説明

金属微粒子分散体の製造方法及び該製造方法を使用した後に分散媒置換する金属微粒子分散液の製造方法

【課題】小さな平均粒径で分散が可能で、分散性、分散安定性、高濃度分散性等が良好な金属微粒子分散体の製造方法を提供すること、更には、こうして得られた金属微粒子分散体に対して溶媒置換を施す、分散性、分散安定性、高濃度分散性、分散媒多様性等が良好な金属微粒子分散液の製造方法を提供すること。
【解決手段】金属の気体9を低蒸気圧液体3に接触させることによって、該金属を該低蒸気圧液体3に分散させる金属微粒子分散体の製造方法であって、該低蒸気圧液体3中に、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類を溶解させておくことを特徴とする金属微粒子分散体の製造方法、その金属微粒子分散体中の低蒸気圧液体を他の分散媒に置換したものであることを特徴とする金属微粒子分散液、及び、他の分散媒に置換する際に、1級アミン類又は2級アミン類を加えた後に他の分散媒を加える上記金属微粒子分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属微粒子分散体の製造方法に関し、更に詳しくは、特定の方法で金属微粒子の分散体を製造する際に、分散媒である低蒸気圧液体に特定の化合物を溶解させておくことにより、分散性が改善された金属微粒子分散体の製造方法に関するものである。また、このようにして得られた金属微粒子分散体を、特定の化合物を用いて分散媒置換することを特徴とする、分散性が改善された金属微粒子分散液の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属又は金属化合物の微粒子分散液は、IC基板、半導体素子等の配線、半導体モジュールの層間接続、透明導電膜の形成、金属と非金属との接合、液のコロイド色を利用したカラーフィルター等に広く用いられている。
【0003】
また、分散対象となる金属又は金属化合物としては、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)等の貴金属;銅(Cu)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)等の卑金属;それらの酸化物や合金等、種々のものが報告されている。
【0004】
金属又は金属化合物の微粒子分散液の製造方法としては、水又は有機溶剤中の酸化状態の金属化合物を還元剤で還元して金属微粒子の分散液を得る方法が従来から広く知られている。しかしながら、このような化学的方法では、還元されずに残留した物質や還元反応による不純物が含有された微粒子分散液しか調製できず、その用途が限定されたものとなっていた。また、この方法に関しては、使用する還元剤の種類、使用する物質の純度、保護コロイドの有無、調製時のpHや温度等を変化させることによって、分散性を向上させる方法が多く検討されているが、何れも問題点があり充分な分散安定性を得られるまでには至っていなかった。
【0005】
以上のような化学的方法とは異なり、スパークエロージョン法、ガス中蒸発法、真空蒸着法(「活性液面真空蒸着法」とも呼ばれる)等の物理的方法が知られている。
【0006】
スパークエロージョン法は、分散させたい金属等を電極として用い、分散媒中で電極間に放電を発生させることによって、微粒子分散液を製造する方法である。しかしながら、この方法では、分散媒中に電気良導体である界面活性剤を含有させておくことが難しいため、微粒子の凝集を抑制することができない等の問題点があった。
【0007】
ガス中蒸発法は、0.1〜30Torr(mmHg)(1.3×10Pa〜4×10Pa)の不活性気体の存在下に、分散させたい金属又は金属化合物の蒸気を発生させ、気相中で微粒子を生成させ、生成した直後に、それを溶媒に捕集して微粒子分散液を製造する方法である(特許文献1)。また、不活性気体中に常温で液体である有機物の気体を共存させておくことによって、その有機物中に分散された微粒子を得て、その後溶媒交換等をして微粒子分散液を製造する方法も知られている。
【0008】
しかしながら、これらガス中蒸発法では、平均粒径をそろえることが困難であった。すなわち、発生した金属又は金属化合物の蒸気は、不活性気体原子との衝突によって冷却されて微粒子を形成するが、発生した微粒子は再び不活性気体中で会合しクラスターを形成し易い等の、気体と気体との接触に起因する問題点があった。
【0009】
真空蒸着法は、界面活性剤等で表面が覆われた低蒸気圧液体の表面に金属等を蒸着させ、金属原子等が凝集して微粒子が形成されると同時に、その微粒子を界面活性剤、分散剤等で保護して微粒子同士の会合を防止し、微粒子が油中に分散された分散体を得る方法である(特許文献2)。この方法では、微粒子が直接液体中に生成するので、上記ガス中蒸発法で問題となる、気体と気体との接触に起因する問題点、微粒子同士の会合等は生じ難い。
【0010】
しかしながら、上記真空蒸着法において、分散媒である低蒸気圧液体に溶解させておく化合物(界面活性剤、分散剤等)に関しては若干の報告はあるが(特許文献3)、微粒子同士が界面活性剤、分散剤等により保護される前に会合し易く、クラスターを形成してしまう場合もある等の問題点が依然としてあった。
【0011】
また、特に真空蒸着法においては、一般に、金属類の種類によって好適な界面活性剤や分散剤は全く異なるが、それぞれの金属類ごとに好適な界面活性剤や分散剤の検討は殆どなされていなかった。従って、比較的優れた方法である真空蒸着法を用いても、上記したような種々の問題点が存在し、金属類の微粒子分散体に充分な分散性や分散安定性を付与するまでには至っていなかった。また、特に、ゲルマニウム等の特定の金属類の微粒子分散体に対しては分散性や分散安定性を付与するまでには至っていなかった。
【0012】
また、真空蒸着法で一旦分散媒として用いられた上記低蒸気圧液体について、「塗布溶媒等として好適な他の分散媒」に分散媒置換する方法も知られている(特許文献4)。そして、このような「他の分散媒」についても、水、アルコール等の極性分散媒;トルエン、オクタン等の無極性分散媒等が知られているが、分散可能な分散媒には制限があった。また、通常は分散させることが困難な分散媒に対しても金属微粒子を分散させることを可能にする分散補助剤も殆ど知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−121606号公報
【特許文献2】WO 2005/099941号公報
【特許文献3】特開2008−266745号公報
【特許文献4】特開2008−297576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、小さな平均粒径で分散が可能で、分散性、分散安定性、高濃度分散性等が良好な金属微粒子分散体の製造方法を提供することにあり、更には、こうして得られた金属微粒子分散体に対して溶媒置換を施す、分散性、分散安定性、高濃度分散性、分散媒多様性等が良好な金属微粒子分散液の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、金属微粒子の分散体を特定の方法で製造するに際し、分散媒に特定の化合物を溶解させておくことにより、分散性等が著しく改善され、小粒径で分散された金属微粒子分散体ができることを見出した。具体的には、金属類の微粒子分散体を製造できる真空蒸着法において、それに用いる低蒸気圧液体中に、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類を溶解させておくと、分散性や分散安定性が極めて顕著に改善されることを見出して本発明を完成するに至った。
【0016】
更に、上記金属微粒子分散体において、分散媒として用いられた低蒸気圧液体を他の分散媒に分散媒置換する際に、分散補助剤として1級アミン類又は2級アミン類を用いることによって、良好の分散性を維持したままで分散媒を置換できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0017】
すなわち、本発明は、金属類の気体を低蒸気圧液体に接触させることによって、該金属類を該低蒸気圧液体に分散させる金属微粒子分散体の製造方法であって、該低蒸気圧液体中に、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類を溶解させておくことを特徴とする金属微粒子分散体の製造方法に存する。
【0018】
また、本発明は、上記の金属微粒子分散体の製造方法を行った後、製造された該金属微粒子分散体中の上記低蒸気圧液体を他の分散媒に置換することを特徴とする金属微粒子分散液の製造方法に存する。
【0019】
また、本発明は、他の分散媒に置換する際に、1級アミン類又は2級アミン類を加えた後に他の分散媒を加える上記の金属微粒子分散液の製造方法に存する。
【0020】
また、本発明は、上記の金属微粒子分散体の製造方法を使用して製造されたものであることを特徴とする金属微粒子分散体を提供するものである。
【0021】
また、本発明は、上記の金属微粒子分散液の製造方法を使用して製造されたものであることを特徴とする金属微粒子分散液を提供するものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、上記問題点と課題を解決し、金属類を極めて小さな体積分布メジアン径(D50)を有する微粒子にまで分散が可能であり、また、極めて小粒径の微粒径に分散しても、分散性に優れ金属微粒子の凝集がなく、分散安定性にも優れた「金属微粒子分散体」を提供することができる。また、分散媒置換時に凝集等が起らず、他の分散媒に置換された後も分散安定性に優れた「金属微粒子分散液」を提供することができる。
【0023】
また、従来、安定に分散させることができなかった分散媒中にも安定に分散させられる方法を提供し、結果として、金属微粒子の用途に最適な分散媒中に分散された金属微粒子分散液を提供することができる。なお、この効果を「分散媒多様性」と略記する場合がある。
【0024】
本発明によれば、金属類がゲルマニウム単体のときに上記効果を特に顕著に発揮し、分散性、分散安定性、高濃度分散性、分散媒多様性等に優れたゲルマニウム金属微粒子分散液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の金属微粒子分散体の製造方法に使用される装置の一例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の実施の具体的形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で任意に変形できるものである。
【0027】
本発明は、金属類の気体を、分散媒となる低蒸気圧液体に接触させることによって、該金属微粒子が該低蒸気圧液体に分散された分散体を製造する方法に関するものである。かかる金属微粒子分散体の製造方法は、前述したように「真空蒸着法」、「活性液面真空蒸着法」等と呼ばれ、前述した「ガス中蒸発法」とは明確に区別されるものである。
【0028】
本発明における「金属類」とは、金属、合金又は金属化合物をいう。また、「金属類の微粒子」を、単に「金属微粒子」と略記し、「金属類の微粒子の分散体」を、単に「金属微粒子分散体」と略記し、「金属類の微粒子の分散液」を、単に「金属微粒子分散液」と略記する。
【0029】
本発明においては、真空蒸着法において金属類が蒸着される表面(液面)を形成する「分散後は分散媒となる低蒸気圧液体」に金属類の微粒子が分散された状態のものを「金属微粒子分散体」といい、金属微粒子分散体の分散媒である低蒸気圧液体を「他の分散媒」に置換した後のものを「金属微粒子分散液」という。
【0030】
本発明においては、金属類の気体を、分散媒である低蒸気圧液体に接触させるが、その気体中には、他の「金属、合金又は金属化合物」が含有されている混合気体であってもよい。金属類の金属は、貴金属でも卑金属でもよい。具体例としては特に限定はないが、例えば、金、銀、白金、パラジウム、ゲルマニウム、シリコン(ケイ素)、銅、鉄、コバルト、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉛、チタン、バナジウム、マンガン、スズ、ガリウム、ストロンチウム、ニオブ、モリブデン、アンチモン、インジウム、バリウム、ハフニウム、ビスマス、タンタル等の金属単体;それらの金属と他の金属との合金;それらの金属の化合物;以上の金属類の混合物;等が挙げられる。
【0031】
これらの中でも、金属単体が、蒸発又は昇華のし易さ、金属微粒子の分散の安定性、金属微粒子を塗布して膜を生成する場合には、その得られた膜の電導度等の物性、コスト、入手し易さ等の点から好ましい。金属単体の中でも、ゲルマニウム、シリコン、銀、銅又はインジウムが特に好ましく、ゲルマニウムが最も好ましい。真空蒸着法においては、一般に、ゲルマニウムやゲルマニウム化合物は、銀、銅等の金属類と比較して、微粒子を生成させ難いが、本発明を用いれば微粒子を生成させられるので、その点でも、本発明はゲルマニウム又はゲルマニウム化合物に最も好ましく適用される。
【0032】
真空蒸着法においては、分散媒(低蒸気圧液体)に溶解させておく化合物と、金属微粒子分散体の金属類とは密接な関係にある(マッチング性が重要である)。真空蒸着法において、分散媒(低蒸気圧液体)に、脂肪酸類(好ましくは、不飽和脂肪酸類)、脂肪族アミン類(好ましくは、1級脂肪族アミン類)又は脂肪酸エステル類(好ましくは、糖エステル類)を溶解させておくと、金属類がゲルマニウム又はゲルマニウム化合物であると、特に好適に微粒子分散が可能である。更に、本発明においては、金属類がゲルマニウム金属単体若しくは酸化ゲルマニウム、又はシリコン金属単体である場合に、より効果を発揮し、金属類がゲルマニウム金属単体のときに特に効果を発揮する。
【0033】
真空蒸着法においては、蒸着された金属類が、分散媒(低蒸気圧液体)の表面(液面)に存在する界面活性剤や分散剤の作用によって微粒子が形成されると共に、形成された微粒子が分散媒(低蒸気圧液体)中に取り込まれる。従って、「微粒子にする金属類」と、その金属類に好適な「界面活性剤や分散剤」との間には強い相関がある。本発明における「脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類」は、特に、ゲルマニウム、シリコン、銀、銅、インジウム等の特定の金属類に極めて効果的である。その理由は、その理由のおよぶ範囲に本発明は限定されるわけではないが、金属類の「酸化され易さや電子状態」が関係していると考えられる。
【0034】
本発明においては、金属類の気体を、後述する低蒸気圧液体に接触させて分散体を形成させるが、その際、金属類の気体中に、ヘリウム、アルゴン、窒素等の不活性気体;分散媒、分散剤、分散補助剤等の有機物気体等を共存させることを排除するものではないが、分子を液体に接触させて、液相界面で分散状態を作る本発明の作用原理から、それらを共存させる必要性はない。好ましくは、上記不活性気体を共存させない方が良い。
【0035】
金属類の気体を、後述する低蒸気圧液体に接触させて分散体を形成させる際の圧力は特に限定はないが、10−1Pa以下であることが好ましい。これらの点で、0.1〜30Torr(mmHg)(1.3×10Pa〜4×10Pa)の圧力下で、不活性気体との相互作用によって、金属類の蒸気を凝集させて、気体中で金属微粒子を生成させる、前記したガス中蒸発法とは、本発明は全く異なる技術思想によるものである。
【0036】
本発明において、上記圧力は10−1Pa以下であることが好ましく、10−2Pa以下であることが特に好ましい。また、10−4Pa以上であることが好ましく、10−3Pa以上であることが特に好ましい。圧力が大きすぎる、すなわち真空度が悪いと、加熱温度を高くする必要がある点、そこに介在する気体の影響がでて金属微粒子が変質する等の問題が生じる場合がある。一方、圧力が小さすぎる、すなわち真空度を不必要に高くすると、低蒸気圧液体が揮発したり、生産性が落ちたり、真空ポンプに負荷がかかりすぎたりする場合がある。
【0037】
本発明においては、「金属類の気体」を、低蒸気圧液体に接触させることによって、それを該低蒸気圧液体中に分散させる。「低蒸気圧液体」とは、分散時の温度で低蒸気圧であって、10−1Paで実質的に揮発しない液体をいう。低蒸気圧でないと、蒸発して「金属類の気体」と気体同士で相互作用をして分散性に悪影響を与える場合がある。その25℃での蒸気圧は、好ましくは10−1Pa以下、より好ましくは10−3Pa以下、特に好ましくは10−10Pa〜10−5Pa、更に好ましくは10−8Pa〜10−6Paである。かかる低蒸気圧液体の1気圧での沸点は特に限定はないが、上記と同じ理由で、180℃以上が好ましく、200℃以上がより好ましく、220℃以上が特に好ましく、240℃以上が更に好ましい。
【0038】
低蒸気圧液体は、具体的には、例えば、アルキルナフタレン、エチレンオレフィン共重合体等の脂肪族及び/又は芳香族炭化水素類;アルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル、ポリアルキルフェニルエーテル等の芳香族エーテル類;シリコーン油、ポリアルキルシロキサン等のシロキサン化合物類;フルオロカーボン油類;多価アルコール類等が挙げられる。ここで、上記アルキル基としては特に限定はないが、炭素数4〜24個のものが好ましく、8〜22個のものがより好ましく、12〜20個のものが特に好ましい。また、「脂肪族及び/又は芳香族炭化水素類」である場合には、炭素数の合計が14個以上であることが好ましく、20個以上であることがより好ましく、25個以上であることが特に好ましい。これらは1種又は2種以上を混合して用いられる。また、低蒸気圧液体として、市販の拡散ポンプ油も好ましく用いられる。低蒸気圧液体の20℃での粘度は特に限定はないが、150mPa・sを超えないことが好ましい。
【0039】
また、低蒸気圧液体として、下記する脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類を用いることもできる。このように、分散媒である低蒸気圧液体自体が、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類である場合も、本発明においては、「低蒸気圧液体中に、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類を溶解させておく」という表現に含まれるものとする。
【0040】
本発明の金属微粒子分散体の製造方法においては、金属類の気体を低蒸気圧液体に接触させることによって、金属類の気体が固体の金属微粒子になって該低蒸気圧液体に分散されるが、その際、該低蒸気圧液体中に、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類を溶解させておくことを特徴とする。
【0041】
脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類を溶解させておくことによって、体積分布メジアン径(D50)の小さい分散粒子を形成させることができ、また、小粒径でも分散性、分散安定性、高濃度分散性、分散媒多様性等に優れた金属微粒子分散体を得ることができる。また、金属微粒子分散体中の低蒸気圧液体を他の分散媒に置換して金属微粒子分散液を製造する際にも分散安定性が保たれる。特に、分散媒置換をして金属微粒子分散液を製造する際に、1級アミン類又は2級アミン類を加えることが好ましいが、その場合、かかる組み合わせで、特に金属微粒子分散液の分散安定性に関して相乗効果を発揮する。
【0042】
脂肪酸類としては、カルボキシル基を1個有するカルボン酸類のうち鎖式構造を有するものであれば特に限定はなく、該鎖式構造は、直鎖構造でも側鎖を有する構造でもよく、また、アルキル基でも、アルケニル基でも、アルキニル基でもよい。すなわち、飽和脂肪酸でも、不飽和脂肪酸でもよい。好ましくは、分散性、分散安定性、高濃度分散性等の点から、不飽和脂肪酸である。
【0043】
脂肪酸類の炭素数は特に限定はないが、カルボン酸(−COOH)を構成する1個の炭素を含め、また、側鎖を有する場合は、側鎖を構成する炭素を含め、通常、1〜24個であるが、3〜23個が好ましく、5〜22個がより好ましく、8〜21個が特に好ましい。炭素数が多すぎると、該脂肪酸類の低蒸気圧液体に対する溶解性や溶解安定性、金属微粒子の分散安定性等が劣る場合がある他に、分散液をガラス等の基板に塗布して焼成する際に焼結の進行を阻害する等の応用性に劣る場合もある。一方、炭素数が少なすぎると、金属類の気体を低蒸気圧液体に接触させる際に、脂肪酸類が気化して金属微粒子の分散安定性等が劣る場合がある。
【0044】
なお、飽和脂肪酸に限定して言えば、炭素数は6〜16個が上記理由で好ましく、10〜14個が特に好ましく、12個(ラウリン酸)が最も好ましい。
【0045】
脂肪族アミン類としては、炭化水素基にアミノ基を有する構造のものであれば特に限定はなく、該炭化水素基は、直鎖構造の基でも側鎖を有する構造の基でもよく、炭素間の不飽和二重結合を有するものでも有さないものでもよい。
【0046】
脂肪族アミン類を構成する炭化水素基の炭素数は特に限定はないが、側鎖を有する場合は、側鎖を構成する炭素も含め、通常、1〜24個であるが、3〜23個が好ましく、5〜22個がより好ましく、8〜21個が特に好ましい。炭素数が多すぎると、該脂肪族アミン類の低蒸気圧液体に対する溶解性、溶解安定性等が劣る場合、金属微粒子の分散安定性、分散液を基板に塗布して焼成する際に焼結し難くなる等、分散液の応用性に劣る場合があり、一方、炭素数が少なすぎると、金属類の気体を低蒸気圧液体に接触させる際に、脂肪族アミン類が気化し易くなったり、低蒸気圧液体に対する相溶性、溶解性又は溶解安定性が劣ってしまったりする場合、金属微粒子の分散安定性が劣る場合等がある。
【0047】
脂肪族アミン類のアミノ基は、1級でも2級でもよいが、1級であることが、小粒径でも分散性、分散安定性、高濃度分散性、分散媒多様性等に優れた金属微粒子分散体を得ることができる点で好ましい。また、脂肪族アミン類中のアミノ基の個数は特に限定はないが、1個であることが上記点から好ましく、更に、該アミノ基は上記炭化水素基の末端に結合していることが上記点から好ましい。
【0048】
脂肪酸エステル類としては、脂肪酸類と「水酸基を有する化合物」とがエステル結合しているものであれば特に限定はない。脂肪酸エステル類を構成する脂肪酸類としては、上記「脂肪酸類」として記載したものと、好ましい範囲、効果等を含めて同様である。
【0049】
脂肪酸エステル類を構成する(脂肪酸エステル類の原料である)「水酸基を有する化合物」は特に限定はなく、水酸基の個数も特に限定はない。例えば、アルキルアルコール、アルケニルアルコール等の1価アルコール類;アルキレン基、アルケニレン基等に水酸基が結合した2価アルコール類;ペンタエリスリトール、ジメチロールプロパン等の多価アルコール;ブドウ糖、果糖、ショ糖等の糖類等が挙げられる。脂肪酸類は「水酸基を有する化合物」の水酸基の少なくとも1つに結合していればよく、平均して1つに結合していることが好ましい。
【0050】
中でも、脂肪酸エステル類は、「脂肪酸類と糖類とがエステル結合してなるもの」(以下、「糖エステル類」と略記する)が、小粒径でも分散性、分散安定性、高濃度分散性、分散媒多様性等に優れた金属微粒子分散体を得ることができる点で特に好ましい。
【0051】
糖エステル類における脂肪酸類を構成する炭素数は特に限定はないが、側鎖を有する場合は、側鎖を構成する炭素も含め、1〜30個が好ましく、3〜28個がより好ましく、5〜25個が特に好ましい。炭素数が多すぎると、該脂肪酸類の低蒸気圧液体に対する溶解性、溶解安定性等が劣る場合、金属微粒子の分散安定性、分散液を基板に塗布して焼成する際に焼結し難くなる等、分散液の応用性が劣る場合等があり、一方、炭素数が少なすぎると、金属類の気体を低蒸気圧液体に接触させる際に、脂肪酸類が気化し易くなったり、低蒸気圧液体に対する相溶性、溶解性又は溶解安定性が劣ってしまったりする場合、金属微粒子の分散安定性が劣る場合等がある。
【0052】
本発明においては、金属類の気体を低蒸気圧液体に接触させる際に、低蒸気圧液体中に「脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類」が溶解されていればよく、その濃度は特に限定はなく適宜調節可能であるが、低蒸気圧液体100質量部に対して、「脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類」0.3〜50質量部が好ましく、1〜40質量部がより好ましく、3〜30質量部が特に好ましい。「脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類」の内の2種以上が用いられる場合は、合計量が上記範囲になっていることが好ましい。少なすぎると、金属微粒子の分散性が良好でなくなる場合がある。一方、多すぎると、金属微粒子分散体の粘度が高くなりすぎ、後記するチャンバー(1)の回転による「新しい低蒸気圧液体の膜」ができ難くなる場合や、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類が金属微粒子表面等に多く残留する場合がある。
【0053】
特に、金属類における金属がゲルマニウムの場合には、低蒸気圧液体100質量部に対して、「脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類」5〜60質量部が好ましく、10〜50質量部がより好ましく、15〜40質量部が特に好ましい。
【0054】
上記したように、低蒸気圧液体として、脂肪酸類自体、脂肪族アミン類自体及び/又は脂肪酸エステル類自体が用いられることもある。その場合、特に限定はないが、20℃での粘度は150mPa・sを超えないことが好ましい。
【0055】
本発明の金属微粒子分散体の製造方法によると、金属類の気体が低蒸気圧液体の界面に蒸着され液中に取り込まれ、金属微粒子が生成する。そこで使用される脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類は、液中への金属類の取り込み、液中での金属微粒子の生成、金属微粒子の体積分布メジアン径(D50)の制御、金属微粒子同士の会合の抑制、加熱下の金属微粒子の融着等に直接関与していると考えられる。従って、かかる役割・効果が極めて特殊であるので、一般的な微粒子の分散性改良等に用いられる界面活性剤、添加剤、分散剤、分散補助剤等の知見・技術は殆ど役に立たない。すなわち、他の微粒子分散体の製造方法において知られている分散のために用いられる化合物の本発明への単なる転用は、金属微粒子生成等の原理が全く異なるので不可能である。また、公知の界面活性剤、添加剤、分散剤、分散補助剤等の本発明への単なる転用も、(分散性が良い等の)同様の効果を奏するとは限らないのでできるものではない。
【0056】
また、微粒子が磁性紛(強磁性体紛)であることは、その微粒子が結晶性を有する程度に大きいということであり、そのような結晶性粒子若しくはそこまで大きい微粒子の分散技術は、それより極めて小さい粒径の金属微粒子の形成や分散が可能であり必要な本発明には全く応用できないものである。
【0057】
本発明の製造方法を用いると、体積分布メジアン径(D50)100nm以下で分散された金属微粒子分散体を極めて分散性良く安定に製造できる。また、体積分布メジアン径(D50)50nm以下でも安定に分散でき、更には、10nm以下でも分散できる。従って、本発明の製造方法を使用して得られる金属微粒子分散体中の金属微粒子の体積分布メジアン径(D50)は、通常1〜100nm、好ましくは2〜50nm、より好ましくは3〜20nm、特に好ましくは3.5〜15nm、更に好ましくは4〜10nmである。体積分布メジアン径(D50)は小さいほど、金属微粒子分散体の用途の1つである膜形成において、該膜を形成するときの加熱温度を低くでき、本発明の前記効果を発揮し易いので好ましい。
【0058】
ゲルマニウムの分散においては、体積分布メジアン径(D50)を小さく安定に分散させようとすると、「脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類」の使用が特異的に有効である。ゲルマニウム以外の金属の場合は、体積分布メジアン径(D50)を小さく安定に分散させるためには、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類は有効であるが、極めて特異的には有効ではない場合もある。
【0059】
本発明においては、日機装株式会社製、nano trac(ナノトラック)UPA−ST150を用い、常法に従い濃度を調整した分散液を用いて、常法に従い体積分布メジアン径(D50)、体積平均粒径、粒度分布等を測定した。
【0060】
金属微粒子の形状は特に限定されず、球状、棒状、板状、不定形等何れでもよい。また、金属微粒子の結晶性や結晶構造も特に限定はないが、非結晶であることが、基板に塗布した後、膜を形成させるときの加熱温度を低くできる点等で好ましい。
【0061】
本発明の製造方法によって製造された金属微粒子分散体中に含まれる金属類の質量割合は特に限定はないが、金属微粒子分散体100質量部に対して、1〜90質量部が好ましく、10〜80質量部がより好ましく、20〜70質量部が特に好ましい。なお、金属微粒子は、金属類と「脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類」とから実質的になるが、金属微粒子分散体中の金属微粒子の濃度(金属類とその表面等に存在する「脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類」との合計質量の濃度)は特に限定はないが、金属微粒子分散体100質量部に対して、1〜90質量部が好ましく、10〜80質量部がより好ましく、20〜70質量部が特に好ましい。
【0062】
本発明を使用すれば、高濃度の金属微粒子分散体が得られる。ただ、金属類における金属がゲルマニウムの場合には、銀や銅と比較して低蒸気圧液体に取り込まれ難いので、高濃度の金属微粒子分散体は得られ難いものの、良好の体積分布メジアン径(D50)と分散性を有する金属微粒子分散体が製造できる。
【0063】
本発明の金属微粒子分散体の製造方法について、図1に示す製造装置を例に更に詳しく説明する。ただし、図1は、本発明に用いられる具体的装置の一例であり、本発明は図1に示す装置を用いたものには限定されない。また、下記する微粒子分散体の製造方法を、本発明では「真空蒸着法」という。
【0064】
図1において、チャンバー(1)は、固定軸(2)の回りに回転するドラム状であり、固定軸(2)を通してチャンバー(1)の内部が高真空に排気される構造になっている。チャンバー(1)には、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類が溶解された低蒸気圧液体(3)が入れてあり、ドラム状のチャンバー(1)の回転によって、チャンバー(1)の内壁に、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類が溶解された低蒸気圧液体(3)の膜(4)が形成される。チャンバー(1)の内部には、金属類(5)を入れる加熱容器(6)が固定されている。金属類(5)は、抵抗線に電流を流す等して所定温度まで加熱され、気体となってチャンバー(1)の中に放出される。
【0065】
チャンバー(1)の外壁は、水流(8)で全体が冷却されている。加熱された「金属類(5)」から真空中に放出された原子(9)は、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類が溶解された低蒸気圧液体(3)の膜(4)の表面から取り込まれ、金属微粒子(10)が形成される。次いで、かかる金属微粒子(10)が分散された低蒸気圧液体(3)は、チャンバー(1)の回転に伴ってチャンバー(1)の底部にある低蒸気圧液体(3)の中に輸送され、同時に、新しい「低蒸気圧液体(3)の膜(4)」がチャンバー(1)の上部に供給される。
【0066】
この過程を継続することによって、チャンバー(1)の底部にある低蒸気圧液体(3)は、金属類(5)が高濃度に分散した分散体になっていく。
【0067】
金属類を気体にする方法は特に限定はされない。加熱温度も気体状態にできるために充分な温度であれば特に限定はないが、900〜2000℃が好ましく、950〜1800℃がより好ましく、980〜1700℃が更に好ましく、1000〜1600℃が最も好ましい。
【0068】
本発明においては、真空蒸着法によって、金属類の気体が、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類が溶解された低蒸気圧液体中に直接取り込まれることによって金属微粒子分散体が製造される。本発明は以下の作用・原理には限定されないが、以下のように考えられる。すなわち、金属類の気体は、気相で凝集せずに直接低蒸気圧液体中に取り込まれ、低蒸気圧液体中で凝集が起こり、ある程度の体積分布メジアン径(D50)を有するようになった時点で、その凝集粒子は、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類によって取り囲まれ、ナノ微粒子として安定化するものと考えられる。その際、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類は、凝集粒子をより素早く包み込み、互いの会合をより強く抑制し、ナノ微粒子として、より安定化させるものと考えられる。
【0069】
本発明の製造方法を使用して得られた金属微粒子分散体は、分散媒に上記低蒸気圧液体が用いられているが、分散媒に上記低蒸気圧液体が用いられていると、分散媒を乾燥又は留去し難い等、その後の用途にとって不適当な場合は、かかる「金属微粒子分散体」中の低蒸気圧液体を、他の分散媒に置換して、「金属類の微粒子分散液」を調製することが好ましい。本発明においては、上記したような、低蒸気圧液体に金属類の微粒子が分散された状態のものを「金属微粒子分散体」といい、該低蒸気圧液体を「他の分散媒」に置換した後のものを「金属微粒子分散液」という。
【0070】
上記低蒸気圧液体は、主に金属微粒子の生成や分散性の観点から好適なものが使用されるが、その後、その金属微粒子が用いられる用途に応じて、好適な「他の分散媒」に置換されることが好ましい。従って、最終的には用途に応じた種々の分散媒に分散可能であるような分散方法、特に分散補助剤が必要になる。本発明によれば、分散媒多様性があるので、従来は用いられなかった又は汎用的には用いられなかった分散媒中に分散された金属微粒子分散液を提供することができる。
【0071】
かかる「他の分散媒」は、金属微粒子分散液の種々の用途に適応したものから適宜選択することができる。従って、「他の分散媒」としては、IC、半導体、導電膜、フィルター等の製造用の溶媒又は分散媒を始め、一般に、インキ、塗料、触媒材料、医療用等に用いられる汎用の溶媒又は分散媒が挙げられる。
【0072】
「他の分散媒」の具体例としては特に限定はなく、金属微粒子分散液の用途に応じて選択できる。例えば、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルペンタン、ノルマルヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等の脂肪族炭化水素類;トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコール系分散媒類;2−ジメチルアミノエタノール、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノイソプロパノール、3−ジエチルアミノ−1−プロパノール、2−ジメチルアミノ−2−プロパノール、2−メチルアミノエタノール、4−ジメチルアミノ−1−ブタノール等のアミノ基含有アルコール類等を挙げることができる。これらは単独でも、2種以上混合して使用してもよい。
【0073】
低蒸気圧液体を、他の分散媒に置換する方法としては、公知の溶媒置換や分散媒置換の方法が用いられ得る。本発明で得られた金属微粒子は分散媒を置換しても、分散媒置換中も、その後の分散液保存中も安定にその分散状態を保つことができる。
【0074】
本発明において、特に好ましい分散媒置換方法は、金属微粒子分散体の分散媒である低蒸気圧液体と少なくともある割合では相溶する貧溶媒を、金属微粒子分散体に加えることによって、金属微粒子を沈降させ、上澄みの低蒸気圧液体を除く過程を有する分散媒置換方法である。すなわち、貧溶媒を、金属微粒子分散体に加えることによって、実質的に上澄みの「低蒸気圧液体と貧溶媒の混合物」だけを、デカンテーション等で除く過程を有する分散媒置換方法が好ましい。
【0075】
ここで、上記貧溶媒は、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類と、任意の割合では相溶しないものであることが好ましい。すなわち、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類を表面等に有する金属微粒子に対し、「貧分散媒」として作用するものが好ましい。また、一方で、金属微粒子分散体中の低蒸気圧液体と、ある割合では相溶するものであることが好ましい。更に、その両方の性質を併せ持ったものであることが特に好ましい。このような貧溶媒を用いると、デカンテーション等が可能になり、低蒸気圧液体から上記した「他の分散媒」に好適に分散媒置換ができ、分散媒置換前中後での分散維持性にも優れる。
【0076】
かかる貧溶媒と「脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類」の相溶性が大きすぎると、貧溶媒を金属微粒子分散体に加えても、そこに分散されている金属微粒子が沈降しない場合がある。
【0077】
貧溶媒は、分散媒置換の対象となる金属微粒子分散体中の低蒸気圧液体に対して、ある割合では相溶することが好ましい。如何なる割合でも相溶しないものであれば、貧溶媒を金属微粒子分散体に加えた際、低蒸気圧液体と貧溶媒は相分離するので、金属微粒子は低蒸気圧液体の方だけに依然として分散したままとなり、沈降しない場合がある。
【0078】
貧溶媒の種類は特に限定はないが、例えば、アルコール系、ケトン系、エーテル系、エステル系等の酸素原子を含む液体等が好ましい。このうち、アルコール系としては炭素数が3〜6個のアルコールが好ましく、炭素数が3〜5個のアルコールが特に好ましい。ケトン系としては炭素数が2〜8個のケトンが好ましく、炭素数が3〜6個のケトンが特に好ましい。エーテル系としては炭素数が2〜8個のエーテルが好ましく、炭素数が3〜6個のエーテルが特に好ましい。エステル系としては炭素数が3〜8個のエステルが好ましく、炭素数が4〜6個のエステルが特に好ましい。
【0079】
炭素数が少なすぎても、また多すぎても、上記要件を満たす貧溶媒が存在しなくなる場合がある。また、特に、少なすぎる場合は、低蒸気圧液体と相溶しなくなる場合があり、一方、多すぎる場合は、後述する沸点が高くなりすぎる場合がある。
【0080】
貧溶媒の沸点や蒸気圧は特に限定はないが、低蒸気圧液体より低沸点、高蒸気圧であることが好ましい。貧溶媒を加えた後、沈降した金属微粒子を容器中に残し、低蒸気圧液体と貧溶媒の混合液体をデカンテーションで取り除き、再度貧溶媒を加えてデカンテーションを繰り返すことが好ましいが、最後のデカンテーションを行った後に残存した貧溶媒を、要すれば加熱せずに減圧留去し易いからである。該貧溶媒の1気圧における沸点は、180℃以下であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、100℃以下であることが特に好ましい。
【0081】
このような貧溶媒は、限定されるわけではないが、具体的には、例えば、n−プロパノール、iso−プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール等のアルコール系溶媒;アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒;ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、フラン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のアルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート系溶媒;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン等のラクトン系溶媒;等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上の混合溶媒で用いられる。
【0082】
本発明における貧溶媒は、中でもエステル系が、上記要件を満たしてデカンテーションをし易い、デカンテーション後「他の分散媒」を加えた時に再分散し易い等の点で特に好ましい。
【0083】
また、貧溶媒を加える前に、金属微粒子分散体に「前処理剤」を加えることも好ましい。「前処理剤」は、金属類の微粒子の表面に吸着している物質と一部反応等して、その後の分散媒置換を容易にする。「前処理剤」としては、メタノール等が好ましい。
【0084】
真空蒸着法によって製造された金属微粒子分散体に対し、上記貧溶媒を加えて該金属微粒子を沈降させ、上澄みの「低蒸気圧液体と貧溶媒の混合物」だけをデカンテーション等で取り除き、要すればその操作を繰り返し、そこに上記した「他の分散媒」を加えて、最終的に金属微粒子分散体の低蒸気圧液体を「他の分散媒」に分散媒置換して、本発明の金属微粒子分散液が製造されることが好ましいが、その工程の何れかの工程で、分散補助剤を加えることが、分散安定性、分散媒多様性等の点から好ましい。
【0085】
かかる分散補助剤としては、1級アミン類又は2級アミン類が、分散安定性、分散媒多様性等の点から特に好ましい。すなわち、「他の分散媒」に置換する際に、1級アミン類又は2級アミン類を加えた後に「他の分散媒」を加えることが好ましい。金属微粒子分散液を製造する特に好ましい態様は、前記の金属微粒子分散体の製造方法を行った後、上記の貧溶媒を加えることによって、該金属微粒子を沈降させ、デカンテーション等で上記低蒸気圧液体を実質的に除いた後に、1級アミン類又は2級アミン類を加え、その後、上記「他の分散媒」を加える製造方法である。以下、「1級アミン類又は2級アミン類」を「特定分散補助剤」ということがある。
【0086】
分散補助剤を加えることによって、特に、特定分散補助剤を加えることによって、分散媒置換中の分散性を良好に保持し、金属微粒子分散液の分散性や分散安定性を良好にすることができ、分散媒としては汎用に用いられていないような「他の分散媒」にも分散が可能になる(分散媒多様性が上がる)。
【0087】
特定分散補助剤を加えたときの上記効果は、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類を用いて製造された金属微粒子分散体に対して特に顕著である。金属微粒子分散体中の金属微粒子も、貧溶媒を加えて沈降させた金属微粒子も、その表面は依然として「脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類」で覆われている。従って、「脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類」と「1級アミン類又は2級アミン類」との組み合わせによって、特に顕著に前記した効果(優れた分散安定性、分散媒多様性等)が得られる。
【0088】
分散補助剤は、分散媒置換中の何れかの工程で加えればよいが、「低蒸気圧液体と貧溶媒の混合物」をデカンテーション等で取り除き、「他の分散媒」を加えた後に加えることが好ましい。「低蒸気圧液体と貧溶媒の混合物」をデカンテーション等で取り除いた後、加温下及び/又は減圧下で、低蒸気圧液体及び/又は貧溶媒を更に取り除き、要すれば半乾きの状態から乾固までの状態にし、その後「他の分散媒」を加えた後、分散補助剤を加えることが好ましい。
【0089】
分散補助剤を加えた後は、良く攪拌し分散補助剤を金属微粒子の表面に行き渡らせた後に、「他の分散媒」を加えることが好ましい。
【0090】
特定分散補助剤である「1級アミン類又は2級アミン類」は特に限定はなく、アルキルアミン、アルケニルアミン、アニリン誘導体等が好ましい。中でも、アルキルアミン又はアルケニルアミンが、金属微粒子分散液の分散性や分散安定性を良好にできる点で好ましい。アルキル基やアルケニル基は直鎖構造のものでも側鎖を有するものでもよい。1級アミン類のアルキル基又はアルケニル基の炭素数は特に限定はないが、好ましくは5〜25個、より好ましくは6〜23個、特に好ましくは8〜20個である。炭素数が少なすぎても、多すぎても、分散を補助する上記効果が得られない場合がある。「特定分散補助剤」の中でも、1級アミン類が、分散安定性、分散媒多様性等の点でより好ましく、上記炭素数を有する1級アミン類が、同様の点で特に好ましい。
【0091】
2級アミン類の場合は、窒素に結合する1個の有機基が、上記1級アミン類で記載したアルキル基又はアルケニル基であることが好ましい。もう一方の有機基はメチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基等の低級の有機基であってもよい。
【0092】
分散補助剤として、「1級アミン類又は2級アミン類」(特定分散補助剤)を用いると、分散媒置換時及び金属微粒子分散液の分散性、分散安定性が良好になる作用・原理は明らかではなく、また本発明は、以下の作用・原理には限定されないが、以下のように考えられる。すなわち、後から加えた、特定分散補助剤が、「脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類」等と何らかの相互作用をして、分散補助剤を使用しないときには分散しなかったトルエン等に分散可能になったと考えられる。特に、脂肪酸類や脂肪酸エステル類を用いた場合には、微粒子表面で、それらが特定分散補助剤と反応してアミド酸を形成することで、微粒子表面の分散適性が変化したか、又は、アミド酸に変化した部分は微粒子表面から脱着して、代わりに特定分散補助剤であるアミン類が吸着することにより、それまでは分散しなかったトルエン等の「他の分散媒」に分散が可能となったと考えられる。
【0093】
本発明によると、金属微粒子分散体の分散媒(低蒸気圧液体)を、「他の分散媒」に置換することによって、体積分布メジアン径(D50)100nm以下で分散された金属微粒子分散液を極めて分散性良く安定に製造できる。そして、体積分布メジアン径(D50)50nm以下のものでも製造可能であり、更には、体積分布メジアン径(D50)10nm以下のものでも製造可能である。すなわち、分散媒を置換しても金属微粒子の分散性が悪化し難く、体積分布メジアン径(D50)が大きくなり難い。従って、本発明の製造方法を使用して得られる金属微粒子分散液中の金属微粒子の体積分布メジアン径(D50)は、通常1〜100nm、好ましくは2〜50nm、より好ましくは2.5〜30nm、更に好ましくは3〜16nmである。体積分布メジアン径(D50)は小さいほど、金属微粒子分散液の用途の1つである膜形成において、該膜を形成するときの加熱温度を低くでき、本発明の前記効果を発揮し易いので好ましい。
【実施例】
【0094】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【0095】
実施例1
低蒸気圧液体としてライオン拡散ポンプ油(A)(ライオン社製)280gを用い、それにオレイン酸を120g添加し攪拌した。ライオン拡散ポンプ油(A)は、炭素数12〜16個のアルキル基を有するアルキルナフタレンである。
【0096】
図1に示す装置を用いて金属微粒子分散体を製造した。加熱容器(6)内に、粒状ゲルマニウム(フルウチ化学社製:純度99.999%)10gを入れ、回転ドラム式のチャンバー(1)内に上記液体を入れた。真空ポンプで吸引することによって、チャンバー(1)内の圧力を、10−3Paに到達させた。次いで、チャンバー(1)を水流(7)で冷却させながら回転させ、加熱容器(6)の下部に設けたヒーターに電流を流し、ゲルマニウム(Ge)が溶融・蒸発するまで、その電流値を与えた。
【0097】
粒状ゲルマニウムは溶融・蒸発し、ゲルマニウムの気体は、分散媒面(オレイン酸が溶解された低蒸気圧液体(3)の膜(4)の表面)に接触し、オレイン酸に取り込まれることで、ゲルマニウム微粒子分散体が製造された。
【0098】
分散性の良好な金属微粒子分散体を製造することができた。日機装株式会社製、nano trac(ナノトラック)UPA−ST150を用いて測定した体積分布メジアン径(D50)は16nmであった。
【0099】
実施例2
実施例1で得られた金属微粒子分散体200gに、前処理剤としてメタノール800gを攪拌しながら滴下して加え、全量を1000gとした。これを遠心分離器にかけて上澄みを除去した(デカンテーションした)。次いで、貧溶媒である酢酸エチルを800g投入して、遠心分離器にかけて上澄みを除去した。以下、この酢酸エチルによる処理を合計3回行った。なお、「前処理剤」としてのメタノールと、低蒸気圧液体としてのライオン拡散ポンプ油(A)は相溶しないが、「貧溶媒」としての酢酸エチルと、低蒸気圧液体としてのライオン拡散ポンプ油(A)は任意に相溶した。
【0100】
その後、残存する酢酸エチルを減圧留去して乾固させた。以上の操作により、オレイン酸で表面を覆われたゲルマニウム微粒子が10g得られた。次いで、「他の分散媒」であるトルエンを20g添加してから、特定分散補助剤であるオレイルアミンを固形物質量の1/2倍量にあたる5g添加して充分に攪拌することにより、ゲルマニウム微粒子分散体を製造した。
【0101】
分散性と分散安定性の良好な金属微粒子分散液を製造することができた。同様に測定した体積分布メジアン径(D50)は7.6nmであった。得られたゲルマニウム微粒子分散液中のゲルマニウム微粒子の体積分布メジアン径(D50)も、上記ゲルマニウム微粒子分散体中のゲルマニウム微粒子の体積分布メジアン径(D50)から大きくなっておらず、良好に分散媒置換ができた。
【0102】
実施例3
実施例1において、オレイン酸をオレイルアミンに変更した以外は実施例1と同様にゲルマニウム微粒子分散体を製造した。分散性の良好な金属微粒子分散体を製造することができた。同様に測定した体積分布メジアン径(D50)は15.8nmであった。
【0103】
実施例4
実施例3で製造されたゲルマニウム微粒子分散体を、実施例2と同様に分散媒置換を行い、最終的に分散媒をトルエンにしたゲルマニウム微粒子分散液を製造した。
【0104】
分散性と分散安定性の良好な金属微粒子分散液を製造することができた。同様に測定した体積分布メジアン径(D50)は22.9nmであった。得られたゲルマニウム微粒子分散液中のゲルマニウム微粒子の体積分布メジアン径(D50)も、上記ゲルマニウム微粒子分散体中のゲルマニウム微粒子の体積分布メジアン径(D50)から大きくなっておらず、良好に分散媒置換ができた。
【0105】
実施例5
実施例1において、オレイン酸をショ糖オレイン酸エステル(三菱化学フーズ社製)に変更した以外は実施例1と同様にゲルマニウム微粒子分散体を製造した。分散性の良好な金属微粒子分散体を製造することができた。同様に測定した体積分布メジアン径(D50)は15.8nmであった。
【0106】
実施例6
実施例5で製造されたゲルマニウム微粒子分散体を、実施例2と同様に分散媒置換を行い、最終的に分散媒をトルエンにしたゲルマニウム微粒子分散液を製造した。
【0107】
分散性と分散安定性の良好な金属微粒子分散液を製造することができた。同様に測定した体積分布メジアン径(D50)は7.2nmであった。得られたゲルマニウム微粒子分散液中のゲルマニウム微粒子の体積分布メジアン径(D50)も、上記ゲルマニウム微粒子分散体中のゲルマニウム微粒子の体積分布メジアン径(D50)から大きくなっておらず、良好に分散媒置換ができた。
【0108】
比較例1
実施例1において、オレイン酸を用いない以外は、実施例1と同様の方法で操作をしたが、凝集物が生成し金属微粒子分散体は得られなかった。
【0109】
比較例2
実施例2において、オレイルアミンを用いない以外は実施例2と同様に操作をしたが、ゲルマニウム微粒子はトルエンに分散せず、凝集物が生成し、金属微粒子分散液は製造できなかった。
【0110】
実施例7
実施例1において、ゲルマニウムをシリコンに代えた以外は、実施例1と同様に操作を行ったところ、分散性の良好な金属微粒子分散体を製造することができた。
【0111】
実施例8
実施例5で製造されたシリコン微粒子分散体を、実施例2と同様に分散媒置換を行い、最終的に分散媒をトルエンにしたシリコン微粒子分散液を製造した。
【0112】
分散性と分散安定性の良好な金属微粒子分散液を製造することができた。同様に測定した体積分布メジアン径(D50)は26.8nmであった。得られたシリコン微粒子分散液中のシリコン微粒子の体積分布メジアン径(D50)も、上記シリコン微粒子分散体中のシリコン微粒子の体積分布メジアン径(D50)から大きくなっておらず、良好に分散媒置換ができた。
【0113】
参考例1
実施例1において、ゲルマニウムに代えてニッケルを用いた以外は、実施例1と同様の操作を行った。目視でも微粒子が沈降、堆積していることが観察でき、ニッケル微粒子分散体は得られなかった。透過型電子顕微鏡観察で、粒子が互いに凝集していることを確認した。すなわち、ニッケルでは脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類は効果を発揮し難く、特にゲルマニウムやシリコン等で顕著に効果を発揮することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の金属微粒子分散体の製造方法を使用して得られた分散体や分散液は、IC基板、半導体素子等の配線、金属と非金属との接合、液のコロイド色を利用した色フィルター等に広く利用されるものである。
【符号の説明】
【0115】
1 チャンバー
2 固定軸
3 脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類が溶解された低蒸気圧液体
4 脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類が溶解された低蒸気圧液体の膜
5 金属類
6 加熱容器
7 水流
8 回転方向
9 金属類の気体
10 金属微粒子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属類の気体を低蒸気圧液体に接触させることによって、該金属類を該低蒸気圧液体に分散させる金属微粒子分散体の製造方法であって、該低蒸気圧液体中に、脂肪酸類、脂肪族アミン類又は脂肪酸エステル類を溶解させておくことを特徴とする金属微粒子分散体の製造方法。
【請求項2】
上記脂肪酸エステル類が糖エステル類である請求項1記載の金属微粒子分散体の製造方法。
【請求項3】
金属類の気体の該低蒸気圧液体への接触を10−4Pa〜10−1Paの範囲の圧力下で行なう請求項1又は請求項2記載の金属微粒子分散体の製造方法。
【請求項4】
体積分布メジアン径(D50)が100nm以下となるように金属微粒子を分散させる請求項1ないし請求項3の何れかの請求項記載の金属微粒子分散体の製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4の何れかの請求項記載の金属微粒子分散体の製造方法を行った後、製造された該金属微粒子分散体中の上記低蒸気圧液体を他の分散媒に置換することを特徴とする金属微粒子分散液の製造方法。
【請求項6】
他の分散媒に置換する際に、1級アミン類又は2級アミン類を加えた後に他の分散媒を加える請求項5記載の金属微粒子分散液の製造方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項4の何れかの請求項記載の金属微粒子分散体の製造方法を行った後、貧溶媒を加えることによって該金属微粒子を沈降させ、上記低蒸気圧液体を実質的に除いた後に1級アミン類又は2級アミン類を加え、その後、上記他の分散媒を加える請求項5又は請求項6記載の金属微粒子分散液の製造方法。
【請求項8】
体積分布メジアン径(D50)が100nm以下に金属微粒子が分散されるように他の分散媒に置換する請求項5ないし請求項7の何れかの請求項記載の金属微粒子分散液の製造方法。
【請求項9】
請求項1ないし請求項4の何れかの請求項記載の金属微粒子分散体の製造方法を使用して製造されたものであることを特徴とする金属微粒子分散体。
【請求項10】
請求項5ないし請求項8の何れかの請求項記載の金属微粒子分散液の製造方法を使用して製造されたものであることを特徴とする金属微粒子分散液。

【図1】
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【公開番号】特開2011−117025(P2011−117025A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274014(P2009−274014)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】