説明

都市ごみ焼却プラントの運転方法

【課題】 エコノマイザ出口の排ガス温度を従来の装置成り行きで決定される温度以上に変化させ、発電効率の向上等を図る。
【解決手段】 焼却炉1から排出された排ガスGをボイラ2、エコノマイザ3、減温塔4及びバグフィルタ5の順に通して排ガスGの熱回収、温度調整及び浄化処理を行い、また、ボイラ2で発生した蒸気を発電設備10に導いて発電すると共に、発電設備10の蒸気タービン10aから排出された排気蒸気S′を凝縮して得られた復水をボイラ給水Wとして脱気器13により加熱及び脱気処理してからエコノマイザ3及びボイラ2へ供給するようにした都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、脱気器13を運転するに当たり、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を指標とし、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度に基づいて脱気器13の圧力制御を行い、エコノマイザ3へ供給されるボイラ給水Wの温度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家庭や事業所から出る紙類、厨芥類、繊維類、木・竹類、プラスチック類等の都市ごみを焼却する焼却炉から排出された排ガスをボイラ、エコノマイザ、減温塔及びバグフィルタの順に通して排ガスの熱回収、温度調整及び浄化処理を行い、また、ボイラで発生した蒸気を蒸気タービン及び発電機から成る発電設備に導いて発電すると共に、蒸気タービンから排出された排気蒸気を凝縮して得られた復水をボイラ給水として脱気器により加熱及び脱気処理してからエコノマイザ及びボイラへ供給するようにした都市ごみ焼却プラントの運転方法の改良に係り、エコノマイザの出口側の排ガス温度を、従来のバグフィルタ等の装置成り行きで決定される温度(例えば、排ガスのバグフィルタでの通ガス温度により決定される温度や減温塔での減温水の噴霧量により決定される温度)以上に変化させることによって、発電効率の向上を図れるようにすると共に、減温塔に於いて排ガスに必要な減温水量を噴霧しても、バグフィルタの入口に於ける排ガス温度を適切な温度に維持できるようにした都市ごみ焼却プラントの運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、都市ごみ焼却プラントとしては、例えば、特開2004−309079号公報(特許文献1)や特開2009−162452号公報(特許文献2)、特開2010−048456号公報(特許文献3)に開示されたものが知られている。
【0003】
図3は従来の都市ごみ焼却プラントの一例を示すブロック図であり、当該都市ごみ焼却プラントは、焼却炉100、ボイラ101、発電設備102、エコノマイザ103、減温塔104、バグフィルタ105及び煙突106等から構成されている。
【0004】
前記都市ごみ焼却プラントに於いては、焼却炉100から排出された高温の排ガスをボイラ101及びエコノマイザ103に導いて排ガスから熱回収すると共に、熱回収された排ガスを減温塔104に導いてここで温度調整してからバグフィルタ105に導き、バグフィルタ105で排ガス中の煤塵及び酸性ガス等を除去した後、クリーンになった排ガスを煙突106から大気中へ放出するようになっている。
また、ボイラ101で発生した蒸気を蒸気タービン及び発電機から成る発電設備102へ導いて発電するようになっている。
【0005】
ところで、都市ごみ焼却プラントの計画・設計に於いては、排ガスの熱エネルギーをボイラ101及びエコノマイザ103でできる限り回収し、発電効率を高めるようにしている。
その際、例えば、バグフィルタ105での通ガス温度(例えば、160℃)によりエコノマイザ103の出口側の排ガス温度が決定されている。何故なら、バグフィルタ105は、その耐熱性の限界を考慮に入れる必要があると共に、酸性ガスの除去効率が高くなる温度域で使用されるからである。
【0006】
また、都市ごみ焼却プラントに於いては、都市ごみの季節変動や経年変化等によるごみ質の変動要因が大きいため、都市ごみを燃焼時の発熱量から低質ごみ(発熱量の低いごみ)、高質ごみ(発熱量の高いごみ)、基準ごみ(低質ごみの発熱量と高質ごみの発熱量との中間の熱量を有するごみ)に分類し、これらを基に計画・設計が行われているのが通例である。
下記の表1は、都市ごみの各ごみ質に於けるエコノマイザ103の出口側の排ガス温度の一例を示すものである。
【0007】
【表1】

【0008】
表1からも明らかなように、ごみ質によりエコノマイザ103の出口側の排ガス温度に差がある。通常、エコノマイザ103は、基準ごみで必要な熱回収を行えるようにその仕様が決定されているため、ボイラ101への入熱が多い高質ごみではエコノマイザ103出口のガス温度が高くなり、入熱の少ない低質ごみではエコノマイザ103出口のガス温度が低くなる。
【0009】
更に、都市ごみ焼却プラントの計画・設計に於いては、プラントから出る排水(ごみピットからしみだして来るごみピット排水、焼却灰の冷却排水である灰出し排水、ボイラのブロー排水、プラントの洗浄排水等)をプラントに付設した排水処理設備で処理し、この排水処理水をプラント内で再利用し、プラント外へ排出しないようにする排水クローズド条件が要求される事例も多い。
このとき、排水処理水は、エコノマイザ103の出口側の排ガス温度をバグフィルタ105に通ガスできる温度にまで減温するための減温塔104の減温水に用いられている。
【0010】
前記減温水の量には、排水クローズド条件により減温塔104内へ最小限噴霧しなくてはならない量がある。
そのため、都市ごみ焼却プラントに排水クローズド条件を採用した場合には、エコノマイザ103の出口側の排ガス温度が排水クローズド条件を採用しない場合と異なって来る。
【0011】
即ち、都市ごみ焼却プラントに排水クローズド条件を採用した場合には、減温塔104で噴霧しなければならない噴霧水量があるので、エコノマイザ103の出口側の排ガス温度は、排水クローズド条件がない場合に比較して高くしなければならない。
下記の表2は、排水クローズド条件が付与された場合の都市ごみの各ごみ質に於けるエコノマイザ103の出口側の排ガス温度の一例を示すものである。
【0012】
【表2】

【0013】
都市ごみ焼却プラントに排水クローズド条件を採用した場合、エコノマイザ103の設計は、排ガス量が少なく、且つ出口ガス温度が低くなる低質ごみでその仕様を決定する。即ち、低質ごみに於いて減温塔104での減温水量が必要噴霧水量となる排ガス温度にまで減温するエコノマイザ103の設計設備(出口ガス温度210℃)を行う。
このとき、基準ごみに於けるエコノマイザ103の出口側の排ガス温度は表2に示すように225℃と高くなっているので、排水処理水だけでは減温塔104に於いて225℃ある排ガスの温度をバグフィルタ105に通ガスできる温度にまで低下させることできない。
そのため、都市ごみ焼却プラントに排水クローズド条件を採用した場合、高質ごみ時及び基準ごみ時に減温塔104に於いて排水処理水だけでなく、新水も用いた排ガスの減温がなされている。
【0014】
熱回収を図るためには、できれば発生頻度の高い基準ごみ時にエコノマイザ103の出口側の排ガス温度をできる限り下げたいが(例えば、220℃としたいが)、この場合、低質ごみ時にエコノマイザ103の出口側の排ガス温度が下がり過ぎ、減温塔104での減温水量が必要噴霧量を下回り、排水クローズド条件が達成できないという問題がある。
【0015】
また、近年、都市ごみ焼却プラントに於いては、更なる温暖化対策推進を目的とし、ごみの燃焼に伴い生じるエネルギーのより一層の有効利用を図るため、ごみ発電の高効率化が求められている。
ごみ発電を高効率に行うためには、エコノマイザ103の出口側の排ガス温度を低下させてボイラ101、エコノマイザ103からの排ガスの持ち出し熱量を少なくし、ボイラ101での吸収熱量を多くする必要がある。
【0016】
このように、排水クローズド条件を達成するためには、エコノマイザ103の出口側の排ガス温度をある程度高くする必要があるのに対して、ごみ発電の高効率化のためには、エコノマイザ103の出口側の排ガス温度を低くしなければならず、矛盾する問題が生じることになる。
【0017】
このような、問題を解決するため、従来に於いては下記の(1)及び(2)の方法が採られている。
(1)プラントから出る排水の発生量を低減させ、減温塔で使用する減温水量そのものを低下させる。
(2)エコノマイザに通ガスする排ガスの一部をバイパスさせてエコノマイザと減温塔との間に導き、排水クローズドの律速条件となる低質ごみ時の排ガス温度の低下を防ぎ、所定の減温水量を確保する(エコバイパス)。
【0018】
しかし、上述した(1)の方法については、排水の発生量を抑制しても、その効果には限度があり、エコノマイザで十分に熱回収を行えるほどの減温水量の削減につながらないのが現状である。
また、(2)の方法については、ごみ質に応じてエコノマイザとバイパスルートの通ガス量を操作し、エコノマイザの出口側の排ガス温度を所定の温度にするものであるが、バイパスルートの設備を新たに追加する必要がある他、バイパスルートを形成するダクトの低温腐食を防ぐためにバイパスルートに常に排ガスの一部を通ガスするか、或いはヒータ等の機器を追加する必要があり、適切なエコノマイザの設計が困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2004−309079号公報
【特許文献2】特開2009−162452号公報
【特許文献3】特開2010−048456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明は、このような問題点に鑑みて為されたものであり、その目的は、エコノマイザから排出される排ガスの温度を、エコノマイザ、減温塔、バグフィルタ等の設計ポイント(例えば、低質ごみ時)で設計した装置に於いて、他のごみ質(例えば、基準ごみ時)がその成り行きで決定される温度以上に変化させ、発電効率の向上を図れるようにすると共に、減温塔に於いて排水クローズド条件の達成に必要な減温水量を噴霧しても、バグフィルタの入口に於ける排ガスの温度を適切な温度に維持できるようにした都市ごみ焼却プラントの運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1の発明は、都市ごみを焼却する焼却炉から排出された排ガスをボイラ、エコノマイザ、減温塔及びバグフィルタの順に通して排ガスの熱回収、排ガスの温度調整及び排ガスの浄化処理を行い、また、ボイラで発生した蒸気を蒸気タービン及び発電機から成る発電設備に導いて発電すると共に、蒸気タービンから排出された排気蒸気を凝縮して得られた復水をボイラ給水として脱気器により加熱及び脱気処理してからエコノマイザ及びボイラへ供給するようにした都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、脱気器を運転するに当たり、エコノマイザの出口側の排ガス温度を指標とし、エコノマイザの出口側の排ガス温度に基づいて脱気器の圧力制御を行ってエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を制御し、エコノマイザの出口側の排ガス温度を、従来の装置成り行きで決定される温度以上に変化させるようにしたことに特徴がある。
【0022】
本発明の請求項2の発明は、請求項1の発明に於いて、エコノマイザの出口側の排ガス温度を温度検出器により常時検出し、エコノマイザの出口側の排ガス温度が所定の温度を下回る場合には、脱気器の設定圧力を上げてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を上昇させてエコノマイザでの熱交換量を小さくし、また、エコノマイザの出口側の排ガス温度が所定の温度を上回る場合には、脱気器の設定圧力を下げてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を低下させてエコノマイザでの熱交換量を大きくするようにしたことに特徴がある。
【0023】
本発明の請求項3の発明は、都市ごみを焼却する焼却炉から排出された排ガスをボイラ、エコノマイザ、減温塔及びバグフィルタの順に通して排ガスの熱回収、排ガスの温度調整及び排ガスの浄化処理を行い、また、ボイラで発生した蒸気を蒸気タービン及び発電機から成る発電設備に導いて発電すると共に、蒸気タービンから排出された排気蒸気を凝縮して得られた復水をボイラ給水として脱気器により加熱及び脱気処理してからエコノマイザ及びボイラへ供給するようにした都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、脱気器を運転するに当たり、減温塔で使用する減温水量を指標とし、減温塔で使用する減温水量に基づいて脱気器の圧力制御を行ってエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を制御し、エコノマイザの出口側の排ガス温度を、従来の装置成り行きで決定される温度以上に変化させるようにしたことに特徴がある。
【0024】
本発明の請求項4の発明は、請求項3の発明に於いて、減温塔で使用する減温水量が所定量を下回る場合には、脱気器の設定圧力を上げてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を上昇させてエコノマイザでの熱交換量を小さくし、また、減温塔で使用する減温水量が所定量を上回る場合には、脱気器の設定圧力を下げてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を低下させてエコノマイザでの熱交換量を大きくするようにしたことに特徴がある。
【0025】
本発明の請求項5の発明は、都市ごみを焼却する焼却炉から排出された排ガスをボイラ、エコノマイザ、減温塔及びバグフィルタの順に通して排ガスの熱回収、排ガスの温度調整及び排ガスの浄化処理を行い、また、ボイラで発生した蒸気を蒸気タービン及び発電機から成る発電設備に導いて発電すると共に、蒸気タービンから排出された排気蒸気を凝縮して得られた復水をボイラ給水として脱気器により加熱及び脱気処理した後、当該ボイラ給水を脱気器の出口側に設けた給水加熱器により温度制御してからエコノマイザ及びボイラへ供給するようにした都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、給水加熱器を運転するに当たり、エコノマイザの出口側の排ガス温度を指標とし、エコノマイザの出口側の排ガス温度に基づいて給水加熱器の運転操作を行ってエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を制御し、エコノマイザの出口側の排ガス温度を、従来の装置成り行きで決定される温度以上に変化させるようにしたことに特徴がある。
【0026】
本発明の請求項6の発明は、請求項5の発明に於いて、エコノマイザの出口側の排ガス温度を温度検出器により常時検出し、エコノマイザの出口側の排ガス温度が所定の温度を下回る場合には、給水加熱器の交換熱量を大きくしてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を上昇させてエコノマイザでの熱交換量を小さくし、また、エコノマイザの出口側の排ガス温度が所定の温度を上回る場合には、給水加熱器の交換熱量を小さく又はゼロとしてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を低下させてエコノマイザでの熱交換量を大きくするようにしたことに特徴がある。
【0027】
本発明の請求項7の発明は、都市ごみを焼却する焼却炉から排出された排ガスをボイラ、エコノマイザ、減温塔及びバグフィルタの順に通して排ガスの熱回収、排ガスの温度調整及び排ガスの浄化処理を行い、また、ボイラで発生した蒸気を蒸気タービン及び発電機から成る発電設備に導いて発電すると共に、蒸気タービンから排出された排気蒸気を凝縮して得られた復水をボイラ給水として脱気器により加熱及び脱気処理した後、当該ボイラ給水を脱気器の出口側に設けた給水加熱器により温度制御してからエコノマイザ及びボイラへ供給するようにした都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、給水加熱器を運転するに当たり、減温塔で使用する減温水量を指標とし、減温塔で使用する減温水量に基づいて給水加熱器の運転操作を行ってエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を制御し、エコノマイザの出口側の排ガス温度を、従来の装置成り行きで決定される温度以上に変化させるようにしたことに特徴がある。
【0028】
本発明の請求項8の発明は、請求項7の発明に於いて、減温塔で使用する減温水量が所定量を下回る場合には、給水加熱器の交換熱量を大きくしてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を上昇させてエコノマイザでの熱交換量を小さくし、また、減温塔で使用する減温水量が所定量を上回る場合には、給水加熱器の交換熱量を小さくしてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を低下させてエコノマイザでの熱交換量を大きくするようにしたことに特徴がある。
【0029】
本発明の請求項9の発明は、請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7又は請求項8の発明に於いて、減温塔で噴霧する減温水に都市ごみ焼却プラントから出る排水を処理した排水処理水を使用し、排水処理水の全部を減温塔で使用して排水処理水をプラント外へ排出しないようにした排水クローズド条件を採用したことに特徴がある。
【発明の効果】
【0030】
本発明の請求項1の発明は、焼却炉、ボイラ、エコノマイザ、減温塔、バグフィルタ、発電設備及び脱気器等を備えた都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、脱気器を運転するに当たり、エコノマイザの出口側の排ガス温度を指標とし、エコノマイザの出口側の排ガス温度に基づいて脱気器の圧力制御を行ってエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を制御し、エコノマイザの出口側の排ガス温度を、従来の装置成り行きで決定される温度以上に変化させるようにしているため、例えば、都市ごみの低質ごみで必要なエコノマイザの出口側の排ガス温度を決定し、都市ごみの基準ごみ時に従来の装置成り行きで決定されるエコノマイザの出口側の排ガス温度よりも、エコノマイザの出口側の排ガス温度を下げることによって、発電効率の向上を図ることができる。
【0031】
本発明の請求項2の発明は、エコノマイザの出口側の排ガス温度を温度検出器により常時検出し、エコノマイザの出口側の排ガス温度が所定の温度を下回る場合には、脱気器の圧力を上げてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を上昇させ、エコノマイザでの熱交換量を小さくしているため、減温塔に於いて排ガスに必要な減温水量を噴霧しても、排ガスの温度をバグフィルタでの必要なガス温度を下回らないようにすることができ、また、エコノマイザの出口側の排ガス温度が所定の温度を上回る場合には、脱気器の圧力を下げてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を低下させ、エコノマイザでの熱交換量を大きくするようにしているため、発電量を向上させることができる。
【0032】
本発明の請求項3の発明は、焼却炉、ボイラ、エコノマイザ、減温塔、バグフィルタ、発電設備及び脱気器等を備えた都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、脱気器を運転するに当たり、減温塔で使用する減温水量を指標とし、減温塔で使用する減温水量に基づいて脱気器の圧力制御を行ってエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を制御し、エコノマイザの出口側の排ガス温度を、従来の装置成り行きで決定される温度以上に変化させるようにしているため、請求項1の発明と同様に発電効率の向上を図ることができる。
【0033】
本発明の請求項4の発明は、減温塔で使用する減温水量が所定量を下回る場合には、脱気器の圧力を上げてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を上昇させ、エコノマイザでの熱交換量を小さくしているため、請求項2の発明と同様に減温塔に於いて排ガスに必要な減温水量を噴霧しても、排ガスの温度をバグフィルタでの必要なガス温度を下回らないようにすることができ、また、減温塔で使用する減温水量が所定量を上回る場合には、脱気器の圧力を下げてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を低下させ、エコノマイザでの熱交換量を大きくするようにしているため、発電量を向上させることができる。
【0034】
本発明の請求項5の発明は、焼却炉、ボイラ、エコノマイザ、減温塔、バグフィルタ、発電設備、脱気器及び給水加熱器等を備えた都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、給水加熱器を運転するに当たり、エコノマイザの出口側の排ガス温度を指標とし、エコノマイザの出口側の排ガス温度に基づいて給水加熱器の運転操作を行ってエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を制御し、エコノマイザの出口側の排ガス温度を、従来の装置成り行きで決定される温度以上に変化させるようにしているため、請求項1の発明と同様に発電効率の向上を図ることができる。
【0035】
本発明の請求項6の発明は、エコノマイザの出口側の排ガス温度を温度検出器により常時検出し、エコノマイザの出口側の排ガス温度が所定の温度を下回る場合には、給水加熱器の交換熱量を大きくしてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を上昇させてエコノマイザでの熱交換量を小さくしているため、減温塔に於いて排ガスに必要な減温水量を噴霧しても、排ガスの温度をバグフィルタでの必要なガス温度を下回らないようにすることができ、また、エコノマイザの出口側の排ガス温度が所定の温度を上回る場合には、給水加熱器の交換熱量を小さく又はゼロとしてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を低下させてエコノマイザでの熱交換量を大きくするようにしているため、発電量を向上させることができる。
【0036】
本発明の請求項7の発明は、焼却炉、ボイラ、エコノマイザ、減温塔、バグフィルタ、発電設備、脱気器及び給水加熱器等を備えた都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、給水加熱器を運転するに当たり、減温塔で使用する減温水量を指標とし、減温塔で使用する減温水量に基づいて給水加熱器の運転操作を行ってエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を制御し、エコノマイザの出口側の排ガス温度を、従来の装置成り行きで決定される温度以上に変化させるようにしているため、請求項1の発明と同様に発電効率の向上を図ることができる。
【0037】
本発明の請求項8の発明は、減温塔で使用する減温水量が所定量を下回る場合には、給水加熱器の交換熱量を大きくしてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を上昇させてエコノマイザでの熱交換量を小さくしているため、減温塔に於いて排ガスに必要な減温水量を噴霧しても、排ガスの温度をバグフィルタでの必要なガス温度を下回らないようにすることができ、また、減温塔で使用する減温水量が所定量を上回る場合には、給水加熱器の交換熱量を小さくしてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を低下させてエコノマイザでの熱交換量を大きくするようにしているため、発電量を向上させることができる。
【0038】
本発明の請求項9の発明は、排水処理水の全てを減温塔での減温水として使用する排水クローズド条件を採用しているため、基準ごみ時、高質ごみ時に減温塔での減温水量が排水処理水量を上回ってその不足分を新水補給する必要がある場合、基準ごみ時、高質ごみ時に脱気器の圧力を下げることによって、又は給水加熱器の交換熱量を小さくすることによって、減温水量を減少させることができ、その結果、新水補給水量を減少させることができると共に、請求項1の発明と同様に発電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の方法を実施する都市ごみ焼却プラントの一例を示す概略系統図である。
【図2】本発明の他の方法を実施する都市ごみ焼却プラントの一例を示すブロック図である。
【図3】従来の都市ごみ焼却プラントの一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の方法を実施する都市ごみ焼却プラントの一例を示す概略系統図を示し、当該都市ごみ焼却プラントは、家庭や事業所から出る都市ごみを焼却する焼却炉1(例えば、ストーカ式焼却炉)と、焼却炉1で発生した高温の排ガスGから熱を回収するボイラ2と、ボイラ2から排出された排ガスGの熱を更に回収するエコノマイザ3と、エコノマイザ3を通過した排ガスGに減温水(排水処理水)を噴霧して排ガスGを冷却する減温塔4と、排ガスG中の煤塵及び酸性ガスを除去するバグフィルタ5と、焼却炉1内の排ガスGを誘引する誘引通風機7と、クリーンになった排ガスGを大気中へ放出する煙突8と、ボイラ2で発生した蒸気を過熱する過熱器9と、過熱器9からの過熱蒸気Sにより駆動されて発電する蒸気タービン10a及び発電機10bから成る発電設備10と、蒸気タービン10aから排出された排気蒸気S′を復水する復水器11と、復水器11からの復水を貯留する復水タンク12と、復水タンク12からの復水を加熱及び脱気処理してエコノマイザ3及びボイラ2へボイラ給水Wとして供給する脱気器13等から構成されており、脱気器13を運転するに当たり、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を指標とし、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度に基づいて脱気器13の圧力制御を行ってエコノマイザ3へ供給されるボイラ給水Wの温度を制御し、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を、従来のバグフィルタ5等の装置成り行きで決定される温度(例えば、排ガスGのバグフィルタ5での通ガス温度により決定される温度や減温塔での減温水の噴霧量により決定される温度)以上に変化させ、発電量の向上等を図るようにしたものである。
【0041】
即ち、前記都市ごみ焼却プラントは、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を常時検出する温度検出器14と、蒸気タービン10aからの抽気蒸気S″(又は図示していないが蒸気タービン10aへ供給される過熱蒸気Sの一部を引き抜いた蒸気)を脱気器13へ供給する蒸気供給管15と、蒸気供給管15に介設され、脱気器13へ供給される抽気蒸気S″(又は過熱蒸気Sの一部を引き抜いた蒸気)の供給量を制御する蒸気量制御弁16と、脱気器13内の圧力を検出し、その検出信号と温度検出器14からの検出信号に基づいて蒸気量制御弁16を制御して脱気器13の圧力を制御する圧力制御器17とを備えており、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を温度検出器14により常時検出し、エコノマイザ3の出口の排ガスG温度に基づいて脱気器13の圧力制御を行い、当該脱気器13の圧力制御によりエコノマイザ3へ供給されるボイラ給水Wの温度を制御し、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を制御するようにしている。
尚、脱気器13は、飽和温度で運転されているので、脱気器13の圧力を制御することによって、ボイラ給水Wの温度を制御することができる。
【0042】
前記都市ごみ焼却プラントは、プラントから出る排水をプラントに付設した排水処理設備(図示省略)で処理し、この排水処理水をエコノマイザ3の出口側の排ガスG温度をバグフィルタ5に通ガスできる温度にまで減温するための減温塔4の減温水として再利用し、排水処理水をプラント外へ排出しないようにした排水クローズド条件を採用しても良く、或いは、排水処理水を減温水として減温塔4で必要量だけ使用し、残りの排水処理水をプラント外へ排出するようにしても良い。
【0043】
尚、図1に於いて、18は押込送風機、19は空気予熱器、20は二次空気送風機、21はバーナ、22は灰押出装置、23は蒸発管群、24は減温水噴射ノズル、25は飛灰固化装置、26はアキュムレータ(高圧蒸気溜め)、27は脱気器給水ポンプ、28はボイラ給水ポンプである。
【0044】
而して、上述した都市ごみ焼却プラントによれば、焼却炉1内で発生した高温の排ガスGは、ボイラ2及びエコノマイザ3へ導かれてボイラ2及びエコノマイザ3により順次熱回収され、引き続き減温塔4に送られてここで減温水(排水処理水)の噴霧によりバグフィルタ5の濾布材の耐熱温度までその温度が引き下げられる。
【0045】
減温塔4内で温度が引き下げられた排ガスGは、バグフィルタ5に導かれてここで排ガスG中の煤塵及び酸性ガスが除去された後、クリーンな排ガスGとなって誘引通風機7を経て煙突8から大気中へ放出されている。
【0046】
一方、ボイラ2で発生した蒸気は、過熱器9により過熱され、過熱蒸気Sとなって蒸気タービン10a及び発電機10bから成る発電設備10へ供給されて蒸気タービン10a及び発電機10bを駆動して発電させると共に、蒸気タービン10aから排出されて復水器11で復水された後、復水タンク12に貯留される。
尚、復水タンク12には、図示していないが、不純物が除去された補給水が供給されている。
【0047】
また、復水タンク12に貯留された復水は、ボイラ2へのボイラ給水Wとして脱気器給水ポンプ27により脱気器13に供給され、ここで蒸気タービン10aからの抽気蒸気S″(又は蒸気タービン10aへ供給される過熱蒸気Sの一部を引き抜いた蒸気)により加熱及び脱気処理されてからボイラ給水ポンプ28によりエコノマイザ3及びボイラ2へ供給されるようになっている。
【0048】
そして、前記都市ごみ焼却プラントの運転に於いては、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度が温度検出器14により常時検出されており、脱気器13を運転するに当たり、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を指標とし、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度に基づいて脱気器13の圧力制御を行ってエコノマイザ3へ供給されるボイラ給水Wの温度を制御し、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を、従来のバグフィルタ5等の装置成り行きで決定される温度以上に変化させ、発電量の向上等を図るようにしたものである。
【0049】
即ち、前記都市ごみ焼却プラントの運転に於いては、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を温度検出器14により常時検出し、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度が所定の温度(仕様を決定したエコノマイザ3の出口側の排ガスG温度)を下回る場合、脱気器13の設定圧力を上げてボイラ給水Wの温度を上昇させ、エコノマイザ3の熱交換に於ける対数平均温度差を低くする。
これにより、エコノマイザ3での熱交換量が小さくなり、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を上昇させることができる。
その結果、減温塔4内で排ガスGに所定の減温水量を噴霧しても、排ガスGの温度をバグフィルタ5での必要なガス温度を下回らないようにすることができる。
【0050】
また、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度が所定の温度(仕様を決定したエコノマイザ3の出口側の排ガスG温度)を上回る場合、脱気器13の設定圧力を下げてボイラ給水W温度を低下させ、エコノマイザ3の熱交換に於ける対数平均温度差を高くする。
これにより、排ガスGの熱がより多く回収されて発電出力を向上させることができる。
【0051】
下記の表3は従来の運転方法により都市ごみ焼却プラントを運転した場合の高質ごみ時及び基準ごみ時に於けるエコノマイザ3の出口側の排ガスG温度、ボイラ2の蒸発量等を示すものである。
即ち、下記の表3は低質ごみ時にエコノマイザ3の出口側の排ガスG温度が210℃となるようにエコノマイザ3を設計し、脱気器13の圧力を0.29MPaに固定した条件下で都市ごみ焼却プラントを運転した場合の高質ごみ時及び基準ごみ時に於けるエコノマイザ3の出口側の排ガスG温度、ボイラ2の蒸発量等を示すものである。
但し、蒸発量、減温水量、バグフィルタ5の入口側ガス量、発電量は、従来時を全て100としたものである。
【0052】
【表3】

【0053】
実際、一日当たりの都市ごみの処理量が100tonの焼却炉1を2炉備えた都市ごみ焼却プラントの場合、脱気器13の圧力を0.29MPa(変化なし)とし、基準ごみ時のエコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を排水クローズド条件なしのときに200℃、排水クローズド条件ありのときに225℃とすると、減温塔4での減温水量は排水クローズド条件なしのときに1日当たり24ton、排水クローズド条件ありのときに一日当たり16tonとなり、また、排水放流量は排水クローズド条件なしのときに1日当たり8ton、排水クローズド条件ありのときに一日当たり0tonとなり、更に、発電量は排水クローズド条件なしのときに4500kW、排水クローズド条件ありのときに4400kWとなっている。
【0054】
また、下記の表4は本発明の運転方法により都市ごみ焼却プラントを運転した場合の高質ごみ時及び基準ごみ時に於けるエコノマイザ3の出口側の排ガスG温度、ボイラ蒸発量等を示すものであり、脱気器13の圧力を低質ごみ時には0.29MPaと現状のままとし、高質ごみ時及び基準ごみ時に脱気器13の圧力を0.17MPaにまで圧力を下げたものである。
【0055】
【表4】

【0056】
表4からも明らかなように、脱気器13の圧力を低質ごみ時には現状のままとし、高質ごみ時及び基準ごみ時に脱気器13の圧力を0.17MPaにまで圧力を下げることで、エコノマイザ3への給水温度が従来の143℃から130℃に低下し、エコノマイザ3での対数平均温度差が大きくなって交換熱量が増加することになる。
【0057】
その結果、本発明の運転方法に於いては、高質ごみ時及び基準ごみ時にエコノマイザ3の出口側の排ガスG温度が低下し、蒸発量及び発電量が増加すると共に、減温水量及び排ガスG量が減少することが判る。
尚、本発明の運転方法は、排水クローズド条件の有無にかかわらず、上述した効果が得られる。
【0058】
また、排水クローズド条件を採用した場合、通常高質ごみ時及び基準ごみ時の減温塔4での減温水量は、排水処理水量よりも多くなり、不足分は新水補給されているが、本発明の運転方法によれば、脱気器13の圧力を下げることで、表4に示すように減温塔4での減温水量を従来よりも減少させることができるため、新水補給水量を減少させることができる。
更に、本発明の運転方法によれば、表4に示すようにバグフィルタ5の入口ガス量が僅かに少なくなるため、排ガス処理設備の設備規模を小さくすることができる。
【0059】
このように、上述した都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いては、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を、従来の装置成り行きで決定される温度以上に変化させることによって、発電効率の向上を図れると共に、減温塔4に於いて必要な減温水量を噴霧しても、バグフィルタ5の入口に於ける排ガスGの温度を適切な温度に維持することができる。
【0060】
尚、上述した都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いては、高質ごみ時及び基準ごみ時に脱気器13の圧力を下げるようにしたが、他の運転方法に於いては、ごみ発生頻度の高い基準ごみ時に高い発電出力を得るシステムとするために、基準ごみ時に脱気器13の圧力を下げ(例えば、017MPa)、高質ごみ時及び低質ごみ時に脱気器13の圧力を上げ(例えば、0.29MPa)、成り行き値以上にエコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を高くする運転を行っても良い。
【0061】
この場合、基準ごみ時に高い発電出力を得ることができると共に、高質ごみ時に於いてボイラ2の吸収熱量が抑えられ、蒸気タービン10a等の蒸気系の機器の仕様を過大になり過ぎないように設計することができ、且つ低質ごみ時に必要なエコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を実現することができる。
【0062】
また、上述した都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いては、脱気器13の運転指標をエコノマイザ3の出口側の排ガスG温度としたが、他の運転方法に於いては、減温塔4での減温水量を指標とした脱気器13の圧力操作を行っても良い。このとき、バグフィルタ5入口側の排ガスG温度が一定になるように制御する。
【0063】
例えば、減温塔4で使用する減温水量が所定量を下回る場合には、脱気器13の圧力を上げてエコノマイザ3へ供給されるボイラ給水Wの温度を上昇させ、エコノマイザ3での熱交換量を小さくする。
これにより、減温塔4に於いて排ガスGに必要な減温水量を噴霧しても、排ガスGの温度をバグフィルタ5での必要なガス温度を下回らないようにすることができる。
【0064】
反対に減温塔4で使用する減温水量が所定量を上回る場合には、脱気器13の圧力を下げてエコノマイザ3へ供給されるボイラ給水Wの温度を低下させ、エコノマイザ3での熱交換量を大きくする。
これにより、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度が低下し、発電量を向上させることができる。
【0065】
また、上述した都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いては、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度又は減温塔4で使用する減温水量に基づいて脱気器13の圧力制御を行ってエコノマイザ3へ供給されるボイラ給水Wの温度を制御し、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を変化させるようにしたが、他の運転方法に於いては、エコノマイザ3へ供給されるボイラ給水Wの温度を脱気器13の出口側に設けた給水加熱器6により制御し、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を変化させるようにしても良い。
例えば、脱気器13の圧力を0.13MPa(このときの脱気器13出口のボイラ給水W温度は130℃)とし、エコノマイザ3へ供給されるボイラ給水Wの温度を130℃としたいときには、給水加熱器6での交換熱量をゼロ(加熱側の流入を止めることでボイラ給水W温度の上昇を防ぐ)とし、エコノマイザ3へ供給されるボイラ給水W温度を143℃としたいときには、給水加熱器6で加温するようにしても良い。
【0066】
即ち、上述した方法を実施する都市ごみ焼却プラントは、図2に示す如く、都市ごみを焼却する焼却炉1と、焼却炉1で発生した高温の排ガスGから熱を回収するボイラ2と、ボイラ2から排出された排ガスGの熱を更に回収するエコノマイザ3と、エコノマイザ3を通過した排ガスGに減温水(排水処理水)を噴霧して排ガスGを冷却する減温塔4と、排ガスG中の煤塵及び酸性ガスを除去するバグフィルタ5と、焼却炉1内の排ガスGを誘引する誘引通風機7と、クリーンになった排ガスGを大気中へ放出する煙突8と、ボイラ2からの蒸気により駆動されて発電する蒸気タービン10a及び発電機10bから成る発電設備10と、蒸気タービン10aから排出された排気蒸気S′を復水する復水器(図2では図示省略)と、復水器からの復水を貯留する復水タンク(図2では図示省略)と、復水タンクからの復水を加熱及び脱気処理してエコノマイザ3及びボイラ2へボイラ給水Wとして供給する脱気器13と、脱気器13とエコノマイザ3との間に設けられて脱気器13からエコノマイザ3へ供給されるボイラ給水Wの温度を制御する給水加熱器6等から構成されており、前記給水加熱器6を運転するに当たり、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を指標とし、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度に基づいて給水加熱器6の運転操作を行ってエコノマイザ3へ供給されるボイラ給水Wの温度を制御し、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を、従来の装置成り行きで決定される温度以上に変化させ、発電量の向上等を図るようにしたものである。
尚、給水加熱器6には、蒸気タービン10aからの抽気蒸気S″を用いてボイラ給水Wを加温するようにした構造の給水加熱器や還流エコノマイザ等が使用されている。
【0067】
上述した都市ごみ焼却プラントの運転に於いては、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を温度検出器(図2では図示省略)により常時検出し、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度が所定の温度を下回る場合、給水加熱器6が自動制御されて給水加熱器6の交換熱量を大きくし、エコノマイザ3へ供給されるボイラ給水Wの温度を上昇させ、エコノマイザ3の熱交換に於ける対数平均温度差を低くする。このとき、脱気器13は、圧力を固定した状態で運転されている。
これにより、エコノマイザ3での熱交換量が小さくなり、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度を上昇させることができる。
その結果、減温塔4内で排ガスGに所定の減温水量を噴霧しても、排ガスGの温度をバグフィルタ5での必要なガス温度を下回らないようにすることができる。
【0068】
また、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度が所定の温度を上回る場合、給水加熱器6が自動制御されて給水加熱器6の交換熱量を小さく又はゼロとし、エコノマイザ3へ供給されるボイラ給水Wの温度を低下させ、エコノマイザ3の熱交換に於ける対数平均温度差を高くする。このとき、脱気器13は、圧力を固定した状態で運転されている。
これにより、排ガスGの熱がより多く回収されて発電出力を向上させることができる。
【0069】
尚、上述した都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いては、給水加熱器6の運転指標をエコノマイザ3の出口側の排ガスG温度としたが、他の運転方法に於いては、減温塔4での減温水量を指標とした給水加熱器6の運転操作を行っても良い。このとき、バグフィルタ5入口側の排ガスG温度が一定になるように制御する。
【0070】
例えば、減温塔4で使用する減温水量が所定量を下回る場合には、給水加熱器6の交換熱量を大きくしてエコノマイザ3へ供給されるボイラ給水Wの温度を上昇させ、エコノマイザ3での熱交換量を小さくする。
これにより、減温塔4に於いて排ガスGに必要な減温水量を噴霧しても、排ガスGの温度をバグフィルタ5での必要なガス温度を下回らないようにすることができる。
【0071】
反対に減温塔4で使用する減温水量が所定量を上回る場合には、給水加熱器6の交換熱量を小さくしてエコノマイザ3へ供給されるボイラ給水Wの温度を低下させ、エコノマイザ3での熱交換量を大きくする。
これにより、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度が低下し、発電量を向上させることができる。
【0072】
尚、上述した都市ごみ焼却プラントの各運転方法に於いては、脱気器13及び給水加熱器6の運転指標をエコノマイザ3の出口側の排ガスG温度又は減温塔4での減温水量としたが、他の運転方法に於いては、エコノマイザ3の出口側の排ガスG温度が推定される他の指標、例えば、ボイラ蒸発量、ごみ量、ごみ質等を用いた脱気器13の圧力操作や給水加熱器6の運転操作を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0073】
1は焼却炉、2はボイラ、3はエコノマイザ、4は減温塔、5はバグフィルタ、6は給水加熱器、10は発電設備、10aは蒸気タービン、10bは発電機、13は脱気器、14は温度検出器、Sは過熱蒸気、S′は排気蒸気、Wはボイラ給水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
都市ごみを焼却する焼却炉から排出された排ガスをボイラ、エコノマイザ、減温塔及びバグフィルタの順に通して排ガスの熱回収、排ガスの温度調整及び排ガスの浄化処理を行い、また、ボイラで発生した蒸気を蒸気タービン及び発電機から成る発電設備に導いて発電すると共に、蒸気タービンから排出された排気蒸気を凝縮して得られた復水をボイラ給水として脱気器により加熱及び脱気処理してからエコノマイザ及びボイラへ供給するようにした都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、脱気器を運転するに当たり、エコノマイザの出口側の排ガス温度を指標とし、エコノマイザの出口側の排ガス温度に基づいて脱気器の圧力制御を行ってエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を制御し、エコノマイザの出口側の排ガス温度を、従来の装置成り行きで決定される温度以上に変化させるようにしたことを特徴とする都市ごみ焼却プラントの運転方法。
【請求項2】
請求項1に記載の都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、エコノマイザの出口側の排ガス温度を温度検出器により常時検出し、エコノマイザの出口側の排ガス温度が所定の温度を下回る場合には、脱気器の設定圧力を上げてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を上昇させてエコノマイザでの熱交換量を小さくし、また、エコノマイザの出口側の排ガス温度が所定の温度を上回る場合には、脱気器の設定圧力を下げてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を低下させてエコノマイザでの熱交換量を大きくするようにしたことを特徴とする都市ごみ焼却プラントの運転方法。
【請求項3】
都市ごみを焼却する焼却炉から排出された排ガスをボイラ、エコノマイザ、減温塔及びバグフィルタの順に通して排ガスの熱回収、排ガスの温度調整及び排ガスの浄化処理を行い、また、ボイラで発生した蒸気を蒸気タービン及び発電機から成る発電設備に導いて発電すると共に、蒸気タービンから排出された排気蒸気を凝縮して得られた復水をボイラ給水として脱気器により加熱及び脱気処理してからエコノマイザ及びボイラへ供給するようにした都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、脱気器を運転するに当たり、減温塔で使用する減温水量を指標とし、減温塔で使用する減温水量に基づいて脱気器の圧力制御を行ってエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を制御し、エコノマイザの出口側の排ガス温度を、従来の装置成り行きで決定される温度以上に変化させるようにしたことを特徴とする都市ごみ焼却プラントの運転方法。
【請求項4】
請求項3に記載の都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、減温塔で使用する減温水量が所定量を下回る場合には、脱気器の設定圧力を上げてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を上昇させてエコノマイザでの熱交換量を小さくし、また、減温塔で使用する減温水量が所定量を上回る場合には、脱気器の設定圧力を下げてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を低下させてエコノマイザでの熱交換量を大きくするようにしたことを特徴とする都市ごみ焼却プラントの運転方法。
【請求項5】
都市ごみを焼却する焼却炉から排出された排ガスをボイラ、エコノマイザ、減温塔及びバグフィルタの順に通して排ガスの熱回収、排ガスの温度調整及び排ガスの浄化処理を行い、また、ボイラで発生した蒸気を蒸気タービン及び発電機から成る発電設備に導いて発電すると共に、蒸気タービンから排出された排気蒸気を凝縮して得られた復水をボイラ給水として脱気器により加熱及び脱気処理した後、当該ボイラ給水を脱気器の出口側に設けた給水加熱器により温度制御してからエコノマイザ及びボイラへ供給するようにした都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、給水加熱器を運転するに当たり、エコノマイザの出口側の排ガス温度を指標とし、エコノマイザの出口側の排ガス温度に基づいて給水加熱器の運転操作を行ってエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を制御し、エコノマイザの出口側の排ガス温度を、従来の装置成り行きで決定される温度以上に変化させるようにしたことを特徴とする都市ごみ焼却プラントの運転方法。
【請求項6】
請求項5に記載の都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、エコノマイザの出口側の排ガス温度を温度検出器により常時検出し、エコノマイザの出口側の排ガス温度が所定の温度を下回る場合には、給水加熱器の交換熱量を大きくしてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を上昇させてエコノマイザでの熱交換量を小さくし、また、エコノマイザの出口側の排ガス温度が所定の温度を上回る場合には、給水加熱器の交換熱量を小さく又はゼロとしてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を低下させてエコノマイザでの熱交換量を大きくするようにしたことを特徴とする都市ごみ焼却プラントの運転方法。
【請求項7】
都市ごみを焼却する焼却炉から排出された排ガスをボイラ、エコノマイザ、減温塔及びバグフィルタの順に通して排ガスの熱回収、排ガスの温度調整及び排ガスの浄化処理を行い、また、ボイラで発生した蒸気を蒸気タービン及び発電機から成る発電設備に導いて発電すると共に、蒸気タービンから排出された排気蒸気を凝縮して得られた復水をボイラ給水として脱気器により加熱及び脱気処理した後、当該ボイラ給水を脱気器の出口側に設けた給水加熱器により温度制御してからエコノマイザ及びボイラへ供給するようにした都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、給水加熱器を運転するに当たり、減温塔で使用する減温水量を指標とし、減温塔で使用する減温水量に基づいて給水加熱器の運転操作を行ってエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を制御し、エコノマイザの出口側の排ガス温度を、従来の装置成り行きで決定される温度以上に変化させるようにしたことを特徴とする都市ごみ焼却プラントの運転方法。
【請求項8】
請求項7に記載の都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、減温塔で使用する減温水量が所定量を下回る場合には、給水加熱器の交換熱量を大きくしてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を上昇させてエコノマイザでの熱交換量を小さくし、また、減温塔で使用する減温水量が所定量を上回る場合には、給水加熱器の交換熱量を小さくしてエコノマイザへ供給されるボイラ給水の温度を低下させてエコノマイザでの熱交換量を大きくするようにしたことを特徴とする都市ごみ焼却プラントの運転方法。
【請求項9】
請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5、請求項6、請求項7又は請求項8に記載の都市ごみ焼却プラントの運転方法に於いて、減温塔で噴霧する減温水に都市ごみ焼却プラントから出る排水を処理した排水処理水を使用し、排水処理水の全部を減温塔で使用して排水処理水をプラント外へ排出しないようにした排水クローズド条件を採用したことを特徴とする都市ごみ焼却プラントの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−17923(P2012−17923A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155906(P2010−155906)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000133032)株式会社タクマ (308)
【Fターム(参考)】