説明

金型セット方法

【課題】安価で簡素な方法により、金型と可動プラテンとが干渉するかどうかを確実かつ早期に検知する。
【解決手段】金型投入領域に投入された金型30を、成形機10における固定プラテン11と可動プラテン12との間に搬送してセットする金型セット方法であって、金型30を、固定プラテン11への取付面31cが固定プラテン11の金型取付面11aと同一平面上に配されるように位置決めして金型投入領域に載置するステップと、可動プラテン12に設けられた検知手段40で、金型投入領域に向けて検知光を照射すると共に、金型投入領域に載置された金型30による検知光の反射光の有無を検知するステップと、検知手段40の検知結果に基づいて、金型投入領域に投入された金型30を固定プラテン11と可動プラテン12との間に搬送するか否かの判断を行うステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型のセット方法に関し、特に成形機において固定プラテンと可動プラテンとの間に金型をセットする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機などの、金型を用いる成形機により製品を製造する際に、多品種少量生産の観点から、一つの成形機を用いて、種類や大きさの異なる複数の金型を適宜交換することにより、多品種の製品を成形することが行われている。成形機における金型の交換動作は、例えば以下のように行われている。
【0003】
図3(a)〜(g)は、金型交換動作の一例の概略を示す平面図である。成形機本体100は、固定プラテン200と可動プラテン300とを有しており、これらのプラテンの間に金型400がセットされている。また、成形機本体100の両側には、開閉扉500a,500bが設けられ、それぞれの扉の外側には、金型交換台車600a,600bが配置されている。
【0004】
図3(a)は、成形機の可動状態を示している。固定プラテン200と可動プラテンの間には、作業中の金型400がセットされており、作業終了後に交換される次の金型401が、金型交換台車600a上に載置されている。金型400,401は、固定型および可動型と、それぞれを各プラテンに取り付ける取付板からなっており、図示しない金型クランパがそれぞれの取付板を押さえることによって、各プラテンに固定型および可動型がセットされる。また、セットされている金型400や交換予定の金型401の情報(例えば金型400,401の種類や厚みなど)が作業者により入力され、図示しない記憶手段に記憶される。
【0005】
成形機において金型400を交換する際には、金型400の搬出側の開閉扉500bを開き(図3(b)参照)、図示しない搬送機構により金型400を搬出して、搬出側の金型交換台車600bの上に載置する(図3(c)参照)。その後、搬出側の開閉扉500bを閉め、次の金型401を搬入するために、記憶している金型情報に基づいて可動プラテン300を適正な位置に移動する(図3(d)参照)。なお、このときの各プラテン間の距離は、記憶している次の金型401の厚みよりも広くしている。なお、固定プラテン200および可動プラテン300の金型取付面の下部には、金型400,401を搬送する複数の搬送ローラ700が取り付けられている。搬送ローラ700は、金型交換台車600a,600b上のローラと同一水平面上に設けられている。
【0006】
可動プラテン300の位置調整が完了すると、搬入側の開閉扉500aを開き(図3(e)参照)、図示しない搬送機構により、金型400を成形機本体100に搬入する(図3(f)参照)。金型400の搬入が完了すると、開閉扉500aを閉じ、可動プラテン300を移動して、金型400との隙間を詰めることにより(図3(g)参照)、型締めを行う。なお、開閉扉500a、500bは、扉が完全に閉まっていないと成形機が動作できないように制御されている。
【0007】
金型の交換に際しては、作業者によって入力される、成形機に投入する金型の厚みや大きさなどの金型情報に基づいて各プラテン間の距離を設定している。また、金型交換台車に次の金型を載置する作業は、クレーンにより金型を搬送することにより行っている。これらの作業は人為的作業であるため、入力ミスが発生したり、載置する金型の順番が入れ変わったりすることにより、記憶している金型情報と実際の金型とが異なる場合がある。その場合は、固定プラテンと可動プラテンとの距離が金型の厚みと一致しないため、この状態で金型の搬入を行うと、金型が落下したり成形機本体と干渉したりして、正しくセットできないという問題がある。
【0008】
このような問題を解決するために、特許文献1に示されるように、交換される金型の厚みを測定して、測定値に基づいて固定プラテンと可動プラテン間を適正な間隔とすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平04−110120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1においては、リニアスケールを用いて金型の厚みを測定している。しかしながら、金型の厚みを測定するリニアスケールは高価であるため、設備投資が増大するという問題がある。
【0011】
また、金型の情報を検出するために、金型にバーコード、QRコード(登録商標)、またはRF−IDなどのタグを貼付しておき、金型交換台車に金型をセットした際に、このタグを読み取ることにより、入力されている情報との照合を行ったり、タグの情報を入力したりすることも提案されている。しかし、タグの準備や、読取装置、制御装置など種々の装置が必要であり、準備の手間やコストの増加につながるという問題がある。
【0012】
これに対して、本発明者らは、固定プラテンと可動プラテン間が適正な間隔であるかどうかを安価で簡素な方法で判断するために、図4に示すように、各プラテンにON/OFFセンサを配置し、それぞれのセンサの検知結果に基づいて判断する方法を検討した。各プラテンの間隔が金型401の厚みより広いことを、非接触式のON/OFFセンサ(金型検知センサ800a,800b)で検知し、各プラテンの間隔が金型401の厚みより狭いことを接触式のON/OFFセンサ(リミットスイッチ900)で検知する。
【0013】
金型検知センサ800a,800bは、それぞれ発光部と受光部とを有する透過型のセンサであり、各プラテンの金型搬入側の端部において、金型401の搬送方向に直交する方向であって金型401を挟む各位置に、発光部と受光部とが配置されている。受光部において受光している光が、搬送される金型401の搬送方向先端部により遮光されるか否かを検知することにより、適正な位置に可動プラテン300が停止しているかどうかを判断する。金型検知センサ800aおよび800bが両方とも遮光されれば、適正な位置で金型401が搬送されていると判断する。また、可動プラテン300側に設けた金型検知センサ800bが遮光されなければ、固定プラテン200と可動プラテン300との距離が開きすぎていると判断する。この場合には、金型401が搬送ローラ700に支持されずに落下するおそれがあるため、金型交換台車600aの搬送を停止させ、エラー表示や警告を発するなどの制御を行う。
【0014】
リミットスイッチ900は、押圧部901を有する接触型のセンサであり、搬送される金型401で押圧部901が押されることにより、可動プラテン300の位置が金型401の厚みより内側に位置していることを検知する。
【0015】
しかし、リミットスイッチ900による検知は、以下のような問題がある。まず、金型401は、金型401をプラテンの定位置に固定するための取付板402を有しており、取付板402が金型本体401aよりも搬送方向前方に突出している。そのため、図5に示すように、リミットスイッチ900を押圧しない状態で取付板402が可動プラテン300に干渉するおそれがある。
【0016】
また、リミットスイッチ900を用いた検知では、金型400が成形機付近まで搬送されて初めて可動プラテン300との相対的な位置が検知されるため、可動プラテン300が適正な位置にない場合は、一旦搬送を停止して、可動プラテン300の位置を調整してから再度搬送させる必要があり、成形機の稼動再開まで時間がかかってしまうという問題がある。
【0017】
そこで、本発明においては、上記の問題に鑑みて、安価で簡素な方法により、金型と可動プラテンとが干渉するかどうかを確実かつ早期に検知することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、金型投入領域に投入された金型を、成形機における固定プラテンと可動プラテンとの間に搬送してセットする金型セット方法であって、金型を、固定プラテンへの取付面が固定プラテンの金型取付面と同一平面上に配されるように位置決めして金型投入領域に載置するステップと、可動プラテンに設けられた検知手段で、金型投入領域に向けて検知光を照射すると共に、金型投入領域に載置された金型による検知光の反射光の有無を検知するステップと、検知手段の検知結果に基づいて、金型投入領域に投入された金型を固定プラテンと可動プラテンとの間に搬送するか否かの判断を行うステップとを有することを特徴とするものである。
【0019】
上記の金型セット方法によれば、可動プラテンに設けられた反射型の検知手段で反射光の有無を検知することにより、可動プラテンの金型搬入側に金型があるかどうかが検知できる。それにより、取付板の有無に関わらず確実に検知すること、および金型が可動プラテンに接近する前に検知することが可能となる。
【0020】
金型投入領域に金型を設置する際、金型の取付面を固定プラテンの金型取付面と同一平面上に配置することで、金型が固定プラテンに対して位置決めされる。ここで、固定プラテンの金型取付面の同一平面上とは、全くの同一平面上に限らず、金型の取付面が固定プラテンの金型取付面よりも若干可動プラテン側に配置される場合を含むものである。
【0021】
また、請求項2に記載の発明は、検知手段により金型の有無を検知しながら可動プラテンを移動し、検知状態が変化した位置に基づいて可動プラテンを停止させるステップを有することを特徴とするものである。
【0022】
上記の方法により、検知手段による検知状態がONからOFF、またはOFFからONに変化する位置で、金型の可動プラテンへの取付面の位置を検知できるため、この位置に基づいて可動プラテンを確実に適正な位置に停止させることができる。
【0023】
さらに、請求項3に記載の発明は、可動プラテンが、検知手段により金型の有無を検知しながら移動する領域は、予め記憶している金型情報に基づいて設定される領域であることを特徴とするものである。
【0024】
上記のように、検知手段によって金型の有無を検知しながら可動プラテンを移動させる際に、予め記憶している金型情報に基づいて、金型の端部が存在していると予測される位置付近の領域のみを、検知手段によって検知しながら可動プラテンを移動させることができる。このとき、上記以外の領域においては、検知手段による検知を行わないため、速い速度で可動プラテンを移動させることができる。そのため、可動プラテンの移動にかかる時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上のように、本発明にかかる金型のセット方法によれば、安価な反射型の検知手段を用いて、金型と可動プラテンとが干渉するかどうかを確実かつ早期に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明にかかる金型セット方法に用いる成形機および金型交換台車の概略を示す平面図である。
【図2】(a)は、可動プラテンが金型の内側に位置している状態を示す要部を拡大した平面図であり、同図(b)は、可動プラテンが適正な位置にある状態を示す要部を拡大した平面図である。
【図3】金型交換動作の一例の概略を示す平面図である。
【図4】金型検知センサおよびリミットスイッチを配置した成形機および金型交換台車の概略を示す平面図である。
【図5】リミットスイッチと可動プラテンとの干渉を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付の図面に基づき、本発明について説明する。
【0028】
本発明の一実施形態にかかる金型セット方法は、例えば図1に示す成形機本体10と、その金型搬送方向(図1の左右方向)両側に配置された金型交換台車20a,20bを用いて行われる。図1では、金型投入領域としての搬入側(図1の左側)の金型交換台車20a上には金型30が載置されている。なお、以下の説明においては、金型搬送方向を搬送方向と定義し、金型の型締め方向を幅方向と定義する。
【0029】
成形機本体10は、樹脂などの材料を射出成形処理によって成形品を製造する装置であり、固定プラテン11と可動プラテン12とを備えている。この他、図示はしないが、可動プラテン12を移動させて型締め動作を行う型締め機構や、材料である樹脂を金型30内に射出する射出機構などが設けられている。また、図示を省略しているが、図3と同様に、成形機本体10の搬送方向両側には、開閉扉が開閉可能に配置されている。さらに、成形機本体10は、図示しない入力手段および制御部を有している。入力手段により、金型に関する情報を入力してこれを制御部が記憶し、記憶している金型情報に基づいて、可動プラテン12を移動させて、適切な待機位置で停止するように型締め機構を制御する。
【0030】
固定プラテン11は、図示しない射出機構から射出される樹脂を金型30のキャビティに流し込むための供給孔が設けられている。可動プラテン12は、図示しない型締め機構に連結されており、幅方向に移動可能である(図1の矢印参照)。なお、固定プラテン11に複数の固定軸を取り付け、可動プラテン12にそれぞれの固定軸に対応する位置に孔部を設けて、固定軸を孔部に挿通させることにより、型締め時に移動する可動プラテン12をガイドする。
【0031】
また、固定プラテン11および可動プラテン12は、それぞれ金型30を取り付ける金型取付面11a,12aを有する。固定プラテン11と可動プラテン12には、それぞれ、搬入される金型30を支持して搬送する搬送ローラ13が、搬送方向の複数箇所に設けられている。搬送ローラ13は、図示しないモータ等により駆動される駆動ローラであり、各プラテンの金型取付面11a,12aに、幅方向に設けられる回転軸によって片持ち支持されて取り付けられている。
【0032】
ここで、搬送ローラ13を片持ち支持構造としているのは、固定プラテン11と可動プラテン12との間の距離が変化するため、各プラテンで搬送ローラの両端部を支持することができないことと、金型30に取り付けられる配管などのスペースを確保する必要があるためである。また、各搬送ローラ13は、後述する金型交換台車20a,20bのローラ21と同一水平面上に設けられている。
【0033】
可動プラテン12には、金型30の搬入側の側面であって、金型取付面12aの近傍に、図示例では幅方向内側の端部に検知手段としての反射型の検知センサ、例えば光センサ、具体的には赤外線センサ40が取り付けられている。赤外線センサ40は、発光部と受光部とを有する反射型の光センサであり、発光部から検知光として赤外線レーザ光を照射して、対象物によって反射された反射光を受光部によって受光することで、対象物の有無の検知を行う。ここで、赤外線センサ40の発光部による赤外線レーザの照射光、および受光部で受光可能な金型30による反射光の方向は、共に搬送方向である。なお、赤外線センサ40による金型の検知動作の詳細については後述する。また、固定プラテン11および可動プラテン12には、金型検知センサ50a,50bを備えている。金型検知センサ50a,50bは、上述した図4に示す金型検知センサ800a,800bと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0034】
金型交換台車20a,20bは、成形機本体10の搬入側と搬出側にそれぞれ配置されており、図示しない駆動装置により駆動される複数のローラ21が設けられている。また、搬入側の金型交換台車20aにおいて、ローラ21の上面には、金型投入領域が設けられる。金型投入領域には、基準板22が設けられる。基準板22の幅方向内側の側面は、固定プラテン11の金型取付面11aと同一平面上に設けられている。さらに、金型交換台車20a,20bは、図示しない制御部を有しており、成形機本体10の制御部と通信することにより、金型30の搬送タイミングを制御している。
【0035】
金型30は、固定プラテン11側に取り付けられる固定型31と、可動プラテン12側に取り付けられる可動型32とからなる。固定型31は、固定型本体31aと固定型取付板31bとからなり、固定型取付板31bの取付面31cが、図示しない金型クランパによって固定プラテン11の金型取付面11aに取り付けられる。同様に、可動型32は、可動型本体32aと可動型取付板32bとからなり、可動型取付板32bの取付面32cが、金型クランパによって可動プラテン12の金型取付面12aに取り付けられる。ここで、固定型本体31aと可動型本体32aの大きさは、金型30の種類に応じて変化するが、固定型取付板31bおよび可動型取付板32bの大きさは金型30の種類によらず全て同一である。なお、金型30の各プラテンへの取り付けは、金型クランパに替えて、磁気を利用した取り付け機構などを用いてもよい。
【0036】
固定型31には、固定プラテン11に設けられた、樹脂を流し込む供給孔に対向する位置に、同様に供給孔が設けられている。供給孔は、固定型取付板31bにも設けられており、固定型取付板31bの大きさは一定であるため、固定型本体31aの大きさが種類によって異なっても、固定型取付板31bの供給孔の位置と固定プラテン11の供給孔の位置とは変化しないため、これらの供給孔を通して金型30内に樹脂を注入することができる。
【0037】
また、可動型32には、成形処理後に製品を取り出すための取り出し機構などが内部に設けられている。さらに、固定型31と可動型32には、型締め時に位置決めを行う位置決めピンと位置決めピン挿入部や、冷却水などを通す配管などが設けられている。
【0038】
続いて、成形機本体10に金型30を搬入する動作について説明する。まず、図示しないクレーンなどにより金型30を搬送し、搬入側の金型交換台車20a上に載置する。このとき、金型30の固定型取付板31bにおける幅方向外側の側面である取付面31cを基準板22に当接させて位置決めする(図1参照)。このようにして金型30を金型交換台車20a上に載置することにより、金型30の取付面31cと固定プラテン11の金型取付面11aとが同一平面上に配された状態で、金型30を固定プラテン11に対して位置決めすることができる。次に、載置する金型30の金型情報を図示しない入力手段により入力する。成形機本体10において、入力された金型情報に基づいて、可動プラテン12を移動して、固定プラテン11との間の距離が金型30の厚みよりも若干広くなる位置で可動プラテン12を位置決めする。
【0039】
可動プラテン12が位置決めされると、図示しない開閉扉を開く(図3(e)参照)。ここで、赤外線センサ40による検知を行う。具体的には、赤外線センサ40の発光部から検知光を照射し、受光部による反射光の有無を検知する。
【0040】
図2(a)に示すように、可動プラテン12が金型30の厚みよりも内側に位置している状態では、赤外線センサ40から照射される赤外線レーザ光が、金型30によって反射されて、赤外線センサ40の受光部で検知される。赤外線センサ40によって金型30を検知した場合は、この状態で金型30を搬入すると可動プラテン12と干渉してしまうと判断できるため、金型交換台車20aに駆動信号を送ることなく、成形機本体10において、エラー表示や警告音などを発してエラーの対応を促す。
【0041】
エラーの対応としては、金型情報を確認して入力データを修正するか、正しい金型30に交換することなどが考えられる。ここで、可動プラテン12が適正な位置で待機していない理由は、入力された金型情報の厚みに関する値が正しくないことや、金型情報が複数入力されており、異なる金型情報に対応する金型30が載置されたことなどが考えられる。
【0042】
一方、図2(b)に示すように、可動プラテン12が適正な位置にある場合には、赤外線センサ40からの赤外線レーザ光は、金型30によって反射されないため、赤外線センサ40では検知されない。この場合は、金型交換台車20aの図示しない制御部に信号を送信し、金型交換台車20aの複数のローラ21を駆動して金型30を成形機本体10内に搬入する。
【0043】
金型30が各プラテンの間に搬入されたとき、金型検知センサ50a,50bによる検知を行う。可動プラテン12が金型30の厚みよりも外側に位置している場合は、可動プラテン12側の金型検知センサ50bでは金型30が検知されないため、固定プラテン11と可動プラテン12との距離が開きすぎていると判断できる。この場合には、金型30が搬送ローラ13に支持されずに落下するおそれがあるため、金型交換台車20aの搬送を停止させ、エラー表示や警告を発するなどの制御を行う。一方、金型検知センサ50a,50bで金型30を検知すると、そのまま搬送を継続して適正位置に停止させる。さらに、開閉扉を閉めて可動プラテン12を閉じる方向に移動して可動型取付板32bの取付面32cを押圧することにより型締めを行い、各プラテンの金型クランプにより固定型取付板31bおよび可動型取付板32bをそれぞれ固定して、冷却水などの配管をセットする。
【0044】
以上により、可動プラテン12の位置が適正か否かを、早期に検知することができ、確実にエラーの対応を行うことができる。
【0045】
上記の実施形態においては、可動プラテン12に設けた赤外線センサ40によって金型30による反射光の有無を検知することにより、可動プラテン12が適正な位置で待機していないと判断した場合に、対応を促すためにエラー表示などの通知を行ったが、適正な位置になるように、自動的に可動プラテン12の位置調整を行うように制御してもよい。
【0046】
図2(a)に示すように、赤外線センサ40によって金型30の存在が検知された場合には、可動プラテン12が、金型30の厚みよりも内側に位置している。そこで、赤外線センサ40により金型30の検知を行いながら、可動プラテン12を固定プラテン11から遠ざける方向に移動させるように制御を行う。可動プラテン12を移動している状態でも赤外線センサ40による検知を継続して、赤外線センサ40によって金型30による反射光が検知されなくなった位置から、さらに移動させて可動プラテン12を停止する。これにより、金型30に対して適正な位置で可動プラテン12を位置決めすることができる。
【0047】
一方、赤外線センサ40によって金型30の存在が検知されない場合に、赤外線センサ40による検知を継続しながら、可動プラテン12を固定プラテン11に向けて移動させる。可動プラテン12の移動により、赤外線センサ40が金型30による反射光を検知すると、可動プラテン12を停止して、反対方向に再度移動させるようにしてもよい。赤外線センサ40により反射光を検知した後の可動プラテン12の移動は、上記と同様に、赤外線センサ40によって金型30による反射光が検知されなくなった位置から、さらに移動させて停止させる。
【0048】
このように、赤外線センサ40で金型30による反射光を検知した状態で可動プラテン12を移動させて、検知しなくなった位置(検知状態が変化した位置)で可動プラテン12を停止させることにより、金型30の端部を検知でき、適正な位置に確実に可動プラテン12を位置決めすることができる。そのため、金型30が落下することも、可動プラテン12に干渉することもなく、確実に成形機本体10内に搬入することができる。よって、金型30を途中で停止させることなく搬送することができるため、上記実施形態の搬送速度よりも高速で金型30を搬送させてもよい。それにより、金型30の交換にかかる時間をより短縮することができる。
【0049】
さらに別の金型30のセット方法として、可動プラテンが、検知手段により金型30による反射光の有無を検知しながら移動する領域は、予め記憶している金型情報に基づいて設定される領域としてもよい。
【0050】
つまり、赤外線センサ40により、金型30の端部を検知するために赤外線センサ40による反射光の検知を継続した状態で可動プラテン12を移動する際に、予め記憶している金型情報に基づくと、金型30の端部の位置を予測することができる。そこで、金型情報により、金型30の端部が存在していると予測される位置付近においては、赤外線センサ40により反射光の検知を行いながら可動プラテン12を移動させ、金型30の端部と予測されない領域では、赤外線センサ40による検知を行うことなく可動プラテン12を移動させる。それにより、赤外線センサ40による検知を行わない領域においては、可動プラテン12の速度を速めることができる。
【0051】
ここで、最初に赤外線センサ40によって金型30による反射光が検知された場合には、読み出した金型情報と異なる金型30が金型交換台車20a上に載置されている。その際に、記憶している金型情報から、現在の設定より厚みのある別の金型についての金型情報を読み出して、この金型情報に基づいて可動プラテン12を移動させることが好ましい。読み出した金型情報に基づいた位置付近においてもまだ金型30の端部を検知できない場合には、さらに別の金型情報に基づいて可動プラテン12を移動させる。金型情報に基づいて可動プラテン12を移動させ、赤外線センサ40が金型30の端部を検知した場合は、可動プラテン12が適正な位置にあるため、そのまま金型30を搬送することができる。このように、載置されている金型30の正しい金型情報を読み出すことができるため、読み出した金型情報を用いて、その後の成形処理を行うことができる。
【0052】
成形機を用いた製品の製造においては、製造計画に基づいて、使用する複数の金型30の情報を予め成形機に入力して記憶している。通常は、入力した(記憶した)順に金型30をクレーンで搬送して金型交換台車20aに載置するため、金型情報も入力した順に読み出している。しかし、その際に順番が入れ替わる可能性があるため、その場合は、正しい金型30を再度搬送して交換するよりも、順番を入れ替えて先に製造する方が時間のロスを少なくすることができる。そのため、順番を入れ替えて製造を行うようにしてもよい。
【0053】
上記の実施形態においては、成形機本体10の両側に金型交換台車20a,20bを配置して、一方側から金型30を搬入して、他方側から搬出したが、これに限ることはなく、搬入した一方側の金型交換台車20aから金型30を搬出して、続いて他方側の金型交換台車20bから他の金型30を搬入するようにしてもよい。なお、この場合には、赤外線センサ40は、可動プラテン12の両側の側面に取り付けるとよい。また、金型交換台車20aを片側にのみ配置して、金型30を搬出した後に新たな金型30に交換して搬入してもよい。さらに、金型30の搬入方向と直交する方向に複数の金型30を並べて載置して、順次搬送するように搬送機構を設けることにより、載置した順番に金型30を成形機本体10に搬入するようにしてもよい。
【0054】
以上述べてきたように、本発明の金型セット方法においては、金型30のセットにかかる可動プラテン12の位置において、金型30との干渉の有無を早期に検知し、適正な位置に調整させることができるため、金型30が可動プラテン12まで搬送されたときに干渉の有無を検知する場合に比べて、可動プラテン12の位置の適否を早期に検知して対応することができる。金型30を交換している間は製造作業が中断するため、できるだけ短時間で行うことが望ましく、本発明によれば交換にかかる時間を短縮することができるため、生産能力を向上させることができる。特に、成形機を用いて複数の種類の成形品を製造する場合には、金型30の交換時間の短縮がより効果的になる。
【0055】
なお、本発明の金型セット方法については、樹脂などの材料を用いて射出成形を行う成形機を用いて説明したが、これに限るものではない。材料としては、ゴムや金属などを用いる装置であってもよい。また、金型を用いる装置であればよいため、例えば、ブロー成形機、プレス成形機や、鋳造に用いられる各種の金型を使用する装置などにおいて、金型をセットする際に用いることができる。
【符号の説明】
【0056】
10 成形機本体
11 固定プラテン
11a 金型取付面
12 可動プラテン
20a 金型交換台車(金型投入領域)
30 金型
31c 取付面
40 赤外線センサ(検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型投入領域に投入された金型を、成形機における固定プラテンと可動プラテンとの間に搬送してセットする金型セット方法であって、
前記金型を、前記固定プラテンへの取付面が前記固定プラテンの金型取付面と同一平面上に配されるように位置決めして前記金型投入領域に載置するステップと、
前記可動プラテンに設けられた検知手段で、前記金型投入領域に向けて検知光を照射すると共に、前記金型投入領域に載置された前記金型による前記検知光の反射光の有無を検知するステップと、
前記検知手段の検知結果に基づいて、前記金型投入領域に投入された前記金型を前記固定プラテンと可動プラテンとの間に搬送するか否かの判断を行うステップとを有する金型セット方法。
【請求項2】
前記検知手段により前記反射光の有無を検知しながら前記可動プラテンを移動し、検知状態が変化した位置に基づいて前記可動プラテンを停止させるステップを有する請求項1に記載の金型セット方法。
【請求項3】
前記可動プラテンが、前記検知手段により前記反射光の有無を検知しながら移動する領域は、予め記憶している金型情報に基づいて設定される領域であることを特徴とする請求項2に記載の金型セット方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−95040(P2013−95040A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239293(P2011−239293)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002967)ダイハツ工業株式会社 (2,560)
【Fターム(参考)】