説明

重走検出機構及び媒体厚さ検出機構

【課題】透過光による照度によって媒体の重走枚数を検知する重走検出機構は、媒体が流通により汚損されたものである場合に、媒体の重走枚数を検知する精度が低下するとともに、消費電力が増大する。
【解決手段】搬送路3の一方の側面に光源8を配置するとともに、搬送路の他方の側面の光源と対向する位置に平凹レンズ9と複数のフォトセンサ10とを配置する。複数のフォトセンサは、搬送路に対して鉛直方向に重ねて配置されている。枚数特定部11は、複数のフォトセンサの中のいずれのフォトセンサが平凹レンズによって発散された光及び媒体20の影のいずれか一方又は双方を取り入れたのかを識別することによって、搬送機構によって搬送された媒体の枚数を特定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送機構によって搬送路上を搬送されるシート状の媒体の重走を検知する重走検出機構及び収納部に収納されたシート状の媒体の厚さを検知する媒体厚さ検出機構に関する。
【背景技術】
【0002】
重走検出機構は、搬送機構によって搬送路上を搬送されるシート状の媒体の重走を検知する機構である。
【0003】
重走検出機構は、様々な機器(例えば、紙幣処理装置や、画像形成装置、画像読取装置、その他)に適用される。なお、「紙幣処理装置」としては、例えば、媒体として紙幣を取り扱う、ATM(自動取引装置)や窓口装置等がある。また、「画像形成装置」としては、例えば、媒体として用紙を取り扱う、プリンタやコピー機、MFP(Multi Function Peripheral)等がある。また、「画像読取装置」としては、例えば、媒体として用紙を取り扱う、スキャナやMFP等がある。
【0004】
重走検出機構としては、搬送機構によって搬送された媒体に一定の光量の光を照射し、媒体を透過した光による照度(すなわち、光に照らされた面の単位面積が受ける光束)を測定することによって、媒体の有無及び媒体の重走枚数を検知するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1は、画像形成装置に組み込まれた重走検出機構を開示している。この重走検出機構は、トレイやカセット等にセットされた用紙束から分離された用紙の面に対して、一定の光量の光を照射する。照射された光は、用紙を透過して、フォトセンサに入る。これにより、フォトセンサは、用紙の重走枚数に応じた照度を検知する。この照度が、例えば、2450〜2300ルクスの場合に、用紙1枚に相当し、2200〜2050ルクスの場合に、用紙2枚に相当し、1950〜1800ルクスの場合に、用紙3枚に相当する。このようにして、この重走検出機構は、用紙の重走枚数を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−88564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の重走検出機構は、以下に説明するように、媒体が流通されたものである場合に、媒体の重走枚数を検知する精度が低下するという課題、及び、消費電力が増大するという課題があった。
【0008】
すなわち、媒体は、例えば紙幣等のように、流通により汚損されたものである場合に、固体毎に汚損状態が著しく異なるため、1枚当たりの媒体を透過する光量にバラツキが生じる。これにより、従来の重走検出機構は、媒体が流通により汚損されたものである場合に、透過光による照度にバラツキが生じるため、媒体の重走枚数を検知する精度が低下するという課題があった。
【0009】
また、従来の重走検出機構は、重走している媒体を透過させることができる光量の光を媒体に照射する必要がある。そのため、従来の重走検出機構は、単純に媒体の有無を検知する場合と比べて、多大な光量の光を照射する必要があり、これにより、消費電力が増大するという課題があった。
【0010】
第1発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、媒体が流通により汚損されたものであっても、媒体の重走枚数を正確に検知することができるとともに、消費電力を低減することができる重走検出機構を提供することを主な目的とする。
【0011】
また、第2発明は、第1発明と同様の機構を用いて、収納部に収納されたシート状の媒体の厚さを正確に検知することができるとともに、消費電力を低減することができる媒体厚さ検出機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、第1発明は、搬送機構によって搬送路上を搬送されるシート状の媒体の重走を検知する重走検出機構であって、前記搬送路の搬送面及び搬送方向に対して略垂直な一方の側面に配置され、前記搬送路に対して一方の側面から他方の側面に向けて光を照射する光源と、前記搬送路の他方の側面の前記光源と対向する位置に配置され、前記光源から照射された光及び当該光が前記搬送機構によって搬送される前記媒体の側面部分によって遮られることにより生じる媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れ、当該光及び当該媒体の影のいずれか一方又は双方を発散させる平凹レンズと、前記搬送路の他方の側面の、前記平凹レンズを介して前記光源と対向する位置に、前記搬送路に対して鉛直方向に重ねて配置された、前記光及び前記媒体の影のいずれか一方又は双方を検知する複数のフォトセンサと、前記複数のフォトセンサの中のいずれのフォトセンサが前記平凹レンズによって発散された前記光及び前記媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れたのかを識別することによって、前記搬送機構によって搬送された前記媒体の枚数を特定する枚数特定部とを有する構成とする。
【0013】
この重走検出機構は、光源が、媒体の側面から光を照射し、平凹レンズが、その光及び光が媒体の側面部分によって遮(さえぎ)られることにより生じる媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れ、その光及び媒体の影のいずれか一方又は双方を発散し、複数のフォトセンサが、平凹レンズによって発散された光及び媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れる。このとき、枚数特定部が、複数のフォトセンサの中のいずれのフォトセンサが平凹レンズによって発散された光及び媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れたのかを識別することによって、媒体の枚数を特定する。
【0014】
また、第2発明は、収納部に収納されたシート状の媒体の厚さを検知する媒体厚さ検出機構であって、前記収納部の収納面及び収納方向に対して略垂直な一方の側面に配置され、前記収納部に対して一方の側面から他方の側面に向けて光を照射する光源と、前記収納部の他方の側面の前記光源と対向する位置に配置され、前記光源から照射された光及び当該光が前記媒体の側面部分によって遮られることにより生じる媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れ、当該光及び当該媒体の影のいずれか一方又は双方を発散させる平凹レンズと、前記収納部の他方の側面の、前記平凹レンズを介して前記光源と対向する位置に、前記収納部に対して鉛直方向に重ねて配置された、前記光及び前記媒体の影のいずれか一方又は双方を検知する複数のフォトセンサと、前記複数のフォトセンサの中のいずれのフォトセンサが前記平凹レンズによって発散された前記光及び前記媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れたのかを識別することによって、前記収納部に収納された前記媒体の厚さを特定する厚さ特定部とを有する構成とする。
【0015】
この媒体厚さ検出機構は、第1発明の重走検出機構と同様に、光源が、媒体の側面から光を照射し、平凹レンズが、その光及び光が媒体の側面部分によって遮られることにより生じる媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れ、その光及び媒体の影のいずれか一方又は双方を発散し、複数のフォトセンサが、平凹レンズによって発散された光及び媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れる。このとき、厚さ特定部が、複数のフォトセンサの中のいずれのフォトセンサが平凹レンズによって発散された光及び媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れたのかを識別することによって、媒体の厚さを特定する。
【発明の効果】
【0016】
第1発明によれば、媒体が流通により汚損されたものであっても、媒体の重走枚数を正確に検知することができるとともに、消費電力を低減することができる重走検出機構を提供することができる。
【0017】
また、第2発明によれば、第1発明と同様の機構を用いて、収納部に収納されたシート状の媒体の厚さを正確に検知することができるとともに、消費電力を低減することができる媒体厚さ検出機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施形態1に係る重走検出機構の構成を示す図である。
【図2】実施形態1に係る重走検出機構が適用される機器の一構成例を示す図である。
【図3】実施形態1に係る重走検出機構の動作を示す図である。
【図4】実施形態2に係る重走検出機構の適用位置の一例を示す図である。
【図5】実施形態2に係る重走検出機構の適用位置の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)につき詳細に説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0020】
[実施形態1]
<重走検出機構の構成>
以下、図1を参照して、本実施形態1に係る重走検出機構の構成につき説明する。図1は、実施形態1に係る重走検出機構の構成を示す図である。なお、ここでは、媒体が、紙幣20であるものとして説明する。この紙幣20は、搬送路(以下、「紙幣搬送路3」と称する)に沿って、図示せぬ搬送機構によって搬送される。
【0021】
図1に示すように、本実施形態1に係る重走検出機構7は、光源8、平凹レンズ9、複数の重走検知用フォトセンサ10、及び枚数特定部11を有している。
【0022】
光源8は、光の照射手段である。光源8は、例えば、レーザ照射手段、又は、単数或いは複数の単結晶薄膜半導体発光素子からなるLED(Light Emitting Diode)アレイ等によって構成されており、実装密度が高いほど好ましい。光源8は、紙幣搬送路3の搬送面及び搬送方向に対して略垂直な一方の側面に配置されている。光源8は、媒体(ここでは、紙幣20)の側面から、重走枚数測定用の光(平行光・略平行光)を照射する。なお、光源8は、複数の単結晶薄膜半導体発光素子からなるLEDアレイとして構成されている場合に、重走している媒体を透過させるだけの光量の光を容易に照射することが可能となる。
【0023】
平凹レンズ9は、一方の面が平坦面として形成され、他方の面が凹面として形成されたレンズである。平凹レンズ9は、紙幣搬送路3の他方の側面の光源8と対向する位置に配置されている。
【0024】
平凹レンズ9は、光及び媒体の影を発散させる機能を有している。なお、「発散」とは、光線が四方に広がる動作を意味している。図1に示す例では、平凹レンズ9は、光源8から照射された光及びその光が図示せぬ搬送機構によって搬送される媒体(ここでは、紙幣20)の側面部分によって遮(さえぎ)られることにより生じる媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れ、その光及び媒体の影のいずれか一方又は双方を発散させる。平凹レンズ9は、好ましくは、光源8が単数或いは複数の単結晶薄膜半導体発光素子からなるLEDアレイとして構成されている場合に、平凹シリンドリカルレンズとして構成されているとよい。なお、「平凹シリンドリカルレンズ」とは、光が透過する2つ主表面のうち、一方が平坦面に形成され、他方が円柱面状の溝を有する面状に形成されたレンズを意味する。
【0025】
平凹レンズ9は、紙幣20等のように薄い媒体の側面から照射された光及び媒体の影のいずれか一方又は双方を十分に取り入れることができ、かつ、媒体の重走枚数に応じて面積が増大する媒体の影を拡大して複数の重走検知用フォトセンサ10に投影する構成となっている。
【0026】
複数の重走検知用フォトセンサ(以下、単に「フォトセンサ」と称する)10は、光及び媒体の影のいずれか一方又は双方を検知する検知手段である。複数のフォトセンサ10は、紙幣搬送路3の他方の側面の、平凹レンズ9を介して光源8と対向する位置に、紙幣搬送路3に対して鉛直方向(立体方向)に重ねて配置されている。複数のフォトセンサ10は、好ましくは、単一のフォトセンサアレイとして形成されているとよい。複数のフォトセンサ10は、平凹レンズ9によって発散された光及び媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れる。
【0027】
複数のフォトセンサ10のそれぞれは、紙幣搬送路3に対する鉛直方向の位置が、媒体(ここでは、紙幣20)の枚数に対応して定まっている。以下、平凹レンズ9の光軸9a上に配置されたフォトセンサを「フォトセンサ10a」と称し、フォトセンサ10aを基準にして紙幣搬送路3に対して鉛直方向に等間隔おきに配置されたフォトセンサをそれぞれ「フォトセンサ10b,10c,…,10n」と称する。
【0028】
「フォトセンサ10a」は、「重走無し」の状態(すなわち、媒体が重走していない状態)を検出するためのセンサである。以下、「フォトセンサ10a」を「重走無し検知用フォトセンサ10a」と称する場合もある。
【0029】
「フォトセンサ10b」は、「重走2枚」の状態(すなわち、2枚の媒体が重走している状態)を検出するためのセンサである。以下、「フォトセンサ10b」を「重走2枚検知用フォトセンサ10b」と称する場合もある。
【0030】
「フォトセンサ10c」は、「重走3枚」の状態(すなわち、3枚の媒体が重走している状態)を検出するためのセンサである。以下、「フォトセンサ10c」を「重走3枚検知用フォトセンサ10c」と称する場合もある。
【0031】
同様に、「フォトセンサ10n」は、「重走n枚」の状態(すなわち、n枚の媒体が重走している状態)を検出するためのセンサである。以下、「フォトセンサ10n」を「重走n枚検知用フォトセンサ10n」と称する場合もある。
【0032】
枚数特定部11は、複数のフォトセンサ10の状態に基づいて、媒体(ここでは、紙幣20)の重走の有無、及び、媒体の搬送の有りと判定された場合の重走枚数を特定する機能手段である。枚数特定部11は、図示せぬCPU、RAM、ROM、及び制御用のプログラムによって構成されている。枚数特定部11は、複数のフォトセンサ10の中のいずれのフォトセンサ10a,10b,10c,…,10nが平凹レンズ9によって発散された光又は媒体の影を取り入れたのかを識別することによって、図示せぬ搬送機構によって搬送された媒体(ここでは、紙幣20)の枚数を特定する。
【0033】
<重走検出機構が適用される機器>
以下、図2を参照して、本実施形態1に係る重走検出機構7が組み込まれる機器につき説明する。図2は、実施形態1に係る重走検出機構が適用される機器の一構成例を示す図である。
【0034】
重走検出機構7は、様々な機器(例えば、紙幣処理装置や、画像形成装置、その他)に適用される。ここでは、図2に示すように、重走検出機構7が、紙幣処理装置1に適用されるものとして説明する。なお、紙幣処理装置1は、媒体として紙幣20を取り扱う、ATM(自動取引装置)や窓口装置等の装置である。
【0035】
図2に示す例では、紙幣処理装置1は、紙幣投入口2、紙幣搬送路3、紙幣鑑別部4、一時保留部5、紙幣収納部6、及び重走検出機構7を有している。図2に示す例では、重走検出機構7は、紙幣20の搬送方向における、紙幣鑑別部4の直前の位置に配置されている。なお、図2中、矢印は、紙幣20の搬送方向を示している。紙幣20は、例えば、搬送ローラや搬送ベルト等の、図示せぬ搬送機構によって搬送される。
【0036】
紙幣投入口2は、入金処理時に、顧客によって紙幣20が投入され、出金処理時に、顧客に放出する紙幣20が集積される機構である。
紙幣搬送路3は、紙幣20が搬送される経路である。紙幣20は、紙幣搬送路3に沿って、図示せぬ搬送機構によって搬送される。
【0037】
紙幣鑑別部4は、紙幣20の真偽及び金種を鑑別し、金種毎に紙幣20の枚数をカウントする機構である。
一時保留部5は、紙幣20が一時集積される機構である。
紙幣収納部6は、紙幣20が収納される機構である。
【0038】
紙幣処理装置1は、入金処理時に、顧客によって紙幣投入口2から投入された紙幣20を1枚ずつ分離して、紙幣搬送路3に沿って、図示せぬ搬送機構によって紙幣20を紙幣鑑別部4まで搬送する。
そして、紙幣処理装置1は、紙幣鑑別部4によって紙幣20の真偽及び金種を鑑別し、金種毎に紙幣20の枚数をカウントしながら、図示せぬ搬送機構によって紙幣20を一時保留部5まで搬送して、紙幣20を一時保留部5に集積するとともに、鑑別された紙幣20の金種及び枚数を図示せぬ顧客操作部に表示する。
この後、紙幣処理装置1は、顧客が表示内容を確認すると、一時保留部5に集積された紙幣20を分離して、図示せぬ搬送機構によって紙幣20を紙幣収納部6まで搬送し、紙幣20を紙幣収納部6に収納する。
【0039】
また、紙幣処理装置1は、出金処理時に、紙幣収納部6に収納された紙幣20の中から、顧客によって出金要求された金額分の紙幣20を分離して、紙幣搬送路3に沿って、図示せぬ搬送機構によって紙幣20を紙幣鑑別部4まで搬送する。
そして、紙幣処理装置1は、紙幣鑑別部4によって紙幣20の真偽及び金種を鑑別し、金種毎に紙幣20の枚数をカウントしながら、図示せぬ搬送機構によって紙幣20を紙幣投入口2まで搬送して、紙幣20を紙幣投入口2に集積する。
この後、紙幣処理装置1は、紙幣投入口2を開放して、紙幣20を顧客に放出する。
【0040】
<重走検出機構の動作>
以下、図3を参照して、本実施形態1に係る重走検出機構7の動作につき説明する。ここでは、重走検出機構7のフォトセンサ10は、光源8から照射された光を取り入れた場合(すなわち、明るくなったことを検知した場合)に、「OFF状態」になり、媒体である紙幣20の影を取り入れた場合(すなわち、媒体で光が遮蔽され暗くなったことを検知した場合)に、「ON状態」になるものとして説明する。
【0041】
図3(a)に示すように、重走検出機構7は、紙幣20が搬送されていない場合に、すべてのフォトセンサ10a,10b,10c,…,10nが、光源8から照射された光を取り入れる。そのため、すべてのフォトセンサ10a,10b,10c,…,10nが、明るくなったことを検知した状態(すなわち、「OFF状態」)となる。この場合に、枚数特定部11は、紙幣20の搬送無し状態であると識別し、紙幣20の枚数を「0枚」と特定する。
【0042】
また、図3(b)に示すように、重走検出機構7は、紙幣20が1枚搬送されている場合に、フォトセンサ10aのみが紙幣20の影を取り入れ、他のフォトセンサ10b,10c,…,10nが、光源8から照射された光を取り入れる。そのため、フォトセンサ10aのみが暗くなったことを検知した状態(すなわち、「ON」状態)となり、他のフォトセンサ10b,10c,…,10nが明るくなったことを検知した状態(すなわち、「OFF状態」)となる。この場合に、枚数特定部11は、紙幣20の搬送が1枚の状態であると識別し、紙幣20の枚数を「1枚」と特定する。
【0043】
同様に、図3(c)に示すように、重走検出機構7は、紙幣20が2枚搬送されている場合に、フォトセンサ10a,10bが紙幣20の影を取り入れ、他のフォトセンサ10c,…,10nが、光源8から照射された光を取り入れる。そのため、フォトセンサ10a,10bが暗くなったことを検知した状態(すなわち、「ON」状態)となり、他のフォトセンサ10c,…,10nが明るくなったことを検知した状態(すなわち、「OFF状態」)となる。この場合に、枚数特定部11は、紙幣20の搬送が2枚の状態であると識別し、紙幣20の枚数を「2枚」と特定する。
【0044】
同様に、図3(d)に示すように、重走検出機構7は、紙幣20が3枚搬送されている場合に、フォトセンサ10a,10b,10cが紙幣20の影を取り入れ、他のフォトセンサ10d(図示せず),…,10nが、光源8から照射された光を取り入れる。そのため、フォトセンサ10a,10b,10cが暗くなったことを検知した状態(すなわち、「ON」状態)となり、他のフォトセンサ10d,…,10nが明るくなったことを検知した状態(すなわち、「OFF状態」)となる。この場合に、枚数特定部11は、紙幣20の搬送が3枚の状態であると識別し、紙幣20の枚数を「3枚」と特定する。
【0045】
以下、重走検出機構7は、紙幣20の枚数に応じて、同様に動作する。したがって、重走検出機構7は、紙幣20の枚数に応じて配置されたフォトセンサ10の数だけ、図示せぬ搬送機構によって搬送される紙幣20の枚数を特定することができる。
【0046】
このようにして、重走検出機構7は、図示せぬ搬送機構によって紙幣搬送路3上を搬送されるシート状の媒体(ここでは、紙幣20)の重走の有無及び重走枚数を検知する。この重走検出機構7は、特に、例えば流通紙幣のような透過光量の異なるシート状の媒体の重走枚数を検知するのに好適である。
【0047】
以上の通り、本実施形態1に係る重走検出機構7によれば、媒体(ここでは、紙幣20)の透過光を利用せずに、媒体の側面から照射された光及びその光が媒体の側面部分によって遮られることにより生じる媒体の影を利用するため、1枚当たりの媒体を透過する光量に関係することなく、媒体の枚数を特定することができ、これにより、たとえ媒体が流通により汚損されたものであっても、媒体の重走枚数を正確に検知することができる。
【0048】
また、この重走検出機構7によれば、媒体を透過させることができる光量の光を媒体に照射する必要がないため、従来の重走検出機構よりも消費電力を低減することができる。
【0049】
[実施形態2]
実施形態1では、重走検出機構7が、紙幣鑑別部4の直前の位置に配置されている(図2参照)。この構成では、重走検出機構7は、媒体(紙幣20)に大きな皺(しわ)や折り目がある場合に、誤った枚数を検知する可能性がある。そのため、重走検出機構7は、媒体の皺や折り目が除去された状態で媒体の枚数を検知することが好ましい。
【0050】
そこで、本実施形態2では、重走検出機構7は、媒体の皺や折り目が矯正された状態で、媒体の枚数を検知する構成とする。このような構成を実現するために、本実施形態2では、重走検出機構7は、搬送路の角となる部分(以下、「角部分」と称する)や搬送路の湾曲した部分(以下、「湾曲部分」と称する)等に配置するものとする。
【0051】
以下、図4及び図5を参照して、本実施形態2に係る重走検出機構7の適用位置につき説明する。図4は、実施形態2に係る重走検出機構の適用位置の一例を示す図である。また、図5は、実施形態2に係る重走検出機構の適用位置の他の例を示す図である。
【0052】
図4に示す例では、重走検出機構7は、紙幣搬送路3の角部分3aに配置されている。紙幣搬送路3は、媒体(紙幣20)が角部分3aを通過する際に、曲げ応力を媒体に付与する。そのため、媒体は、角部分3aを通過する際に、角部分3aに沿って撓(たわ)む。これにより、媒体の皺や折り目が、伸ばされて、矯正される。重走検出機構7は、媒体の皺や折り目が矯正された状態で媒体の枚数を検知するため、媒体の正確な枚数を検知することができる。
【0053】
一方、図5に示す例では、重走検出機構7は、紙幣搬送路3の湾曲部分3bに配置されている。湾曲部分3bは、媒体の皺や折り目を矯正するために、紙幣搬送路3に意図的に設けられたものである。紙幣搬送路3は、媒体(紙幣20)が湾曲部分3bを通過する際に、曲げ応力を媒体に付与する。そのため、媒体は、湾曲部分3bを通過する際に、湾曲部分3bに沿って撓(たわ)む。これにより、媒体の皺や折り目が、伸ばされて、矯正される。重走検出機構7は、媒体の皺や折り目が矯正された状態で媒体の枚数を検知するため、媒体の正確な枚数を検知することができる。
【0054】
以上の通り、本実施形態2によれば、たとえ媒体が皺や折り目があるものであっても、媒体の正確な枚数を検知することができる。
【0055】
本発明は、前記した実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更や変形を行うことができる。
【0056】
例えば、本発明は、紙幣処理装置1に限らず、例えば画像形成装置や画像読取装置等の、透過光量の異なるシート状の媒体を搬送する機構を有する装置に適用することができる。
【0057】
また、例えば、重走検出機構7は、媒体を収容する収納部に配置することにより、収納部に収容された媒体の厚さを検出する媒体厚さ検出機構(図1参照)として用いることも可能である。ここで、「収容部」とは、例えば、本発明の適用装置が図2に示す紙幣処理装置1であれば、紙幣投入口2や一時保留部5、紙幣収納部6等を指しており、本発明の適用装置が画像形成装置であれば用紙収納カセットや排出トレイ等を指す。
【0058】
なお、この場合に、光源8は、収納部の収納面及び収納方向に対して略垂直な一方の側面に配置され、収納部に対して一方の側面から他方の側面に向けて光を照射する構成となる。媒体厚さ検出機構は、光源8の実装密度が高くなるほど、媒体の厚さを正確に測定できるので、光源8の実装密度が高い方が好ましい。
【0059】
また、この場合に、平凹レンズ9は、収納部の他方の側面の光源8と対向する位置に配置され、光源8から照射された光、及び、その光が媒体の側面部分によって遮られることにより生じる媒体の影を取り入れ、その光及び媒体の影を発散させる構成となる。平凹レンズ9は、好ましくは、光源8が単数或いは複数の単結晶薄膜半導体発光素子からなるLEDアレイとして構成されている場合に、平凹シリンドリカルレンズとして構成されているとよい。
【0060】
また、この場合に、複数のフォトセンサ10は、収納部の他方の側面の、平凹レンズ9を介して光源8と対向する位置に、収納部に対して鉛直方向に重ねて配置された、光又は媒体の影を検知する構成となる。複数のフォトセンサのそれぞれは、収納部に対する鉛直方向の位置が、媒体の厚さに対応して定まった構成となる。
【0061】
また、この場合に、枚数特定部11は、「厚さ特定部」(図1参照)として機能する。その厚さ特定部11は、複数のフォトセンサ10の中のいずれのフォトセンサが平凹レンズ9によって発散された光又は媒体の影を取り入れたのかを識別することによって、収納部に収納された媒体の厚さを特定する。
【符号の説明】
【0062】
1 紙幣処理装置
2 紙幣投入口
3 紙幣搬送路
3a 角部分
3b 湾曲部分
4 紙幣鑑別部
5 一時保留部
6 紙幣収納部
7 重走検出機構(媒体厚さ検出機構)
8 光源
9 平凹レンズ
10(10a,10b,10c,…,10n) 重走検知用フォトセンサ
11 枚数特定部(厚さ特定部)
20 媒体(紙幣)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送機構によって搬送路上を搬送されるシート状の媒体の重走を検知する重走検出機構において、
前記搬送路の搬送面及び搬送方向に対して略垂直な一方の側面に配置され、前記搬送路に対して一方の側面から他方の側面に向けて光を照射する光源と、
前記搬送路の他方の側面の前記光源と対向する位置に配置され、前記光源から照射された光及び当該光が前記搬送機構によって搬送される前記媒体の側面部分によって遮られることにより生じる媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れ、当該光及び当該媒体の影のいずれか一方又は双方を発散させる平凹レンズと、
前記搬送路の他方の側面の、前記平凹レンズを介して前記光源と対向する位置に、前記搬送路に対して鉛直方向に重ねて配置された、前記光及び前記媒体の影のいずれか一方又は双方を検知する複数のフォトセンサと、
前記複数のフォトセンサの中のいずれのフォトセンサが前記平凹レンズによって発散された前記光及び前記媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れたのかを識別することによって、前記搬送機構によって搬送された前記媒体の枚数を特定する枚数特定部と
を有することを特徴とする重走検出機構。
【請求項2】
請求項1に記載の重走検出機構において、
前記平凹レンズは、
平坦面が、前記光源と対向し、かつ、凹面が、前記複数のフォトセンサと対向するように配置されている
ことを特徴とする重走検出機構。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の重走検出機構において、
前記平凹レンズは、平凹シリンドリカルレンズとして構成されており、かつ、
前記光源は、単数或いは複数の単結晶薄膜半導体発光素子からなるLEDアレイとして構成されている
ことを特徴とする重走検出機構。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の重走検出機構において、
前記複数のフォトセンサのそれぞれは、
前記搬送路に対する鉛直方向の位置が、前記媒体の枚数に対応して定まっている
ことを特徴とする重走検出機構。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の重走検出機構において、
前記搬送路の角部分に配置されている
ことを特徴とする重走検出機構。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の重走検出機構において、
前記搬送路の湾曲部分に配置されている
ことを特徴とする重走検出機構。
【請求項7】
収納部に収納されたシート状の媒体の厚さを検知する媒体厚さ検出機構において、
前記収納部の収納面及び収納方向に対して略垂直な一方の側面に配置され、前記収納部に対して一方の側面から他方の側面に向けて光を照射する光源と、
前記収納部の他方の側面の前記光源と対向する位置に配置され、前記光源から照射された光及び当該光が前記媒体の側面部分によって遮られることにより生じる媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れ、当該光及び当該媒体の影のいずれか一方又は双方を発散させる平凹レンズと、
前記収納部の他方の側面の、前記平凹レンズを介して前記光源と対向する位置に、前記収納部に対して鉛直方向に重ねて配置された、前記光及び前記媒体の影のいずれか一方又は双方を検知する複数のフォトセンサと、
前記複数のフォトセンサの中のいずれのフォトセンサが前記平凹レンズによって発散された前記光及び前記媒体の影のいずれか一方又は双方を取り入れたのかを識別することによって、前記収納部に収納された前記媒体の厚さを特定する厚さ特定部と
を有することを特徴とする媒体厚さ検出機構。
【請求項8】
請求項7に記載の媒体厚さ検出機構において、
前記平凹レンズは、
平坦面が、前記光源と対向し、かつ、凹面が、前記複数のフォトセンサと対向するように配置されている
ことを特徴とする媒体厚さ検出機構。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の媒体厚さ検出機構において、
前記平凹レンズは、平凹シリンドリカルレンズとして構成されており、かつ、
前記光源は、単数或いは複数の単結晶薄膜半導体発光素子からなるLEDアレイとして構成されている
ことを特徴とする媒体厚さ検出機構。
【請求項10】
請求項7又は乃至請求項9のいずれか一項に記載の媒体厚さ検出機構において、
前記複数のフォトセンサのそれぞれは、
前記収納部に対する鉛直方向の位置が、前記媒体の厚さに対応して定まっている
ことを特徴とする媒体厚さ検出機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−73860(P2011−73860A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229389(P2009−229389)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】