避難誘導システム
【課題】災害の発生位置の特定が必要な災害と特定を必要としない災害の何れにおいても被災者を避難誘導させ得る避難誘導システムを提供する。
【解決手段】複数の第1災害検知手段1Aと、該第1災害検知手段1Aとは検知対象が異なる第2災害検知手段1Bと、避難方向を表示する複数の誘導表示手段2と、第1災害検知手段1Aと誘導表示手段2の配置情報6と避難路情報7を記憶した記憶手段3と、第1及び第2災害検知手段1A、1Bの情報に基づいて災害発生を監視し、第1災害検知手段1Aによる災害発生の検認時には災害発生位置に関する第1災害情報を、第2災害検知手段1Bによる災害発生の検認時には第2災害情報を、それぞれ出力する災害監視手段4と、第1災害情報と記憶情報に基づいて被災者を災害発生位置から遠ざけながら避難誘導させるべく、また第2災害情報に基づいて被災者を避難誘導させるべく、誘導表示手段2に避難方向を表示させる制御手段5を備える。
【解決手段】複数の第1災害検知手段1Aと、該第1災害検知手段1Aとは検知対象が異なる第2災害検知手段1Bと、避難方向を表示する複数の誘導表示手段2と、第1災害検知手段1Aと誘導表示手段2の配置情報6と避難路情報7を記憶した記憶手段3と、第1及び第2災害検知手段1A、1Bの情報に基づいて災害発生を監視し、第1災害検知手段1Aによる災害発生の検認時には災害発生位置に関する第1災害情報を、第2災害検知手段1Bによる災害発生の検認時には第2災害情報を、それぞれ出力する災害監視手段4と、第1災害情報と記憶情報に基づいて被災者を災害発生位置から遠ざけながら避難誘導させるべく、また第2災害情報に基づいて被災者を避難誘導させるべく、誘導表示手段2に避難方向を表示させる制御手段5を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、災害発生時に被災者を安全に対象エリア外に誘導して避難させる避難誘導システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の避難誘導システムとしては従来から種々の提案がなされているが、この避難誘導システムは対象とする被災者によって、特定の被災者を避難誘導対象とするものと、不特定多数の被災者を避難誘導対象とするものに大別され、特に後者に属する避難誘導システムとしては、例えば、特許文献1に示されるものがある。
【0003】
この特許文献1に示された避難誘導システムは、火災発生時の避難誘導システムに関するものであって、避難誘導灯装置を備え、火災発生時には避難誘導灯装置の点灯、点滅、消灯による表示によって、上記発火点から遠ざかるように被災者を避難誘導するものである。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献】
【特許文献1】 特開平9−319317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の避難誘導システムは、火災発生時の避難誘導を対象としたもので、発火点、即ち、火災の発生位置の特定を前提として成立するシステムであるところ、現実に発生し得る災害には、例えば地震のように発生位置の特定を必要としないが、被災者を安全な場所に誘導して避難させることが要求されるような災害もあることから、災害時における被災者の避難誘導という観点からして、十分とは言い難いものである。
【0006】
そこで本願発明では、対象エリア内における災害のうち、災害の発生位置の特定が必要な災害と、災害の発生位置の特定を必要としない災害の何れにおいても被災者を安全な方向へ的確に誘導して避難させることができる避難誘導システムを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0008】
本願の第1の発明では、対象エリア内に設置された複数の第1災害検知手段1Aと、上記対象エリア内に設置された災害検知手段であって上記第1災害検知手段1Aとは検知対象が異なる第2災害検知手段1Bと、上記対象エリア内に設けられた避難路上に設置されて避難方向を表示する複数の誘導表示手段2と、上記対象エリア内における上記第1災害検知手段1Aと上記誘導表示手段2の配置に関する情報6と上記避難路に関する情報7を記憶した記憶手段3と、上記第1災害検知手段1Aからの入力情報と上記第2災害検知手段1Bからの入力情報に基づいて上記対象エリア内における災害の発生の有無を監視し、且つ上記第1災害検知手段1Aからの入力情報に基づいて災害の発生が検認されたときはその災害の発生位置に関する第1災害情報を、上記第2災害検知手段1Bからの入力情報に基づいて災害の発生が検認されたときは災害の発生に関する第2災害情報を、それぞれ出力する災害監視手段4と、上記災害監視手段4からの第1災害情報と上記記憶手段3からの記憶情報に基づいて被災者を災害発生位置から遠ざけながら上記避難路を通って安全な避難口に誘導させるべく、また上記災害監視手段4からの第2災害情報に基づいて被災者を上記避難路を通って安全な避難口に誘導させるべく、それぞれ上記複数の誘導表示手段2に避難方向を表示させる制御手段5とを備えたことを特徴としている。
【0009】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る避難誘導システムにおいて、上記誘導表示手段2を、上記対象エリア内に設置された手摺装置30に設けたことを特徴としている。
【0010】
本願の第3の発明では、上記第1の発明に係る避難誘導システムにおいて、上記誘導表示手段2を、上記対象エリア内の壁面Wに設けたことを特徴としている。
【0011】
本願の第4の発明では、上記第1の発明に係る避難誘導システムにおいて、上記誘導表示手段2を、上記対象エリア内の床面Fに設けたことを特徴としている。
【0012】
本願の第5の発明では、上記第2又は第3の発明に係る避難誘導システムにおいて、上記誘導表示手段2に、少なくとも上記誘導表示手段2の誘導表示時に床面F側を照明する床面照明手段16を付設したことを特徴としている。
【0013】
本願の第6の発明では、上記第1、第2、第3、第4又は第5の発明に係る避難誘導システムにおいて、上記制御手段5から上記複数の誘導表示手段2への情報伝達系を無線システムで構築したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0015】
(a)本願の第1の発明に係る避難誘導システムによれば、対象エリア内に設置された複数の第1災害検知手段1Aからの入力情報に基づいて災害、例えば、火災のように災害の発生位置を確認することが被災者を安全に避難誘導する上において必須となるような災害の発生が検認されたときは、上記災害監視手段4から出力される災害発生位置に関する第1災害情報を受けて、上記制御手段5では、上記第1災害情報と上記記憶手段3からの記憶情報に基づいて、被災者を災害発生位置から遠ざけながら上記避難路を通って安全な避難口に誘導させるべく、上記複数の誘導表示手段2において避難方向が表示されるので、被災者は上記誘導表示手段2を視認しその表示方向を確認することで災害発生位置へ近づくことなく安全に避難することができる。
【0016】
一方、対象エリア内に設置された上記第2災害検知手段1Bからの入力情報に基づいて災害、例えば、地震のように災害の発生位置の特定を必要としない災害の発生が検認されたときは、上記災害監視手段4から出力される災害の発生に関する第2災害情報を受けて、上記制御手段5では、被災者を安全な避難口に誘導させるべく、上記複数の誘導表示手段2において避難方向が表示されるので、被災者は上記誘導表示手段2を視認しその表示方向を確認することで安全に避難することができる。
【0017】
このように第1の発明に係る避難誘導システムによれば、災害の発生位置の特定が必要な災害の発生時においても、災害の発生位置の特定を必要としない災害の発生時においても、被災者を安全に且つ的確に安全な方向へ誘導して避難させることができるものであり、災害の形態の多様化に照らして極めて有用性の高い避難誘導システムを提供できる。
【0018】
(b)本願の第2の発明に係る避難誘導システムによれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、災害の発生に伴って被災者が避難路を通って避難する場合、多人数の同時避難によって避難路は騒然とした雰囲気となり、且つ被災者も不安感を募らせた極めて不安定な心理状態にあり、このような極限状態下での避難時には、周囲の状況が例え突発的に変化したとしてもこれに対処し得るように準備しておこうという心理が被災者に働き、その結果、被災者は避難路の中央寄りを通って避難するよりも、寧ろ避難路の壁面寄りを通って避難すると考えられ、しかもこの避難路の壁面に手摺装置が備えられている場合には、この手摺を伝って、あるいは手摺に手が届く距離を維持しながら避難しようとするのが常態と考えられる。
【0019】
係る場合において、この発明のように、上記誘導表示手段2が上記対象エリア内に設置された手摺装置30に設けられていると、該誘導表示手段2が避難行動中の被災者の目につき易く、ここに表示された避難方向を容易に確認することができることから、この手摺装置30に所定間隔で順次設けられた誘導表示手段2を順次確認しながら該手摺装置30に沿って移動することで、しかも状況が変化した際に体を預けて安全性を確保することができる手摺装置30とか壁面が近くに在るという安心感とも相俟って、被災者はより安全に且つ迅速に避難することができる。
【0020】
(c)本願の第3の発明に係る避難誘導システムによれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記誘導表示手段2を上記対象エリア内の壁面Wに設けているので、避難路の壁面寄りを通って避難するであろうと考えられる被災者の心理状態からして、上記誘導表示手段2が避難行動中の被災者の目につき易く、ここに表示された避難方向を容易に確認することができることから、被災者はより安全に且つ迅速に避難することができる。
【0021】
(d)本願の第4の発明に係る避難誘導システムによれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、災害発生時には避難路の照明が切れる場合もあり、また足元を確認しながら移動しようとする被災者の心理もあって、避難行動中の被災者の視線は移動方向前方側よりも寧ろ避難路の床面側に指向すると考えられることからして、この発明のように、上記誘導表示手段2を上記対象エリア内の床面Fに設けることで、上記誘導表示手段2が避難行動中の被災者の目につき易く、ここに表示された避難方向を容易に確認することができることから、被災者はより安全に且つ迅速に避難することができる。
【0022】
(e)本願の第5の発明に係る避難誘導システムによれば、上記(b)又は(c)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、災害発生時には避難路の照明が切れる場合もあり、係る場合においても被災者の安全な避難を実現するためには足元側の照明が確保されることが必要となるが、この発明のように、上記誘導表示手段2に、少なくとも上記誘導表示手段2の誘導表示時に床面F側を照明する床面照明手段16を付設していれば、例え避難路の照明が切れた場合であっても、上記床面照射部16による照明で被災者の足元の照明が確保され、より安全に被災者を避難誘導することができる。また、この場合、上記誘導表示手段2も避難路の照明機能を発揮することから、被災者が上記誘導表示手段2に視線を移す頻度も高く、該誘導表示手段2により表示された避難方向をより的確に認識することができ、上記床面照射部16の照明機能による効果と相俟って、より一層安全に被災者を避難誘導することができる。
【0023】
(f)本願の第6の発明に係る避難誘導システムによれば、上記(a)、(b)、(c)、(d)又は(e)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記制御手段5から上記複数の誘導表示手段2への情報伝達系を無線システムで構築しているので、災害の発生に伴って上記制御手段5と上記複数の誘導表示手段2との間の情報伝達機能が失われるということが未然に各確実に回避され、その結果、避難誘導システムの信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 本願発明に係る避難誘導システムのシステム構成図である。
【図2】 本願発明の避難誘導システムに備えられた誘導表示手段の第1の実施例を示す要部斜視図である。
【図3】 図2に示した誘導表示手段の拡大正面図である。
【図4】 図3に示す誘導表示手段の内部構造図である。
【図5】 図3のV−V拡大断面図である。
【図6】 照明ユニットの構成説明図である。
【図7】 上記誘導表示手段の第1の作動状態説明図である。
【図8】 上記誘導表示手段の第2の作動状態説明図である。
【図9】 本願発明の避難誘導システムに備えられた誘導表示手段の第2の実施例を示す要部斜視図である。
【図10】 本願発明の避難誘導システムに備えられた誘導表示手段の第3の実施例における要部断面図である。
【図11】 本願発明の避難誘導システムが備えられた建物の平面図である。
【図12】 第1の避難誘導例の説明図である。
【図13】 第2の避難誘導例の説明図である。
【図14】 第3の避難誘導例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1には、本願発明に係る避難誘導システムの全体構成を示している。この避難誘導システムは、火災等の災害発生位置の特定を前提とする災害時の避難誘導と、地震等の災害発生位置の特定を前提としない災害時の避難誘導の双方を実現し得るものであって、次述する情報入力部Xと制御部Y及び情報出力部Zを備えて構成される。
【0026】
「情報入力部X」
情報入力部Xは、複数の第1災害検知手段1Aと、少なくとも一つの第2災害検知手段1Bを備えて構成される。
【0027】
上記第1災害検知手段1Aは、災害発生位置の特定が必要とされる災害の発生を検知するものであって、この実施形態では対象となる災害として火災を想定していることから、上記第1災害検知手段1Aは火災の発生を検知する火災検知器で構成される。そして、この第1災害検知手段1Aは、図11に例示するように、建物(ここではホテルの一つのフロアを例示しており、フロアスペースが特許請求の範囲中の「対象エリア」となる)の各客室A1〜A10,B1〜B4、C1〜C6、D1〜D16、及びサービススペースS1〜S3のそれぞれに設置されており、これらの各客室の何れか及び各サービススペースの何れかにおいて火災が発生しこれを検知したときには、その火災検知信号が次述の災害監視手段4に出力される。
【0028】
なお、この実施形態では、建物の建設時に消防法の規定によって設置が義務付けられている火災検知器を第1災害検知手段1Aとして採用した例を示しているが、本願発明は係る例示構成に限定されるものではなく、例えば、上記火災検知器とは別個に、本避難誘導システムに専用の検知手段を備えることもできる。また、既存の火災検知器を採用した場合、該火災検知器と災害監視手段4との間の情報伝達系は有線システムで構築されるのが通例であるが、この有線システムに代えて無線システムで構築することもでき、特に後者は災害時の断線という点を考慮すれば好適である。
【0029】
第2災害検知手段1Bは、災害発生位置の特定が必要とされない災害の発生を検知するものであって、この実施形態では地震を想定しており、従って、上記第2災害検知手段1Bは所定以上の震度の地震が発生したときこれを検知して災害監視手段4に出力する地震検知器で構成されるのが一般的であるが、これに限定されるものではなく、例えば、地震の発生を自ら感知した者、あるいは報道情報等から知得した者がスイッチ操作をして地震発生信号を出力する構成とすることもできる。従って、上記第2災害検知手段1Bは、対象エリア内に多数設けることは必ずしも要求されず、従ってこの実施形態では図11に示すように、上記第2災害検知手段1BをサービススペースS1のみに設置した例を示している。
【0030】
ここで、図11を参照して、対象エリアにおける客室、サービススペース、避難路及び避難口の位置関係を説明する。この例における対象エリアは、全体として逆T形の平面形体をもち、その中央部分に設けられたロビーR1から左右に延びる避難路R2と避難路R3、及びこれら避難路R2、R3に直交するように延びる避難路R4が設けられており、これら各避難路R2〜R4をそれぞれその路幅方向に挟んでその両側に多数の客室とかサービススペースが配置されている。さらに、上記各避難路R2〜R4の先端位置には、それぞれ非常階段に通じる避難口E1〜E3が設けられている。また、上記各避難路R2〜R4には、所定間隔で後述する誘導表示手段2が所定間隔で配置されている。なお、上記各避難路R2〜R4は、平常時には建物内通路として機能するものである。
【0031】
「制御部Y」
制御部Yは、上記情報入力部Xの上記第1災害検知手段1Aあるいは第2災害検知手段1Bから出力される災害発生信号を受けて、後述の情報出力部Zに対して被災者の避難誘導のための制御信号を出力するものであって、記憶手段3と災害監視手段4と制御手段5及び出力手段8を備えて構成される。
【0032】
上記記憶手段3は、配置情報6と避難路情報7を記憶保持しており、災害の発生時にはその記憶情報が制御手段5に入力される。
【0033】
ここで、上記配置情報6は、図11に示す対象エリアにおける客室及びサービススペースの配置とか、これら客室及びサービススペースと上記第1災害検知手段1Aとの位置的な対応関係、即ち、どの第1災害検知手段1Aがどの客室あるいはサービススペースに配置されているのか、等の予め確定された情報である。従って、例えば、特定の第1災害検知手段1Aによって火災発生が検知された場合、この特定の第1災害検知手段1Aは特定の客室に設置されたものであって、対象エリアのどの位置において火災が発生したかを容易に判定することができる。
【0034】
また、上記避難路情報7は、上記対象エリアにおける避難路に関する情報であって、ここには、対象エリアにおける各避難路R1〜R4の位置とこれら相互の接続関係、及び各避難路R1〜R4と客室及びサービススペースとの位置関係、さらには上記各避難口E1〜E3の対象エリアにおける配置位置及びこれらと上記各避難路R1〜R4との位置関係等の予め確定された情報である。
【0035】
上記災害監視手段4は、上記第1災害検知手段1Aからの火災発生信号と上記第2災害検知手段1Bからの地震発生信号に基づいて、対象エリア内における火災又は地震の発生の有無を常時監視するものである。
【0036】
そして、上記災害監視手段4は、特定の第1災害検知手段1Aから火災発生信号が入力され、これによって火災の発生が検認されたときは、火災発生に関する情報と火災の発生位置に関する第1災害情報を次述の制御手段5に出力する。
【0037】
また、上記災害監視手段4は、上記第2災害検知手段1Bからの地震発生信号が入力され、これによって地震の発生が検認されたときは、地震の発生に関する第2災害情報を次述の制御手段5に出力する。
【0038】
上記制御手段5は、上記災害監視手段4からの火災の発生及び発生位置に関する第1災害情報あるいは地震の発生に関する第2災害情報と、上記記憶手段3からの記憶情報を受けて、被災者の避難誘導に係る表示制御を行うものであって、火災発生時と地震発生時で異なった制御を行う。
【0039】
火災発生時、即ち、上記災害監視手段4から第1災害情報が入力された場合は、対象エリア内における火災の発生位置と避難路及び避難口の位置を勘案して、上記対象エリアの各位置に居る被災者の全てを、火災発生位置から遠ざけながら安全な避難口E1〜E3の何れかに避難誘導するに最適な避難経路を作成し、且つこの避難経路における避難方向を各避難路R2〜R4に配置された後述の各誘導表示手段2において表示させるために必要な表示制御形態を求め、これを制御信号として次述の出力手段8に出力する。
【0040】
一方、地震発生時、即ち、上記災害監視手段4から第2災害情報が入力された場合は、対象エリア内に居る被災者全員を安全な避難口E1〜E3の何れかに避難誘導するに最適な避難経路を作成し、且つこの避難経路における避難方向を各避難路R2〜R4に配置された後述の各誘導表示手段2において表示させるために必要な表示制御形態を求め、これを制御信号として次述の出力手段8に出力する。
【0041】
上記出力手段8は、上記制御手段5からの制御信号を受けて、これを次述の情報出力部Zにおける各誘導表示手段2に出力する。この場合、この実施形態では、上記出力手段8と上記各誘導表示手段2との情報伝達系を無線システムで構築しており、上記出力手段8からの上記制御信号は無線送信によって上記各誘導表示手段2に伝達される。このような無線システムによる情報伝達方式を採用したことで、災害の発生に伴って上記制御手段5と上記各誘導表示手段2との間の情報伝達機能が失われるということが未然に各確実に回避され、避難誘導システムの信頼性が担保される。
【0042】
「情報出力部Z」
情報出力部Zは、既述のように対象エリアの各避難路R2〜R4に所定間隔で配置される複数の誘導表示手段2で構成される。ここで、この誘導表示手段2の構成を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0043】
第1の実施例
図2は、上記誘導表示手段2を避難路の壁面に設置された手摺装置30に取付けた第1の実施例を示している。
【0044】
上記手摺装置30は、図2及び図5に示すように、横長矩形の断面形状をもつ中空体で構成された手摺体31と、該手摺体31をその全長に亘って下面側から支持する支持桟35を備えており、該支持桟35を避難路の壁面に固定ブラケット33を介して固定することで、該壁面に取付けられている。また、上記支持桟35は、縦長矩形状の断面形状をもつ中空体であって、上記手摺体31の下面と上記固定ブラケット33にそれぞれ締結固定された桟本体36と、該桟本体36の前面側を覆うように該桟本体36に着脱自在に組み付けられた前面板37で構成される。この前面板37に上記誘導表示手段2が設けられている。
【0045】
上記誘導表示手段2は、図2及び図3に示すように、点灯表示される四つの表示部、即ち、第1表示部10Aと第1表示部10Bと第3表示部10C及び第4表示部10Dを備えて構成される。上記第1表示部10Aは、図中において向かって左側を指示する矢印の描画表示であり、上記第2表示部10Bは向かって左側へ走り出す人の体勢を表した描画表示である。また、上記第3表示部10Cは、図中において向かって右側を指示する矢印の描画表示であり、上記第4表示部10Dは向かって右側へ走り出す人の体勢を表した描画表示である。なお、図7及び図8では、上記照明ユニット12も点灯されることを示している。
【0046】
これら第1表示部10A〜第4表示部10Dは、上記第1表示部10Aと第2表示部10Bは、図中において向かって左側方向を指示する一方の表示グループを構成する。また、上記第3表示部10Cと第4表示部10は、図中において向かって右側方向を指示する他方の表示グループを構成し、これら表示グループ毎に点灯あるいは消灯されることで、これら各表示部10A〜10Dに接する被災者に対して避難方向を指示する。即ち、図7に示すように、上記一方の表示グループに属する上記第1表示部10Aと第2表示部10Bが点灯(斜線を付した描画表示)されたときは,被災者に対して左方向へ避難すべきことを示す。逆に、図8に示すように、上記他方の表示グループに属する上記第3表示部10Cと第4表示部10Dが点灯(斜線を付した描画表示)されたときは,被災者に対して右方向へ避難すべきことを示す。なお、図7及び図8では、上記照明ユニット12も点灯されることを示している。
【0047】
また、これら各表示部10A〜10Dの具体的な構造を説明すると、以下の通りである。これら各表示部10A〜10Dは、LED発光素子の発光照明によって表示(点灯)又は非表示(消灯)されるものであって、係る表示方法を実現するために以下のような構造を採用している。
【0048】
即ち、図3及び図5に示すように、上記支持桟35の上記前面板37には、上記各表示部10A〜10Dの描画表示の外縁形状に合致する形状の打抜き40が施されている。そして、この前面板37の上記打抜き40部分の内面側にはアクリル板でなる表示板42が裏打ち状態で取付けられている。一方、この表示板42の背面側には、図4及び図5に示すように、上記表示部10A〜10Dの全域を覆うような大きさをもつLED取付板44に複数のLEDユニット45を取付けてなる照明ユニット11が、上記桟本体36に固定された支持ブラケット38を介して取付けられている。従って、上記照明ユニット11が点灯されると、その照明光が上記表示板42を透過し上記打抜き40部分を通って外方へ照射されることで、上記各表示部10A〜10Dの描画表示が視認可能に点灯表示される。
【0049】
ここで、図4を参照して、上記照明ユニット11の構成を説明すると、この照明ユニット11は、平形のLED発光素子46を帯状の基盤に所定間隔で複数個列設してなるLEDユニット45を、上記各表示部10A〜10Dのそれぞれに対応するように縦方向に三列、横方向に四列に並置して構成される。この場合、左側二列の各LEDユニット45は、上記第1表示部10Aと第2表示部10Bに対応するものであって、第1のLEDグループG1を構成する。また、右側二列の各LEDユニット45は、上記第3表示部10Cと第4表示部10Dに対応するものであって、第2のLEDグループG2を構成しており、これら第1及び第2のLEDグループG1,G2にそれぞれ属するLEDユニット45は、グループ毎にON−OFF制御される。
【0050】
上記第1、第2のLEDグループG1、G2に属する各LEDユニット45は、図6に示すように、それぞれ照明コントローラ13に接続されている。また、この照明コントローラ13には、次述の照明ユニット12も接続されている。
【0051】
上記照明コントローラ13には、受信機14とバッテリー15が付設されており、上記制御部Yの出力手段8から送信された制御信号は上記受信機14によって受信され、上記照明コントローラ13に入力される。この照明コントローラ13では、上記制御信号に基づいて、上記各LEDグループG1、G2の何れのグループに属するLEDユニット45を点灯又は消灯させるのか、あるいは双方を消灯させるのかを判断し、その判断に基づいて上記各LEDユニット45のON−OFF制御を行う。なお、上記照明コントローラ13と受信機14及びバッテリー15は、上記誘導表示手段2の近傍に位置するようにして上記支持桟35の内部に収納配置される。
【0052】
一方、上記前面板37の下端寄りの傾斜部位には、照明ユニット12が配置されている。即ち、図3〜図5に示すように、上記前面板37の下端寄り位置に、横方向(上記各表示部10A〜10Dの列設方向)に延びるスリット状の打抜き41が設けられるとともに、該打抜き41の背面側にはアクリル板でなる照明板49が裏打ち状態で取付けられている。さらに、この照明板49の背面側には、複数の砲弾形のLED発光素子47を所定間隔で列設配置した帯状の支持板48が、上記支持ブラケット38に固定された状態で設けられている。従って、上記各LED発光素子47が点灯されることで、その照明光は上記照明板49を透過して斜め下方へ照射され、床面を照明することになる。
【0053】
上記照明ユニット12の点灯制御も、図6に示すように、上記照明コントローラ13によって行われるが、その点灯形態としては、上記照明ユニット11の各LEDグループG1、G2の何れか一方が点灯されたとき(即ち、避難誘導の必要が生じたとき)にのみこれと連動して点灯される点灯形態の他に、災害の発生とは関係なく常時あるいは夜間に点灯される点灯形態をとることもできる。尤も、夜間のみに点灯する場合においても、災害発生時には、点灯時間であるか否かに拘らず、これを点灯させることは勿論である。
【0054】
第2の実施例
図9には、上記誘導表示手段2を避難路の壁面Wに設置された手摺32より上方に位置するようにして、該壁面Wに直接取り付けた例を示している。
【0055】
このように手摺32より上方に上記誘導表示手段2を配置したのは、避難時に被災者が上記誘導表示手段2に接触して避難行動の妨げとなるのを回避するとともに、該誘導表示手段2が手摺32近くを通って移動する被災者の視線に入り易くする等の点を考慮した結果である。
【0056】
なお、この実施例における上記誘導表示手段2の構造は、上記第1の実施例における誘導表示手段2の構造において上記手摺体31を取り除くとともに、その長さを上記各表示部10A〜10Dの列設方向の長さに対応した長さに縮めたものとして把握されるものである。従って、ここでは、第1の実施例の該当説明を援用することで、ここでの説明を省略する。また、上記誘導表示手段2には上記照明ユニット12も備えられているが、これも第1の実施例の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0057】
第3の実施例
図10には、上記誘導表示手段2を避難路の床面Fに設置した例を示している。この例の誘導表示手段2は、その基本構成は上記第1の実施例に係る誘導表示手段2と同様であるが、床面Fに設置するに適するようにその構成を変更している。
【0058】
即ち、床面Fに凹溝状の穴部54を設けてこれを上記誘導表示手段2の取付部としている。そして、上記誘導表示手段2においては、上記穴部54の形状に対応するように深皿状の底面材55を備えるとともに、該底面材55の内部には、LED発光素子46を備えた複数のLEDユニット45が取付けられたLED取付板44が、該LED発光素子46の照射方向が上方に指向するようにして、支持ブラケット38を介して取付けられている。さらに、上記底面材55の上端開口側には、アクリル板でなる表示板42が取付けられるとともに、該表示板42の上面には上記各表示部10A〜10Dの描画表示の外縁に合致する形状の打抜き40が設けられたカバー部材57が取付けられている。
【0059】
係る構成とすることで、上記LEDユニット45の点灯時には、該LEDユニット45の各LED発光素子46からの照明光が、上記表示板42を透過し、上記カバー部材57に設けた打抜き40を通って上方に照射されることで、上記各表示部10A〜10Dの描画表示が照明表示される。
【0060】
なお、上記カバー部材57は、床面Fを通る人の靴裏が直接接触するため、この靴裏の接触から上記表示板42部分を保護する機能と、該カバー部材57に描かれた描画表示の形状保護機能を併せもつように、耐摩耗性のある素材で構成される。
【0061】
「避難誘導システムの誘導例」
ここで、この実施形態に係る避難誘導システムの避難誘導例を、図12〜図14を参照して説明する。
【0062】
第1の避難誘導例
第1の避難誘導例は、図12に示すように、対象エリアにおいて、客室D12に設置された第1災害検知手段1Aが火災発生を検知した場合である。この例の下では、火災発生位置である客室D12よりもロビーR1寄りに居る被災者は、直ちに上記ロビーR1側へ移動した後、避難路R2を通って避難口E1から避難するか、避難路R4を通って避難口E3から避難するのが安全である。また、避難路R2に居る被災者は、この避難路R2からそのまま避難口E1に向かって移動し、この避難口E1から避難するのが安全である。さらに、避難路R4に居る被災者は、この避難路R4からそのまま避難口E3に向かって移動し、この避難口E3から避難するのが安全である。一方、客室D12よりも避難口E2寄りに居る被災者は、避難路R3から直ちに避難口E2側へ移動し、この避難口E2から避難するのが安全である。
【0063】
このような状況判断の下、上記制御手段5は、上記避難路R2に設置された各誘導表示手段2に対しては避難口E1に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R4に設置された各誘導表示手段2に対しては避難口E3に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R3で且つ客室D12よりもロビーR1寄りに設置された誘導表示手段2に対してはロビーR1に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R3で且つ客室D12よりも避難口E2寄りに設置された誘導表示手段2に対しては該避難口E2に向かう方向の表示を行わせる。
【0064】
このような表示が上記各誘導表示手段2において行われることで、全ての被災者は火災発生位置である客室D12から遠ざかりながら安全に避難誘導されることになる。
【0065】
第2の避難誘導例
第2の避難誘導例は、図13に示すように、対象エリアにおいて、客室A9に設置された第1災害検知手段1Aが火災発生を検知した場合である。この例の下では、火災発生位置である客室A9よりもロビーR1寄りに居る被災者は、直ちに上記ロビーR1側へ移動した後、避難路R2を通って避難口E1から避難するか、避難路R3を通って避難口E2から避難するのが安全である。客室A9よりも避難口E3寄りに居る被災者は、直ちに避難口E3側へ移動し、この避難口E3から避難するのが安全である。避難路R2に居る被災者は、この避難路R2からそのまま避難口E1に向かって移動し、この避難口E1から避難するのが安全である。避難路R3に居る被災者は、この避難路R3からそのまま避難口E2に向かって移動し、この避難口E2から避難するのが安全である。
【0066】
このような状況判断の下、上記制御手段5は、上記避難路R2に設置された各誘導表示手段2に対しては避難口E1に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R3に設置された各誘導表示手段2に対しては避難口E2に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R4で且つ客室A9よりもロビーR1寄りに設置された誘導表示手段2に対してはロビーR1に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R4で且つ客室A9よりも避難口E3寄りに設置された誘導表示手段2に対しては該避難口E3に向かう方向の表示を行わせる。
【0067】
このような表示が上記各誘導表示手段2において行われることで、全ての被災者は火災発生位置である客室A9から遠ざかりながら安全に避難誘導されることになる。
【0068】
第3の誘導例
第3の誘導例は、図14に示すように、対象エリアにおいて、サービススペースS1に設置された第2災害検知手段1Bが地震発生を検知した場合、あるいは該第2災害検知手段1Bが入力操作される構成である場合には該第2災害検知手段1Bが地震発生に伴って入力操作された場合である。このような地震発生に対しては、災害発生位置の特定は必要ではなく、直ちに対象エリア内に居る被災者全員を、各被災者に近い避難口へ誘導してこの避難口から避難させれば良い。
【0069】
従って、この誘導例の場合には、上記避難路R2に設置された誘導表示手段2に対しては避難口E1に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R3に設置された各誘導表示手段2に対しては避難口E2に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R4に設置された誘導表示手段2に対しては避難口E3に向かう方向の表示を行わせる。
【0070】
このような表示が上記各誘導表示手段2において行われることで、全ての被災者は自分が居る位置から最も近い位置にある避難口に向けて安全に避難誘導されることになる。
【符号の説明】
【0071】
1A ・・第1災害検知手段
1B ・・第2災害検知手段
2 ・・誘導表示手段
3 ・・記憶手段
4 ・・災害監視手段
5 ・・制御手段
6 ・・配置情報
7 ・・避難路情報
8 ・・出力手段
10A〜10D ・・表示部
11 ・・照明ユニット
12 ・・照明ユニット
13 ・・照明コントローラ
14 ・・受信機
15 ・・バッテリー
30 ・・手摺装置
31 ・・手摺体
32 ・・手摺
【技術分野】
【0001】
本願発明は、災害発生時に被災者を安全に対象エリア外に誘導して避難させる避難誘導システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の避難誘導システムとしては従来から種々の提案がなされているが、この避難誘導システムは対象とする被災者によって、特定の被災者を避難誘導対象とするものと、不特定多数の被災者を避難誘導対象とするものに大別され、特に後者に属する避難誘導システムとしては、例えば、特許文献1に示されるものがある。
【0003】
この特許文献1に示された避難誘導システムは、火災発生時の避難誘導システムに関するものであって、避難誘導灯装置を備え、火災発生時には避難誘導灯装置の点灯、点滅、消灯による表示によって、上記発火点から遠ざかるように被災者を避難誘導するものである。
【先行技術文献】
【0004】
【特許文献】
【特許文献1】 特開平9−319317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載の避難誘導システムは、火災発生時の避難誘導を対象としたもので、発火点、即ち、火災の発生位置の特定を前提として成立するシステムであるところ、現実に発生し得る災害には、例えば地震のように発生位置の特定を必要としないが、被災者を安全な場所に誘導して避難させることが要求されるような災害もあることから、災害時における被災者の避難誘導という観点からして、十分とは言い難いものである。
【0006】
そこで本願発明では、対象エリア内における災害のうち、災害の発生位置の特定が必要な災害と、災害の発生位置の特定を必要としない災害の何れにおいても被災者を安全な方向へ的確に誘導して避難させることができる避難誘導システムを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明ではかかる課題を解決するための具体的手段として次のような構成を採用している。
【0008】
本願の第1の発明では、対象エリア内に設置された複数の第1災害検知手段1Aと、上記対象エリア内に設置された災害検知手段であって上記第1災害検知手段1Aとは検知対象が異なる第2災害検知手段1Bと、上記対象エリア内に設けられた避難路上に設置されて避難方向を表示する複数の誘導表示手段2と、上記対象エリア内における上記第1災害検知手段1Aと上記誘導表示手段2の配置に関する情報6と上記避難路に関する情報7を記憶した記憶手段3と、上記第1災害検知手段1Aからの入力情報と上記第2災害検知手段1Bからの入力情報に基づいて上記対象エリア内における災害の発生の有無を監視し、且つ上記第1災害検知手段1Aからの入力情報に基づいて災害の発生が検認されたときはその災害の発生位置に関する第1災害情報を、上記第2災害検知手段1Bからの入力情報に基づいて災害の発生が検認されたときは災害の発生に関する第2災害情報を、それぞれ出力する災害監視手段4と、上記災害監視手段4からの第1災害情報と上記記憶手段3からの記憶情報に基づいて被災者を災害発生位置から遠ざけながら上記避難路を通って安全な避難口に誘導させるべく、また上記災害監視手段4からの第2災害情報に基づいて被災者を上記避難路を通って安全な避難口に誘導させるべく、それぞれ上記複数の誘導表示手段2に避難方向を表示させる制御手段5とを備えたことを特徴としている。
【0009】
本願の第2の発明では、上記第1の発明に係る避難誘導システムにおいて、上記誘導表示手段2を、上記対象エリア内に設置された手摺装置30に設けたことを特徴としている。
【0010】
本願の第3の発明では、上記第1の発明に係る避難誘導システムにおいて、上記誘導表示手段2を、上記対象エリア内の壁面Wに設けたことを特徴としている。
【0011】
本願の第4の発明では、上記第1の発明に係る避難誘導システムにおいて、上記誘導表示手段2を、上記対象エリア内の床面Fに設けたことを特徴としている。
【0012】
本願の第5の発明では、上記第2又は第3の発明に係る避難誘導システムにおいて、上記誘導表示手段2に、少なくとも上記誘導表示手段2の誘導表示時に床面F側を照明する床面照明手段16を付設したことを特徴としている。
【0013】
本願の第6の発明では、上記第1、第2、第3、第4又は第5の発明に係る避難誘導システムにおいて、上記制御手段5から上記複数の誘導表示手段2への情報伝達系を無線システムで構築したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本願発明では次のような効果が得られる。
【0015】
(a)本願の第1の発明に係る避難誘導システムによれば、対象エリア内に設置された複数の第1災害検知手段1Aからの入力情報に基づいて災害、例えば、火災のように災害の発生位置を確認することが被災者を安全に避難誘導する上において必須となるような災害の発生が検認されたときは、上記災害監視手段4から出力される災害発生位置に関する第1災害情報を受けて、上記制御手段5では、上記第1災害情報と上記記憶手段3からの記憶情報に基づいて、被災者を災害発生位置から遠ざけながら上記避難路を通って安全な避難口に誘導させるべく、上記複数の誘導表示手段2において避難方向が表示されるので、被災者は上記誘導表示手段2を視認しその表示方向を確認することで災害発生位置へ近づくことなく安全に避難することができる。
【0016】
一方、対象エリア内に設置された上記第2災害検知手段1Bからの入力情報に基づいて災害、例えば、地震のように災害の発生位置の特定を必要としない災害の発生が検認されたときは、上記災害監視手段4から出力される災害の発生に関する第2災害情報を受けて、上記制御手段5では、被災者を安全な避難口に誘導させるべく、上記複数の誘導表示手段2において避難方向が表示されるので、被災者は上記誘導表示手段2を視認しその表示方向を確認することで安全に避難することができる。
【0017】
このように第1の発明に係る避難誘導システムによれば、災害の発生位置の特定が必要な災害の発生時においても、災害の発生位置の特定を必要としない災害の発生時においても、被災者を安全に且つ的確に安全な方向へ誘導して避難させることができるものであり、災害の形態の多様化に照らして極めて有用性の高い避難誘導システムを提供できる。
【0018】
(b)本願の第2の発明に係る避難誘導システムによれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、災害の発生に伴って被災者が避難路を通って避難する場合、多人数の同時避難によって避難路は騒然とした雰囲気となり、且つ被災者も不安感を募らせた極めて不安定な心理状態にあり、このような極限状態下での避難時には、周囲の状況が例え突発的に変化したとしてもこれに対処し得るように準備しておこうという心理が被災者に働き、その結果、被災者は避難路の中央寄りを通って避難するよりも、寧ろ避難路の壁面寄りを通って避難すると考えられ、しかもこの避難路の壁面に手摺装置が備えられている場合には、この手摺を伝って、あるいは手摺に手が届く距離を維持しながら避難しようとするのが常態と考えられる。
【0019】
係る場合において、この発明のように、上記誘導表示手段2が上記対象エリア内に設置された手摺装置30に設けられていると、該誘導表示手段2が避難行動中の被災者の目につき易く、ここに表示された避難方向を容易に確認することができることから、この手摺装置30に所定間隔で順次設けられた誘導表示手段2を順次確認しながら該手摺装置30に沿って移動することで、しかも状況が変化した際に体を預けて安全性を確保することができる手摺装置30とか壁面が近くに在るという安心感とも相俟って、被災者はより安全に且つ迅速に避難することができる。
【0020】
(c)本願の第3の発明に係る避難誘導システムによれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記誘導表示手段2を上記対象エリア内の壁面Wに設けているので、避難路の壁面寄りを通って避難するであろうと考えられる被災者の心理状態からして、上記誘導表示手段2が避難行動中の被災者の目につき易く、ここに表示された避難方向を容易に確認することができることから、被災者はより安全に且つ迅速に避難することができる。
【0021】
(d)本願の第4の発明に係る避難誘導システムによれば、上記(a)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、災害発生時には避難路の照明が切れる場合もあり、また足元を確認しながら移動しようとする被災者の心理もあって、避難行動中の被災者の視線は移動方向前方側よりも寧ろ避難路の床面側に指向すると考えられることからして、この発明のように、上記誘導表示手段2を上記対象エリア内の床面Fに設けることで、上記誘導表示手段2が避難行動中の被災者の目につき易く、ここに表示された避難方向を容易に確認することができることから、被災者はより安全に且つ迅速に避難することができる。
【0022】
(e)本願の第5の発明に係る避難誘導システムによれば、上記(b)又は(c)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、災害発生時には避難路の照明が切れる場合もあり、係る場合においても被災者の安全な避難を実現するためには足元側の照明が確保されることが必要となるが、この発明のように、上記誘導表示手段2に、少なくとも上記誘導表示手段2の誘導表示時に床面F側を照明する床面照明手段16を付設していれば、例え避難路の照明が切れた場合であっても、上記床面照射部16による照明で被災者の足元の照明が確保され、より安全に被災者を避難誘導することができる。また、この場合、上記誘導表示手段2も避難路の照明機能を発揮することから、被災者が上記誘導表示手段2に視線を移す頻度も高く、該誘導表示手段2により表示された避難方向をより的確に認識することができ、上記床面照射部16の照明機能による効果と相俟って、より一層安全に被災者を避難誘導することができる。
【0023】
(f)本願の第6の発明に係る避難誘導システムによれば、上記(a)、(b)、(c)、(d)又は(e)に記載の効果に加えて以下のような特有の効果が得られる。即ち、この発明では、上記制御手段5から上記複数の誘導表示手段2への情報伝達系を無線システムで構築しているので、災害の発生に伴って上記制御手段5と上記複数の誘導表示手段2との間の情報伝達機能が失われるということが未然に各確実に回避され、その結果、避難誘導システムの信頼性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】 本願発明に係る避難誘導システムのシステム構成図である。
【図2】 本願発明の避難誘導システムに備えられた誘導表示手段の第1の実施例を示す要部斜視図である。
【図3】 図2に示した誘導表示手段の拡大正面図である。
【図4】 図3に示す誘導表示手段の内部構造図である。
【図5】 図3のV−V拡大断面図である。
【図6】 照明ユニットの構成説明図である。
【図7】 上記誘導表示手段の第1の作動状態説明図である。
【図8】 上記誘導表示手段の第2の作動状態説明図である。
【図9】 本願発明の避難誘導システムに備えられた誘導表示手段の第2の実施例を示す要部斜視図である。
【図10】 本願発明の避難誘導システムに備えられた誘導表示手段の第3の実施例における要部断面図である。
【図11】 本願発明の避難誘導システムが備えられた建物の平面図である。
【図12】 第1の避難誘導例の説明図である。
【図13】 第2の避難誘導例の説明図である。
【図14】 第3の避難誘導例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1には、本願発明に係る避難誘導システムの全体構成を示している。この避難誘導システムは、火災等の災害発生位置の特定を前提とする災害時の避難誘導と、地震等の災害発生位置の特定を前提としない災害時の避難誘導の双方を実現し得るものであって、次述する情報入力部Xと制御部Y及び情報出力部Zを備えて構成される。
【0026】
「情報入力部X」
情報入力部Xは、複数の第1災害検知手段1Aと、少なくとも一つの第2災害検知手段1Bを備えて構成される。
【0027】
上記第1災害検知手段1Aは、災害発生位置の特定が必要とされる災害の発生を検知するものであって、この実施形態では対象となる災害として火災を想定していることから、上記第1災害検知手段1Aは火災の発生を検知する火災検知器で構成される。そして、この第1災害検知手段1Aは、図11に例示するように、建物(ここではホテルの一つのフロアを例示しており、フロアスペースが特許請求の範囲中の「対象エリア」となる)の各客室A1〜A10,B1〜B4、C1〜C6、D1〜D16、及びサービススペースS1〜S3のそれぞれに設置されており、これらの各客室の何れか及び各サービススペースの何れかにおいて火災が発生しこれを検知したときには、その火災検知信号が次述の災害監視手段4に出力される。
【0028】
なお、この実施形態では、建物の建設時に消防法の規定によって設置が義務付けられている火災検知器を第1災害検知手段1Aとして採用した例を示しているが、本願発明は係る例示構成に限定されるものではなく、例えば、上記火災検知器とは別個に、本避難誘導システムに専用の検知手段を備えることもできる。また、既存の火災検知器を採用した場合、該火災検知器と災害監視手段4との間の情報伝達系は有線システムで構築されるのが通例であるが、この有線システムに代えて無線システムで構築することもでき、特に後者は災害時の断線という点を考慮すれば好適である。
【0029】
第2災害検知手段1Bは、災害発生位置の特定が必要とされない災害の発生を検知するものであって、この実施形態では地震を想定しており、従って、上記第2災害検知手段1Bは所定以上の震度の地震が発生したときこれを検知して災害監視手段4に出力する地震検知器で構成されるのが一般的であるが、これに限定されるものではなく、例えば、地震の発生を自ら感知した者、あるいは報道情報等から知得した者がスイッチ操作をして地震発生信号を出力する構成とすることもできる。従って、上記第2災害検知手段1Bは、対象エリア内に多数設けることは必ずしも要求されず、従ってこの実施形態では図11に示すように、上記第2災害検知手段1BをサービススペースS1のみに設置した例を示している。
【0030】
ここで、図11を参照して、対象エリアにおける客室、サービススペース、避難路及び避難口の位置関係を説明する。この例における対象エリアは、全体として逆T形の平面形体をもち、その中央部分に設けられたロビーR1から左右に延びる避難路R2と避難路R3、及びこれら避難路R2、R3に直交するように延びる避難路R4が設けられており、これら各避難路R2〜R4をそれぞれその路幅方向に挟んでその両側に多数の客室とかサービススペースが配置されている。さらに、上記各避難路R2〜R4の先端位置には、それぞれ非常階段に通じる避難口E1〜E3が設けられている。また、上記各避難路R2〜R4には、所定間隔で後述する誘導表示手段2が所定間隔で配置されている。なお、上記各避難路R2〜R4は、平常時には建物内通路として機能するものである。
【0031】
「制御部Y」
制御部Yは、上記情報入力部Xの上記第1災害検知手段1Aあるいは第2災害検知手段1Bから出力される災害発生信号を受けて、後述の情報出力部Zに対して被災者の避難誘導のための制御信号を出力するものであって、記憶手段3と災害監視手段4と制御手段5及び出力手段8を備えて構成される。
【0032】
上記記憶手段3は、配置情報6と避難路情報7を記憶保持しており、災害の発生時にはその記憶情報が制御手段5に入力される。
【0033】
ここで、上記配置情報6は、図11に示す対象エリアにおける客室及びサービススペースの配置とか、これら客室及びサービススペースと上記第1災害検知手段1Aとの位置的な対応関係、即ち、どの第1災害検知手段1Aがどの客室あるいはサービススペースに配置されているのか、等の予め確定された情報である。従って、例えば、特定の第1災害検知手段1Aによって火災発生が検知された場合、この特定の第1災害検知手段1Aは特定の客室に設置されたものであって、対象エリアのどの位置において火災が発生したかを容易に判定することができる。
【0034】
また、上記避難路情報7は、上記対象エリアにおける避難路に関する情報であって、ここには、対象エリアにおける各避難路R1〜R4の位置とこれら相互の接続関係、及び各避難路R1〜R4と客室及びサービススペースとの位置関係、さらには上記各避難口E1〜E3の対象エリアにおける配置位置及びこれらと上記各避難路R1〜R4との位置関係等の予め確定された情報である。
【0035】
上記災害監視手段4は、上記第1災害検知手段1Aからの火災発生信号と上記第2災害検知手段1Bからの地震発生信号に基づいて、対象エリア内における火災又は地震の発生の有無を常時監視するものである。
【0036】
そして、上記災害監視手段4は、特定の第1災害検知手段1Aから火災発生信号が入力され、これによって火災の発生が検認されたときは、火災発生に関する情報と火災の発生位置に関する第1災害情報を次述の制御手段5に出力する。
【0037】
また、上記災害監視手段4は、上記第2災害検知手段1Bからの地震発生信号が入力され、これによって地震の発生が検認されたときは、地震の発生に関する第2災害情報を次述の制御手段5に出力する。
【0038】
上記制御手段5は、上記災害監視手段4からの火災の発生及び発生位置に関する第1災害情報あるいは地震の発生に関する第2災害情報と、上記記憶手段3からの記憶情報を受けて、被災者の避難誘導に係る表示制御を行うものであって、火災発生時と地震発生時で異なった制御を行う。
【0039】
火災発生時、即ち、上記災害監視手段4から第1災害情報が入力された場合は、対象エリア内における火災の発生位置と避難路及び避難口の位置を勘案して、上記対象エリアの各位置に居る被災者の全てを、火災発生位置から遠ざけながら安全な避難口E1〜E3の何れかに避難誘導するに最適な避難経路を作成し、且つこの避難経路における避難方向を各避難路R2〜R4に配置された後述の各誘導表示手段2において表示させるために必要な表示制御形態を求め、これを制御信号として次述の出力手段8に出力する。
【0040】
一方、地震発生時、即ち、上記災害監視手段4から第2災害情報が入力された場合は、対象エリア内に居る被災者全員を安全な避難口E1〜E3の何れかに避難誘導するに最適な避難経路を作成し、且つこの避難経路における避難方向を各避難路R2〜R4に配置された後述の各誘導表示手段2において表示させるために必要な表示制御形態を求め、これを制御信号として次述の出力手段8に出力する。
【0041】
上記出力手段8は、上記制御手段5からの制御信号を受けて、これを次述の情報出力部Zにおける各誘導表示手段2に出力する。この場合、この実施形態では、上記出力手段8と上記各誘導表示手段2との情報伝達系を無線システムで構築しており、上記出力手段8からの上記制御信号は無線送信によって上記各誘導表示手段2に伝達される。このような無線システムによる情報伝達方式を採用したことで、災害の発生に伴って上記制御手段5と上記各誘導表示手段2との間の情報伝達機能が失われるということが未然に各確実に回避され、避難誘導システムの信頼性が担保される。
【0042】
「情報出力部Z」
情報出力部Zは、既述のように対象エリアの各避難路R2〜R4に所定間隔で配置される複数の誘導表示手段2で構成される。ここで、この誘導表示手段2の構成を実施例に基づいて具体的に説明する。
【0043】
第1の実施例
図2は、上記誘導表示手段2を避難路の壁面に設置された手摺装置30に取付けた第1の実施例を示している。
【0044】
上記手摺装置30は、図2及び図5に示すように、横長矩形の断面形状をもつ中空体で構成された手摺体31と、該手摺体31をその全長に亘って下面側から支持する支持桟35を備えており、該支持桟35を避難路の壁面に固定ブラケット33を介して固定することで、該壁面に取付けられている。また、上記支持桟35は、縦長矩形状の断面形状をもつ中空体であって、上記手摺体31の下面と上記固定ブラケット33にそれぞれ締結固定された桟本体36と、該桟本体36の前面側を覆うように該桟本体36に着脱自在に組み付けられた前面板37で構成される。この前面板37に上記誘導表示手段2が設けられている。
【0045】
上記誘導表示手段2は、図2及び図3に示すように、点灯表示される四つの表示部、即ち、第1表示部10Aと第1表示部10Bと第3表示部10C及び第4表示部10Dを備えて構成される。上記第1表示部10Aは、図中において向かって左側を指示する矢印の描画表示であり、上記第2表示部10Bは向かって左側へ走り出す人の体勢を表した描画表示である。また、上記第3表示部10Cは、図中において向かって右側を指示する矢印の描画表示であり、上記第4表示部10Dは向かって右側へ走り出す人の体勢を表した描画表示である。なお、図7及び図8では、上記照明ユニット12も点灯されることを示している。
【0046】
これら第1表示部10A〜第4表示部10Dは、上記第1表示部10Aと第2表示部10Bは、図中において向かって左側方向を指示する一方の表示グループを構成する。また、上記第3表示部10Cと第4表示部10は、図中において向かって右側方向を指示する他方の表示グループを構成し、これら表示グループ毎に点灯あるいは消灯されることで、これら各表示部10A〜10Dに接する被災者に対して避難方向を指示する。即ち、図7に示すように、上記一方の表示グループに属する上記第1表示部10Aと第2表示部10Bが点灯(斜線を付した描画表示)されたときは,被災者に対して左方向へ避難すべきことを示す。逆に、図8に示すように、上記他方の表示グループに属する上記第3表示部10Cと第4表示部10Dが点灯(斜線を付した描画表示)されたときは,被災者に対して右方向へ避難すべきことを示す。なお、図7及び図8では、上記照明ユニット12も点灯されることを示している。
【0047】
また、これら各表示部10A〜10Dの具体的な構造を説明すると、以下の通りである。これら各表示部10A〜10Dは、LED発光素子の発光照明によって表示(点灯)又は非表示(消灯)されるものであって、係る表示方法を実現するために以下のような構造を採用している。
【0048】
即ち、図3及び図5に示すように、上記支持桟35の上記前面板37には、上記各表示部10A〜10Dの描画表示の外縁形状に合致する形状の打抜き40が施されている。そして、この前面板37の上記打抜き40部分の内面側にはアクリル板でなる表示板42が裏打ち状態で取付けられている。一方、この表示板42の背面側には、図4及び図5に示すように、上記表示部10A〜10Dの全域を覆うような大きさをもつLED取付板44に複数のLEDユニット45を取付けてなる照明ユニット11が、上記桟本体36に固定された支持ブラケット38を介して取付けられている。従って、上記照明ユニット11が点灯されると、その照明光が上記表示板42を透過し上記打抜き40部分を通って外方へ照射されることで、上記各表示部10A〜10Dの描画表示が視認可能に点灯表示される。
【0049】
ここで、図4を参照して、上記照明ユニット11の構成を説明すると、この照明ユニット11は、平形のLED発光素子46を帯状の基盤に所定間隔で複数個列設してなるLEDユニット45を、上記各表示部10A〜10Dのそれぞれに対応するように縦方向に三列、横方向に四列に並置して構成される。この場合、左側二列の各LEDユニット45は、上記第1表示部10Aと第2表示部10Bに対応するものであって、第1のLEDグループG1を構成する。また、右側二列の各LEDユニット45は、上記第3表示部10Cと第4表示部10Dに対応するものであって、第2のLEDグループG2を構成しており、これら第1及び第2のLEDグループG1,G2にそれぞれ属するLEDユニット45は、グループ毎にON−OFF制御される。
【0050】
上記第1、第2のLEDグループG1、G2に属する各LEDユニット45は、図6に示すように、それぞれ照明コントローラ13に接続されている。また、この照明コントローラ13には、次述の照明ユニット12も接続されている。
【0051】
上記照明コントローラ13には、受信機14とバッテリー15が付設されており、上記制御部Yの出力手段8から送信された制御信号は上記受信機14によって受信され、上記照明コントローラ13に入力される。この照明コントローラ13では、上記制御信号に基づいて、上記各LEDグループG1、G2の何れのグループに属するLEDユニット45を点灯又は消灯させるのか、あるいは双方を消灯させるのかを判断し、その判断に基づいて上記各LEDユニット45のON−OFF制御を行う。なお、上記照明コントローラ13と受信機14及びバッテリー15は、上記誘導表示手段2の近傍に位置するようにして上記支持桟35の内部に収納配置される。
【0052】
一方、上記前面板37の下端寄りの傾斜部位には、照明ユニット12が配置されている。即ち、図3〜図5に示すように、上記前面板37の下端寄り位置に、横方向(上記各表示部10A〜10Dの列設方向)に延びるスリット状の打抜き41が設けられるとともに、該打抜き41の背面側にはアクリル板でなる照明板49が裏打ち状態で取付けられている。さらに、この照明板49の背面側には、複数の砲弾形のLED発光素子47を所定間隔で列設配置した帯状の支持板48が、上記支持ブラケット38に固定された状態で設けられている。従って、上記各LED発光素子47が点灯されることで、その照明光は上記照明板49を透過して斜め下方へ照射され、床面を照明することになる。
【0053】
上記照明ユニット12の点灯制御も、図6に示すように、上記照明コントローラ13によって行われるが、その点灯形態としては、上記照明ユニット11の各LEDグループG1、G2の何れか一方が点灯されたとき(即ち、避難誘導の必要が生じたとき)にのみこれと連動して点灯される点灯形態の他に、災害の発生とは関係なく常時あるいは夜間に点灯される点灯形態をとることもできる。尤も、夜間のみに点灯する場合においても、災害発生時には、点灯時間であるか否かに拘らず、これを点灯させることは勿論である。
【0054】
第2の実施例
図9には、上記誘導表示手段2を避難路の壁面Wに設置された手摺32より上方に位置するようにして、該壁面Wに直接取り付けた例を示している。
【0055】
このように手摺32より上方に上記誘導表示手段2を配置したのは、避難時に被災者が上記誘導表示手段2に接触して避難行動の妨げとなるのを回避するとともに、該誘導表示手段2が手摺32近くを通って移動する被災者の視線に入り易くする等の点を考慮した結果である。
【0056】
なお、この実施例における上記誘導表示手段2の構造は、上記第1の実施例における誘導表示手段2の構造において上記手摺体31を取り除くとともに、その長さを上記各表示部10A〜10Dの列設方向の長さに対応した長さに縮めたものとして把握されるものである。従って、ここでは、第1の実施例の該当説明を援用することで、ここでの説明を省略する。また、上記誘導表示手段2には上記照明ユニット12も備えられているが、これも第1の実施例の場合と同様であるので、その説明を省略する。
【0057】
第3の実施例
図10には、上記誘導表示手段2を避難路の床面Fに設置した例を示している。この例の誘導表示手段2は、その基本構成は上記第1の実施例に係る誘導表示手段2と同様であるが、床面Fに設置するに適するようにその構成を変更している。
【0058】
即ち、床面Fに凹溝状の穴部54を設けてこれを上記誘導表示手段2の取付部としている。そして、上記誘導表示手段2においては、上記穴部54の形状に対応するように深皿状の底面材55を備えるとともに、該底面材55の内部には、LED発光素子46を備えた複数のLEDユニット45が取付けられたLED取付板44が、該LED発光素子46の照射方向が上方に指向するようにして、支持ブラケット38を介して取付けられている。さらに、上記底面材55の上端開口側には、アクリル板でなる表示板42が取付けられるとともに、該表示板42の上面には上記各表示部10A〜10Dの描画表示の外縁に合致する形状の打抜き40が設けられたカバー部材57が取付けられている。
【0059】
係る構成とすることで、上記LEDユニット45の点灯時には、該LEDユニット45の各LED発光素子46からの照明光が、上記表示板42を透過し、上記カバー部材57に設けた打抜き40を通って上方に照射されることで、上記各表示部10A〜10Dの描画表示が照明表示される。
【0060】
なお、上記カバー部材57は、床面Fを通る人の靴裏が直接接触するため、この靴裏の接触から上記表示板42部分を保護する機能と、該カバー部材57に描かれた描画表示の形状保護機能を併せもつように、耐摩耗性のある素材で構成される。
【0061】
「避難誘導システムの誘導例」
ここで、この実施形態に係る避難誘導システムの避難誘導例を、図12〜図14を参照して説明する。
【0062】
第1の避難誘導例
第1の避難誘導例は、図12に示すように、対象エリアにおいて、客室D12に設置された第1災害検知手段1Aが火災発生を検知した場合である。この例の下では、火災発生位置である客室D12よりもロビーR1寄りに居る被災者は、直ちに上記ロビーR1側へ移動した後、避難路R2を通って避難口E1から避難するか、避難路R4を通って避難口E3から避難するのが安全である。また、避難路R2に居る被災者は、この避難路R2からそのまま避難口E1に向かって移動し、この避難口E1から避難するのが安全である。さらに、避難路R4に居る被災者は、この避難路R4からそのまま避難口E3に向かって移動し、この避難口E3から避難するのが安全である。一方、客室D12よりも避難口E2寄りに居る被災者は、避難路R3から直ちに避難口E2側へ移動し、この避難口E2から避難するのが安全である。
【0063】
このような状況判断の下、上記制御手段5は、上記避難路R2に設置された各誘導表示手段2に対しては避難口E1に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R4に設置された各誘導表示手段2に対しては避難口E3に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R3で且つ客室D12よりもロビーR1寄りに設置された誘導表示手段2に対してはロビーR1に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R3で且つ客室D12よりも避難口E2寄りに設置された誘導表示手段2に対しては該避難口E2に向かう方向の表示を行わせる。
【0064】
このような表示が上記各誘導表示手段2において行われることで、全ての被災者は火災発生位置である客室D12から遠ざかりながら安全に避難誘導されることになる。
【0065】
第2の避難誘導例
第2の避難誘導例は、図13に示すように、対象エリアにおいて、客室A9に設置された第1災害検知手段1Aが火災発生を検知した場合である。この例の下では、火災発生位置である客室A9よりもロビーR1寄りに居る被災者は、直ちに上記ロビーR1側へ移動した後、避難路R2を通って避難口E1から避難するか、避難路R3を通って避難口E2から避難するのが安全である。客室A9よりも避難口E3寄りに居る被災者は、直ちに避難口E3側へ移動し、この避難口E3から避難するのが安全である。避難路R2に居る被災者は、この避難路R2からそのまま避難口E1に向かって移動し、この避難口E1から避難するのが安全である。避難路R3に居る被災者は、この避難路R3からそのまま避難口E2に向かって移動し、この避難口E2から避難するのが安全である。
【0066】
このような状況判断の下、上記制御手段5は、上記避難路R2に設置された各誘導表示手段2に対しては避難口E1に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R3に設置された各誘導表示手段2に対しては避難口E2に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R4で且つ客室A9よりもロビーR1寄りに設置された誘導表示手段2に対してはロビーR1に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R4で且つ客室A9よりも避難口E3寄りに設置された誘導表示手段2に対しては該避難口E3に向かう方向の表示を行わせる。
【0067】
このような表示が上記各誘導表示手段2において行われることで、全ての被災者は火災発生位置である客室A9から遠ざかりながら安全に避難誘導されることになる。
【0068】
第3の誘導例
第3の誘導例は、図14に示すように、対象エリアにおいて、サービススペースS1に設置された第2災害検知手段1Bが地震発生を検知した場合、あるいは該第2災害検知手段1Bが入力操作される構成である場合には該第2災害検知手段1Bが地震発生に伴って入力操作された場合である。このような地震発生に対しては、災害発生位置の特定は必要ではなく、直ちに対象エリア内に居る被災者全員を、各被災者に近い避難口へ誘導してこの避難口から避難させれば良い。
【0069】
従って、この誘導例の場合には、上記避難路R2に設置された誘導表示手段2に対しては避難口E1に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R3に設置された各誘導表示手段2に対しては避難口E2に向かう方向の表示を行わせ、上記避難路R4に設置された誘導表示手段2に対しては避難口E3に向かう方向の表示を行わせる。
【0070】
このような表示が上記各誘導表示手段2において行われることで、全ての被災者は自分が居る位置から最も近い位置にある避難口に向けて安全に避難誘導されることになる。
【符号の説明】
【0071】
1A ・・第1災害検知手段
1B ・・第2災害検知手段
2 ・・誘導表示手段
3 ・・記憶手段
4 ・・災害監視手段
5 ・・制御手段
6 ・・配置情報
7 ・・避難路情報
8 ・・出力手段
10A〜10D ・・表示部
11 ・・照明ユニット
12 ・・照明ユニット
13 ・・照明コントローラ
14 ・・受信機
15 ・・バッテリー
30 ・・手摺装置
31 ・・手摺体
32 ・・手摺
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象エリア内に設置された複数の第1災害検知手段(1A)と、
上記対象エリア内に設置された災害検知手段であって上記第1災害検知手段(1A)とは検知対象が異なる第2災害検知手段(1B)と、
上記対象エリア内に設けられた避難路上に設置されて避難方向を表示する複数の誘導表示手段(2)と、
上記対象エリア内における上記第1災害検知手段(1A)と上記誘導表示手段(2)の配置に関する情報(6)と上記避難路に関する情報(7)を記憶した記憶手段(3)と、
上記第1災害検知手段(1A)からの入力情報と上記第2災害検知手段(1B)からの入力情報に基づいて上記対象エリア内における災害の発生の有無を監視し、且つ上記第1災害検知手段(1A)からの入力情報に基づいて災害の発生が検認されたときはその災害の発生位置に関する第1災害情報を、上記第2災害検知手段(1B)からの入力情報に基づいて災害の発生が検認されたときは災害の発生に関する第2災害情報を、それぞれ出力する災害監視手段(4)と、
上記災害監視手段(4)からの第1災害情報と上記記憶手段(3)からの記憶情報に基づいて被災者を災害発生位置から遠ざけながら上記避難路を通って安全な避難口に誘導させるべく、また上記災害監視手段(4)からの第2災害情報に基づいて被災者を上記避難路を通って安全な避難口に誘導させるべく、それぞれ上記複数の誘導表示手段(2)に避難方向を表示させる制御手段(5)とを備えたことを特徴とする避難誘導システム。
【請求項2】
請求項1において、
上記誘導表示手段(2)が、上記対象エリア内に設置された手摺装置(30)に設けられていることを特徴とする避難誘導システム。
【請求項3】
請求項1において、
上記誘導表示手段(2)が、上記対象エリア内の壁面(W)に設けられていることを特徴とする避難誘導システム。
【請求項4】
請求項1において、
上記誘導表示手段(2)が、上記対象エリア内の床面(F)に設けられていることを特徴とする避難誘導システム。
【請求項5】
請求項2又は3において、
上記誘導表示手段(2)には、少なくとも上記誘導表示手段(2)の誘導表示時に床面(F)側を照明する床面照明手段(16)が付設されていることを特徴とする避難誘導システム。
【請求項6】
請求項1,2,3、4又は5において、
上記制御手段(5)から上記複数の誘導表示手段(2)への情報伝達系が無線システムで構築されていることを特徴とする避難誘導システム。
【請求項1】
対象エリア内に設置された複数の第1災害検知手段(1A)と、
上記対象エリア内に設置された災害検知手段であって上記第1災害検知手段(1A)とは検知対象が異なる第2災害検知手段(1B)と、
上記対象エリア内に設けられた避難路上に設置されて避難方向を表示する複数の誘導表示手段(2)と、
上記対象エリア内における上記第1災害検知手段(1A)と上記誘導表示手段(2)の配置に関する情報(6)と上記避難路に関する情報(7)を記憶した記憶手段(3)と、
上記第1災害検知手段(1A)からの入力情報と上記第2災害検知手段(1B)からの入力情報に基づいて上記対象エリア内における災害の発生の有無を監視し、且つ上記第1災害検知手段(1A)からの入力情報に基づいて災害の発生が検認されたときはその災害の発生位置に関する第1災害情報を、上記第2災害検知手段(1B)からの入力情報に基づいて災害の発生が検認されたときは災害の発生に関する第2災害情報を、それぞれ出力する災害監視手段(4)と、
上記災害監視手段(4)からの第1災害情報と上記記憶手段(3)からの記憶情報に基づいて被災者を災害発生位置から遠ざけながら上記避難路を通って安全な避難口に誘導させるべく、また上記災害監視手段(4)からの第2災害情報に基づいて被災者を上記避難路を通って安全な避難口に誘導させるべく、それぞれ上記複数の誘導表示手段(2)に避難方向を表示させる制御手段(5)とを備えたことを特徴とする避難誘導システム。
【請求項2】
請求項1において、
上記誘導表示手段(2)が、上記対象エリア内に設置された手摺装置(30)に設けられていることを特徴とする避難誘導システム。
【請求項3】
請求項1において、
上記誘導表示手段(2)が、上記対象エリア内の壁面(W)に設けられていることを特徴とする避難誘導システム。
【請求項4】
請求項1において、
上記誘導表示手段(2)が、上記対象エリア内の床面(F)に設けられていることを特徴とする避難誘導システム。
【請求項5】
請求項2又は3において、
上記誘導表示手段(2)には、少なくとも上記誘導表示手段(2)の誘導表示時に床面(F)側を照明する床面照明手段(16)が付設されていることを特徴とする避難誘導システム。
【請求項6】
請求項1,2,3、4又は5において、
上記制御手段(5)から上記複数の誘導表示手段(2)への情報伝達系が無線システムで構築されていることを特徴とする避難誘導システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−253513(P2011−253513A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141034(P2010−141034)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(599117255)株式会社 シコク (28)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(599117255)株式会社 シコク (28)
【Fターム(参考)】
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