金型修正装置及び金型修正方法
【課題】形状が複雑な筒形状の製品の金型を精度よく修正することができる金型修正装置及び金型修正方法を得ることを目的とする。
【解決手段】CADデータ収集部12により収集された金型要件が盛り込まれているCADデータを構成しているデータの点列をそれぞれ基準点として設定する基準点設定部13と、測定データ収集部11により収集された測定データ及び製品のCADデータを構成しているデータの点列の中に、基準点設定部13により設定された基準点に対応する近似点を設定する近似点設定部14とを設け、修正量算出部15が近似点設定部14により設定された近似点を用いて、金型2の修正量を算出する。
【解決手段】CADデータ収集部12により収集された金型要件が盛り込まれているCADデータを構成しているデータの点列をそれぞれ基準点として設定する基準点設定部13と、測定データ収集部11により収集された測定データ及び製品のCADデータを構成しているデータの点列の中に、基準点設定部13により設定された基準点に対応する近似点を設定する近似点設定部14とを設け、修正量算出部15が近似点設定部14により設定された近似点を用いて、金型2の修正量を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、筒形状の製品の金型を修正する金型修正装置及び金型修正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の金型修正装置は、製品の金型を修正する際には、3次元デジタイザにより測定された金型の測定データを収集する。
金型修正装置は、金型の測定データを収集すると、その金型の測定データを構成しているデータの点列と、製品の3次元CADデータを構成しているデータの点列とを形状の全体で比較する。
金型修正装置は、形状の全体でデータの点列を比較すると、その比較結果に応じて金型ポリゴンを作成して、ナーブス面を作成することにより、修正版の金型3次元モデルを作成する(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−199567号公報(段落番号[0009]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の金型修正装置は以上のように構成されているので、3次元デジタイザにより測定された金型の測定データを用いて、製品の金型を修正するようにしている。しかし、3次元デジタイザによる測定データは誤差が大きく、また、データの点列を単に比較するだけでは、製品の形状が筒形状のような複雑な形状である場合、精度よく製品の金型を修正することが困難であるなどの課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、形状が複雑な筒形状の製品の金型を精度よく修正することができる金型修正装置及び金型修正方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る金型修正装置は、データ収集手段により収集された金型要件が盛り込まれているCADデータを構成しているデータの点列をそれぞれ基準点として設定する基準点設定手段と、データ収集手段により収集された測定データ及び製品のCADデータを構成しているデータの点列の中に、基準点設定手段により設定された基準点に対応する近似点を設定する近似点設定手段とを設け、修正量算出手段が近似点設定手段により設定された近似点を用いて、金型の修正量を算出するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、データ収集手段により収集された金型要件が盛り込まれているCADデータを構成しているデータの点列をそれぞれ基準点として設定する基準点設定手段と、データ収集手段により収集された測定データ及び製品のCADデータを構成しているデータの点列の中に、基準点設定手段により設定された基準点に対応する近似点を設定する近似点設定手段とを設け、修正量算出手段が近似点設定手段により設定された近似点を用いて、金型の修正量を算出するように構成したので、形状が複雑な筒形状の製品の金型を精度よく修正することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による金型修正装置を示す構成図であり、図において、3次元倣い測定器3は筒形状の製品1の2次元断面や、製品1の金型2の2次元断面を測定する高精度な測定装置である。
測定データ収集部11は3次元倣い測定器3により測定された筒形状の製品1の2次元断面における測定データを収集するとともに、金型2の2次元断面における測定データを収集する処理を実施する。
CADデータ収集部12は製品1の2次元断面におけるCADデータを収集するとともに、そのCADデータに金型要件(例えば、収縮率)が盛り込まれているCADデータ(金型モデル)を収集する処理を実施する。
なお、測定データ収集部11及びCADデータ収集部12からデータ収集手段が構成されている。
【0009】
基準点設定部13はCADデータ収集部12により収集された金型要件が盛り込まれているCADデータを構成しているデータの点列をそれぞれ基準点として設定する処理を実施する。なお、基準点設定部13は基準点設定手段を構成している。
近似点設定部14は測定データ収集部11により収集された製品1及び金型2の測定データを構成しているデータの点列の中に、基準点設定部13により設定された基準点に対応する近似点を設定するとともに、CADデータ収集部12により収集された製品1のCADデータを構成しているデータの点列の中に、基準点設定部13により設定された基準点に対応する近似点を設定する処理を実施する。なお、近似点設定部14は近似点設定手段を構成している。
【0010】
修正量算出部15は金型誤差量算出部16、製品誤差量算出部17、金型修正量算出部18及び幾何線分データ作成部19から構成されており、近似点設定部14により設定された近似点を用いて、金型2の修正量を算出する処理を実施する。なお、修正量算出部15は修正量算出手段を構成している。
金型誤差量算出部16は基準点設定部13により設定された基準点と近似点設定部14により金型2の測定データを構成しているデータの点列の中に設定された近似点との差分を金型誤差量として算出する処理を実施する。
【0011】
製品誤差量算出部17は近似点設定部14により製品1の測定データを構成しているデータの点列の中に設定された近似点と近似点設定部14により製品1のCADデータを構成しているデータの点列の中に設定された近似点との差分を製品誤差量として算出する処理を実施する。
金型修正量算出部18は金型誤差量算出部16により算出された金型誤差量と製品誤差量算出部17により算出された製品誤差量などから、金型2の修正量を算出して、金型2の修正点を求める処理を実施する。
幾何線分データ作成部19は金型修正量算出部18により求められた金型2の修正点から幾何線分データを作成する処理を実施する。
図2はこの発明の実施の形態1による金型修正方法を示すフローチャートである。
【0012】
次に動作について説明する。
この実施の形態1では、図3に示すような筒形状の製品1(例えば、コネクタ)の金型2の修正量を算出する例を説明する。
3次元倣い測定器3は、筒形状の製品1の2次元断面を測定して、その測定データを金型修正装置に出力し、また、金型2の2次元断面を測定して、その測定データを金型修正装置に出力する。
なお、製品1及び金型2の2次元断面は、少なくとも、2箇所以上(例えば、製品1及び金型2のZ1,Z2平面)で測定されるものとする。
例えば、製品1がコネクタのような筒形状であれば、製品1及び金型2におけるZ1平面の内径及び外形と、Z2平面の内径及び外形とが測定されるものとする。
【0013】
金型修正装置の測定データ収集部11は、3次元倣い測定器3により測定された製品1の2次元断面における測定データを収集するとともに、金型2の2次元断面における測定データを収集する(ステップST1)。
また、CADデータ収集部12は、製品1の2次元断面におけるCADデータ(設計値)を収集するとともに、そのCADデータ(設計値)に金型要件(例えば、収縮率)が盛り込まれているCADデータ(金型モデル)を収集する(ステップST2)。
なお、CADデータ(設計値)は、製品の製作時に作成されているデータであり、CADデータ(金型モデル)は、金型2の製作時に作成されているデータである。
【0014】
ここで、図4は測定データ収集部11及びCADデータ収集部12による収集データ(製品1の測定データ、金型2の測定データ、製品1のCADデータ、金型要件が盛り込まれているCADデータ)を構成しているデータの点列を示す説明図である。
図4の例では、製品1及び金型2のZ平面におけるデータの点列を示している。
図4において、「金型基準点列」の●は、CADデータ(金型モデル)を構成しているデータの点列である。
また、「金型測定点列」の●は、金型2の測定データを構成しているデータの点列である。
また、「製品基準点列」の●は、製品1のCADデータを構成しているデータの点列である。
さらに、「製品測定点列」の●は、製品1の測定データを構成しているデータの点列である。
なお、CADデータを構成しているデータの点列は、そのCADデータから断面線(図4の点線等を参照)を作成し、その断面線上に等間隔で発生させた点である。
【0015】
基準点設定部13は、CADデータ収集部12がCADデータ(金型モデル)を収集すると、Z1,Z2平面の内径及び外形のそれぞれにおいて、図4に示すように、CADデータ(金型モデル)を構成しているデータの点列(金型基準点列)をそれぞれ補正の基準点として設定する(ステップST3)。
【0016】
近似点設定部14は、基準点設定部13が補正の基準点を設定すると、後述する近似点を設定するために、i番目の基準点の垂線上にローカル座標を設置する。
ここで、図6はi番目の基準点の垂線上に設置されたローカル座標を示す説明図である。
【0017】
次に、近似点設定部14は、図7に示すように、上記の垂線を通り、Z1平面やZ2平面に垂直な平面L上に金型2の修正点が求まるようにするために、それぞれのデータの点列と平面Lとの交点を求める。
即ち、近似点設定部14は、データの点列(金型測定点列、製品基準点列、製品測定点列)をグローバル座標からローカル座標に変換する。
図8はグローバル座標からローカル座標への変換例を示す説明図である。
図8では、グローバル座標(X1,Y1)にある点をローカル座標(u1,v1)に変換し、グローバル座標(X2,Y2)にある点をローカル座標(u2,v2)に変換している例を示している。
【数1】
【0018】
近似点設定部14は、データの点列(金型測定点列、製品基準点列、製品測定点列)をグローバル座標からローカル座標に変換すると、u1×u2≦0の条件の下で、そのローカル座標のY軸(図8では、v軸)にまたがる2点(図8では、ローカル座標(u1,v1)の点と、ローカル座標(u2,v2)の点)を検索する。
近似点設定部14は、ローカル座標のv軸にまたがる2点を検索すると(図9の例では、点Q1と点Q2)、またがる2点を結ぶ線分と、ローカル座標のv軸との交点(データの点列と平面Lとの交点)を近似点(0,v)として設定する(ステップST4)。
例えば、v軸から点Q1(u1,v1)までの距離と、点Q2(u2,v2)までの距離が等しい場合には、下記に示すような式で、近似点(0,v)を求めるが、距離が異なる場合には、v軸までの距離に応じた比例演算により求める。
【数2】
【0019】
ここでは、近似点設定部14により金型2の測定データを構成しているデータの点列の中に設定される近似点を「金型仮想測定点」と称し、その近似点のローカル座標を(0,vA)で表すものとする。
また、製品1のCADデータを構成しているデータの点列の中に設定される近似点を「製品仮想基準点」と称し、その近似点のローカル座標を(0,vB)で表すものとする。
また、製品1の測定データを構成しているデータの点列の中に設定される近似点を「製品仮想測定点」と称し、その近似点のローカル座標を(0,vC)で表すものとする。
【0020】
修正量算出部15は、近似点設定部14が近似点を設定すると、その近似点を用いて、金型2の修正量を算出する。
即ち、修正量算出部15の金型誤差量算出部16は、図10に示すように、基準点設定部13により設定された補正の基準点(金型基準点列における基準点Pi)と、近似点設定部14によりに設定された金型仮想測定点との差分(=vA−0)を金型誤差量として算出する(ステップST5)。
【0021】
製品誤差量算出部17は、近似点設定部14によりに設定された製品仮想測定点と、近似点設定部14によりに設定された製品仮想基準点との差分(=vC−vB)を製品誤差量として算出する(ステップST6)。
金型修正量算出部18は、金型誤差量算出部16が金型誤差量vAを算出し、製品誤差量算出部17が製品誤差量(vC−vB)を算出すると、下記に示すように、その金型誤差量vAと製品誤差量(vC−vB)などから、金型2の修正量Dを算出する(ステップST7)。
D=(vA+(vC−vB)−M)×H
ただし、Mは製品狙い値であり、修正量Dを任意に内寄り、または、外寄りに設定するための値である。また、Hは補正係数である。
【0022】
また、金型修正量算出部18は、金型2の修正量Dを算出すると、その修正量Dを基準点Piに加算して、金型2の修正点を求め(ステップST8)、ローカル座標にある金型2の修正点をグローバル座標に変換する。
【数3】
【0023】
幾何線分データ作成部19は、金型修正量算出部18がZ1,Z2平面において、金型基準点列における基準点Piの数分だけ、金型2の修正点を求めると、Z1平面における金型2の修正点と、Z2平面における金型2の修正点との線分を引くことにより幾何線分データを作成する(ステップST9)。
なお、幾何線分データ作成部19は、金型修正量算出部18により算出された金型2の修正量Dから幾何線分データを作成する際には、図11に示すように、同一平面内に含まれるように算出する。
【0024】
幾何線分データ作成部19の算出方法は、以下の通りである。
1. 幾何線分データ「元の線」の始点として、Z1平面上で、修正点群から適当にピックアップして(1)とする。
2. 幾何線分データ「目標の線」の始点として、Z1平面上で、(1)から断面線への垂線(2)を求める。
3. (1)と(2)を含むZ軸に平行な平面をLとする。
4. 幾何線分データ「元の線」の終点として、Z2平面上で、平面Lと断面線との交点(3)を求める。
5. 幾何線分データ「目標の線」の終点として、Z2平面上で、平面Lと、平面Lをまたぐ2つの修正点を結ぶ線分との交点(4)を求める。
【0025】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、CADデータ収集部12により収集された金型要件が盛り込まれているCADデータを構成しているデータの点列をそれぞれ基準点として設定する基準点設定部13と、測定データ収集部11により収集された測定データ及び製品のCADデータを構成しているデータの点列の中に、基準点設定部13により設定された基準点に対応する近似点を設定する近似点設定部14とを設け、修正量算出部15が近似点設定部14により設定された近似点を用いて、金型2の修正量を算出するように構成したので、形状が複雑な筒形状の製品1の金型2を精度よく修正することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1による金型修正装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による金型修正方法を示すフローチャートである。
【図3】筒形状の製品1の一例を示す斜視図である。
【図4】測定データ収集部11及びCADデータ収集部12による収集データ(製品1の測定データ、金型2の測定データ、製品1のCADデータ、金型要件が盛り込まれているCADデータ)を構成しているデータの点列を示す説明図である。
【図5】近似点設定部14により設定された近似点を示す説明図である。
【図6】i番目の基準点の垂線上に設置されたローカル座標を示す説明図である。
【図7】データの点列と平面Lとの交点を示す説明図である。
【図8】グローバル座標からローカル座標への変換例を示す説明図である。
【図9】近似点の設定例を示す説明図である。
【図10】金型誤差量、製品誤差量及び金型2の修正量の関係等を示す説明図である。
【図11】修正点や幾何線分データを示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 製品、2 金型、3 3次元倣い測定器、11 測定データ収集部(データ収集手段)、12 CADデータ収集部(データ収集手段)、13 基準点設定部(基準点設定手段)、14 近似点設定部(近似点設定手段)、15 修正量算出部(修正量算出手段)、16 金型誤差量算出部、17 製品誤差量算出部、18 金型修正量算出部、19 幾何線分データ作成部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、筒形状の製品の金型を修正する金型修正装置及び金型修正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の金型修正装置は、製品の金型を修正する際には、3次元デジタイザにより測定された金型の測定データを収集する。
金型修正装置は、金型の測定データを収集すると、その金型の測定データを構成しているデータの点列と、製品の3次元CADデータを構成しているデータの点列とを形状の全体で比較する。
金型修正装置は、形状の全体でデータの点列を比較すると、その比較結果に応じて金型ポリゴンを作成して、ナーブス面を作成することにより、修正版の金型3次元モデルを作成する(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2005−199567号公報(段落番号[0009]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の金型修正装置は以上のように構成されているので、3次元デジタイザにより測定された金型の測定データを用いて、製品の金型を修正するようにしている。しかし、3次元デジタイザによる測定データは誤差が大きく、また、データの点列を単に比較するだけでは、製品の形状が筒形状のような複雑な形状である場合、精度よく製品の金型を修正することが困難であるなどの課題があった。
【0005】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、形状が複雑な筒形状の製品の金型を精度よく修正することができる金型修正装置及び金型修正方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る金型修正装置は、データ収集手段により収集された金型要件が盛り込まれているCADデータを構成しているデータの点列をそれぞれ基準点として設定する基準点設定手段と、データ収集手段により収集された測定データ及び製品のCADデータを構成しているデータの点列の中に、基準点設定手段により設定された基準点に対応する近似点を設定する近似点設定手段とを設け、修正量算出手段が近似点設定手段により設定された近似点を用いて、金型の修正量を算出するようにしたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、データ収集手段により収集された金型要件が盛り込まれているCADデータを構成しているデータの点列をそれぞれ基準点として設定する基準点設定手段と、データ収集手段により収集された測定データ及び製品のCADデータを構成しているデータの点列の中に、基準点設定手段により設定された基準点に対応する近似点を設定する近似点設定手段とを設け、修正量算出手段が近似点設定手段により設定された近似点を用いて、金型の修正量を算出するように構成したので、形状が複雑な筒形状の製品の金型を精度よく修正することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による金型修正装置を示す構成図であり、図において、3次元倣い測定器3は筒形状の製品1の2次元断面や、製品1の金型2の2次元断面を測定する高精度な測定装置である。
測定データ収集部11は3次元倣い測定器3により測定された筒形状の製品1の2次元断面における測定データを収集するとともに、金型2の2次元断面における測定データを収集する処理を実施する。
CADデータ収集部12は製品1の2次元断面におけるCADデータを収集するとともに、そのCADデータに金型要件(例えば、収縮率)が盛り込まれているCADデータ(金型モデル)を収集する処理を実施する。
なお、測定データ収集部11及びCADデータ収集部12からデータ収集手段が構成されている。
【0009】
基準点設定部13はCADデータ収集部12により収集された金型要件が盛り込まれているCADデータを構成しているデータの点列をそれぞれ基準点として設定する処理を実施する。なお、基準点設定部13は基準点設定手段を構成している。
近似点設定部14は測定データ収集部11により収集された製品1及び金型2の測定データを構成しているデータの点列の中に、基準点設定部13により設定された基準点に対応する近似点を設定するとともに、CADデータ収集部12により収集された製品1のCADデータを構成しているデータの点列の中に、基準点設定部13により設定された基準点に対応する近似点を設定する処理を実施する。なお、近似点設定部14は近似点設定手段を構成している。
【0010】
修正量算出部15は金型誤差量算出部16、製品誤差量算出部17、金型修正量算出部18及び幾何線分データ作成部19から構成されており、近似点設定部14により設定された近似点を用いて、金型2の修正量を算出する処理を実施する。なお、修正量算出部15は修正量算出手段を構成している。
金型誤差量算出部16は基準点設定部13により設定された基準点と近似点設定部14により金型2の測定データを構成しているデータの点列の中に設定された近似点との差分を金型誤差量として算出する処理を実施する。
【0011】
製品誤差量算出部17は近似点設定部14により製品1の測定データを構成しているデータの点列の中に設定された近似点と近似点設定部14により製品1のCADデータを構成しているデータの点列の中に設定された近似点との差分を製品誤差量として算出する処理を実施する。
金型修正量算出部18は金型誤差量算出部16により算出された金型誤差量と製品誤差量算出部17により算出された製品誤差量などから、金型2の修正量を算出して、金型2の修正点を求める処理を実施する。
幾何線分データ作成部19は金型修正量算出部18により求められた金型2の修正点から幾何線分データを作成する処理を実施する。
図2はこの発明の実施の形態1による金型修正方法を示すフローチャートである。
【0012】
次に動作について説明する。
この実施の形態1では、図3に示すような筒形状の製品1(例えば、コネクタ)の金型2の修正量を算出する例を説明する。
3次元倣い測定器3は、筒形状の製品1の2次元断面を測定して、その測定データを金型修正装置に出力し、また、金型2の2次元断面を測定して、その測定データを金型修正装置に出力する。
なお、製品1及び金型2の2次元断面は、少なくとも、2箇所以上(例えば、製品1及び金型2のZ1,Z2平面)で測定されるものとする。
例えば、製品1がコネクタのような筒形状であれば、製品1及び金型2におけるZ1平面の内径及び外形と、Z2平面の内径及び外形とが測定されるものとする。
【0013】
金型修正装置の測定データ収集部11は、3次元倣い測定器3により測定された製品1の2次元断面における測定データを収集するとともに、金型2の2次元断面における測定データを収集する(ステップST1)。
また、CADデータ収集部12は、製品1の2次元断面におけるCADデータ(設計値)を収集するとともに、そのCADデータ(設計値)に金型要件(例えば、収縮率)が盛り込まれているCADデータ(金型モデル)を収集する(ステップST2)。
なお、CADデータ(設計値)は、製品の製作時に作成されているデータであり、CADデータ(金型モデル)は、金型2の製作時に作成されているデータである。
【0014】
ここで、図4は測定データ収集部11及びCADデータ収集部12による収集データ(製品1の測定データ、金型2の測定データ、製品1のCADデータ、金型要件が盛り込まれているCADデータ)を構成しているデータの点列を示す説明図である。
図4の例では、製品1及び金型2のZ平面におけるデータの点列を示している。
図4において、「金型基準点列」の●は、CADデータ(金型モデル)を構成しているデータの点列である。
また、「金型測定点列」の●は、金型2の測定データを構成しているデータの点列である。
また、「製品基準点列」の●は、製品1のCADデータを構成しているデータの点列である。
さらに、「製品測定点列」の●は、製品1の測定データを構成しているデータの点列である。
なお、CADデータを構成しているデータの点列は、そのCADデータから断面線(図4の点線等を参照)を作成し、その断面線上に等間隔で発生させた点である。
【0015】
基準点設定部13は、CADデータ収集部12がCADデータ(金型モデル)を収集すると、Z1,Z2平面の内径及び外形のそれぞれにおいて、図4に示すように、CADデータ(金型モデル)を構成しているデータの点列(金型基準点列)をそれぞれ補正の基準点として設定する(ステップST3)。
【0016】
近似点設定部14は、基準点設定部13が補正の基準点を設定すると、後述する近似点を設定するために、i番目の基準点の垂線上にローカル座標を設置する。
ここで、図6はi番目の基準点の垂線上に設置されたローカル座標を示す説明図である。
【0017】
次に、近似点設定部14は、図7に示すように、上記の垂線を通り、Z1平面やZ2平面に垂直な平面L上に金型2の修正点が求まるようにするために、それぞれのデータの点列と平面Lとの交点を求める。
即ち、近似点設定部14は、データの点列(金型測定点列、製品基準点列、製品測定点列)をグローバル座標からローカル座標に変換する。
図8はグローバル座標からローカル座標への変換例を示す説明図である。
図8では、グローバル座標(X1,Y1)にある点をローカル座標(u1,v1)に変換し、グローバル座標(X2,Y2)にある点をローカル座標(u2,v2)に変換している例を示している。
【数1】
【0018】
近似点設定部14は、データの点列(金型測定点列、製品基準点列、製品測定点列)をグローバル座標からローカル座標に変換すると、u1×u2≦0の条件の下で、そのローカル座標のY軸(図8では、v軸)にまたがる2点(図8では、ローカル座標(u1,v1)の点と、ローカル座標(u2,v2)の点)を検索する。
近似点設定部14は、ローカル座標のv軸にまたがる2点を検索すると(図9の例では、点Q1と点Q2)、またがる2点を結ぶ線分と、ローカル座標のv軸との交点(データの点列と平面Lとの交点)を近似点(0,v)として設定する(ステップST4)。
例えば、v軸から点Q1(u1,v1)までの距離と、点Q2(u2,v2)までの距離が等しい場合には、下記に示すような式で、近似点(0,v)を求めるが、距離が異なる場合には、v軸までの距離に応じた比例演算により求める。
【数2】
【0019】
ここでは、近似点設定部14により金型2の測定データを構成しているデータの点列の中に設定される近似点を「金型仮想測定点」と称し、その近似点のローカル座標を(0,vA)で表すものとする。
また、製品1のCADデータを構成しているデータの点列の中に設定される近似点を「製品仮想基準点」と称し、その近似点のローカル座標を(0,vB)で表すものとする。
また、製品1の測定データを構成しているデータの点列の中に設定される近似点を「製品仮想測定点」と称し、その近似点のローカル座標を(0,vC)で表すものとする。
【0020】
修正量算出部15は、近似点設定部14が近似点を設定すると、その近似点を用いて、金型2の修正量を算出する。
即ち、修正量算出部15の金型誤差量算出部16は、図10に示すように、基準点設定部13により設定された補正の基準点(金型基準点列における基準点Pi)と、近似点設定部14によりに設定された金型仮想測定点との差分(=vA−0)を金型誤差量として算出する(ステップST5)。
【0021】
製品誤差量算出部17は、近似点設定部14によりに設定された製品仮想測定点と、近似点設定部14によりに設定された製品仮想基準点との差分(=vC−vB)を製品誤差量として算出する(ステップST6)。
金型修正量算出部18は、金型誤差量算出部16が金型誤差量vAを算出し、製品誤差量算出部17が製品誤差量(vC−vB)を算出すると、下記に示すように、その金型誤差量vAと製品誤差量(vC−vB)などから、金型2の修正量Dを算出する(ステップST7)。
D=(vA+(vC−vB)−M)×H
ただし、Mは製品狙い値であり、修正量Dを任意に内寄り、または、外寄りに設定するための値である。また、Hは補正係数である。
【0022】
また、金型修正量算出部18は、金型2の修正量Dを算出すると、その修正量Dを基準点Piに加算して、金型2の修正点を求め(ステップST8)、ローカル座標にある金型2の修正点をグローバル座標に変換する。
【数3】
【0023】
幾何線分データ作成部19は、金型修正量算出部18がZ1,Z2平面において、金型基準点列における基準点Piの数分だけ、金型2の修正点を求めると、Z1平面における金型2の修正点と、Z2平面における金型2の修正点との線分を引くことにより幾何線分データを作成する(ステップST9)。
なお、幾何線分データ作成部19は、金型修正量算出部18により算出された金型2の修正量Dから幾何線分データを作成する際には、図11に示すように、同一平面内に含まれるように算出する。
【0024】
幾何線分データ作成部19の算出方法は、以下の通りである。
1. 幾何線分データ「元の線」の始点として、Z1平面上で、修正点群から適当にピックアップして(1)とする。
2. 幾何線分データ「目標の線」の始点として、Z1平面上で、(1)から断面線への垂線(2)を求める。
3. (1)と(2)を含むZ軸に平行な平面をLとする。
4. 幾何線分データ「元の線」の終点として、Z2平面上で、平面Lと断面線との交点(3)を求める。
5. 幾何線分データ「目標の線」の終点として、Z2平面上で、平面Lと、平面Lをまたぐ2つの修正点を結ぶ線分との交点(4)を求める。
【0025】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、CADデータ収集部12により収集された金型要件が盛り込まれているCADデータを構成しているデータの点列をそれぞれ基準点として設定する基準点設定部13と、測定データ収集部11により収集された測定データ及び製品のCADデータを構成しているデータの点列の中に、基準点設定部13により設定された基準点に対応する近似点を設定する近似点設定部14とを設け、修正量算出部15が近似点設定部14により設定された近似点を用いて、金型2の修正量を算出するように構成したので、形状が複雑な筒形状の製品1の金型2を精度よく修正することができる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】この発明の実施の形態1による金型修正装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による金型修正方法を示すフローチャートである。
【図3】筒形状の製品1の一例を示す斜視図である。
【図4】測定データ収集部11及びCADデータ収集部12による収集データ(製品1の測定データ、金型2の測定データ、製品1のCADデータ、金型要件が盛り込まれているCADデータ)を構成しているデータの点列を示す説明図である。
【図5】近似点設定部14により設定された近似点を示す説明図である。
【図6】i番目の基準点の垂線上に設置されたローカル座標を示す説明図である。
【図7】データの点列と平面Lとの交点を示す説明図である。
【図8】グローバル座標からローカル座標への変換例を示す説明図である。
【図9】近似点の設定例を示す説明図である。
【図10】金型誤差量、製品誤差量及び金型2の修正量の関係等を示す説明図である。
【図11】修正点や幾何線分データを示す説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 製品、2 金型、3 3次元倣い測定器、11 測定データ収集部(データ収集手段)、12 CADデータ収集部(データ収集手段)、13 基準点設定部(基準点設定手段)、14 近似点設定部(近似点設定手段)、15 修正量算出部(修正量算出手段)、16 金型誤差量算出部、17 製品誤差量算出部、18 金型修正量算出部、19 幾何線分データ作成部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
3次元倣い測定器により測定された筒形状の製品の2次元断面における測定データ及び上記製品の金型の2次元断面における測定データを収集するとともに、上記製品の2次元断面におけるCADデータ及び上記CADデータに金型要件が盛り込まれているCADデータを収集するデータ収集手段と、上記データ収集手段により収集された金型要件が盛り込まれているCADデータを構成しているデータの点列をそれぞれ基準点として設定する基準点設定手段と、上記データ収集手段により収集された測定データ及び製品のCADデータを構成しているデータの点列の中に、上記基準点設定手段により設定された基準点に対応する近似点を設定する近似点設定手段と、上記近似点設定手段により設定された近似点を用いて、上記金型の修正量を算出する修正量算出手段とを備えた金型修正装置。
【請求項2】
修正量算出手段は、基準点設定手段により設定された基準点と近似点設定手段により金型の測定データを構成しているデータの点列の中に設定された近似点との差分を金型誤差量として算出するとともに、上記近似点設定手段により製品の測定データを構成しているデータの点列の中に設定された近似点と上記近似点設定手段により製品のCADデータを構成しているデータの点列の中に設定された近似点との差分を製品誤差量として算出し、上記金型誤差量と上記製品誤差量から上記金型の修正量を算出することを特徴とする請求項1記載の金型修正装置。
【請求項3】
データ収集手段が3次元倣い測定器により測定された筒形状の製品の2次元断面における測定データ及び上記製品の金型の2次元断面における測定データを収集するとともに、上記製品の2次元断面におけるCADデータ及び上記CADデータに金型要件が盛り込まれているCADデータを収集するデータ収集ステップと、基準点設定手段が上記データ収集手段により収集された金型要件が盛り込まれているCADデータを構成しているデータの点列をそれぞれ基準点として設定する基準点設定ステップと、近似点設定手段が上記データ収集手段により収集された測定データ及び製品のCADデータを構成しているデータの点列の中に、上記基準点設定手段により設定された基準点に対応する近似点を設定する近似点設定ステップと、修正量算出手段が上記近似点設定手段により設定された近似点を用いて、上記金型の修正量を算出する修正量算出ステップとを備えた金型修正方法。
【請求項1】
3次元倣い測定器により測定された筒形状の製品の2次元断面における測定データ及び上記製品の金型の2次元断面における測定データを収集するとともに、上記製品の2次元断面におけるCADデータ及び上記CADデータに金型要件が盛り込まれているCADデータを収集するデータ収集手段と、上記データ収集手段により収集された金型要件が盛り込まれているCADデータを構成しているデータの点列をそれぞれ基準点として設定する基準点設定手段と、上記データ収集手段により収集された測定データ及び製品のCADデータを構成しているデータの点列の中に、上記基準点設定手段により設定された基準点に対応する近似点を設定する近似点設定手段と、上記近似点設定手段により設定された近似点を用いて、上記金型の修正量を算出する修正量算出手段とを備えた金型修正装置。
【請求項2】
修正量算出手段は、基準点設定手段により設定された基準点と近似点設定手段により金型の測定データを構成しているデータの点列の中に設定された近似点との差分を金型誤差量として算出するとともに、上記近似点設定手段により製品の測定データを構成しているデータの点列の中に設定された近似点と上記近似点設定手段により製品のCADデータを構成しているデータの点列の中に設定された近似点との差分を製品誤差量として算出し、上記金型誤差量と上記製品誤差量から上記金型の修正量を算出することを特徴とする請求項1記載の金型修正装置。
【請求項3】
データ収集手段が3次元倣い測定器により測定された筒形状の製品の2次元断面における測定データ及び上記製品の金型の2次元断面における測定データを収集するとともに、上記製品の2次元断面におけるCADデータ及び上記CADデータに金型要件が盛り込まれているCADデータを収集するデータ収集ステップと、基準点設定手段が上記データ収集手段により収集された金型要件が盛り込まれているCADデータを構成しているデータの点列をそれぞれ基準点として設定する基準点設定ステップと、近似点設定手段が上記データ収集手段により収集された測定データ及び製品のCADデータを構成しているデータの点列の中に、上記基準点設定手段により設定された基準点に対応する近似点を設定する近似点設定ステップと、修正量算出手段が上記近似点設定手段により設定された近似点を用いて、上記金型の修正量を算出する修正量算出ステップとを備えた金型修正方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−18451(P2009−18451A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181123(P2007−181123)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(591036457)三菱電機エンジニアリング株式会社 (419)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(591036457)三菱電機エンジニアリング株式会社 (419)
【Fターム(参考)】
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