説明

配線基板の製造方法

【課題】配線パターンの密度の影響を受けにくく従来より均一なエッチングが行え、しかもダミーパターンの残存による問題を防止することができる配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】基板表面の導電膜層4にレジストパターン11を形成した後、エッチングを行って所定の配線パターン12を形成する工程を含む配線基板の製造方法において、レジストパターン11としてエッチング後に導電膜層4が消滅するようなダミーレジストパターン1を配線パターン12の粗な部分に追加形成しておき、前記ダミーレジストパターン1が形成された部分の導電膜層2をエッチング時に消滅させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板表面の導電膜層にレジストパターンを形成した後、エッチングを行って所定の配線パターンを形成する配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、少なくとも片面に銅箔等の導電膜層が設けられた基板に対して、前記導電膜層上にレジスト膜を形成した後にエッチングを行い、この導電膜層を所定の配線パターンに形成する配線基板の製造方法が知られている。その際、エッチングは、導電膜層の深さ方向に進行するだけでなく、配線パターンを構成する線路の幅方向にも進行する(サイドエッチング)。このため、エッチングによって形成した配線パターンの線幅は、レジスト膜のパターン幅よりも細くなる。
【0003】
従来の配線基板の製造方法においては、配線パターンを所望の線幅にするため、所望の線幅よりも太くしたパターン形状のレジスト膜を形成してエッチングを行っていた。しかし、配線パターンの密度が異なる部分では、エッチング速度も異なるため、エッチング後のサイドエッチング量(アンダーカット)が、得られる配線パターンの場所によって相違する。
【0004】
例えば、図4(b)に示すように、配線パターン12の密度が部分的に相違する場合、図4(a)に示すような同一幅のレジストパターン11で配線パターン12を形成しようとすると、密度が粗な部分でサイドエッチングが大きく進行し、粗な部分の配線パターン12bが、密な部分の配線パターン12aの線幅よりも細くなってしまうという問題があった。
【0005】
従って、従来は、粗な部分のレジストパターン11bを、密な部分のレジストパターン11aより太らせることで対応していた。しかし、近年の配線パターンのファイン化(例えば150μmピッチ以下)によって、レジストパターン11を太くするのが困難となり、特に、粗な部分のみを選択的に太くするのが煩雑かつ困難になってきた。
【0006】
一方、配線パターンのサイドエッチングによる問題を抑制するために、ダミーパターンを設ける方法も知られている。例えば、下記の特許文献1には、ランドの先端部がサイドエッチングにより浸食されてランドが小さくなるのを防止する目的で、ランドの先端部にダミーパターンを付加する方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、本来の配線パターンに加えてダミーパターンが残存すると、ダミーパターンの影響によって配線基板の高周波特性が変化するといった問題が生じ易い。
【0008】
【特許文献1】特開平6−69638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、配線パターンの密度の影響を受けにくく従来より均一なエッチングが行え、しかもダミーパターンの残存による問題を防止することができる配線基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の配線基板の製造方法は、基板表面の導電膜層にレジストパターンを形成した後、エッチングを行って所定の配線パターンを形成する工程を含む配線基板の製造方法において、前記レジストパターンとしてエッチング後に導電膜層が消滅するようなダミーレジストパターンを配線パターンの粗な部分に追加形成しておき、前記ダミーレジストパターンが形成された部分の導電膜層をエッチング時に消滅させることを特徴とする。
【0011】
本発明の配線基板の製造方法によると、ダミーレジストパターンを配線パターンの粗な部分に追加形成するため、エッチング時に浸食される導電膜層の分布を均一化することができる。このため、エッチング速度がより均一になり、サイドエッチング量を均一化できる結果、配線パターンの密度の影響を受けにくく、従来より均一なエッチングが行えるようになる。また、ダミーパターンが形成された部分の導電膜層をエッチング時に消滅させるため、ダミーパターンの残存による問題を防止することができる。
【0012】
上記において、前記ダミーレジストパターンは、小径のドットパターン又は細線パターンであることが好ましい。ここで、ドットパターンとはドット形状がアスペクト比3以下のドットからなるパターンを指す。小径のドットパターンでは、エッチング時にドットの周囲からサイドエッチングが進行して、ダミーレジストパターンが剥離して最終的に導電膜層を消滅させることができるが、その過程において浸食される導電膜層の分布を均一化する作用がある。また、細線パターンの場合も同様に、両側からサイドエッチングが進行して、最終的に導電膜層を消滅させることができるが、その過程において浸食される導電膜層の分布を均一化する作用がある。
【0013】
また、前記ダミーレジストパターンは、直径相当径が10〜30μmのドットを多数形成したドットパターンであることが好ましい。ここで、直径相当径とは、ドットが円形以外の形状の場合に、周長が同じ長さの円形に近似した場合の円形の直径を指す。これによって、下層の導電膜層をより確実にエッチング後に消滅させることができ、その過程において浸食される導電膜層の分布をより均一化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1〜図2は、本発明の配線基板の製造方法の一例を示す工程図である。
【0015】
本発明の配線基板の製造方法は、図2に示すように、基板表面の導電膜層4にレジストパターン11を形成した後、エッチングを行って所定の配線パターン12を形成する工程を含むものである。配線基板としては、このようなエッチング工程を製造工程として含むものであれば何れでもよく、片面配線基板の他、両面配線基板、多層配線基板、フレキシブル配線基板などでもよい。従って、導電膜層4は基板の両面に成形されていてもよい。
【0016】
本発明は、このような配線基板の製造方法において、図1〜図2に示すように、レジストパターン11としてエッチング後に導電膜層4が消滅するようなダミーレジストパターン1を配線パターン12の粗な部分に追加形成しておき、前記ダミーレジストパターン1が形成された部分の導電膜層2をエッチング時に消滅させることを特徴とする。本実施形態では、ダミーレジストパターン1が小径のドットパターンである例を示す。
【0017】
まず、図2(a)に示すように、絶縁基材3の表面に導電膜層4を有する積層板を用意する。絶縁基材3としては、例えばエポキシ樹脂、フェーノール樹脂、ポリイミド樹脂からなる絶縁膜や、これらの樹脂等をガラス繊維布等に含浸したプリプレグの硬化物、ポリイミドフィルムやポリエステルフィルム等が使用される。
【0018】
導電膜層4としては、例えば銅、銅合金、アルミニウム、ニッケル、銀などの金属が使用される。導電膜層4は、絶縁基材3との熱圧着やメッキ等によって形成することができる。導電膜層4の厚みは、ダミーレジストパターン1による効果を効率良く得る上で、10〜200μmが好ましく、15〜70μmがより好ましい。
【0019】
次いで、図2(b)に示すように、基板表面の導電膜層4にレジストパターン11を形成するが、その際、エッチング後に導電膜層4が消滅するようなダミーレジストパターン1を配線パターン12の粗な部分に追加形成しておく。本実施形態では、図1(a)に示す配線パターン12の形成を目的とするため、図1(b)に示すように、配線パターン12の粗な部分にドットパターン状にダミーレジストパターン1を形成する。
【0020】
レジストパターン11は、配線パターン12の密な部分のレジストパターン11a、粗な部分のレジストパターン11b、ダミーレジストパターン1からなる。レジストパターン11a、11bは、配線パターン12より若干太い幅で形成される。
【0021】
レジストパターン11の形成方法は、何れでもよいが、例えばドライフィルムレジスト、液状感光性樹脂、印刷インク、などを用いて行うことができる。ドライフィルムレジストを用いる場合、ドライフィルムレジストをラミネートした後、所定のパターンで露光、現像することにより、所望のレジストパターン11が形成される。
【0022】
ドットパターンのドット形状としては、円形に限らず、楕円、正方形、長方形、その他の多角形が挙げられる。ドットパターン状にダミーレジストパターン1を形成する場合、直径相当径が10〜30μmのドットを多数形成することが好ましい。その際、ドットを形成するピッチとしては、20〜100μmが好ましい。このピッチが小さすぎると、ダミーレジストパターン1が形成された部分の導電膜層2をエッチング時に消滅させるのが困難になる傾向がある。逆に上記ピッチが大きすぎると、エッチング速度を均一してサイドエッチング量を均一化する効果が小さくなる傾向がある。
【0023】
次いで、図2(c)〜(d)に示すように、導電膜層4のエッチングを行うが、その際にダミーレジストパターン1が形成された部分の導電膜層2を消滅させる。エッチングの前半では、図2(c)に示すように、レジストパターン11により裾の広がった配線パターン12が形成されると共に、ダミーレジストパターン1が形成された部分の導電膜層2が残存した状態となる。エッチングの後半では、図2(d)に示すように、配線パターン12のエッチングが完了すると共に、ダミーレジストパターン1が形成された部分の導電膜層2が消滅した状態となる。これらの過程でダミーレジストパターン1は脱落する。
【0024】
ドットパターンの場合、サイドエッチングが全周方向から進行するため、ダミーレジストパターン1が形成された部分の導電膜層2を、より確実にエッチング時に消滅させることができる。
【0025】
エッチングは、導電膜層2の種類に応じたエッチング液が使用され、各種市販のエッチング液を使用することができる。エッチング方法としては、浸漬法、スプレー法(シャワー法を含む)、発泡エッチング法などがあるが、スプレー法の場合に、配線パターンの密度によってサイドエッチング量が変化しやすいため、本発明が特に有効になる。
【0026】
次いで、図2(e)に示すように、レジストパターン11を除去して、配線パターン12を得る。レジストパターン11は、薬剤等で剥離することができる。得られた配線パターン12は、図1(c)に示すように、密度が粗な部分の配線パターン12bと、密な部分の配線パターン12aの線幅が略同一となる。
【0027】
次いで、必要に応じて、各種金属のメッキ工程、ソルダレジストやカバーレイの形成工程を実施してもよい。また、多層配線基板等の場合には、更に配線基板の積層一体化、層間接続構造の形成、上層へのビルドアップなどの工程を更に行うことができる。
【0028】
[他の実施形態]
(1)前述の実施形態では、図1(b)に示すようなパターンで、ダミーレジストパターン1を形成する例を示したが、本発明では、ダミーレジストパターン1の形状や形成位置は特に限定されない。ダミーレジストパターン1としては、小径のドットパターン又は細線パターン、両者の組合せなどが好ましい。
【0029】
例えば図3(a)に示すように、直線状の細線パターンによってダミーレジストパターン1を形成してもよい。細線パターンの場合、ダミーレジストパターン1が形成された部分の導電膜層2をエッチング時により確実に消滅させる観点から、線幅10〜30μmが好ましい。
【0030】
また、図3(b)に示すように、矩形波状の細線パターンによってダミーレジストパターン1を形成してもよい。この場合、エッチング速度を均一してサイドエッチング量を均一化する観点から、横方向の細線のピッチが20〜100μmであることが好ましい。
【0031】
また、図3(c)に示すように、配線パターン12付近のエッチング液の流動状態のみを均一化する目的で、粗な部分のレジストパターン11bの両側と、密な部分のレジストパターン11aの両端パターン11cの両側のみに、ダミーレジストパターン1を形成してもよい。
【0032】
(2)前述の実施形態では、複数の配線パターンが直線状に形成される場合の例を示したが、本発明における配線パターンは、密度の粗な部分と密な部分とを有するものであれば、配線パターンの形状は何れでもよい。但し、本発明の製造方法が特に有効となるのは、配線パターンの線幅が30〜200μmの場合である。
【0033】
(3)前述の実施形態では、複数の配線パターンが直線状に形成されており、各々の配線の線幅を均一にする場合の例を示したが、配線パターンの先端が過度にサイドエッチングされるのを防止する目的で、ダミーレジストパターンを形成してもよい。その場合、図3(c)に示すように、配線パターン12の先端付近(この部分が密度が粗な部分になる)にダミーレジストパターン1aが形成される。図示した例では、ダミーレジストパターン1aがドット状に形成されているが、細線パターンでもよく、また、この細線パターンは、配線パターン12の両側のダミーレジストパターン1と連続していてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の配線基板の製造方法の一例を示す工程図
【図2】本発明の配線基板の製造方法の一例を示す工程図
【図3】本発明におけるダミーレジストパターンの他の例を示す平面図
【図4】従来の配線基板の製造方法を示す工程図
【符号の説明】
【0035】
1 ダミーレジストパターン
2 ダミーレジストパターンが形成された部分の導電膜層
4 導電膜層
11 レジストパターン
12 配線パターン
12a 密な部分の配線パターン
12b 粗な部分の配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板表面の導電膜層にレジストパターンを形成した後、エッチングを行って所定の配線パターンを形成する工程を含む配線基板の製造方法において、
前記レジストパターンとしてエッチング後に導電膜層が消滅するようなダミーレジストパターンを配線パターンの粗な部分に追加形成しておき、前記ダミーレジストパターンが形成された部分の導電膜層をエッチング時に消滅させることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記ダミーレジストパターンは、小径のドットパターン又は細線パターンである請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記ダミーレジストパターンは、直径相当径が10〜30μmのドットを多数形成したドットパターンである請求項1に記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−53237(P2007−53237A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−237340(P2005−237340)
【出願日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(000103220)エルナー株式会社 (48)
【Fターム(参考)】