新規な表現型を創り出す。生物に導入された場合、該生物における内因性遺伝子又は標的遺伝子の発現を抑制し、遅延させ又はその他の方法で低減させることのできる新規な合成遺伝子並びに遺伝子構築物も提供される。
【背景技術】
【0002】
真核生物の代謝経路を制御することは、該生物において新規な特性を作りだすため又は該生物の特定の細胞、組織若しくは器官に新規な特性を導入するために望ましい。組換えDNA技術は真核性遺伝子発現を調節する機構の理解に重要な進展をもたらしてきたが、新規な特性を作りだすための遺伝子発現の実際の操作においてはほとんど進展はなかった。さらに、ヒトの介入により真核性遺伝子発現レベルを調節しうる手段はごく限られている。
遺伝子発現を抑制し、遅延させ又はその他の方法で低減させるための一つのアプローチは、核遺伝子の相補鎖から正常に転写され且つポリペプチドに翻訳され得るものへと転写されるmRNA分子を利用する。このアプローチに関与する正確な機構は確立されていないが、相補的なヌクレオチド配列間における塩基対形成により二本鎖のmRNAが生じ、低い効率で翻訳され及び/又は翻訳される前に細胞内リボヌクレアーゼ酵素により分解される複合体を産生すると仮定されてきた。
【0003】
または、細胞、組織又は器官における内因性遺伝子の一以上のコピー又は実質的に同様な遺伝子の一以上のコピーが該細胞に導入される場合、該遺伝子の発現は抑制されうる。この現象に関与する機構は確立されていないが、機構的に異種の工程が関与するらしい。例えば、このアプローチには、クロマチンの体細胞遺伝性の抑制状態が形成される、転写抑制が関与する、又はそうではなくて、通常転写の開始は起きるが共抑制された遺伝子のRNA産物がその後除外される、転写後サイレンシング(post-transcriptional silencing) が関与すると仮定されてきた。
特定遺伝子の発現の標的化におけるこれらの両アプローチの効率は非常に低く、通常、極めて多様な結果が得られる。遺伝子発現を標的化するために、遺伝子の異なる領域、例えば、5'−非翻訳領域、3'−非翻訳領域、コード領域又はイントロン配列を用いることにより、一貫性のない結果が得られる。従って、現在のところ、既存の技術を用いて遺伝子発現を抑制し、遅延させ又はその他の方法で低減させるための最も効率の良い手段を与える遺伝的配列の性質に関しては意見の一致は存在しない。さらに、世代間でこのような高い程度の差異が存在するため、遺伝子発現が著しく改変された生物の子孫における特定遺伝子の抑制レベルを予測することはできない。
【0004】
最近、ドレルとヘニコッフ(1994年)は、ショウジョウバエのゲノムにおける縦列反復した遺伝子コピーのサイレンシング並びにポリコーム(Polycomb) 遺伝子(即ち、Pc-G系;パル−バハドラら、1997年)による分散されたショウジョウバエのAdh遺伝子の転写抑制を証明した。しかし、特定遺伝子の発現を標的化できる配列がゲノムの分散された位置に導入され、このアプローチと遺伝子標的化技術との組み合わせを欠いている場合は、縦列反復した遺伝子コピーのこのようなサイレンシングは、動物細胞で組換え手段により遺伝子発現を操作する試みにおいてほとんど有用性がない。理論的には可能であるが、このような組み合わせは、単独で用いられる遺伝子標的化アプローチの低い効率に基づけば低効率でしか作用しないと予想され、さらに複雑なベクター系を必要とするであろう。さらに、ショウジョウバエのPc-G系のような転写抑制の利用は、任意の特定標的遺伝子の発現を調節できる調節機構についての何らかの知識を要するようであり、結果として、動物細胞において遺伝子発現を抑制し、遅延させ又は低減させるための一般的技術として実際に実行するのは困難であろう。
これらの現象に関与する機構についての理解の乏しさは、遺伝子発現のレベルを調節するための技術、特に組換えDNA技術を用いて特定遺伝子の発現を遅延させ、抑制し又はその他の方法で低減させるための技術の改良がほとんどなかったことを意味する。さらに、これらのアプローチが予測不可能である結果として、現在、真核生物又は原核生物における特定遺伝子の発現レベルを調節するための商業的に実行可能な手段はない。
従って、動物細胞へ新規な表現型特性を導入するために、遺伝子発現を調節する、特に動物細胞における遺伝子発現を抑制し、遅延させ又はその他の方法で低減させる改良された方法に対する必要性が存在する。特に、これらの方法は、同時に遺伝子標的化アプローチを行う必要なく、表現型の改変のための一般的手段を提供すべきである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】アン(An)ら、(1985)、EMBO J 4:277-284。
【非特許文献2】アームストロング(Armstrong)ら、Plant Cell Reports 9:335-339、1990。
【非特許文献3】アウスベル(Ausubel),エフ.エム.ら(1987)分子生物学の最新プロトコル、ヴィレー・インターサイエンス(ISBN 047140338)。
【非特許文献4】チャルフィー(Chalfie),エム.ら(1994)Science 263:802-805。
【非特許文献5】クリステンセン(Christensen),エイ.エイチ.とクエイル (Quail),ピー.エイチ.(1996)Transgenic Research 5:213-218。
【非特許文献6】クリストウ(Christou),ピー.ら、Plant Physiol 87:671-674、1988。
【非特許文献7】コルマック(Cormack),ビー.ら(1996)Gene 173:33-38。
【非特許文献8】クロスウェイ(Crossway)ら、Mol.Gen.Genet.202:179-185、1986。
【非特許文献9】ドレル(Dorer),ディー.アール.とヘニコッフ(Henikoff),エス.(1994)Cell 7:993-1002。
【非特許文献10】フロム(Fromm)ら、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)82:5824-5828、1985。
【非特許文献11】グリーブ(Gleave),エイ.ピー.(1992)Plant Molecular Biology 20:1203-1207。
【非特許文献12】ハナハン(Hanahan),ディー.(1983)J.Mol.Biol.166:557-560。
【非特許文献13】ヘレラ−エステラ(Herrera-Estella)ら、Nature303:209-213、1983a。
【非特許文献14】ヘレラ−エステラら、EMBO J.2:987-995、1983b。
【非特許文献15】ヘレラ−エステラら、植物遺伝子工学、ケンブリッジ・ユニバーシティー・プレス、ニューヨーク、63〜93頁、1985。
【非特許文献16】イノウエ(Inouye),エス.とツジ(Tsuji),エフ.アイ.(1994)FEBS Letts.341:277-280。
【非特許文献17】ジャクソン(Jackson),アイ.ジェイ.(1995)Ann.Rev.Gent.28:189-217。
【非特許文献18】クレンス(Krens),エフ.エイ.ら、Nature 296:72-74、1982。
【非特許文献19】ウォン(Kwon),ビー.エス.ら(1988)Biochem.Biophys.Res.Comm.153:1301-1309。
【非特許文献20】パルーバハドラ(Pal-Bhadra),エム.ら(1997)Cell90:479-490。
【非特許文献21】パスズコヴスキー(Paszkowski)ら、EMBO J.3:2717-2722、1984。
【非特許文献22】プラシェル(Prasher),ディー.シー.ら(1992)Gene111:229-233。
【非特許文献23】サンフォード(Sanford),ジェイ.シー.ら、Particulate Science and Technology 5:27-37、1987。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、一つ以上の望ましい特性を示す細胞を作成でき、しかもプロモーターに機能的に連結された核酸分子を含む形質転換細胞からそれを選択し得るという本発明者らによる驚くべき発見であって、該核酸分子の転写産物がその発現を調節しようと意図する内因性又は非内因性標的遺伝子の転写産物のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列を含むものである発見に一部基づいている。この形質転換された細胞は、新規な特性、具体的にはウイルス耐性、及び内因性遺伝子の改変された発現を示すことのできる全組織、全器官又は全生物へと再生される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明の一つの側面は、動物の細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を調節する方法であって、標的遺伝子のmRNA産物の翻訳が改変されるのに充分な時間及び条件の下で、該mRNA産物の転写が必ずしも抑制又は低減されるとは限らないことを条件として、該標的遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列又はその一領域又はそれに相補的な配列の多重コピーを含む一つ以上の分散した核酸分子又は外来性核酸分子を該細胞、組織又は器官に導入する工程を少なくとも含む方法を提供する。
特に好ましい態様において、分散した核酸分子又は外来性核酸分子は、標的遺伝子のmRNA産物のヌクレオチド配列と実質的に同一なmRNA分子の多重コピーをコードするヌクレオチド配列を含む。標的分子の該複数コピーは縦列直列反復配列であることがより好ましい。
より具体的に好ましい態様において、分散した核酸分子又は外来性核酸分子は少なくとも転写してmRNAを産生することが可能であるような発現可能な形態で存在する。
【0008】
該標的遺伝子は、動物細胞にとって内因性である遺伝子、又はとりわけウイルス若しくは外来性の遺伝子配列などの外来性遺伝子でありうる。好ましくは、標的遺伝子はウイルスの遺伝子配列である。
本発明は真核性遺伝子発現の調節、特にヒト又は動物の遺伝子発現の調節、さらにより具体的には脊椎動物及び昆虫、水生動物などの無脊椎動物(例えば、魚、貝、軟体動物、カニ、ロブスター及びエビなどの甲殻類)、鳥類、並びにとりわけ哺乳類に由来する遺伝子の発現調節にとりわけ有用である。
適切な手法及び充分な数の形質転換細胞を用いて、多様な特性が選択可能である。このような特性には可視的な特性、病気耐性の特性、及び病原体耐性の特性が含まれるが、これらに限定されない。この調節効果は、例えば、がん遺伝子、転写因子、及び細胞の代謝に関与するポリペプチドをコードする他の遺伝子などの細胞の代謝、又は細胞の形質転換の原因となる内因性遺伝子を含む植物及び動物において発現する種々の遺伝子に適用可能である。
例えば、マウスの色素産生の改変は、マウスにおけるチロシナーゼ遺伝子の発現を標的化することにより遺伝子工学的に行うことができる。これは黒色マウスに色素欠乏症の新規な表現型を付与する。植物細胞又は動物細胞においてウイルス複製に必要な遺伝子を標的化することにより、ウイルスのレプリカーゼ、ポリメラーゼ、コートタンパク質、又はコート以外のタンパク質、又はプロテアーゼタンパク質をコードするヌクレオチド配列の多重コピーを含む遺伝子構築物をそれを発現する細胞に導入して、ウイルスに対する免疫性を該細胞に付与することができる。
【0009】
本発明の実施において、分散した核酸分子又は外来性の核酸分子は一般的に標的遺伝子配列に対して約85%以上の同一性を有するヌクレオチド配列を含む。しかし、相同性が高いほど標的遺伝子配列の発現をより効果的に調節するかも知れない。実質的に高い相同性、即ち約90%以上の相同性が好ましく、さらにより好ましくは約95%から完全な同一性であることが望ましい。
完全な相同性を必要としない、導入された分散した核酸分子又は外来性核酸分子の配列は、標的遺伝子の一次転写産物か又は標的遺伝子の完全にプロセシングされたmRNAのいずれかに関して全長である必要もない。全長より短い配列でも相同性が高ければ、より長いが相同性の低い配列に匹敵する。さらに、導入された配列はイントロン又はエキソンの同じパターンを有する必要はなく、そして非コード部分の相同性は同様に効果的である。通常、20〜100ヌクレオチドより大きな配列が使用されるべきであるが、約200〜300ヌクレオチドより大きな配列が好ましく、標的遺伝子の大きさに応じて、500〜1000ヌクレオチドより大きな配列が特に好ましい。
【0010】
本発明の第二の側面は、合成遺伝子でトランスフェクション又は形質転換された原核生物又は真核生物の細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を改変できる該合成遺伝子であって、該細胞、組織若しくは器官中で機能しうるプロモーター配列の制御下で機能しうるように配置された、標的遺伝子ヌクレオチド配列に実質的に同一なヌクレオチド配列、若しくはその誘導体、若しくはそれに相補的な配列の多重コピーを含む、分散した核酸分子又は外来性核酸分子を少なくとも含む合成遺伝子を提供する。
【0011】
本発明の第三の側面は、合成遺伝子でトランスフェクション又は形質転換された原核生物又は真核生物の細胞、組織又は器官において標的遺伝子の発現を改変できる該合成遺伝子であって、該合成遺伝子が少なくとも多重構造遺伝子配列を含み、該構造遺伝子配列のそれぞれが標的遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列、若しくはその誘導体若しくはそれに相補的な配列を含み、該多重構造遺伝子配列が該細胞、組織又は器官で機能しうる単独のプロモーター配列の制御下に機能しうるように配置されるものである合成遺伝子を提供する。
【0012】
本発明の第四の側面は、合成遺伝子でトランスフェクション又は形質転換された原核生物又は真核生物の細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を改変できる合成遺伝子であって、該合成遺伝子が少なくとも多重構造遺伝子配列を含み、該構造遺伝子配列のそれぞれが該細胞、組織又は器官で機能しうるプロモーター配列の制御下で機能しうるように配置され、該構造遺伝子配列のそれぞれが標的遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列、若しくはその誘導体、若しくはそれに相補的な配列を含むものである合成遺伝子を提供する。
【0013】
本発明の第五の側面は、形質転換又はトランスフェクションされた細胞、組織又は器官における内因性遺伝子又は標的遺伝子の発現を改変できる遺伝子構築物であって、少なくとも本発明の合成遺伝子及び一つ以上の複製起点及び/又は選択可能なマーカー遺伝子配列を含む遺伝子構築物を提供する。
【0014】
植物及び動物などの多細胞生物における多くの新規な特性、特に組織特異的な特性、又は器官特異的な特性、又は発生上で制御される特性を観察するためには、本明細書に記載される合成遺伝子及び遺伝子構築物を保持する形質転換された細胞を生物体へ再生させることが必要となる。当業者は、これが形質転換された植物細胞又は動物細胞、そのような細胞の集団、組織又は器官から完全な生物体を成長させることを意味することを承知しているであろう。単離された細胞及び組織から植物及び動物を再生させるための標準的方法は当業者に知られている。
こうして、本発明の第六の側面は、本明細書に記載される合成遺伝子及び遺伝子構築物を含む細胞、組織、器官又は生物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1はプラスミドpEGFP-N1 MCSの図式的表示である。
【図2】図2はプラスミドpCMV.cassの図式的表示である。
【図3】図3はプラスミドpCMV.SV40L.cassの図式的表示である。
【図4】図4はプラスミドpCMV.SV40LR.cassの図式的表示である。
【図5】図5はプラスミドpCR.Bgl-GFP-Bamの図式的表示である。
【図6】図6はプラスミドpBSII(SK+).EGFPの図式的表示である。
【図7】図7はプラスミドpCMV.EGFPの図式的表示である。
【図8】図8はプラスミドpCR.SV40Lの図式的表示である。
【図9】図9はプラスミドpCR.BEV.1の図式的表示である。
【図10】図10はプラスミドpCR.BEV.2の図式的表示である。
【図11】図11はプラスミドpCR.BEV.3の図式的表示である。
【図12】図12はプラスミドpCMV.EGFP.BEV2の図式的表示である。
【図13】図13はプラスミドpCMV.BEV2の図式的表示である。
【図14】図14はプラスミドpCMV.BEV3の図式的表示である。
【図15】図15はプラスミドpCMV.VEBの図式的表示である。
【図16】図16はプラスミドpCMV.BEV.GFPの図式的表示である。
【図17】図17はプラスミドpCMV.BEV.SV40L-Oの図式的表示である。
【図18】図18はプラスミドpCMV.O.SV40L.BEVの図式的表示である。
【図19】図19はプラスミドpCMV.O.SV40L.VEBの図式的表示である。
【図20】図20はプラスミドpCMV.BEVx2の図式的表示である。
【図21】図21はプラスミドpCMV.BEVx3の図式的表示である。
【図22】図22はプラスミドpCMV.BEVx4の図式的表示である。
【図23】図23はプラスミドpCMV.BEV.SV40L.BEVの図式的表示である。
【図24】図24はプラスミドpCMV.BEV.SV40L.VEBの図式的表示である。
【図25】図25はプラスミドpCMV.BEV.GFP.VEBの図式的表示である。
【図26】図26はプラスミドpCMV.EGFP.BEV2.PFGの図式的表示である。
【図27】図27はプラスミドpCMV.BEV.SV40LRの図式的表示である。
【図28】図28はプラスミドpCDNA3.Galtの図式的表示である。
【図29】図29はプラスミドpCMV.Galtの図式的表示である。
【図30】図30はプラスミドpCMV.EGFP.Galtの図式的表示である。
【図31】図31はプラスミドpCMV.Galt.GFPの図式的表示である。
【図32】図32はプラスミドpCMV.Galt.SV40L.Oの図式的表示である。
【図33】図33はプラスミドpCMV.Galt.SV40L.tlaGの図式的表示である。
【図34】図34はプラスミドpCMV.O.SV40L.Galtの図式的表示である。
【図35】図35はプラスミドpCMV.Galtx2の図式的表示である。
【図36】図36はプラスミドpCMV.Galtx4の図式的表示である。
【図37】図37はプラスミドpCMV.Galt.SV40L.Galtの図式的表示である。
【図38】図38はプラスミドpCMV.Galt.SV40L.tlaGの図式的表示である。
【図39】図39はプラスミドpCMV.Galt.GFP.tlaGの図式的表示である。
【図40】図40はプラスミドpCMV.EGFP.Galt.PFGの図式的表示である。
【図41】図41はプラスミドpCMV.Galt.SV40LRの図式的表示である。
【図42】図42はプラスミドpART7の図式的表示である。
【図43】図43はプラスミドpART7.35S.SCBV.cassの図式的表示である。
【図44】図44はプラスミドpBC.PVYの図式的表示である。
【図45】図45はプラスミドpSP72.PVYの図式的表示である。
【図46】図46はプラスミドpClapBC.PVYの図式的表示である。
【図47】図47はプラスミドpBC.PVYx2の図式的表示である。
【図48】図48はプラスミドpSP72.PVYx2の図式的表示である。
【図49】図49はプラスミドpBC.PVYx3の図式的表示である。
【図50】図50はプラスミドpBC.PVYx4の図式的表示である。
【図51】図51はプラスミドpBC.PVY.LNYVの図式的表示である。
【図52】図52はプラスミドpBC.PVY.LNYV.PVYの図式的表示である。
【図53】図53はプラスミドpBC.PVY.LNYV.YVPΔの図式的表示である。
【図54】図54はプラスミドpBC.PVY.LNYV.YVPの図式的表示である。
【図55】図55はプラスミドpART27.PVYの図式的表示である。
【図56】図56はプラスミドpART27.35S.PVY.SCBV.Oの図式的表示である。
【図57】図57はプラスミドpART27.35S.O.SCBV.PVYの図式的表示である。
【図58】図58はプラスミドpART27.35S.O.SCBV.YVPの図式的表示である。
【図59】図59はプラスミドpART7.PVYx2の図式的表示である。
【図60】図60はプラスミドpART7.PVYx3の図式的表示である。
【図61】図61はプラスミドpART7.PVYx4の図式的表示である。
【図62】図62はプラスミドpART7.PVY.LNYV.PVYの図式的表示である。
【図63】図63はプラスミドpART7.PVY.LNYV.YVPΔの図式的表示である。
【図64】図64はプラスミドpART7.PVY.LNYV.YVPの図式的表示である。
【図65】図65はプラスミドpART7.35S.PVY.SCBV.YVPの図式的表示である。
【図66】図66はプラスミドpART7.35S.PVYx3.SCBV.YVPx3の図式的表示である。
【図67】図67はプラスミドpART7.PVYx3.LNYV.YVPx3の図式的表示である。
【図68】図68はプラスミドpART7.PVYmultiの図式的表示である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一般事項
本明細書で使用されるとき、「から由来する」という用語は、記載された完全体が、必ずしも直接的にとは限らないが、記載された特定の源又は種から得られうることを示すものと解釈されるべきである。
本明細書を通して、文脈が他の意味を要求しない限り、「含む」という用語は、述べられた工程若しくは要素、又は工程若しくは要素の集合を含むことを意味するが、他の任意の工程若しくは要素、又は、工程若しくは要素の集合を排除することを意味するわけではないことが理解されよう。
当業者は、本明細書に記載される発明が具体的に記述されるもの以外に変形及び改変され得ることを理解する筈である。本発明は全てのこのような変形物及び改変物を包含することが理解されるべきである。本発明は、本明細書で個々に又はまとめて言及される又は示される工程、特徴、組成物及び化合物の全て、及び任意の組み合わせ、及び該工程若しくは特徴の全ての組み合わせ、又は任意の二つ以上の組合せをも包含する。
本発明は、例示目的のみを意図して本明細書に記載される具体的な態様により範囲が限定されるものではない。機能的に等価な産物、組成及び方法は、本明細書に記載されるように明らかに本発明の範囲内にある。
【0017】
本明細書に含まれるヌクレオチド及びアミノ酸の配列情報を含む配列番号(SEQ ID NO)はパテントインプログラムを用いて作製された。各々のヌクレオチド又はアミノ酸の配列は、数値指標(<210>)とそれに続く配列識別子(例えば<210> 1、<210> 2等)により配列表中で同定される。各々のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列に対する配列の長さ、型(DNA、タンパク質(PRT)等)及び起源となった生物は、それぞれ、数値指標欄の<211>、<212>及び<213>で提供される情報により示される。本明細書で言及されるヌクレオチド配列及びアミノ酸配列は、数値指標欄の<400>とそれに続く配列識別子(例えば<400> 1、<400> 2等)中で提供される情報によって定義される。
本明細書で言及されるヌクレオチド残基の名称は、IUPAC-IUB生化学命名委員会により推奨されるものであり、Aはアデニンを表し、Cはシトシンを表し、Gはグアニンを表し、Tはチミンを表し、Yはピリミジン残基を表し、Rはプリン残基を表し、Mはアデニン又はシトシンを表し、Kはグアニン又はチミンを表し、Sはグアニン又はシトシンを表し、Wはアデニン又はチミンを表し、Hはグアニン以外のヌクレオチドを表し、Bはアデニン以外のヌクレオチドを表し、Vはチミン以外のヌクレオチドを表し、Dはシトシン以外のヌクレオチドを表し、そしてNは任意のヌクレオチド残基を表す。
本明細書で言及されるアミノ酸残基の名称は、IUPAC-IUB生化学命名委員会によって推奨されたもので、表1に列挙する。
【0018】
表1
【0019】
本発明は細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を調節する方法を提供する。該方法は、標的遺伝子のmRNA産物の翻訳を改変するのに充分な時間及び条件の下で、該mRNA産物の転写が必ずしも抑制又は低減されないことを条件として、該標的遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列若しくはその一領域若しくはそれに相補的なヌクレオチド配列の多重コピーを含む一つ以上の分散した核酸分子若しくは外来性核酸分子を該細胞、組織又は器官に導入する工程を少なくとも含む。
「多重コピー」とは、標的遺伝子の二つ以上のコピーが同方向又は異方向で同一の核酸分子上に密接な物理的関係で又は並列して存在すること、必要ならば各反復間で二次構造の形成を容易にするためにスタッファー(stuffer)断片又は遺伝子間領域により随意的に分離されていることを意味する。このスタッファー断片はヌクレオチド残基若しくはアミノ酸残基、炭水化物分子若しくはオリゴ糖分子、又は炭素原子、又はそれらのホモログ、類似体又は誘導体の任意の組み合わせを含みうるものであって、核酸分子に共有結合できるものである。
【0020】
好ましい態様では、このスタッファー断片はヌクレオチドの配列若しくはそのホモログ、類似体又は誘導体を含む。
より好ましくは、このスタッファー断片は少なくとも約10〜50ヌクレオチドの長さ、さらにより好ましくは少なくとも約50〜100ヌクレオチドの長さ、さらに一層より好ましくは少なくとも約100〜500ヌクレオチドの長さのヌクレオチド配列を含む。
分散した又は外来性の核酸分子がイントロン/エキソン・スプライシング連結配列を含むと、スタッファー断片は遺伝子の5'末端に近い方の構造遺伝子の3'スプライシング部位とその隣の下流単位の5'スプライシング部位との間に位置するイントロン配列として働きうる。または、分散した外来性の核酸分子の三つ以上の近接したヌクレオチド配列単位が翻訳されることが望まれる場合、当業者には明白なように、それらの間に位置するスタッファー断片は、スタッファー断片の両末端にイントロン/エキソン・スプライシング連結配列を持たない、枠内の翻訳停止コドンを含むべきでなく、又は各単位の5'末端には翻訳開始コドンの付加を含むべきでない。
【0021】
好ましいスタッファー断片は、検出可能なマーカータンパク質又はその生物学的に活性な類似体及び誘導体、例えば、中でもルシフェラーゼ、β−ガラクツロナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ又は緑色蛍光タンパク質をコードするものである。スタッファー断片の追加は排除されない。
この態様によれば、検出可能なマーカー又はその類似体又は誘導体は、特異的に検出可能な表現型、好ましくは視覚的に検出可能な表現型を細胞、組織又は器官に付与できる能力のため、細胞等において本発明の合成遺伝子の発現を示すのに役立つ。
本明細書で使用されるとき、「調節する」という用語は、本明細書に記載の発明方法を用いない遺伝子の発現と比較して、標的遺伝子の発現が量的に低減され、及び/又は遺伝子発現のタイミングが遅延し、及び/又は標的遺伝子の発現の発生上のパターン、又は組織特異的なパターン、又は細胞特異的なパターンが改変されることを意味すると解釈されるべきである。
【0022】
本明細書に記載される本発明の範囲を制限することはないが、本発明は、真核生物、特に単子葉植物若しくは双子葉植物などの植物、又はヒト若しくは他の動物、さらにより具体的には脊椎動物及び昆虫、水生動物などの無脊椎動物(例えば、中でも、魚、貝、軟体動物、カニ、ロブスター、及びエビなどの甲殻類)、鳥類、又は哺乳類の特定の細胞、組織又は器官での標的遺伝子の発現の程度における抑制、遅延又は低減を含む遺伝子発現の調節に関する。
より好ましくは、標的遺伝子の発現は、細胞、組織又は器官に導入された分散した核酸分子又は外来性の核酸分子により完全に不活性化される。
如何なる理論又は作用様式にも拘束されるものではないが、本発明の実施に起因する標的遺伝子発現の低減又消滅は、標的遺伝子のmRNA転写産物の翻訳の低減又は遅延に帰することができ、あるいは内因性の宿主細胞系による標的遺伝子のmRNA転写物の配列特異的分解の結果としての該mRNAの翻訳の阻止に帰することができる。
【0023】
最良の結果として、標的遺伝子のmRNA転写産物が通常翻訳される時若しくは段階の前か、又は標的遺伝子のmRNA転写産物が通常翻訳される時と同時のいずれかで、標的遺伝子のmRNA転写物の配列特異的な分解が生じることが特に好ましい。従って、導入された分散した核酸分子又は外来性核酸分子の発現を調節するために適切なプロモーター配列を選択することは、本発明の最適な実施を考慮する上で重要である。このため、導入された分散した核酸分子又は外来性核酸分子の発現を調節する際に強力な構成的プロモーター又は誘導可能なプロモーター系の使用がとくに好ましい。
本発明は、発現の低減であって、転写の低下によってもたらされる標的遺伝子の発現の低減をも明らかに包含する。ただし、転写の低減がそれが起きる唯一の機構ではなくそして転写の低減が定常状態のmRNAプールの翻訳の低減を少なくとも伴うことを条件とする。
【0024】
該標的遺伝子は動物細胞にとって内因性の遺伝子配列であってもよく、またウイルス若しくは他の外来性病原性生物に由来し且つ細胞に入り込むことができそして感染後に細胞の装置を用いることができる遺伝子配列のような非内因性遺伝子配列であってもよい。
標的遺伝子が動物細胞にとって非内因性の遺伝子配列である場合、標的遺伝子はウイルス若しくは他の病原体の複製又は増殖に必須の機能をコードするものであることが好ましい。このような態様において、本発明は特に動物細胞のウイルス感染の予防処置及び治療処置、あるいは該病原体に対する耐性の付与若しくは刺激に特に有用である。
標的遺伝子は、植物又は動物の細胞、組織又は器官のウイルス病原体の一つ以上のヌクレオチド配列を含むことが好ましい。
例えば、動物及びヒトの場合、ウイルス病原体はレトロウイルス、例えば免疫不全ウイルスなどのレンチウイルス、ウシのエンテロウイルス(BEV)又はシンドビス・アルファウイルスなどの一本鎖(+)RNAウイルスでありうる。又は、標的遺伝子は、とりわけ、ウシのヘルペスウイルス又は単純ヘルペスウイルスI(HSVI)などの二本鎖DNAウイルスといった(ただしこれらに限定されない)動物の細胞、組織又は器官のウイルス病原体の一つ以上のヌクレオチド配列を含むことができる。
植物の場合、ウイルス病原体は、ポチウイルス、カリモウイルス、バドナウイルス、ジェミニウイルス、レオウイルス、ラブドウイルス、ブニアウイルス、トスポウイルス、テヌイウイルス、トンブスウイルス、ルテオウイルス、ソベモウイルス、ブロモウイルス、ククモウイルス、アイラウイルス、アルファモウイルス、タバモウイルス、トブラウイルス、ポテックスウイルス、及びクロステロウイルスが好ましく、中でもCaMV、SCSV、PVX、PVY、PLRV、及びTMVが好ましいが、これらに限定されない。
【0025】
特にウイルス病原体に関して、当業者は、ウイルスがコードする機能は宿主細胞によりコードされるポリペプチドによって「イントランス」に補完されうることを承知している。例えば、宿主細胞におけるウシのヘルペスウイルスゲノムの複製は、不活性化されたウイルスのDNAポリメラーゼ遺伝子を補完することができる宿主細胞のDNAポリメラーゼにより促進されうる。
従って、標的遺伝子が動物細胞にとって非内因性の遺伝子配列である場合、本発明のさらなる代替の態様は、ウイルスに特異的な遺伝子配列などの宿主細胞の機能によって補完され得ないウイルスポリペプチド又は外来性ポリペプチドをコードする標的遺伝子を提供する。本発明のこの態様の典型的な標的遺伝子には、中でも、ウイルスコートタンパク質、非コートタンパク質、及びRNA依存性DNAポリメラーゼ、及びRNA依存性RNAポリメラーゼをコードする遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。
本発明の特に好ましい態様において、標的遺伝子はBEVのRNA依存性RNAポリメラーゼ遺伝子又はそのホモログ、類似体若しくは誘導体、又はPVY・Niaプロテアーゼをコードする配列である。
【0026】
標的遺伝子の発現が改変される細胞は、多細胞の植物又は動物、それらの細胞及び組織の培養物に由来する任意の細胞でありうる。好ましくは、該動物細胞は昆虫、爬虫類、両生類、鳥類、ヒト又は他の哺乳類に由来する。典型的な動物細胞には、とりわけ、胚性幹細胞、培養された皮膚繊維芽細胞、神経細胞、体細胞、造血幹細胞、T細胞、及び不死化細胞株、例えばCOS、VERO、HeLa、マウスC127、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、WI-38、ベビーハムスター腎臓(BHK)又はMDBK細胞株が含まれる。このような細胞及び細胞株は当業者にとって容易に入手できる。従って、標的遺伝子の発現が改変された組織又は器官はこのような動物細胞を含む任意の組織又は器官であってもよい。
植物細胞は単子葉植物又は双子葉植物種又はそれらから誘導された細胞株に由来するものであることが好ましい。
【0027】
本明細書で使用されるとき、「分散した核酸分子」という用語は、核酸分子が導入される細胞、組織又は器官に起源を有する遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一な又は相補的なヌクレオチド配列の一つ以上の多重コピー、好ましくは縦列直列反復を含む核酸分子であって、組換え手段により動物の細胞、組織又は器官に導入され、一般に染色体外核酸として又は該遺伝子に遺伝的に連結しない組込まれた染色体核酸として存在するという意味で非内因性である核酸分子、を指すと解釈されるべきである。さらに具体的には、「分散した核酸分子」は、縦列に連結しないため、又は同じ染色体上で異なる染色体の位置を占めるため、又は異なる染色体上に局在するため、又はエピソーム、プラスミド、コスミド又はウイルス粒子として細胞に存在するため、物理的地図中で目的の標的遺伝子に連結しない染色体又は染色体外の核酸を含む。
「外来性核酸分子」とは、外来性の核酸分子が導入された生物と異なる生物の遺伝子配列に由来するヌクレオチド配列の一つ以上の多重コピー、好ましくは縦列直列反復を有する単離された核酸分子を意味する。この定義は、核酸分子が導入された分類学上の群と同一の最下位の分類学上の群(即ち同一集団)の異なる個体に由来する核酸分子、並びにウイルス病原体に由来する遺伝子のように核酸分子が導入された分類学上の群と異なる分類学上の群の異なる個体に由来する核酸分子を包含する。
【0028】
従って、本発明の実施において、外来性核酸分子が作用する標的遺伝子は、形質転換又はイントログレッション(introgression)の技術を用いて、ある生物から他の生物へ導入された核酸分子であってもよい。本発明のこの態様の典型的な標的遺伝子には、クラゲのエクオリア・ビクトリアに由来する緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子(プラッシェルら、1992;国際特許公開番号WO95/07463)、チロシナーゼ遺伝子、特にネズミのチロシナーゼ遺伝子(ウォンら、1988)、lacZ遺伝子のポリペプチド抑制因子をコードできる大腸菌のlacI遺伝子、本明細書で例示されるブタのα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子(NCBI登録番号L36535)、及び本明細書で例示されるPVY及びBEVの構造遺伝子、又はそれらの遺伝子のホモログ、類似体、若しくは誘導体、又はそれらに相補的なヌクレオチド配列が含まれる。
本発明はさらに、例えば、共発現した標的遺伝子のそれぞれに実質的に同一なヌクレオチド配列を含む分散した核酸分子又は外来性の核酸分子を用いて、特定の細胞で共発現する幾つかの標的遺伝子の発現を同時に標的化するために有用である。
【0029】
「実質的に同一な」とは、本発明の導入された分散した核酸分子又は外来性核酸分子と標的遺伝子配列とが、標準的な細胞内条件下で両者間に塩基対の形成が可能となる程にヌクレオチド配列レベルで十分に同一であることを意味する。
本発明の分散した核酸分子又は外来性核酸分子における各反復のヌクレオチド配列と標的遺伝子配列の一部のヌクレオチド配列は、ヌクレオチド配列レベルで少なくとも約80〜85%同一であることが好ましく、少なくとも約85〜90%同一であることがより好ましく、少なくとも約90〜95%同一であることがさらにより好ましく、ヌクレオチド配列レベルで少なくとも約95〜99%又は100%同一であることがさらにより一層好ましい。
本発明は、本発明の分散した核酸分子又は外来性核酸分子における反復配列の正確な数によって制限されるわけではないが、本発明は細胞中で発現されるベき標的遺伝子配列の少なくとも二つのコピーを必要とすると理解されるべきである。
標的遺伝子配列の多重コピーは縦列逆反復配列及び/又は縦列直列反復配列として分散した核酸分子又は外来性核酸分子中に存在することが好ましい。このような配置はGalt、BEV又はPVYの遺伝子領域を含み本明細書に記載される「テストプラスミド」により例示される。
【0030】
細胞、組織又は器官に導入される分散した核酸分子又は外来性核酸分子はRNA又はDNAを含むことが好ましい。
分散した核酸分子又は外来性核酸分子は標的遺伝子によってコードされるアミノ酸配列をコードできるヌクレオチド配列又は相補的なヌクレオチド配列を含むことが好ましい。これらの核酸分子は一つ以上のATG又はAUGの翻訳開始コドンを含むことがさらにより好ましい。
標的遺伝子の発現を調節する目的で分散した核酸分子又は外来性核酸分子を細胞、組織又は器官に導入するため、標準的な方法が用いられうる。例えば、核酸分子は裸のDNA又はRNAとして導入されうるし、任意選択的にリポソーム内にカプセル化して、弱毒化されたウイルスとしてのウイルス粒子内に入れ、又はウイルス外被又は輸送タンパク質又は金などの不活性担体と結合させて又は組換えのウイルスベクター若しくは細菌ベクターとして又はとりわけ遺伝子構築物として導入されうる。
投与方法としては、とりわけ注射及び経口摂取(例えば、医薬用食品物質)が挙げられる。
【0031】
本核酸分子は、腸の微生物叢に取り込まれうる細菌内での発現に適した細菌発現系を用いるなど生きている送達系によっても送達されうる。又は、ウイルスの発現系が使用され得る。この点で、ウイルス発現の一つの形態は、感染に効果的な量の生きているベクター(例えば、ウイルス又は細菌)が動物に供給される場合、一般的に噴霧、飼料又は水による生きているベクターの投与である。ウイルス発現系の他の形態は細胞に感染できるが細胞内で複製できない非複製性ウイルスベクターである。この非複製性ウイルスベクターは、一過性の発現用に本遺伝物質をヒト又は動物の患者に導入する手段を提供する。このようなベクターを投与する様式は生きているウイルスベクターと同様である。
本核酸分子を宿主細胞に送達するのに利用される担体、賦形剤及び/又は希釈剤はヒト又は獣医の適用に許容されるべきものである。このような担体、賦形剤及び/又は希釈剤は当業者に周知である。獣医学的使用に適切な担体及び/又は希釈剤には、任意の及び全ての溶媒、分散媒、水溶液、被覆剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤等が挙げられる。従来の媒体又は薬剤は活性成分との配合が禁忌であるものを除き、組成物でのその使用が意図される。補足の活性成分もこの組成物に組込まれ得る。
【0032】
別の態様において、本発明は、細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を調節する方法であって、少なくとも以下の工程、すなわち
(i)該標的遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列又はその一領域またはそれに相補的なヌクレオチド配列の多重コピーを含む一つ以上の分散した核酸分子又は外来性核酸分子を選択する工程、及び
(ii)標的遺伝子のmRNA産物の翻訳が改変されるのに充分な時間及び条件の下で、分散した核酸分子又は外来性核酸分子を細胞、組織又は器官に導入する工程であって、前記mRNA産物の転写が専ら抑制又は低減されるのではないことを条件とする前記工程、
を含む方法を提供する。
標的遺伝子の発現を標的化するのに適切なヌクレオチド配列を選択するため、幾つかのアプローチが用いられうる。一つの態様では、特性決定された遺伝子の特定の領域の多重コピーを、適切なプロモーターと機能しうるように連結させてクローニングし、標的遺伝子の発現を低減させる効果を検定する。または、遺伝子配列の多重コピーを含むショットガンライブラリーを作成し、標的遺伝子の発現を低減させるそれらの効果を検定する。後者のアプローチに伴う利点は、細胞の望ましくない表現型の発現における特定の標的遺伝子の重要性について何らの先行知識も有する必要がないことである。例えば、任意のウイルス遺伝子が宿主細胞の病因に果たす役割についての先行知識がなくとも、ウイルスのサブゲノム断片を含むショットガンライブラリーを使用して、動物宿主細胞にウイルスの免疫性を付与する能力を直接試験しうる。
【0033】
本明細書で用いられるとき、「ショットガンライブラリー」という用語は、多様なヌクレオチド配列の一組である。この一組の各構成要素は、細胞宿主の維持及び/又は複製に適した適切なプラスミド、コスミド、バクテリオファージ、又はウイルスベクター分子内に含まれていることが好ましい。「ショットガンライブラリー」という用語には、ヌクレオチド配列間の相違の程度が多大であるため該ヌクレオチド配列の由来する生物のゲノムの全配列が「一組」で存在する典型的なライブラリー、又は配列間の相違の程度がより少ない限定されたライブラリーが含まれる。「ショットガンライブラリー」という用語はさらに、ヌクレオチド配列がせん断により得られる、又は他のアプローチの中でも制限エンドヌクレアーゼを用いて例えばゲノムDNAの部分的消化により得られる、ウイルス又は細胞のゲノム断片を含む無作為ヌクレオチド配列を包含する。さらに、「ショットガンライブラリー」には、多様な一組の各ヌクレオチド配列を含む細胞、ウイルス粒子及びバクテリオファージ粒子が含まれる。
本発明のこの態様の好ましいショットガンライブラリーは、植物又は動物のウイルス病原体に由来する一組の縦列反復ヌクレオチド配列を含む「典型的なライブラリー」である。
とくに好ましい本発明の態様において、ショットガンライブラリーは、多様な一組のアミノ酸配列をコードする多様な一組の縦列反復ヌクレオチド配列を含む細胞、ウイルス粒子又はバクテリオファージ粒子を含む。この多様な一組のヌクレオチド配列の構成要素は、細胞中で該縦列反復ヌクレオチド配列の発現を指示することのできるプロモーター配列の制御の下で機能可能なように配置される。
【0034】
従って、縦列反復配列における各単位のヌクレオチド配列は少なくとも約1から200の長さのヌクレオチドを含みうる。より大きな断片の使用、特にウイルス、植物又は動物のゲノムに由来する無作為にせん断された核酸の使用は、除外されない。
導入された核酸分子は発現可能な形態であることが好ましい。
「発現可能な形態」とは、本核酸分子が少なくとも転写レベルで細胞、組織、器官又は生物全体で発現しうるような配置で存在することを意味する(即ち、それは動物細胞中で発現し、少なくともmRNA産物を生じ、該産物は任意的に翻訳可能であるか又は翻訳されて組換えのペプチド、オリゴペプチド又はポリペプチドの分子を生産する)。
例として、目的の細胞、組織又は器官内で分散した核酸分子又は外来性核酸分子を発現させるために、合成遺伝子又は該合成遺伝子を含む遺伝子構築物が作成される。この合成遺伝子はその中で発現を調節できるプロモーター配列と機能しうるように連結された上記記載のヌクレオチド配列を含む。こうして、本核酸分子は真核性の転写が起きるのに充分な一つ以上の調節要素と機能しうるように連結される。
【0035】
従って、本発明のさらに別の態様は動物の細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を調節する方法であって、少なくとも以下の工程、すなわち
(i) 標的遺伝子のヌクレオチド配列と実質的に同一なヌクレオチド配列又はその一領域またはそれに相補的なヌクレオチド配列の多重コピー、好ましくはその縦列反復を含む一つ以上の分散した核酸分子又は外来性核酸分子を選択する工程、
(ii) 分散した核酸分子又は外来性核酸分子を含む合成遺伝子を作成する工程、
(iii) 該細胞、組織又は器官に該合成遺伝子を導入する工程、及び
(iv) 標的遺伝子のmRNA産物の翻訳が改変されるのに充分な時間と条件の下で、該合成遺伝子を該細胞、組織又は器官中で発現させる工程であって、前記mRNA産物の転写が専ら抑制又は低減されるのではないことを条件とする前記工程、
を含む方法を提供する。
【0036】
本明細書において「遺伝子」に対する言及は最も広い文脈で解釈されるべきであり、
(i)下記のものから成る古典的ゲノム遺伝子、すなわち、
転写及び/又は翻訳の調節配列及び/又はコード領域及び/又は非翻訳配列(即ちイントロン、5'-及び3'-の非翻訳配列)から構成される古典的なゲノム遺伝子、及び/又は
(ii) 該遺伝子のコード領域(即ちエキソン)及び5'-及び3'-の非翻訳配列に対応するmRNA又はcDNA、及び/又は
(iii)非翻訳配列及び/又は構造領域に発現特性を付与できる転写及び/又は翻訳の調節領域から成る異種のプロモーター配列をさらに任意に含むコード領域(即ちエキソン)に対応する該構造領域、
を含む。
【0037】
「遺伝子」という用語は、機能的産物の全部又は一部、特にセンス若しくはアンチセンスのmRNA産物、又はペプチド、オリゴペプチド若しくはポリペプチド又は生物活性タンパク質をコードする合成分子又は融合分子を記載するためにも使用される。
「合成遺伝子」という用語は、本明細書で先に定義されたように、構造遺伝子配列に機能的に連結させた少なくとも一つ以上の転写及び/又は翻訳の調節配列を含むことが好ましい非天然産の遺伝子を指す。
「構造遺伝子」という用語は、mRNAを産生するために伝達されることができ且つ任意的にペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド又は生物活性タンパク質分子をコードするヌクレオチド配列を指すと解釈されるべきである。当業者は、例えば、mRNAが機能的な翻訳開始シグナルを欠く場合、又はmRNAがアンチセンスmRNAである場合、全てのmRNAがペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド、又はタンパク質に翻訳され得るわけではないことを承知している。本発明はペプチド、オリゴペプチド、ポリペプチド又は生物活性タンパク質をコードできないヌクレオチド配列を含む合成遺伝子を明らかに包含する。特に、本発明者らは、このような合成遺伝子が原核生物又は真核生物の細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を改変するのに有利でありうることを見出した。
【0038】
「構造遺伝子領域」という用語は、機能しうるように連結させたプロモーター配列の制御下に細胞、組織又は器官内で発現させる本明細書に記載の分散した核酸分子又は外来性核酸分子を含む合成遺伝子の部分を指す。構造遺伝子領域は単独のプロモーター配列又は多重のプロモーター配列の制御下で機能しうる一つ以上の分散した核酸分子及び/又は外来性核酸分子を含みうる。従って、合成遺伝子の構造遺伝子領域はアミノ酸配列をコードできるヌクレオチド配列又はそれに相補的なヌクレオチド配列を含みうる。この点で、本発明の実施で使用される構造遺伝子領域は、アミノ酸配列をコードするが機能的な翻訳開始コドン及び/又は機能的な翻訳終始コドンを欠き、結果として完全なオープン・リーディング・フレームを含まないヌクレオチド配列を含んでもよい。この文脈において、「構造遺伝子領域」という用語は、該遺伝子を発現する真核細胞中で通常翻訳されない遺伝子の5'-上流又は3'-下流の配列といった非コードヌクレオチド配列にまでも拡張される。
【0039】
従って、本発明の文脈において、構造遺伝子領域は、同一又は異なる遺伝子の二つ以上のオープン・リーディング・フレーム間の融合も含みうる。このような態様において、本発明は、一つの遺伝子の異なる非連続領域を標的化することにより該遺伝子の発現を調節するため、又は多重遺伝子ファミリーの異なる遺伝子などの幾つかの異なる遺伝子の発現を同時に調節するために使用されうる。動物細胞にとって非内因性であり且つ特にウイルス病原体に由来する二つ以上のヌクレオチド配列を含む融合核酸分子の場合、融合は、この幾つかの病原体における遺伝子の発現を標的化することにより該幾つかの病原体に対する同時免疫又は同時予防を付与するというさらなる利点を提供しうる。その代わりに又はそれに加えて、融合は、任意の病原体の一つ以上の遺伝子の発現を標的化することにより該病原体に対するより効果的な免疫を与えうる。
【0040】
本発明のこの側面の特に好ましい構造遺伝子領域は、少なくとも一つの翻訳可能なオープン・リーディング・フレームを含むものであり、より好ましくはさらに該オープン・リーディング・フレームの5'端(必ずしも構造遺伝子領域の5'-末端とは限らないが)に位置する翻訳開始コドンを含む。この点で、構造遺伝子領域は少なくとも一つの翻訳可能なオープン・リーディング・フレーム及び/又はAUG若しくはATGの翻訳開始コドンを含み得るが、このような配列を含むことは、本発明が標的遺伝子の発現を調節するため導入された核酸分子の翻訳を生じさせる必要があることを示唆するものではない。いかなる理論又は作用様式にも拘束されるものではないが、本核酸分子に少なくとも一つの翻訳可能なオープン・リーディング・フレーム及び/又は翻訳開始コドンを含ませることは、そのmRNA転写産物の安定性を増大するのに役立ちうるものであり、それにより、本発明の効率が改善される。
【0041】
本発明の合成遺伝子に関与しうる構造遺伝子配列の最適な数は、該構造遺伝子配列のそれぞれの長さ、方向、及び互いの同一性の程度に応じてかなり変動する。例えば、当業者は、パリンドローム構造のヌクレオチド配列がインビボで本来不安定であることそしてこのような配列がインビボで組換えを起こす傾向があるため、逆反復ヌクレオチド配列を含む長い合成遺伝子を構築するには困難が伴うことを知っている。このような難点にも関わらず、本発明の合成遺伝子に含まれるべき構造遺伝子配列の最適な数は、過度の実験を行うことなく、リコンビナーゼ欠損の細胞株を用い、組換え事象を除去又は最小限にするレベルまで反復配列の数を減らし、そして多重構造遺伝子配列の全長を許容される限界、好ましくは僅か5〜10kb、より好ましくは僅か2〜5kb、さらにより好ましくは長さを僅か0.5〜2.0kbに保つことにより、本発明の合成遺伝子を構築するような標準的手法に従い、当業者によって経験的に決定されうる。
構造遺伝子領域が二つ以上の分散した核酸分子又は外来性核酸分子を含む場合、本明細書では「多重構造遺伝子領域」または同様な用語を用いて言及する。明らかに、本発明は、好ましくは特定の構造遺伝子、分散した核酸分子又は外来性核酸分子、又はその断片の直列反復配列、逆反復配列又は分断されたパリンドローム配列を含む多重構造遺伝子領域の使用にまで拡張される。
【0042】
本合成遺伝子の多重構造遺伝子単位内に含まれる分散した核酸分子又は外来性核酸分子のそれぞれは、同じ生物での異なる標的遺伝子と実質的に同一なヌクレオチド配列を含みうる。ウイルス標的遺伝子の発現を改変することにより合成遺伝子が細胞、組織又は器官における病原体、とりわけウイルス病原体に対する防御を提供することを意図する場合、このような配置は特に有用でありうる。例えば、多重構造遺伝子が、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、Niaプロテアーゼ、及びコートタンパク質を含むリストから選択される二つ以上の標的遺伝子又はウイルスの感染力、複製又は増殖にに必須な他の標的遺伝子と実質的に同一なヌクレオチド配列(即ち、二つ以上の分散した核酸分子又は外来性核酸分子)を含みうる。しかし、この配置については、本合成遺伝子の多重構造遺伝子がプロモーター配列の制御下で発現するのとほぼ同じ時期に(又は後に)、実質的に同一の標的遺伝子(複数)が感染した細胞、組織又は器官内で正常に発現するように構造遺伝子単位が選択されることが好ましい。これは、ウイルス標的遺伝子が異なる感染段階で発現する場合、ウイルスの全生活環にわたって、多重構造遺伝子の発現を制御するプロモーターが細胞、組織又は器官における発現を行わせるように通常選択されることを意味する。
分散した核酸分子又は外来性核酸分子の各配列単位に関しては、多重構造遺伝子の個々の単位は相互に対して例えば、頭部から頭部、頭部から尾部、又は尾部から尾部の任意の方向で空間的に連結されうる、そしてこのような配置は全て本発明の範囲内にある。
真核細胞での発現のため、合成遺伝子は、本発明の核酸分子に加えて、一般にプロモーター及び任意選択的に分散した核酸分子又は外来性核酸分子の発現を促進するように設計された他の調節配列を含む。
【0043】
本明細書における「プロモーター」に対する言及は、最も広い文脈で解釈されるべきであり、正確な転写の開始に必要とされるTATAボックスを含み、CCAATボックス配列及び発生上の及び/又は外部の刺激に応答して又は組織特異的な様式で遺伝子発現を変化させる付加的調節因子(即ち、上流の活性化配列、エンハンサー及びサイレンサー)を備えた又は備えない古典的なゲノム遺伝子の転写調節配列を含む。プロモーターは、必ずではないが通常、その発現を制御する構造遺伝子領域の上流又は5'に位置する。さらに、プロモーターを含む調節因子は通常、遺伝子の転写の開始部位の2kb内に位置する。
本文脈において、「プロモーター」という用語は細胞における核酸分子の発現を付与し、活性化し、又は強化する合成分子又は融合分子又は誘導体を記述するためにも使用される。
好ましいプロモーターは、センス分子の発現をさらに強化するために及び/又は該センス分子の空間的発現及び/又は時間的発現を改変するために一つ以上の特異的な調節因子のさらなるコピーを含みうる。例えば、銅誘導性を付与する調節因子はセンス分子を発現させる異種のプロモーター配列に隣接して配置されることにより、該分子の発現に銅誘導性を付与する。
【0044】
プロモーター配列の調節的制御の下に分散した核酸分子又は外来性核酸分子を配置することは、その発現がそのプロモーター配列により制御されるように該分子を配置することを意味する。プロモーターは一般的にそれが制御する遺伝子の5'(上流)に位置する。異種のプロモーター/構造遺伝子の組み合わせの構築において、天然の環境でのプロモーターとそれが制御する遺伝子、即ちプロモーターが見出される遺伝子との間の距離とほぼ同じ遺伝子転写開始部位からの距離にプロモーターを配置することが一般的に好ましい。当分野で周知のように、プロモーター機能を喪失することなく、この距離のある程度の変動は許容される。同様に、その制御下に置かれるべき異種遺伝子に関する調節配列因子の好ましい配置は、天然環境、即ち該因子が見出される遺伝子のその配置により定められる。また、当分野で周知のように、この距離のある程度の変動も起こり得る。
【0045】
本発明の合成遺伝子における使用に適したプロモーターの例としては、ウイルス、菌類、細菌、動物及び植物に由来するプロモーターであって、植物、動物、昆虫、菌類、酵母又は細菌の細胞で機能しうるプロモーターが挙げられる。このプロモーターは、構成的に構造遺伝子構成要素の発現を調節し、あるいは、発現が起こる細胞、組織又は器官に関して、又は発現が起こる発生段階に関して、又はとりわけ生理的ストレス、又は病原体、又は金属イオンなどの外部刺激に応答して異なって構造遺伝子構成要素の発現を調節しうる。
このプロモーターは、少なくとも標的遺伝子が発現する時間の間中、より好ましくは細胞、組織又は器官で標的遺伝子の検出可能な発現の開始直前にも、真核生物の細胞、組織又は器官で核酸分子の発現を調節できることが好ましい。
従って、強力な構成的プロモーターが又はウイルス感染若しくは標的遺伝子の発現の開始により誘導されうるプロモーターが本発明の目的には特に好ましい。
植物及び動物で機能しうるプロモーターは本発明の合成遺伝子の使用に特に好ましい。好ましいプロモーターの例としては、バクテリオファージT7プロモーター、バクテリオファージT3プロモーター、SP6プロモーター、lacオペレーター−プロモーター、tacプロモーター、SV40後期プロモーター、SV40初期プロモーター、RSV-LTRプロモーター、CMV-IEプロモーター、CaMV35Sプロモーター、SCSVプロモーター、SCBVプロモーター等が挙げられる。
標的遺伝子の発現と同時に起きる又は標的遺伝子の発現に先行する高レベルな発現のための好ましい必要条件を考慮すると、プロモーター配列は、とりわけCMV-IEプロモーター配列又はSV40初期プロモーター配列、SV40後期プロモーター配列、CaMV35Sプロモーター、又はSCBVプロモーターなどの強力な構成的プロモーターであることが極めて望ましい。当業者は、具体的に記載されたもの以外の別のプロモーター配列にも容易に気付くはずである。
【0046】
本文脈において、「機能しうるように連結させた」又は「制御の下で機能しうる」又は同様な語は、構造遺伝子領域又は多重構造遺伝子領域の発現が細胞、組織、器官又は生物全体において空間的に連結させたプロモーター配列の制御の下にあることを意味すると解釈されるべきである。
本発明の好ましい態様において、構造遺伝子領域(即ち、分散した核酸分子又は外来性核酸分子)又は多重構造遺伝子領域は、該遺伝子が転写される場合、翻訳されるなら、標的遺伝子又はその断片のポリペプチド産物をコードできるmRNA産物が合成されるように、プロモーター配列に関してプロモーター方向に機能しうるように連結させて配置される。
しかし、本発明はこのような配置の使用に制限されるわけではなく、本発明は明らかに、合成遺伝子及び遺伝的構築物の使用であって、少なくともそのmRNA転写産物の一部が標的遺伝子又はその断片によってコードされるmRNAに相補的となるように、構造遺伝子領域又は多重構造遺伝子領域がプロモーター配列に関して「アンチセンス」方向に配置されるものである使用に拡張される。
分散した核酸分子、外来性の核酸分子又は多重構造遺伝子領域は標的遺伝子の縦列直列配列反復配列及び/又は逆反復配列を含むことは明らかであるから、上述の立体配置のあらゆる組み合わせが本発明により包含される。
【0047】
本発明の別の態様において、構造遺伝子領域又は多重構造遺伝子領域は第一プロモーター配列及び第二プロモーター配列の両方に機能しうるように連結される。該二つのプロモーターは、構造遺伝子領域または多重構造遺伝子領域の少なくとも一つの単位が第一プロモーター配列に関して「センス」方向に置かれ、且つ第二プロモーター配列に関して「アンチセンス」方向に置かれるように、その遠位及び近位の末端に配置される。この態様によれば、第一プロモーターと第二プロモーターは、それらに結合する細胞転写因子に対する両者間の競合を防ぐために異なっていることも好ましい。この配置の利点は、細胞内での標的遺伝子の発現を低減させる際に、試験される各ヌクレオチド配列にとっての最適な方向を決定するために、第一プロモーターと第二プロモーターからの転写の影響が比較されうることである。
合成遺伝子は、例えば転写終結配列など、効率的な転写のためのさらなる調節因子を含むことが好ましい。
【0048】
「ターミネーター」という用語は、転写の終結を知らせる転写単位の末端にあるDNA配列を指す。ターミネーターはポリアデニル化シグナルを含む3'−非翻訳DNA配列であり、ポリアデニル化シグナルは一次転写産物の3'−末端にポリアデニレート配列の付加を促進させる。植物細胞内で活性なターミネーターが知られており、文献に記載されている。ターミネーターは細菌、真菌、ウイルス、動物及び/又は植物から単離しうるし又はデノボ合成しうる。
プロモーター配列と同様に、ターミネーターは使用が意図される細胞、組織又は器官で機能しうる任意のターミネーター配列でありうる。
【0049】
本発明の合成遺伝子の使用に特に適切なターミネーターの例としては、中でも、SV40ポリアデニル化シグナル、HSV・TKポリアデニル化シグナル、CYC1ターミネーター、ADHターミネーター、SPAターミネーター、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのノパリンシンターゼ(NOS)遺伝子ターミネーター、カリフラワー・モザイク・ウイルス(CaMV)35S遺伝子のターミネーター、トウモロコシ由来のzein遺伝子ターミネーター、ルビスコ小サブユニット(SSU)遺伝子ターミネーター配列、サブクローバー・スタント・ウイルス(SCSV)遺伝子配列ターミネーター、任意のrho非依存性大腸菌ターミネーター、又はLacZアルファターミネーターが挙げられる。
特に好ましい態様において、このターミネーターは、動物の細胞、組織又は器官で機能しうるSV40ポリアデニル化シグナル又はHSV・TKポリアデニル化シグナル、植物の細胞、組織又は器官で活性なオクトピンシンターゼ(OCS)又はノパリンシンターゼ(NOS)のターミネーター、又は原核細胞で活性なlacZアルファターミネーターである。
当業者は、本発明を実施する際に使用に適しうるさらなるターミネーター配列に気付くであろう。このような配列は過度の実験をすることなく容易に使用される。
本明細書に記載される合成遺伝子又はそれを含む遺伝子構築物を細胞に導入する手段(即ち、トランスフェクション又は形質転換)は当業者に周知である。
【0050】
さらなる別の態様において、二つ以上の構造遺伝子領域又は多重構造遺伝子領域を含む遺伝子構築物が使用される。この構造遺伝子領域の各々はそれ自体のプロモーター配列の制御下で機能しうるように配置される。本明細書に記載される他の態様と同様に、各構造遺伝子領域の方向は標的遺伝子の発現に対する調節効果が最大になるよう変更されうる。
この態様によれば、構造遺伝子単位の発現を制御するプロモーターは、細胞転写因子とRNAポリメラーゼに対するそれらの間の競合を減少させるため異なるプロモーター配列であることが好ましい。好ましいプロモーターは先に言及したものから選択される。
当業者は、別個のプロモーター配列からの発現を調節するため、前述したような各構造遺伝子の配置又は立体配置をどのように改変すべきかを知っている。
前述の合成遺伝子は、例えば、それが発現する細胞、組織又は器官内で合成遺伝子の検出を容易にするため、検出可能なマーカー酵素をコードするマーカーヌクレオチド配列又はその機能的類似体又はその誘導体を含めることによりさらに改変できる。この態様にしたがって、マーカーヌクレオチド配列は、翻訳可能な型で存在し、例えば一つ以上の任意の構造遺伝子の翻訳産物との融合ポリペプチドとして、又は非融合ポリペプチドとして発現される。
【0051】
当業者は、本明細書に記載される合成遺伝子の作製方法、及び必要なときに所望の条件下で特定の細胞又は細胞のタイプでのそれを発現させるための必要条件を承知している。特に、本発明を実施するのに必要とされる遺伝子操作は本明細書に記載される遺伝子構築物またはその誘導体を大腸菌細胞などの原核細胞又は植物細胞又は動物細胞で増やすことを必要とすることは当業者に知られている。
本発明の合成遺伝子は、とりわけ細胞、ウイルス粒子又はリポソームなどの適切な担体内に任意選択的に含まれる遺伝子構築物の形態の直鎖状DNAとして、改変することなく、適切な細胞、組織又は器官に導入されうる。遺伝子構築物を作成するため、本発明の合成遺伝子は、後に導入される宿主の細胞、組織又は器官内で維持及び/又は複製及び/又は発現できるバクテリオファージベクター、ウイルスベクター又はプラスミド、コスミド又は人工染色体ベクターなどの適切なベクター又はエピソーム分子に挿入される。
【0052】
従って、本発明のさらなる側面は、本明細書に記載の一つ以上の態様の合成遺伝子、及び一つ以上の複製起点及び/又は選択可能なマーカー遺伝子配列を少なくとも含む遺伝子構築物を提供する。
遺伝子構築物は、ウイルス病原体に対する耐性特性を付与するほかに、真核細胞へ新規な遺伝的特性を導入するための該細胞の形質転換に特に適している。このようなさらなる新規な特性は、異なる遺伝子構築物中に、又は本明細書に記載の合成遺伝子を含む同じ遺伝子構築物上に導入されうる。当業者は、特に遺伝子操作及び組織培養の必要性の減少並びに費用効果の増大という点で、単独の遺伝子構築物にこのような付加的特性及び本明細書に記載の合成遺伝子をコードする遺伝子配列を含めることの大きな利点を認識するはずである。
細菌での使用に適した複製起点又は選択可能なマーカー遺伝子は、真核細胞での発現又はそれへの導入、又は真核細胞のゲノムへの取り込みが意図される遺伝子構築物に含まれるこれらの遺伝子配列から物理的に分離されているのが通常である。
【0053】
特に好ましい態様においては、複製起点は細菌細胞で機能しうるものであって、pUC又はColE1の起点を含み、又は複製起点は真核生物の細胞、組織で機能しうるものであり、より好ましくは2ミクロン(2μm)の複製起点又はSV40の複製起点を含む。
本明細書で使用されるとき、「選択可能なマーカー遺伝子」という用語は、本発明の遺伝子構築物又はその誘導体でトランスフェクション又は形質転換される細胞の同定及び/又は選択を容易にするために、それを発現する細胞に表現型を付与する任意の遺伝子を含む。
本明細書で意図される適切な選択可能なマーカー遺伝子には、とりわけ、アンピシリン耐性遺伝子(Ampr)、テトラサイクリン耐性遺伝子(Tcr)、細菌性カナマイシン耐性遺伝子(Kanr)、ゼオシン耐性遺伝子(ゼオシンはブレオマイシン・ファミリーの薬物であり、インビトロゲン社の商標である)、抗生物質のオーレオバシディンAに対する耐性を付与するAURI-C遺伝子、フォスフィノスリシン耐性遺伝子、ネオマイシン・フォスフォトランスフェラーゼ遺伝子(nptII)、ハイグロマイシン耐性遺伝子、β−グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、クロラムフェニコール・アセチルトランスフェラーゼ(CAT)遺伝子、緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子又はルシフェラーゼ遺伝子が含まれる。
選択可能なマーカー遺伝子はnptII遺伝子又はKanr遺伝子又は緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする遺伝子であることが好ましい。
当業者は本発明の実施に有用な他の選択可能マーカー遺伝子を承知しており、本発明は選択可能マーカー遺伝子の性質によって制限されるものではない。
【0054】
本発明は本質的に本明細書に記載の遺伝子構築物であって、原核生物又は真核生物における遺伝子構築物の維持及び/又は複製並びに/又は真核細胞又は真核生物のゲノムへの遺伝的構築物またはその一部の取り込みを目的とするさらなる遺伝子配列を含む遺伝子構築物全てに及ぶ。
分散した又は外来の核酸分子と同様に、上記の標準的方法は、標的遺伝子の発現を調節する目的で合成遺伝子及び遺伝子構築物を細胞、組織又は器官に導入するために用いてもよく、例えば、リポソームに媒介されるトランスフェクション若しくは形質転換、弱毒化されたウイルス粒子若しくは細菌細胞による細胞の形質転換、細胞接合、当分野で周知の又はアウスベルら(1992年)により記載された形質転換又はトランスフェクションの手法が用いられる。
植物の組織または細胞に組換えDNAを導入するためのさらなる手段には、CaCl2及びその変形を用いる形質転換、特にハナハン(1983年)によって記載された方法、プロトプラストへの直接的なDNA取り込み(クレンスら,1982、パスズコヴスキーら,1984)、プロトプラストへのPEG媒介取り込み(アームストロングら,1990)、微小粒子銃撃、電気穿孔(フロムら,1985)、DNAのマイクロインジェクション(クロスウェイら,1986)、組織の外植片又は細胞の微小粒子銃撃(クリストウら、1988、サンフォード,1988)、核酸による組織の減圧浸入、又は植物の場合、アンら(1985年)、ヘレラ−エストレラら(1983a、1983b、1985)により実質的に記述されたアグロバクテリウムから植物組織へのT-DNA媒介性の導入が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0055】
細胞の微小粒子銃撃では、微小粒子が細胞に射ち込まれ形質転換細胞を生ずる。本発明を実施する際に、任意の適切な銃撃細胞形質転換方法及び装置が使用されうる。典型的な装置及び手法はストンプら(米国特許第5,122,466号)及びサンフォードとヴォルフ(米国特許第4,945,050号)により開示されている。銃撃性の形質転換手法を用いる場合、遺伝子構築物は形質転換される細胞中で複製できるプラスミドに組込まれうる。
このような系での使用に適する微小粒子の例には1から5μmの金の球が挙げられる。DNA構築物は沈降などの任意の適切な技術により微小粒子に沈着されうる。
【0056】
本発明のさらなる態様において、本明細書に記載の合成遺伝子及び遺伝子構築物は発現する細胞のゲノムへの組み込みに適合される。当業者は、宿主細胞のゲノムへの遺伝子配列又は遺伝子構築物の組み込みを達成するためにはある付加的な遺伝子配列が必要となることを承知している。植物の場合、アグロバクテリウム・ツメファシエンスのTiプラスミドのT−DNAに由来する左側と右側の境界配列が一般に必要とされる。
本発明は、本明細書に記載の合成遺伝子を含む単離された細胞、組織若しくは器官又は同遺伝子を含む遺伝子構築物にもさらに拡大される。さらに、本発明は、該細胞、組織及び器官に由来する再生された組織、器官及び生物体、並びにそれらの繁殖体及び子孫にも拡大される。
例えば、植物はホルモンを含有する培地上で形質転換された植物の細胞、又は組織又は器官から再生しうる。再生された植物は、形質転換細胞と非形質転換細胞のキメラ、クローンの形質転換体(例えば、発現カセットを含むよう形質転換された全細胞)、形質転換された組織及び形質転換されていない組織の接木(例えば、柑橘種において形質転換されていない若枝に接木される形質転換された台木)などの多様な形態をとりうる。形質転換植物は、クローン繁殖又は古典的な育種技術などによる種々の方法により繁殖しうる。例えば、第一世代(即ちT1)の形質転換植物は同型接合の第二世代(T2)の形質転換植物をもたらすように自家受粉させてもよく、さらにT2植物は古典的な育種技術により繁殖させてもよい。
【0057】
本発明のいくつかの態様を以下に示す。
(1) 動物の細胞、組織又は器官における標的遺伝子の発現を抑制し、遅延させ又はその他の方法で低減させる方法であって、該標的遺伝子のヌクレオチド配列又はその領域又はその相補的配列と実質的に同一なヌクレオチド配列の縦列コピーを含む分散した核酸分子又は外来性核酸分子の1以上を、該標的遺伝子のmRNA産物の翻訳が改変されるのに十分な時間及び条件の下で、該動物の細胞、組織又は器官に導入する工程を含む方法であるが、該mRNA産物の転写が専ら抑制又は低減されるのではないことを条件とする方法。
(2) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子が標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列の逆方向反復を含むものである(1)記載の方法。
(3) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子が該標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列の直列反復を含むものである(1)記載の方法。
(4) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子が該標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列の直列反復及び逆方向反復の両者を含むものである(1)記載の方法。
(5) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子中の標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列のコピー数が2である(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(6) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子中の標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列のコピー数が3である(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(7) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子中の標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列のコピー数が4である(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(8) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子中の標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列のコピー数が6である(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(9) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子中の標的遺伝子配列又はその領域又はそれに相補的配列のコピー数が10である(1)〜(4)のいずれかに記載の方法。
(10) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子が標的遺伝子配列の縦列反復を含み、そして該縦列反復の反復単位の1以上が別の単位とは離れており、核酸含有スタッファー断片となっているものである(1)〜(9)のいずれかに記載の方法。
(11) 該動物がマウスである(1)記載の方法。
(12) 該標的遺伝子が該動物の細胞、組織又は器官のゲノム内に含まれる遺伝子である(1)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13) 該標的遺伝子がα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼである(12)記載の方法。
(14) 該標的遺伝子が該動物の細胞、組織又は器官又は該細胞、組織又は器官を含む生物の病原体のゲノム由来のものである(1)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(15) 該病原体がウイルスである(14)記載の方法。
(16) 該ウイルスがBEVである(15)記載の方法。
(17) 該標的遺伝子の発現を有効に調節するその能力により該分散した核酸分子(単数又は複数)又は外来性核酸分子(単数又は複数)を選択する工程をさらに含む(1)〜(16)のいずれかに記載の方法。
(18) 動物の細胞、組織又は器官中の標的遺伝子の発現を抑制し、遅延させ又は他の方法で低減させる方法であって、
(i) 標的遺伝子のヌクレオチド配列又はその領域又はそれに相補的な配列と実質的に同一なヌクレオチド配列の縦列反復を含む分散した核酸分子又は外来性核酸分子の1以上を選択する工程、
(ii) 該動物の細胞、組織又は器官中で機能し得るプロモーター配列に機能しうるように連結した該分散した核酸分子又は外来性核酸分子を含む合成遺伝子を製造する工程、
(iii) 該細胞、組織又は器官に該合成遺伝子を導入する工程、及び
(iv) 該合成遺伝子を、該標的遺伝子のmRNA産物の翻訳が変更されるのに十分な時間及び条件の下で、ただし該mRNA産物の転写が専ら抑制又は低減されるのではないことを条件として、該細胞、組織又は器官内で発現させる工程、を含む方法。
(19) 動物の細胞、組織、器官又は生物全体に対しウイルス病原体に対する抵抗性又は免疫を付与する方法であって、ウイルス遺伝子のmRNA産物の翻訳が遅延され又は他の方法で低減されるのに十分な時間及び条件の下で、ただし該mRNA産物の転写が専ら抑制又は低減されるのではないことを条件として、ウイルス病原体由来のヌクレオチド配列又はそれに相補的な配列の縦列反復を含む分散した核酸分子又は外来性核酸分子の1以上を導入する工程を含む方法。
(20) 該ウイルスが動物病原体である(19)記載の方法。
(21) 該ウイルスがBEVである(20)記載の方法。
(22) 該動物の細胞、組織、器官又は生物に対する抵抗性又は免疫を付与するその能力により、該分散した核酸分子(単数又は複数)又は外来性核酸分子(単数又は複数)を選択する工程をさらに含む(19)〜(21)のいずれかに記載の方法。
(23) 動物の細胞、組織、器官又は生物全体に対しウイルス病原体への抵抗性又は免疫を付与する方法であって、
(i) ウイルス病原体由来のヌクレオチド配列又はそれに相補的な配列の縦列反復を含む分散した核酸分子又は外来性核酸分子の1以上を選択する工程、
(ii) 該細胞、組織、器官又は生物全体中で機能し得るプロモーター配列に機能しうるように連結された該分散した核酸分子又は外来性核酸分子を含む合成遺伝子を製造する工程、
(iii) 該合成遺伝子を、該細胞、組織、器官又は生物全体に導入する工程、及び
(iv) ウイルス遺伝子のmRNA産物の翻訳が変更されるのに十分な時間及び条件の下で、ただし該mRNA産物の転写が専ら抑制又は低減されるのではないことを条件として、該細胞、組織又は器官中で該合成遺伝子を発現させる工程、
を含む方法。
(24) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子が、ウイルスのレプリカーゼ、ポリメラーゼ、コートタンパク質又はコート以外のタンパク質の遺伝子をコードするヌクレオチド配列の縦列のコピーを含むものである(19)〜(23)のいずれかに記載の方法。
(25) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子がウイルスポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列の縦列のコピーを含むものである(24)記載の方法。
(26) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子がウイルスのコートタンパク質をコードするヌクレオチド配列の縦列のコピーを含むものである(25)記載の方法。
(27) 動物の細胞、組織、器官又は生物全体の中での標的遺伝子の発現を抑制し、遅延させ又は他の方法で低減させるため、(1)に記載の方法に従って使用される場合の合成遺伝子であって、該動物の細胞、組織、器官又は生物全体中で機能し得るプロモーター配列の制御の下で機能し得るように配置された該標的遺伝子のヌクレオチド配列又はその誘導体又はそれに相補的な配列と実質的に同一なヌクレオチド配列の縦列のコピーを含む分散した核酸分子又は外来性核酸分子を含む合成遺伝子。
(28) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子が、動物の細胞、組織、器官又は生物のゲノムにとって内因性である遺伝配列又は該動物の細胞、組織、器官又は生物の非内因性遺伝子由来の遺伝子配列の縦列逆方向反復及び/又は直列反復を含むものである(27)に記載の合成遺伝子。
(29) 該非内因性遺伝子が動物の細胞、組織、器官又は生物のウイルス病原体に由来するものである(28)に記載の合成遺伝子。
(30) 該非内因性遺伝子が動物ウイルスに由来するものである(29)に記載の合成遺伝子。
(31) 該動物ウイルスがBEVである(30)記載の合成遺伝子。
(32) 該非内因性遺伝子がBEVポリメラーゼ遺伝子に由来するものである(30)に記載の合成遺伝子。
(33) 該プロモーターがCMV−IEプロモーター配列又はSV40プロモーター配列である(32)に記載の合成遺伝子。
(34) 該分散した核酸分子又は外来性核酸分子がブタのα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子の縦列逆方向反復及び/又は直列反復を含むものである(27)又は(28)に記載の合成遺伝子。
(35) 該ブタのα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子がCMVプロモーター配列と機能しうるように連結して配置されているものである(24)に記載の合成遺伝子。
(36) 標的遺伝子のヌクレオチド配列の縦列のコピーが2以上のプロモーター配列に機能しうるように連結されているものである(27)〜(35)のいずれかに記載の合成遺伝子。
(37) 標的遺伝子のヌクレオチド配列の縦列のコピーのそれぞれが空間的に離れたプロモーター配列に機能し得るように連結されているものである(36)に記載の合成遺伝子。
(38) (27)〜(37)のいずれかに記載の合成遺伝子を含む遺伝子構築物。
(39) プラスミドpCMV.BEVx2、プラスミドpCMV.BEV.GFP.VEB、プラスミドpCMV.BEV.SV40L.BEV、及びプラスミドpCMV.BEV.SV40L.VEBを含むリストから選択される(38)に記載の遺伝子構築物。
(40) プラスミドpCMV.Galtx2、及びプラスミドpCMV.Galtx4から選択される(38)に記載の遺伝子構築物。
(41) 動物の細胞、組織、若しくは器官又は生物全体に対しBEVに対する免疫又は抵抗性を付与するための(39)に記載の遺伝子構築物の使用。
(42) そうでなければそれを発現するであろう動物の細胞、組織、器官又は生物全体中でのα−1,3−ガラクトシルトランスフェラーゼの発現を遅延させ、抑制し又はその他の方法で低減させるための(40)に記載の遺伝子構築物の使用。
(43) (27)〜(37)のいずれかに記載の合成遺伝子又は(38)〜(40)のいずれかに記載の遺伝子構築物を含む動物の細胞、組織、器官又は生物全体。
【0058】
さらに、本発明は以下の非限定的な実施例を参照することにより記述される。
【実施例1】
【0059】
実施例1.CMVプロモーター配列及び/又はSV40Lプロモーター配列に連結させたBEVポリメラーゼ遺伝子配列を含む遺伝子構築物
1.市販のプラスミド
プラスミドpBluescriptII(SK+)
プラスミドpBluescriptII(SK+)はストラタジーン社から購入でき、LacZプロモーター配列及びlacZ-アルファ転写ターミネーターを含み、その中に構造遺伝子配列の挿入用に多重クローニング部位を備える。このプラスミドはColE1とflの複製起点及びアンピシリン耐性遺伝子をさらに含む。
【0060】
プラスミドpSVL
プラスミドpSVLはファルマシア社から購入でき、SV40後期プロモーター配列の供給源として役立つ。pSVLのヌクレオチド配列もゲンバンク受託番号U13868として一般に入手できる。
【0061】
プラスミドpCR2.1
プラスミドpCR2.1はインビトロゲン社から購入でき、LacZプロモーター配列及びlacZ−α転写ターミネーターを含み、それらの間に構造遺伝子配列の挿入用にクローニング部位を備えている。プラスミドpCR2.1は、ポリメラーゼ連鎖反応の間にTaqポリメラーゼによりしばしば合成されるA−オーバーハングにより核酸断片をクローニングするよう設計されている。この様式でクローニングされたPCR断片は両側に二つのEcoRI部位が隣接している。このプラスミドはColE1とf1の複製起点並びにカナマイシン耐性及びアンピシリン耐性の遺伝子をさらに含む。
【0062】
プラスミドpEGFP-N1・MCS
プラスミドpEGFP-N1・MCS(図1;クローンテック社)は、野生型の緑色蛍光タンパク質(GFP、プラッシェルら,1992、チャルフィーら,1994、イノウエとツジ,1994)をより明るい蛍光に最適化させた赤色シフトした変異体をコードするオープン・リーディング・フレームに機能しうるように連結させたCMV-IEプロモーターを含む。pEGFP-N1・MCSによってコードされたこの特定のGFP変異体はコルマックらにより開示された(1996年)。プラスミドpEGFP-N1・MCSは、CMV-IEプロモーターとGFPのオープン・リーディング・フレームとの間に位置するBglII部位とBamHI部位を含む多重クローニング部位及び多数の他の制限エンドヌクレアーゼ切断部位を含む。多重クローニング部位にクローニングされた構造遺伝子は、機能的な翻訳開始部位を欠く場合、このような構造遺伝子の配列はタンパク質レベルで発現しない(即ち翻訳されない)けれども、転写レベルでは発現する。多重クローニング部位に挿入された機能的な翻訳開始部位を含む構造遺伝子配列は、GFPをコードする配列と共に枠をそろえてクローニングされる場合、GFP融合ポリペプチドとして発現する。このプラスミドは、CMV-IEプロモーター配列から転写されたmRNAの3'末端の適切なプロセシングを指示するため、GFPのオープン・リーディング・フレームの下流にSV40ポリアデニル化シグナルをさらに含む。このプラスミドは、動物細胞で機能するSV40の複製起点と、カナマイシン、ネオマイシン又はG418で形質転換細胞を選択するためのTn5(図1のKan/neo)に由来するネオマイシン/カナマイシン耐性遺伝子及びHSVチミジン・キナーゼ・ポリアデニル化シグナル(図1のHSV・TKポリ(A))に機能しうるように連結させたSV40初期プロモーター(図1のSV40・EP)を含むネオマイシン耐性遺伝子と、細菌細胞で機能するpUC19の複製起点(図1のpUC・Ori)と、そして一本鎖DNA生産のためのf1の複製起点(図1のf1・Ori)とをさらに含む。
【0063】
2.発現カセット
プラスミドpCMV.cass
プラスミドpCMV.cass(図2)は、CMV-IEプロモーター配列の制御下で構造遺伝子配列を発現させるための発現カセットである。プラスミドpCMV.cassは以下のようにGFPのオープン・リーディング・フレームを欠失させることによりpEGFP-N1・MCSから誘導した。プラスミドpEGFP-N1・MCSをPinAIとNotIで消化し、PfuIポリメラーゼを用いて平滑末端化した後、再連結した。構造遺伝子配列は、PinAI部位を欠くことを除いてpEGFP-N1・MCSの多重クローニング部位と同一である多重クローニング部位を用いてpCMV.cass中へクローニングする。
【0064】
プラスミドpCMV.SV40L.cass
プラスミドpCMV.SV40L.cass(図3)は、CMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列が同方向の転写を指示することができるように、合成のポリA部位と、SalI断片としてプラスミドpCMV.cass(図2)のSalI部位にサブクローニングされたプラスミドpCR.SV40L(図4)に由来するSV40L後期プロモーター配列とを含む。従って、SV40プロモーター配列の5’末端のこの合成ポリ(A)部位は、このプラスミドのCMV-IEプロモーターから発現される構造遺伝子に対する転写ターミネーターとして用いられる。このプラスミドは、SV40後期プロモーターと合成ポリ(A)部位との間に存在する多重クローニング部位により該構造遺伝子の挿入を可能とする(図5)。この多重クローニング部位はCMV-IEプロモーター及びSV40後期プロモーターの後方に位置し、BamHI部位及びBglII部位を含む。
【0065】
プラスミドpCMV.SV40LR.cass
プラスミドpCMV.SV40LR.cassは、CMV-IEプロモーター又はSV40後期プロモーターが望みのままにセンス又はアンチセンスの方向で構造遺伝子又は多重構造遺伝子単位を転写しうるように、SalI断片としてプラスミドpCMV.cass(図2)のSalI部位にサブクローニングされたプラスミドpCR.SV40Lに由来するSV40L後期プロモーター配列を含む。多重クローニング部位は、このプラスミドにおいて反対方向のCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列の間に位置し、構造遺伝子配列の導入を容易にする。このプラスミドから構造遺伝子配列を発現させるためには、このプラスミドで反対方向のCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列との間に位置する転写終結配列はないので、3’末端に位置するそれ自身の転写終結配列が導入されなければならない。pCMV.SV40LR.cassに導入される構造遺伝子配列又は多重構造遺伝子単位は下記のように5’と3’のポリアデニル化シグナルの両方を含むことが好ましい、即ち
(i)構造遺伝子配列又は多重構造遺伝子単位がCMV-IEプロモーター配列からセンスの方向で及び/又はSV40後期プロモーターからアンチセンスの方向で発現される場合5'−ポリアデニル化シグナルはアンチセンスの方向にあり、3'ポリアデニル化シグナルはセンスの方向にあり、そして
(ii) 構造遺伝子配列又は多重構造遺伝子単位がCMV-IEプロモーター配列からアンチセンスの方向で及び/又はSV40後期プロモーターからセンスの方向で発現される場合5'−ポリアデニル化シグナルはセンスの方向にあり、3'ポリアデニル化シグナルはアンチセンスの方向にある。
【0066】
その代わり又はそれに加えて、適切な方向を向いたターミネーター配列は図4に示すようにCMVプロモーター及びSV40Lプロモーターの5'末端に位置しうる。
又は、プラスミドpCMV.SV40LR.cassをさらに改変して、CMV-IEプロモーター又はSV40プロモーターの配列のいずれかからセンス又はアンチセンスの方向でそれらの間に位置する任意の構造遺伝子の発現を促進するよう適切な方向でCMV-IEプロモーター配列とSV40プロモーター配列との間に位置する2つのポリアデニル化シグナルを含む誘導体プラスミドを作成する。本発明は明らかにこのような誘導体を包含する。
又は、適切な方向を向いたターミネーターは、アンチセンス方向の2つのプロモーターのそれぞれが読み込まれた後に転写終結が起こるように、CMVプロモーター及びSV40Lプロモーターの上流に配置することができよう。
【0067】
3.中間構築物
pCR.Bgl-GFP-Bamプラスミド
pCR.Bgl-GFP-Bamプラスミド(図5)は、lacZプロモーターの制御下で機能しうるように配置されたpEGFP-N1・MCSプラスミド(図1)に由来するGFPオープン・リーディング・フレームの内部領域を含む。このプラスミドを作成するために、GFPオープン・リーディング・フレームの領域を増幅プライマーのBgl-GFP(配列番号:1)とGFP-Bam(配列番号:2)とを用いてpEGFP-N1・MCSから増幅し、pCR2.1プラスミドにクローニングした。pCR.Bgl-GFP-Bamプラスミドにおける内部GFPをコードする領域は機能的な翻訳開始コドン及び終始コドンを欠く。
【0068】
pBSII(SK+).EGFPプラスミド
pBSII(SK+).EGFPプラスミド(図6)は、lacZプロモーターの制御下で機能しうるように配置されたpEGFP-N1・MCSプラスミド(図1)に由来するEGFPオープン・リーディング・フレームを含む。このプラスミドを作成するために、pEGFP-N1・MCSのEGFPコード領域をNotI/XhoI断片として切り出し、pBluescriptII(SK+)プラスミドのNotI/XhoIクローニング部位にクローニングした。
【0069】
pCMV.EGFPプラスミド
pCMV.EGFPプラスミド(図7)はCMV-IEプロモーター配列の制御下でEGFP構造遺伝子を発現できる。このプラスミドを作成するため、pBSII(SK+).EGFPプラスミド由来のEGFP配列をBamHI/SacI断片として切り出し、pCMV.cassプラスミド(図2)のBglII/SacI部位にクローニングした。
【0070】
pCR.SV40Lプラスミド
pCR.SV40Lプラスミド(図8)はpCR2.1(ストラタジーン社)にクローニングされたpSVLプラスミド(ゲンバンク受託番号U13868、ファルマシア社)に由来するSV40後期プロモーターを含む。このプラスミドを作成するため、pCMV.cassへの増幅されたDNA断片のサブクローニングを容易にするためのSalIクローニング部位を含むプライマーのSV40-1(配列番号:3)及びSV40-2(配列番号:4)を用いて、SV40後期プロモーターを増幅した。このプライマーは5’末端に合成のポリ(A)部位も含むため、増幅産物はSV40プロモーター配列の5’末端に合成のポリ(A)部位を含む。
【0071】
pCR.BEV.1プラスミド
BEVのRNA依存性RNAポリメラーゼをコードする領域は、標準的な増幅条件の下でBEV-1(配列番号:5)とBEV-2(配列番号:6)と称するプライマーを用いて、同ポリメラーゼをコードする全長cDNAクローンから1385bpのDNA断片として増幅された。増幅されたDNAはBEV-1プライマー配列に由来する5'-BglII制限酵素部位及びBEV-2プライマー配列に由来する3'BamHI制限酵素部位を含んでいた。さらに、BEV-1プライマー配列は15〜17位に遺伝子工学的に導入された翻訳開始シグナル5'-ATG-3’を含むため、増幅されたBEVポリメラーゼ構造遺伝子はBEVポリメラーゼをコードするヌクレオチド配列とともに枠内に開始部位を含む。こうして、増幅されたBEVポリメラーゼ構造遺伝子はBEVポリメラーゼをコードする配列に対してすぐ上流に(即ち並置して)ATG開始コドンを含む。増幅されたDNAに翻訳終始コドンはない。このプラスミドは図9に示す。
【0072】
pCR.BEV.2プラスミド
完全なBEVポリメラーゼをコードする領域はプライマーのBEV-1とBEV-3を用いて同ポリメラーゼをコードする全長のcDNAクローンから増幅された。プライマーBEV−3は5位から10位までにBamHI制限酵素部位及び11位から13位に翻訳終止シグナルの補完物を含む。結果として、翻訳開始シグナルと翻訳終止シグナルとを含むオープン・リーディング・フレームがBglIIとBamHIの制限部位の間に含められた。この増幅断片をpCR2.1(ストラタジーン社)にクローニングしてpCR2.BEV.2プラスミド(図10)を作成した。
【0073】
pCR.BEV.3プラスミド
翻訳できないBEVポリメラーゼ構造遺伝子を、増幅プライマーのBEV-3(配列番号:7)とBEV-4(配列番号:8)とを用いて全長のBEVポリメラーゼcDNAクローンから増幅した。プライマーBEV-4は5〜10位のBglIIクローニング部位を含み、このBglII部位の下流の配列はBEVポリメラーゼ遺伝子のヌクレオチド配列に相同である。プライマーのBEV-3とBEV-4で増幅されたDNA産物には機能的なATG開始コドンは存在しない。このBEVポリメラーゼはポリタンパク質の一部として発現され、その結果、この遺伝子にATG翻訳開始部位は存在しない。この増幅されたDNAをプラスミドpCR2.1(ストラタジーン社)にクローニングしてpCR.BEV.3プラスミド(図11)を得た。
【0074】
pCMV.EGFP.BEV2プラスミド
pCMV.EGFP.BEV2プラスミド(図12)は、BglII/BamHI断片としてのpCR.BEV.2由来のBEVポリメラーゼ配列をpCMV.EGFPのBamHI部位中へクローニングすることにより作成した。
【0075】
4.対照プラスミド
pCMV.BEV.2プラスミド
pCMV.BEV.2プラスミド(図13)は、CMV-IEプロモーター配列の制御下でBEVポリメラーゼの完全なオープン・リーディング・フレームを発現できる。pCMV.BEV.2を作成するために、pCR.BEV.2由来のBEVポリメラーゼ配列を、BglIIからBamHIまでの断片としてセンス方向でBglII/BamHIで消化したpCMV.cass(図2)中にサブクローニングした。
【0076】
pCMV.BEV.3プラスミド
pCMV.BEV.3プラスミド(図14)は、CMV-IEプロモーター配列の制御の下でセンス方向で翻訳され得ないBEVポリメラーゼ構造遺伝子を発現する。pCMV.BEVntを作成するため、pCR.BEV.3由来のBEVポリメラーゼ配列をBglII/BamHI断片としてセンス方向でBglII/BamHIで消化したpCMV.cass中にサブクローニングした(図2)。
【0077】
pCMV.VEBプラスミド
pCMV.VEBプラスミド(図15)は、CMV-IEプロモーター配列の制御の下でアンチセンスのBEVポリメラーゼのmRNAを発現する。pCMV.VEBプラスミドを作成するため、pCR.BEV.2由来のBEVポリメラーゼ配列をBglIIからBamHIまでの断片としてアンチセンス方向でBglII/BamHIで消化したpCMV.cass(図2)中にサブクローニングした。
【0078】
pCMV.BEV.GFPプラスミド
pCMV.BEV.GFPプラスミド(図16)は、pCR.Bgl-GFP-Bam由来のGFP断片をBglII/BamHI断片として、BamHIで消化したpCMV.BEV.2中にクローニングすることにより構築した。このプラスミドは幾つかの実験における対照として役立ち、そして中間構築物としても役立つ。
【0079】
pCMV.BEV.SV40-L.0プラスミド
pCMV.BEV.SV40-L.0プラスミド(図17)は、pCMV.SV40L.cassプラスミドのCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーターの配列の間にセンス方向で挿入されたpCR.BEV.2由来の翻訳可能なBEVポリメラーゼ構造遺伝子を含む。pCMV.BEV.SV40L-Oプラスミドを作成するため、BEVポリメラーゼ構造遺伝子をBglIIからBamHI断片としてBglIIで消化したpCMV.SV40L.cassDNA中にサブクローニングした。
【0080】
pCMV.O.SV40L.BEVプラスミド
pCMV.O.SV40L.BEVプラスミド(図18)は、pCMV.SV40L.cassプラスミドに存在する縦列のCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列との下流にクローニングされたpCR.BEV.2プラスミドに由来する翻訳可能なBEVポリメラーゼ構造遺伝子を含む。pCMV.O.SV40L.BEVプラスミドを作成するため、BEVポリメラーゼ構造遺伝子をBglIIからBamHIまでの断片としてセンス方向でBamHIで消化したpCMV.SV40L.cass DNA中にサブクローニングした。
【0081】
pCMV.O.SV40L.VEBプラスミド
pCMV.O.SV40L.VEBプラスミド(図19)は、pCMV.SV40L.cassプラスミドに存在する縦列のCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列の下流にクローニングされたpCR.BEV.2プラスミドに由来するアンチセンスのBEVポリメラーゼ構造遺伝子を含む。pCMV.O.SV40L.VEBプラスミドを作成するため、BEVポリメラーゼ構造遺伝子をBglIIからBamHIまでの断片としてアンチセンス方向でBamHIで消化したpCMV.SV.40L.cassDNA中にサブクローニングした。
【0082】
5.試験プラスミド
pCMV.BEVx2プラスミド
pCMV.BEVx2プラスミド(図20)は、CMV-IEプロモーター配列の制御の下で完全なBEVポリメラーゼのオープン・リーディング・フレームの直列反復を含む。少なくとも真核細胞では、CMV-IEプロモーターのより近くに位置するオープン・リーディング・フレームは翻訳可能である。pCMV.BEVx2を作成するために、pCR.BEV.2プラスミド由来のBEVポリメラーゼ構造遺伝子をBglIIからBamHIまでの断片としてセンス方向で既にその中に存在するBEVポリメラーゼ構造遺伝子のすぐ下流にあるBamHIで消化したpCMV.BEV.2中にサブクローニングした。
【0083】
pCMV.BEVx3プラスミド
pCMV.BEVx3プラスミド(図21)は、CMV-1Eプロモーターの制御下でBEVポリメラーゼの三つの完全なオープン・リーディング・フレームの直列反復を含む。pCMV.BEVx3を作成するため、pCR.BEV.2由来のBEVポリメラーゼ断片を、BglII/BamHI断片としてセンス方向で既にその中に存在するBEVポリメラーゼ配列のすぐ下流にあるpCMV.BEVx2のBamHI部位中にクローニングした。
【0084】
pCMV.BEVx4プラスミド
pCMV.BEVx4プラスミド(図22)は、CMV-IEプロモーターの制御の下でBEVポリメラーゼの四つの完全なオープン・リーディング・フレームの直列反復を含む。pCMV.BEVx4を作成するため、pCR.BEV.2由来のBEVポリメラーゼ断片を、BglII/BamHI断片として、センス方向で、既にその中に存在するBEVポリメラーゼ配列のすぐ下流にあるpCMV.BEVx3のBamHI部位中にクローニングした。
【0085】
pCMV.BEV.SV40L.BEVプラスミド
pCMV.BEV.SV40L.BEVプラスミド(図23)は、機能しうるように配置され且つそれぞれCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列の制御の下にある二つのBEVポリメラーゼ構造遺伝子を含む多重構造遺伝子単位を含む。pCMV.BEV.SV40L.BEVプラスミドを作成するため、pCR.BEV.2に存在する翻訳可能なBEVポリメラーゼ構造遺伝子を、BglIIからBamHIまでの断片としてセンス方向で、BamHIで消化したpCMV.BEV.SV40L-Oに存在するSV40後期プロモーター配列の後方にサブクローニングした。
【0086】
pCMV.BEV.SV40L.VEBプラスミド
pCMV.BEV.SV40L.VEBプラスミド(図24)は、機能しうるように配置され且つそれぞれCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列の制御の下にある二つのBEVポリメラーゼ構造遺伝子を含む多重構造遺伝子単位を含む。pCMV.BEV.SV40L.VEBプラスミドを作成するため、pCR.BEV.2に存在する翻訳可能なBEVポリメラーゼ構造遺伝子を、BglIIからBamHIまでの断片としてアンチセンス方向で、BamHIで消化したpCMV.BEV.SV40L-Oに存在するSV40後期プロモーター配列の後方にサブクローニングした。このプラスミドでは、BEVポリメラーゼ構造遺伝子はCMV-IEプロモーターの制御の下でセンス方向で発現して翻訳可能なmRNAを産生する一方、このBEVポリメラーゼ構造遺伝子はSV40プロモーターの制御の下でも発現してアンチセンスのmRNA種を産生する。
【0087】
pCMV.BEV.GFP.VEBプラスミド
pCMV.BEV.GFP.VEBプラスミド(図25)は、逆反復の各BEV構造遺伝子配列間にGFPオープン・リーディング・フレーム(スタッファー断片)の挿入によって分断されたBEV構造遺伝子の逆反復即ちパリンドロームを含む。pCMV.BEV.GFP.VEBプラスミドを作成するため、pCR.Bgl-GFP-Bam由来のGFPスタッファー断片を、まずBglIIからBamHIまでの断片としてBamHIで消化したpCMV.BEV.2中にセンス方向でサブクローニングしてpCMV.BEV.GFP中間プラスミドを得た。該BEVポリメラーゼをコードする配列と該GFPをコードする配列とは5'-BglIIからBamHI-3'までの同じ断片内に含まれる。次に、pCMV.BEV.2由来のBEVポリメラーゼ構造遺伝子を、BglIIからBamHIまでの断片としてアンチセンス方向で、BamHIで消化したpCMV.BEV.GFP中にクローニングした。pCMV.BEV.GFP.VEBプラスミドのCMV-IEプロモーター配列により近いBEVポリメラーゼ構造遺伝子は少なくとも真核細胞中で翻訳され得る。
【0088】
pCMV.EGFP.BEV2.PFGプラスミド
pCMV.EGFP.BEV2.PFGプラスミド(図26)は、逆反復の各GFP構造遺伝子の間にBEVポリメラーゼ配列を挿入することによって分断されたGFPパリンドロームを含む。このプラスミドを作成するため、pCR.Bgl-GFP-Bam由来のGFP断片を、BglII/BamHI断片として、CMVプロモーターに関してアンチセンス方向で、pCMV.EGFP.BEV2のBamHI部位中にクローニングした。
【0089】
pCMV.BEV.SV40LRプラスミド
pCMV.BEV.SV40LRプラスミド(図27)は、機能しうるように配置され且つ反対方向のCMV-IEプロモーター配列とSV40後期プロモーター配列により別々に制御されている完全なBEVポリメラーゼのオープン・リーディング・フレームを含む構造遺伝子を含み、それにより、全長のBEVポリメラーゼ構造遺伝子の少なくとも両方の鎖に由来するBEVポリメラーゼの転写産物を潜在的に生産可能である。pCMV.BEV.SV40LRプラスミドを作成するために、pCR.BEV.2に存在する翻訳可能なBEVポリメラーゼ構造遺伝子を、BglIIからBmHIまでの断片として、BEVのオープン・リーディング・フレームがCMV-IEプロモーター配列に関してセンス方向に存在するように、pCMV.SV40LR.cassの唯一つのBglII部位にサブクローニングした。
【0090】
当業者は、このクローニング戦略を用いて、pCR.BEV.2に由来するBEVポリメラーゼ断片がCMV-IEプロモーター配列に関してアンチセンス方向に挿入されているプラスミドを作成することが可能であることを認めるはずである。本発明はこのような遺伝的構築物をも包含する。
【実施例2】
【0091】
実施例2.CMVプロモーター配列及び/又はSV40Lプロモーター配列に機能しうるように連結されたブタのα-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ(Galt)構造遺伝子の配列又は配列群を含む遺伝子構築物
1.市販のプラスミド
pcDNA3プラスミド
pcDNA3プラスミドは、インビトロゲン社から購入でき、CMV-IEプロモーター及びBGHpA転写ターミネーターを含み、構造遺伝子配列を挿入するための多重クローニング部位を備えている。さらに、このプラスミドはColE1とflの複製起点及びネオマイシン耐性とアンピシリン耐性の遺伝子を含む。
【0092】
2.中間プラスミド
pcDNA3.Galtプラスミド
pcDNA3.Galtプラスミド(ブレサゲン社、南オーストラリア州、オーストラリア、図28)はpcDNA3プラスミド(インビトロゲン社)であり、CMV-IEプロモーター配列の制御の下で機能しうるブタのアルファ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ(Galt)遺伝子をコードするcDNA配列を含むので、Galtが該プラスミドから発現され得る。pcDNA3.Galtプラスミドを作成するために、ブタのアルファ-1,3-ガラクトシルトランスフェラーゼ遺伝子のcDNAをEcoRI断片としてpcDNA3のEcoRIクローニング部位中にクローニングした。このプラスミドはColE1とf1の複製起点及びネオマイシンとアンピシリンの耐性遺伝子をさらに含む。
【0093】
3.対照プラスミド
pCMV.Galtプラスミド
pCMV.Galtプラスミド(図29)はCMV-IEプロモーター配列の制御の下でGalt構造遺伝子を発現することができる。pCMV.Galtプラスミドを作成するため、pcDNA3.Galtプラスミド由来のGalt配列をEcoRI断片として切り出し、pCMV.cassプラスミド(図2)のEcoRI部位にセンス方向でクローニングした。
【0094】
pCMV.EGFP.Galtプラスミド
pCMV.EGFP.Galtプラスミド(図30)はCMV-IEプロモーター配列の制御の下でGalt融合ポリペプチドとしてGalt構造遺伝子を発現できる。pCMV.EGFP.Galtプラスミドを作成するため、pCMV.Galt(図29)由来のGalt配列をBglII/BamHI断片として切り出し、pCMV.EGFPのBamHI部位中にクローニングした。
【0095】
pCMV.Galt.GFPプラスミド
pCMV.Galt.GFPプラスミド(図31)は、Galt・cDNAをpCDNA3由来のEcoRI断片としてセンス方向でEcoRIで消化したpCMV.EGFP中にクローニングすることにより作成した。このプラスミドは対照としても中間構築物としても役立つ。
【0096】
pCMV.Galt.SV40L.Oプラスミド
pCMV.Galt.SV40L.Oプラスミド(図32)は、pCMV.SV40L.cassに存在するCMVプロモーターの下流にクローニングされたGalt構造遺伝子を含む。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt・cDNA断片を、BglII/BamHIとしてBglIIで消化したpCMV.SV40L.cass中にセンス方向でクローニングした。
【0097】
pCMV.O.SV40L.tlaGプラスミド
pCMV.O.SV40L.tlaGプラスミド(図33)は、pCMV.SV40L.cassに存在するSV40Lプロモーターの下流にアンチセンス方向でGalt構造遺伝子クローンを含む。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt・cDNA断片を、BglII/BamHIとしてBamHIで消化したpCMV.SV40L.cass中にアンチセンス方向でクローニングした。
【0098】
pCMV.O.SV40L.Galtプラスミド
pCMV.O.SV40L.Galtプラスミド(図34)は、pCMV.SV40L.cassに存在するSV40Lプロモーターの下流にクローニングされたGalt構造遺伝子を含む。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt・cDNA断片を、BglII/BamHI断片としてBamHIで消化したpCMV.SV40L.cass中にセンス方向でクローニングした。
【0099】
4.試験プラスミド
pCMV.Galtx2プラスミド
pCMV.Galtx2プラスミド(図35)は、CMV-IEプロモーター配列の制御の下にGaltオープン・リーディング・フレームの直列反復を含む。少なくとも真核細胞において、CMV-IEプロモーターのより近くに位置するオープン・リーディング・フレームは翻訳可能である。pCMV.Galtx2を作成するため、pCMV.Galt由来のGalt構造遺伝子を、BglII/BamHI断片として切り出し、pCMV.GaltのBamHIクローニング部位中にセンス方向でクローニングした。
【0100】
pCMV.Galtx4プラスミド
pCMV.Galtx4プラスミド(図36)は、CMV-IEプロモーター配列の制御の下にGaltオープン・リーディング・フレームの四つの直列反復を含む。少なくとも真核細胞において、CMV-IEプロモーターのより近くに位置するオープン・リーディング・フレームは翻訳可能である。pCMV.Galtx4を作成するため、pCMV.Galtx2由来のGaltx2配列を、BglII/BamHI断片として切り出し、pCMV.Galtx2のBamHIクローニング部位中にセンス方向でクローニングした。
【0101】
pCMV.Galt.SV40L.Galtプラスミド
pCMV.Galt.SV40L.Galtプラスミド(図37)は、Galtの二つのセンスの転写産物を発現するよう設計される。すなわち、一方はCMVプロモーターにより駆動されたものであり、他方はSV40Lプロモーターにより駆動されたものである。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt・cDNA断片をBglII/BamHI断片としてBglIIで消化したpCMV.O.SV40.Galt中にセンス方向でクローニングした。
【0102】
pCMV.Galt.SV40L.tlaGプラスミド
pCMV.Galt.SV40L.tlaGプラスミド(図38)は、CMVプロモーターにより駆動されGaltのセンスの転写産物を発現し、かつ、SV40Lプロモーターにより駆動されアンチセンスの転写産物を発現するように設計される。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt・cDNA断片をBglII/BamHI断片としてBglIIで消化したpCMV.O.SV40.tlaG中にセンス方向でクローニングした。
【0103】
pCMV.Galt.GFP.tlaGプラスミド
pCMV.Galt.GFP.tlaGプラスミド(図39)は、逆反復の各Galt構造遺伝子の間がGFP配列の挿入により分断されたGaltパリンドロームを含む。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt・cDNAを、BglII/BamHI断片として、pCMV.Galt.GFPのBamHI部位にCMVプロモーターに関してアンチセンス方向でクローニングした。
【0104】
pCMV.EGFP.Galt.PFGプラスミド
pCMV.EGFP.Galt.PFGプラスミド(図40)は、逆反復の各GFP構造遺伝子の間がGalt配列の挿入により分断されたGFPパリンドロームを含み、その発現はCMVプロモーターにより駆動される。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt配列を、BglII/BamHI断片としてBamHIで消化したpCMV.EGFPにセンス方向でクローニングして中間体のpCMV.EGFP.Galt(未表示)を作成し、その後、pCR.Bgl-pCMV.EGFP.Galt由来のGFP配列をアンチセンス方向でさらにクローニングした。
【0105】
pCMV.Galt.SV40LRプラスミド
pCMV.Galt.SV40LRプラスミド(図41)は、pCMV.SV40LR.cass発現カセットにおいて反対方向のCMVプロモーターとSV40Lプロモーターとの間にクローニングされたGalT・cDNA配列を発現するように設計される。このプラスミドを作成するため、pCMV.Galt由来のGalt配列をBglII/BamHI断片としてBglIIで消化したpCMV.SV40LR.cassに35Sプロモーターに関してセンス方向でクローニングした。
【実施例3】
【0106】
実施例3.35Sプロモーター配列及び/又はSCBVプロモーター配列に機能しうるように連結させたPVY・Nia配列を含む遺伝子構築物
1.二元ベクター
pART27プラスミド
pART27プラスミドは二元ベクターであり、pART27発現カセットに適合するよう特別に設計されている。これは、大腸菌とアグロバクテリウム・ツメファシエンスの両方の細菌の複製起点、細菌の選択用のスペクティノマイシン耐性遺伝子、アグロバクテリウムから植物細胞へのDNA転移用の左側及び右側のT-DNA境界領域、及び形質転換した植物細胞を選択するためのカナマイシン耐性カセットを含む。カナマイシン耐性カセットは両T-DNA境界領域の間に位置し、pART27は、両T-DNA境界領域の間にクローニングされるべきpART7などのベクター中で調製された構築物のクローニングを可能とする唯一のNotI制限部位をも含む。pART27の構築はグリーブ、エイ.ピー.(1992年)に記述されている。
【0107】
このベクターにNotI挿入物をクローニングする場合、二つの挿入方向が得られ得る。以下の実施例全てにおいて、前記pART7構築物における35Sプロモーターの方向に関して同じ挿入方向を選択した。これは、異なる挿入方向をもつ異なる構築物の比較から生じうる実験上の人工産物を最小限にするために行った。
【0108】
2.市販のプラスミド
pBC(KS-)プラスミド
pBC(KS-)プラスミドはストラタジーン社から購入でき、構造遺伝子配列の挿入用の多重クローニング部位を備え、LacZプロモーター配列及びlacZ-アルファ転写ターミネーターを含む。このプラスミドはColE1とf1の複製起点及びクロラムフェニコール耐性遺伝子をさらに含む。
【0109】
pSP72プラスミド
pSP72プラスミドはプロメガ社から購入でき、構造遺伝子配列の挿入用の多重クローニング部位を含む。さらに、このプラスミドはColE1の複製起点及びアンピシリン耐性遺伝子を含む。
【0110】
3.発現カセット
pART7プラスミド
pART7プラスミドは35Sプロモーターの後方にクローニングされた配列の発現を駆動するよう設計された発現カセットである。これはクローニングを助けるためのポリリンカー及びオクティピンシンターゼのターミネーター領域を含む。35S発現カセットの両側は、唯一のNotI部位を含むpART27のような二元発現ベクターへのクローニングを行える二つのNotI制限部位が隣接している。この構築はグリーブ、エイ.ピー.(1992年)に記載され、地図は図42に示す。
【0111】
pART7.35S.SCBV.cassプラスミド
p35S.CMV.cassプラスミドは、一つのプラスミド中にクローニングされる二つの異なる遺伝子配列を発現するよう設計された。このプラスミドを作成するため、nosターミネーターとSCBVプロモーターに対応する配列をPCRにより増幅した後、35SプロモーターとOCSとの間にあるpART7のポリリンカーにクローニングした。
得られるプラスミドは以下の因子の配列を有する。
35Sプロモーター−ポリリンカー1−NOSターミネーター−SCBVプロモーター−ポリリンカー2−OCSターミネーター。
ポリリンカー1にクローニングされた配列の発現は35Sプロモーターにより制御され、ポリリンカー2にクローニングされた配列の発現はSCBVプロモーターにより制御される。
【0112】
NOSターミネーター配列は下記の二つのオリゴヌクレオチドを用いてpAHC27プラスミド(クリステンセンとクエイル,1996年)から増幅した。
NOS5'(前向きプライマー、配列番号:9)
5'-GGATTCCCGGGACGTCGCGAATTTCCCCCGATCGTTC−3'、及び
NOS3'(逆向きプライマー、配列番号:10)
5'-CCATGGCCATATAGGCCCGATCTAGTAACATAG-3'。
【0113】
NOS5'の1から17とNOS3'の1から15のヌクレオチド残基は、さらなる制限部位を加えることによる構築物調製を補助するよう設計された付加的なヌクレオチドを表す。NOS5'では、これらはBamHI、SmaI、AatII及びNruI部位の最初の4塩基であり、NOS3'では、これらはNcoIとSfiI部位である。各オリゴヌクレオチドに対する残りの配列は、pAHC27におけるNOS配列の5’末端と3’末端にそれぞれ相同である。
【0114】
SCBVプロモーター配列は下記の二つのオリゴヌクレオチドを用いてpScBV-20プラスミド(トザファーら,1998年)から増幅した。
SCBV5':5'−CCATGGCCTATATGGCCATTCCCCACATTCAAG−3’(配列番号:11)、及び
SCBV3':5'−AACGTTAACTTCTACCCAGTTCCAGAG−3’(配列番号:12)。
【0115】
SCBV5'の1から17のヌクレオチド残基は構築物の調製を助けるよう設計されたNcoIとSfiIの制限部位をコードし、残りの配列はSCMVプロモーター領域の上流配列に相同である。SCBV3'の1から9のヌクレオチド残基は構築物の調製を助けるよう設計されたPsp10461とHpaIの制限部位をコードし、残りの配列はSCBVの転写開始部位近くにある配列の逆向きかつ相補的配列に相同である。
PCRを用いてpScBV-20から増幅された配列及びpScBV-20をpCR2.1(インビトロゲン社)にクローニングして得られた配列は、それぞれpCR.NOSとpCR.SCBVであった。SmaI/SfiIで切断したpCR.NOSとSfiI/HpaIで切断したpCR.SCBVをSmaIで切断したpART7に連結し、適切な方向をもつプラスミドを選択してpART7.35S.SCBV.cassと名づけた。この構築物の地図は図43に示す。
【0116】
4.中間構築物
pBC.PVYプラスミド
PVYゲノムの領域は鋳型としてPVYに感染したタバコから単離された逆転写RNAを用いて標準的なプロトコルでPCRにより増幅し、pGEM3(ストラタジーン社)プラスミド中にクローニングしてpGEM.PVYを作成した。PVY株O配列(受託番号D12539、ゲンバンク)の1536〜2270位のSalI/HindIII 断片に対応するpGEM.PVY由来のSalI/HindIII 断片を次にpBCプラスミド(ストラタジーン社)にサブクローニングしてpBC.PVY(図44)を作成した。
【0117】
pSP72.PVYプラスミド
pSP72.PVYプラスミドは、EcoRI/SalIで切断したpSP72(プロメガ社)中にpBC.PVY由来のEcoRI/SalI断片を挿入することにより調製した。この構築物はPVY挿入物を挟んで両側にさらなる制限部位を含んでいる。これらの制限部位は後の操作を助けるために用いられた。この構築物の地図は図45に示す。
【0118】
ClapBC.PVYプラスミド
Cla・pBC.PVYプラスミドは、pSP72.PVY由来のClaI/SalI断片をClaI/SalIで切断したpBC(ストラタジーン社)中に挿入することにより調製した。この構築物はPVY挿入物を挟んで両側にさらなる制限部位を含む。これらの制限部位は後の操作を助けるために用いられた。この構築物の地図は図46に示す。
【0119】
pBC.PVYx2プラスミド
pBC.PVYx2プラスミドはpBC.PVYに由来するPVY配列の二つの直列の頭−尾反復を含む。このプラスミドはAccIで切断したpBC.PVY中にpSP72.PVY由来のAccI/ClaI・PVY断片をクローニングすることにより作成した。このプラスミドは図47に示す。
【0120】
pSP72.PVYx2プラスミド
pSP72.PVYx2プラスミドはpBC.PVYに由来するPVY配列の二つの直列の頭−尾反復を含む。このプラスミドはAccIで切断したpSP72.PVY中にpBc.PVY由来のAccI/ClaI・PVY断片をクローニングすることにより作成した。このプラスミドは図48に示す。
【0121】
pBC.PVYx3プラスミド
pBC.PVYx3プラスミドはpBC.PVYに由来するPVY配列の三つの直列の頭−尾反復を含む。このプラスミドはAccIで切断したpBC.PVYx2中にpSP72.PVY由来のAccI/ClaI・PVY断片をクローニングすることにより調製した。このプラスミドは図49に示す。
【0122】
pBC.PVYx4プラスミド
pBC.PVYx4プラスミドはpBC.PVYに由来するPVY配列の四つの直列の頭−尾反復を含む。このプラスミドはAccIで切断したpBC.PVYx2中にAccI/ClaI断片としてのpSP72.PVYx2由来のPVY配列の直列反復をクローニングすることにより調製した。このプラスミドは図50に示す。
【0123】
pBC.PVY.LNYVプラスミド
PVY配列の直列のパリンドロームを作成する試みは全て失敗した。おそらくこのような配列の配置は広く使用されている大腸菌のクローニング宿主では不安定らしい。しかしながら、分断されたパリンドロームは安定であることが分かった。
【0124】
PVY配列の分断されたパリンドロームを作成するために、約360bpの「スタッファー」断片をPVY配列の下流のCla・pBV.PVY中に挿入した。このスタッファー断片はつぎのように作製した。
4bのウイルス遺伝子を含むことが知られているレタス・ネクロッティック・イエローズ・ウイルス(LNYV)のゲノムRNA(ダイツゲンら,1989年)から調製されたcDNAライブラリーから当初得られたクローンを下記のプライマーを用いてPCRにより増幅した。
LNYV1:5'−ATGGGATCCGTTATGCCAAGAAGAAGGA−3'(配列番号:13)、及び
LNYV2:5'−TGTGGATCCCTAACGGACCCGATG−3'(配列番号:14)。
これらのプライマーの最初の9ヌクレオチドはBamHI部位をコードし、残りのヌクレオチドはLNYVの4bの遺伝子配列に相同である。
増幅後、この断片をpCR2.1(ストラタジーン社)のEcoRI部位にクローニングした。このEcoRI断片をCla・pBC.PVYのEcoRI部位にクローニングして図51に示すpBC.PVY.LNYV中間プラスミドを作成した。
【0125】
pBC.PVY.LNYV.PVYプラスミド
pBC.PVY.LNYV.PVYプラスミドはPVY配列の分断された直列反復を含む。このプラスミドを作成するために、SmaIで消化したpBC.PVY.LNYV中にpSP72由来のHpaI/HincII断片をクローニングし、センス方向をもつプラスミドを単離した。この構築物の地図は図52に示す。
【0126】
pBC.PVY.LNYV.YVPΔプラスミド
pBC.PVY.LNYV.YVPΔプラスミドはPVY配列の部分的に分断されたパリンドロームを含む。パリンドロームの一方のアームはpBC.PVY由来のPVY全配列を含み、他方のアームはpSP72.PVYのEcoRV部位とHincII部位間の配列に対応する、PVY由来の該配列の一部を含む。このプラスミドを作成するために、pSP72.PVY由来のEcoRV/HincII断片を、SmaIで消化したpBC.PVY.LNYV中にクローニングし、所望の方向をもつプラスミドを単離した。この構築物の地図は図53に示す。
【0127】
pBC.PVY.LNYV.YVPプラスミド
pBC.PVY.LNYV.YVPプラスミドはPVY配列の分断されたパリンドロームを含む。このプラスミドを作成するために、SmaIで消化したpBC.PVY.LNYV中にpSP72.由来のHpaI/HincII断片をクローニングし、アンチセンス方向をもつプラスミドを単離した。この構築物の地図は図54に示す。
【0128】
5.対照プラスミド
pART7.PVYプラスミド及びpART27.PVYプラスミド
pART7.PVYプラスミド(図55)は35Sプロモーターにより駆動されるPVY配列を発現するよう設計された。このプラスミドは、他の全ての構築物がそれと比較される、これらの実験での対照構築物として役立つ。このプラスミドを作成するため、ClaIで消化したpART7中にClapBC.PVY由来のClaI/AccI断片をクローニングし、PVYゲノムに関してセンスのPVY配列を発現することが予期されるプラスミドが選択された。35Sプロモーター、PVY配列及びOCSターミネーターから成る配列をNotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを選択してpART27.PVYと名づけた。
【0129】
pART7.35S.PVY.SCBV.Oプラスミド及びpART27.35S.PVY.SCBV.Oプラスミド
pART7.35S.PVY.SCBV.Oプラスミド(図56)を、トランスジェニック植物における1個のプラスミドからの多重構築物の共発現のための対照として役立つよう設計した。35SプロモーターはPVYのセンス配列を発現するよう設計し、一方、SCBVプロモーターは空とした。このプラスミドを作成するため、Cla・pBC.PVY由来のPVY断片を、XhoI/EcoRI断片として、XhoI/EcoRIで消化したpART7.35S.SCBV.cass中にクローニングしてp35S.PVY.SCBV.Oを作成した。センスのPVY配列を駆動する35Sプロモーター及びNOSターミネーター、及びSCBVプロモーター、及びOCSターミネーターから成る配列を、NotI断片として切り出し、pART27中にクローニングして所望の挿入方向を持つプラスミドを単離しpART27.35S.PVY.SCBV.Oと名づけた。
【0130】
pART7.35S.O.SCBV.PVYプラスミド及びpART27.35S.O.SCBV.PVYプラスミド
pART7.35S.O.SCBV.PVYプラスミド(図57)は、トランスジェニック植物における1個のプラスミドからの多重構築物の共発現のためのさらなる対照として作用するよう設計された。35Sプロモーターの後方に発現可能な配列はクローニングせず、一方、SCBVプロモーターはPVYのセンス断片の発現を駆動した。このプラスミドを作成するため、Cla・pBC.PVY由来のPVY断片を、ClaI断片として、ClaIで消化したpART7.35S.SCBV.cass中にクローニングし、センス方向にPVY配列を含むプラスミドを単離してp35S.O.SCBV.PVYと名付けた。35Sプロモーター及びNOSターミネーター、及びセンスのPVY配列を駆動するSCBVプロモーター及びOCSターミネーターから成る配列をNotI断片として切り出し、pART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを単離してpART27.35S.O.SCBV.PVYと名づけた。
【0131】
pART7.35S.O.SCBV.YVPプラスミド及びpART27.35S.O.SCBV.YVPプラスミド
pART7.35S.O.SCBV.YVPプラスミド(図58)を、トランスジェニック植物における1個のプラスミドからの多重構築物の共発現のためのさらなる対照として作用するよう設計した。発現可能な配列は35Sプロモーターの後方にはクローニングせず、一方、SCBVプロモーターはPVYのアンチセンス断片の発現を駆動した。このプラスミドを作成するため、Cla・pBC.PVY由来のPVY断片を、ClaI断片として、ClaIで消化したp35S.SCBV.cass中にクローニングし、アンチセンス方向にPVY配列を含むプラスミドを単離し、p35S.O.SCBV.YVPと名付けた。35Sプロモーター及びNOSターミネーター、及びセンスのPVY配列を駆動するSCBVプロモーター、及びOCSターミネーターから成る配列を、NotI断片として切り出し、pART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを単離してpART27.35S.O.SCBV.YVPと名づけた。
【0132】
6.試験プラスミド
pART7.PVYx2プラスミド及びpART27.PVYx2プラスミド
pART7.PVYx2プラスミド(図59)は、トランスジェニック植物で35Sプロモーターにより駆動されるPVY配列の直列反復を発現するよう設計された。このプラスミドを作成するため、pBC.PVYx2由来の直列反復を、XhoI/BamHI断片として、XhoI/BamHIで切断したpART7中にクローニングした。35Sプロモーター、PVYの直列反復、及びOCSターミネーターから成る配列を、pART7.PVYx2からNotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを選択してpART27.PVYx2と名づけた。
【0133】
pART7.PVYx3プラスミド及びpART27.PVYx3プラスミド
pART7.PVYx3プラスミド(図60)は、トランスジェニック植物で35Sプロモーターにより駆動される三つのPVY配列の直列反復を発現するよう設計された。このプラスミドを作成するため、pBC.PVYx3由来の直列反復を、XhoI/BamHI断片として、XhoI/BamHIで切断したpART7中にクローニングした。35Sプロモーター、PVYの直列反復、及びOCSターミネーターから成る配列を、pART.PVYx3からNotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを選択してpART27.PVYx3と名づけた。
【0134】
pART7.PVYx4プラスミド及びpART27.PVYx4プラスミド
pART7.PVYx4プラスミド(図61)は、トランスジェニック植物で35Sプロモーターにより駆動される四つのPVY配列の直列反復を発現するよう設計された。このプラスミドを作成するため、pBC.PVYx4由来の直列反復を、XhoI/BamHI断片として、XhoI/BamHIで切断したpART7中にクローニングした。35Sプロモーター、PVYの直列反復、及びOCSターミネーターから成る配列を、pART7.PVYx3からNotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを選択してpART27.PVYx3と名づけた。
【0135】
pART7.PVY.LNYV.PVYプラスミド及びpART27.PVY.LNYV.PVYプラスミド
pART7.PVY.LNYV.PVYプラスミド(図62)は、トランスジェニック植物で35Sプロモーターにより駆動される、PVY配列の分断された直列反復を発現するよう設計された。この構築物は、pBC.PVY.LNYV.PVY由来のPVYの分断された直列反復を、XhoI/XbaI断片として、XhoI/XbaIで消化したpART7中にクローニングすることにより調製した。35Sプロモーター、PVY配列の分断された直列反復、及びOCSターミネーターから成る配列を、pART7.PVY.LNYV.PVYからNotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを選択してpART27.PVY.LNYV.PVYと名づけた。
【0136】
pART7.PVY.LNYV.YVPΔプラスミド及びpART27.PVY.LNYV.YVPΔプラスミド
pART7.PVY.LNYV.YVPΔプラスミド(図63)は、トランスジェニック植物で35Sプロモーターにより駆動されるPVY配列の部分的に分断されたパリンドロームを発現するよう設計された。この構築物は、pBC.PVY.LNYV.YVPΔ由来のPVY配列の部分的に分断されたパリンドロームを、XhoI/XbaI断片として、XhoI/XbaIで消化したpART7中にクローニングすることにより調製した。35Sプロモーター、PVY配列の部分的に分断されたパリンドローム、及びOCSターミネーターから成る配列を、pART7.PVY.LNYV.YVPΔからNotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを選択してpART27.PVY.LNYV.YVPΔと名づけた。
【0137】
pART7.PVY.LNYV.YVPプラスミド及びpART27.PVY.LNYV.YVPプラスミド
pART7.PVY.LNYV.YVPプラスミド(図64)は、トランスジェニック植物で35Sプロモーターにより駆動されるPVY配列の分断されたパリンドロームを発現するよう設計された。この構築物は、pBC.PVY.LNYV.YVPΔ由来のPVY配列の分断されたパリンドロームを、XhoI/XbaI断片として、XhoI/XbaIで消化したpART7中にクローニングすることにより調製した。35Sプロモーター、PVY配列の分断されたパリンドローム、及びOCSターミネーターから成る配列を、pART7.PVY.LNYV.YVPからNotI断片として切り出し、pART27中にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを選択してpART27.PVY.LNYV.YVPと名づけた。
【0138】
pART7.35S.PVY.SCBV.YVPプラスミド及びpART27.35S.PVY.SCBV.YVPプラスミド
pART7.35S.PVY.SCBV.YVPプラスミド(図65)は、トランスジェニック植物でセンス構築物とアンチセンス構築物を共発現するよう設計された。このプラスミドを作成するため、Cla・pBC.PVY由来のPVY断片を、XhoI/EcoRI断片として、XhoI/EcoRIで消化したp35S.SCBV.O.SCBV.YVP中にクローニングした。センスのPVY配列を駆動する35Sプロモーター、及びNOSターミネーター、及びアンチセンスのPVYを駆動するSCBVプロモーター、及びOCSターミネーターから成る配列を、NotI断片として切り出し、pART27にクローニングし、所望の挿入方向を持つプラスミドを単離してpART27.35S.PVY.SCBV.YVPと名づけた。
【0139】
pART7.35S.PVYx3.SCBV.YVPx3プラスミド及びpART27.35S.PVYx3.SCBV.YVPx3プラスミド
pART7.35S.PVYx3.SCBV.YVPx3プラスミド(図66)は、トランスジェニック植物でPVYのセンス反復とアンチセンス反復を共発現するよう設計された。このプラスミドを作成するため、ClapBC.PVYx3由来の三重直列PVY反復を、ClaI/AccI断片として、ClaIで消化したp35S.SCBV.cass中にクローニングし、アンチセンス方向をもつプラスミドを単離することにより、中間体のpART7.35S.O.SCBV.YVPx3を構築した。p35S.PVYx3.SCBV.YVPx3のため、Cla・pBC.PVYx3由来の三重直列PVY反復を、KpnI/SmaI断片として、KpnI/SmaIで消化したp35S.O.SCBV.YVPx3中にクローニングしてp35S.PVYx3.SCBV.YVPx3を作成した。両方のプロモーターとターミネーター、及び直列のPVY反復を含む配列を、NotI断片として単離し、pART27中にクローニングした。適切な方向を持つプラスミドを選択してpART27.35S.PVYx3.SCBV.YVPx3と名づけた。
【0140】
pART7.PVYx3.LNYV.YVPx3プラスミド及びpART27.PVYx3.LNYV.YVPx3プラスミド
pART7.PVYx3.LNYV.YVPx3プラスミド(図67)は、分断されたパリンドロームとしてのPVY配列の三重反復を発現するよう設計された。このプラスミドを作成するため、pBC.PVY.LNYV.YVP由来のPVY.LNYV.YVP断片を、AccI/ClaI断片として、pART7.PVYx2.pART7.35S.PVYx3.LNYV.YVPx3プラスミド中にクローニングすることにより中間体のpART7x3.PVY.LNYV.YVを構築し、この中間構築物に、pBC.PVYx2由来のさらなるPVY直列反復を、AccI/ClaI断片として、ClaIで消化したpART7x3.PVY.LNYV.YVP中にクローニングした。35Sプロモーター,全PVY配列、及びOCSターミネーターを含むpART7.35S.PVYx3.LNYV.YVPx3由来の配列を、NotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングした。適切な方向を持つプラスミドを選択してpART27.35S.PVYx3.LNYV.YVPx3と名づけた。
【0141】
プラスミドpART7.PVYmulti及びプラスミドpART27.PVYmulti
プラスミドpART7.35S.PVYmulti(図68)はトランスジェニック植物でより高いオーダーのPVY配列の直列反復領域を発現するよう設計された。PVYに由来する72bpのPVY・Nia領域のより高いオーダーの直列反復は、以下の二つの一部相補的なオリゴヌクレオチドをアニーリングすることにより調製した。
PVY1:
5'-TAATGAGGATGATGTCCCTACCTTTAATTGGCAGAAATTTCTGTGGAAAGACAGGGAAATCTTTCGGCATTT-3'(配列番号:15)、及び
PVY2:
5'-TTCTGCCAATTAAAGGTAGGGACATCATCCTCATTAAAATGCCGAAAGATTTCCCTGTCTTTCCACAGAAAT-3'(配列番号:16)。
【0142】
このオリゴヌクレオチドをT4ポリヌクレオチドキナーゼでリン酸化し、加熱し、ゆっくり冷却して自己アニーリングさせ、T4DNAリガーゼで連結し、クレノウポリメラーゼで末端を充填し、pCR2.1(インビトロゲン社)中にクローニングした。多重反復を含むプラスミドを単離し、この配列をEcoRI断片として、EcoRIで消化したpART7中にセンス方向でクローニングして中間体のpART7.PVYmultiを作成した。pART27.PVYmultiを作成するため、35Sプロモーター、PVY配列、及びOCSターミネーターをNotI断片として切り出し、NotIで消化したpART27中にクローニングした。適切な挿入方向をもつプラスミドを単離してpART27.PVYmultiと名付けた。
【実施例4】
【0143】
実施例4.哺乳類におけるウイルス遺伝子の発現の不活性化
ウイルスの免疫系統は安定に形質転換した細胞株でウイルス配列を発現することにより生じる。
特に、このアプローチには溶菌ウイルスが用いられる。その理由は、細胞の溶解は非常に単純な篩を提供し、且つウイルス免疫を生じうる極めてまれな形質転換事象を直接選択することを可能とするからである。単純な一本鎖RNAウイルス(ウシ・エンテロウイルス−BEV)又は複雑な二本鎖DNAウイルスのI型単純ヘルペスウイルス(HSVI)に由来するサブゲノムの断片を適切なベクターにクローニングし、形質転換細胞中で発現させる。哺乳類の細胞株は、強力なサイトメガロウイルス(CMV-IE)プロモーターにより駆動されるウイルスの配列を発現するよう設計された遺伝子構築物を用いて形質転換される。用いられる配列には特異的なウイルス複製酵素の遺伝子が含まれる。典型的なウイルス遺伝子を含む無作為な「ショットガン」ライブラリー、及びウイルス配列の発現を標的化するように導入された分散した核酸分子も用いられうる。
【0144】
BEVのRNA依存性RNAポリメラーゼ遺伝子に由来するヌクレオチド配列などの、この手法で使用される例示的な遺伝子構築物を本明細書で提示する。
ウイルスのポリメラーゼ構築物のため、多数(約100)の形質転換した細胞株を作成し、そして各ウイルスで感染させる。ショットガンライブラリーで形質転換した細胞に対して、非常に多数(数百)の形質転換系統が作成しそしてウイルス免疫について大規模にスクリーニングする。ウイルスを感染させた後、耐性のある細胞株を選択し、そして免疫を付与する配列を決定するためにさらに分析する。
耐性のある細胞株は、哺乳類の系において導入されたヌクレオチド配列がウイルス遺伝子の発現を不活性化する能力があることを支持する。
さらに、このような実験から得られる耐性系統は、観察される改変の分子的及び生化学的特性をより正確に規定するために使用される。
【実施例5】
【0145】
実施例5.トランスジェニック植物におけるウイルス耐性の導入
アグロバクテリウム・ツメファシエンスのLBA4404株を、三親交雑(tri-parental matings)を用いて、構築物のpART27.PVY、pART27.PVYx2、pART27.PVYx3、pART27.PVYx4、pART27.PVY.LNYV.PVY、pART27.PVY.LNYV.YVPΔ、pART27.PVY.LNYV.YVP、pART27.35S.PVY.SCBV.O、pART27.35S.O.SCBV.PVY、pART27.35S.O. SCBV.YVP、pART27.35S.PVY.SCBV.YVP、pART27.35S.PVYx3.SCBV.YVPx3、pART27.PVYx3.LNYV.YVPx3、及びpART27.PVYx10でそれぞれ形質転換した。これらの株から得られるDNAの微量調製物を調製し、NotIでの制限を試験し、これらが適切な二元ベクターを含むことを確認した。
【0146】
ニコチアナ・タバカム(W38品種)を、標準的手法を用いてこれらのアグロバクテリウム株で形質転換した。形質転換したと推定される苗条を切り出しカナマイシンを含有する培地上に根付かせた。これらの条件の下で、本発明者らは、トランスジェニック苗条のみがカナマイシン平板上に根付くことを一貫して観察した。根付いた苗条は土壌に移し樹立させた。二から三週間後、少なくとも三枚の葉をもつ丈夫な植物を選択し、PVYに感染させた。
ウイルスの接種材料は、予めウイルスに感染させたW38タバコから調製した。すなわち、明白なウイルスの症状を示す約2gの葉材料を100mMの燐酸Na緩衝液(pH7.5)の10ml中でカルバランダム(carbarundum)と共に粉砕した。この接種材料を追加の燐酸Na緩衝液で200mlまで希釈した。各トランスジェニック植物に由来する二枚の葉をカルバランダムと共に散布した後、0.4mlの接種材料を各葉にかけ、かなり激しく指で葉をこすった。この手法を用いて、非トランスジェニック対照植物の100%がPVYに感染した。
【0147】
ウイルス耐性及び免疫性を検定するため、トランスジェニック植物を症状の進行について監視する。PVY株(PVY-D、オーストラリアのPVY単離体)はW38タバコに明白な症状を与え、葉脈が透き通る症状は接種された葉の上方の二枚の葉に容易に観察され、それに続き葉は均一のクロロ障害を示す。症状の進行は6週間にわたって監視した。
ウイルスの症状の低減が示される場合、トランスジェニック株は耐性として記述した。そして、ウイルス症状の低減はクロロ障害を示す葉の減少として現れる。耐性は、植物でごく少数のウイルス病変しか観察されない非常に強い耐性から、植物成長の後期で見られる葉の症状の低減を示す弱い耐性までの範囲に及ぶ。
ウイルスの症状の証拠を全く示さないトランスジェニック植物は免疫体(immune)として分類した。これらの植物が免疫体であることを確証するため、ウイルスを再接種したところ、ほとんどの植物が免疫体のままであり、症状を示した小数の植物は耐性として再分類した。
【0148】
得られた植物系統についてサザン・ブロットを行い、次世代の耐性を監視し、耐性/免疫が伝達できることを測定する。さらに、該系統を他のPVY株で感染させることによりウイルス耐性の範囲を観察し、宿主範囲の感受性が変化するかどうかを測定する。
これらの実験から得られた結果を表2に記載する。これらのデータは、標的遺伝子配列の縦列反復を、パリンドローム又は直列反復配列として分断されたパリンドロームのいずれかで含む構築物がトランスジェニック植物にウイルス耐性及び/又は免疫を付与できることを示している。
従って、このような逆方向及び/又は直列の反復配列はトランスジェニック植物でウイルスの標的遺伝子の発現を変化させる。
直列及び逆方向の反復配列の使用を組み合わせた構築物、即ち、pART27.35S.PVYx3.SCBV.YVPx3とpART27.PVYx3.LNYV.YVPx3も遺伝子発現を変化させるのに有用である。
【実施例6】
【0149】
実施例6.動物細胞におけるGaltの不活性化
Galtの不活性化を検定するため、ブタのPK2細胞を関連のある構築物で形質転換した。PK2細胞は構成的にGalt酵素を発現し、Galt酵素の活性により、これらの細胞の細胞表面上に発現するある範囲のタンパク質に種々のα-1,3-ガラクトシル基が付加される。細胞はリポフェクチンを用いて形質転換し、安定に形質転換した系統をゲネテシンを用いて選択した。
最初の検定のように、Galtをコードするエピトープ、即ち細胞表面タンパク質を修飾するα-1,3-ガラクトシル部分が存在するか否かについて、細胞株をレクチンIB4を用いて探索した。IB4の結合はインサイチュ又はFACS選別のいずれかにより検定した。
インサイチュ結合では、細胞を冷メタノールを用いて固体の支持体に5分間かけて固定し、細胞をPBS(燐酸緩衝生理食塩水)で洗浄し、非特異的なIB4の結合をPBS中1%BSAで10分間ブロックした。固定した細胞を1%BSAのPBS中で室温で30分間かけて20μg/mlのIB4−ビオチン(シグマ社)を用いて探索し、次いで細胞をPBSで洗浄し、1:200のエキストラアビジン-FITC(シグマ社)PBS希釈液で30分間探索した後、さらにPBSで濯いだ。次に、PK2対照細胞の外表面が均一に緑色に染色される条件の下で、細胞を蛍光顕微鏡を用いて調べた。
FACS分析では、細胞をトリプシン処理後懸濁し、HBSS/ヘペス(20mMのヘペスを添加したハンクの緩衝生理食塩水、pH7.4)で洗浄し、HBSS/ヘペス中で4℃で45分間かけて10μg/mlのIB4−ビオチン(シグマ社)で探索した。細胞をHBSS/ヘペスで洗浄し、1:200のエキストラアビジン-FITC(シグマ社)HBSS/ヘペス希釈液で4℃で45分間かけて探索し、FACS選別の前に冷HBSS/ヘペスで濯いだ。
このアプローチを用いて、形質転換した細胞株をGaltの不活性化について検定し、構築物の効率の定量的評価を求める。さらに、Galtの不活性化を示す細胞株を単離し、さらなる分子学的分析にかけ、遺伝子不活性化の機構を決定する。
【0150】
表2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真核生物細胞の標的遺伝子または前記標的遺伝子の領域に少なくとも95%同一である20ヌクレオチドより長いヌクレオチド配列の多重コピーを含み、前記多重コピーの少なくとも1つはセンス方向にあり、且つ別のコピーの少なくとも一つがアンチセンス方向にあって、前記多重コピーは真核生物細胞中で機能し得る単一のプロモーター配列の制御下に機能可能に接続されている、単離された遺伝子構築物。
【請求項2】
標的遺伝子または前記標的遺伝子の領域に少なくとも95%同一である20ヌクレオチドより長いヌクレオチド配列の多重コピーを含み、前記多重コピーの1つが第1のプロモーター配列にセンス方向で機能可能に接続しており、前記多重コピーの他の1つが第2のプロモーターに機能可能に接続しており、前記第1及び第2のプロモーターが真核生物細胞で機能可能である、単離された遺伝子構築物。
【請求項3】
ヌクレオチド配列の多重コピーが標的遺伝子または前記標的遺伝子の領域と同一である、請求項1または2記載の遺伝子構築物。
【請求項4】
ヌクレオチド配列の多重コピーが標的遺伝子または前記標的遺伝子のコード領域と同一である、請求項1〜3のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項5】
遺伝子構築物を真核生物中で維持および/または複製および/または前記遺伝子構築物又はその一部を真核生物細胞のゲノムに組み込むための配列を更に含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項6】
多重コピーがヌクレオチドの配列を含むスタッファー断片によって空間的に隔てられている、請求項1〜3のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項7】
スタッファー断片がイントロン配列として機能する、請求項4記載の遺伝子構築物。
【請求項8】
多重コピーが分断されたパリンドローム配列として存在する、請求項1〜4のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項9】
ヌクレオチド配列が20ヌクレオチドより長く100ヌクレオチド長までである、請求項1〜6のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項10】
標的遺伝子が細胞の内因性遺伝子である、請求項1〜7のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項11】
標的遺伝子がウイルス遺伝子である、請求項1〜7のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項12】
細胞が動物細胞である、請求項1〜9のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項記載の遺伝子構築物および担体、賦形剤又は希釈剤を含む組成物。
【請求項14】
細胞培養物または組織培養物中の真核生物細胞を請求項1〜10のいずれか1項記載の遺伝子構築物で形質転換することを含む、形質転換真核生物細胞の作製方法。
【請求項15】
細胞培養物または組織培養物中の真核生物細胞を請求項1〜10のいずれか1項記載の遺伝子構築物で形質転換することを含む、真核生物細胞中でRNA分子を生成する方法。
【請求項16】
細胞培養物または組織培養物中の真核生物細胞と請求項11記載の組成物を接触させることを含む、形質転換真核生物細胞を作製する方法。
【請求項17】
細胞培養物または組織培養物中の真核生物細胞と請求項11記載の組成物を接触させることを含む、真核生物細胞中でRNA分子を生成する方法。
【請求項18】
細胞が動物細胞である、請求項14または15記載の方法。
【請求項19】
分散された核酸分子又は外来性核酸分子の疾病の治療および/または予防のための合成遺伝子調製における使用であって、前記分散された核酸分子又は外来性核酸分子は真核生物細胞の標的遺伝子または前記標的遺伝子の領域に少なくとも95%同一である20ヌクレオチドより長いヌクレオチド配列の多重コピーを含み、前記多重コピーの少なくとも1つはセンス方向にあり、且つ別のコピーの少なくとも一つがアンチセンス方向にあって、前記真核生物細胞中で機能可能な単一のプロモーター配列の制御下に機能可能に置かれている、前記使用。
【請求項20】
分散された核酸分子又は外来性核酸分子の疾病の治療および/または予防のための合成遺伝子調製における使用であって、前記分散された核酸分子又は外来性核酸分子は真核生物細胞の標的遺伝子または前記標的遺伝子の領域に少なくとも95%同一である20ヌクレオチドより長いヌクレオチド配列の多重コピーを含み、前記多重コピーの1つは第1のプロモーター配列にセンス方向で機能可能に接続されており、前記多重コピーの他の1つは第2のプロモーター配列にアンチセンス方向で機能可能に接続されており、前記第1および第2のプロモーターは真核生物細胞において機能可能である、前記使用。
【請求項21】
ヌクレオチド配列の多重コピーが標的遺伝子または前記標的遺伝子の領域と同一である、請求項19または20記載の使用。
【請求項22】
ヌクレオチド配列の多重コピーが標的遺伝子または前記標的遺伝子のコード領域と同一である、請求項19〜21のいずれか1項記載の使用。
【請求項23】
多重コピーが分断されたパリンドローム配列として存在する、請求項19〜22のいずれか1項記載の使用。
【請求項24】
多重コピーがヌクレオチドの配列を含むスタッファー断片によって空間的に隔てられている、請求項19〜23のいずれか1項記載の使用。
【請求項25】
スタッファー断片がイントロン配列として機能する、請求項24記載の使用。
【請求項26】
ヌクレオチド配列が20ヌクレオチドより長く100ヌクレオチド長までである、請求項19〜25のいずれか1項記載の使用。
【請求項27】
請求項1〜11のいずれか1項記載の遺伝子構築物を有効成分として含む、標的遺伝子の発現を抑制し、遅延させ又はその他の方法で低減させる組成物。
【請求項28】
請求項1〜11のいずれか1項記載の遺伝子構築物の、真核生物細胞の標的遺伝子の発現を抑制し、遅延させ又はその他の方法で低減させるための薬剤の調製における使用。
【請求項29】
真核生物細胞が動物細胞である、請求項28記載の使用。
【請求項1】
真核生物細胞の標的遺伝子または前記標的遺伝子の領域に少なくとも95%同一である20ヌクレオチドより長いヌクレオチド配列の多重コピーを含み、前記多重コピーの少なくとも1つはセンス方向にあり、且つ別のコピーの少なくとも一つがアンチセンス方向にあって、前記多重コピーは真核生物細胞中で機能し得る単一のプロモーター配列の制御下に機能可能に接続されている、単離された遺伝子構築物。
【請求項2】
標的遺伝子または前記標的遺伝子の領域に少なくとも95%同一である20ヌクレオチドより長いヌクレオチド配列の多重コピーを含み、前記多重コピーの1つが第1のプロモーター配列にセンス方向で機能可能に接続しており、前記多重コピーの他の1つが第2のプロモーターに機能可能に接続しており、前記第1及び第2のプロモーターが真核生物細胞で機能可能である、単離された遺伝子構築物。
【請求項3】
ヌクレオチド配列の多重コピーが標的遺伝子または前記標的遺伝子の領域と同一である、請求項1または2記載の遺伝子構築物。
【請求項4】
ヌクレオチド配列の多重コピーが標的遺伝子または前記標的遺伝子のコード領域と同一である、請求項1〜3のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項5】
遺伝子構築物を真核生物中で維持および/または複製および/または前記遺伝子構築物又はその一部を真核生物細胞のゲノムに組み込むための配列を更に含む、請求項1〜4のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項6】
多重コピーがヌクレオチドの配列を含むスタッファー断片によって空間的に隔てられている、請求項1〜3のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項7】
スタッファー断片がイントロン配列として機能する、請求項4記載の遺伝子構築物。
【請求項8】
多重コピーが分断されたパリンドローム配列として存在する、請求項1〜4のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項9】
ヌクレオチド配列が20ヌクレオチドより長く100ヌクレオチド長までである、請求項1〜6のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項10】
標的遺伝子が細胞の内因性遺伝子である、請求項1〜7のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項11】
標的遺伝子がウイルス遺伝子である、請求項1〜7のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項12】
細胞が動物細胞である、請求項1〜9のいずれか1項記載の遺伝子構築物。
【請求項13】
請求項1〜9のいずれか1項記載の遺伝子構築物および担体、賦形剤又は希釈剤を含む組成物。
【請求項14】
細胞培養物または組織培養物中の真核生物細胞を請求項1〜10のいずれか1項記載の遺伝子構築物で形質転換することを含む、形質転換真核生物細胞の作製方法。
【請求項15】
細胞培養物または組織培養物中の真核生物細胞を請求項1〜10のいずれか1項記載の遺伝子構築物で形質転換することを含む、真核生物細胞中でRNA分子を生成する方法。
【請求項16】
細胞培養物または組織培養物中の真核生物細胞と請求項11記載の組成物を接触させることを含む、形質転換真核生物細胞を作製する方法。
【請求項17】
細胞培養物または組織培養物中の真核生物細胞と請求項11記載の組成物を接触させることを含む、真核生物細胞中でRNA分子を生成する方法。
【請求項18】
細胞が動物細胞である、請求項14または15記載の方法。
【請求項19】
分散された核酸分子又は外来性核酸分子の疾病の治療および/または予防のための合成遺伝子調製における使用であって、前記分散された核酸分子又は外来性核酸分子は真核生物細胞の標的遺伝子または前記標的遺伝子の領域に少なくとも95%同一である20ヌクレオチドより長いヌクレオチド配列の多重コピーを含み、前記多重コピーの少なくとも1つはセンス方向にあり、且つ別のコピーの少なくとも一つがアンチセンス方向にあって、前記真核生物細胞中で機能可能な単一のプロモーター配列の制御下に機能可能に置かれている、前記使用。
【請求項20】
分散された核酸分子又は外来性核酸分子の疾病の治療および/または予防のための合成遺伝子調製における使用であって、前記分散された核酸分子又は外来性核酸分子は真核生物細胞の標的遺伝子または前記標的遺伝子の領域に少なくとも95%同一である20ヌクレオチドより長いヌクレオチド配列の多重コピーを含み、前記多重コピーの1つは第1のプロモーター配列にセンス方向で機能可能に接続されており、前記多重コピーの他の1つは第2のプロモーター配列にアンチセンス方向で機能可能に接続されており、前記第1および第2のプロモーターは真核生物細胞において機能可能である、前記使用。
【請求項21】
ヌクレオチド配列の多重コピーが標的遺伝子または前記標的遺伝子の領域と同一である、請求項19または20記載の使用。
【請求項22】
ヌクレオチド配列の多重コピーが標的遺伝子または前記標的遺伝子のコード領域と同一である、請求項19〜21のいずれか1項記載の使用。
【請求項23】
多重コピーが分断されたパリンドローム配列として存在する、請求項19〜22のいずれか1項記載の使用。
【請求項24】
多重コピーがヌクレオチドの配列を含むスタッファー断片によって空間的に隔てられている、請求項19〜23のいずれか1項記載の使用。
【請求項25】
スタッファー断片がイントロン配列として機能する、請求項24記載の使用。
【請求項26】
ヌクレオチド配列が20ヌクレオチドより長く100ヌクレオチド長までである、請求項19〜25のいずれか1項記載の使用。
【請求項27】
請求項1〜11のいずれか1項記載の遺伝子構築物を有効成分として含む、標的遺伝子の発現を抑制し、遅延させ又はその他の方法で低減させる組成物。
【請求項28】
請求項1〜11のいずれか1項記載の遺伝子構築物の、真核生物細胞の標的遺伝子の発現を抑制し、遅延させ又はその他の方法で低減させるための薬剤の調製における使用。
【請求項29】
真核生物細胞が動物細胞である、請求項28記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【公開番号】特開2009−219504(P2009−219504A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−161847(P2009−161847)
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【分割の表示】特願2007−302237(P2007−302237)の分割
【原出願日】平成11年3月19日(1999.3.19)
【出願人】(590003283)コモンウェルス サイエンティフィック アンドインダストリアル リサーチ オーガナイゼーション (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月8日(2009.7.8)
【分割の表示】特願2007−302237(P2007−302237)の分割
【原出願日】平成11年3月19日(1999.3.19)
【出願人】(590003283)コモンウェルス サイエンティフィック アンドインダストリアル リサーチ オーガナイゼーション (11)
【Fターム(参考)】
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