説明

配線基板及びその製造方法

【課題】正方形に近い小さなスペースしか空いていない場合でも、製造時期に関する情報をコンパクトに簡単に、しかも正確に表示できる配線基板、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも月度表示1,2を含む表示部FPが形成された配線基板において、表示部FPは、略正方形の頂点付近に配される頂点部分1と、四辺付近に配される辺部分2とを含み、頂点部分1の部分的な表示の有無と辺部分2の部分的な表示の有無との組合せによって月度表示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造の月度表示等を含む表示部が形成された配線基板、及びその製造方法に関し、配線基板の製造時期等に関する情報をコンパクトに簡単に、しかも正確に表示する技術として有用である。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気製品に故障が発生した場合の原因究明を容易にすると共に、故障対策の範囲を必要最小限に収めるために、配線基板上には製造年、月等の製造時期が表示されている。このような製造時期の表示は、絶縁性樹脂を用いたインクでその製造年月日を文字通り捺印したり、又は絶縁性樹脂を用いてある種のマークを印刷したり、或は導電性材料である種のマークを形成する等によって行われていた。
【0003】
しかし、近年の配線基板の高密度化に伴い、配線基板上の表示をする場所が少なくなり、その表示面積を縮小化する必要性が生じてきた。このため、従来の表示方法では、微細な文字やマークの形成や判読が困難となってきた。
【0004】
そこで、下記の特許文献1には、所定の図形を作成し、この図形が平面に開口するようなシート状のスクリーンを形成し、配線基板の製造時期、例えば、製造年、月、月の上・中・下旬等に対応する、スクリーンの所定の図形中の特定の位置の開口を閉止して、そのスクリーンを用いて配線基板上にその製造時期をスクリーン印刷する配線基板の製造時表示方法が開示されている。
【0005】
さらに、小さなスペースに対応可能なものとして、下記の特許文献2には、図4に示すように、所定の形状の輪郭内に所定の配列で配置された複数のスポット部10、11を有するパターン図形Fを作成し、このパターン図形Fの各スポット部10、11が平面に開口するようなシート状の印刷用スクリーンを形成し、製造時期に対応する、前記印刷用スクリーンの特定のスポット部10、11の開口を閉止した後、前記印刷用スクリーンを用いて前記パターン図形Fの開口したスポット部10、11を印刷する配線基板の製造時表示方法が開示されている。また、この表示方法では、配線基板の面付数N(後述する)が、中央部分に表示されている。
【0006】
しかしながら、上記公報に記載された従来の表示方法では、各月度に対応するドットを設ける方式なため、表示サイズを十分小さくすることができず、面付数Nの表示サイズ(この大きさは一定以上にする必要がある)を基準として、その10倍以上のスペースが必要であった。このため、近年の配線基板の小型化・高密度化に十分対応できず、上記表示方法では、配線基板上に表示できない場合があった。
【0007】
【特許文献1】特開平8−64991号公報
【特許文献2】特開平10−247771号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の目的は、正方形に近い小さなスペースしか空いていない場合でも、製造時期に関する情報をコンパクトに簡単に、しかも正確に表示できる配線基板、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、下記の如き本発明により達成できる。
即ち、本発明の配線基板は、少なくとも月度表示を含む表示部が形成された配線基板において、前記表示部は、略正方形の頂点付近に配される頂点部分と、四辺付近に配される辺部分とを含み、前記頂点部分の部分的な表示の有無と前記辺部分の部分的な表示の有無との組合せによって前記月度表示が行われていることを特徴とする。
【0010】
本発明の配線基板によると、略正方形状に配される頂点部分と辺部分の部分的な表示の有無の組合せによって月度表示が行われているため、正方形に近い小さなスペースしか空いていない場合でも、製造時期に関する情報をコンパクトに表示できる。その際、頂点部分と辺部分の部分的な表示の有無を利用するため表示が簡単になり、しかも組合せが12通り以上となるため、製造月度を正確に表示することができる。
【0011】
上記において、前記表示部は、前記頂点部分及び前記辺部分に囲まれた領域に、面付数及び/又は月度内時期の表示を有することが好ましい。これにより、表示部の領域の面積を増加させずに、面付数及び/又は月度内時期の表示を更に行うことができる。
【0012】
また、前記頂点部分のうち、2つを前記月度表示に使用し、残りを他の情報の表示に使用することが好ましい。この構成により、他の情報として、ライン方向、ライン区分、半製品である旨、製品仕上げなどの情報を更に付加することができる。
【0013】
一方、本発明の配線基板の製造方法は、少なくとも月度表示を含む表示部を形成する工程を有する配線基板の製造方法において、前記表示部は、略正方形の頂点付近に配される頂点部分と、四辺付近に配される辺部分とを含み、前記頂点部分の部分的な表示の有無と前記辺部分の部分的な表示の有無との組合せによって前記月度表示を行う工程を有することを特徴とする。
【0014】
本発明の配線基板の製造方法によると、略正方形状に配される頂点部分と辺部分の部分的な表示の有無の組合せによって月度表示が行われているため、正方形に近い小さなスペースしか空いていない場合でも、製造時期に関する情報をコンパクトに表示できる。その際、頂点部分と辺部分の部分的な表示の有無を利用するため表示が簡単になり、しかも組合せが12通り以上となるため、製造月度を正確に表示することができる。
【0015】
上記において、前記表示部を形成する工程で、略正方形の頂点付近に配される頂点部分と、四辺付近に配される辺部分とが開口する印刷マスクを使用してインクによる印刷を行うことが好ましい。この方法によると、表示部の基本パターンを有する印刷マスクを使用して、これに多少変更を加えることで、従来から行われている配線基板への印刷工程と同様にして、製造時期に関する情報をコンパクトに簡単に、しかも正確に表示できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の配線基板の表示部の一例を説明するための説明図であり、図2は、本発明の配線基板の表示部の具体例を示す要部平面図である。
【0017】
本発明の配線基板は、図2に示すように、少なくとも月度表示(頂点部分1,辺部分2)を含む表示部FPが形成されたものである。本実施形態では、月度表示に加えて、面付数の表示3と月度内時期の表示4、ライン方向表示5とライン区分表示6とを有する配線基板の例を示す。
【0018】
配線基板としては、少なくとも月度表示を有するものであれば何れのタイプでもよく、片面配線基板の他、両面配線基板、多層配線基板、フレキシブル配線基板などでもよい。表示部FPは、配線基板の何れの位置に形成してもよいが、例えば、配線基板の片面の四隅付近、四辺付近、回路パターン内などに形成される。
【0019】
表示部FPは、図1に示す基本パターンのように、略正方形の頂点付近に配される頂点部分1と、四辺付近に配される辺部分2とを含む。この基本パターンは、表示情報を加えていない仮想的な表示パターンであり、表示部FPは、図2(a)〜(c)に示すように、頂点部分1の部分的な表示の有無と辺部分2の部分的な表示の有無との組合せによって月度表示を行うものである。
【0020】
頂点部分1の表示形状は、円形、正方形、三角形、その他の多角形など何れの形状でもよい。但し、月度表示に用いるもの(図示した例では、右上側頂点部分1a、右下側頂点部分1b)と、残りのものとの表示形状は異なることが好ましい。
【0021】
辺部分2の表示形状は、長方形、楕円形、直線、波線など何れの形状でもよく、1つの辺に対して、複数の図形(例えば円形、正方形等)が並んだ形状でもよい。但し、頂点部分1と辺部分2の表示形状は、表示の視認性や印刷マスクの製造性の観点から、両者の重なりが無いものが好ましい。
【0022】
本実施形態では、図1に示すように、略正方形の四辺付近に配される辺部分2a〜2dが、それぞれ3つの月度に対応している。具体的には、上側辺部分2aは1、5、9月度に、右側辺部分2bは2、6、10月度に、下側辺部分2cは3、7、11月度に、左側辺部分2dは4、8、12月度にそれぞれ対応している。
【0023】
また、略正方形の頂点付近に配される頂点部分1は、月度区分に対応しており、右上側頂点部分1aと右下側頂点部分1bの有無の組合せによって、例えば辺部分2aに対応する1、5、9月度のうち、いずれを表示するかを決定する。具体的には、右上側頂点部分1aと右下側頂点部分1bとが有る場合は1〜4月の月度区分となり、右上側頂点部分1aがなく右下側頂点部分1bとが有る場合は5〜8月の月度区分となり、右上側頂点部分1aと右下側頂点部分1bとの両者が無い場合は9〜12月の月度区分となる。
【0024】
図2(a)に示す例では、上側辺部分2aが無いため、1、5、9月度の何れかを示しており、右上側頂点部分1aと右下側頂点部分1bとが有るため、1〜4月の月度区分となるので、1月度の生産であることが表示される。
【0025】
なお、図2(a)に示す例では、面付数の表示3に「2」と表示されており、面付数が2であることが示されている。この面付数とは、一枚の大きな配線基板(例えば、配線基板メーカーにおけるワークサイズや、集合配線基板)において、それを構成する小さい配線基板を複数枚(例えば8枚)形成する場合に表示するもので、その面付数は1〜8(又はA〜H)となる。このように面付数を表示しておくことにより、仮に1つの小さい配線基板に不良が出た場合に、この配線基板が大きな配線基板においてどの位置の配線基板かをすぐに把握することができる。また、面付数を更に細分化して、表示3に「2−a」などと表示してもよい。また、面付数の表示3に代えて、他の文字情報などを付すことも可能である。
【0026】
また、月度内時期の表示4では、上中下のうち中段の表示4bのみが無いため、1月度の中旬の生産であることが表示される。また、ライン方向表示5とライン区分表示6に関する情報が表示されている。ライン方向表示5は、この例では三角形の頂点の方向がラインの下流側として表示されている。ライン区分表示6が正方形であることは、例えば半製品であることを示している。
【0027】
図2(b)に示す例では、右側辺部分2bが無いため、2、6、10月度の何れかを示しており、右上側頂点部分1aが無く右下側頂点部分1bが有るため、5〜8月の月度区分となるので、6月度の生産であることが表示される。月度内時期の表示4については、上中下のうち上段の表示4aのみが無いため、6月度の上旬の生産であることが表示される。
【0028】
図2(c)に示す例では、左側辺部分2dが無いため、4、8、12月度の何れかを示しており、右上側頂点部分1aと右下側頂点部分1bが無いため、9〜12月の月度区分となるので、12月度の生産であることが表示される。月度内時期の表示4については、上中下のうち下段の表示4cのみが無いため、12月度の下旬の生産であることが表示される。
【0029】
本実施形態では、表示部FPは、頂点部分1及び辺部分2に囲まれた領域に、面付数及び月度内時期の表示3,4を有しているが、本発明では、これらの表示3,4を付さなくてもよく、また、面付数の表示3又は月度内時期の表示4の何れかのみを付してもよい。
【0030】
面付数の表示3は、そのまま数字を付すことも可能であるが、アルファベットや記号を付してもよい。月度内時期の表示4は、上、中、下という分け方に限らず、1週間毎に区分してもよい。
【0031】
本実施形態では、頂点部分1のうち、右上側頂点部分1aと右下側頂点部分1bとの2つを月度表示に使用しているが、4つの頂点部分1のうち異なる2つを月度表示に使用してもよい。また、4つの頂点部分1のうち3つ(頂点部分1a〜1c)を月度表示に使用して、それぞれを上記3つ月度区分に対応させてもよい(図3(a)参照)。
【0032】
また、辺部分2のうち、4つを月度表示に使用しているが、4つの辺部分2のうち3つ(辺部分2a〜2c)を月度表示に使用してもよい(図3(b)参照)。その場合、辺部分2a〜2cには、図3(b)に示す月度が割り当てられると共に、4つに分割した月度区分が頂点部分1a〜1cに割り当てられる。頂点部分1a〜1cへの割り当ては、例えば、頂点部分1aのみ無しが1〜3月の月度区分に対応し、頂点部分1bのみ無しが4〜6月の月度区分に対応し、頂点部分1cのみ無しが7〜9月の月度区分に対応し、頂点部分1aと1bのみ無しが10〜12月の月度区分に対応するようにすればよい。
【0033】
また、本実施形態では、頂点部分1のうちの残りを他の情報の表示に使用しているが、ライン方向、ライン区分の他に、半製品である旨、製品仕上げなどの情報を付してもよい。また、図3(b)に示す例において、月度表示として使用しなかった左側辺部分7に対して、他の情報を付してもよい。
【0034】
本発明における表示部FPは、月度表示等をコンパクトに表示できるため、1辺が7mmの正方形の内部に納めることができ、好ましくは1辺が4〜6mmの正方形の内部に納められたものである。
【0035】
以上のような本発明の配線基板は、本発明の製造方法により好適に製造することができる。即ち、本発明の製造方法は、少なくとも月度表示を含む表示部FPを形成する工程を有する配線基板の製造方法において、前記表示部FPは、略正方形の頂点付近に配される頂点部分1と、四辺付近に配される辺部分2とを含み、前記頂点部分1の部分的な表示の有無と前記辺部分2の部分的な表示の有無との組合せによって前記月度表示を行う工程を有することを特徴とする。
【0036】
表示部FPの形成方法としては、絶縁性樹脂を用いたインクで印刷する方法、ソルダレジストを利用して表示する方法、回路パターンと同様に導電性材料で形成する方法などが挙げられる。また、これらのように一段階で表示部FPを形成する方法の他、二段階で表示部FPを形成する方法を採用することも可能である。
【0037】
インクで印刷する方法としては、図1に示すように、略正方形の頂点付近に配される頂点部分1と、四辺付近に配される辺部分2とが開口する基本パターンを有する印刷マスクを使用するのが好ましい。表示部の基本パターンを有する印刷マスクを使用して、これに多少変更を加えることで、従来から行われている配線基板への印刷工程と同様にして、インクによる印刷で表示部FPを形成することができる。印刷マスクには、スクリーン印刷用のスクリーンも含まれる。
【0038】
印刷マスクに変更を加える方法としては、樹脂の塗布、フィルムのラミネート、二重マスクなどで、印刷マスクの開口を一部閉止する方法が挙げられる。
【0039】
ソルダレジストを利用する方法としては、ソルダレジストをパターン形成する際に、これと同様の方法、例えばフォトリソグラフィ等で表示部FPを形成すればよい。
【0040】
導電性材料で形成する方法としては、回路パターンの形成と同様の方法、例えば、アディティブ法、セミアディティブ法、エッチング法等で表示部FPを形成すればよい。
【0041】
二段階で形成する方法としては、図1に示すような基本パターンを下地表示部として予め形成しておき、これに対してその一部を消去する付加表示部を印刷して、表示部FPを形成する方法が挙げられる。具体的には、配線基板の回路パターンを形成する際に、基本パターンである下地表示部を回路パターンと同じ導体で形成しておき、印刷工程において、下地表示部の一部を覆う付加表示部をインクで印刷する方法が挙げられる。
【0042】
インクで印刷する方法としては、マスク等を使用せずに直接描画する方法も可能である。その場合、例えばインクジェットプリンター、プロッター、インクディスペンサーなどを使用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の配線基板の表示部の一例を説明するための説明図
【図2】本発明の配線基板の表示部の具体例を示す要部平面図
【図3】本発明の配線基板の表示部の他の例を示す要部平面図
【図4】従来の配線基板の表示部の例を示す要部平面図
【符号の説明】
【0044】
1 頂点部分(月度表示)
2 辺部分(月度表示)
3 面付数の表示
4 月度内時期の表示
5 ライン方向表示
6 ライン区分表示
FP 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも月度表示を含む表示部が形成された配線基板において、
前記表示部は、略正方形の頂点付近に配される頂点部分と、四辺付近に配される辺部分とを含み、前記頂点部分の部分的な表示の有無と前記辺部分の部分的な表示の有無との組合せによって前記月度表示が行われていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記表示部は、前記頂点部分及び前記辺部分に囲まれた領域に、面付数及び/又は月度内時期の表示を有する請求項1記載の配線基板。
【請求項3】
前記頂点部分のうち、2つを前記月度表示に使用し、残りを他の情報の表示に使用する請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
少なくとも月度表示を含む表示部を形成する工程を有する配線基板の製造方法において、
前記表示部は、略正方形の頂点付近に配される頂点部分と、四辺付近に配される辺部分とを含み、前記頂点部分の部分的な表示の有無と前記辺部分の部分的な表示の有無との組合せによって前記月度表示を行う工程を有することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
前記表示部を形成する工程で、略正方形の頂点付近に配される頂点部分と、四辺付近に配される辺部分とが開口する印刷マスクを使用してインクによる印刷を行う請求項4記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−166387(P2008−166387A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−352360(P2006−352360)
【出願日】平成18年12月27日(2006.12.27)
【出願人】(000103220)エルナー株式会社 (48)
【Fターム(参考)】