説明

金属チューブ製容器用被覆体及び複合容器

【課題】装着性、意匠性に優れ、内容物の漏出を防ぐことができる金属チューブ製容器用被覆体及びこの被覆体が金属チューブ製容器に装着された複合容器を提供する。
【解決手段】本発明の金属チューブ製容器用被覆体2は、熱可塑性エラストマーからなり、且つ挿入口を有する筒状の被覆体であって、被覆体の周壁部20の内面22aの一部に長さ方向に延びるリブが設けられている。また、本発明の複合容器1は、本発明の金属チューブ製容器用被覆体2と、本体部12、本体部12の一端側に延設された蓋取付部及び蓋取付部に取着された蓋11を有する金属チューブ製容器とを備え、金属チューブ製容器10の本体部12に金属チューブ製容器用被覆体2が装着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属チューブ製容器用被覆体及びこの被覆体が金属チューブ製容器に装着された複合容器に関する。更に詳しくは、熱可塑性エラストマーからなり、適度に柔軟であって、容易に装着することができ、且つ優れた外観を有する金属チューブ製容器用被覆体及びこの被覆体が金属チューブ製容器に装着された複合容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液状、ゼリー状、ペースト状等の物品の容器として、金属チューブ製容器が用いられている。金属チューブ製容器は、有機溶剤等に対する耐薬品性に優れ、且つ湿分を透過させ難く、内容物と空気中の湿分とが遮断されるため、内容物の保存安定性にも優れている。また、容易に塑性変形させることができるため、内容物を押し出し易く、従って、接着剤、硬化剤、コーティング剤等を充填し、保存する容器として多用されている。
【0003】
この金属チューブ製容器は、局部的に大きく変形させたときに容器壁にクラックが生じたり、過度な引張力を加えたときに容器壁が破損したりすることがあり、内容物が漏出することがある。このような問題に対処するため、金属チューブ製容器にプラスチック製の被覆体を被覆して用いることにより、内容物の漏出を防止する方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。また、金属チューブ製容器にプラスチックフィルムを接合して内容物の漏出を防止する方法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0004】
【特許文献1】実開昭55−84240号公報
【特許文献2】実開昭60−78742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された被覆体は、切り込みを入れる等の加工が施してあり、機能的ではあるもの、装着性を高める、外観を向上させるといったことは考慮されていない。また、特許文献2に記載された被覆体は、接着工程が必要であり、接着性等に難点がある。
【0006】
本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであり、適度に柔軟であって、金属チューブ製容器に対する装着性及び外観等に優れる金属チューブ製容器用被覆体、及びこの被覆体が金属チューブ製容器に装着された複合容器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下のとおりである。
1.熱可塑性エラストマーからなり、且つ挿入口を有する筒状の被覆体であって、上記被覆体の周壁部の内面の一部に長さ方向に延びるリブが設けられていることを特徴とする金属チューブ製容器用被覆体。
2.上記リブの表面を除く上記周壁部の上記内面のうちの少なくとも一部にシボが設けられている上記1.に記載の金属チューブ製容器用被覆体。
3.上記リブは上記被覆体の上記周壁部の内面の上記挿入口の側に設けられ、上記シボは該内面の該挿入口に対して末端側に設けられている上記2.に記載の金属チューブ製容器用被覆体。
4.熱可塑性エラストマーからなり、且つ挿入口を有する筒状の被覆体であって、上記被覆体の周壁部の内面の少なくとも一部にシボが設けられていることを特徴とする金属チューブ製容器用被覆体。
5.上記挿入口に対する末端側が閉塞された有底体である上記1.乃至4.のうちのいずれか1項に記載の金属チューブ製容器用被覆体。
6.上記被覆体の上記周壁部の厚さが0.5〜5mmである上記1.乃至5.のうちのいずれか1項に記載の金属チューブ製容器用被覆体。
7.上記熱可塑性エラストマーのショアA硬さが20〜80である上記1.乃至6.のうちのいずれか1項に記載の金属チューブ製容器用被覆体。
8.上記熱可塑性エラストマーがスチレン系エラストマーである上記1.乃至7.のうちのいずれか1項に記載の金属チューブ製容器用被覆体。
9.上記1.乃至8.のうちのいずれか1項に記載の金属チューブ製容器用被覆体と、本体部、該本体部の一端側に延設された蓋取付部及び該蓋取付部に取着された蓋を有する金属チューブ製容器とを備え、該金属チューブ製容器の該本体部に該金属チューブ製容器用被覆体が装着されていることを特徴とする複合容器。
10.上記金属チューブ製容器に装着前の上記金属チューブ製容器用被覆体の長さ方向の少なくとも一部における内面の周方向の寸法が、該金属チューブ製容器の上記本体部の外面の周方向の寸法より小さい請求項9に記載の複合容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属チューブ製容器用被覆体は、熱可塑性エラストマーからなり、挿入口を有する筒状の被覆体であり、周壁部の内面の一部に長さ方向に延びるリブが設けられており、このリブが金属チューブ製容器の外面と当接することになるため、装着性及び外観等に優れる。
また、リブの表面を除く周壁部の内面のうちの少なくとも一部にシボが設けられている場合は、より優れた装着性等を有する被覆体とすることができる。
更に、リブが被覆体の周壁部の内面の挿入口の側に設けられ、シボが内面の挿入口に対して末端側に設けられている場合は、より装着し易い被覆体とすることができ、金属チューブ製容器の底部側に形成された折刃にも容易に装着させることができる。
他の本発明の金属チューブ製容器用被覆体は、周壁部の内面の少なくとも一部にシボが設けられているため、シボの凹凸により金属チューブ製容器との摺動が容易になり、同様に装着性等に優れ、この被覆体によって金属チューブ製容器が破損しても内容物の漏出を防止することができる。
このように、本発明の金属チューブ製容器用被覆体は、射出成形性に優れる熱可塑性エラストマーを用いて成形されているため、優れた外観を有し、且つ寸法精度の高い被覆体を容易に作製することができ、金属チューブ製容器に精度よく密着させて装着させることができる。また、射出成形により作製することにより、微細な表面加工等が容易であり、優れた外観を有する被覆体を容易に作製することができる。更に、リブ及び/又はシボを有することによって、金属チューブ製容器に装着するときに、金属チューブ製容器と被覆体との摩擦抵抗を低減させることができ、容易に装着することができる。
また、被覆体が、挿入口に対する末端側が閉塞された有底体である場合は、金属チューブ製容器の底部まで装着させることで、金属チューブ製容器の底部側まで保護することができるため、例えば、金属チューブ製容器に液状物が充填されているときでも、容器の破損による内容物の漏出を防止することができる。
更に、被覆体の周壁部の厚さが0.5〜5mmである場合は、より装着性及び外観に優れ、且つより使用感等のよい被覆体とすることができる。
また、熱可塑性エラストマーのショアA硬度が20〜80である場合は、適度な柔軟性を有し、弾性変形し易く、装着性及び使用感等に優れた被覆体とすることができる。
更に、熱可塑性エラストマーがスチレン系エラストマーである場合は、射出成形性に優れるため、寸法精度が高く、より装着性及び外観等に優れた被覆体とすることができる。
本発明の複合容器は、本発明の被覆体が金属チューブ製容器に装着されてなり、金属チューブ製容器が押圧等されて変形しても、被覆体が装着されているため、外観が大きく損なわれることがなく、且つ被覆体が有底体であるときは金属チューブ製容器の破損による内容物の漏出を防止することもできる。
また、金属チューブ製容器に装着前の金属チューブ製容器用被覆体の長さ方向の少なくとも一部における内面の周方向の寸法が、金属チューブ製容器の本体部の外面の周方向の寸法より小さい場合は、被覆体と金属チューブ製容器とが長さ方向の少なくとも一部でより強く密着するため、金属チューブ製容器が被覆体から脱落することがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、例えば、図1〜9を用いて本発明を詳しく説明する。
[1]被覆体
本発明の金属チューブ製容器用被覆体2は、熱可塑性エラストマーからなり、且つ挿入口25を有する筒状の被覆体2であって、被覆体2の周壁部20の内面22の一部に長さ方向に延びるリブ22aが設けられている。
また、他の本発明の金属チューブ製容器用被覆体2は、周壁部20の内面22の少なくとも一部にシボ22bが設けられている。
【0010】
(1)熱可塑性エラストマー
上記「熱可塑性エラストマー」は、熱可塑性を有するエラストマーであり、熱可塑性を有するエラストマーであれば、その種類は特に限定されない。熱可塑性エラストマーは、射出成形することができ、優れた外観を有し、且つ寸法精度の高い被覆体とすることができる。また、射出成形では被覆体の表面に微細な外観に優れた加工を容易に施すこともできる。更に、被覆体の内部の寸法精度も高いため、金属チューブ製容器に被覆体を精度よく密着させることができる。
【0011】
熱可塑性エラストマーは特に限定されず、例えば、スチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー等の各種の熱可塑性エラストマーを用いることができる。これらの熱可塑性エラストマーのうちでも特にスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーは、射出成形し易く、十分に柔軟であり、被覆体が金属チューブ製容器より寸法が小さい場合であっても、被覆体を拡径して、金属チューブ製容器に容易に装着することができる。
【0012】
また、スチレン系熱可塑性エラストマーのうちでも、SEBS系[ポリスチレン−ポリ(エチレン−ブタジエン)−ポリスチレン系]のエラストマーが特に好ましい。このSEBS系熱可塑性エラストマーは、両端側にポリスチレンブロックを有し、その中間にポリブタジエンブロックが位置するトリブロックポリマー(SBS)と、ポリブタジエンブロックが水素添加されてポリエチレンブタジエンブロックとなったトリブロックポリマー(SEBS)とがベースとなるエラストマーである。このように中間に位置するポリブタジエンブロックが水素添加されて二重結合のない、又は二重結合の少ないブロック共重合体であれば、耐候性、耐熱性に優れており好ましい。このSEBS系熱可塑性エラストマーを用いた場合、変色等の経時的な劣化を生じ難い被覆体とすることができ特に好ましい。
【0013】
(2)挿入口
上記「挿入口25」は被覆体2の一端部に設けられた開口部であり、この挿入口25から金属チューブ製容器が挿入され、金属チューブ製容器に被覆体2が装着される。挿入口25の形状及び寸法等は特に限定されず、被覆体2が装着される金属チューブ製容器の蓋取付部の側の端部の形状及び寸法等により設定することが好ましい。更に、挿入口25の周縁部の内面形状と、金属チューブ製容器10の本体部12の蓋取付部の側の端部(蓋11が取り付けられる側)の外面形状とは、同じであってもよく、異なっていてもよい。更に、被覆体2の内面形状と金属チューブ製容器10の本体部12の外面形状とは、一端側のみでなく、一端側から他端側(底部側)までの全長さに渡って同じであってもよく、異なっていてもよい(金属チューブ製容器の符号については図1参照)。
【0014】
また、被覆体2の内面の周方向の寸法と、金属チューブ製容器10の本体部12の外面の周方向の寸法とは、同じ寸法であっても、異なっていてもよいが、金属チューブ製容器10に装着前の被覆体2の長さ方向の少なくとも一部における内面の周方向の寸法が、金属チューブ製容器10の本体部12の外面の周方向の寸法より小さいことが好ましい。この場合、被覆体2が金属チューブ製容器10から脱落するのを防止することができるからである。被覆体2の内面の周方向の寸法(R)は金属チューブ製容器10の本体部12の外面の周方向の寸法(R)の80〜120%、特に90〜115%[(R/R)×100(%)]であることが好ましい。
【0015】
(3)周壁部
金属チューブ製容器10の本体部12の外面に装着される被覆体2の上記「周壁部20」の厚さは特に限定されず、金属チューブ製容器10の寸法等により適宜設定することが好ましい。被覆体2が装着される金属チューブ製容器10は、塑性変形し易く、この金属チューブ製容器10を外面から押圧することにより、内容物が押し出されるが、この操作を容易にするためには、周壁部20の厚さは、0.5〜5mm、特に1〜4mm、更に1.7〜3mmであることが好ましい。周壁部20の厚さが0.5〜5mmであれば、被覆体2の外面から被覆体2と金属チューブ製容器10とを押圧し、内容物を押し出す操作がより容易になるため好ましい。
【0016】
(4)リブ
被覆体2の周壁部20の内面22の一部に、長さ方向に延びる上記「リブ22a」が設けられている(図2〜図4、図8、図9参照)。リブ22aが設けられていると、金属チューブ製容器10に被覆体2を装着するとき、リブ22aの頂部が金属チューブ製容器10の外面に当接され、周壁部20の平面部が金属チューブ製容器10の外面に接触する部分が減少する。そのため、装着時の摩擦抵抗を大きく減少させることができ、被覆体2を金属チューブ製容器10に容易に装着することができる。
【0017】
リブ22aは、長さ方向に延びるように形成されておればよく、断面形状、寸法及び本数は特に限定されない。リブ22aの断面形状は半円形(図2参照)、半楕円形、三角形(三角形であればよいが、正三角形及び2等辺三角形であることが好ましい。)等の、金属チューブ製容器10の外面との当接部の面積が小さくなる形状であることが好ましい。また、内容物が3〜5gの金属チューブ製容器の場合、リブ22aの寸法は、被覆体2の周壁部20の内面22における底部の幅が0.2〜3.0mm、特に0.5〜2.0mmであり、高さが0.2〜4.0mm、特に0.2〜3.0mmであることが好ましい。リブ22aの底部の幅が0.2〜3.0mm、及び高さが0.2〜4.0mmであれば、被覆体2を金属チューブ製容器10に装着させ易く、且つ内容物を押し出す等の操作性が損なわれることもない。
【0018】
リブ22aの本数は1本以上であればよいが、2〜16本、特に4〜16本、更に4〜12本であることが好ましい。また、複数本のリブ22aが、被覆体2の周壁部20の内面22において相対向する位置に設けられることが好ましく(図2〜3及び図8参照)、このような態様であれば、金属チューブ製容器10の外面の周方向において、リブ22aがより均等に金属チューブ製容器10の外面と当接することになり、より容易に被覆体2を金属チューブ製容器10に装着することができる。更に、内容物を押し出すときの操作性もまったく損なわれることがない。
【0019】
(5)シボ
被覆体2の周壁部20の内面22の少なくとも一部に上記「シボ22b」が設けられている。このシボ22bの表面粗さは特に限定されない。また、シボ22bが設けられる部分についても特に限定されず、被覆体2を金属チューブ製容器10に装着するときに接触する部分に設けられておればよい。このように、シボ22bを設けることにより、被覆体2の内面と金属チューブ製容器10の外面とが接触するときの摩擦抵抗を低減させることができ、被覆体2を金属チューブ製容器10に容易に装着することができる。
【0020】
(6)リブ及びシボ
リブ22aとシボ22bとは、これらを併せて設けることもできる。即ち、被覆体の周壁部20の内面22の一部に長さ方向に延びるリブ22aを設け、且つ周壁部20の内面22のうちのリブ22aの表面を除く周壁部の内面のうちの少なくとも一部にシボ22bを設けることができる。この場合、シボ22bはリブが設けられている部分を除く他部のうちの全面に設けられていてもよいし、他部のうちの一部に設けられていてもよい。例えば、図8のように、被覆体2の周壁部20の内面22の挿入口25の側から底部側に向かってリブ22aを設け、且つ内面22の挿入口25に対して末端側にシボ22bを設けることができる。
【0021】
金属チューブ製容器10は、側方からみた場合に、本体部12は蓋取付部から底部側に向かって徐々に寸法が小さくなるように形成され、底部側には、通常、折刃が形成されている。このような形状の金属チューブ製容器10では、図9のように、被覆体2の形状を金属チューブ製容器10(図1参照)の形状と同様に底部側に向かって徐々に寸法が小さくなるように形成するとともに、被覆体2の周壁部20の内面22のリブ22aの寸法を底部側に向かって徐々に小さくしていき、且つ底部側にはシボ22bを設けた態様とすることが好ましい。このようにすれば、リブ22aが少なくとも金属チューブ製容器10の本体部12の蓋取付部の側に当接され、シボ22bが金属チューブ製容器10の本体部12の底部側と接触し、全体として被覆体2を金属チューブ製容器10により容易に装着させることができる。
【0022】
(7)被覆体の形状及び通気孔
被覆体2は挿入口25に対する末端側が閉塞された有底体とすることができる(図2、5、8参照)。有底体とすることにより、被覆体2により金属チューブ製容器10(図1参照)の本体部12の全体を覆うことができる。特に、内容物が液状等の流動性の高いものであるときは、金属チューブ製容器10の底部側の折刃が形成された部分等から内容物が漏出することがあるため、被覆体2を有底体とすることにより、金属チューブ製容器10から漏出しても、漏出物は被覆体2の内部に滞留し、外部への漏洩を防止することができる。
【0023】
周壁部20には底部側に空気抜き用の貫通孔43を設けることが好ましい。被覆体2を金属チューブ製容器10に装着するとき、リブ22aが設けられておれば、挿入口側から空気を押し出すこともできるが、金属チューブ製容器10が挿入される側に空気抜きが設けられておれば、より容易に脱気することができる。貫通孔43の個数は特に限定されず、貫通孔43の径にもよるが、通常、1個設けられておれば十分である。
【0024】
また、貫通孔43の径も特に限定されないが、径が過大であると、金属チューブ製容器10から内容物が漏出した場合に、この貫通孔43から外部へ漏洩することがあるため、脱気することができる限り径小であることが好ましい。
【0025】
被覆体2は、図3の被覆体3のように、無底の筒状体とすることができる。特に、内容物がペースト状等の流動性の低いものであるときは、金属チューブ製容器10の底部側の折刃が形成された部分等を保護する必要性が低く、このような場合は挿入口35に対する末端側が開口した被覆体3とすることができる。金属チューブ製容器10の本体部12は、被覆体3の末端側の開口端50から突出していてもよいし、被覆体3と金属チューブ製容器10の本体部12とが同寸であってもよいし、金属チューブ製容器10の本体部12が被覆体3より短寸であってもよい。
この無底の筒状体からなる被覆体3の場合、その他の構成は被覆体2と同様であり、周壁部30の内面32に設けられるリブ32a、及び外面31が鏡面加工部31aと、その他の表面部31bとにより形成され、装飾部33を有すること、並びにこれらの構成により得られる作用、効果等は被覆体2の場合と同様であり、被覆体2に係る各々の記載をそのまま適用することができる。
【0026】
(8)外観を向上させるための加工
周壁部20の外面21には装飾部23を設けることもできる(図2、8参照)。装飾部23は、例えば、図8のように、断面が台形の3本の帯状凸部により形成することができる。この場合、隣り合う台形の斜面のなす角度θは特に限定されないが、50〜70°とすることができ、55〜65°であることが好ましい。角度θが50〜70°であれば、外観に優れた装飾部23とすることができる。この装飾部23は被覆体2の外観を高めることができればよく、断面形状、寸法、配設される位置等は特に限定されない。
【0027】
更に、被覆体2の内面若しくは外面21のいずれか一方、又は両面に鏡面加工部21aを設けることができる。このように鏡面加工部21aを設けることにより、例えば、図1のように、被覆体2の外部から金属チューブ製容器10の表面に記載された文字及び図柄等を視認することができ、外観の向上という観点からばかりでなく、実用的な面でも好ましい。また、鏡面加工部21aを除く他の表面部21bはシボ加工を施して半透明にすることもできる。半透明であれば汚れ、傷等が目立ち難く、好ましい。例えば、シアノアクリレート系の瞬間接着剤等は、漏出すると空気中の湿分と反応して白化が生じ易く、汚れとなることがあるが、半透明であれば、白化が目立ち難くなるという利点がある。
【0028】
[2]複合容器
本発明の複合容器1は、図1のように、金属チューブ製容器用被覆体2と、この被覆体2が装着され、本体部12、本体部12の一端側に延設された蓋取付部及び蓋取付部に取着された蓋11を有する金属チューブ製容器10とを備える。
金属チューブ製容器10は上記のような構成を有し、この金属チューブ製容器10は、蓋11を蓋取付部から取り外し、本体部12を被覆体2を介して外部から押圧することにより内容物を押し出して用いることができる。
【0029】
金属チューブ製容器10に装着前の被覆体2の内面の周方向の寸法は、被覆体2の長さ方向の少なくとも一部において、金属チューブ製容器10の本体部12の外面の周方向の寸法より小さいことが好ましい。この寸法割合は前記の範囲であることがより好ましく、このようにすれば、金属チューブ製容器用被覆体を金属チューブ製容器の本体部10に容易に装着させることができ、且つ金属チューブ製容器10が被覆体2から脱落することがない。また、被覆体2の挿入口25の寸法は特に限定されず、挿入口25の周縁部は、金属チューブ製容器10の本体部12の蓋取付部の側の端部と同寸でもよく、この端部より大径でも小径でもよい。そして、被覆体2の挿入口25の周縁部が、金属チューブ製容器10の本体部12の蓋取付部の側の端部より小径である場合は、挿入口25の周縁部を拡径して金属チューブ製容器10に装着することができる。
【0030】
被覆体2が装着される金属チューブ製容器10は、液状等の内容物が押し出されて減少するにともない、塑性変形する容器であり、特に長さ方向の寸法が内容物の減少とともに小さくなっていく。この場合、被覆体2の内面の周方向の寸法が、上記のように、被覆体2の長さ方向の少なくとも一部において、金属チューブ製容器10の本体部12の外面の周方向の寸法より小さい場合、また、特に、周壁部20の内径(R)が被覆体2が装着される金属チューブ製容器10の対応する位置の外径(R)と同寸、又は所定割合の範囲内で小さい[RはRの80.0〜99.9%、特に85.0〜98.0%、R/R×100(%)]場合は、金属チューブ製容器10が短寸化するとともに、被覆体2も径方向に短径化し、内容物が押し出されて金属チューブ製容器が径小になっても、金属チューブ製容器の外面と被覆体の内面とが大きく離間することがなく、外観が大きく低下することがなく、且つ内容物を押し出すときの操作性に優れ、良好な使用感が維持される。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
(1)被覆体
表1に記載された実施例1〜6の熱可塑性エラストマー、及び表2に記載された比較例1、2のゴムを用いて射出成形により、図2のような被覆体2を作製した。この被覆体2には断面半円形のリブ22aが4本設けられている。また、被覆体2の周壁部20の内面22の底部側には、シボ22bが設けられている(図8参照)。更に、被覆体2の内面側は、底部側に向かって徐々に寸法が小さくなっており(図9参照)、被覆体2が装着される金属チューブ製容器10(図1参照)の外形に適合させたものである。また、被覆体2は挿入口25と対向する側が閉塞された有底体である。
【0032】
更に、底面41の内面42は、金属チューブ製容器10の折刃が当接する当接部42bと底面部42aとからなり、金属チューブ製容器10が挿入された後、空間部44が形成される(図8参照)。また、底部側の周壁部20には空気抜きのための貫通孔43が設けられている。更に、被覆体2の外面21は、鏡面加工部21aと半透明に形成された表面部21bとを有し、この外面21には更に断面が台形状の3本の帯状凸部からなる装飾部23が設けられている。この装飾部23の隣り合う台形の斜面のなす角度は60°であり、優れた外観を有している。
【0033】
(2)金属チューブ製容器及び被覆体の装着
被覆体2が装着される金属チューブ製容器10は、シアノアクリレート系の瞬間接着剤(東亞合成社製、商品名「アロンアルフア」、内容量;4g)が内容物として充填されたアルミニウム製の金属チューブ製容器10である。この金属チューブ製容器10は、底部側に折刃が形成された一般的な容器である。この金属チューブ製容器10を、被覆体2の挿入口25から折刃が当接部42bに当接するまで挿入し(図8参照)、図1のように、被覆体2を金属チューブ製容器10に装着した。尚、被覆体2の鏡面加工部21aにおいて金属チューブ製容器10の外面に記載された文字(表示部13、図1参照)を視認することができた。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
(3)性能評価
実施例1〜6及び比較例1、2の被覆体の射出成形性、金属チューブ製容器への装着性及び内容物である瞬間接着剤を押し出すときの使用感を評価した。装着性については成形した被覆体を金属チューブ製容器に装着するときの操作のし易さという観点で評価した。また、使用感については金属チューブ製容器から瞬間接着剤を押し出すときの感触の良否という観点で評価した。装着性及び使用感は20名のモニターにより調査し、評価した。評価基準は表3のとおりである。
【0037】
【表3】

【0038】
表1の実施例の結果によれば、各種熱可塑性エラストマーを用いた被覆体は射出成形により成形することができた。中でもスチレン系エラストマーやオレフィン系エラストマーは成形性に優れ、得られた被覆体のリブやシボなどの寸法精度が高かった。更に、スチレン系エラストマーはオレフィン系エラストマーに比べて伸びが高く、一般に樹脂の機械的強度も高いため、被覆体を金属チューブ製容器に装着する際も容易に装着することができた。使用感に関しては、被覆体が柔らかい方が手にした感触がよかった。
【0039】
一方、表2の結果によれば、比較例1ではイソプレン系ゴムを、比較例2ではクロロプレン系ゴムを用いているため、装着性及び使用感はともに良好な結果であるが、いずれも射出成形に加硫工程が必要であり、成形装置が特殊であるためコストアップになる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の熱可塑性エラストマー樹脂からなる金属チューブ製容器用被覆体、及び金属チューブ製容器の本体部に本発明の被覆体が装着されてなる複合容器は、接着剤、硬化剤、コーティング剤等が充填され、外面を押圧することにより内容物を押し出して用いるための容器の分野において使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の複合容器の一例の模式的な斜視図である。
【図2】有底体からなる本発明の被覆体の一例の模式的な斜視図である。
【図3】無底の筒状体からなる本発明の被覆体の他例の模式的な斜視図である。
【図4】本発明の被覆体の一例の挿入口の側を拡大した模式的な部分拡大斜視図である。
【図5】本発明の被覆体の一例の外観を説明するための模式的な正面図である。
【図6】本発明の被覆体の一例を底部側からみた模式図である。
【図7】本発明の被覆体の一例を挿入口側からみた模式図である。
【図8】本発明の被覆体の一例を正面方向からみた模式的な断面図である。
【図9】本発明の被覆体の一例を側面方向からみた模式的な断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1;複合容器、2、3;被覆体、10;金属チューブ製容器、11;蓋、12;本体部、20、30;周壁部、21、31;外面、22、32;内面、22a、32a;リブ、22b、32b;シボ、25、35;挿入口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性エラストマーからなり、且つ挿入口を有する筒状の被覆体であって、
上記被覆体の周壁部の内面の一部に長さ方向に延びるリブが設けられていることを特徴とする金属チューブ製容器用被覆体。
【請求項2】
上記リブの表面を除く上記周壁部の上記内面のうちの少なくとも一部にシボが設けられている請求項1に記載の金属チューブ製容器用被覆体。
【請求項3】
上記リブは上記被覆体の上記周壁部の内面の上記挿入口の側に設けられ、上記シボは該内面の該挿入口に対して末端側に設けられている請求項2に記載の金属チューブ製容器用被覆体。
【請求項4】
熱可塑性エラストマーからなり、且つ挿入口を有する筒状の被覆体であって、
上記被覆体の周壁部の内面の少なくとも一部にシボが設けられていることを特徴とする金属チューブ製容器用被覆体。
【請求項5】
上記挿入口に対する末端側が閉塞された有底体である請求項1乃至4のうちのいずれか1項に記載の金属チューブ製容器用被覆体。
【請求項6】
上記被覆体の上記周壁部の厚さが0.5〜5mmである請求項1乃至5のうちのいずれか1項に記載の金属チューブ製容器用被覆体。
【請求項7】
上記熱可塑性エラストマーのショアA硬さが20〜80である請求項1乃至6のうちのいずれか1項に記載の金属チューブ製容器用被覆体。
【請求項8】
上記熱可塑性エラストマーがスチレン系エラストマーである請求項1乃至7のうちのいずれか1項に記載の金属チューブ製容器用被覆体。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちのいずれか1項に記載の金属チューブ製容器用被覆体と、本体部、該本体部の一端側に延設された蓋取付部及び該蓋取付部に取着された蓋を有する金属チューブ製容器とを備え、該金属チューブ製容器の該本体部に該金属チューブ製容器用被覆体が装着されていることを特徴とする複合容器。
【請求項10】
上記金属チューブ製容器に装着前の上記金属チューブ製容器用被覆体の長さ方向の少なくとも一部における内面の周方向の寸法が、該金属チューブ製容器の上記本体部の外面の周方向の寸法より小さい請求項9に記載の複合容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−230692(P2008−230692A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77269(P2007−77269)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】