説明

金属溶湯用給湯装置

【課題】 簡易な構成でもって確実な定量宛給湯を可能とするとともに、各種コストの低減を図ることが可能な新規な構成の金属溶湯用給湯装置を提供すること。
【解決手段】 溶湯mを保持する保持炉3と、該保持炉3に保持された溶湯のうち所定定量の溶湯を鋳造機に供給するための加圧室2を備え、上記加圧室2は、溶湯mを蓄える定湯面室5と、当該定湯面室5内に蓄えられた溶湯mを鋳造機に所定定量宛出湯するために加圧される加圧空間6とが一体連設され、加圧空間6内に、当該加圧空間6内に装入することにより当該加圧空間5内部の体積を可変して鋳造機への出湯量を増減するための出湯量調整体7を取出し交換可能に設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属溶湯を鋳造機に供給するための給湯装置に関し、主に低速高圧鋳造機に適用される給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願発明に関連する先行技術文献情報としてたとえば、特許文献1に開示されたものがある。
この特許文献1に開示されている給湯装置は、定湯面炉と、その内側に設置される給湯ポットと、この給湯ポットに連通接続された給湯パイプと、エアーまたは不活性ガスの供給管と、溶湯取入口を開閉する開閉弁で構成され、前記給湯ポットの内部を加圧することによって、給湯ポット内の溶湯を前記給湯パイプから鋳造機へ鋳造サイクル毎に所定定量宛給湯するものである。
【特許文献1】特開2003−136216号公報(〔0007〕、〔図1〕参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、鋳造サイクル毎に溶湯を鋳造機に所定定量宛給湯する出湯量は鋳造される製品ごとに異なり、その定量宛出湯量(給湯量)の増減調節を行なう場合、前記給湯装置では基本的に、前記給湯ポットの内部を加圧する加圧力の調節により行なわれるが、当該給湯ポットにおける溶湯保持容量が、鋳造される製品の鋳込み量に対応できる範囲から逸脱する場合には給湯ポット自体を交換する必要がある。すなわち、給湯ポットとして、例えば1kg〜4.5kgの溶湯を出湯しえるものと、4kg〜10kgの溶湯を出湯しえるものを用意して、鋳造される製品に応じて好適な給湯ポットを選択して使用する必要がある。
しかしながら、前記した従来の給湯装置は、前記したようにその構成部材が多く、しかも前記給湯ポットの内部の気密性を保つために極めて高価で且つ脆弱なセラミック材を用いて構成されているので、給湯ポットの製作及びメンテナンス等に相当なコストを必要とする。
加えて、目的の鋳込み重量に対応するべく、給湯ポットの交換取付け作業を行なうと、同時に給湯パイプに対して気密性を損なわないように煩雑な取付け作業を必要とする。
【0004】
本発明は、この様な従来の不具合に鑑みてなされたものであり、簡易な構成でもって確実な定量宛給湯を可能とするとともに、煩雑な作業を必要とせず各種コストの低減を図ることが可能な新規な構成の金属溶湯用給湯装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記目的を達成するために下記の技術的手段を採用した。
その技術的手段は、溶湯を保持する保持炉と、該保持炉に保持された溶湯のうち所定定量の溶湯を鋳造機に供給するための加圧室を備え、上記加圧室は、溶湯を蓄える定湯面室と、当該定湯面室内に蓄えられた溶湯を鋳造機に所定定量宛出湯するために加圧される加圧空間とが一体連設され、前記加圧空間内に、当該加圧空間内に装入することにより当該加圧空間内部の体積を可変して鋳造機への出湯量を増減するための出湯量調整体を取出し交換可能に設けてなることを特徴とする(請求項1)。
【0006】
この際、前記出湯量調整体の具体的構成として、前記加圧室を密閉する蓋部と兼用に形成されていことが好ましい(請求項2)。
更に、前記出湯量調整体を、前記加圧室を密閉する蓋部と兼用に形成する場合に、上記蓋部で前記加圧室を密閉すると同時に前記加圧空間内に装入されて当該加圧空間内部の体積を可変する嵌合調整部を有することが望ましい(請求項3)。
【0007】
また、前記嵌合調整部としては、前記加圧空間の体積を増減できる構成のすべてを含み、好ましくは、その内部が空洞である筒状に形成されると共に前記加圧空間の内部に適合して嵌合装入され、上記空洞部分が前記定湯面室内に蓄えられた溶湯を鋳造機に所定定量宛出湯するために加圧される加圧空間部であるように構成されている(請求項4)か、或いは前記加圧空間に遊嵌合して装着され、当該嵌合調整部外周と前記加圧空間内面との空間部分が前記定湯面室内に蓄えられた溶湯を鋳造機に所定定量宛出湯するために加圧される加圧空間部であるように構成されていること(請求項5)、が好ましい。
【0008】
更に、前記嵌合調整部の体積によって前記加圧空間の体積を増減するように構成されていることが好ましい(請求項6)。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る金属溶湯用給湯装置によれば、下記の通りの優れた効果を期待することができる。
請求項1に記載の金属溶湯用給湯装置によれば、簡易な構成でもって鋳造機に対して確実な定量宛給湯を可能とするとともに、従来の給湯装置のように高価で且つ脆弱な給湯ポットを必要としないので各種コストを低減することができる。
しかも、従来の給湯装置のように給湯ポットに給湯パイプを気密性を持たせて連結するような煩雑な作業を必要としないので、コストの低減化を図れるだけでなく、加圧室内の気密性を高く保持することができるので、鋳造機に溶湯を所定定量宛給湯する信頼性をより向上させることが出来る。
【0010】
請求項2乃至6に記載の金属溶湯用給湯装置によれば、出湯量調整体を簡易な構成で提供することができると共に、簡易な構成で定量宛給湯を任意に調整することができる。
すなわち、加圧室内に蓄えられた溶湯が鋳造機に定量宛供給されるように形成するに際して、加圧室の加圧空間の体積を増減させることにより、加圧室内における加圧応答性と出湯量のばらつきを抑制して精確な定量宛給湯を実現することが可能となる。具体的には、鋳造機に少量の溶湯(例えば、1Kg)を出湯したい場合に、加圧室の加圧空間に流入される加圧用気体の流入量に対して定湯面の変位(量)が少ないため、応答性が悪く、給湯量がばらつき易い。そこで、加圧室の加圧空間の体積を減らすことにより、当該加圧空間に流入される加圧用気体の流入量を減らすことができ、その結果、定湯面の変位を相対的に大きくして精確な定量宛給湯を実現することが可能となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る金属溶湯用給湯装置(以下、「給湯装置」と略称する)を実施するための最良の形態における第1の形態を図面に基づいて説明する。
なお、全図面を通して同様の構成部材には同じ符号を付してある。
【0012】
図中、符号1は給湯装置を示し、符号2は保持炉3に保持された溶湯のうち所定定量の溶湯を鋳造機(図示せず)に供給するための加圧室を示し、加圧室2と保持炉3とは、開閉弁41によって開閉される連通口4を通して連通されている。
従って、加圧室2には、保持炉3から供給された溶湯mが連通口4を通して一定量保持される仕組みになっており、連通口4を開閉弁41で閉塞した状態で当該加圧室2の内部を加圧することにより、加圧室2内に蓄えられた溶湯mが吐出管Aを通し給湯管Bを介して鋳造機に定量宛供給されるように形成されている。
ちなみに保持炉3は、加圧室2へ供給する溶湯mを大量に貯えておく周知の形態のものである。
【0013】
加圧室2は、隣接された保持炉3と連通口4を通して所定量の溶湯mを蓄えるための定湯面室5と、当該定湯面室5の上方に一体連設され、定湯面室5内に蓄えられた溶湯mを鋳造機に所定定量宛出湯するために加圧される加圧空間6と、その加圧空間6内に装入することにより当該加圧空間6内部の体積を可変して鋳造機への出湯量を増減するための出湯量調整体7とから構成されている。
【0014】
前記定湯面室5は、保持炉3から供給された溶湯mを一定量保持する部分であり、前記加圧空間6は、定湯面室5に保持された溶湯mを鋳造機に所定定量宛供給するための圧力を作用させる部分であって、定湯面室5及び加圧空間6の内面は、機密性の高い周知の炉材を用いて構成されている。
【0015】
また、前記出湯量調整体7は、加圧空間6内部の体積を可変して鋳造機への出湯量を増減するためのものであり、加圧室2を密閉する蓋部71と別体に形成しても良いが、気密性を有する耐火性断熱材を用いて蓋部71と兼用に形成することが好ましい。ちなみに、図1及び図2に示した実施例のものは、出湯量調整体7が加圧室2における加圧空間6の開放部61を密閉する蓋部71と兼用に形成されている。
ここで、出湯量調整体7を形成する耐火性断熱材としては、現在鋳造用の炉に使用される素材であればすべて使用可能である。
【0016】
出湯量調整体7を詳述すると、図1に示したものは、加圧空間6の体積を最大とするものであり、加圧室2における加圧空間6の開放部61を密閉する蓋部71のみの形態をなし、この場合、定湯面51から吐出管Aの出湯口A’における内側上部までの距離が最大変位量となるので、この変位量(距離)と加圧空間6の面積との積で現される体積(図中斜線で示す部分S)が鋳造機に定量宛出湯される最大給湯量となる。
【0017】
また、図2に示した出湯量調整体7は、加圧空間6の体積を図1に示す加圧空間6の体積よりも小さい体積とするものであり、加圧空間6の開放部61を密閉する蓋部71と、上記蓋部71で加圧空間6の開放部61を密閉すると同時に加圧空間6内に装入されて当該加圧空間6内部の体積を可変する嵌合調整部72とを同一体に成形した形態をなしている。
【0018】
前記嵌合調整部72は、その内部が空洞である筒状に形成されると共に加圧空間6の内部に適合して嵌合装入され、上記空洞部分が定湯面室2内に蓄えられた溶湯mを鋳造機に所定定量宛出湯するために加圧される加圧空間部となる。すなわち、内部が空洞に形成された嵌合調整部72の内径における定湯面51から吐出管Aの出湯口A’における内側上部までの距離が最大変位量となるので、この変位量(距離)と加圧空間6の面積との積で現される体積(図中、斜線で示す部分S)が、鋳造機に定量宛出湯される最大給湯量となる。
【0019】
この際、嵌合調整部72を有する出湯量調整体7は、体積が大小異なる嵌合調整部72を備えたものを複数種類用意し、目的の出湯容量に対応するものに適宜交換することによって、鋳造機に給湯する出湯量を任意に変更するようにする。
すなわち、鋳造機に給湯する出湯量が少なくて済む場合には、加圧空間6の体積を小さくするべく、例示した嵌合調整部72よりも内径を小さくおよび/または深さを深くすることでその体積を小さくした嵌合調整部を備えた出湯量調整体を用い、逆に、鋳造機に給湯する出湯量が多い場合には、加圧空間6の体積を大きくするべく、例示した嵌合調整部よりも内径を大きくおよび/または深さを浅くすることでその体積を大きくした嵌合調整部を備えた出湯量調整体を用いることによって、鋳造機に給湯する出湯量を任意に変更することができる。
【0020】
前記蓋部71のみで構成される出湯量調整体7は、前記開放部61の周縁に設けられた蓋部嵌合凹部62に前記蓋部71を嵌合し、その上方から押さえ板9を固定することによって圧力室2に取り付けられる。
また、前記蓋部71と前記嵌合調整部72とから構成される出湯量調整体7は、圧力空間6内に嵌合調整部72を嵌合するとともに、蓋部71を前記蓋部嵌合凹部62に嵌合し、その上方から押さえ板9を固定することによって圧力室2に取り付けられる。
【0021】
前記押さえ板9は、出湯量調整体7に作用する圧力によって当該出湯量調整体7が圧力室2から抜けたり、供給されるエアーや不活性ガスが漏れないようにするものであり、ボルト締め(図示せず)等の周知の方法で固定される。
なお図中の符号8は、前記圧力空間6にエアーや不活性ガスを供給して定湯面室2内に蓄えられた溶湯mの定湯面51に圧力をかけるためのガス供給管であり、符号91はエアーや不活性ガスの漏れを防止するためのパッキングである。
【0022】
ここで、出湯量調整体7は、図示した実施例の他に、前記蓋部71と嵌合調整部72とを別体構造にしたものでもよい。
その際、前記加圧空間6の体積を最大にする場合には、蓋部のみを使用し、加圧空間6の体積を変更する場合には、前記蓋部と、加圧空間を目的の体積とする内径および/または深さの嵌合調整部を併用する。
この様な形態の出湯量調整体によれば、蓋体のみの使用、蓋体と嵌合調整部の併用、さらには、目的の体積とする嵌合調整部への交換によって、出湯容量を任意に変更することが可能となる。
【0023】
次に、図3及び図4(a)〜(c)に基づいて本発明に係る給湯装置1の第2の形態を説明する。
なお、図1及び図2に示した第1の形態と重複する部位については同符号を付すことによりその説明を省略する。
【0024】
第2の形態の給湯装置1は、図3に詳しく示す如く、出湯量調整体7における嵌合調整部72が加圧空間6の内部に遊嵌合するように装着され、当該嵌合調整部72の外周と加圧空間6の内面との空間部分が定湯面室2内に蓄えられた溶湯mを鋳造機に所定定量宛出湯するために加圧される加圧空間部を形成するように構成したものである。
この場合、鋳造機に給湯する出湯量を変更するべく嵌合調整部72の体積を調整するには、当該嵌合調整部72の突出長さや径または幅、さらには形状等を変更することによって行なわれる。
【0025】
具体的に、第2の形態における嵌合調整部72の形状としては、例えば、図4(a)に示すような断面略円形状、または図4(b)に示すような断面略半円形状、或いは図4(c)に示すような断面略小判形状等の形状を例示することができる。
係る出湯量調整体7によっても嵌合調整部72の突出長さや径または幅、さらには形状等を変更することによって、鋳造機に給湯する出湯量を変更することができる。
更に、この様な嵌合調整部72とした場合でも、前記蓋部と別体構造とすることは可能である。
【0026】
なお、本発明は、例示した実施の形態に限定するものでは無く、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の形態に係る実施の一例を示し、加圧空間の体積を最大とした状態の断面図。
【図2】同加圧空間の体積を減少させた状態を示す断面図。
【図3】本発明の第2の形態に係る実施の一例を示す断面図。
【図4】本発明の第2の形態に係る嵌合調整部の形態を説明する断面図。
【符号の説明】
【0028】
1:給湯装置 2:加圧室 3:保持炉
m:溶湯 A:吐出管 B:給湯管
5:定湯面室 6:加圧空間 7:出湯量調整体
71:蓋部 72:嵌合調整部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯を保持する保持炉と、該保持炉に保持された溶湯のうち所定定量の溶湯を鋳造機に供給するための加圧室を備え、上記加圧室は、溶湯を蓄える定湯面室と、当該定湯面室内に蓄えられた溶湯を鋳造機に所定定量宛出湯するために加圧される加圧空間とが一体連設され、前記加圧空間内に、当該加圧空間内に装入することにより当該加圧空間内部の体積を可変して鋳造機への出湯量を増減するための出湯量調整体を取出し交換可能に設けてなることを特徴とする金属溶湯用給湯装置。
【請求項2】
前記出湯量調整体が、前記加圧室を密閉するための蓋部と兼用に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属溶湯用給湯装置。
【請求項3】
前記出湯量調整体が、前記加圧室を密閉するための蓋部と兼用に形成され、上記蓋部で前記加圧室を密閉すると同時に前記加圧空間内に装入されて当該加圧空間内部の体積を可変する嵌合調整部を有することを特徴とする請求項1に記載の金属溶湯用給湯装置。
【請求項4】
前記嵌合調整部が、その内部が空洞である筒状に形成されると共に前記加圧空間の内部に適合して嵌合装入され、上記空洞部分が前記定湯面室内に蓄えられた溶湯を鋳造機に所定定量宛出湯するために加圧される加圧空間部であることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の金属溶湯用給湯装置。
【請求項5】
前記嵌合調整部が、前記加圧空間に遊嵌合して装着され、当該嵌合調整部外周と前記加圧空間内面との空間部分が前記定湯面室内に蓄えられた溶湯を鋳造機に所定定量宛出湯するために加圧される加圧空間部であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の金属溶湯用給湯装置。
【請求項6】
前記嵌合調整部の体積によって前記加圧空間の体積を増減するように構成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の金属溶湯用給湯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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