配管構造物の設計支援システム
【課題】フランジから引き抜かれるボルトと、そのフランジの周囲の構成要素との干渉の有無を容易に確認することができる配管構造物の設計支援システムを提供すること。
【解決手段】配管構造物の構成要素ごとに、その空間上の位置、配置の向き及び寸法を含む3次元データが記憶されている記憶部と、この記憶部から、互に対向してボルトにより連結されるフランジの3次元の位置、配置の向き、寸法及びボルトの突出長さを含む属性データを求めると共にこれらフランジの間に介在する介在物の厚さ寸法を求める第1の手段と、この手段で得られた結果に基づいて、前記互に対向するフランジ間を連結するボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域を3次元CADの空間上で求める第2の手段と、前記引き抜き領域と配管構造物との干渉の有無を判断する判断手段と、を備えるようにシステムを構成し、自動で干渉チェックを行う。
【解決手段】配管構造物の構成要素ごとに、その空間上の位置、配置の向き及び寸法を含む3次元データが記憶されている記憶部と、この記憶部から、互に対向してボルトにより連結されるフランジの3次元の位置、配置の向き、寸法及びボルトの突出長さを含む属性データを求めると共にこれらフランジの間に介在する介在物の厚さ寸法を求める第1の手段と、この手段で得られた結果に基づいて、前記互に対向するフランジ間を連結するボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域を3次元CADの空間上で求める第2の手段と、前記引き抜き領域と配管構造物との干渉の有無を判断する判断手段と、を備えるようにシステムを構成し、自動で干渉チェックを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は3次元CADを用いた配管構造物の設計支援システム及びそのシステムを構成する配管構造物の設計支援ソフトウエアに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントを設計するにあたり、3次元(3D)のCAD(Computer Aided Design)を利用したプラント設計支援システムが用いられている。このプラント設計支援システムにより、設計者は、プラントを構成する機器、配管及びその他の部品などの構成要素をコンピュータの画面上に描画し、3次元のプラントモデルを作成してプラントの設計を行う。このプラントの設計段階では、後述のプラントのメンテナンス時に発生する各構成要素の配置上のトラブルを考慮しながら、そのトラブルを未然に防止するべく、前記プラントモデルについて様々な視点で確認及び検査が行われる。
【0003】
ここで、具体的に起こり得るプラントの構成要素の配置上のトラブルについて説明する。プラント内を引き回される配管は、通常複数の配管が互いに接続されて構成され、図13(a)(b)には実際にプラントを建設する工程で、配管が接続される様子の一例を示している。図中100A、100Bは配管、101A、101Bはフランジである。フランジ101A、101Bにはその厚さ方向にボルトが挿通される孔103が形成されている。104A、104Bはレデューサであり、口径の異なる配管100A、100Bとフランジ101A、101Bとを夫々接続する役割を有する。
【0004】
例えば既に据え付けられた図中左側の配管100A、フランジ101Aに対して、ガスケット105、バルブ106、ガスケット105を挟み込むように右側からフランジ101Bを近づける。続いて、ボルト107を図中右側から左側のフランジ101Aに近づけ、その両端がフランジ101A,101Bから突出するように孔103に挿通させる。そして、フランジ101A,101Bから突き出たボルト107の突出部にナット108が締め付けられ、フランジ101A、101Bが互いに接続される。フランジ101Bには、レデューサ104Bを介して配管100Bが接続される。
【0005】
図13では孔103、ボルト107は夫々2つしか描いていないが、実際には孔103はフランジの周方向に沿って多数形成され、これら各孔103にボルト107が挿通される。なお、この図では代表してフランジ101A、101B間にバルブを設ける例について説明しているが、フランジ101A、101B間にはバルブの代わりに管路の流体の流量を調節するオリフィスなどが介在する場合が有る。このようにフランジ101A、101Bの間にガスケット以外のバルブなどの介在物が挟まれるものをウエハタイプという。
【0006】
フランジとしてはガスケットのみがフランジ101A、101B間に挟まれる非ウエハタイプが一般的であるものの、ここではウエハタイプを中心に説明し、非ウエハタイプについては発明の実施の形態で説明する。また、レデューサ104A、104Bは必要に応じて設けられ、全てのフランジ101A、101Bに対して取り付けられるわけではない。
【0007】
このようにプラントの建設中には配管同士を接続するために、配管100Bやフランジ101Bを移動させるスペースを確保できても、プラントの建設が進行、あるいは終了すると、配管や機器は固定、設置される。このため、メンテナンスの際にバルブ106やガスケット105を交換するにあたり、配管や機器が固定、設置されたままで、ボルト107をフランジ101A、101Bから引き抜く必要がある。
【0008】
しかし、図13(c)に示すようにその引き抜きを行う領域(クリアランス)が確保されておらず、例えば当該ボルト107がレデューサ104Bに干渉してしまう場合がある。メンテナンス中にこのような干渉が起きることが発見されると、既に設置した配管を切断して、ボルト107を引き抜き、さらに適切に配管を配置し直すことになる。そして、フランジ101A、101Bとレデューサ104A、104Bとの間に図14に示すように配管継手109を挿入して前記引き抜き領域を確保するなどの改修作業が必要になる。図13ではボルト107がレデューサ104Bに干渉する例を示しているが、レデューサに限られずプラントの他の構成要素に干渉する場合もある。
【0009】
また、フランジ101A、101Bにより配管同士が接続される例について示してきたが、フランジの用途としてはそのような配管同士を接続することに限られず、例えば各種の機器に対してフランジ101A、101Bを介して配管を取り付ける場合もある。このような場合においても配管同士を接続する場合と同様に、ボルトが他の構成要素に干渉する場合が有る。このようにボルト107がプラントの構成要素に干渉する結果として、前記メンテナンスの作業時間が増大し、その作業時間の増大による工期の延長が起こるし、コスト増加にも繋がってしまう。
【0010】
また、メンテナンス時に発生する他のトラブルの例について説明する。プラントを構成する配管や機器には温度計110が取り付けられる場合がある。各温度計110は、ウェルと呼ばれる配管内や機器内へ挿入される棒状の挿入部111と、それら配管や機器から突出した突出部112とを備えている。そして、この温度計110は、当該温度計のメンテナンスや交換を行う際に当該温度計110が設けられている箇所から取り外すことが必要になる場合がある。
【0011】
温度計110を取り外すときは、挿入部111の長さ方向に沿って当該挿入部111を、当該挿入部が設けられている配管や機器から引き抜く。しかし、この温度計110を引き抜く方向に温度計110の取り付け時には無かったプラントの構成要素が存在し、図15(a)(b)に示すようにその構成要素が邪魔で温度計を引き抜くために必要なクリアランスを確保できない場合が有る。その結果、本来の手順で温度計110の取り外しを行えず、ボルト107が他の構成要素に干渉する場合と同様に作業時間の増大、工期の延長及びコスト増加に繋がってしまう。
【0012】
これらのトラブルの発生を検証する機能を3DCADは通常、備えていない。そこで、予め全てのフランジや温度計の設置箇所周辺に広い空間が存在するようにプラントの設計を行うことが考えられるが、実際にはプラントにおいては限られた空間に膨大な構成要素が配置されるので、そのように設計することは難しい。従って、前記トラブルを回避するためには、プラントの設計段階でフランジ及び温度計が設けられる箇所について担当者が、個別にボルト107及び温度計110を引き抜くために必要な領域の大きさを検証し、この領域の有無をチェックしておくことが必要になる。
【0013】
しかし、プラントの大型化、複雑化が進み、上記のようにプラントの構成要素の数が増大する一方で、その構成要素をコンパクトにまとめて最適に配置することが求められている。従って、このようなフランジ101A,101Bにより接続される配管100A、100Bや温度計110は多数存在し、これらフランジ101A,101B及び温度計110の付近に他の構成要素が存在する箇所も多数存在する。従って設計者が、そのように個別にチェックを行う対象箇所は膨大になり、チェックに多くの作業時間を要することになり、担当者の負担が大きい。
【0014】
なお、3DCADを利用した技術としては、所定の3Dモデルについて時系列で表示、非表示を切り替える機能がある。これを利用して、例えばクレーンなどにより、構造物が所定の空間に搬入され、据え付けられていく様子を時系列に表示することができる。しかしながらこの機能は、予め作成された3Dモデルについて、コンピュータが予めユーザにより設定されたスケジュールに従って3Dモデルの表示、非表示の切り替えを行っており、本発明の技術とは異なる。また、特許文献1には、3DCADを利用したプラントの表示システムについて記載されているが、上記のボルトや温度計を引き抜くための領域を確保できるものではない。また、特許文献2にもプラントを構成する各機器の配置設計を行う技術について記載しているが、前記領域を確保できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−234942
【特許文献2】特開2006−330887
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的はフランジから引き抜かれるボルトと、そのフランジの周囲の構成要素との干渉の有無を容易に確認することができる配管構造物の設計支援システム及び配管構造物の設計支援ソフトウエアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の配管構造物の設計支援システムは、配管構造物を3次元CADにより設計するときの支援システムにおいて、配管構造物の構成要素ごとに、構成要素の空間上の位置、配置の向き及び寸法を含む3次元データが記憶され、また各構成要素の規格情報を規格コードとその属性データとして管理・保持する記憶部と、
この記憶部から、互に対向してボルトにより連結されるフランジの3次元の位置、配置の向き、寸法の3次元データ並びにボルトの突出長さを含む規格情報の属性データを求めると共にこれらフランジの間に介在する介在物の厚さ寸法を求める第1の手段と、
この手段で得られた結果に基づいて、前記互に対向するフランジ間を連結するボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域を3次元CADの空間上で求める第2の手段と、
前記引き抜き領域と配管構造物との干渉の有無を判断する判断手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
例えば前記記憶部は、
配管構造物の構成要素ごとに、3次元の位置、配置の向き及び構成要素を特定する規格コードが対応付けられて3次元データとして記憶されている第1の記憶部と、
各構成要素についてその規格情報を前記規格コードと対応付けた属性データとして記憶する第2の記憶部と、を備え、
前記第1の手段は、
前記第1の記憶部の3次元データから、互に対向してボルトにより連結されるフランジの3次元の位置、配置の向きを求めると共に当該フランジの規格コードを読み出し、この規格コードに基づいて第2の記憶部からフランジの属性データを読み出す機能と、
前記第1の記憶部の3次元データから、前記互に対向するフランジの間に介在する介在物の規格コードを読み出し、この規格コードに基づいて第2の記憶部から前記介在物の属性データを読み出す機能と、を備えている。
【0019】
例えば前記第2の手段は、ボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域をフランジの中心軸を中心として回転させて得られる円筒体のデータとして求め、配管構造物の3次元形状に前記円筒体を重畳する機能を備え、
前記判断手段は、前記円筒体と配管構造物との干渉の有無を判断し、その場合、前記判断手段は、前記円筒体と配管構造物とが干渉している領域を他の領域と区別して3次元画面に表示する機能を備えていてもよい。
【0020】
本発明の配管構造物の設計支援ソフトウエアは、配管構造物を3次元CADにより設計するときの支援ソフトウエアにおいて、
配管構造物の構成要素ごとに、3次元CADの空間上の位置、配置の向き及び寸法が3次元データとして記憶され、また構成要素の規格情報を規格コードとその属性データとして管理・保管する記憶部から、互に対向してボルトにより連結されるフランジの3次元の位置、配置の向き、寸法の3次元データ並びにボルトの突出長さを含む規格情報の属性データを求めると共にこれらフランジの間に介在する介在物の厚さ寸法を求める第1のステップと、
このステップで得られた結果に基づいて、前記互に対向するフランジ間を連結するボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域を3次元CADの空間上で求める第2のステップと、
前記引き抜き領域と配管構造物との干渉の有無を判断する判断ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0021】
前記第2のステップは、ボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域をフランジの中心軸を中心として回転させて得られる円筒体のデータとして求め、配管構造物の3次元形状に前記円筒体を重畳するステップを含み、
前記判断ステップは、前記円筒体と配管構造物との干渉の有無を判断するステップであってもよく、また、前記判断ステップは、前記円筒体と配管構造物とが干渉している領域を他の領域と区別して3次元画面に表示するステップを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、互に対向するフランジ間を連結するボルトの引き抜き領域を3次元CADの空間上で求める手段と、この引き抜き領域と配管構造物との干渉の有無を判断する判断手段とを備えることから、前記判断について容易に行うことができる。従って、担当者によるチェックの手間を省き、労力を軽減させることができる。また、配管構造物の設計段階での前記干渉の見落としによって、メンテナンス及び建設作業中に、配管構造物の各構成要素の配置変更を行う事態になることを防ぐことができるので、そのメンテナンス時や建設作業時の費用の増大を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のプラント設計システムにより設計されるプラントの一例を示した斜視図である。
【図2】前記プラントに含まれる配管系を示した斜視図である。
【図3】前記プラントを構成する配管のフランジ及びその周囲の構成要素の側面図である。
【図4】前記プラント設計システムで取り扱うフランジの正面図及び側面図である。
【図5】前記フランジに形成されるボルト引き抜き用のクリアランスを示した斜視図である。
【図6】ウエハタイプのフランジ接続構造におけるボルト引き抜き領域の側面図及び正面図である。
【図7】前記プラント設計システムの構成図である。
【図8】ボルト引き抜き時の干渉チェックの手順を示すフローチャートである。
【図9】干渉チェックにより画面表示されるリストの概略図である。
【図10】プラントを構成する温度計の構成図である
【図11】前記温度計を他の構成要素から引き抜くために要する引き抜き領域を示す説明図である。
【図12】温度計引き抜き時の干渉チェックの手順を示すフローチャートである。
【図13】配管の接続箇所の構成を示す説明図である。
【図14】配管の接続箇所の構成を示す説明図である。
【図15】温度計の引き抜き時に他の構成要素と干渉する様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
第1の実施形態として、フランジから引き抜くボルトと、そのフランジの周囲の構成要素(構成部品)との干渉の有無をチェックする配管構造物の設計支援システムを構成するプラント設計支援システム1について説明する。先ず、このプラント設計システム1の主な機能を中心に説明する。このプラント設計支援システム1は、3DCADを利用した設計支援システムであり、図1はこのシステム1により設計されるプラント10を示したものである。このプラント10には、支柱、梁、タンク、足場、手摺りなどの様々な構成要素が含まれており、図2にはこのプラント10に含まれる配管系11を簡略化して示している。つまり、プラント10は配管を含む配管構造物である。
【0025】
このようなプラント10の配管系11に含まれる配管21は、背景技術の項目で説明したように複数の配管が互いに接続されて構成される。図3(a)及び図3(b)では、プラント10において前記配管21を構成する配管22、22が互いに接続された箇所の周辺を詳細に示している。配管22、22の接続構造としては、背景技術の項目で説明したように配管22、22の端部に設けられる円形のフランジ23、23間にガスケット以外の構成要素が挟まれるウエハタイプがある。既述のようにフランジ間に挟まれる前記構成要素として、図3(a)では代表してバルブ24を示している。また、前記接続構造としては他に、図3(b)に示すようにフランジ23、23間にガスケット以外の構成要素が挟まれない非ウエハタイプがある。
【0026】
前記ウエハタイプの接続構造についてさらに説明すると、背景技術の項目でも説明したように、フランジ23、23とバルブ24との間には夫々ガスケット25、25が介設されている。この例ではガスケット25、バルブ24が介在物に相当する。また、図3(a)(b)に示す例では前記フランジ23、23と、配管22、22との間にはレデューサ26、26が設けられている。図4(a)(b)は、フランジ23の平面図、側面図を夫々示している。図4(a)に示すようにフランジ23、23はその周方向に多数の孔27を備えており、孔27はフランジ23の軸から等距離に配設されている。
【0027】
孔27にはボルト28が、フランジ23から突出するように挿入されている。なお、図3(a)(b)では図示の便宜上、ボルト28は2本だけ示している。ボルト28において各フランジ23、23から突き出た突出部にはナット29が締め付けられ、それによってフランジ23、23が互いに固定される。図4中20はフランジ23の流路であり、配管22の流路に接続される。非ウエハタイプの接続構造としては、フランジ23、23間に1つのガスケット25が介設される他は、ウエハタイプの接続構造と同様である。
【0028】
そして、プラント設計支援システム1では、プラント10を設計するにあたり設計者が後述の記憶部に記憶されている構成要素の種別と、属性データに対応した規格コードとを選択する。さらに選択した種別の構成要素について3次元CAD上の空間における位置と、向きと、周囲の構成要素とどのように接続されているかという接続情報と、を設定することにより、プラント10の3Dモデルをコンピュータの画面(表示部57の画面)上で作成する。なお、実際には3DCADによる設計は非常に複雑であるため、この実施形態では簡単に概略のみを述べている。
【0029】
前記構成要素の種別とは、フランジ、配管、ガスケット、足場、手摺り、圧力計、後述の温度計などの部品の種別である。属性データとは、各部の寸法を含む情報であり、ガスケット25の属性データとしては図3で示す当該ガスケット25の厚さGが含まれ、バルブ24の属性データとしては当該バルブ24の厚さAが含まれる。また、フランジ23の属性データとしては、フランジ23の厚さF、フランジ23から突出するボルト28の突出部の長さN、当該フランジ23に使用されるボルト28の直径S及びフランジ23に対して同心円状に配置されるボルト28の取り付け孔27の配置情報についてのデータが含まれている。ここで、取り付け孔27の配置情報とは、フランジ23の中心を中心とし、取り付け孔27の中心を周にとる直径Rであり、図4(a)に点線で示している。
【0030】
プラント10の設計後、設計者がシステム1に含まれる入力部56から所定の操作を行うと、各配管の接続箇所についてフランジ23の厚さF、ガスケット25の厚さG、バルブ24の厚さA、ボルト28の突出部の長さN、ボルト28の径S及び前記円の直径Rに応じて、ボルト28の引き抜きに要する領域の座標が自動で計算され、図5(a)、図5(b)に示すように、前記表示部57の画面に円筒体であるボルトの引き抜き領域31の3Dモデルが、プラント10の3Dモデルに重ね合わされて表示される。この図5ではボルトの引き抜き領域31を実線で示し、当該ボルトの引き抜き領域31の周囲のプラント10を構成する構成要素を点線で示している。
【0031】
図6(a)、(b)にはウエハタイプのフランジ接続構造におけるボルト引き抜き領域31の側面図、正面図を夫々示している。この図6では図示の便宜上ボルトの引き抜き領域31に多数の点を付して示しており、ボルト28及びナット29の図示は省略している。この引き抜き領域31は一のフランジ23(23a)から、その厚さ方向に伸びる円筒状の領域であり、この伸びる方向は一のフランジ23(23a)に対向するフランジ23(23b)の位置する方向とは逆方向である。引き抜き領域31の軸はフランジ23の軸と重なっている。引き抜き領域31の長さは、図3(a)(b)に示すボルト28の長さLであり、引き抜き領域31の厚さはボルト28の径Sに相当する。
【0032】
また、図6(b)に示すようにボルトの引き抜き領域31は、フランジ23の周方向に配列された各孔27に内接する円の直径を内径、各孔27に外接する円の直径を外径とする円筒体であり、孔27に重なるように形成される。つまり、この引き抜き領域31は、ボルト28をフランジ23の中心軸を中心として回転させて得られる円筒状の領域である。
【0033】
そして、プラント設計支援システム1は、計算されたボルトの引き抜き領域31とプラント10の各構成要素の領域と、に基づいて、当該引き抜き領域31とプラント10の各構成要素との干渉を自動でチェックし、干渉を起こしている箇所についてはその箇所についてのデータを前記表示部57の画面にリストアップする。また、前記画面において、前記構成要素と干渉を起こしていると判定された引き抜き領域31については、その干渉している部分を、干渉を起こしていない部分の色と区別して表示して、識別を容易にする。具体的には例えば前記干渉を起こしている部分の明度を高くして表示する。
【0034】
続いてプラント設計支援システム1の構成について図7を参照しながら説明する。プラント設計支援システム1は、コンピュータにより構成され、第1の記憶部41、第2の記憶部42、プログラム記憶部52、入力部56、表示部57及びCPU58を備えている。図中59はバスである。前記入力部56は、キーボードやマウスなどが相当する。表示部57は、CRTや液晶からなる画面を有するディスプレイである。CPU58は、プログラム記憶部52のプログラムを読み出し、プラント設計支援システム1を制御する。
【0035】
第1の記憶部41には、プラント全体について3次元モデルを構成するためのデータ(3次元データ)が格納されている。具体的には表示される機器、部材などの全構成要素の各々について位置情報が記憶されている。図7では配管構造部分についてその一部を模式的に示している。位置情報とは構成要素の3次元空間の位置、配置の向き及び当該構成要素に接続される他の構成要素などの情報であるが、配管についてはどこでどの方向に曲がるかといった情報やその長さについての情報も含まれる。このように図7では便宜上、「位置情報」と記載してあるが、実際には構成要素の属性データの一部も含まれる。また、構成要素毎に既述の規格コードが書き込まれている。なお、第1の記憶部41に記憶される情報は、実際には極めて複雑であるため、図7では簡略化したイメージを示している。
【0036】
第2の記憶部42はプラント10の各構成要素の種別毎に規格情報が規格コードと対応付けた属性データとしてテーブル42aに格納されている。属性データは配管であれば、外径、肉厚、材質等であり、フランジであれば、形状、軸方向の厚さ、外径、孔27の配置情報(各孔27の中心を通る円の直径R)、ボルト孔の径、ボルトの突出長さ、材質などが書き込まれる。なお、ボルトの突出長さとは、互いに対向するフランジ23をボルト28で固定したときにフランジ23から突出するボルトの長さである。また、当該フランジがウエハタイプの接続を構成するものであるか、非ウエハタイプの接続を構成するものであるか、という情報もフランジの属性データとしてテーブル42aに書き込まれている。
【0037】
図7の例では構成要素として配管、フランジ、ガスケットが模式的に例示されているが、その他圧力計、温度計などが挙げられる。構成要素の種別としては「配管」であっても外径や肉厚が異なるものについては別の規格となり、「フランジ」であっても外径や形状が異なるものについては別の規格となる。また、これらテーブル42aの各々には規格コードが付されている。この規格コードは各構成要素の規格を特定するもの、つまり各テーブル42aを特定するものであり、次に述べる第1の記憶部41内の構成要素から、当該第2の記憶部42内のテーブル42aを介して属性を求めるときに検索のキーとなるコードである。
【0038】
従って、構成要素をコンピュータ画面(表示部57)に表示するにあたっては、例えばアドレスに沿って順次第1の記憶部41内の構成要素の位置情報及び規格コードを読み出すと共に、第2の記憶部42内のテーブル42aから当該規格コードに対応する属性データを読み出し、これら位置情報と、属性データ(第1の記憶部41内の属性データの一部も含む)と、に基づいて画面に構成要素を表示する。こうして例えば配管構造が画面の3次元空間に描き出されていく。
【0039】
プログラム記憶部52には表示用プログラム53、引き抜き領域設定プログラム54、判断手段である干渉判定プログラム55が記憶されている。これらプログラム54、55が、配管構造物の設計支援ソフトウエアを構成する。表示用プログラム53は、第1の記憶部41内の構成要素に関する位置情報及び属性データを読み出すと共に当該構成要素に関する第2の記憶部42内の属性データを、第2の記憶部42内の規格コードを介して読み出して、当該構成要素を表示部57上に3次元画像として表示し、こうして順次構成要素に対して表示処理を行って表示部57上に例えば配管構造全体を表示するようにステップ群が構成される。また、この実施形態では、表示用プログラム53は、各構成要素を表示部57に表示するプログラムと、ボルトの引き抜き領域31を表示すると共に、既述したように当該引き抜き領域31とプラント10の構成要素とが干渉する場合には、干渉する部分を他の部分と区別して表示するプログラムとを備えている。
【0040】
引き抜き領域設定プログラム54は、既述のボルトの引き抜き領域31を3次元空間上に設定するためのプログラムである。このプログラム54を構成する複数のステップ群のうち、この例では後述の図8のステップS1〜S6が特許請求の範囲の第1のステップに相当し、同図のステップS7、S8が第2のステップに相当する。第1のステップ及び第2のステップには実際のプログラムでは複数のステップ群が含まれるが、用語の便宜上、第1(第2)の「ステップ」と記載する。また、第1のステップと、この第1のステップを読み出すCPU58とが特許請求の範囲の第1の手段に相当し、第2のステップとこの第2のステップを読み出すCPU58とが第2の手段に相当する。干渉判定プログラム55は、ボルトの引き抜き領域31と、プラント10の各構成要素との干渉をチェックし、その結果を表示部57に表示するためのプログラムである。
【0041】
続いて、このプラント設計支援システム1で行われるボルトの干渉チェックの流れについて、図8のフローを参照して説明する。今、配管構造を含むプラント全体の3次元CADの設計データが作成されて、第1の記憶部41及び第2の記憶部42内にデータが格納されているものとし、オペレータが入力部56によりボルトの引き抜き領域31の干渉チェックの処理開始を入力したものとする。
【0042】
引き抜き領域設定プログラム54は、第1の記憶部41のデータの中から、構成要素の種別がフランジであるデータを例えばアドレス順に検索し、各フランジ23に関する規格コード、位置情報についてのデータを取得する(ステップS1)。次に、例えばステップS1で読み込んだ順に、各フランジ23に関する規格情報を先に読み込んだ規格コードに対応付けて第2の記憶部42に記憶されているテーブル42aより取得する(ステップS2)。なお、このステップは一例であり、フランジ23について位置情報を取得するときに、併せて規格コードを介して第2の記憶部42から属性データを取得して、図示しないワークメモリに順次位置情報及び属性データを対応付けて書き込むようにしてもよい。
【0043】
続いて、例えば同じくステップS1で読み込んだ順に、各フランジ23が通常のフランジ接続か、ウエハタイプの接続であるかをステップS2で読み込んだ規格情報の属性データに基づいて判定する(ステップS3)。ステップS3で、一のフランジ23がウエハタイプであると判定した場合、当該一のフランジ23と対向する他のフランジ23との間に挟まれるガスケット25以外の介在物、例えばバルブ24のバルブ厚さ等の属性情報を第2の記憶部42より取得する(ステップS4)。なお、ここではガスケット25、25間における介在物がバルブ24であるものとして説明しているが、オリフィスなどの他の構成要素であっても同様にその厚さが取得される。
【0044】
更に前記フランジ23とバルブ24との間に介在するガスケット25に関する属性データと、前記フランジ23と対向する他のフランジ23とバルブ24との間に介在するガスケット25に関する属性データとを同様にして取得する(ステップS5)。こうしてフランジ23の接続構造に係る各部品の仕様、位置、向きが取得されたことから、以下のようにしてボルトの引き抜き領域31が設定される。
【0045】
抽出した各属性データに含まれる一のフランジ23の厚さF、一のフランジ23からのボルトの突出長さN、一のフランジ23とバルブ24との間に挟まれるガスケット25の厚さG、バルブ24の厚さA、他のフランジ23の厚さF’、他のフランジ23からのボルトの突出長さN’、他のフランジ23とバルブ24との間に挟まれるガスケット25の厚さG’が合計される。つまりN+F+G+A+G’+F’+N’が演算され、その演算結果をそのフランジ23に用いられるボルト28の長さL、すなわち既述の円筒体である引き抜き領域31の長さとして決定する(ステップS6)
【0046】
このボルトの長さ(引き抜き領域の長さ)Lと、円筒体であるボルトの引き抜き領域31の厚さに相当するボルト28の直径Sと、フランジ23の各孔27の中心を通る円の直径R、つまり円筒体の中心軸からその厚さの中心までの長さを2倍したものと、フランジ23の三次元位置及び配置情報とから、このボルトの引き抜き領域31の形状及び座標が決定される(ステップS7)。ここで決定されるボルトの引き抜き領域31の座標は、例えばボルトの引き抜き領域31の基端側(フランジ23側)で、円筒体の中心軸との交点となる点で代表される。
【0047】
このようにボルトの引き抜き領域31の座標と形状とが決定されることにより、ボルトの引き抜き領域31が3次元空間に占める領域(占有領域)が決定される。そして、ボルトの引き抜き領域31の占有領域が決定されると、3次元空間において当該ボルトの引き抜き領域31がプラント10に重畳されるようにデータ処理が行われ、図5で示したようにボルトの引き抜き領域31の3Dモデルが、プラントの3Dモデルが表示されている表示部57の画面のウインドウに、当該プラントの3Dモデルに重ね合わされて表示される(ステップS8)。
【0048】
前記ボルトの引き抜き領域31の占有領域について決定した後、干渉判定プログラム55が、例えば第1の記憶部41のアドレス順に、当該第1の記憶部41に記憶される規格コード及び位置情報を読み出し、さらに第2の記憶部42から前記規格コードに対応付けられた属性データを読み出して、前記位置情報と属性データとからプラントの全ての構成要素についてその占有領域を算出する。
【0049】
そして、算出した構成要素の占有領域についてボルトの引き抜き領域31である円筒体の占有領域と重なるかどうかを判定する。占有領域が重なると判定された場合には、当該構成要素とボルトの引き抜き領域31とが干渉すると判定され、さらに干渉領域が既述のように画面上で、明度を高くしていわゆるハイライト表示される。互いの占有領域が重ならないと判定された場合には、そのボルトの引き抜き領域31について構成要素と干渉しないと判定される(ステップS9)。
【0050】
一方、ステップS3で当該接続が通常のフランジ接続であると判定された場合にはステップS4が行われず、ステップS5以降のステップが実施される。通常のフランジ接続ではフランジ23、23間にはガスケット25が一つ挟まれるだけであり、ステップS5ではこのガスケットの属性データであるガスケット厚みが抽出される。そして、ステップS6では、一のフランジ23の厚さF、一のフランジ23からのボルトの突出長さN、前記ガスケット25の厚さG、他のフランジ23の厚さF’、他のフランジ23からのボルトの突出長さN’が合計され、この演算結果がボルトの長さLとして決定される。
【0051】
このようにステップS3〜S9が繰り返し実施され、全てのフランジ23についてボルトの引き抜き領域31の3Dモデルの形成及び前記引き抜き領域31の干渉の判定が行われると、干渉判定プログラム55が、表示部57の画面にプラント10及び引き抜き領域31の3Dモデルを表示するウインドウ12とは異なるリスト表示用のウインドウ13を生成する。そして、このリスト表示用ウインドウ13にフランジ23の位置情報等を示したリスト14を表示し、干渉を起こすと判定されたボルトの引き抜き領域31に対応するフランジ23については、前記リスト14中に、干渉が起きる旨の表示がなされる(ステップS10)。図9には、このように表示されるリスト14の概略を示している。
【0052】
オペレータは、前記リスト14及び引き抜き領域31の3Dモデルの色表示に基づいてプラントの構成要素の配置を調整したり、構成要素の仕様を変更するなどして、プラントの再設計を行う。然る後、繰り返し上記のステップS1〜S10を実行し、ボルトの引き抜き領域31とプラントの構成要素との干渉チェックを行う。
【0053】
この第1の実施形態のプラント設計支援システム1によれば、フランジ23からのボルト28の引き抜き領域31の大きさを当該システム1が自動で決定し、その引き抜き領域31とフランジ23の周囲の構成要素との干渉チェックが自動で行われ、そのチェック結果が画面に表示される。従って人力で前記干渉チェックを行う場合と比較して、オペレータの作業負担を軽減し、チェック漏れを防ぐことができる。そして、そのチェック漏れによるプラントのメンテナンス時の作業工程の増大を防ぐことができる。なお、この実施形態ではボルト28の長さ=ボルトの引き抜き領域31の長さとしているが、引き抜き作業を容易にするために上記のステップS6で演算されるボルトの長さに所定のマージンを加えたものを引き抜き領域31の長さとしてもよい。
【0054】
(第2の実施形態)
続いて第2の実施形態に係るプラント設計支援システムについて、第1の実施形態のプラント設計支援システム1との差異点を中心に説明する。このプラント設計支援システムは、ボルト28の引き抜き領域31の代わりに温度計71の引き抜き領域60の3次元空間における占有領域を自動で演算する。そして、プラント設計支援システムは、その引き抜き領域60の3Dモデルを作成して、第1の実施形態と同様にプラント10の3Dモデルに重ね合わせて表示し、この引き抜き領域60と、プラント10の構成要素との干渉をチェックする。
【0055】
図10(a)(b)には温度計71の側面図、正面図を示しており、図11(a)(b)にはこの温度計71に対応する引き抜き領域60の側面図、正面図を示している。温度計71は、背景技術の項目で説明したように構成要素内に挿入されるウェルと呼ばれる棒状の挿入部72と、挿入部72の延長上に設けられ、前記構成要素から突出した突出部73とを備えている。前記温度計の引き抜き領域60は、温度計71が設けられる構成要素において、その突出部73が設けられる箇所から、当該温度計71の伸長方向に向けて伸びる円柱状の領域である。温度計の引き抜き領域60の長さL2は温度計71の長さであり、引き抜き領域60の直径の大きさR2は、突出部73のうち最も径の大きな部位の直径の大きさと等しい。
【0056】
この第2の実施形態のプラント設計支援システムは、第1の実施形態のプラント設計支援システム1と略同様に構成されており、第2の記憶部42において温度計71の属性データとしては、図10に示す突出部73の直径の大きさR2、突出部73の長さL3が含まれる。しかし挿入部72の長さL4は計測対象により規定されるものであり、前記属性データには含まれておらず、オペレータがプラント設計時に付帯情報として設定する。この付帯情報については位置情報と共に規格コードに対応付けられて第1の記憶部41に記憶される。
【0057】
続いて、このプラント設計支援システムによる温度計の引き抜き領域60とプラントの構成要素との干渉チェックの手順について第1の実施形態との差異点を中心に図12を参照しながら説明する。プラントの3次元CADの設計データ作成後、オペレータが入力部56により干渉チェックの開始処理の操作を行うと、引き抜き領域設定プログラム54は、第1の記憶部41のデータの中から、構成要素の種別が温度計であるデータを例えばアドレス順に検索し、各温度計71に関する規格コード、位置情報及び付帯情報についてのデータを取得する(ステップT1)。温度計71に関する前記データを全て抽出すると、取得した規格コードに基づいて、第2の記憶部42に記憶されているテーブル42a群からその規格コードに対応するテーブル42aに書き込まれている温度計71の属性データを取得する(ステップT2)。
【0058】
こうして、温度計71の仕様、位置、向きについて取得した後、突出部73の長さL3と、挿入部72の長さL4とを合計し、温度計71の長さL2を演算し、温度計71の長さL2と、突出部73のうち最も径の大きな部位の直径R2と、取得された位置情報に含まれる温度計71の位置及び向きから引き抜き領域60の形状及び座標について決定する(ステップT3)。ここでの座標は、例えば引き抜き領域60の基端側(温度計71が設けられる構成要素側)で、円柱体の中心軸との交点となる点で代表される。
【0059】
そして、このように形状及び座標が決定されると、3次元空間における引き抜き領域60の占有領域が決定される。そして、温度計の引き抜き領域60の占有領域が決定されると、3次元空間において当該温度計の引き抜き領域60がプラント10に重畳されるようにデータ処理が行われ、引き抜き領域60の3Dモデルが、既述のようにプラント10の3Dモデルに重ね合わされて表示部57に表示される(ステップT4)。
【0060】
その後、第1の実施形態のステップS9と同様に引き抜き領域60の占有領域とプラント10の構成要素の占有領域とに基づいて、引き抜き領域60とプラント10との干渉がチェックされる(ステップT5)。そして、第1の実施形態のステップS10と同様に、引き抜き領域60について干渉を起こす箇所については明度を高くして表示し、さらに各温度計71について干渉の有無を表示したリストが表示部57に表示される(ステップT6)。
【0061】
この第2の実施形態においても、引き抜き領域60の大きさをプラント設計支援システムが自動で決定し、その引き抜き領域60とプラントの構成要素との干渉チェックが自動で行われるので、人力で前記干渉チェックを行う場合と比較して、設計者の作業負担を軽減し、チェック漏れを防ぐことができる。そして、そのチェック漏れによるプラント10のメンテナンス時の作業工程の増大を防ぐことができる。これらの第1及び第2の実施形態は互いに組み合わせて、一つのシステムで温度計の引き抜き領域及びボルトの引き抜き領域と、プラントの構成要素との干渉がチェックできるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 プラント設計支援システム
10 プラント
22 配管
23 フランジ
24 バルブ
25 ガスケット
27 孔
28 ボルト
31 ボルトの引き抜き領域
41 第1の記憶部
42 第2の記憶部
54 引き抜き領域設定プログラム
55 干渉判定プログラム
57 表示部
60 温度計の引き抜き領域
71 温度計
【技術分野】
【0001】
本発明は3次元CADを用いた配管構造物の設計支援システム及びそのシステムを構成する配管構造物の設計支援ソフトウエアに関する。
【背景技術】
【0002】
プラントを設計するにあたり、3次元(3D)のCAD(Computer Aided Design)を利用したプラント設計支援システムが用いられている。このプラント設計支援システムにより、設計者は、プラントを構成する機器、配管及びその他の部品などの構成要素をコンピュータの画面上に描画し、3次元のプラントモデルを作成してプラントの設計を行う。このプラントの設計段階では、後述のプラントのメンテナンス時に発生する各構成要素の配置上のトラブルを考慮しながら、そのトラブルを未然に防止するべく、前記プラントモデルについて様々な視点で確認及び検査が行われる。
【0003】
ここで、具体的に起こり得るプラントの構成要素の配置上のトラブルについて説明する。プラント内を引き回される配管は、通常複数の配管が互いに接続されて構成され、図13(a)(b)には実際にプラントを建設する工程で、配管が接続される様子の一例を示している。図中100A、100Bは配管、101A、101Bはフランジである。フランジ101A、101Bにはその厚さ方向にボルトが挿通される孔103が形成されている。104A、104Bはレデューサであり、口径の異なる配管100A、100Bとフランジ101A、101Bとを夫々接続する役割を有する。
【0004】
例えば既に据え付けられた図中左側の配管100A、フランジ101Aに対して、ガスケット105、バルブ106、ガスケット105を挟み込むように右側からフランジ101Bを近づける。続いて、ボルト107を図中右側から左側のフランジ101Aに近づけ、その両端がフランジ101A,101Bから突出するように孔103に挿通させる。そして、フランジ101A,101Bから突き出たボルト107の突出部にナット108が締め付けられ、フランジ101A、101Bが互いに接続される。フランジ101Bには、レデューサ104Bを介して配管100Bが接続される。
【0005】
図13では孔103、ボルト107は夫々2つしか描いていないが、実際には孔103はフランジの周方向に沿って多数形成され、これら各孔103にボルト107が挿通される。なお、この図では代表してフランジ101A、101B間にバルブを設ける例について説明しているが、フランジ101A、101B間にはバルブの代わりに管路の流体の流量を調節するオリフィスなどが介在する場合が有る。このようにフランジ101A、101Bの間にガスケット以外のバルブなどの介在物が挟まれるものをウエハタイプという。
【0006】
フランジとしてはガスケットのみがフランジ101A、101B間に挟まれる非ウエハタイプが一般的であるものの、ここではウエハタイプを中心に説明し、非ウエハタイプについては発明の実施の形態で説明する。また、レデューサ104A、104Bは必要に応じて設けられ、全てのフランジ101A、101Bに対して取り付けられるわけではない。
【0007】
このようにプラントの建設中には配管同士を接続するために、配管100Bやフランジ101Bを移動させるスペースを確保できても、プラントの建設が進行、あるいは終了すると、配管や機器は固定、設置される。このため、メンテナンスの際にバルブ106やガスケット105を交換するにあたり、配管や機器が固定、設置されたままで、ボルト107をフランジ101A、101Bから引き抜く必要がある。
【0008】
しかし、図13(c)に示すようにその引き抜きを行う領域(クリアランス)が確保されておらず、例えば当該ボルト107がレデューサ104Bに干渉してしまう場合がある。メンテナンス中にこのような干渉が起きることが発見されると、既に設置した配管を切断して、ボルト107を引き抜き、さらに適切に配管を配置し直すことになる。そして、フランジ101A、101Bとレデューサ104A、104Bとの間に図14に示すように配管継手109を挿入して前記引き抜き領域を確保するなどの改修作業が必要になる。図13ではボルト107がレデューサ104Bに干渉する例を示しているが、レデューサに限られずプラントの他の構成要素に干渉する場合もある。
【0009】
また、フランジ101A、101Bにより配管同士が接続される例について示してきたが、フランジの用途としてはそのような配管同士を接続することに限られず、例えば各種の機器に対してフランジ101A、101Bを介して配管を取り付ける場合もある。このような場合においても配管同士を接続する場合と同様に、ボルトが他の構成要素に干渉する場合が有る。このようにボルト107がプラントの構成要素に干渉する結果として、前記メンテナンスの作業時間が増大し、その作業時間の増大による工期の延長が起こるし、コスト増加にも繋がってしまう。
【0010】
また、メンテナンス時に発生する他のトラブルの例について説明する。プラントを構成する配管や機器には温度計110が取り付けられる場合がある。各温度計110は、ウェルと呼ばれる配管内や機器内へ挿入される棒状の挿入部111と、それら配管や機器から突出した突出部112とを備えている。そして、この温度計110は、当該温度計のメンテナンスや交換を行う際に当該温度計110が設けられている箇所から取り外すことが必要になる場合がある。
【0011】
温度計110を取り外すときは、挿入部111の長さ方向に沿って当該挿入部111を、当該挿入部が設けられている配管や機器から引き抜く。しかし、この温度計110を引き抜く方向に温度計110の取り付け時には無かったプラントの構成要素が存在し、図15(a)(b)に示すようにその構成要素が邪魔で温度計を引き抜くために必要なクリアランスを確保できない場合が有る。その結果、本来の手順で温度計110の取り外しを行えず、ボルト107が他の構成要素に干渉する場合と同様に作業時間の増大、工期の延長及びコスト増加に繋がってしまう。
【0012】
これらのトラブルの発生を検証する機能を3DCADは通常、備えていない。そこで、予め全てのフランジや温度計の設置箇所周辺に広い空間が存在するようにプラントの設計を行うことが考えられるが、実際にはプラントにおいては限られた空間に膨大な構成要素が配置されるので、そのように設計することは難しい。従って、前記トラブルを回避するためには、プラントの設計段階でフランジ及び温度計が設けられる箇所について担当者が、個別にボルト107及び温度計110を引き抜くために必要な領域の大きさを検証し、この領域の有無をチェックしておくことが必要になる。
【0013】
しかし、プラントの大型化、複雑化が進み、上記のようにプラントの構成要素の数が増大する一方で、その構成要素をコンパクトにまとめて最適に配置することが求められている。従って、このようなフランジ101A,101Bにより接続される配管100A、100Bや温度計110は多数存在し、これらフランジ101A,101B及び温度計110の付近に他の構成要素が存在する箇所も多数存在する。従って設計者が、そのように個別にチェックを行う対象箇所は膨大になり、チェックに多くの作業時間を要することになり、担当者の負担が大きい。
【0014】
なお、3DCADを利用した技術としては、所定の3Dモデルについて時系列で表示、非表示を切り替える機能がある。これを利用して、例えばクレーンなどにより、構造物が所定の空間に搬入され、据え付けられていく様子を時系列に表示することができる。しかしながらこの機能は、予め作成された3Dモデルについて、コンピュータが予めユーザにより設定されたスケジュールに従って3Dモデルの表示、非表示の切り替えを行っており、本発明の技術とは異なる。また、特許文献1には、3DCADを利用したプラントの表示システムについて記載されているが、上記のボルトや温度計を引き抜くための領域を確保できるものではない。また、特許文献2にもプラントを構成する各機器の配置設計を行う技術について記載しているが、前記領域を確保できるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2005−234942
【特許文献2】特開2006−330887
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明はこのような事情の下になされたものであり、その目的はフランジから引き抜かれるボルトと、そのフランジの周囲の構成要素との干渉の有無を容易に確認することができる配管構造物の設計支援システム及び配管構造物の設計支援ソフトウエアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の配管構造物の設計支援システムは、配管構造物を3次元CADにより設計するときの支援システムにおいて、配管構造物の構成要素ごとに、構成要素の空間上の位置、配置の向き及び寸法を含む3次元データが記憶され、また各構成要素の規格情報を規格コードとその属性データとして管理・保持する記憶部と、
この記憶部から、互に対向してボルトにより連結されるフランジの3次元の位置、配置の向き、寸法の3次元データ並びにボルトの突出長さを含む規格情報の属性データを求めると共にこれらフランジの間に介在する介在物の厚さ寸法を求める第1の手段と、
この手段で得られた結果に基づいて、前記互に対向するフランジ間を連結するボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域を3次元CADの空間上で求める第2の手段と、
前記引き抜き領域と配管構造物との干渉の有無を判断する判断手段と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
例えば前記記憶部は、
配管構造物の構成要素ごとに、3次元の位置、配置の向き及び構成要素を特定する規格コードが対応付けられて3次元データとして記憶されている第1の記憶部と、
各構成要素についてその規格情報を前記規格コードと対応付けた属性データとして記憶する第2の記憶部と、を備え、
前記第1の手段は、
前記第1の記憶部の3次元データから、互に対向してボルトにより連結されるフランジの3次元の位置、配置の向きを求めると共に当該フランジの規格コードを読み出し、この規格コードに基づいて第2の記憶部からフランジの属性データを読み出す機能と、
前記第1の記憶部の3次元データから、前記互に対向するフランジの間に介在する介在物の規格コードを読み出し、この規格コードに基づいて第2の記憶部から前記介在物の属性データを読み出す機能と、を備えている。
【0019】
例えば前記第2の手段は、ボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域をフランジの中心軸を中心として回転させて得られる円筒体のデータとして求め、配管構造物の3次元形状に前記円筒体を重畳する機能を備え、
前記判断手段は、前記円筒体と配管構造物との干渉の有無を判断し、その場合、前記判断手段は、前記円筒体と配管構造物とが干渉している領域を他の領域と区別して3次元画面に表示する機能を備えていてもよい。
【0020】
本発明の配管構造物の設計支援ソフトウエアは、配管構造物を3次元CADにより設計するときの支援ソフトウエアにおいて、
配管構造物の構成要素ごとに、3次元CADの空間上の位置、配置の向き及び寸法が3次元データとして記憶され、また構成要素の規格情報を規格コードとその属性データとして管理・保管する記憶部から、互に対向してボルトにより連結されるフランジの3次元の位置、配置の向き、寸法の3次元データ並びにボルトの突出長さを含む規格情報の属性データを求めると共にこれらフランジの間に介在する介在物の厚さ寸法を求める第1のステップと、
このステップで得られた結果に基づいて、前記互に対向するフランジ間を連結するボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域を3次元CADの空間上で求める第2のステップと、
前記引き抜き領域と配管構造物との干渉の有無を判断する判断ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0021】
前記第2のステップは、ボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域をフランジの中心軸を中心として回転させて得られる円筒体のデータとして求め、配管構造物の3次元形状に前記円筒体を重畳するステップを含み、
前記判断ステップは、前記円筒体と配管構造物との干渉の有無を判断するステップであってもよく、また、前記判断ステップは、前記円筒体と配管構造物とが干渉している領域を他の領域と区別して3次元画面に表示するステップを備えていてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、互に対向するフランジ間を連結するボルトの引き抜き領域を3次元CADの空間上で求める手段と、この引き抜き領域と配管構造物との干渉の有無を判断する判断手段とを備えることから、前記判断について容易に行うことができる。従って、担当者によるチェックの手間を省き、労力を軽減させることができる。また、配管構造物の設計段階での前記干渉の見落としによって、メンテナンス及び建設作業中に、配管構造物の各構成要素の配置変更を行う事態になることを防ぐことができるので、そのメンテナンス時や建設作業時の費用の増大を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のプラント設計システムにより設計されるプラントの一例を示した斜視図である。
【図2】前記プラントに含まれる配管系を示した斜視図である。
【図3】前記プラントを構成する配管のフランジ及びその周囲の構成要素の側面図である。
【図4】前記プラント設計システムで取り扱うフランジの正面図及び側面図である。
【図5】前記フランジに形成されるボルト引き抜き用のクリアランスを示した斜視図である。
【図6】ウエハタイプのフランジ接続構造におけるボルト引き抜き領域の側面図及び正面図である。
【図7】前記プラント設計システムの構成図である。
【図8】ボルト引き抜き時の干渉チェックの手順を示すフローチャートである。
【図9】干渉チェックにより画面表示されるリストの概略図である。
【図10】プラントを構成する温度計の構成図である
【図11】前記温度計を他の構成要素から引き抜くために要する引き抜き領域を示す説明図である。
【図12】温度計引き抜き時の干渉チェックの手順を示すフローチャートである。
【図13】配管の接続箇所の構成を示す説明図である。
【図14】配管の接続箇所の構成を示す説明図である。
【図15】温度計の引き抜き時に他の構成要素と干渉する様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
第1の実施形態として、フランジから引き抜くボルトと、そのフランジの周囲の構成要素(構成部品)との干渉の有無をチェックする配管構造物の設計支援システムを構成するプラント設計支援システム1について説明する。先ず、このプラント設計システム1の主な機能を中心に説明する。このプラント設計支援システム1は、3DCADを利用した設計支援システムであり、図1はこのシステム1により設計されるプラント10を示したものである。このプラント10には、支柱、梁、タンク、足場、手摺りなどの様々な構成要素が含まれており、図2にはこのプラント10に含まれる配管系11を簡略化して示している。つまり、プラント10は配管を含む配管構造物である。
【0025】
このようなプラント10の配管系11に含まれる配管21は、背景技術の項目で説明したように複数の配管が互いに接続されて構成される。図3(a)及び図3(b)では、プラント10において前記配管21を構成する配管22、22が互いに接続された箇所の周辺を詳細に示している。配管22、22の接続構造としては、背景技術の項目で説明したように配管22、22の端部に設けられる円形のフランジ23、23間にガスケット以外の構成要素が挟まれるウエハタイプがある。既述のようにフランジ間に挟まれる前記構成要素として、図3(a)では代表してバルブ24を示している。また、前記接続構造としては他に、図3(b)に示すようにフランジ23、23間にガスケット以外の構成要素が挟まれない非ウエハタイプがある。
【0026】
前記ウエハタイプの接続構造についてさらに説明すると、背景技術の項目でも説明したように、フランジ23、23とバルブ24との間には夫々ガスケット25、25が介設されている。この例ではガスケット25、バルブ24が介在物に相当する。また、図3(a)(b)に示す例では前記フランジ23、23と、配管22、22との間にはレデューサ26、26が設けられている。図4(a)(b)は、フランジ23の平面図、側面図を夫々示している。図4(a)に示すようにフランジ23、23はその周方向に多数の孔27を備えており、孔27はフランジ23の軸から等距離に配設されている。
【0027】
孔27にはボルト28が、フランジ23から突出するように挿入されている。なお、図3(a)(b)では図示の便宜上、ボルト28は2本だけ示している。ボルト28において各フランジ23、23から突き出た突出部にはナット29が締め付けられ、それによってフランジ23、23が互いに固定される。図4中20はフランジ23の流路であり、配管22の流路に接続される。非ウエハタイプの接続構造としては、フランジ23、23間に1つのガスケット25が介設される他は、ウエハタイプの接続構造と同様である。
【0028】
そして、プラント設計支援システム1では、プラント10を設計するにあたり設計者が後述の記憶部に記憶されている構成要素の種別と、属性データに対応した規格コードとを選択する。さらに選択した種別の構成要素について3次元CAD上の空間における位置と、向きと、周囲の構成要素とどのように接続されているかという接続情報と、を設定することにより、プラント10の3Dモデルをコンピュータの画面(表示部57の画面)上で作成する。なお、実際には3DCADによる設計は非常に複雑であるため、この実施形態では簡単に概略のみを述べている。
【0029】
前記構成要素の種別とは、フランジ、配管、ガスケット、足場、手摺り、圧力計、後述の温度計などの部品の種別である。属性データとは、各部の寸法を含む情報であり、ガスケット25の属性データとしては図3で示す当該ガスケット25の厚さGが含まれ、バルブ24の属性データとしては当該バルブ24の厚さAが含まれる。また、フランジ23の属性データとしては、フランジ23の厚さF、フランジ23から突出するボルト28の突出部の長さN、当該フランジ23に使用されるボルト28の直径S及びフランジ23に対して同心円状に配置されるボルト28の取り付け孔27の配置情報についてのデータが含まれている。ここで、取り付け孔27の配置情報とは、フランジ23の中心を中心とし、取り付け孔27の中心を周にとる直径Rであり、図4(a)に点線で示している。
【0030】
プラント10の設計後、設計者がシステム1に含まれる入力部56から所定の操作を行うと、各配管の接続箇所についてフランジ23の厚さF、ガスケット25の厚さG、バルブ24の厚さA、ボルト28の突出部の長さN、ボルト28の径S及び前記円の直径Rに応じて、ボルト28の引き抜きに要する領域の座標が自動で計算され、図5(a)、図5(b)に示すように、前記表示部57の画面に円筒体であるボルトの引き抜き領域31の3Dモデルが、プラント10の3Dモデルに重ね合わされて表示される。この図5ではボルトの引き抜き領域31を実線で示し、当該ボルトの引き抜き領域31の周囲のプラント10を構成する構成要素を点線で示している。
【0031】
図6(a)、(b)にはウエハタイプのフランジ接続構造におけるボルト引き抜き領域31の側面図、正面図を夫々示している。この図6では図示の便宜上ボルトの引き抜き領域31に多数の点を付して示しており、ボルト28及びナット29の図示は省略している。この引き抜き領域31は一のフランジ23(23a)から、その厚さ方向に伸びる円筒状の領域であり、この伸びる方向は一のフランジ23(23a)に対向するフランジ23(23b)の位置する方向とは逆方向である。引き抜き領域31の軸はフランジ23の軸と重なっている。引き抜き領域31の長さは、図3(a)(b)に示すボルト28の長さLであり、引き抜き領域31の厚さはボルト28の径Sに相当する。
【0032】
また、図6(b)に示すようにボルトの引き抜き領域31は、フランジ23の周方向に配列された各孔27に内接する円の直径を内径、各孔27に外接する円の直径を外径とする円筒体であり、孔27に重なるように形成される。つまり、この引き抜き領域31は、ボルト28をフランジ23の中心軸を中心として回転させて得られる円筒状の領域である。
【0033】
そして、プラント設計支援システム1は、計算されたボルトの引き抜き領域31とプラント10の各構成要素の領域と、に基づいて、当該引き抜き領域31とプラント10の各構成要素との干渉を自動でチェックし、干渉を起こしている箇所についてはその箇所についてのデータを前記表示部57の画面にリストアップする。また、前記画面において、前記構成要素と干渉を起こしていると判定された引き抜き領域31については、その干渉している部分を、干渉を起こしていない部分の色と区別して表示して、識別を容易にする。具体的には例えば前記干渉を起こしている部分の明度を高くして表示する。
【0034】
続いてプラント設計支援システム1の構成について図7を参照しながら説明する。プラント設計支援システム1は、コンピュータにより構成され、第1の記憶部41、第2の記憶部42、プログラム記憶部52、入力部56、表示部57及びCPU58を備えている。図中59はバスである。前記入力部56は、キーボードやマウスなどが相当する。表示部57は、CRTや液晶からなる画面を有するディスプレイである。CPU58は、プログラム記憶部52のプログラムを読み出し、プラント設計支援システム1を制御する。
【0035】
第1の記憶部41には、プラント全体について3次元モデルを構成するためのデータ(3次元データ)が格納されている。具体的には表示される機器、部材などの全構成要素の各々について位置情報が記憶されている。図7では配管構造部分についてその一部を模式的に示している。位置情報とは構成要素の3次元空間の位置、配置の向き及び当該構成要素に接続される他の構成要素などの情報であるが、配管についてはどこでどの方向に曲がるかといった情報やその長さについての情報も含まれる。このように図7では便宜上、「位置情報」と記載してあるが、実際には構成要素の属性データの一部も含まれる。また、構成要素毎に既述の規格コードが書き込まれている。なお、第1の記憶部41に記憶される情報は、実際には極めて複雑であるため、図7では簡略化したイメージを示している。
【0036】
第2の記憶部42はプラント10の各構成要素の種別毎に規格情報が規格コードと対応付けた属性データとしてテーブル42aに格納されている。属性データは配管であれば、外径、肉厚、材質等であり、フランジであれば、形状、軸方向の厚さ、外径、孔27の配置情報(各孔27の中心を通る円の直径R)、ボルト孔の径、ボルトの突出長さ、材質などが書き込まれる。なお、ボルトの突出長さとは、互いに対向するフランジ23をボルト28で固定したときにフランジ23から突出するボルトの長さである。また、当該フランジがウエハタイプの接続を構成するものであるか、非ウエハタイプの接続を構成するものであるか、という情報もフランジの属性データとしてテーブル42aに書き込まれている。
【0037】
図7の例では構成要素として配管、フランジ、ガスケットが模式的に例示されているが、その他圧力計、温度計などが挙げられる。構成要素の種別としては「配管」であっても外径や肉厚が異なるものについては別の規格となり、「フランジ」であっても外径や形状が異なるものについては別の規格となる。また、これらテーブル42aの各々には規格コードが付されている。この規格コードは各構成要素の規格を特定するもの、つまり各テーブル42aを特定するものであり、次に述べる第1の記憶部41内の構成要素から、当該第2の記憶部42内のテーブル42aを介して属性を求めるときに検索のキーとなるコードである。
【0038】
従って、構成要素をコンピュータ画面(表示部57)に表示するにあたっては、例えばアドレスに沿って順次第1の記憶部41内の構成要素の位置情報及び規格コードを読み出すと共に、第2の記憶部42内のテーブル42aから当該規格コードに対応する属性データを読み出し、これら位置情報と、属性データ(第1の記憶部41内の属性データの一部も含む)と、に基づいて画面に構成要素を表示する。こうして例えば配管構造が画面の3次元空間に描き出されていく。
【0039】
プログラム記憶部52には表示用プログラム53、引き抜き領域設定プログラム54、判断手段である干渉判定プログラム55が記憶されている。これらプログラム54、55が、配管構造物の設計支援ソフトウエアを構成する。表示用プログラム53は、第1の記憶部41内の構成要素に関する位置情報及び属性データを読み出すと共に当該構成要素に関する第2の記憶部42内の属性データを、第2の記憶部42内の規格コードを介して読み出して、当該構成要素を表示部57上に3次元画像として表示し、こうして順次構成要素に対して表示処理を行って表示部57上に例えば配管構造全体を表示するようにステップ群が構成される。また、この実施形態では、表示用プログラム53は、各構成要素を表示部57に表示するプログラムと、ボルトの引き抜き領域31を表示すると共に、既述したように当該引き抜き領域31とプラント10の構成要素とが干渉する場合には、干渉する部分を他の部分と区別して表示するプログラムとを備えている。
【0040】
引き抜き領域設定プログラム54は、既述のボルトの引き抜き領域31を3次元空間上に設定するためのプログラムである。このプログラム54を構成する複数のステップ群のうち、この例では後述の図8のステップS1〜S6が特許請求の範囲の第1のステップに相当し、同図のステップS7、S8が第2のステップに相当する。第1のステップ及び第2のステップには実際のプログラムでは複数のステップ群が含まれるが、用語の便宜上、第1(第2)の「ステップ」と記載する。また、第1のステップと、この第1のステップを読み出すCPU58とが特許請求の範囲の第1の手段に相当し、第2のステップとこの第2のステップを読み出すCPU58とが第2の手段に相当する。干渉判定プログラム55は、ボルトの引き抜き領域31と、プラント10の各構成要素との干渉をチェックし、その結果を表示部57に表示するためのプログラムである。
【0041】
続いて、このプラント設計支援システム1で行われるボルトの干渉チェックの流れについて、図8のフローを参照して説明する。今、配管構造を含むプラント全体の3次元CADの設計データが作成されて、第1の記憶部41及び第2の記憶部42内にデータが格納されているものとし、オペレータが入力部56によりボルトの引き抜き領域31の干渉チェックの処理開始を入力したものとする。
【0042】
引き抜き領域設定プログラム54は、第1の記憶部41のデータの中から、構成要素の種別がフランジであるデータを例えばアドレス順に検索し、各フランジ23に関する規格コード、位置情報についてのデータを取得する(ステップS1)。次に、例えばステップS1で読み込んだ順に、各フランジ23に関する規格情報を先に読み込んだ規格コードに対応付けて第2の記憶部42に記憶されているテーブル42aより取得する(ステップS2)。なお、このステップは一例であり、フランジ23について位置情報を取得するときに、併せて規格コードを介して第2の記憶部42から属性データを取得して、図示しないワークメモリに順次位置情報及び属性データを対応付けて書き込むようにしてもよい。
【0043】
続いて、例えば同じくステップS1で読み込んだ順に、各フランジ23が通常のフランジ接続か、ウエハタイプの接続であるかをステップS2で読み込んだ規格情報の属性データに基づいて判定する(ステップS3)。ステップS3で、一のフランジ23がウエハタイプであると判定した場合、当該一のフランジ23と対向する他のフランジ23との間に挟まれるガスケット25以外の介在物、例えばバルブ24のバルブ厚さ等の属性情報を第2の記憶部42より取得する(ステップS4)。なお、ここではガスケット25、25間における介在物がバルブ24であるものとして説明しているが、オリフィスなどの他の構成要素であっても同様にその厚さが取得される。
【0044】
更に前記フランジ23とバルブ24との間に介在するガスケット25に関する属性データと、前記フランジ23と対向する他のフランジ23とバルブ24との間に介在するガスケット25に関する属性データとを同様にして取得する(ステップS5)。こうしてフランジ23の接続構造に係る各部品の仕様、位置、向きが取得されたことから、以下のようにしてボルトの引き抜き領域31が設定される。
【0045】
抽出した各属性データに含まれる一のフランジ23の厚さF、一のフランジ23からのボルトの突出長さN、一のフランジ23とバルブ24との間に挟まれるガスケット25の厚さG、バルブ24の厚さA、他のフランジ23の厚さF’、他のフランジ23からのボルトの突出長さN’、他のフランジ23とバルブ24との間に挟まれるガスケット25の厚さG’が合計される。つまりN+F+G+A+G’+F’+N’が演算され、その演算結果をそのフランジ23に用いられるボルト28の長さL、すなわち既述の円筒体である引き抜き領域31の長さとして決定する(ステップS6)
【0046】
このボルトの長さ(引き抜き領域の長さ)Lと、円筒体であるボルトの引き抜き領域31の厚さに相当するボルト28の直径Sと、フランジ23の各孔27の中心を通る円の直径R、つまり円筒体の中心軸からその厚さの中心までの長さを2倍したものと、フランジ23の三次元位置及び配置情報とから、このボルトの引き抜き領域31の形状及び座標が決定される(ステップS7)。ここで決定されるボルトの引き抜き領域31の座標は、例えばボルトの引き抜き領域31の基端側(フランジ23側)で、円筒体の中心軸との交点となる点で代表される。
【0047】
このようにボルトの引き抜き領域31の座標と形状とが決定されることにより、ボルトの引き抜き領域31が3次元空間に占める領域(占有領域)が決定される。そして、ボルトの引き抜き領域31の占有領域が決定されると、3次元空間において当該ボルトの引き抜き領域31がプラント10に重畳されるようにデータ処理が行われ、図5で示したようにボルトの引き抜き領域31の3Dモデルが、プラントの3Dモデルが表示されている表示部57の画面のウインドウに、当該プラントの3Dモデルに重ね合わされて表示される(ステップS8)。
【0048】
前記ボルトの引き抜き領域31の占有領域について決定した後、干渉判定プログラム55が、例えば第1の記憶部41のアドレス順に、当該第1の記憶部41に記憶される規格コード及び位置情報を読み出し、さらに第2の記憶部42から前記規格コードに対応付けられた属性データを読み出して、前記位置情報と属性データとからプラントの全ての構成要素についてその占有領域を算出する。
【0049】
そして、算出した構成要素の占有領域についてボルトの引き抜き領域31である円筒体の占有領域と重なるかどうかを判定する。占有領域が重なると判定された場合には、当該構成要素とボルトの引き抜き領域31とが干渉すると判定され、さらに干渉領域が既述のように画面上で、明度を高くしていわゆるハイライト表示される。互いの占有領域が重ならないと判定された場合には、そのボルトの引き抜き領域31について構成要素と干渉しないと判定される(ステップS9)。
【0050】
一方、ステップS3で当該接続が通常のフランジ接続であると判定された場合にはステップS4が行われず、ステップS5以降のステップが実施される。通常のフランジ接続ではフランジ23、23間にはガスケット25が一つ挟まれるだけであり、ステップS5ではこのガスケットの属性データであるガスケット厚みが抽出される。そして、ステップS6では、一のフランジ23の厚さF、一のフランジ23からのボルトの突出長さN、前記ガスケット25の厚さG、他のフランジ23の厚さF’、他のフランジ23からのボルトの突出長さN’が合計され、この演算結果がボルトの長さLとして決定される。
【0051】
このようにステップS3〜S9が繰り返し実施され、全てのフランジ23についてボルトの引き抜き領域31の3Dモデルの形成及び前記引き抜き領域31の干渉の判定が行われると、干渉判定プログラム55が、表示部57の画面にプラント10及び引き抜き領域31の3Dモデルを表示するウインドウ12とは異なるリスト表示用のウインドウ13を生成する。そして、このリスト表示用ウインドウ13にフランジ23の位置情報等を示したリスト14を表示し、干渉を起こすと判定されたボルトの引き抜き領域31に対応するフランジ23については、前記リスト14中に、干渉が起きる旨の表示がなされる(ステップS10)。図9には、このように表示されるリスト14の概略を示している。
【0052】
オペレータは、前記リスト14及び引き抜き領域31の3Dモデルの色表示に基づいてプラントの構成要素の配置を調整したり、構成要素の仕様を変更するなどして、プラントの再設計を行う。然る後、繰り返し上記のステップS1〜S10を実行し、ボルトの引き抜き領域31とプラントの構成要素との干渉チェックを行う。
【0053】
この第1の実施形態のプラント設計支援システム1によれば、フランジ23からのボルト28の引き抜き領域31の大きさを当該システム1が自動で決定し、その引き抜き領域31とフランジ23の周囲の構成要素との干渉チェックが自動で行われ、そのチェック結果が画面に表示される。従って人力で前記干渉チェックを行う場合と比較して、オペレータの作業負担を軽減し、チェック漏れを防ぐことができる。そして、そのチェック漏れによるプラントのメンテナンス時の作業工程の増大を防ぐことができる。なお、この実施形態ではボルト28の長さ=ボルトの引き抜き領域31の長さとしているが、引き抜き作業を容易にするために上記のステップS6で演算されるボルトの長さに所定のマージンを加えたものを引き抜き領域31の長さとしてもよい。
【0054】
(第2の実施形態)
続いて第2の実施形態に係るプラント設計支援システムについて、第1の実施形態のプラント設計支援システム1との差異点を中心に説明する。このプラント設計支援システムは、ボルト28の引き抜き領域31の代わりに温度計71の引き抜き領域60の3次元空間における占有領域を自動で演算する。そして、プラント設計支援システムは、その引き抜き領域60の3Dモデルを作成して、第1の実施形態と同様にプラント10の3Dモデルに重ね合わせて表示し、この引き抜き領域60と、プラント10の構成要素との干渉をチェックする。
【0055】
図10(a)(b)には温度計71の側面図、正面図を示しており、図11(a)(b)にはこの温度計71に対応する引き抜き領域60の側面図、正面図を示している。温度計71は、背景技術の項目で説明したように構成要素内に挿入されるウェルと呼ばれる棒状の挿入部72と、挿入部72の延長上に設けられ、前記構成要素から突出した突出部73とを備えている。前記温度計の引き抜き領域60は、温度計71が設けられる構成要素において、その突出部73が設けられる箇所から、当該温度計71の伸長方向に向けて伸びる円柱状の領域である。温度計の引き抜き領域60の長さL2は温度計71の長さであり、引き抜き領域60の直径の大きさR2は、突出部73のうち最も径の大きな部位の直径の大きさと等しい。
【0056】
この第2の実施形態のプラント設計支援システムは、第1の実施形態のプラント設計支援システム1と略同様に構成されており、第2の記憶部42において温度計71の属性データとしては、図10に示す突出部73の直径の大きさR2、突出部73の長さL3が含まれる。しかし挿入部72の長さL4は計測対象により規定されるものであり、前記属性データには含まれておらず、オペレータがプラント設計時に付帯情報として設定する。この付帯情報については位置情報と共に規格コードに対応付けられて第1の記憶部41に記憶される。
【0057】
続いて、このプラント設計支援システムによる温度計の引き抜き領域60とプラントの構成要素との干渉チェックの手順について第1の実施形態との差異点を中心に図12を参照しながら説明する。プラントの3次元CADの設計データ作成後、オペレータが入力部56により干渉チェックの開始処理の操作を行うと、引き抜き領域設定プログラム54は、第1の記憶部41のデータの中から、構成要素の種別が温度計であるデータを例えばアドレス順に検索し、各温度計71に関する規格コード、位置情報及び付帯情報についてのデータを取得する(ステップT1)。温度計71に関する前記データを全て抽出すると、取得した規格コードに基づいて、第2の記憶部42に記憶されているテーブル42a群からその規格コードに対応するテーブル42aに書き込まれている温度計71の属性データを取得する(ステップT2)。
【0058】
こうして、温度計71の仕様、位置、向きについて取得した後、突出部73の長さL3と、挿入部72の長さL4とを合計し、温度計71の長さL2を演算し、温度計71の長さL2と、突出部73のうち最も径の大きな部位の直径R2と、取得された位置情報に含まれる温度計71の位置及び向きから引き抜き領域60の形状及び座標について決定する(ステップT3)。ここでの座標は、例えば引き抜き領域60の基端側(温度計71が設けられる構成要素側)で、円柱体の中心軸との交点となる点で代表される。
【0059】
そして、このように形状及び座標が決定されると、3次元空間における引き抜き領域60の占有領域が決定される。そして、温度計の引き抜き領域60の占有領域が決定されると、3次元空間において当該温度計の引き抜き領域60がプラント10に重畳されるようにデータ処理が行われ、引き抜き領域60の3Dモデルが、既述のようにプラント10の3Dモデルに重ね合わされて表示部57に表示される(ステップT4)。
【0060】
その後、第1の実施形態のステップS9と同様に引き抜き領域60の占有領域とプラント10の構成要素の占有領域とに基づいて、引き抜き領域60とプラント10との干渉がチェックされる(ステップT5)。そして、第1の実施形態のステップS10と同様に、引き抜き領域60について干渉を起こす箇所については明度を高くして表示し、さらに各温度計71について干渉の有無を表示したリストが表示部57に表示される(ステップT6)。
【0061】
この第2の実施形態においても、引き抜き領域60の大きさをプラント設計支援システムが自動で決定し、その引き抜き領域60とプラントの構成要素との干渉チェックが自動で行われるので、人力で前記干渉チェックを行う場合と比較して、設計者の作業負担を軽減し、チェック漏れを防ぐことができる。そして、そのチェック漏れによるプラント10のメンテナンス時の作業工程の増大を防ぐことができる。これらの第1及び第2の実施形態は互いに組み合わせて、一つのシステムで温度計の引き抜き領域及びボルトの引き抜き領域と、プラントの構成要素との干渉がチェックできるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 プラント設計支援システム
10 プラント
22 配管
23 フランジ
24 バルブ
25 ガスケット
27 孔
28 ボルト
31 ボルトの引き抜き領域
41 第1の記憶部
42 第2の記憶部
54 引き抜き領域設定プログラム
55 干渉判定プログラム
57 表示部
60 温度計の引き抜き領域
71 温度計
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管構造物を3次元CADにより設計するときの支援システムにおいて、
配管構造物の構成要素ごとに、構成要素の空間上の位置、配置の向き及び寸法を含む3次元データが記憶され、構成要素の一つであるフランジについては、更にボルトの突出長さがその属性データとして含まれる記憶部と
この記憶部から、互に対向してボルトにより連結されるフランジの3次元の位置、配置の向き、寸法及びボルトの突出長さを含む属性データを求めると共にこれらフランジの間に介在する介在物の厚さ寸法を求める第1の手段と、
この手段で得られた結果に基づいて、前記互に対向するフランジ間を連結するボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域を3次元空間上で求める第2の手段と、
前記引き抜き領域と配管構造物との干渉の有無を判断する判断手段と、を備えたことを特徴とする配管構造物の設計支援システム。
【請求項2】
前記記憶部は、
配管構造物の構成要素ごとに、3次元の位置、配置の向き及び構成要素を特定する規格コードが対応付けられて3次元データとして記憶されている第1の記憶部と、
前記規格コードに対応する構成要素の少なくとも寸法を含む属性データを当該規格コードと対応付けて記憶する第2の記憶部と、を備え、
前記第1の手段は、
前記第1の記憶部の3次元データから、互に対向してボルトにより連結されるフランジの3次元の位置、配置の向きを求めると共に当該フランジの規格コードを読み出し、この規格コードに基づいて第2の記憶部からフランジの属性データを読み出す機能と、
前記第1の記憶部の3次元データから、前記互に対向するフランジの間に介在する介在物の規格コードを読み出し、この規格コードに基づいて第2の記憶部から前記介在物の属性データを読み出す機能と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の配管構造物の設計支援システム。
【請求項3】
前記第2の手段は、ボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域をフランジの中心軸を中心として回転させて得られる円筒体のデータとして求め、配管構造物の3次元形状に前記円筒体を重畳する機能を備え、
前記判断手段は、前記円筒体と配管構造物との干渉の有無を判断することを特徴とする請求項1または2記載の配管構造物の設計支援システム。
【請求項4】
前記判断手段は、前記円筒体と配管構造物とが干渉している領域を他の領域と区別して3次元画面に表示する機能を備えている請求項3記載の配管構造物の設計支援システム。
【請求項5】
配管構造物を3次元CADにより設計するときの支援ソフトウエアにおいて、
配管構造物の構成要素ごとに、3次元空間上の位置、配置の向き及び寸法が3次元データとして記憶され、
構成要素の一つであるフランジについては更にボルトの突出長さがその属性データとして記憶されている記憶部から、互に対向してボルトにより連結されるフランジの3次元の位置、配置の向き、寸法及びボルトの突出長さを含む属性データを求めると共にこれらフランジの間に介在する介在物の厚さ寸法を求める第1のステップと、
このステップで得られた結果に基づいて、前記互に対向するフランジ間を連結するボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域を3次元空間上で求める第2のステップと、
前記引き抜き領域と配管構造物との干渉の有無を判断する判断ステップと、を備えたことを特徴とする配管構造物の設計支援ソフトウエア。
【請求項6】
前記第2のステップは、ボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域をフランジの中心軸を中心として回転させて得られる円筒体のデータとして求め、配管構造物の3次元形状に前記円筒体を重畳するステップを含み、
前記判断ステップは、前記円筒体と配管構造物との干渉の有無を判断するステップであることを特徴とする請求項5記載の配管構造物の設計支援ソフトウエア。
【請求項7】
前記判断ステップは、前記円筒体と配管構造物とが干渉している領域を他の領域と区別して3次元画面に表示するステップを備えている請求項5または6記載の配管構造物の設計支援ソフトウエア。
【請求項1】
配管構造物を3次元CADにより設計するときの支援システムにおいて、
配管構造物の構成要素ごとに、構成要素の空間上の位置、配置の向き及び寸法を含む3次元データが記憶され、構成要素の一つであるフランジについては、更にボルトの突出長さがその属性データとして含まれる記憶部と
この記憶部から、互に対向してボルトにより連結されるフランジの3次元の位置、配置の向き、寸法及びボルトの突出長さを含む属性データを求めると共にこれらフランジの間に介在する介在物の厚さ寸法を求める第1の手段と、
この手段で得られた結果に基づいて、前記互に対向するフランジ間を連結するボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域を3次元空間上で求める第2の手段と、
前記引き抜き領域と配管構造物との干渉の有無を判断する判断手段と、を備えたことを特徴とする配管構造物の設計支援システム。
【請求項2】
前記記憶部は、
配管構造物の構成要素ごとに、3次元の位置、配置の向き及び構成要素を特定する規格コードが対応付けられて3次元データとして記憶されている第1の記憶部と、
前記規格コードに対応する構成要素の少なくとも寸法を含む属性データを当該規格コードと対応付けて記憶する第2の記憶部と、を備え、
前記第1の手段は、
前記第1の記憶部の3次元データから、互に対向してボルトにより連結されるフランジの3次元の位置、配置の向きを求めると共に当該フランジの規格コードを読み出し、この規格コードに基づいて第2の記憶部からフランジの属性データを読み出す機能と、
前記第1の記憶部の3次元データから、前記互に対向するフランジの間に介在する介在物の規格コードを読み出し、この規格コードに基づいて第2の記憶部から前記介在物の属性データを読み出す機能と、を備えていることを特徴とする請求項1記載の配管構造物の設計支援システム。
【請求項3】
前記第2の手段は、ボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域をフランジの中心軸を中心として回転させて得られる円筒体のデータとして求め、配管構造物の3次元形状に前記円筒体を重畳する機能を備え、
前記判断手段は、前記円筒体と配管構造物との干渉の有無を判断することを特徴とする請求項1または2記載の配管構造物の設計支援システム。
【請求項4】
前記判断手段は、前記円筒体と配管構造物とが干渉している領域を他の領域と区別して3次元画面に表示する機能を備えている請求項3記載の配管構造物の設計支援システム。
【請求項5】
配管構造物を3次元CADにより設計するときの支援ソフトウエアにおいて、
配管構造物の構成要素ごとに、3次元空間上の位置、配置の向き及び寸法が3次元データとして記憶され、
構成要素の一つであるフランジについては更にボルトの突出長さがその属性データとして記憶されている記憶部から、互に対向してボルトにより連結されるフランジの3次元の位置、配置の向き、寸法及びボルトの突出長さを含む属性データを求めると共にこれらフランジの間に介在する介在物の厚さ寸法を求める第1のステップと、
このステップで得られた結果に基づいて、前記互に対向するフランジ間を連結するボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域を3次元空間上で求める第2のステップと、
前記引き抜き領域と配管構造物との干渉の有無を判断する判断ステップと、を備えたことを特徴とする配管構造物の設計支援ソフトウエア。
【請求項6】
前記第2のステップは、ボルトを当該フランジ間から引き抜くために必要な引き抜き領域をフランジの中心軸を中心として回転させて得られる円筒体のデータとして求め、配管構造物の3次元形状に前記円筒体を重畳するステップを含み、
前記判断ステップは、前記円筒体と配管構造物との干渉の有無を判断するステップであることを特徴とする請求項5記載の配管構造物の設計支援ソフトウエア。
【請求項7】
前記判断ステップは、前記円筒体と配管構造物とが干渉している領域を他の領域と区別して3次元画面に表示するステップを備えている請求項5または6記載の配管構造物の設計支援ソフトウエア。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−134107(P2011−134107A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293060(P2009−293060)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【特許番号】特許第4524332号(P4524332)
【特許公報発行日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【特許番号】特許第4524332号(P4524332)
【特許公報発行日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000004411)日揮株式会社 (94)
【Fターム(参考)】
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