重症心身障害者のためのコミュニケーション支援装置
【課題】従来のコミュニケーション支援装置は、障害者に意思伝達の意図があることが前提であった。しかし、より重篤な障害を有する重症心身障害者においては、意思伝達の意図そのものが未発達あるいは不明確であるため、従来のコミュニケーション支援装置では十分ではないという課題がある。
【解決手段】上記課題を解決するために、意思疎通が困難な障害者に与えられた刺激に対する障害者からのレスポンスを複数の生体情報を用いた演算に基づいて出力してコミュニケーションに役立てるためのコミュニケーション支援装置を提案する。
【解決手段】上記課題を解決するために、意思疎通が困難な障害者に与えられた刺激に対する障害者からのレスポンスを複数の生体情報を用いた演算に基づいて出力してコミュニケーションに役立てるためのコミュニケーション支援装置を提案する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、意思疎通が困難な重症心身障害者の生体情報を取得することで、重症心身障害者とのコミュニケーションに役立てるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
何らかの障害を有する者に対するコミュニケーション支援装置は、障害のタイプや度合に応じて様々に開発されている。例えば、特許文献1には、設定された時間間隔毎に走査される数字を含む50音文字列から所望の文字を選択して言葉を生成する文章表意機能を設けたコミュニケーション支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−139917
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコミュニケーション支援装置は、言葉を生成する文章表意機能を補償するものであり、その機能補償の発揮には、障害者に意思伝達の意図があることが前提となる。しかし、より重篤な障害を有する重症心身障害者においては、意思伝達の意図そのものが未発達あるいは不明確であるため、単に機能補償することのみでは、コミュニケーション支援として十分ではないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では次に示す重症心身障害者のためのコミュニケーション支援装置を提供する。すなわち第一の発明としては、意思疎通が困難な障害者に与えられた刺激に対する障害者からのレスポンスを複数の生体情報を用いた演算に基づいて出力してコミュニケーションに役立てるための装置であって、意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持する保持部と、前記障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)時間分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のB時間分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、前半単位時間心拍数を中心として保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部とを有するコミュニケーション支援装置を提供する。
【0006】
第二の発明としては、意思疎通が困難な障害者に与えられた刺激に対する障害者からのレスポンスを複数の生体情報を用いた演算に基づいて出力してコミュニケーションに役立てるための装置であって、前記障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)時間分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のB時間分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持するダイナミック保持部と、前半単位時間心拍数を中心としてダイナミック保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部とを有するコミュニケーション支援装置を提供する。
【0007】
第三の発明としては、第一の発明を基本として、さらに、計算部の計算と前記インターフェイス部の出力は、鼓動の平均繰り返し時間間隔である平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行うインターバル計算手段を有する第一の発明または第二の発明に記載のコミュニケーション支援装置を提供する。
【0008】
第四の発明としては、キャッシュ部の測定データから前記障害者の現在時刻における平均単位時間心拍数を計算する平均心拍数計算手段と平均心拍数計算手段での計算結果からキャッシュ部に命令して(A+B)時間を制御する制御手段とを有するキャッシュ時間制御部をさらに有する第一の発明から第三の発明のいずれか一に記載のコミュニケーション装置を提供する。
【0009】
第五の発明としては、意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持する保持部と、前記障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のD拍分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のC拍分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、前半単位時間心拍数を中心として保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部とを有するコミュニケーション支援装置を提供する。
【0010】
第六の発明としては、意思疎通が困難な障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のD拍分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のC拍分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のC拍分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持するダイナミック保持部と、前半単位時間心拍数を中心としてダイナミック保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部とを有するコミュニケーション支援装置を提供する。
【0011】
第七の発明としては、さらに、計算部の計算と前記インターフェイス部の出力は、鼓動の平均繰り返し時間間隔である平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行うインターバル計算手段を有する第五の発明または第六の発明に記載のコミュニケーション支援装置。
【0012】
第八の発明としては、意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間当たりの生理測定値の標準偏差値であるシグマを生理測定値の種類に応じて複数保持可能な保持部と、前記障害者の生理測定値をその種類に応じて測定する複数の測定部と、測定部ごとに測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)単位分の測定データをその生理測定値の種類に応じて複数キャッシュ可能なキャッシュ部と、前記キャッシュされている生理測定値の種類ごとに後半のB単位分の後半単位生理測定値を前記測定中は常時計算しつづけることが可能な後半単位生理測定値計算手段、前記キャッシュされている生理測定値の種類ごとに前半のA単位分の前半単位生理測定値を前記測定中は常時計算しつづけることが可能な前半単位生理測定値計算手段、測定データの種類ごとに後半単位生理測定値が、前半単位生理測定値を中心として各生理測定値の種類ごとのシグマで区分して、プラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に位置するかを前記測定中は常時計算しつづける複数の位置計算手段、位置計算手段での計算結果を測定データの種類に応じて重みづけして平均値を算出する平均値算出手段とを格納可能なパッチパネル部と、平均値算出手段で算出された平均値を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部とを有するコミュニケーション支援装置を提供する。
【0013】
第九の発明としては、測定部の測定結果を蓄積する測定結果蓄積部と、意思疎通が困難な障害者に対して刺激を与えたタイミングの入力を受け付けて、前記測定部の測定結果の時間軸と共通の時間軸で蓄積可能な刺激付与タイミング蓄積部と、刺激付与タイミング蓄積部に蓄積されている刺激を与えたタイミングでの測定結果を測定結果蓄積部にてサーチするサーチ部とをさらに有する第一の発明から第六の発明のいずれか一に記載のコミュニケーション支援装置を提供する。
【0014】
第十の発明としては、意思疎通が困難な障害者の心拍信号を取得する心拍信号取得部と、取得した心拍信号の心拍のスペクトル演算を行う心拍スペクトル演算部と、前記心拍スペクトル演算部の演算結果として得られるパワースペクトルのピークが、あらかじめ設定される呼吸性心拍変動(RSA)の周波数範囲内に出現し、かつ、あらかじめ設定される持続時間継続されるか否かを判断する判断部と、前記心拍スペクトル演算部の演算結果と、前記判断部の判断結果とに基づいて前記障害者がRSA出現状態であるかRSA出現状態でないかを示す情報を前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部とを有するコミュニケーション支援装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、意思伝達の意図そのものが未発達あるいは不明確である重症心身障害者とのコミュニケーション支援が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係るコミュニケーション支援装置の実施のイメージ図
【図2】実施形態1に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロックの一例図
【図3】心電図の概念図
【図4】キャッシュ部における測定データの概念図
【図5】計算結果が出力される表示画面の一例図
【図6】実施形態1に係るハードウェア構成の一例図
【図7】実施形態1に係るハードウェア構成の一例図
【図8】実施形態1に係るハードウェア構成の一例図
【図9】実施形態1に係るコミュニケーション支援装置の処理の流れを示すフロー図
【図10】実施形態2に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロックの一例図
【図11】実施形態3に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロックの一例図
【図12】実施形態4に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロックの一例図
【図13】実施形態5に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロックの一例図
【図14】実施形態5に係るコミュニケーション支援装置の処理の流れを示すフロー図
【図15】実施形態6に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロックの一例図
【図16】実施形態7に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロックの一例図
【図17】実施形態7に係るコミュニケーション支援装置の処理の流れを示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0018】
実施形態1は、主に請求項1、請求項5について説明する。実施形態2は、主に請求項2、請求項6について説明する。実施形態3は、主に請求項3、請求項7について説明する。実施形態4は、主に請求項3について説明する。実施形態5は、主に請求項8について説明する。実施形態6は、主に請求項9について説明する。実施形態7は、主に請求項10について説明する。
<実施形態1>
<実施形態1 概要>
【0019】
本実施形態は、意思疎通が困難な障害者に与えられた刺激に対する障害者からのレスポンスを、生体情報を用いた演算に基づいて出力してコミュニケーションに役立てるためのコミュニケーション支援装置である。生体情報としては、例えば、心拍や脳波や発汗量など種々あるが、本実施形態においては主に心拍を用いる。本件発明は、コミュニケーション支援の対象者として重症心身障害者を主眼に置くものであるが、これに限らず意思疎通が困難な障害者に対して広くコミュニケーション支援を図るものである。なお、重症心身障害者とは、重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態にある児童及び成人をいい、医学的用語ではなく行政上の用語である。実施のイメージ図を図1に示す。親などの介助者が対象者に対して、声をかけることによる刺激や、あるいは音声や映像等の刺激を与える。これらの刺激に対する対象者の反応は外見的に判断しにくいので、刺激に対する心拍の変動に基づいて判断指標を得るものである。
<実施形態1 構成>
【0020】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロック図の一例を図2に示す。コミュニケーション支援装置(0200)は、「保持部」(0201)と、「測定部」(0202)と、「キャッシュ部」(0203)と、「後半単位時間心拍数計算部」(0204)と、「前半単位時間心拍数計算部」(0205)と、「計算部」(0206)と、「インターフェイス部」(0207)とを有する。
【0021】
ここで、本装置の機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアおよびソフトウェアの両方として実現され得る。具体的には、各種の生体情報を取得するためのセンサなどや、コンピュータを利用するものであれば、CPUやRAM、バス、あるいは二次記憶装置(ハードディスクや不揮発性メモリ、CD−ROMやDVD−ROMなどの記憶メディアとそれらメディアの読取ドライブなど)、印刷機器や表示装置、その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部やその外部周辺機器用のI/Oポート、それらハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラム、情報入力に利用されるユーザインターフェイスなどが挙げられる。
【0022】
また、これらハードウェアやソフトウェアは、RAM上に展開したプログラムをCPUで演算処理したり、メモリやハードディスク上に保持されているデータや、インターフェイスを介して入力されたデータなどを加工、蓄積、出力処理したり、あるいは各ハードウェア構成部の制御を行ったりするために利用される。また、このような発明の一部をソフトウェアとして構成することができる。さらに、そのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いるソフトウェア製品、および同製品を記憶媒体に固定した記憶媒体も、当然にこの発明の技術的な範囲に含まれる(本明細書の全体を通じて同様である)。
【0023】
「保持部」(0201)は、意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持する機能を有する。これは、コミュニケーションを図ろうとする対象となる障害者の安静時における心拍の変動のばらつきを基準データとしてあらかじめ保持するためである。単位時間心拍数とは、所定の単位時間における心拍数をいい、例えば、一般的には一分間あたりの心拍数である。単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値を求めるに当たっては、まず、心拍と心拍との時間的間隔から、その間隔に基づく単位時間心拍数を求める。例えば、心拍と心拍との間隔が0.8秒であれば、その間隔に基づく一分間(60秒)あたりの心拍数は75回ということになる(60÷0.8=75)。同様に所定範囲での測定結果における拍間毎の単位時間心拍数を求めて、その標準偏差値であるシグマを求める。所定範囲での測定結果とは、例えば、一分間の範囲内に測定される心拍についての測定結果である。多くの測定値(拍間毎の単位時間心拍数)に基づいてシグマを得る方が、障害者の心拍変動の状態をより正確に反映することになり好ましい。また、一日における時間帯(朝、昼、夜など)によって、体調が変わる場合も考えられるので、各時間帯でのシグマを保持しておいてもよい。
【0024】
「測定部」(0202)は、前記障害者の鼓動タイミングを測定する機能を有する。測定部は、例えば、圧電脈波センサや光電脈波センサなどの脈波センサや心電図用の電極などにより実現される。鼓動タイミングの測定とは、心臓の拍動のタイミングを測定することである。測定は、まず、各種センサなどを障害者に装着し、心拍データを得る。心拍データの取得については、上記以外の手段を採用してもよく、特段に技術的な限定を加えるものではない。ここで、図3を用いて鼓動タイミングの測定を具体的に説明する。図3は心電図を模式的に示したものである。拍動毎に周期的に表れる鋭いピークをR波といい、R波とR波との時間的間隔(以下、R−R間隔)から鼓動タイミングを測定する。前述した「保持部」でのシグマもR−R間隔に基づいて得ることができる。測定されたデータは、次に述べる「キャッシュ部」にてキャッシュされるのみならず、本実施形態にかかる装置におけるHDDなどの記憶装置に記録しておいてもよい。
【0025】
「キャッシュ部」(0203)は、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)時間分の測定データをキャッシュする機能を有する。キャッシュ部は、例えば、キャッシュメモリや内蔵時計などにより構成される。キャッシュされる測定データについて、図4の概念図を用いて説明する。図4は、ある時間における心拍を、時間軸上に番号を付して示している。現在時がT1である場合、前半のA時間においては「3番目」から「5番目」までの心拍が存在し、後半のB時間においては「6番目」から「8番目」までの心拍が存在している。このときキャッシュ部は、(A+B)時間内に存在する「3番目」から「8番目」の心拍についての測定データをキャッシュする。この測定データとしては、例えば、「3番目」から「8番目」の各心拍におけるR波が測定された時間などがある。同様に現在時がT2に至った時には、「7番目」から「10番目」の心拍についての測定データをキャッシュする。キャッシュ部は、このようなキャッシュ処理を常時行う。これにより、現在時に最も近い過去の(A+B)時間分の測定データを、速やかにその後の計算処理に供することができ、計算処理結果の出力が実時間に近い状態となる。なお、「A時間」と「B時間」は、実時間における障害者の状態を反映させるため、例えば、それぞれ5秒などの短い時間であることが望ましい。また、必ずしも異なる時間であるものではなく、「A」と「B」が同じ値であってもよい。
【0026】
「後半単位時間心拍数計算部」(0204)は、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のB時間分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける機能を有する。後半のB時間分の後半単位時間とは、後半のB時間内での単位時間心拍数の平均値をいう。単位時間心拍数は、すでに述べたように、例えば、一分間を単位時間とした心拍数である。後半単位時間心拍数計算部が行う演算処理は、例えば、以下のようになる。キャッシュ部にキャッシュされている後半B時間分の測定データに4つのR波(R1、R2、R3、R4)が測定されている場合には、各R波の出現時に基づき3つのR−R間隔(R1−R2間隔、R2−R3間隔、R3−R4間隔)を得ることができる。そして、それぞれのR−R間隔に基づいた一分間あたりの心拍数を求めることができ、ついで、それらの平均を求めることにより後半B時間分の単位時間心拍数を求めることができる。後半単位時間心拍数計算部は、このような演算処理を常時行うことにより、キャッシュ部にキャッシュされている、現在時に最も近い過去のB時間内での単位時間心拍数の平均値を得ることができる。
【0027】
「前半単位時間心拍数計算部」(0205)は、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける機能を有する。前半のA時間分の後半単位時間とは、前半のA時間内での単位時間心拍数の平均値をいう。前半単位時間心拍数計算部が行う演算処理は、すでに述べた後半単位時間心拍数計算部におけるものと同様であるので、説明を省略する。
【0028】
「計算部」(0206)は、前半単位時間心拍数を中心として保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける機能を有する。後半単位時間心拍数が「加速反応領域」に位置するとは、後半単位時間心拍数が、前半単位時間心拍数と保持部に保持されている標準偏差値であるシグマとを加算した値を越える場合をいう。例えば、前半単位時間心拍数が「60」であり、シグマが「2」である場合に、後半単位時間心拍数が「62」を越える場合には、後半単位時間心拍数は「加速反応領域」に位置することになる。また、後半単位時間心拍数が「減速反応領域」に位置するとは、後半単位時間心拍数が、前半単位時間心拍数から保持部に保持されている標準偏差値であるシグマを減算した値未満である場合をいう。例えば、前半単位時間心拍数が「60」であり、シグマが「2」である場合に、後半単位時間心拍数が「58」未満である場合には、後半単位時間心拍数は「減速反応領域」に位置することになる。同様に、後半単位時間心拍数が、前半単位時間心拍数である「60」を中心として、プラスマイナスシグマ以内領域、すなわち、「58」以上「62」以下の場合には、「変化なし領域」に位置することになる。なお、本実施形態において、刺激に対する障害者からの反応を標準偏差値であるシグマで領域区分を行うものであり、その際に、「プラスマイナスシグマ以内領域」、「プラスシグマを越える領域」、「マイナスシグマ未満領域」と区分するものであるが、この区分を、「プラスマイナスシグマ内領域」、「プラスシグマ以上領域」、「マイナスシグマ以下領域」としたとしても、本件発明の本質的な効果を何ら損なうものではない。
【0029】
「インターフェイス部」(0207)は、計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづける機能を有する。計算部での計算結果を出力するとは、ディスプレイなどの表示装置に表示したり、紙などに印刷したりすることなどを意味し、コミュニケーションをとろうとする者が計算結果を認識し得る態様で、計算結果を出力することをいう。インターフェィス部が計算結果をディスプレイに常時出力しつづける一例を図5に示す。ディスプレイ(0501)には、心電図(0502)及び刺激呈示時(0503)が時系列で推移しつつ表示されている。
【0030】
ここで、例えば、声をかけるなどの刺激を呈示した時を中心とした前A時間と後B時間とにおける測定データを用いて、後B時間における後半単位時間心拍数が、前A時間における前半単位時間心拍数を中心として「加速反応領域」、「減速反応領域」、「変化なし領域」のいずれかに位置するかが計算部により得られる。この計算結果により、障害者が与えられた刺激に対してどのような反応をしたのかを認識することができる。ここで、刺激呈示時を中心とした前A時間での前半単位時間心拍数を「刺激前平均値」(0504)、後B時間での後半単位時間心拍数を「刺激後平均値」(0505)として表示するとともに、これらの値に基づいて計算部による計算結果を「加減速反応」(0506)として表示してもよい。なお、計算結果として表示されている「D」は、減速反応(D:deceleration)を意味する。
【0031】
ここで、刺激に対する心拍変動については、生理心理学をはじめとして種々研究が行われており、何らかの刺激の後に心拍数が減少する変化(減速反応)は、刺激を受け入れそれが何であるかを知覚する定位反応成分であり、心拍数が増加する変化(加速反応)は、驚愕性あるいは防御性の反応成分であると言われている。本件コミュニケーション支援装置は、これらの研究により得られた理論に基づき、上述したような心拍変動の分析結果を常時出力しつづけることにより、意思疎通が困難な障害者とのコミュニケーションに役立てるものである。
【0032】
本実施形態のコミュニケーション支援装置は、上述したように、測定データのキャッシュを、「時間」に基づいて定めている。つまり、「キャッシュ部」は、現在時から過去にさかのぼって少なくとも(A+B)時間分の測定データをキャッシュする。このキャッシュする測定データを、「時間」ではなく「拍数」に基づいて定めてもよい。すなわち、「キャッシュ部」は、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュする機能を有するものとしてもよい。また、この場合には、「後半単位時間心拍数計算部」及び「前半単位時間心拍数計算部」は、それぞれ、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のD拍分の後半単位時間心拍数及び前半のC拍分の前半単位時間心拍数を、測定中は常時計算しつづける機能を有するものとなる。
【0033】
測定データのキャッシュは、例えば、現在時に最も近い過去に測定されたR波(R1)からさかのぼって(C+D+1)個目のR波(RC+D+1)までの各R波出現時の測定データを少なくともキャッシュすることにより、(C+D)拍分のR−R間隔を得ることができる。そして、「後半単位時間心拍数計算部」は、R1からRD+1までの各出現時によりD拍分のR−R間隔を得て後半単位時間心拍数を計算する。「前半単位時間心拍数計算部」も同様に、RD+1からRC+D+1までの各出現時によりC拍分のR−R間隔を得て前半単位時間心拍数を計算する。また、「前半単位時間心拍数計算部」で計算対象となる測定データを、RD+E+1からRC+D+E+1までのR波の出現時としてもよい。この場合には、「E拍分」隔てた前半C拍と後半D拍との心拍変動を「計算部」の計算により得ることができる。
【0034】
以上のように、キャッシュする測定データの単位を「時間」ではなく「拍数」とした場合においても、「計算部」及び「インターフェイス部」は、キャッシュする測定データの単位を「時間」とする場合と同様であるので説明は省略する。
<実施形態1 ハードウェア構成>
【0035】
図6は、本実施形態のコミュニケーション支援装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例を表す図である。図6に示すように、本実施形態の「コミュニケーション支援装置」は、「保持部」、「測定部」、「キャッシュ部」、「後半単位時間心拍数計算部」、「前半単位時間心拍数計算部」、「計算部」、「インターフェイス部」などを構成する、「CPU」(0601)、「メインメモリ」(0602)、「記憶装置」(0603)、「脈波センサ」(0604)、「刺激呈示装置」(0605)、「ディスプレイ」(0606)、「バス」(0607)などを備えている。
【0036】
メインメモリ(0602)は、プログラム実行中に動的にデータ書換可能な記憶装置である。メインメモリ(0602)は記憶装置(0603)に記憶されているOSや、後半単位時間心拍数計算プログラムや前半単位時間心拍数計算プログラムや計算プログラムなどを実行するために必要なスタックやヒープ等のワーク領域を提供する。さらに、ディスプレイに表示するためにOSの命令により生成されたインターフェイス画面や、後半単位時間心拍数計算プログラムや前半単位時間心拍数計算プログラムや計算プログラムの命令により計算された計算結果などを保持する。
【0037】
記憶装置(0603)はプログラム実行中に動的にデータ書換可能な記憶装置であり、装置の電源が切れても、記憶しているデータが消去されない。記憶装置(0603)は、インターフェイス画面のデータや、「脈波センサ」(0604)により測定された脈波測定データや、安静時の単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマなどが記憶される。また、障害者に対して音声や映像などの刺激を呈示するためのスピーカやディスプレイなどの「刺激呈示装置」により、障害者に対して呈示された刺激に関するデータなどが記憶されていてもよい。
【0038】
「CPU」(0601)は、メインメモリに展開された後半単位時間心拍数計算プログラムを実行し、キャッシュされている測定データから後半単位時間心拍数を計算する処理を行い、その結果を一旦保持する。そして、前半単位時間心拍数計算プログラムを実行し、キャッシュされている測定データから前半単位時間心拍数を計算する処理を行い、その結果を一旦保持する。つづいて、計算プログラムを実行して、一旦保持された先の計算結果から、後半単位時間心拍数が前半単位時間心拍数を基準としてどの領域に位置するかの演算を行う。そして、演算結果などをインターフェイス画面に表示した画面の生成を行い「ディスプレイ」(0606)に出力する。
【0039】
図7は、本実施形態のハードウェア構成の具体例を示した図であり、心電図・脈波センサを使用しているものである。「ノートPC」(0701)には、「モニター」(0702)と「I/F BOX」(0703)が接続され、「I/F BOX」は、「A/Dボード」(0704)と、「AMPボード」(0705)と、「AMP電源」(0706)と「ACアダプタ」(0707、0708)を備える。「I/F BOX」には、「刺激呈示装置」(0709)と、「刺激SW」(0710)と、「高性能データ取り込みユニット」(0711)と、「ユニバーサル・インターフェイスモジュール」(0711)と、「電極リード線」(0714)を接続する「心電図用アンプ」(0713)と、「圧電脈波センサ」(0715)と、「光電脈波センサ指用」(0716)と、「光電脈波センサ耳用」(0717)とが接続されている。
【0040】
図8は、心電図キットを使用した場合のハードウェア構成の具体例を示した図である。「ノートPC」(0801)には、「モニター」(0802)と、「心電図キット」(0803)と、「USBタイプ高電圧リレー出力」(0804)と、「USB用デジタルI/Oデバイス」(0805)が接続され、「心電図キット」には、「電極1」(0806)と、「電極2」(0807)と、「電極3」(0808)とが接続されている。
<実施形態1 処理の流れ>
【0041】
図9は、本実施形態に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。まず、意思疎通が困難な障害者の鼓動タイミングを測定する。この処理は測定部によって実行される(測定ステップ S0901)。次に、前記測定ステップが測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)時間分の測定データをキャッシュする。この処理はキャッシュ部によって実行される(キャッシュステップ S0902)。次に、前記キャッシュステップにてキャッシュされている測定データの後半のB時間分の後半単位時間心拍数を、前記測定ステップが測定中は常時計算しつづける。この処理は後半単位時間心拍数計算部によって実行される(後半単位時間心拍数計算ステップ S0903)。次に、前記キャッシュステップにてキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数を、前記測定ステップが測定中は常時計算しつづける。この処理は前半単位時間心拍数計算部によって実行される(前半単位時間心拍数計算ステップ S0904)。次に、前半単位時間心拍数計算ステップにて計算された前半単位時間心拍数を中心として保持部に保持されている標準偏差値であるシグマで区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数計算ステップにて計算された後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける。この処理は計算部によって実行される(計算ステップ S0905)。そして、前記計算ステップにて計算された計算結果を前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづける。この処理はインターフェイス部によって実行される(出力ステップ S0906)。
【0042】
キャッシュ部が、「時間」ではなく「拍数」に基づいて測定データをキャッシュする場合、すなわち、キャッシュ部が、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュする機能を有するものである場合の処理の流れも、図9を用いて説明した処理の流れと同様である。ただし、前記キャッシュステップにおいて、前記測定ステップが測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュする処理を行う。そして、後半単位時間心拍数計算ステップでは、前記キャッシュステップにてキャッシュされている測定データの後半のD拍分の後半単位時間心拍数を、前記測定ステップが測定中は常時計算しつづける処理を行い、前半単位時間心拍数計算ステップでは、同様に前半のC拍分の前半単位時間心拍数を、前記測定ステップが測定中は常時計算しつづける処理を行う。
<実施形態1 効果>
【0043】
本実施形態のコミュニケーション支援装置により、意思疎通が困難な障害者の心拍変動を出力しつづけることによって、かかる者とのコミュニケーションに役立つことが可能となる。
<実施形態2>
<実施形態2 概要>
【0044】
本実施形態は、実施形態1を基本として、計算部において、後半単位時間心拍数がどの領域に位置するかを計算する際に用いられる標準偏差値を、前半のA時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマとするものである。
<実施形態2 構成>
【0045】
本実施形態のコミュニケーション支援装置は、実施形態1のコミュニケーション支援装置における保持部を有さず、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持するダイナミック保持部を有するものである。
【0046】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロック図の一例を図10に示す。コミュニケーション支援装置(1000)は、「ダイナミック保持部」(1001)と、「測定部」(1002)と、「キャッシュ部」(1003)と、「後半単位時間心拍数計算部」(1004)と、「前半単位時間心拍数計算部」(1005)と、「計算部」(1006)と、「インターフェイス部」(1007)とを有する。「ダイナミック保持部」以外の各構成は、実施形態1におけるものと基本的に同様であるので説明を省略する。
【0047】
「ダイナミック保持部」は、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持する機能を有する。「A時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値」とは、A時間内に含まれる心拍毎の単位時間心拍数の標準偏差値のことである。ダイナミック保持部は、A時間内に含まれる心拍毎の単位時間心拍数を測定データのR波などから演算し、それらの標準偏差値を演算して保持する。ダイナミック保持部は、A時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値を常時計算し続けて、その結果を保持する処理を行ってもよい。保持されるシグマは、計算部の演算に供される。
【0048】
計算部は、実施形態1の計算部において、安静時の単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマにより、後半単位時間心拍数が位置する領域を区分するものであるところ、本実施形態においては、前半のA時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマにより区分するものである。この点以外の処理については実施形態1の計算部と同様である。
【0049】
また、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュする機能を有するものである場合には、ダイナミック保持部は、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のC拍分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持する処理を行ってもよい。保持されるデータは計算部に供される。
【0050】
キャッシュする測定データの単位を「時間」ではなく「拍数」とした場合においても、「計算部」及び「インターフェイス部」は、キャッシュする測定データの単位を「時間」とする場合と同様であるので説明は省略する。
<実施形態2 ハードウェア構成>
【0051】
本実施形態のコミュニケーション支援装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現する構成については、実施形態1に準じて実現できる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
<実施形態2 処理の流れ>
【0052】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れは、実施形態1に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れと同様である。ただし、計算ステップでの処理は、前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを用いた処理となる。
<実施形態2 効果>
【0053】
本実施形態のコミュニケーション支援装置により、心拍変動の比較対象となる前半単位時間心拍数の標準偏差値に基づいた心拍変動を出力することができる。
<実施形態3>
<実施形態3 概要>
【0054】
本実施形態は、実施形態1または実施形態2を基本として、計算部の計算とインターフェイス部の出力が、平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行うことを特徴とするコミュニケーション支援装置である。
<実施形態3 構成>
【0055】
本実施形態のコミュニケーション支援装置は、実施形態1または実施形態2におけるコミュニケーション支援装置が、さらに、計算部の計算と前記インターフェイス部の出力は、鼓動の平均繰り返し時間間隔である平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行うインターバル計算手段を有するものである。
【0056】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロック図の一例を図11に示す。コミュニケーション支援装置(1100)は、「保持部」(1101)と、「測定部」(1102)と、「キャッシュ部」(1103)と、「後半単位時間心拍数計算部」(1104)と、「前半単位時間心拍数計算部」(1105)と、「計算部」(1106)と、「インターフェイス部」(1107)とを有し、計算部は、さらに、「インターバル計算手段」(1108)を有する。保持部にかえてダイナミック保持部を有する構成としてもよい。「インターバル計算手段」以外の各構成は、実施形態1または実施形態2におけるものと同様であるので説明を省略する。
【0057】
「インターバル計算手段」(1108)は、計算部の計算と前記インターフェイス部の出力は、鼓動の平均繰り返し時間間隔である平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行う機能を有する。平均鼓動インターバルを求めるための測定データの範囲は、例えば、キャッシュ部が測定データをキャッシュする範囲としてもよい。キャッシュ部が、(A+B)時間分の測定データをキャッシュする機能を有している場合には、(A+B)時間を範囲として、その範囲時間内の測定データに含まれる鼓動の時間的間隔の平均値を求める。この平均値が「平均鼓動インターバル」となる。このようにすれば、現在の状態を反映した平均鼓動インターバルとなる。もちろん平均鼓動インターバルを求めるための測定データの範囲は、これに限られるものではなく、例えば、現在時からさかのぼった一分間としてもよいし十分間としてもよく、障害者の状態に応じた時間設定をするなどしてもよい。
【0058】
計算部は、上記のように求められた平均鼓動インターバル以下の時間で一回の計算を行う。このようなタイミングで計算を行うことによって、連続する鼓動についての各測定データを、もれなく計算結果に反映させることが可能となる。そして、インターフェイス部は、この計算結果を平均鼓動インターバル以下の時間で1回出力するので、測定データがもれなく反映された計算結果を、障害者とコミュニケーションをとろうとする者は認識することができる。
【0059】
キャッシュ部が、(C+D)拍分の測定データをキャッシュする機能を有している場合には、上記同様にキャッシュされている測定データから平均鼓動インターバルを求めてもよい。また、現在時からさかのぼった10拍分や20拍分といった所定拍分から求めてもよい。
<実施形態3 ハードウェア構成>
【0060】
本実施形態のコミュニケーション支援装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現する構成については、実施形態1または実施形態2に準じて実現できる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
<実施形態3 処理の流れ>
【0061】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れは、実施形態1または、実施形態2に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れと同様である。ただし、前記計算ステップおよび出力ステップにおいて、鼓動の平均繰り返し時間間隔である平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行う処理をする。
<実施形態3 効果>
【0062】
本実施形態のコミュニケーション支援装置により、連続する鼓動についての各測定データを、もれなく計算結果としての出力に反映させることが可能となる。
<実施形態4>
<実施形態4 概要>
【0063】
本実施形態は、実施形態1から実施形態3のいずれか一を基本として、キャッシュ部の測定データから障害者の現在時刻における平均単位時間心拍数を計算し、この計算結果からキャッシュ部に命令して(A+B)時間を制御することを特徴とするコミュニケーション支援装置である。
<実施形態4 構成>
【0064】
本実施形態のコミュニケーション支援装置は、実施形態1から実施形態3のいずれか一におけるコミュニケーション支援装置が、キャッシュ部の測定データから前記障害者の現在時刻における平均単位時間心拍数を計算する平均心拍数計算手段と、平均心拍数計算手段での計算結果からキャッシュ部に命令して(A+B)時間を制御する制御手段と、を有するキャッシュ時間制御部を、さらに有するものである。
【0065】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロック図の一例を図12に示す。コミュニケーション支援装置(1200)は、「保持部」(1201)と、「測定部」(1202)と、「キャッシュ部」(1203)と、「後半単位時間心拍数計算部」(1204)と、「前半単位時間心拍数計算部」(1205)と、「インターバル計算手段」(1208)を有する「計算部」(1206)と、「インターフェイス部」(1207)とを有し、さらに、「平均心拍数計算手段」(1210)と「制御手段」(1211)とを有する「キャッシュ時間制御部」(1209)を有する。保持部にかえてダイナミック保持部を有する構成としてもよい。「キャッシュ時間制御部」以外の各構成については、実施形態1から実施形態3のいずれか一におけるものと同様であるので説明を省略する。
【0066】
「平均心拍数計算手段」(1210)は、「キャッシュ時間制御部」(1209)に含まれる構成であり、キャッシュ部の測定データから前記障害者の現在時刻における平均単位時間心拍数を計算する機能を有する。単位時間心拍数とは、すでに「保持部」において述べたように、例えば、1分間あたりの心拍数をいう。「現在時刻」における平均単位時間心拍数とは、厳密な意味での現在時刻(何時何分何十秒)における平均単位時間心拍数という意味ではなく、現在の障害者の心拍の状態が反映されている単位時間心拍数という意味である。したがって、例えば、現在時から過去にさかのぼって1分間における単位時間心拍数であってもよい。これを求めるための演算処理は、後半単位時間心拍数計算部などにおける演算処理と同様であり、キャッシュ部にキャッシュされている現在時から過去にさかのぼって1分間分の測定データから平均単位時間心拍数を求めることができる。
【0067】
「制御手段」(1211)は、「キャッシュ時間制御部」(1209)に含まれる構成であり、平均心拍数計算手段での計算結果からキャッシュ部に命令して(A+B)時間を制御する。(A+B)時間を制御するとは、平均心拍数計算手段での計算結果に基づいて(A+B)時間を設定することである。例えば、前半5拍と後半5拍での単位時間心拍数に基づいた計算結果を得たい場合に、平均心拍数計算手段での計算結果から、前記障害者の心拍の前半5拍と後半5拍を包含するのに十分な時間を求めることができる。このように、平均心拍数計算手段での計算結果に基づいて(A+B)時間を制御することにより、障害者の現在の状況に応じて、必要な拍分の測定データをキャッシュ部にキャッシュすることが可能になる。
<実施形態4 ハードウェア構成>
【0068】
本実施形態のコミュニケーション支援装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現する構成については、実施形態1から実施形態3のいずれか一に準じて実現できる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
<実施形態4 処理の流れ>
【0069】
実施形態に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れは、実施形態1から実施形態3のいずれか一に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れと同様である。ただし、前記キャッシュステップにおける(A+B)時間は、キャッシュされている測定データから求められる平均単位時間心拍数に基づくものとなる。
<実施形態4 効果>
【0070】
本実施形態のコミュニケーション支援装置により、障害者の現在の状況に応じて、必要な拍分の測定データが反映された計算結果が得られる。
<実施形態5>
<実施形態5 概要>
【0071】
本実施形態は、複数の生理測定値における測定データを総合的に評価することにより障害者とのコミュニケーションに役立たせるものであって、個別の生理測定値における測定データの評価を実施形態1のコミュニケーション支援装置と同様に行うとともに、個別の生理測定値における測定データの評価について、生理測定値の種類に応じて重みづけをして平均値を算出し、その算出結果を障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけるコミュニケーション支援装置である。
<実施形態5 構成>
【0072】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロック図の一例を図13に示す。コミュニケーション支援装置は、「保持部」(1301)と、「複数の測定部」(1302、1303、1304)と、「キャッシュ部」(1305)と、「パッチパネル部」(1306)と、「インターフェイス部」(1307)とを有し、「パッチパネル部」(1306)は、さらに、「後半単位生理測定値計算手段」(1308)と、「前半単位生理測定値計算手段」(1309)と、「複数の位置計算手段」(1310、1311、1312)と、「平均値算出手段」(1313)とを有する。
【0073】
「保持部」(1301)は、意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間当たりの生理測定値の標準偏差値であるシグマを生理測定値の種類に応じて複数保持する機能を有する。生理測定値とは、生体情報であって、例えば、心拍、血圧、脳波、体温、発汗量、皮膚電位、筋電位、脳内血流などの様々な生理学的指標をいう。保持部は、例を挙げたような生理想定値のうちで測定対象とする複数の生理測定値の標準偏差値であるシグマを、種類に応じて複数保持する。個々の生理測定値における処理は、実施形態1の「保持部」での処理に準ずるので、ここでの説明は省略する。
【0074】
「複数の測定部」(1302、1303、1304)における個々の「測定部」は、障害者の生理測定値をその種類に応じて測定する。図13においては、「測定部1」から「測定部n」までの「n個」の測定部を示しているが、この「n」は、測定対象とする生理測定値の数に応じる。実施形態1の「測定部」においては、生理測定値として心拍を測定しているが、本実施形態における個々の「測定部」も同様に、生理測定値の種類に応じたセンサなどを用いて生理測定値を測定する。
【0075】
「キャッシュ部」(1305)は、測定部ごとに測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)単位分の測定データをその生理測定値の種類に応じて複数キャッシュする機能を有する。測定データをキャッシュする単位は、「時間」であってもよいし、「拍数」などの生理測定値を測定する上で適当な単位を用いてもよい。個々の生理測定値におけるキャッシュは、実施形態1の「キャッシュ部」でのキャッシュに準じるので、ここでの説明は省略する。
【0076】
「後半単位生理測定値計算手段」(1308)は、前記キャッシュされている生理測定値の種類ごとに後半のB単位分の後半単位生理測定値を前記測定中は常時計算しつづける機能を有する。後半単位生理測定値計算手段における計算処理は、実施形態1の「後半単位時間心拍数計算部」における計算処理に準ずるので、ここでの説明は省略する。
【0077】
「前半単位生理測定値計算手段」(1309)は、前記キャッシュされている生理測定値の種類ごとに前半のA単位分の前半単位生理測定値を前記測定中は常時計算しつづける機能を有する。前半単位生理測定値計算手段における計算処理は、実施形態1の「前半単位時間心拍数計算部」における計算処理に準ずるので、ここでの説明は省略する。
【0078】
「複数の位置計算手段」(1310、1311、1312)は、測定データの種類ごとに後半単位生理測定値が、前半単位生理測定値を中心として各生理測定値の種類ごとのシグマで区分して、プラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に位置するかを前記測定中は常時計算しつづける機能を有する。図13においては、「位置測定手段1」から「位置測定手段n」までの「n個」の位置測定手段を示しているが、この「n」は、測定対象とする生理測定値の種類の数に応じる。個々の位置測定手段における計算処理は、実施形態1の「計算部」における計算処理に準ずるので、ここでの説明は省略する。
【0079】
「平均値算出手段」(1313)は、位置計算手段での計算結果を測定データの種類に応じて重みづけして平均値を算出する機能を有する。障害者が抱える疾病や障害などは、人により多種多様である。そのため、それぞれの計算結果の重視すべき度合いは、障害者によって異なるものとなる。そこで、障害者の疾病や障害などに応じて、それぞれの計測結果に重みづけをして平均値を算出する。これにより、生理測定値の変動を、障害者に応じて総合的に評価することができる。
【0080】
「パッチパネル部」(1306)は、上述した「後半単位生理測定値計算手段」と、「前半単位生理測定値計算手段」と、「複数の位置計算手段」と、「平均値算出手段」とを格納可能な機能を有する。このように生理測定値の種類ごとに位置計算手段を格納可能にすることにより、疾病や障害などが異なる障害者のそれぞれに対して適切なコミュニケーション支援をすることができる。また、測定および計算の対象とする生理測定値の種類を拡張することも容易に行える。
【0081】
「インターフェイス部」(1307)は、平均値算出手段で算出された平均値を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづける機能を有する。本実施形態における「インターフェイス部」は、実施形態1の「インターフェイス部」に準ずるので、ここでの説明は省略する。
<実施形態5 ハードウェア構成>
【0082】
本実施形態のコミュニケーション支援装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現する構成については、実施形態1に準じて実現できる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
<実施形態5 処理の流れ>
【0083】
図14は、本実施形態に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。まず、意思疎通が困難な障害者の生理測定値を種類に応じて測定する。この処理は複数の測定部によって実行される(測定ステップ S1401)。次に、前記測定ステップが測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)単位分の測定データを生理測定値の種類に応じて複数キャッシュする。この処理はキャッシュ部によって実行される(キャッシュステップ S1402)。次に、前記キャッシュステップにてキャッシュされている生理測定値の種類ごとに後半のB単位分の後半単位生理測定値を、前記測定ステップが測定中は常時計算しつづける。この処理は後半単位生理測定値計算部によって実行される(後半単位生理測定値計算ステップ S1403)。次に、前記キャッシュステップにてキャッシュされている生理測定値の種類ごとに前半のA単位分の前半単位生理測定値を、前記測定ステップが測定中は常時計算しつづける。この処理は前半単位生理測定値計算部によって実行される(前半単位生理測定値計算ステップ S1404)。次に、測定データの種類ごとに後半単位生理測定値が、前半単位生理測定値計算ステップにて計算された前半単位生理測定値を中心として保持部に保持されている標準偏差値であるシグマで区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位生理測定値計算ステップにて計算された後半単位生理測定値が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける。この処理は複数の位置計算部によって実行される(位置計算ステップ S1405)。次に、前記位置計算ステップにて計算された計算結果を測定データの種類に応じて重みづけして平均値を算出する。この処理は、平均値算出手段によって実行される(平均値算出ステップ S1406)。そして、前記平均値算出ステップにて算出された平均値を前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづける。この処理はインターフェイス部によって実行される(出力ステップ S1407)。
<実施形態5 効果>
【0084】
本実施形態のコミュニケーション支援装置により、疾病や障害などが異なる様々な障害者に対応可能となるとともに、測定および計算の対象とする生理測定値の種類を拡張することも容易に行える。
<実施形態6>
<実施形態6 概要>
【0085】
本実施形態は、実施形態1から実施形態5のいずれか一を基本とし、測定部での測定結果と、障害者に対して刺激を与えたタイミングとを、共通の時間軸で蓄積するとともに、蓄積されている刺激を与えたタイミングでの測定結果をサーチすることができるコミュニケーション支援装置である。
<実施形態6 構成>
【0086】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロック図の一例を図15に示す。コミュニケーション支援装置は、「保持部」(1501)と、「測定部」(1502)と、「キャッシュ部」(1503)と、「後半単位時間心拍数計算部」(1504)と、「前半単位時間心拍数計算部」(1505)と、「計算部」(1506)と、「インターフェイス部」(1507)とを有し、さらに、「測定結果蓄積部」(1508)と、「刺激付与タイミング蓄積部」(1509)と、「サーチ部」(1510)とを有する。保持部にかえてダイナミック保持部を有する構成としてもよい。「測定結果蓄積部」と「刺激付与タイミング蓄積部」と「サーチ部」以外の構成は、実施形態1から実施形態5のいずれか一と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0087】
「測定結果蓄積部」(1508)は、測定部の測定結果を蓄積する機能を有する。測定結果蓄積部は、測定部により測定される心拍などの生理測定値の測定結果を蓄積する。測定結果は、HDDなどの記憶装置に蓄積され、複数の生理測定値を測定している場合には生理測定値ごとに蓄積してもよい。また、測定結果を蓄積してデータベース化してもよく、測定結果の参照や分析に寄与し得る。
【0088】
「刺激付与タイミング蓄積部」(1509)は、意思疎通が困難な障害者に対して刺激を与えたタイミングの入力を受け付けて、前記測定部の測定結果の時間軸と共通の時間軸で蓄積することのできる機能を有する。刺激を与えたタイミングとは、例えば、障害者に対して声をかける場合であれば、発声の開始時刻などであり、あるいは、何らかの映像を呈示する場合であれば、映像がディスプレイなどに表示された時刻などである。発声の終了時刻や、映像が切り替わった時刻などをも蓄積してもよい。
【0089】
「サーチ部」(1510)は、刺激付与タイミング蓄積部に蓄積されている刺激を与えたタイミングでの測定結果を測定結果蓄積部にてサーチする機能を有する。刺激付与タイミング蓄積部により刺激を与えたタイミングは測定結果と共通の時間軸で蓄積されているので、刺激を与えたタイミングでの測定結果をサーチすることができる。刺激を与えたタイミングの前後にわたる測定結果をディスプレイや紙などに出力することにより、刺激付与と測定結果との関係などを認識し得る。
<実施形態6 ハードウェア構成>
【0090】
本実施形態のコミュニケーション支援装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現する構成については、実施形態1から実施形態5のいずれか一に準じて実現できる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
<実施形態6 処理の流れ>
【0091】
実施形態に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れは、実施形態1から実施形態5のいずれか一に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れと同様である。
<実施形態6 効果>
【0092】
本実施形態のコミュニケーション支援装置により、測定結果を蓄積するとともに、意思疎通が困難な障害者に対して刺激を与えたタイミングでの測定結果をサーチすることが可能となる。
<実施形態7>
<実施形態7 概要>
【0093】
本実施形態は、意思疎通が困難な障害者の心拍信号をスペクトル演算して、呼吸性心拍変動(RSA)が出現しているか否かを示すことにより、障害者とのコミュニケーションを支援するコミュニケーション支援装置である。ここで、「呼吸性心拍変動(RSA)」とは、心拍変動における呼吸性の変動成分をいい、自律神経の一つである副交感神経の活動が高まり、緊張状態が低減した時に明瞭に出現すると言われている。
<実施形態7 構成>
【0094】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロック図の一例を図16に示す。コミュニケーション支援装置は、「心拍信号取得部」(1601)と、「心拍スペクトル演算部」(1602)と、「判断部」(1603)と、「インターフェイス部」(1604)とを有する。
【0095】
「心拍信号取得部」(1601)は、意思疎通が困難な障害者の心拍信号を取得する機能を有する。心拍信号取得部は、心電図用の電極などを用いて、主にR波とR波との時間的間隔(R−R間隔)を取得し、心拍変動を測定する。「心拍信号取得部」の機能は、実施形態1における「測定部」によっても実現し得る。
【0096】
「心拍スペクトル演算部」(1602)は、取得した心拍信号の心拍のスペクトル演算を行う機能を有する。心拍スペクトル演算部は、取得した心拍変動の周波数解析を行う。周波数解析は、例えば、現在時から直近の数秒間でのR波を抽出し、各R波からR−R間隔の配列データを算出する。そして算出されたR−R間隔配列データをスプライン補間し、これをリサンプリングしてFFT(高速フーリエ変換)演算を行うなどして、パワースペクトルを算出する。
【0097】
「判断部」(1603)は、心拍スペクトル演算部の演算結果として得られるパワースペクトルのピークが、あらかじめ設定される呼吸性心拍変動(RSA)の周波数範囲内に出現し、かつ、あらかじめ設定される持続時間継続されるか否かを判断する機能を有する。心拍変動をスペクトル演算すると、そのスペクトルは概ね0〜1Hzの周波数帯に現れる。呼吸性心拍変動(RSA)の成分は、その内0.15〜0.5Hzの周波数帯に現れると言われている。ただし、その下限周波数帯では、血圧変動に起因すると言われている変動成分が現れることもあるので、本実施形態においては、呼吸性心拍変動(RSA)の周波数範囲として、略「0.25〜0.5Hz」を、あらかじめ設定しておくことが好ましい。なお、この周波数範囲は障害者によって、多少の変更を加えてもよい。
【0098】
判断部は、心拍スペクトル演算部の演算結果として得られるパワースペクトルのピークが、上述したような呼吸性心拍変動(RSA)の周波数範囲内に出現し、かつ、あらかじめ設定される持続時間継続されるか否かを判断するが、「あらかじめ設定される持続時間」としては、例えば、「1秒」とすることができる。この持続時間は後述する「インターフェイス部」における「RSA出現状態」の判断基準となるが、障害者の状態などに応じて設定することが望ましい。
【0099】
「インターフェイス部」(1604)は、心拍スペクトル演算部の演算結果と、判断部の判断結果とに基づいて障害者がRSA出現状態であるかRSA出現状態でないかを示す情報を障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづける機能を有する。「心拍スペクトル演算部の演算結果と、判断部の判断結果とに基づいて」とは、心拍スペクトル演算部により得られたパワースペクトルのピークの出現が、判断部において、あらかじめ設定した条件を満たすものである否かの判断に基づいて」という意味である。障害者がRSA出現状態であるかRSA出現状態でないかを示す情報の出力は、ディスプレイに文字やマークやグラフなどを表示したりランプを点灯させるなどの視覚に訴える態様で行ってもよいし、音声により聴覚に訴える態様で行ってもよい。RSA出現状態である場合には、障害者は安静な状態にあるということが推認でき、コミュニケーションをとろうとする者にとって役立つ指標となる。
<実施形態7 ハードウェア構成>
【0100】
本実施形態のコミュニケーション支援装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現する構成については、実施形態1に準じて実現できる。例えば、心拍スペクトルを演算するためのプログラムなどを付加することによって実現できる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
<実施形態7 処理の流れ>
【0101】
図16は、本実施形態に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。まず、意思疎通が困難な障害者の心拍信号を取得する。この処理は心拍信号取得部によって実行される(心拍信号取得ステップ S1601)。次に、前記心拍信号取得ステップにて取得した心拍信号の心拍のスペクトル演算をする。この処理は心拍スペクトル演算部によって実行される(心拍スペクトル演算ステップ S1602)。次に、前記心拍スペクトル演算ステップでの演算結果であるパワースペクトルのピークが、あらかじめ設定される呼吸性心拍変動(RSA)の周波数範囲内に出現し、かつ、あらかじめ設定される持続時間継続されるか否かを判断する。この処理は判断部によって実行される(判断ステップ S1603)。そして、前記心拍スペクトル演算ステップにて演算された演算結果と前記判断ステップにて判断された判断結果とに基づいて障害者がRSA出現状態であるかRSA出現状態でないかを示す情報を出力する。この処理は、インターフェイス部によって実行される(出力ステップ S1604)。
<実施形態7 試用結果>
【0102】
本願発明者は、実施形態1のコミュニケーション支援装置に、本実施形態に係る機能を付加したコミュニケーション支援装置の試用を、意思疎通が困難な4人の障害者に対して、医師等の協力の下行った。試用は、RSA出現時とRSA非出現時との二つの条件下において、各障害者に対して直接声をかけるという刺激を与え、その前後における心拍変動を1試行ずつ調べた。その結果、4名全員において、RSA非出現時での声がけに対してRSA出現時での声がけの方が、減速反応が多く、また本人の動きなどを原因とした、心拍の不安定によるエラーはRSA出現時の方が明らかに少なかった。つまり、障害者において、RSA出現時の方が、声がけなどの刺激を受け入れやすい状態にあるということが推認できる。なお、刺激呈示条件と心拍変動との2要因分散分析によって、刺激呈示条件、心拍変動および交互作用で有意差が確認された。
<実施形態7 効果>
【0103】
本実施形態のコミュニケーション支援装置により、障害者がRSA出現状態にあるか否かの情報を常時出力しつづけることにより、障害者とのコミュニケーションに役立つ。
【符号の説明】
【0104】
0200 コミュニケーション支援装置
0201 保持部
0202 測定部
0203 キャッシュ部
0204 後半単位時間心拍数計算部
0205 前半単位時間心拍数計算部
0206 計算部
0207 インターフェイス部
【技術分野】
【0001】
本発明は、意思疎通が困難な重症心身障害者の生体情報を取得することで、重症心身障害者とのコミュニケーションに役立てるための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
何らかの障害を有する者に対するコミュニケーション支援装置は、障害のタイプや度合に応じて様々に開発されている。例えば、特許文献1には、設定された時間間隔毎に走査される数字を含む50音文字列から所望の文字を選択して言葉を生成する文章表意機能を設けたコミュニケーション支援装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−139917
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のコミュニケーション支援装置は、言葉を生成する文章表意機能を補償するものであり、その機能補償の発揮には、障害者に意思伝達の意図があることが前提となる。しかし、より重篤な障害を有する重症心身障害者においては、意思伝達の意図そのものが未発達あるいは不明確であるため、単に機能補償することのみでは、コミュニケーション支援として十分ではないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明では次に示す重症心身障害者のためのコミュニケーション支援装置を提供する。すなわち第一の発明としては、意思疎通が困難な障害者に与えられた刺激に対する障害者からのレスポンスを複数の生体情報を用いた演算に基づいて出力してコミュニケーションに役立てるための装置であって、意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持する保持部と、前記障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)時間分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のB時間分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、前半単位時間心拍数を中心として保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部とを有するコミュニケーション支援装置を提供する。
【0006】
第二の発明としては、意思疎通が困難な障害者に与えられた刺激に対する障害者からのレスポンスを複数の生体情報を用いた演算に基づいて出力してコミュニケーションに役立てるための装置であって、前記障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)時間分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のB時間分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持するダイナミック保持部と、前半単位時間心拍数を中心としてダイナミック保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部とを有するコミュニケーション支援装置を提供する。
【0007】
第三の発明としては、第一の発明を基本として、さらに、計算部の計算と前記インターフェイス部の出力は、鼓動の平均繰り返し時間間隔である平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行うインターバル計算手段を有する第一の発明または第二の発明に記載のコミュニケーション支援装置を提供する。
【0008】
第四の発明としては、キャッシュ部の測定データから前記障害者の現在時刻における平均単位時間心拍数を計算する平均心拍数計算手段と平均心拍数計算手段での計算結果からキャッシュ部に命令して(A+B)時間を制御する制御手段とを有するキャッシュ時間制御部をさらに有する第一の発明から第三の発明のいずれか一に記載のコミュニケーション装置を提供する。
【0009】
第五の発明としては、意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持する保持部と、前記障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のD拍分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のC拍分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、前半単位時間心拍数を中心として保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部とを有するコミュニケーション支援装置を提供する。
【0010】
第六の発明としては、意思疎通が困難な障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のD拍分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のC拍分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のC拍分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持するダイナミック保持部と、前半単位時間心拍数を中心としてダイナミック保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部とを有するコミュニケーション支援装置を提供する。
【0011】
第七の発明としては、さらに、計算部の計算と前記インターフェイス部の出力は、鼓動の平均繰り返し時間間隔である平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行うインターバル計算手段を有する第五の発明または第六の発明に記載のコミュニケーション支援装置。
【0012】
第八の発明としては、意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間当たりの生理測定値の標準偏差値であるシグマを生理測定値の種類に応じて複数保持可能な保持部と、前記障害者の生理測定値をその種類に応じて測定する複数の測定部と、測定部ごとに測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)単位分の測定データをその生理測定値の種類に応じて複数キャッシュ可能なキャッシュ部と、前記キャッシュされている生理測定値の種類ごとに後半のB単位分の後半単位生理測定値を前記測定中は常時計算しつづけることが可能な後半単位生理測定値計算手段、前記キャッシュされている生理測定値の種類ごとに前半のA単位分の前半単位生理測定値を前記測定中は常時計算しつづけることが可能な前半単位生理測定値計算手段、測定データの種類ごとに後半単位生理測定値が、前半単位生理測定値を中心として各生理測定値の種類ごとのシグマで区分して、プラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に位置するかを前記測定中は常時計算しつづける複数の位置計算手段、位置計算手段での計算結果を測定データの種類に応じて重みづけして平均値を算出する平均値算出手段とを格納可能なパッチパネル部と、平均値算出手段で算出された平均値を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部とを有するコミュニケーション支援装置を提供する。
【0013】
第九の発明としては、測定部の測定結果を蓄積する測定結果蓄積部と、意思疎通が困難な障害者に対して刺激を与えたタイミングの入力を受け付けて、前記測定部の測定結果の時間軸と共通の時間軸で蓄積可能な刺激付与タイミング蓄積部と、刺激付与タイミング蓄積部に蓄積されている刺激を与えたタイミングでの測定結果を測定結果蓄積部にてサーチするサーチ部とをさらに有する第一の発明から第六の発明のいずれか一に記載のコミュニケーション支援装置を提供する。
【0014】
第十の発明としては、意思疎通が困難な障害者の心拍信号を取得する心拍信号取得部と、取得した心拍信号の心拍のスペクトル演算を行う心拍スペクトル演算部と、前記心拍スペクトル演算部の演算結果として得られるパワースペクトルのピークが、あらかじめ設定される呼吸性心拍変動(RSA)の周波数範囲内に出現し、かつ、あらかじめ設定される持続時間継続されるか否かを判断する判断部と、前記心拍スペクトル演算部の演算結果と、前記判断部の判断結果とに基づいて前記障害者がRSA出現状態であるかRSA出現状態でないかを示す情報を前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部とを有するコミュニケーション支援装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、意思伝達の意図そのものが未発達あるいは不明確である重症心身障害者とのコミュニケーション支援が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態1に係るコミュニケーション支援装置の実施のイメージ図
【図2】実施形態1に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロックの一例図
【図3】心電図の概念図
【図4】キャッシュ部における測定データの概念図
【図5】計算結果が出力される表示画面の一例図
【図6】実施形態1に係るハードウェア構成の一例図
【図7】実施形態1に係るハードウェア構成の一例図
【図8】実施形態1に係るハードウェア構成の一例図
【図9】実施形態1に係るコミュニケーション支援装置の処理の流れを示すフロー図
【図10】実施形態2に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロックの一例図
【図11】実施形態3に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロックの一例図
【図12】実施形態4に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロックの一例図
【図13】実施形態5に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロックの一例図
【図14】実施形態5に係るコミュニケーション支援装置の処理の流れを示すフロー図
【図15】実施形態6に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロックの一例図
【図16】実施形態7に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロックの一例図
【図17】実施形態7に係るコミュニケーション支援装置の処理の流れを示すフロー図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、本発明は、これらの実施形態に何ら限定されるべきものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
【0018】
実施形態1は、主に請求項1、請求項5について説明する。実施形態2は、主に請求項2、請求項6について説明する。実施形態3は、主に請求項3、請求項7について説明する。実施形態4は、主に請求項3について説明する。実施形態5は、主に請求項8について説明する。実施形態6は、主に請求項9について説明する。実施形態7は、主に請求項10について説明する。
<実施形態1>
<実施形態1 概要>
【0019】
本実施形態は、意思疎通が困難な障害者に与えられた刺激に対する障害者からのレスポンスを、生体情報を用いた演算に基づいて出力してコミュニケーションに役立てるためのコミュニケーション支援装置である。生体情報としては、例えば、心拍や脳波や発汗量など種々あるが、本実施形態においては主に心拍を用いる。本件発明は、コミュニケーション支援の対象者として重症心身障害者を主眼に置くものであるが、これに限らず意思疎通が困難な障害者に対して広くコミュニケーション支援を図るものである。なお、重症心身障害者とは、重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態にある児童及び成人をいい、医学的用語ではなく行政上の用語である。実施のイメージ図を図1に示す。親などの介助者が対象者に対して、声をかけることによる刺激や、あるいは音声や映像等の刺激を与える。これらの刺激に対する対象者の反応は外見的に判断しにくいので、刺激に対する心拍の変動に基づいて判断指標を得るものである。
<実施形態1 構成>
【0020】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロック図の一例を図2に示す。コミュニケーション支援装置(0200)は、「保持部」(0201)と、「測定部」(0202)と、「キャッシュ部」(0203)と、「後半単位時間心拍数計算部」(0204)と、「前半単位時間心拍数計算部」(0205)と、「計算部」(0206)と、「インターフェイス部」(0207)とを有する。
【0021】
ここで、本装置の機能ブロックは、ハードウェア、ソフトウェア、またはハードウェアおよびソフトウェアの両方として実現され得る。具体的には、各種の生体情報を取得するためのセンサなどや、コンピュータを利用するものであれば、CPUやRAM、バス、あるいは二次記憶装置(ハードディスクや不揮発性メモリ、CD−ROMやDVD−ROMなどの記憶メディアとそれらメディアの読取ドライブなど)、印刷機器や表示装置、その他の外部周辺装置などのハードウェア構成部やその外部周辺機器用のI/Oポート、それらハードウェアを制御するためのドライバプログラムやその他アプリケーションプログラム、情報入力に利用されるユーザインターフェイスなどが挙げられる。
【0022】
また、これらハードウェアやソフトウェアは、RAM上に展開したプログラムをCPUで演算処理したり、メモリやハードディスク上に保持されているデータや、インターフェイスを介して入力されたデータなどを加工、蓄積、出力処理したり、あるいは各ハードウェア構成部の制御を行ったりするために利用される。また、このような発明の一部をソフトウェアとして構成することができる。さらに、そのようなソフトウェアをコンピュータに実行させるために用いるソフトウェア製品、および同製品を記憶媒体に固定した記憶媒体も、当然にこの発明の技術的な範囲に含まれる(本明細書の全体を通じて同様である)。
【0023】
「保持部」(0201)は、意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持する機能を有する。これは、コミュニケーションを図ろうとする対象となる障害者の安静時における心拍の変動のばらつきを基準データとしてあらかじめ保持するためである。単位時間心拍数とは、所定の単位時間における心拍数をいい、例えば、一般的には一分間あたりの心拍数である。単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値を求めるに当たっては、まず、心拍と心拍との時間的間隔から、その間隔に基づく単位時間心拍数を求める。例えば、心拍と心拍との間隔が0.8秒であれば、その間隔に基づく一分間(60秒)あたりの心拍数は75回ということになる(60÷0.8=75)。同様に所定範囲での測定結果における拍間毎の単位時間心拍数を求めて、その標準偏差値であるシグマを求める。所定範囲での測定結果とは、例えば、一分間の範囲内に測定される心拍についての測定結果である。多くの測定値(拍間毎の単位時間心拍数)に基づいてシグマを得る方が、障害者の心拍変動の状態をより正確に反映することになり好ましい。また、一日における時間帯(朝、昼、夜など)によって、体調が変わる場合も考えられるので、各時間帯でのシグマを保持しておいてもよい。
【0024】
「測定部」(0202)は、前記障害者の鼓動タイミングを測定する機能を有する。測定部は、例えば、圧電脈波センサや光電脈波センサなどの脈波センサや心電図用の電極などにより実現される。鼓動タイミングの測定とは、心臓の拍動のタイミングを測定することである。測定は、まず、各種センサなどを障害者に装着し、心拍データを得る。心拍データの取得については、上記以外の手段を採用してもよく、特段に技術的な限定を加えるものではない。ここで、図3を用いて鼓動タイミングの測定を具体的に説明する。図3は心電図を模式的に示したものである。拍動毎に周期的に表れる鋭いピークをR波といい、R波とR波との時間的間隔(以下、R−R間隔)から鼓動タイミングを測定する。前述した「保持部」でのシグマもR−R間隔に基づいて得ることができる。測定されたデータは、次に述べる「キャッシュ部」にてキャッシュされるのみならず、本実施形態にかかる装置におけるHDDなどの記憶装置に記録しておいてもよい。
【0025】
「キャッシュ部」(0203)は、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)時間分の測定データをキャッシュする機能を有する。キャッシュ部は、例えば、キャッシュメモリや内蔵時計などにより構成される。キャッシュされる測定データについて、図4の概念図を用いて説明する。図4は、ある時間における心拍を、時間軸上に番号を付して示している。現在時がT1である場合、前半のA時間においては「3番目」から「5番目」までの心拍が存在し、後半のB時間においては「6番目」から「8番目」までの心拍が存在している。このときキャッシュ部は、(A+B)時間内に存在する「3番目」から「8番目」の心拍についての測定データをキャッシュする。この測定データとしては、例えば、「3番目」から「8番目」の各心拍におけるR波が測定された時間などがある。同様に現在時がT2に至った時には、「7番目」から「10番目」の心拍についての測定データをキャッシュする。キャッシュ部は、このようなキャッシュ処理を常時行う。これにより、現在時に最も近い過去の(A+B)時間分の測定データを、速やかにその後の計算処理に供することができ、計算処理結果の出力が実時間に近い状態となる。なお、「A時間」と「B時間」は、実時間における障害者の状態を反映させるため、例えば、それぞれ5秒などの短い時間であることが望ましい。また、必ずしも異なる時間であるものではなく、「A」と「B」が同じ値であってもよい。
【0026】
「後半単位時間心拍数計算部」(0204)は、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のB時間分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける機能を有する。後半のB時間分の後半単位時間とは、後半のB時間内での単位時間心拍数の平均値をいう。単位時間心拍数は、すでに述べたように、例えば、一分間を単位時間とした心拍数である。後半単位時間心拍数計算部が行う演算処理は、例えば、以下のようになる。キャッシュ部にキャッシュされている後半B時間分の測定データに4つのR波(R1、R2、R3、R4)が測定されている場合には、各R波の出現時に基づき3つのR−R間隔(R1−R2間隔、R2−R3間隔、R3−R4間隔)を得ることができる。そして、それぞれのR−R間隔に基づいた一分間あたりの心拍数を求めることができ、ついで、それらの平均を求めることにより後半B時間分の単位時間心拍数を求めることができる。後半単位時間心拍数計算部は、このような演算処理を常時行うことにより、キャッシュ部にキャッシュされている、現在時に最も近い過去のB時間内での単位時間心拍数の平均値を得ることができる。
【0027】
「前半単位時間心拍数計算部」(0205)は、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける機能を有する。前半のA時間分の後半単位時間とは、前半のA時間内での単位時間心拍数の平均値をいう。前半単位時間心拍数計算部が行う演算処理は、すでに述べた後半単位時間心拍数計算部におけるものと同様であるので、説明を省略する。
【0028】
「計算部」(0206)は、前半単位時間心拍数を中心として保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける機能を有する。後半単位時間心拍数が「加速反応領域」に位置するとは、後半単位時間心拍数が、前半単位時間心拍数と保持部に保持されている標準偏差値であるシグマとを加算した値を越える場合をいう。例えば、前半単位時間心拍数が「60」であり、シグマが「2」である場合に、後半単位時間心拍数が「62」を越える場合には、後半単位時間心拍数は「加速反応領域」に位置することになる。また、後半単位時間心拍数が「減速反応領域」に位置するとは、後半単位時間心拍数が、前半単位時間心拍数から保持部に保持されている標準偏差値であるシグマを減算した値未満である場合をいう。例えば、前半単位時間心拍数が「60」であり、シグマが「2」である場合に、後半単位時間心拍数が「58」未満である場合には、後半単位時間心拍数は「減速反応領域」に位置することになる。同様に、後半単位時間心拍数が、前半単位時間心拍数である「60」を中心として、プラスマイナスシグマ以内領域、すなわち、「58」以上「62」以下の場合には、「変化なし領域」に位置することになる。なお、本実施形態において、刺激に対する障害者からの反応を標準偏差値であるシグマで領域区分を行うものであり、その際に、「プラスマイナスシグマ以内領域」、「プラスシグマを越える領域」、「マイナスシグマ未満領域」と区分するものであるが、この区分を、「プラスマイナスシグマ内領域」、「プラスシグマ以上領域」、「マイナスシグマ以下領域」としたとしても、本件発明の本質的な効果を何ら損なうものではない。
【0029】
「インターフェイス部」(0207)は、計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづける機能を有する。計算部での計算結果を出力するとは、ディスプレイなどの表示装置に表示したり、紙などに印刷したりすることなどを意味し、コミュニケーションをとろうとする者が計算結果を認識し得る態様で、計算結果を出力することをいう。インターフェィス部が計算結果をディスプレイに常時出力しつづける一例を図5に示す。ディスプレイ(0501)には、心電図(0502)及び刺激呈示時(0503)が時系列で推移しつつ表示されている。
【0030】
ここで、例えば、声をかけるなどの刺激を呈示した時を中心とした前A時間と後B時間とにおける測定データを用いて、後B時間における後半単位時間心拍数が、前A時間における前半単位時間心拍数を中心として「加速反応領域」、「減速反応領域」、「変化なし領域」のいずれかに位置するかが計算部により得られる。この計算結果により、障害者が与えられた刺激に対してどのような反応をしたのかを認識することができる。ここで、刺激呈示時を中心とした前A時間での前半単位時間心拍数を「刺激前平均値」(0504)、後B時間での後半単位時間心拍数を「刺激後平均値」(0505)として表示するとともに、これらの値に基づいて計算部による計算結果を「加減速反応」(0506)として表示してもよい。なお、計算結果として表示されている「D」は、減速反応(D:deceleration)を意味する。
【0031】
ここで、刺激に対する心拍変動については、生理心理学をはじめとして種々研究が行われており、何らかの刺激の後に心拍数が減少する変化(減速反応)は、刺激を受け入れそれが何であるかを知覚する定位反応成分であり、心拍数が増加する変化(加速反応)は、驚愕性あるいは防御性の反応成分であると言われている。本件コミュニケーション支援装置は、これらの研究により得られた理論に基づき、上述したような心拍変動の分析結果を常時出力しつづけることにより、意思疎通が困難な障害者とのコミュニケーションに役立てるものである。
【0032】
本実施形態のコミュニケーション支援装置は、上述したように、測定データのキャッシュを、「時間」に基づいて定めている。つまり、「キャッシュ部」は、現在時から過去にさかのぼって少なくとも(A+B)時間分の測定データをキャッシュする。このキャッシュする測定データを、「時間」ではなく「拍数」に基づいて定めてもよい。すなわち、「キャッシュ部」は、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュする機能を有するものとしてもよい。また、この場合には、「後半単位時間心拍数計算部」及び「前半単位時間心拍数計算部」は、それぞれ、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のD拍分の後半単位時間心拍数及び前半のC拍分の前半単位時間心拍数を、測定中は常時計算しつづける機能を有するものとなる。
【0033】
測定データのキャッシュは、例えば、現在時に最も近い過去に測定されたR波(R1)からさかのぼって(C+D+1)個目のR波(RC+D+1)までの各R波出現時の測定データを少なくともキャッシュすることにより、(C+D)拍分のR−R間隔を得ることができる。そして、「後半単位時間心拍数計算部」は、R1からRD+1までの各出現時によりD拍分のR−R間隔を得て後半単位時間心拍数を計算する。「前半単位時間心拍数計算部」も同様に、RD+1からRC+D+1までの各出現時によりC拍分のR−R間隔を得て前半単位時間心拍数を計算する。また、「前半単位時間心拍数計算部」で計算対象となる測定データを、RD+E+1からRC+D+E+1までのR波の出現時としてもよい。この場合には、「E拍分」隔てた前半C拍と後半D拍との心拍変動を「計算部」の計算により得ることができる。
【0034】
以上のように、キャッシュする測定データの単位を「時間」ではなく「拍数」とした場合においても、「計算部」及び「インターフェイス部」は、キャッシュする測定データの単位を「時間」とする場合と同様であるので説明は省略する。
<実施形態1 ハードウェア構成>
【0035】
図6は、本実施形態のコミュニケーション支援装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現した際の構成の一例を表す図である。図6に示すように、本実施形態の「コミュニケーション支援装置」は、「保持部」、「測定部」、「キャッシュ部」、「後半単位時間心拍数計算部」、「前半単位時間心拍数計算部」、「計算部」、「インターフェイス部」などを構成する、「CPU」(0601)、「メインメモリ」(0602)、「記憶装置」(0603)、「脈波センサ」(0604)、「刺激呈示装置」(0605)、「ディスプレイ」(0606)、「バス」(0607)などを備えている。
【0036】
メインメモリ(0602)は、プログラム実行中に動的にデータ書換可能な記憶装置である。メインメモリ(0602)は記憶装置(0603)に記憶されているOSや、後半単位時間心拍数計算プログラムや前半単位時間心拍数計算プログラムや計算プログラムなどを実行するために必要なスタックやヒープ等のワーク領域を提供する。さらに、ディスプレイに表示するためにOSの命令により生成されたインターフェイス画面や、後半単位時間心拍数計算プログラムや前半単位時間心拍数計算プログラムや計算プログラムの命令により計算された計算結果などを保持する。
【0037】
記憶装置(0603)はプログラム実行中に動的にデータ書換可能な記憶装置であり、装置の電源が切れても、記憶しているデータが消去されない。記憶装置(0603)は、インターフェイス画面のデータや、「脈波センサ」(0604)により測定された脈波測定データや、安静時の単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマなどが記憶される。また、障害者に対して音声や映像などの刺激を呈示するためのスピーカやディスプレイなどの「刺激呈示装置」により、障害者に対して呈示された刺激に関するデータなどが記憶されていてもよい。
【0038】
「CPU」(0601)は、メインメモリに展開された後半単位時間心拍数計算プログラムを実行し、キャッシュされている測定データから後半単位時間心拍数を計算する処理を行い、その結果を一旦保持する。そして、前半単位時間心拍数計算プログラムを実行し、キャッシュされている測定データから前半単位時間心拍数を計算する処理を行い、その結果を一旦保持する。つづいて、計算プログラムを実行して、一旦保持された先の計算結果から、後半単位時間心拍数が前半単位時間心拍数を基準としてどの領域に位置するかの演算を行う。そして、演算結果などをインターフェイス画面に表示した画面の生成を行い「ディスプレイ」(0606)に出力する。
【0039】
図7は、本実施形態のハードウェア構成の具体例を示した図であり、心電図・脈波センサを使用しているものである。「ノートPC」(0701)には、「モニター」(0702)と「I/F BOX」(0703)が接続され、「I/F BOX」は、「A/Dボード」(0704)と、「AMPボード」(0705)と、「AMP電源」(0706)と「ACアダプタ」(0707、0708)を備える。「I/F BOX」には、「刺激呈示装置」(0709)と、「刺激SW」(0710)と、「高性能データ取り込みユニット」(0711)と、「ユニバーサル・インターフェイスモジュール」(0711)と、「電極リード線」(0714)を接続する「心電図用アンプ」(0713)と、「圧電脈波センサ」(0715)と、「光電脈波センサ指用」(0716)と、「光電脈波センサ耳用」(0717)とが接続されている。
【0040】
図8は、心電図キットを使用した場合のハードウェア構成の具体例を示した図である。「ノートPC」(0801)には、「モニター」(0802)と、「心電図キット」(0803)と、「USBタイプ高電圧リレー出力」(0804)と、「USB用デジタルI/Oデバイス」(0805)が接続され、「心電図キット」には、「電極1」(0806)と、「電極2」(0807)と、「電極3」(0808)とが接続されている。
<実施形態1 処理の流れ>
【0041】
図9は、本実施形態に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。まず、意思疎通が困難な障害者の鼓動タイミングを測定する。この処理は測定部によって実行される(測定ステップ S0901)。次に、前記測定ステップが測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)時間分の測定データをキャッシュする。この処理はキャッシュ部によって実行される(キャッシュステップ S0902)。次に、前記キャッシュステップにてキャッシュされている測定データの後半のB時間分の後半単位時間心拍数を、前記測定ステップが測定中は常時計算しつづける。この処理は後半単位時間心拍数計算部によって実行される(後半単位時間心拍数計算ステップ S0903)。次に、前記キャッシュステップにてキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数を、前記測定ステップが測定中は常時計算しつづける。この処理は前半単位時間心拍数計算部によって実行される(前半単位時間心拍数計算ステップ S0904)。次に、前半単位時間心拍数計算ステップにて計算された前半単位時間心拍数を中心として保持部に保持されている標準偏差値であるシグマで区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数計算ステップにて計算された後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける。この処理は計算部によって実行される(計算ステップ S0905)。そして、前記計算ステップにて計算された計算結果を前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづける。この処理はインターフェイス部によって実行される(出力ステップ S0906)。
【0042】
キャッシュ部が、「時間」ではなく「拍数」に基づいて測定データをキャッシュする場合、すなわち、キャッシュ部が、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュする機能を有するものである場合の処理の流れも、図9を用いて説明した処理の流れと同様である。ただし、前記キャッシュステップにおいて、前記測定ステップが測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュする処理を行う。そして、後半単位時間心拍数計算ステップでは、前記キャッシュステップにてキャッシュされている測定データの後半のD拍分の後半単位時間心拍数を、前記測定ステップが測定中は常時計算しつづける処理を行い、前半単位時間心拍数計算ステップでは、同様に前半のC拍分の前半単位時間心拍数を、前記測定ステップが測定中は常時計算しつづける処理を行う。
<実施形態1 効果>
【0043】
本実施形態のコミュニケーション支援装置により、意思疎通が困難な障害者の心拍変動を出力しつづけることによって、かかる者とのコミュニケーションに役立つことが可能となる。
<実施形態2>
<実施形態2 概要>
【0044】
本実施形態は、実施形態1を基本として、計算部において、後半単位時間心拍数がどの領域に位置するかを計算する際に用いられる標準偏差値を、前半のA時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマとするものである。
<実施形態2 構成>
【0045】
本実施形態のコミュニケーション支援装置は、実施形態1のコミュニケーション支援装置における保持部を有さず、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持するダイナミック保持部を有するものである。
【0046】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロック図の一例を図10に示す。コミュニケーション支援装置(1000)は、「ダイナミック保持部」(1001)と、「測定部」(1002)と、「キャッシュ部」(1003)と、「後半単位時間心拍数計算部」(1004)と、「前半単位時間心拍数計算部」(1005)と、「計算部」(1006)と、「インターフェイス部」(1007)とを有する。「ダイナミック保持部」以外の各構成は、実施形態1におけるものと基本的に同様であるので説明を省略する。
【0047】
「ダイナミック保持部」は、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持する機能を有する。「A時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値」とは、A時間内に含まれる心拍毎の単位時間心拍数の標準偏差値のことである。ダイナミック保持部は、A時間内に含まれる心拍毎の単位時間心拍数を測定データのR波などから演算し、それらの標準偏差値を演算して保持する。ダイナミック保持部は、A時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値を常時計算し続けて、その結果を保持する処理を行ってもよい。保持されるシグマは、計算部の演算に供される。
【0048】
計算部は、実施形態1の計算部において、安静時の単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマにより、後半単位時間心拍数が位置する領域を区分するものであるところ、本実施形態においては、前半のA時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマにより区分するものである。この点以外の処理については実施形態1の計算部と同様である。
【0049】
また、測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュする機能を有するものである場合には、ダイナミック保持部は、キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のC拍分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持する処理を行ってもよい。保持されるデータは計算部に供される。
【0050】
キャッシュする測定データの単位を「時間」ではなく「拍数」とした場合においても、「計算部」及び「インターフェイス部」は、キャッシュする測定データの単位を「時間」とする場合と同様であるので説明は省略する。
<実施形態2 ハードウェア構成>
【0051】
本実施形態のコミュニケーション支援装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現する構成については、実施形態1に準じて実現できる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
<実施形態2 処理の流れ>
【0052】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れは、実施形態1に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れと同様である。ただし、計算ステップでの処理は、前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを用いた処理となる。
<実施形態2 効果>
【0053】
本実施形態のコミュニケーション支援装置により、心拍変動の比較対象となる前半単位時間心拍数の標準偏差値に基づいた心拍変動を出力することができる。
<実施形態3>
<実施形態3 概要>
【0054】
本実施形態は、実施形態1または実施形態2を基本として、計算部の計算とインターフェイス部の出力が、平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行うことを特徴とするコミュニケーション支援装置である。
<実施形態3 構成>
【0055】
本実施形態のコミュニケーション支援装置は、実施形態1または実施形態2におけるコミュニケーション支援装置が、さらに、計算部の計算と前記インターフェイス部の出力は、鼓動の平均繰り返し時間間隔である平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行うインターバル計算手段を有するものである。
【0056】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロック図の一例を図11に示す。コミュニケーション支援装置(1100)は、「保持部」(1101)と、「測定部」(1102)と、「キャッシュ部」(1103)と、「後半単位時間心拍数計算部」(1104)と、「前半単位時間心拍数計算部」(1105)と、「計算部」(1106)と、「インターフェイス部」(1107)とを有し、計算部は、さらに、「インターバル計算手段」(1108)を有する。保持部にかえてダイナミック保持部を有する構成としてもよい。「インターバル計算手段」以外の各構成は、実施形態1または実施形態2におけるものと同様であるので説明を省略する。
【0057】
「インターバル計算手段」(1108)は、計算部の計算と前記インターフェイス部の出力は、鼓動の平均繰り返し時間間隔である平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行う機能を有する。平均鼓動インターバルを求めるための測定データの範囲は、例えば、キャッシュ部が測定データをキャッシュする範囲としてもよい。キャッシュ部が、(A+B)時間分の測定データをキャッシュする機能を有している場合には、(A+B)時間を範囲として、その範囲時間内の測定データに含まれる鼓動の時間的間隔の平均値を求める。この平均値が「平均鼓動インターバル」となる。このようにすれば、現在の状態を反映した平均鼓動インターバルとなる。もちろん平均鼓動インターバルを求めるための測定データの範囲は、これに限られるものではなく、例えば、現在時からさかのぼった一分間としてもよいし十分間としてもよく、障害者の状態に応じた時間設定をするなどしてもよい。
【0058】
計算部は、上記のように求められた平均鼓動インターバル以下の時間で一回の計算を行う。このようなタイミングで計算を行うことによって、連続する鼓動についての各測定データを、もれなく計算結果に反映させることが可能となる。そして、インターフェイス部は、この計算結果を平均鼓動インターバル以下の時間で1回出力するので、測定データがもれなく反映された計算結果を、障害者とコミュニケーションをとろうとする者は認識することができる。
【0059】
キャッシュ部が、(C+D)拍分の測定データをキャッシュする機能を有している場合には、上記同様にキャッシュされている測定データから平均鼓動インターバルを求めてもよい。また、現在時からさかのぼった10拍分や20拍分といった所定拍分から求めてもよい。
<実施形態3 ハードウェア構成>
【0060】
本実施形態のコミュニケーション支援装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現する構成については、実施形態1または実施形態2に準じて実現できる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
<実施形態3 処理の流れ>
【0061】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れは、実施形態1または、実施形態2に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れと同様である。ただし、前記計算ステップおよび出力ステップにおいて、鼓動の平均繰り返し時間間隔である平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行う処理をする。
<実施形態3 効果>
【0062】
本実施形態のコミュニケーション支援装置により、連続する鼓動についての各測定データを、もれなく計算結果としての出力に反映させることが可能となる。
<実施形態4>
<実施形態4 概要>
【0063】
本実施形態は、実施形態1から実施形態3のいずれか一を基本として、キャッシュ部の測定データから障害者の現在時刻における平均単位時間心拍数を計算し、この計算結果からキャッシュ部に命令して(A+B)時間を制御することを特徴とするコミュニケーション支援装置である。
<実施形態4 構成>
【0064】
本実施形態のコミュニケーション支援装置は、実施形態1から実施形態3のいずれか一におけるコミュニケーション支援装置が、キャッシュ部の測定データから前記障害者の現在時刻における平均単位時間心拍数を計算する平均心拍数計算手段と、平均心拍数計算手段での計算結果からキャッシュ部に命令して(A+B)時間を制御する制御手段と、を有するキャッシュ時間制御部を、さらに有するものである。
【0065】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロック図の一例を図12に示す。コミュニケーション支援装置(1200)は、「保持部」(1201)と、「測定部」(1202)と、「キャッシュ部」(1203)と、「後半単位時間心拍数計算部」(1204)と、「前半単位時間心拍数計算部」(1205)と、「インターバル計算手段」(1208)を有する「計算部」(1206)と、「インターフェイス部」(1207)とを有し、さらに、「平均心拍数計算手段」(1210)と「制御手段」(1211)とを有する「キャッシュ時間制御部」(1209)を有する。保持部にかえてダイナミック保持部を有する構成としてもよい。「キャッシュ時間制御部」以外の各構成については、実施形態1から実施形態3のいずれか一におけるものと同様であるので説明を省略する。
【0066】
「平均心拍数計算手段」(1210)は、「キャッシュ時間制御部」(1209)に含まれる構成であり、キャッシュ部の測定データから前記障害者の現在時刻における平均単位時間心拍数を計算する機能を有する。単位時間心拍数とは、すでに「保持部」において述べたように、例えば、1分間あたりの心拍数をいう。「現在時刻」における平均単位時間心拍数とは、厳密な意味での現在時刻(何時何分何十秒)における平均単位時間心拍数という意味ではなく、現在の障害者の心拍の状態が反映されている単位時間心拍数という意味である。したがって、例えば、現在時から過去にさかのぼって1分間における単位時間心拍数であってもよい。これを求めるための演算処理は、後半単位時間心拍数計算部などにおける演算処理と同様であり、キャッシュ部にキャッシュされている現在時から過去にさかのぼって1分間分の測定データから平均単位時間心拍数を求めることができる。
【0067】
「制御手段」(1211)は、「キャッシュ時間制御部」(1209)に含まれる構成であり、平均心拍数計算手段での計算結果からキャッシュ部に命令して(A+B)時間を制御する。(A+B)時間を制御するとは、平均心拍数計算手段での計算結果に基づいて(A+B)時間を設定することである。例えば、前半5拍と後半5拍での単位時間心拍数に基づいた計算結果を得たい場合に、平均心拍数計算手段での計算結果から、前記障害者の心拍の前半5拍と後半5拍を包含するのに十分な時間を求めることができる。このように、平均心拍数計算手段での計算結果に基づいて(A+B)時間を制御することにより、障害者の現在の状況に応じて、必要な拍分の測定データをキャッシュ部にキャッシュすることが可能になる。
<実施形態4 ハードウェア構成>
【0068】
本実施形態のコミュニケーション支援装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現する構成については、実施形態1から実施形態3のいずれか一に準じて実現できる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
<実施形態4 処理の流れ>
【0069】
実施形態に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れは、実施形態1から実施形態3のいずれか一に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れと同様である。ただし、前記キャッシュステップにおける(A+B)時間は、キャッシュされている測定データから求められる平均単位時間心拍数に基づくものとなる。
<実施形態4 効果>
【0070】
本実施形態のコミュニケーション支援装置により、障害者の現在の状況に応じて、必要な拍分の測定データが反映された計算結果が得られる。
<実施形態5>
<実施形態5 概要>
【0071】
本実施形態は、複数の生理測定値における測定データを総合的に評価することにより障害者とのコミュニケーションに役立たせるものであって、個別の生理測定値における測定データの評価を実施形態1のコミュニケーション支援装置と同様に行うとともに、個別の生理測定値における測定データの評価について、生理測定値の種類に応じて重みづけをして平均値を算出し、その算出結果を障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけるコミュニケーション支援装置である。
<実施形態5 構成>
【0072】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロック図の一例を図13に示す。コミュニケーション支援装置は、「保持部」(1301)と、「複数の測定部」(1302、1303、1304)と、「キャッシュ部」(1305)と、「パッチパネル部」(1306)と、「インターフェイス部」(1307)とを有し、「パッチパネル部」(1306)は、さらに、「後半単位生理測定値計算手段」(1308)と、「前半単位生理測定値計算手段」(1309)と、「複数の位置計算手段」(1310、1311、1312)と、「平均値算出手段」(1313)とを有する。
【0073】
「保持部」(1301)は、意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間当たりの生理測定値の標準偏差値であるシグマを生理測定値の種類に応じて複数保持する機能を有する。生理測定値とは、生体情報であって、例えば、心拍、血圧、脳波、体温、発汗量、皮膚電位、筋電位、脳内血流などの様々な生理学的指標をいう。保持部は、例を挙げたような生理想定値のうちで測定対象とする複数の生理測定値の標準偏差値であるシグマを、種類に応じて複数保持する。個々の生理測定値における処理は、実施形態1の「保持部」での処理に準ずるので、ここでの説明は省略する。
【0074】
「複数の測定部」(1302、1303、1304)における個々の「測定部」は、障害者の生理測定値をその種類に応じて測定する。図13においては、「測定部1」から「測定部n」までの「n個」の測定部を示しているが、この「n」は、測定対象とする生理測定値の数に応じる。実施形態1の「測定部」においては、生理測定値として心拍を測定しているが、本実施形態における個々の「測定部」も同様に、生理測定値の種類に応じたセンサなどを用いて生理測定値を測定する。
【0075】
「キャッシュ部」(1305)は、測定部ごとに測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)単位分の測定データをその生理測定値の種類に応じて複数キャッシュする機能を有する。測定データをキャッシュする単位は、「時間」であってもよいし、「拍数」などの生理測定値を測定する上で適当な単位を用いてもよい。個々の生理測定値におけるキャッシュは、実施形態1の「キャッシュ部」でのキャッシュに準じるので、ここでの説明は省略する。
【0076】
「後半単位生理測定値計算手段」(1308)は、前記キャッシュされている生理測定値の種類ごとに後半のB単位分の後半単位生理測定値を前記測定中は常時計算しつづける機能を有する。後半単位生理測定値計算手段における計算処理は、実施形態1の「後半単位時間心拍数計算部」における計算処理に準ずるので、ここでの説明は省略する。
【0077】
「前半単位生理測定値計算手段」(1309)は、前記キャッシュされている生理測定値の種類ごとに前半のA単位分の前半単位生理測定値を前記測定中は常時計算しつづける機能を有する。前半単位生理測定値計算手段における計算処理は、実施形態1の「前半単位時間心拍数計算部」における計算処理に準ずるので、ここでの説明は省略する。
【0078】
「複数の位置計算手段」(1310、1311、1312)は、測定データの種類ごとに後半単位生理測定値が、前半単位生理測定値を中心として各生理測定値の種類ごとのシグマで区分して、プラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に位置するかを前記測定中は常時計算しつづける機能を有する。図13においては、「位置測定手段1」から「位置測定手段n」までの「n個」の位置測定手段を示しているが、この「n」は、測定対象とする生理測定値の種類の数に応じる。個々の位置測定手段における計算処理は、実施形態1の「計算部」における計算処理に準ずるので、ここでの説明は省略する。
【0079】
「平均値算出手段」(1313)は、位置計算手段での計算結果を測定データの種類に応じて重みづけして平均値を算出する機能を有する。障害者が抱える疾病や障害などは、人により多種多様である。そのため、それぞれの計算結果の重視すべき度合いは、障害者によって異なるものとなる。そこで、障害者の疾病や障害などに応じて、それぞれの計測結果に重みづけをして平均値を算出する。これにより、生理測定値の変動を、障害者に応じて総合的に評価することができる。
【0080】
「パッチパネル部」(1306)は、上述した「後半単位生理測定値計算手段」と、「前半単位生理測定値計算手段」と、「複数の位置計算手段」と、「平均値算出手段」とを格納可能な機能を有する。このように生理測定値の種類ごとに位置計算手段を格納可能にすることにより、疾病や障害などが異なる障害者のそれぞれに対して適切なコミュニケーション支援をすることができる。また、測定および計算の対象とする生理測定値の種類を拡張することも容易に行える。
【0081】
「インターフェイス部」(1307)は、平均値算出手段で算出された平均値を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづける機能を有する。本実施形態における「インターフェイス部」は、実施形態1の「インターフェイス部」に準ずるので、ここでの説明は省略する。
<実施形態5 ハードウェア構成>
【0082】
本実施形態のコミュニケーション支援装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現する構成については、実施形態1に準じて実現できる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
<実施形態5 処理の流れ>
【0083】
図14は、本実施形態に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。まず、意思疎通が困難な障害者の生理測定値を種類に応じて測定する。この処理は複数の測定部によって実行される(測定ステップ S1401)。次に、前記測定ステップが測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)単位分の測定データを生理測定値の種類に応じて複数キャッシュする。この処理はキャッシュ部によって実行される(キャッシュステップ S1402)。次に、前記キャッシュステップにてキャッシュされている生理測定値の種類ごとに後半のB単位分の後半単位生理測定値を、前記測定ステップが測定中は常時計算しつづける。この処理は後半単位生理測定値計算部によって実行される(後半単位生理測定値計算ステップ S1403)。次に、前記キャッシュステップにてキャッシュされている生理測定値の種類ごとに前半のA単位分の前半単位生理測定値を、前記測定ステップが測定中は常時計算しつづける。この処理は前半単位生理測定値計算部によって実行される(前半単位生理測定値計算ステップ S1404)。次に、測定データの種類ごとに後半単位生理測定値が、前半単位生理測定値計算ステップにて計算された前半単位生理測定値を中心として保持部に保持されている標準偏差値であるシグマで区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位生理測定値計算ステップにて計算された後半単位生理測定値が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける。この処理は複数の位置計算部によって実行される(位置計算ステップ S1405)。次に、前記位置計算ステップにて計算された計算結果を測定データの種類に応じて重みづけして平均値を算出する。この処理は、平均値算出手段によって実行される(平均値算出ステップ S1406)。そして、前記平均値算出ステップにて算出された平均値を前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづける。この処理はインターフェイス部によって実行される(出力ステップ S1407)。
<実施形態5 効果>
【0084】
本実施形態のコミュニケーション支援装置により、疾病や障害などが異なる様々な障害者に対応可能となるとともに、測定および計算の対象とする生理測定値の種類を拡張することも容易に行える。
<実施形態6>
<実施形態6 概要>
【0085】
本実施形態は、実施形態1から実施形態5のいずれか一を基本とし、測定部での測定結果と、障害者に対して刺激を与えたタイミングとを、共通の時間軸で蓄積するとともに、蓄積されている刺激を与えたタイミングでの測定結果をサーチすることができるコミュニケーション支援装置である。
<実施形態6 構成>
【0086】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロック図の一例を図15に示す。コミュニケーション支援装置は、「保持部」(1501)と、「測定部」(1502)と、「キャッシュ部」(1503)と、「後半単位時間心拍数計算部」(1504)と、「前半単位時間心拍数計算部」(1505)と、「計算部」(1506)と、「インターフェイス部」(1507)とを有し、さらに、「測定結果蓄積部」(1508)と、「刺激付与タイミング蓄積部」(1509)と、「サーチ部」(1510)とを有する。保持部にかえてダイナミック保持部を有する構成としてもよい。「測定結果蓄積部」と「刺激付与タイミング蓄積部」と「サーチ部」以外の構成は、実施形態1から実施形態5のいずれか一と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0087】
「測定結果蓄積部」(1508)は、測定部の測定結果を蓄積する機能を有する。測定結果蓄積部は、測定部により測定される心拍などの生理測定値の測定結果を蓄積する。測定結果は、HDDなどの記憶装置に蓄積され、複数の生理測定値を測定している場合には生理測定値ごとに蓄積してもよい。また、測定結果を蓄積してデータベース化してもよく、測定結果の参照や分析に寄与し得る。
【0088】
「刺激付与タイミング蓄積部」(1509)は、意思疎通が困難な障害者に対して刺激を与えたタイミングの入力を受け付けて、前記測定部の測定結果の時間軸と共通の時間軸で蓄積することのできる機能を有する。刺激を与えたタイミングとは、例えば、障害者に対して声をかける場合であれば、発声の開始時刻などであり、あるいは、何らかの映像を呈示する場合であれば、映像がディスプレイなどに表示された時刻などである。発声の終了時刻や、映像が切り替わった時刻などをも蓄積してもよい。
【0089】
「サーチ部」(1510)は、刺激付与タイミング蓄積部に蓄積されている刺激を与えたタイミングでの測定結果を測定結果蓄積部にてサーチする機能を有する。刺激付与タイミング蓄積部により刺激を与えたタイミングは測定結果と共通の時間軸で蓄積されているので、刺激を与えたタイミングでの測定結果をサーチすることができる。刺激を与えたタイミングの前後にわたる測定結果をディスプレイや紙などに出力することにより、刺激付与と測定結果との関係などを認識し得る。
<実施形態6 ハードウェア構成>
【0090】
本実施形態のコミュニケーション支援装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現する構成については、実施形態1から実施形態5のいずれか一に準じて実現できる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
<実施形態6 処理の流れ>
【0091】
実施形態に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れは、実施形態1から実施形態5のいずれか一に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れと同様である。
<実施形態6 効果>
【0092】
本実施形態のコミュニケーション支援装置により、測定結果を蓄積するとともに、意思疎通が困難な障害者に対して刺激を与えたタイミングでの測定結果をサーチすることが可能となる。
<実施形態7>
<実施形態7 概要>
【0093】
本実施形態は、意思疎通が困難な障害者の心拍信号をスペクトル演算して、呼吸性心拍変動(RSA)が出現しているか否かを示すことにより、障害者とのコミュニケーションを支援するコミュニケーション支援装置である。ここで、「呼吸性心拍変動(RSA)」とは、心拍変動における呼吸性の変動成分をいい、自律神経の一つである副交感神経の活動が高まり、緊張状態が低減した時に明瞭に出現すると言われている。
<実施形態7 構成>
【0094】
本実施形態に係るコミュニケーション支援装置の機能ブロック図の一例を図16に示す。コミュニケーション支援装置は、「心拍信号取得部」(1601)と、「心拍スペクトル演算部」(1602)と、「判断部」(1603)と、「インターフェイス部」(1604)とを有する。
【0095】
「心拍信号取得部」(1601)は、意思疎通が困難な障害者の心拍信号を取得する機能を有する。心拍信号取得部は、心電図用の電極などを用いて、主にR波とR波との時間的間隔(R−R間隔)を取得し、心拍変動を測定する。「心拍信号取得部」の機能は、実施形態1における「測定部」によっても実現し得る。
【0096】
「心拍スペクトル演算部」(1602)は、取得した心拍信号の心拍のスペクトル演算を行う機能を有する。心拍スペクトル演算部は、取得した心拍変動の周波数解析を行う。周波数解析は、例えば、現在時から直近の数秒間でのR波を抽出し、各R波からR−R間隔の配列データを算出する。そして算出されたR−R間隔配列データをスプライン補間し、これをリサンプリングしてFFT(高速フーリエ変換)演算を行うなどして、パワースペクトルを算出する。
【0097】
「判断部」(1603)は、心拍スペクトル演算部の演算結果として得られるパワースペクトルのピークが、あらかじめ設定される呼吸性心拍変動(RSA)の周波数範囲内に出現し、かつ、あらかじめ設定される持続時間継続されるか否かを判断する機能を有する。心拍変動をスペクトル演算すると、そのスペクトルは概ね0〜1Hzの周波数帯に現れる。呼吸性心拍変動(RSA)の成分は、その内0.15〜0.5Hzの周波数帯に現れると言われている。ただし、その下限周波数帯では、血圧変動に起因すると言われている変動成分が現れることもあるので、本実施形態においては、呼吸性心拍変動(RSA)の周波数範囲として、略「0.25〜0.5Hz」を、あらかじめ設定しておくことが好ましい。なお、この周波数範囲は障害者によって、多少の変更を加えてもよい。
【0098】
判断部は、心拍スペクトル演算部の演算結果として得られるパワースペクトルのピークが、上述したような呼吸性心拍変動(RSA)の周波数範囲内に出現し、かつ、あらかじめ設定される持続時間継続されるか否かを判断するが、「あらかじめ設定される持続時間」としては、例えば、「1秒」とすることができる。この持続時間は後述する「インターフェイス部」における「RSA出現状態」の判断基準となるが、障害者の状態などに応じて設定することが望ましい。
【0099】
「インターフェイス部」(1604)は、心拍スペクトル演算部の演算結果と、判断部の判断結果とに基づいて障害者がRSA出現状態であるかRSA出現状態でないかを示す情報を障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづける機能を有する。「心拍スペクトル演算部の演算結果と、判断部の判断結果とに基づいて」とは、心拍スペクトル演算部により得られたパワースペクトルのピークの出現が、判断部において、あらかじめ設定した条件を満たすものである否かの判断に基づいて」という意味である。障害者がRSA出現状態であるかRSA出現状態でないかを示す情報の出力は、ディスプレイに文字やマークやグラフなどを表示したりランプを点灯させるなどの視覚に訴える態様で行ってもよいし、音声により聴覚に訴える態様で行ってもよい。RSA出現状態である場合には、障害者は安静な状態にあるということが推認でき、コミュニケーションをとろうとする者にとって役立つ指標となる。
<実施形態7 ハードウェア構成>
【0100】
本実施形態のコミュニケーション支援装置の上記機能的構成をハードウェアとして実現する構成については、実施形態1に準じて実現できる。例えば、心拍スペクトルを演算するためのプログラムなどを付加することによって実現できる。よって、ここでの詳細な説明は省略する。
<実施形態7 処理の流れ>
【0101】
図16は、本実施形態に係るコミュニケーション支援装置における処理の流れの一例を示すフロー図である。まず、意思疎通が困難な障害者の心拍信号を取得する。この処理は心拍信号取得部によって実行される(心拍信号取得ステップ S1601)。次に、前記心拍信号取得ステップにて取得した心拍信号の心拍のスペクトル演算をする。この処理は心拍スペクトル演算部によって実行される(心拍スペクトル演算ステップ S1602)。次に、前記心拍スペクトル演算ステップでの演算結果であるパワースペクトルのピークが、あらかじめ設定される呼吸性心拍変動(RSA)の周波数範囲内に出現し、かつ、あらかじめ設定される持続時間継続されるか否かを判断する。この処理は判断部によって実行される(判断ステップ S1603)。そして、前記心拍スペクトル演算ステップにて演算された演算結果と前記判断ステップにて判断された判断結果とに基づいて障害者がRSA出現状態であるかRSA出現状態でないかを示す情報を出力する。この処理は、インターフェイス部によって実行される(出力ステップ S1604)。
<実施形態7 試用結果>
【0102】
本願発明者は、実施形態1のコミュニケーション支援装置に、本実施形態に係る機能を付加したコミュニケーション支援装置の試用を、意思疎通が困難な4人の障害者に対して、医師等の協力の下行った。試用は、RSA出現時とRSA非出現時との二つの条件下において、各障害者に対して直接声をかけるという刺激を与え、その前後における心拍変動を1試行ずつ調べた。その結果、4名全員において、RSA非出現時での声がけに対してRSA出現時での声がけの方が、減速反応が多く、また本人の動きなどを原因とした、心拍の不安定によるエラーはRSA出現時の方が明らかに少なかった。つまり、障害者において、RSA出現時の方が、声がけなどの刺激を受け入れやすい状態にあるということが推認できる。なお、刺激呈示条件と心拍変動との2要因分散分析によって、刺激呈示条件、心拍変動および交互作用で有意差が確認された。
<実施形態7 効果>
【0103】
本実施形態のコミュニケーション支援装置により、障害者がRSA出現状態にあるか否かの情報を常時出力しつづけることにより、障害者とのコミュニケーションに役立つ。
【符号の説明】
【0104】
0200 コミュニケーション支援装置
0201 保持部
0202 測定部
0203 キャッシュ部
0204 後半単位時間心拍数計算部
0205 前半単位時間心拍数計算部
0206 計算部
0207 インターフェイス部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
意思疎通が困難な障害者に与えられた刺激に対する障害者からのレスポンスを複数の生体情報を用いた演算に基づいて出力してコミュニケーションに役立てるための装置であって、
意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持する保持部と、
前記障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、
測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)時間分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のB時間分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、
前半単位時間心拍数を中心として保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、
計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部と、
を有するコミュニケーション支援装置。
【請求項2】
意思疎通が困難な障害者に与えられた刺激に対する障害者からのレスポンスを複数の生体情報を用いた演算に基づいて出力してコミュニケーションに役立てるための装置であって、
前記障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、
測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)時間分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のB時間分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持するダイナミック保持部と、
前半単位時間心拍数を中心としてダイナミック保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、
計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部と、
を有するコミュニケーション支援装置。
【請求項3】
前記計算部の計算と前記インターフェイス部の出力は、鼓動の平均繰り返し時間間隔である平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行うインターバル計算手段を有する請求項1または2に記載のコミュニケーション支援装置。
【請求項4】
キャッシュ部の測定データから前記障害者の現在時刻における平均単位時間心拍数を計算する平均心拍数計算手段と、
平均心拍数計算手段での計算結果からキャッシュ部に命令して(A+B)時間を制御する制御手段と、
を有するキャッシュ時間制御部をさらに有する請求項1から3のいずれか一に記載のコミュニケーション装置。
【請求項5】
意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持する保持部と、
前記障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、
測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のD拍分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のC拍分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、
前半単位時間心拍数を中心として保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、
計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部と、
を有するコミュニケーション支援装置。
【請求項6】
意思疎通が困難な障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、
測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のD拍分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のC拍分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のC拍分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持するダイナミック保持部と、
前半単位時間心拍数を中心としてダイナミック保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、
計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部と、
を有するコミュニケーション支援装置。
【請求項7】
前記計算部の計算と前記インターフェイス部の出力は、鼓動の平均繰り返し時間間隔である平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行うインターバル計算手段を有する請求項5または6に記載のコミュニケーション支援装置。
【請求項8】
意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間当たりの生理測定値の標準偏差値であるシグマを生理測定値の種類に応じて複数保持可能な保持部と、
前記障害者の生理測定値をその種類に応じて測定する複数の測定部と、
測定部ごとに測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)単位分の測定データをその生理測定値の種類に応じて複数キャッシュ可能なキャッシュ部と、
前記キャッシュされている生理測定値の種類ごとに後半のB単位分の後半単位生理測定値を前記測定中は常時計算しつづけることが可能な後半単位生理測定値計算手段、
前記キャッシュされている生理測定値の種類ごとに前半のA単位分の前半単位生理測定値を前記測定中は常時計算しつづけることが可能な前半単位生理測定値計算手段、
測定データの種類ごとに後半単位生理測定値が、前半単位生理測定値を中心として各生理測定値の種類ごとのシグマで区分して、プラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に位置するかを前記測定中は常時計算しつづける複数の位置計算手段、
位置計算手段での計算結果を測定データの種類に応じて重みづけして平均値を算出する平均値算出手段と、
を格納可能なパッチパネル部と、
平均値算出手段で算出された平均値を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部と、
を有するコミュニケーション支援装置。
【請求項9】
測定部の測定結果を蓄積する測定結果蓄積部と、
意思疎通が困難な障害者に対して刺激を与えたタイミングの入力を受け付けて、前記測定部の測定結果の時間軸と共通の時間軸で蓄積可能な刺激付与タイミング蓄積部と、
刺激付与タイミング蓄積部に蓄積されている刺激を与えたタイミングでの測定結果を測定結果蓄積部にてサーチするサーチ部と、
をさらに有する請求項1から8のいずれか一に記載のコミュニケーション支援装置。
【請求項10】
意思疎通が困難な障害者の心拍信号を取得する心拍信号取得部と、
取得した心拍信号の心拍のスペクトル演算を行う心拍スペクトル演算部と、
前記心拍スペクトル演算部の演算結果として得られるパワースペクトルのピークが、あらかじめ設定される呼吸性心拍変動(RSA)の周波数範囲内に出現し、かつ、あらかじめ設定される持続時間継続されるか否かを判断する判断部と、
前記心拍スペクトル演算部の演算結果と、前記判断部の判断結果とに基づいて前記障害者がRSA出現状態であるかRSA出現状態でないかを示す情報を前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部と、
を有するコミュニケーション支援装置。
【請求項1】
意思疎通が困難な障害者に与えられた刺激に対する障害者からのレスポンスを複数の生体情報を用いた演算に基づいて出力してコミュニケーションに役立てるための装置であって、
意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持する保持部と、
前記障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、
測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)時間分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のB時間分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、
前半単位時間心拍数を中心として保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、
計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部と、
を有するコミュニケーション支援装置。
【請求項2】
意思疎通が困難な障害者に与えられた刺激に対する障害者からのレスポンスを複数の生体情報を用いた演算に基づいて出力してコミュニケーションに役立てるための装置であって、
前記障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、
測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)時間分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のB時間分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のA時間分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持するダイナミック保持部と、
前半単位時間心拍数を中心としてダイナミック保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、
計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部と、
を有するコミュニケーション支援装置。
【請求項3】
前記計算部の計算と前記インターフェイス部の出力は、鼓動の平均繰り返し時間間隔である平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行うインターバル計算手段を有する請求項1または2に記載のコミュニケーション支援装置。
【請求項4】
キャッシュ部の測定データから前記障害者の現在時刻における平均単位時間心拍数を計算する平均心拍数計算手段と、
平均心拍数計算手段での計算結果からキャッシュ部に命令して(A+B)時間を制御する制御手段と、
を有するキャッシュ時間制御部をさらに有する請求項1から3のいずれか一に記載のコミュニケーション装置。
【請求項5】
意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持する保持部と、
前記障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、
測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のD拍分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のC拍分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、
前半単位時間心拍数を中心として保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、
計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部と、
を有するコミュニケーション支援装置。
【請求項6】
意思疎通が困難な障害者の鼓動タイミングを測定する測定部と、
測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(C+D)拍分の測定データをキャッシュするキャッシュ部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの後半のD拍分の後半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける後半単位時間心拍数計算部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のC拍分の前半単位時間心拍数を前記測定中は常時計算しつづける前半単位時間心拍数計算部と、
キャッシュ部にキャッシュされている測定データの前半のC拍分の前半単位時間心拍数の測定結果の標準偏差値であるシグマを保持するダイナミック保持部と、
前半単位時間心拍数を中心としてダイナミック保持部に保持されている標準偏差値で区分したプラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に後半単位時間心拍数が位置するかを前記測定中は常時計算しつづける計算部と、
計算部での計算結果を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部と、
を有するコミュニケーション支援装置。
【請求項7】
前記計算部の計算と前記インターフェイス部の出力は、鼓動の平均繰り返し時間間隔である平均鼓動インターバル以下の時間で1回の計算および1回の出力を行うインターバル計算手段を有する請求項5または6に記載のコミュニケーション支援装置。
【請求項8】
意思疎通が困難な障害者の安静時の単位時間当たりの生理測定値の標準偏差値であるシグマを生理測定値の種類に応じて複数保持可能な保持部と、
前記障害者の生理測定値をその種類に応じて測定する複数の測定部と、
測定部ごとに測定部が測定中に現在時から過去にさかのぼって少なくとも常時(A+B)単位分の測定データをその生理測定値の種類に応じて複数キャッシュ可能なキャッシュ部と、
前記キャッシュされている生理測定値の種類ごとに後半のB単位分の後半単位生理測定値を前記測定中は常時計算しつづけることが可能な後半単位生理測定値計算手段、
前記キャッシュされている生理測定値の種類ごとに前半のA単位分の前半単位生理測定値を前記測定中は常時計算しつづけることが可能な前半単位生理測定値計算手段、
測定データの種類ごとに後半単位生理測定値が、前半単位生理測定値を中心として各生理測定値の種類ごとのシグマで区分して、プラスマイナスシグマ以内領域である変化なし領域、プラスシグマを越える領域である加速反応領域、マイナスシグマ未満領域である減速反応領域のうち、どの領域に位置するかを前記測定中は常時計算しつづける複数の位置計算手段、
位置計算手段での計算結果を測定データの種類に応じて重みづけして平均値を算出する平均値算出手段と、
を格納可能なパッチパネル部と、
平均値算出手段で算出された平均値を、前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部と、
を有するコミュニケーション支援装置。
【請求項9】
測定部の測定結果を蓄積する測定結果蓄積部と、
意思疎通が困難な障害者に対して刺激を与えたタイミングの入力を受け付けて、前記測定部の測定結果の時間軸と共通の時間軸で蓄積可能な刺激付与タイミング蓄積部と、
刺激付与タイミング蓄積部に蓄積されている刺激を与えたタイミングでの測定結果を測定結果蓄積部にてサーチするサーチ部と、
をさらに有する請求項1から8のいずれか一に記載のコミュニケーション支援装置。
【請求項10】
意思疎通が困難な障害者の心拍信号を取得する心拍信号取得部と、
取得した心拍信号の心拍のスペクトル演算を行う心拍スペクトル演算部と、
前記心拍スペクトル演算部の演算結果として得られるパワースペクトルのピークが、あらかじめ設定される呼吸性心拍変動(RSA)の周波数範囲内に出現し、かつ、あらかじめ設定される持続時間継続されるか否かを判断する判断部と、
前記心拍スペクトル演算部の演算結果と、前記判断部の判断結果とに基づいて前記障害者がRSA出現状態であるかRSA出現状態でないかを示す情報を前記障害者とコミュニケーションをとろうとする者のために常時出力しつづけることが可能なインターフェイス部と、
を有するコミュニケーション支援装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2011−22869(P2011−22869A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−168284(P2009−168284)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(509170969)
【出願人】(509171818)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(509170969)
【出願人】(509171818)
【Fターム(参考)】
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