説明

酸化塔

【課題】タンク自体を複雑化することなく、二相流噴出ノズルの保守点検を容易に行うことができ、しかも、被処理液中の被酸化成分を酸素の気泡により所望どおりに酸化して除去することの可能な酸化塔。
【解決手段】有底筒状のタンク1と、タンク1の下方からタンク1内へ被酸化成分を含む被処理液と空気を一緒に噴出する複数の二相流噴出ノズル2を備え、被処理液中の被酸化成分を空気の気泡により酸化して除去する酸化塔で、複数の二相流噴出ノズル2が、その噴出方向をほぼ水平にタンク1の中心L方向へ向けてタンク1の下部側面の外側に配置され、逆円錐状または逆多角錐状の壁体5が、タンク1の中心部に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有底筒状のタンクと、そのタンクの下方からタンク内へ被酸化成分を含む被処理液と空気を一緒に噴出する複数の二相流噴出ノズルを備え、前記被処理液中の被酸化成分を空気の気泡により酸化して除去する酸化塔に関する。
【背景技術】
【0002】
このような酸化塔としては、従来、図4の(a)に示すように、多数の二相流噴出ノズル2Aをタンク1内の下部全面にわたってほぼ均等に配置して、被処理液と空気を上方へ向けて噴出するように構成したものが知られている。
また、図4の(b)に示すように、タンク1の下部に鏡板10を配置して二重底構造とし、その鏡板10の下方の外側に多数の二相流噴出ノズル2Bを上方へ向けて配置したものも知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、図4の(a)に示す従来技術では、二相流噴出ノズル2Aがタンク1の内部に位置するため、二相流噴出ノズル2Aの保守点検に際し、タンク1内の液を抜き出さねばならず、二相流噴出ノズル2Aの保守点検に不便さを伴うという問題があった。
その点、図4の(b)に示す従来技術では、二相流噴出ノズル2Bがタンク1の外側に位置するため、二相流噴出ノズル2Bの保守点検に際しての不便さは解消される。しかしながら、液圧に耐え得る頑丈な鏡板10をタンク1の下部に配置して二重底構造にする必要があり、さらに、その鏡板10の下部に二相流噴出ノズル2Bのための配管群を配置する必要もあって、構造が複雑化するという問題があった。
【0004】
本発明は、このような従来の問題点に着目したもので、その目的は、タンク自体を複雑化することなく、二相流噴出ノズルの保守点検を容易に行うことができ、しかも、被処理液中の被酸化成分を酸素の気泡により所望どおりに酸化して除去することの可能な酸化塔を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の特徴構成は、有底筒状のタンクと、そのタンクの下方からタンク内へ被酸化成分を含む被処理液と空気を一緒に噴出する複数の二相流噴出ノズルを備え、前記被処理液中の被酸化成分を空気の気泡により酸化して除去する酸化塔であって、前記複数の二相流噴出ノズルが、その噴出方向をほぼ水平に前記タンクの中心方向へ向けて前記タンクの下部側面の外側に配置され、逆円錐状または逆多角錐状の壁体が、前記タンクの中心部に配置されているところにある。
【0006】
本発明の第1の特徴構成によれば、複数の二相流噴出ノズルが、タンクの下部側面の外側に配置されているので、タンク自体を複雑な構造にすることなく、二相流噴出ノズルの保守点検に際しては、タンク内の液を抜き出す必要もなく、二相流噴出ノズルの保守点検を容易に行うことができる。
そして、複数の二相流噴出ノズルが、その噴出方向をほぼ水平にタンクの中心方向へ向けて配置され、逆円錐状または逆多角錐状の壁体が、タンクの中心部に配置されているので、後に図面を参照して説明するように、二相流噴出ノズルから噴出される被処理液と空気は、逆円錐状または逆多角錐状の壁体に沿って上方へ上昇しながらタンク周壁側に押し戻された後、二相流噴出ノズルからの噴流に誘引されて下方へ引き戻され、再びタンクの中心方向へ押し流されて、側面視においてドーナツ状に対流することになる。このドーナツ状の特異な対流に起因して、タンク内における空気の気泡の平均滞留時間が長くなって被処理液と空気との接触が促進され、被処理液中の被酸化成分は、空気によって確実に酸化されて除去される。
【0007】
本発明の第2の特徴構成は、前記逆円錐状または逆多角錐状の壁体が、前記タンク内に配置された気泡分離器の壁体であるところにある。
【0008】
本発明の第2の特徴構成によれば、逆円錐状または逆多角錐状の壁体が、タンク内に配置された気泡分離器の壁体であるから、空気により酸化された酸化物と空気の気泡とを分離するための気泡分離器の壁体が、二相流噴出ノズルからの被処理液と空気をドーナツ状に対流させるための壁体を兼用することになり、構成部材の兼用化による構造の簡素化を図ることができる。
【0009】
本発明の第3の特徴構成は、前記被処理液と空気を一緒に噴出する補助二相流噴出ノズルが、前記タンク内の下部に配置されているところにある。
【0010】
本発明の第3の特徴構成によれば、被処理液と空気を一緒に噴出する補助二相流噴出ノズルが、タンク内の下部に配置されているので、単位時間当たりの被処理液の処理量を多くするために、たとえ断面積の大きなタンクを使用して、タンク側面の二相流噴出ノズルからの噴流が十分にタンクの中心にまで届かなくても、補助二相流噴出ノズルの付加によって、上述したドーナツ状の対流を確実に起こさせることができる。
【0011】
本発明の第4の特徴構成は、空気のみを噴出する空気噴出ノズルが、前記タンク内の下部に配置されているところにある。
【0012】
本発明の第4の特徴構成によれば、空気のみを噴出する空気噴出ノズルが、タンク内の下部に配置されているので、空気噴出ノズルから噴出される空気の量を調整することにより、タンク内に滞留する空気量の微調整が可能となり、被処理液中の被酸化成分をより一層確実に酸化して除去することができる。
【0013】
本発明の第5の特徴構成は、前記被処理液が、燃料ガスに含まれる硫化水素を前記被酸化成分として溶存する脱硫液であり、その硫化水素を空気の気泡により固形硫黄に酸化して除去するところにある。
【0014】
本発明の第5の特徴構成によれば、被処理液が、燃料ガスに含まれる硫化水素を被酸化成分として溶存する脱硫液であり、その溶存する硫化水素を空気の気泡により固形硫黄に酸化して除去するので、本発明による酸化塔を使用することによって、脱硫液の無害化処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明による酸化塔の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明に係る酸化塔は、例えば、硫化水素(H2S)を含む燃料ガスをアルカリ性の脱硫液と接触させて、脱硫液中に硫化水素を溶け込ませた後、その脱硫液に溶存する硫化水素を空気の気泡により固形硫黄に酸化して除去する際に使用されるものである。
そのため、この酸化塔は、図1に示すように、有底で上部が閉鎖された円筒状のタンク1と、そのタンク1の下方からタンク1内へ硫化水素を溶存する脱硫液と空気を一緒に噴出する複数の二相流噴出ノズル2を備え、被処理液としての脱硫液から被酸化成分としての硫化水素を空気の気泡により酸化して除去するように構成され、タンク1の上部には、空気を排出するための排気管4が接続されている。
【0016】
二相流噴出ノズル2は、タンク1の下部側面の外側に配置されてタンク1に取り付けられ、その二相流噴出ノズル2の噴出方向3(図2参照)が、ほぼ水平にタンク1の中心L方向へ向かうように設定されている。なお、この二相流噴出ノズル2の配置個数は、タンク1の大きさなどに応じて適宜設定されるもので、多数配置する場合には、タンク1の外周部にほぼ等間隔に配置するのが好ましい。
そして、タンク1の中心L部には、逆円錐状の下部壁体5とその下部壁体5の上部に連設された円環状の上部壁体6を備え、かつ、上部が液面下において開口された気泡分離器7がタンク1と同心状に配置され、その気泡分離器7の下部に液排出管8が接続されてタンク1の外部へ延出されている。
【0017】
このような構成の酸化塔では、硫化水素を溶存する脱硫液と空気が、各二相流噴出ノズル2からほぼ水平にタンク1の中心L方向へ向けて噴出される。
ところが、その噴出方向3の前方には、逆円錐状の下部壁体5が位置するため、各二相流噴出ノズル2から噴出された脱硫液と空気は、シミュレーションの結果、図2において矢印で示すように、下部壁体5に沿って上方へ上昇しながらタンク1の周壁側へ押し戻され、その後、二相流噴出ノズル2からの噴流に誘引されて下方へ引き戻され、再びタンク1の中心L方向へ押し流されて、その結果、側面視においてドーナツ状に対流することが判明した。
【0018】
このドーナツ状の特異な対流により、タンク1内における空気の気泡の平均滞留時間が長くなって脱硫液と空気との接触が促進され、脱硫液中の硫化水素が空気により効率良く酸化されて固形硫黄となり、空気の気泡と共に上方へ浮上する。
その後、上方へ浮上した固形硫黄と空気の気泡は、気泡分離器7により互いに分離され、固形硫黄は、脱硫液(処理液)と一緒に気泡分離器7の内部を通って液排出管8からタンク1外部へ排出され、空気は排気管4を通ってタンク1外部へ排気されるのである。
【0019】
なお、上述した空気の気泡の平均滞留時間に関し、図1に示した本発明の酸化塔と図4の(a)に示した従来の酸化塔であって、いずれも直径が10m、水深が17.5mのものについて、それぞれの塔のノズルから一瞬に噴出した合計1800個の気泡が水面に到達するまでの時間をシミュレーションにより求めたところ、従来の酸化塔では、平均滞留時間が214(秒)であったのに対し、本発明の酸化塔では、平均滞留時間が260(秒)であり、従来の酸化塔に比べて、空気の気泡の平均滞留時間が長くなったことが確認された。
その結果、本発明の酸化塔によれば、容積当たりの被処理液中に含まれる被酸化成分に対する酸化能力が、従来の酸化塔よりも高い。
【0020】
〔別実施形態〕
(1)先の実施形態では、二相流噴出ノズル2の全てをタンク1の下部側面の外側に配置した構成を示したが、タンク1が大きい場合には、図3に示すように、タンク1の外側に配置する二相流噴出ノズル2とは別に、補助二相流噴出ノズル9をタンク1内の下部に配置し、補助二相流噴出ノズル9からも、硫化水素を溶存する脱硫液と空気を上方へ向けて噴出するように構成することもできる。
なお、補助二相流噴出ノズル9の配置個数と配置箇所は、タンク1や気泡分離器7の大きさなどに応じて適宜設定するのが好ましい。
さらに、図示はしないが、この補助二相流噴出ノズル9に代えて、空気のみを噴出する空気噴出ノズルをタンク1内の下部に配置することも、また、補助二相流噴出ノズル9と共に空気噴出ノズルを併置して実施することもできる。
【0021】
(2)これまでの実施形態では、気泡分離器7の下部壁体5を逆円錐状に構成した例を示したが、気泡分離器7の下部壁体5を逆多角錐状に構成することもできる。
さらに、逆円錐状または逆多角錐状の壁体5は、必ずしも気泡分離器7の壁体である必要はなく、例えば、固形硫黄を脱硫液と一緒にタンク1の上方からオーバーフローにより排出する形式の酸化塔において、逆円錐状または逆多角錐状の壁体5をタンク1の中心L部に配置して実施することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による酸化塔の概略構成図
【図2】本発明による酸化塔の要部の作用を示す説明図
【図3】本発明による別の実施形態の酸化塔の概略構成図
【図4】従来の酸化塔の概略構成図
【符号の説明】
【0023】
1 タンク
2 二相流噴出ノズル
3 二相流噴出ノズルの噴出方向
5 壁体
7 気泡分離器
9 補助二相流噴出ノズル
L タンクの中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒状のタンクと、そのタンクの下方からタンク内へ被酸化成分を含む被処理液と空気を一緒に噴出する複数の二相流噴出ノズルを備え、前記被処理液中の被酸化成分を空気の気泡により酸化して除去する酸化塔であって、
前記複数の二相流噴出ノズルが、その噴出方向をほぼ水平に前記タンクの中心方向へ向けて前記タンクの下部側面の外側に配置され、逆円錐状または逆多角錐状の壁体が、前記タンクの中心部に配置されている酸化塔。
【請求項2】
前記逆円錐状または逆多角錐状の壁体が、前記タンク内に配置された気泡分離器の壁体である請求項1に記載の酸化塔。
【請求項3】
前記被処理液と空気を一緒に噴出する補助二相流噴出ノズルが、前記タンク内の下部に配置されている請求項1または2に記載の酸化塔。
【請求項4】
空気のみを噴出する空気噴出ノズルが、前記タンク内の下部に配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸化塔。
【請求項5】
前記被処理液が、燃料ガスに含まれる硫化水素を前記被酸化成分として溶存する脱硫液であり、その硫化水素を空気の気泡により固形硫黄に酸化して除去する請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸化塔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−246385(P2008−246385A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−91648(P2007−91648)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(591027444)大阪ガスエンジニアリング株式会社 (18)
【Fターム(参考)】