説明

金属粉加圧装置

【課題】ヒューム等の金属粉をペレット状に加圧成形する金属粉加圧装置において、加圧室22内の空気が金属粉と一緒に加圧されないようにする。
【解決手段】内側に加圧室22を形成するスリーブ21と、スリーブ21の一端から加圧室22に挿入されるプランジャ30と、プランジャ30を駆動する加圧用アクチュエータ3と、シャッタガイド41に案内されて開閉し、スリーブ21の他端開口を閉鎖及び開放するシャッタ40と、シャッタ40駆動する開閉用アクチュエータと、を含んで構成される金属粉加圧装置であり、スリーブ21が、加圧室22に金属粉を収容するために設けられた側部の貫通孔23と、前記他端から貫通孔23まで内面に延設された溝25と、を有する。加圧時、加圧室内空気は溝25を通って貫通孔23へ抜け出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
金属加工時に発生する金属粉を押し固める装置に関する技術が以下に開示される。
【背景技術】
【0002】
プラズマアークやレーザによる金属の熱切断加工時には、ヒュームと呼ばれる酸化鉄を主成分とした金属粉が発生する。この金属粉は、粒径がμm単位の粉塵であってそのまま廃棄するのは難しいので、特許文献1に開示されるような金属粉加圧装置により押し固め、ペレット状にして廃棄するようにしている。
【0003】
特許文献1に開示の金属粉加圧装置は、ホッパ等に集められた金属粉を加圧室内に収容し、油圧シリンダ等の加圧用アクチュエータにより駆動されるプランジャで加圧することで、加圧室内の金属粉を押し固める装置である。加圧室は、加圧ブロックに固定された円筒状スリーブの内側に形成され、該スリーブの一端から加圧室内にプランジャが挿入されて摺動し、スリーブの他端側へ金属粉を加圧する。当該加圧室は、スリーブの他端を通し開口しており、当該開口を開閉するシャッタが設けられている。シャッタは、開閉用アクチュエータにより駆動され、加圧ブロックに設けられたシャッタガイドに案内されて開閉動作し、加圧時に閉じてスリーブ開口を閉鎖し、金属粉加圧を可能とする一方、加圧後には開いて(特許文献1中では排出孔が成形孔と連通して)、スリーブ開口を開放し、加圧により形成された金属粉ペレットの排出を可能とする。
【0004】
なお、特許文献1において、加圧室は成形孔、プランジャは圧縮スライダ、加圧ブロックはスライド筒体、スリーブはシリンダスリーブ、シャッタはスライド体と呼ばれている。また、特許文献1において加圧用アクチュエータは圧縮シリンダであり、開閉用アクチュエータは切換シリンダである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−200753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のようなヒュームを対象とした金属粉加圧装置では、金属粉の加圧時、プランジャによって加圧室内の空気も一緒に加圧される。すなわち、μmサイズの金属粉が加圧時にできるだけ漏れ出さないように、プランジャ外径と加圧室内径の公差はμm単位で設定されると共にシャッタとスリーブ端面も密着するように設計されるので、加圧室内の空気は抜け難く、金属粉と一緒に加圧される。空気と一緒に加圧されると、ペレット状に加圧成形された金属粉が型崩れを起こし易いので、解決が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題に対して提案する金属粉加圧装置は、加圧ブロックに固定され、内側に加圧室を形成するスリーブと、該スリーブの一端から前記加圧室に挿入されるプランジャと、該プランジャを駆動する加圧用アクチュエータと、前記スリーブの他端が位置する前記加圧ブロックの側面に設けられたシャッタガイドと、該シャッタガイドに案内されて開閉し、前記スリーブ他端の開口を閉鎖及び開放するシャッタと、該シャッタを駆動する開閉用アクチュエータと、を含んで構成される金属粉加圧装置であり、
前記スリーブが、前記加圧室に金属粉を収容するために設けられた側部の貫通孔と、前記他端から前記貫通孔まで内面に延設された溝と、を有する、金属粉加圧装置である。
【発明の効果】
【0008】
上記提案に係る金属粉加圧装置によれば、プランジャにより加圧される加圧室内空気は、スリーブ内面に設けた溝を通って貫通孔から抜け出ることができる。したがって、加圧室から空気を追い出しつつ金属粉を加圧することができるので、加圧成形した金属粉ペレットが型崩れし難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】金属粉加圧装置の実施形態を示した平面図。
【図2】図1中に示すY方向から見た一部断面を含む側面図。
【図3】図1中に示すX方向から見た側面図。
【図4】スリーブの実施形態を示した図。
【図5】(A)開いたときのシャッタの状態を示す図3相当の図。(B)閉じたときのシャッタの状態を示す図3相当の図。
【図6A】金属粉加圧前の状態を示す要部断面図。
【図6B】金属粉加圧時の状態を示す要部断面図。
【図6C】金属粉ペレットを加圧室から押し出したときの状態を示す要部断面図。
【図6D】金属粉ペレットを装置外へ排出したときの状態を示す要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1〜図3に、金属粉加圧装置の実施形態を平面図と側面図で示す。図1が上方から見た平面図、図2が図1中X方向から見た側面図、図3が図1中Y方向から見た側面図である。図2中、加圧ブロック及びスリーブは断面で示している。
【0011】
金属粉加圧装置は、金属板のベース1上に、加圧ブロック2と、一例として油圧シリンダを使用した加圧用アクチュエータ3及び開閉用アクチュエータ4とを、それぞれ位置合わせしてボルト止めして構成されている。加圧用及び開閉用アクチュエータ3,4としては、空気圧や水圧シリンダ、モータを使用してもよい。
【0012】
加圧ブロック2は、金属製直方体で、金属粉を貯留するホッパ等から金属粉を収容する受入孔20が形成される。この加圧ブロック2に、スリーブ21が、X方向を軸方向として嵌合している。スリーブ21は、例えばダイス鋼を材料とした円筒部品で、その内側に加圧室22が形成される。スリーブ21の側部には、加圧ブロック2の受入孔20に連通する貫通孔23が形成され、これら受入孔20及び貫通孔23を通して加圧室22内に金属粉が収容される。
【0013】
このスリーブ21の一端から加圧室22内に、プランジャ30が挿入される。プランジャ30は、接続具31により加圧用アクチュエータ3のロッド(ピストンロッド)32に接続され、加圧用アクチュエータ3の駆動により、加圧室22内でX方向に往復動作する。プランジャ30には、クロムモリブデン鋼を材料として表面(少なくとも外周面)にフッ素樹脂コーティングしたものを使用することができる。フッ素樹脂コーティングすることで、スリーブ21内での滑りが良くなり、プランジャ30の外径とスリーブ21の内径との公差を0.03〜0.06mmにまできつく設定することができるようになる。両者の公差が少なければ、加圧室22からプランジャ30の側への金属粉漏れを抑制することができる。
【0014】
プランジャ30が挿入される一端とは反対側のスリーブ21の他端において、加圧室22は開口している。そして、この開口を閉鎖及び開放するシャッタ40が、シャッタガイド41に案内されるようにして設けられる。シャッタガイド41は、スリーブ21の他端が位置する加圧ブロック2の側面における上側と下側に、それぞれボルト止めされた断面鉤形のガイドレールである。この上下のシャッタガイド41の間に保持されて、シャッタ40がY方向において往復動作する。シャッタ40は、基端部で開閉用アクチュエータ4のロッド(ピストンロッド)42に接続され、駆動される。すなわち、ロッド42の先端部位に段差部43が周設されると共に、この段差部43を含んだロッド先端形状に相応する係合孔がシャッタ40の基端部に形成され、両者の係合によってシャッタ40がロッド42に接続される。
【0015】
スリーブ21の他端外縁にはフランジ24が周設されており、スリーブ21は、フランジ24を加圧ブロック2の側面に当接させた状態で嵌合している。周設されたフランジ24には上下に切欠平坦部があり、当該平坦部がシャッタガイド41の案内面に当接するので、スリーブ21の回転が防止され、これにより、受入孔21に対応するように貫通孔23の位置も決められる。なお、フランジ24については、部分的に形成したものでもよいし、あるいは、一端側同様にフランジを形成しない場合もあり得る。しかし、以下に説明するシャッタ40によるスリーブ押さえ機能を確実に発揮させるためには、フランジ24を全周に周設するのが好ましい。
【0016】
このフランジ24を設けたスリーブ21の他端から貫通孔23まで、図4に詳細を示すように、スリーブ軸方向に直線状の溝25が、スリーブ21の内面に延設される。図4の(A)は上方から見た平面図、(B)はX方向から見た側面図、(C)は、(B)中の断面線A−Aで見た断面図である。図示の場合、溝25は1本であるが、2本以上設けることも可能である。溝25は断面三角形状で、切削加工により形成することができる。この溝25が、開口のある他端から貫通孔23まで延設されていることにより、後述のように、加圧時の空気の逃げ道が確保される。
【0017】
シャッタガイド41に沿って開閉するシャッタ40は、スリーブ21のフランジ24上を摺動する。本実施形態のシャッタ40は、図5の(A),(B)に示すように、先端部に凹部44が形成されている。なお、図5では、シャッタ40の全体が見えるように、シャッタガイド41を断面にしてある。
【0018】
図5(A)に示すように、凹部44は、シャッタ40が開いたときに、スリーブ21他端の開口(加圧室22)を開放する。一方このとき同時に、凹部44の両脇に形成される凸部45が、スリーブ21の他端面に、すなわち本実施形態の場合はフランジ24が形成されているので当該フランジ24に、当接する。この凹部44を形成したシャッタ40の先端部形状により、フランジ24のほぼ半分程度が、シャッタ40により押さえられることになる。つまり、シャッタ40を開けると共にプランジャ30を摺動させ、加圧室22から金属粉ペレットを排出するときに、シャッタ40の凹部44が金属粉ペレットの排出を許容すると共に、その凹部44の両脇にある凸部45が、スリーブ21の抜け出しを防止するスリーブ押さえとして機能し、スリーブ21の位置ずれ発生が抑止される。
【0019】
また、シャッタ40の先端部に凹部44及び凸部45が形成されることにより、シャッタ40の開閉ストロークの短縮と加圧時におけるシャッタ40の耐圧性の向上との両立が可能になる。図5(B)に示すように、凹部44を形成したことにより、シャッタ40の開から閉へのストロークは、凹部44の底面がスリーブ21の開口を超えるだけのストロークで良い。すなわち、シャッタ40のストロークは、スリーブ21の開口直径と同程度とすることができる。シャッタ40のストロークが短ければ、加圧後にシャッタ40を開くとき、加圧室22内でシャッタ40に押し付けられている金属粉ペレットとシャッタ40とがこすれる距離を短くすることができ、金属粉ペレットの型崩れを抑制することができる。
【0020】
一方で、このように開から閉へのシャッタストロークが短くとも、シャッタ40が閉じたとき、凹部44両脇にある凸部45がシャッタガイド41の端近くまで移動するので、シャッタ閉時におけるシャッタガイド41とシャッタ40との接触域を広く(長く)とることができる。当該接触域が広ければそれだけ圧力が分散されるので、プランジャ30の加圧に対するシャッタ40の耐圧性が、経時的な劣化も含め向上する。
【0021】
図6A〜図6Dに、本実施形態の金属粉加圧装置における金属粉ペレット成形工程につき順を追って示している。
【0022】
まず、図6Aに示すように、プランジャ30が後退位置にあり且つシャッタ40が閉じた状態で、金属粉を集めたホッパ等から受入孔20及び貫通孔23を通して加圧室22内に金属粉が収容される。次いで、図6Bに示すように、加圧用アクチュエータ3によりプランジャ30が前進し、加圧室22内の金属粉をシャッタ40に押し付けるように加圧する。このときのシャッタ40は、上述したように、凸部45がシャッタガイド41の端近くまで前進して閉じた状態にあり、シャッタガイド41とシャッタ40との接触域が広い。
【0023】
プランジャ30による加圧に伴い、加圧室22内の空気は、溝25を通って貫通孔23から抜け出すことができる。すなわち、プランジャ30の前進によって加圧室22が減容すると、その減容分の空気は、溝25から貫通孔23へ追い出される。加圧室22から空気を追い出しつつ金属粉を加圧することができるので、加圧成形した金属粉ペレットは型崩れし難くなる。また、溝25は、貫通孔23へ臨ませて終端してあるので、空気と一緒に金属粉の一部が溝25を通るとしても、当該金属粉は、ホッパ等から受入孔20につながった受入経路内へ逆流するだけで、外へは漏れない。溝25の反対側は、シャッタ40により閉鎖されているので、こちらから金属粉が漏れ出ることもない。
【0024】
所定の圧力をかけて金属粉を加圧した後、図6Cに示すように、開閉用アクチュエータ4によりシャッタ40が後退して開き、スリーブ21の他端にある加圧室22の開口が開放される。このときのシャッタ40の閉から開へのストロークは、上述したように、凹部44の底面がほぼ加圧室22の開口直径分だけ移動する程度であり、加圧室22内の金属粉ペレットと開動作するシャッタ40とがこすれる距離は短い。
【0025】
シャッタ40が開くと、加圧用アクチュエータ3によりプランジャ30が金属粉ペレットの厚み分だけ前進し、金属粉ペレットをスリーブ21他端の開口から押し出す。このプランジャ30が前進して金属粉ペレットを押し出す際に、上述したように、凹部44及び凸部45を有するシャッタ40の先端部形状により、スリーブ21のフランジ24のほぼ半分程度がシャッタ40により押さえられ、スリーブ21の抜け出しを防止するスリーブ押さえの機能が発揮されて、スリーブ21の位置ずれ発生が抑止される。
【0026】
次いで、図6Dに示すように、開閉用アクチュエータ4によってシャッタ40が前進して閉じつつ、開口から押し出された金属粉ペレットを図示せぬ排出経路へ排出する。そして、シャッタ40が閉じると、加圧用アクチュエータ3によってプランジャ30が後退し、図6Aの状態へ復帰して後続工程が繰り返される。
【符号の説明】
【0027】
1 ベース
2 加圧ブロック
20 受入孔
21 スリーブ
22 加圧室
23 貫通孔
24 フランジ
25 溝
3 加圧用アクチュエータ
30 プランジャ
31 接続具
32 ロッド
4 開閉用アクチュエータ
40 シャッタ
41 シャッタガイド
42 ロッド
43 段差部
44 凹部
45 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ブロックに固定され、内側に加圧室を形成するスリーブと、
該スリーブの一端から前記加圧室に挿入されるプランジャと、
該プランジャを駆動する加圧用アクチュエータと、
前記スリーブの他端が位置する前記加圧ブロックの側面に設けられたシャッタガイドと、
該シャッタガイドに案内されて開閉し、前記スリーブ他端の開口を閉鎖及び開放するシャッタと、
該シャッタを駆動する開閉用アクチュエータと、
を含んで構成され、
前記スリーブは、
前記加圧室に金属粉を収容するために設けられた側部の貫通孔と、
前記他端から前記貫通孔まで内面に延設された溝と、
を有する、
金属粉加圧装置。
【請求項2】
前記プランジャの表面にフッ素樹脂コーティングが施してある、請求項1記載の金属粉加圧装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate


【公開番号】特開2012−40580(P2012−40580A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182180(P2010−182180)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(000105394)コータキ精機株式会社 (16)