説明

金属複合シートの製造方法

【課題】金属、金属酸化物又は金属塩の分散性に優れた金属複合シートを容易に製造することのできる金属複合シートの製造方法を提供する。
【解決手段】金属、金属酸化物又は金属塩を含有する金属複合シートの製造方法であって、多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属イオン溶液又は金属アルコキシド溶液を吸収させる工程と、前記多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属、金属酸化物又は金属塩を析出させる工程と、前記多孔質有機樹脂粒子を含有する塗工組成物を調製し、前記塗工組成物を塗工して塗膜を形成する工程とを有する金属複合シートの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属、金属酸化物又は金属塩の分散性に優れた金属複合シートを容易に製造することのできる金属複合シートの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、金属、金属酸化物又は金属塩を分散させたシート状構造体が、例えば、触媒担体、高密度メモリー材料、各種吸着剤等に用いられている。このようなシート状構造体が、広い表面積、高い平滑性、緻密性等を有し、高い性能を得るためには、シート状構造体における金属、金属酸化物又は金属塩の分散性を高めることが必要とされる。
【0003】
金属、金属酸化物又は金属塩を分散させたシート状構造体を製造する方法として、例えば、粉砕又は析出法により得られた金属等の固体粉末と、有機樹脂バインダーと、有機溶剤とを、3本ロール、ビーズミル等の混練装置を用いて分散させて塗工組成物を調製し、得られた塗工組成物を塗工し、乾燥する方法が挙げられる。
しかしながら、この方法では、非常に過酷な混練条件を用いなければ、金属等の固体粉末の高い分散性を実現することは困難である。また、この方法で得られた塗工組成物は貯蔵安定性が悪く、使用する前に再度混練して金属等の固体粉末を再分散させる必要があり、生産性に問題がある。
【0004】
これに対し、均一かつ微細な孔を有するシート状構造体の孔中に金属等を担持させる方法が検討されている。
例えば、特許文献1に記載された強誘電体薄膜を製造する方法は、界面活性剤を含有する所定のゾルから薄膜を形成し、前記薄膜を乾燥ゲル化及び加熱ゲル化し、更に焼成して前記界面活性剤を除去することにより均一なナノサイズの規則的に配列した細孔が形成された薄膜を形成し、次いで、強誘電体結晶を形成する金属アルコキシド、金属アセチルアセトナト又はこれらの混合物を含有する所定の前駆体溶液を合成し、これに酸又はアルカリ及び水を加え前記金属アルコキシド、金属アセチルアセトナト又はこれらの混合物を加水分解させて形成したゾル又は前駆体溶液を、前記ナノサイズの細孔が形成された薄膜の細孔内に吸収させた後、焼成して前記細孔内にナノサイズの強誘電体結晶を形成させる方法である。
しかしながら、特許文献1に記載された方法は、工程が非常に複雑であるうえに、薄膜の細孔内に金属アルコキシドのゾル等を吸収させる工程には長時間を要する。また、薄膜の細孔内に金属アルコキシドのゾル等を良好に吸収させるためには、薄膜の厚み、面積、空隙率等を制御する必要があり、これらを自由に選択できないことも問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−153027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、金属、金属酸化物又は金属塩の分散性に優れた金属複合シートを容易に製造することのできる金属複合シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属、金属酸化物又は金属塩を含有する金属複合シートの製造方法であって、多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属イオン溶液又は金属アルコキシド溶液を吸収させる工程と、前記多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属、金属酸化物又は金属塩を析出させる工程と、前記多孔質有機樹脂粒子を含有する塗工組成物を調製し、前記塗工組成物を塗工して塗膜を形成する工程とを有する金属複合シートの製造方法である。
以下、本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、金属、金属酸化物又は金属塩を含有する金属複合シートの製造方法において、多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属イオン溶液又は金属アルコキシド溶液を吸収させる工程と、前記多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属、金属酸化物又は金属塩を析出させる工程と、前記多孔質有機樹脂粒子を含有する塗工組成物を調製し、前記塗工組成物を塗工して塗膜を形成する工程とを行うことにより、金属、金属酸化物又は金属塩の分散性に優れた金属複合シートを容易に製造できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明の金属複合シートの製造方法では、まず、多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属イオン溶液又は金属アルコキシド溶液を吸収させる工程を行う。
【0010】
上記多孔質有機樹脂粒子の平均細孔径は特に限定されないが、好ましい下限が0.1nm、好ましい上限が300nmである。上記多孔質有機樹脂粒子の平均細孔径が0.1nm未満であると、得られる金属複合シートは、金属、金属酸化物又は金属塩の含有量が低下することがある。上記多孔質有機樹脂粒子の平均細孔径が300nmを超えると、得られる金属複合シートは、金属、金属酸化物又は金属塩の微分散性が低下することがある。上記多孔質有機樹脂粒子の平均細孔径は、より好ましい下限が0.5nm、より好ましい上限が100nmである。
なお、本明細書中、多孔質有機樹脂粒子の平均細孔径とは、NOVA4200e(Sysmex社製)等のガス吸着式細孔径分布測定装置により測定した平均細孔径を意味する。
【0011】
上記多孔質有機樹脂粒子の平均粒子径は特に限定されないが、好ましい下限が0.5μm、好ましい上限が50μmである。上記多孔質有機樹脂粒子の平均粒子径が0.5μm未満であると、得られる金属複合シートは、金属、金属酸化物又は金属塩の含有量が低下することがある。上記多孔質有機樹脂粒子の平均粒子径が50μmを超えると、後述する工程において上記多孔質有機樹脂粒子を含有する塗工組成物を調製する際、多孔質有機樹脂粒子の塗工組成物中での分散性が低下することがあり、このような塗工組成物を用いて製造した金属複合シートは、金属、金属酸化物又は金属塩の分散性が低下することがある。上記多孔質有機樹脂粒子の平均粒子径は、より好ましい下限が1μm、より好ましい上限が30μmである。
なお、本明細書中、多孔質有機樹脂粒子の平均粒子径とは、LA920(HORIBA社製)等の光散乱回折型粒径分布計により測定した体積平均粒子径を意味する。
【0012】
上記多孔質有機樹脂粒子のかさ比重は特に限定されないが、好ましい下限が0.01、好ましい上限が0.60である。上記多孔質有機樹脂粒子のかさ比重が0.01未満であると、多孔質有機樹脂粒子の平均細孔径が増大することがあり、得られる金属複合シートは、金属、金属酸化物又は金属塩の微分散性が低下することがある。上記多孔質有機樹脂粒子のかさ比重が0.60を超えると、多孔質有機樹脂粒子の細孔の数が低下することがあり、得られる金属複合シートは、金属、金属酸化物又は金属塩の含有量が低下することがある。上記多孔質有機樹脂粒子のかさ比重は、より好ましい下限が0.05、より好ましい上限が0.50である。
なお、本明細書中、多孔質有機樹脂粒子のかさ比重とは、JIS K 7365に準拠して測定したかさ比重を意味する。
【0013】
上記多孔質有機樹脂粒子の比表面積は特に限定されないが、好ましい下限が50m/g、である。上記多孔質有機樹脂粒子の比表面積が50m/g未満であると、多孔質有機樹脂粒子の平均細孔径が低下することがあり、得られる金属複合シートは、金属、金属酸化物又は金属塩の含有量が低下することがある。上記多孔質有機樹脂粒子の比表面積は、より好ましい下限が100m/gである。
なお、本明細書中、多孔質有機樹脂粒子の比表面積とは、NOVA4200e(Sysmex社製)等のガス吸着式細孔径分布測定装置により測定した比表面積を意味する。
【0014】
上記多孔質中空樹脂粒子の製造方法は特に限定されないが、重合性モノマーと、重合性モノマーとは反応しない有機溶剤とを混合した重合性モノマー溶液を調製した後、分散安定剤を含む極性溶媒に懸濁させる工程と、上記重合性モノマーを重合させ、上記有機溶剤を内包するポリマー粒子を得る工程と、得られたポリマー粒子中の上記有機溶剤を除去する工程とを有する方法(以下、方法(1)ともいう)が好ましい。
以下、上記方法(1)について説明する。
【0015】
上記方法(1)では、まず、重合性モノマーと、重合性モノマーとは反応しない有機溶剤とを混合した重合性モノマー溶液を調製した後、分散安定剤を含む極性溶媒に懸濁させる工程を行う。
【0016】
上記重合性モノマーは特に限定されず、例えば、単官能性モノマー、多官能性モノマーが挙げられる。
上記単官能性モノマーは特に限定されず、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、クミル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等の極性基含有(メタ)アクリル系モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−クロロスチレン等のスチレン系モノマー、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有モノマー、ビニルピリジン、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸、イタコン酸、フマル酸、エチレン、プロピレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも、重合する際の反応性が良好であることから、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のアクリル系モノマーが好ましい。
【0017】
上記多官能性モノマーは、得られる多孔質有機樹脂粒子の収縮を抑制し、耐圧縮強度を改善する目的で添加される。上記多官能性モノマーは特に限定されず、例えば、ジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、ヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリル化合物、トリアリル化合物、ジビニル化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
上記ジ(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記トリ(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記テトラ(メタ)アクリレートは特に限定されず、例えば、テトラメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
上記ジビニル化合物は特に限定されず、例えば、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
【0019】
上記有機溶剤は、上記重合性モノマーとは反応しなければ特に限定されず、例えば、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルヘプタン等の脂肪族炭化水素、トルエン、ベンゼン等の芳香族炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル等のエステル類等が挙げられる。
【0020】
上記重合性モノマー溶液における上記有機溶剤の配合量は特に限定されないが、上記重合性モノマー100重量部に対して、好ましい下限が10重量部、好ましい上限が300重量部である。上記有機溶剤の配合量が10重量部未満であると、得られる多孔質有機樹脂粒子の空隙率が低下することがある。上記有機溶剤の配合量が300重量部を超えると、得られる多孔質有機樹脂粒子の強度が低下することがある。上記重合性モノマー溶液における上記有機溶剤の配合量の配合量は、より好ましい下限が20重量部、より好ましい上限が200重量部である。
【0021】
上記重合性モノマーと、上記有機溶剤とを混合した重合性モノマー溶液は、分散安定剤を含む極性溶媒に懸濁され、懸濁液が得られる。上記極性溶媒は特に限定されないが、水が好ましい。
【0022】
上記分散安定剤は特に限定されず、例えば、シリカ、リン酸三カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、酸化チタン等の無機物、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレン等の水溶性ポリマー、又は、各種アニオン系乳化剤、カチオン系乳化剤、ノニオン系乳化剤等が挙げられる。
上記分散安定剤の添加量は特に限定されず、分散安定剤の種類等により適宜決定されるが、上記重合性モノマー100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が20重量部である。
【0023】
上記極性溶媒には、更に、分散安定助剤が添加されてもよい。
上記分散安定助剤は特に限定されず、例えば、ドデシルフェニルオキサイドジスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α−オレフィンスルホン酸ナトリウム等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等のノニオン系界面活性剤等が挙げられる。
【0024】
上記重合性モノマー溶液の添加量は特に限定されないが、上記極性溶媒100重量部に対して、好ましい下限が10重量部、好ましい上限が10000重量部である。上記重合性モノマー添加量が10重量部未満であると、得られる多孔質中空樹脂粒子の強度が低下することがある。上記重合性モノマー溶液の添加量が10000重量部を超えると、得られる多孔質中空樹脂粒子の空隙率が低下することがある。上記重合性モノマーの添加量は、上記極性溶媒100重量部に対するより好ましい下限が25重量部、より好ましい上限が3233重量部である。
【0025】
上記方法(1)では、次いで、上記重合性モノマーを重合させ、上記有機溶剤を内包するポリマー粒子を得る工程を行う。
上記重合の際には、通常、重合開始剤を用いる。上記重合開始剤は特に限定されず、例えば、上記重合性モノマー溶液と相溶する油溶性のフリーラジカルを発生する化合物、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキシジカーボネート、αークミルパーオキシネオデカノエート等の有機系過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤、レドックス開始剤等が挙げられる。
【0026】
上記方法(1)では、次いで、得られたポリマー粒子中の上記有機溶剤を除去する工程を行う。これにより、上述した範囲の平均細孔径、平均粒子径、かさ比重、比表面積を有する上記多孔質有機樹脂粒子が得られる。本発明の金属複合シートの製造方法では、このような多孔質有機樹脂粒子を用いることにより、金属、金属酸化物又は金属塩の分散性に優れた金属複合シートが得られる。
【0027】
上記金属イオン溶液又は金属アルコキシド溶液中の金属イオン又は金属アルコキシドは特に限定されず、周期律表2A〜4B族のうちの少なくとも1種の金属のイオン又はアルコキシドが挙げられる。
なかでも、上記金属イオン溶液中の金属イオンとして、例えば、白金イオン、金イオン、パラジウムイオン、ニッケルイオン、セリウムイオン、亜鉛イオン、ジルコニウムイオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、銅イオン、コバルトイオン、アルミニウムイオン等が好ましい。また、上記金属アルコキシド溶液中の金属アルコキシドとして、例えば、オルトテトラケイ酸エチル、チタンテトライソプロポキシド等が挙げられる。
【0028】
上記多孔質有機樹脂粒子の細孔内への上記金属イオン溶液又は金属アルコキシド溶液の吸収量は特に限定されないが、上記多孔質有機樹脂粒子100重量部に対する好ましい下限が3重量部、好ましい上限が95重量部である。上記金属イオン溶液又は金属アルコキシド溶液の吸収量が3重量部未満であると、得られる金属複合シートは、金属、金属酸化物又は金属塩の含有量が低下して、所望とする性能を充分に発揮できないことがある。上記金属イオン溶液又は金属アルコキシド溶液の吸収量が95重量部を超えると、得られる金属複合シートは、金属、金属酸化物又は金属塩の微分散性が低下することがある。上記多孔質有機樹脂粒子の細孔内への上記金属イオン溶液又は金属アルコキシド溶液の吸収量は、上記多孔質有機樹脂粒子に対するより好ましい下限が5重量部、より好ましい上限が80重量部である。
【0029】
上記多孔質有機樹脂粒子の細孔内に上記金属イオン溶液又は金属アルコキシド溶液を吸収させる方法は特に限定されず、例えば、上記多孔質有機樹脂粒子を上記金属イオン溶液又は金属アルコキシド溶液に浸漬する方法等が挙げられる。
本発明の金属複合シートの製造方法では、上記多孔質有機樹脂粒子を用いることから、例えば、細孔を有する薄膜を金属イオン溶液等に浸漬する場合に比べて、短時間で充分に、上記金属イオン溶液又は金属アルコキシド溶液を細孔内に吸収させることができる。
【0030】
本発明の金属複合シートの製造方法では、次いで、上記多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属、金属酸化物又は金属塩を析出させる工程と、上記多孔質有機樹脂粒子を含有する塗工組成物を調製し、上記塗工組成物を塗工して塗膜を形成する工程とを行う。
【0031】
上記多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属、金属酸化物又は金属塩を析出させる方法は特に限定されないが、上記金属イオン溶液中の金属イオンを中和、還元若しくは酸化するか又は上記金属イオン溶液中の金属イオンの溶解度を低下させる方法、上記金属アルコキシド溶液中の金属アルコキシドを加水分解及び/又は脱水縮合する方法が好ましい。
【0032】
上記金属イオンを中和する方法は特に限定されず、例えば、塩化マグネシウム水溶液に水酸化ナトリウムを添加する、硝酸セリウムにアンモニアを添加する、炭酸ナトリウム水溶液に二酸化炭素を添加する、塩化カルシウム水溶液に炭酸ナトリウムを添加する方法等の酸性物質にアルカリ性物質を添加したり、アルカリ性物質に酸性物質を添加したりする方法等が挙げられる。
上記金属イオンを還元する方法は特に限定されず、例えば、アンモニア等の還元剤を反応させる方法等が挙げられる。
【0033】
上記金属アルコキシドを加水分解及び/又は脱水縮合する方法は特に限定されず、例えば、アンモニアを反応させる方法、硝酸を反応させる方法等が挙げられる。
【0034】
上記塗工組成物を調製する方法は特に限定されず、例えば、上記多孔質有機樹脂粒子と、有機樹脂バインダーと、有機溶剤とを、3本ロール、ビーズミル等の混練装置を用いて分散させる方法等の従来公知の方法を用いることができる。
【0035】
上記有機樹脂バインダーは特に限定されず、例えば、エチルセルロース、アクリル系樹脂、ポリウレタン、ポリエステル、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミドイミド、エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0036】
上記多孔質有機樹脂粒子の配合量は特に限定されないが、上記有機樹脂バインダー100重量部に対する好ましい下限が10重量部、好ましい上限が300重量部である。上記多孔質有機樹脂粒子の配合量が10重量部未満であると、得られる金属複合シートは、金属、金属酸化物又は金属塩の含有量が低下して、所望とする性能を充分に発揮できないことがある。上記多孔質有機樹脂粒子の配合量が300重量部を超えると、塗工組成物の粘度が上昇して取扱性が低下したり、塗工が困難となったりすることがある。
【0037】
上記有機溶剤は特に限定されず、例えば、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、n−ブタノール、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0038】
上記有機溶剤の配合量は特に限定されないが、上記有機樹脂バインダー100重量部に対する好ましい下限が130重量部、好ましい上限が1000重量部である。上記有機溶剤の配合量が130重量部未満であると、塗工組成物の粘度が上昇して取扱性が低下したり、塗工が困難となったりすることがある。上記有機溶剤の配合量が1000重量部を超えると、塗工組成物の粘度が低下して、塗膜を形成できないことがある。
【0039】
上記塗工組成物を塗工する方法は特に限定されず、例えば、バーコーター、スピンコーター、ブレードコーター、エアナイフコーター、グラビアコーター、カーテンコーター等を用いる方法等の従来公知の方法を用いることができる。
【0040】
本発明の金属複合シートの製造方法では、上記多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属、金属酸化物又は金属塩を析出させる工程と、上記多孔質有機樹脂粒子を含有する塗工組成物を調製し、上記塗工組成物を塗工して塗膜を形成する工程とは、いずれの工程を先に行ってもよい。
上記多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属、金属酸化物又は金属塩を析出させる工程を先に行う場合には、該工程により、細孔内に金属、金属酸化物又は金属塩を有する多孔質有機樹脂粒子が得られる。次いで、得られた多孔質有機樹脂粒子を含有する塗工組成物を調製し、上記塗工組成物を塗工して塗膜を形成する工程を行うことにより、金属、金属酸化物又は金属塩を含有する金属複合シートが得られる。
【0041】
一方、上記多孔質有機樹脂粒子を含有する塗工組成物を調製し、上記塗工組成物を塗工して塗膜を形成する工程を先に行う場合には、該工程により、上記金属イオン溶液又は金属アルコキシド溶液を細孔内に吸収した多孔質有機樹脂粒子を含有する塗膜が得られる。次いで、上記多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属、金属酸化物又は金属塩を析出させる工程を行うことにより、上記塗膜中で金属、金属酸化物又は金属塩が析出し、金属、金属酸化物又は金属塩を含有する金属複合シートが得られる。
【0042】
本発明の金属複合シートの製造方法では、上述のようにして細孔内に金属、金属酸化物又は金属塩を有する多孔質有機樹脂粒子を得た後、あるいは、金属複合シートを得た後、析出した金属、金属酸化物又は金属塩を、更に酸化してもよい。
上記酸化する方法は特に限定されず、例えば、金属複合シートを空気中で加熱する方法等が挙げられる。
【0043】
本発明の金属複合シートの製造方法によれば、上記多孔質有機樹脂粒子を用いることで、金属複合シートを容易に製造することができる。また、上記細孔内に金属、金属酸化物又は金属塩を有する多孔質有機樹脂粒子と、上記金属イオン溶液又は上記金属アルコキシド溶液を細孔内に吸収した多孔質有機樹脂粒子とは、いずれも塗工組成物中での分散性に優れ、更に、これらの多孔質有機樹脂粒子の細孔は極めて微細であることから、得られる金属複合シートにおいて、金属、金属酸化物又は金属塩は優れた分散性を示す。
本発明の金属複合シートの製造方法により得られる金属複合シートの用途は特に限定されないが、金属、金属酸化物又は金属塩の分散性に優れ、広い表面積、高い平滑性、緻密性等を有することから、例えば、触媒担体、高密度メモリー材料、各種吸着剤等に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、金属、金属酸化物又は金属塩の分散性に優れた金属複合シートを容易に製造することのできる金属複合シートの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0046】
(実施例1)
(多孔質有機樹脂粒子の製造)
ジビニルベンゼン100重量部、ノルマルヘプタン30重量部、過酸化ベンゾイル1重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水900重量部、ポリビニルアルコール5重量部を溶解させた水系溶液に添加し、超音波ホモジナイザーにより10分間乳化させた。セパラブルフラスコに乳化液を投入し、75℃12時間反応させて多孔質有機樹脂粒子スラリーを得た。吸引濾過により水系溶液を概略除去し、更にイオン交換水を加えて吸引濾過を繰り返し、イオン交換水で洗浄されたウエットケーキ状の多孔質有機樹脂粒子を得た。得られたウエットケーキを70℃の熱風オーブンにて24時間乾燥させ、多孔質有機樹脂粒子を作製した。
【0047】
得られた多孔質有機樹脂粒子について、光散乱回折型粒径分布計(LA920、HORIBA社製)により測定した体積平均粒子径は、3μmであった。また、JIS K 7365に準拠して算出したかさ比重は、0.25であった。また、ガス吸着式細孔径分布測定装置(NOVA4200e、Sysmex社製)により測定した比表面積は、250m/gであり、平均細孔径は、4nmであった。
【0048】
(金属複合シートの製造)
得られた多孔質有機樹脂粒子30重量部をエタノール100重量部に分散させ、硫酸パラジウム50重量部と2−アミノピリジン水溶液を加えて12時間浸漬し、硫酸パラジウム溶液を細孔内に吸収した多孔質有機樹脂粒子が分散した分散液を得た。この分散液にジメチルアミンボランを添加することにより還元を行い、パラジウムが多孔質有機樹脂粒子の細孔内に析出したパラジウム複合粒子を作製した。
得られたパラジウム複合粒子10重量部と、エチルセルロース30重量部と、トルエン30重量部と、メチルエチルケトン(MEK)10重量部とを、3本ロールで5分間混練し、バーコーターにより乾燥厚み20μmとなるように塗工し、乾燥させて、パラジウム複合シートを作製した。
【0049】
(実施例2)
(金属複合シートの製造)
実施例1で得られた硫酸パラジウム溶液を細孔内に吸収した多孔質有機樹脂粒子10重量部と、エチルセルロース30重量部と、トルエン30重量部と、メチルエチルケトン(MEK)10重量部とを、3本ロールで5分間混練し、バーコーターにより乾燥厚み20μmとなるように塗工し、乾燥させて、硫酸パラジウム溶液を細孔内に吸収した多孔質有機樹脂粒子を含有する塗膜を作製した。
得られた塗膜を、ジメチルアミンボラン水溶液に浸漬することによりパラジウムイオンの還元を行い、パラジウム複合シートを作製した。
【0050】
(実施例3)
(金属複合シートの製造)
実施例1で得られた多孔質有機樹脂粒子50重量部を、別途作製した20重量%硝酸アンモニウムセリウム(IV)水溶液500重量部に分散させて、8時間浸漬した。この分散液にアンモニアを添加することにより還元を行い、水酸化セリウムが多孔質有機樹脂粒子の細孔内に析出した水酸化セリウム複合粒子を作製した。
得られた水酸化セリウム複合粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、水酸化セリウム複合シートを作製した。
【0051】
(実施例4)
(多孔質有機樹脂粒子の製造)
トリメチロールプロパントリメタクリレート70重量部、メタクリル酸メチル30重量部、シクロヘキサン30重量部、過酸化ベンゾイル1重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水400重量部、ポリビニルアルコール1重量部を溶解させた水系溶液に添加し、ホモジナイザーにより5000回転3分間乳化させた。セパラブルフラスコに乳化液を投入し、75℃8時間反応させて多孔質有機樹脂粒子スラリーを得た。吸引濾過により水系溶液を概略除去し、更にイオン交換水を加えて吸引濾過を繰り返し、イオン交換水で洗浄されたウエットケーキ状の多孔質有機樹脂粒子を得た。得られたウエットケーキを70℃の熱風オーブンにて24時間乾燥させ、多孔質有機樹脂粒子を作製した。
【0052】
得られた多孔質有機樹脂粒子について、光散乱回折型粒径分布計(LA920、HORIBA社製)により測定した体積平均粒子径は、14.5μmであった。また、JIS K 7365に準拠して算出したかさ比重は、0.4であった。また、ガス吸着式細孔径分布測定装置(NOVA4200e、Sysmex社製)により測定した比表面積は、130m/gであり、平均細孔径は、22nmであった。
【0053】
(金属複合シートの製造)
得られた多孔質有機樹脂粒子の乾燥粉体30重量部と、別途作製したチタンテトライソプロポキシドの80重量%エタノール溶液120重量部とを混合して、分散液を調製した。この分散液にアンモニアを添加することにより加水分解を行い、酸化チタンが多孔質有機樹脂粒子の細孔内に析出した酸化チタン複合粒子を作製した。
得られた酸化チタン複合粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、酸化チタン複合シートを作製した。
【0054】
(実施例5)
(多孔質有機樹脂粒子の製造)
ポリオキシプロピレンジメタクリレート30重量部(ポリオキシプロピレンユニット数=約9、日本油脂社製、ブレンマーPDP−400)、メタクリル酸メチル30重量部、トリメチロールプロパントリメタクリレート40重量部、ヘプタン28重量部、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.3重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水400重量部、ポリビニルアルコール1重量部を溶解させた水系溶液に添加し、ホモジナイザーにより10000回転3分間乳化させた。セパラブルフラスコに乳化液を投入し、75℃12時間反応させて多孔質有機樹脂粒子スラリーを得た。吸引濾過により水系溶液を概略除去し、更にイオン交換水を加えて吸引濾過を繰り返し、イオン交換水で洗浄されたウエットケーキ状の多孔質有機樹脂粒子を得た。得られたウエットケーキを70℃の熱風オーブンにて24時間乾燥させ、多孔質有機樹脂粒子を作製した。
【0055】
得られた多孔質有機樹脂粒子について、光散乱回折型粒径分布計(LA920、HORIBA社製)により測定した体積平均粒子径は、7.2μmであった。また、JIS K 7365に準拠して算出したかさ比重は、0.36であった。また、ガス吸着式細孔径分布測定装置(NOVA4200e、Sysmex社製)により測定した比表面積は、290m/gであり、平均細孔径は、150nmであった。
【0056】
(金属複合シートの製造)
得られた多孔質有機樹脂粒子の40重量%水溶液50重量部と、別途作製したオルトテトラケイ酸エチルの70重量%エタノール溶液100重量部とを混合して、分散液を調製した。この分散液にアンモニアを添加することにより加水分解を行い、酸化ケイ素が多孔質有機樹脂粒子の細孔内に析出した酸化ケイ素複合粒子を作製した。
得られた酸化ケイ素複合粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、酸化ケイ素複合シートを作製した。
【0057】
(比較例1)
(金属複合シートの製造)
平均粒子径20nmの酸化チタン15重量部と、エチルセルロース35重量部と、トルエン35重量部と、MEK20重量部とを、3本ロールで1時間混練し、バーコーターにより乾燥厚み20μmとなりように塗工し、乾燥させて、酸化チタン複合シートを作製した。
【0058】
(比較例2)
(金属複合シートの製造)
平均粒子径20nmの酸化チタン30重量部を、スチレン30重量部、ジビニルベンゼン40重量部、過酸化ベンゾイル1重量部からなる油性物質に分散させた分散液を調製した。この分散液を、イオン交換水400重量部、ポリビニルアルコール1重量部を溶解させた水系溶液に懸濁させ、懸濁重合を行うことにより、酸化チタン複合粒子を作製した。
得られた酸化チタン複合粒子15重量部と、エチルセルロース35重量部と、トルエン35重量部と、MEK20重量部とを、3本ロールで1時間混練し、バーコーターにより乾燥厚み20μmとなるように塗工し、乾燥させて、酸化チタン複合シートを作製した。
【0059】
(比較例3)
(金属複合シートの製造)
スチレン40重量部、ジビニルベンゼン30重量部、シランカップリング剤(KBM5103、アクリル基含有シランカップリング剤)30重量部、過酸化ベンゾイル1重量部からなる油性物質を、イオン交換水400重量部、ポリビニルアルコール1重量部を溶解させた水系溶液に懸濁させ、懸濁重合を行うことにより、有機ケイ素複合粒子を作製した。
得られた有機ケイ素複合粒子15重量部と、エチルセルロース35重量部と、トルエン35重量部と、MEK20重量部とを、3本ロールで1時間混練し、バーコーターにより乾燥厚み20μmとなりように塗工し、乾燥させて、有機ケイ素複合シートを作製した。
【0060】
(比較例4)
(金属複合有機樹脂粒子の製造)
トリメチロールプロパントリメタクリレート30重量部、アクリロニトリル70重量部、ノルマルヘプタン30重量部、過酸化ベンゾイル1重量部を溶解させて油系溶液とし、イオン交換水400重量部、ポリビニルアルコール1重量部を溶解させた水系溶液に添加し、ホモジナイザーにより5000回転3分間乳化させた。セパラブルフラスコに乳化液を投入し、75℃12時間反応させて多孔質有機樹脂粒子スラリーを得た。吸引濾過により、水系溶液を概略除去し、更にイオン交換水を加えて吸引濾過を繰り返し、イオン交換水で洗浄されたウエットケーキ状の多孔質有機樹脂粒子を得た。得られたウエットケーキを70℃の熱風オーブンにて24時間乾燥させ、多孔質有機樹脂粒子を作製した。
【0061】
得られた多孔質有機樹脂粒子について、光散乱回折型粒径分布計(LA920、HORIBA社製)により測定した体積平均粒子径は、15μmであった。また、JIS K 7365に準拠して算出したかさ比重は、0.43であった。また、ガス吸着式細孔径分布測定装置(NOVA4200e、Sysmex社製)により測定した比表面積は、0.8m/gであり、平均細孔径は、8500nmであった。
【0062】
(金属複合シートの製造)
得られた多孔質有機樹脂粒子を用いたこと以外は実施例5と同様にして、酸化ケイ素が多孔質有機樹脂粒子の細孔内に析出した酸化ケイ素複合粒子を作製した。
得られた酸化ケイ素複合粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、酸化ケイ素複合シートを作製した。
【0063】
(比較例5)
(金属複合シートの製造)
テトラエチルオルソシリケート(TEOS)10重量部、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド(東京化成社製)1.5重量部、水12重量部、12N塩酸1.5重量部、エタノール100重量部を混合撹拌して、原料溶液を合成した。この原料溶液をバーコーターにより乾燥塗工した後、600℃1分間、大気中で熱処理した。バーコーターによる塗工と焼成を5回繰り返して、厚み10μmのケイ酸塩多孔体薄膜を作製した。
【0064】
得られたケイ酸塩多孔体薄膜を、別途作製した20重量%硝酸アンモニウムセリウム(IV)水溶液500重量部に12時間浸漬し、アンモニアを添加することにより還元を行い、水酸化セリウムがケイ酸塩多孔体薄膜の細孔内に析出した水酸化セリウム複合シートを作製した。
【0065】
(評価)
実施例、比較例で得られた多孔質有機樹脂粒子、金属複合シートについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0066】
(1)金属、金属酸化物又は金属塩の粒子径
得られた金属複合シートをエポキシ樹脂に包埋し、ウルトラミクロトームで断面切片を採取した後、この断面切片について、TEM/EDS装置にて元素マッピング画像を得た。得られた元素マッピング画像10点の金属、金属酸化物又は金属塩の個数平均粒子径を算出することにより、金属、金属酸化物又は金属塩の粒子径を評価した。
【0067】
(2)金属、金属酸化物又は金属塩の分散性
得られた金属複合シートについて、ウルトラミクロトームで断面切片を採取した後、この断面切片について、TEM/EDS装置にて元素マッピング画像を得た。得られた元素マッピング画像1μm四方中の元素粒子の数、元素粒子径、凝集の数から、金属、金属酸化物又は金属塩の分散性を評価した。300nm以上の粒子又は凝集が存在する場合を「×」、存在しない場合を「○」とした。
【0068】
(3)金属、金属酸化物又は金属塩の含有量
得られた金属複合シートについて、塗膜をはがして約1gはかりとり、800℃のマッフル炉で5時間加熱した。加熱前後の重量から、下記式(1)により、金属複合シートに占める金属、金属酸化物又は金属塩の含有量を算出した。
含有量=(1−(加熱後のシート重量/加熱前のシート重量))×100(重量%) (1)
【0069】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明によれば、金属、金属酸化物又は金属塩の分散性に優れた金属複合シートを容易に製造することのできる金属複合シートの製造方法を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属、金属酸化物又は金属塩を含有する金属複合シートの製造方法であって、
多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属イオン溶液又は金属アルコキシド溶液を吸収させる工程と、
前記多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属、金属酸化物又は金属塩を析出させる工程と、
前記多孔質有機樹脂粒子を含有する塗工組成物を調製し、前記塗工組成物を塗工して塗膜を形成する工程とを有する
ことを特徴とする金属複合シートの製造方法。
【請求項2】
多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属、金属酸化物又は金属塩を析出させる工程を行った後、多孔質有機樹脂粒子を含有する塗工組成物を調製し、前記塗工組成物を塗工して塗膜を形成する工程を行うことを特徴とする請求項1記載の金属複合シートの製造方法。
【請求項3】
多孔質有機樹脂粒子を含有する塗工組成物を調製し、前記塗工組成物を塗工して塗膜を形成する工程を行った後、多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属、金属酸化物又は金属塩を析出させる工程を行うことを特徴とする請求項1記載の金属複合シートの製造方法。
【請求項4】
多孔質有機樹脂粒子の細孔内に金属、金属酸化物又は金属塩を析出させる工程は、金属イオン溶液中の金属イオンを中和、還元若しくは酸化するか又は金属イオン中の金属イオンの溶解度を低下させるか、あるいは、金属アルコキシド溶液中の金属アルコキシドを加水分解及び/又は脱水縮合することにより行われることを特徴とする請求項1、2又は3記載の金属複合シートの製造方法。

【公開番号】特開2011−57890(P2011−57890A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210318(P2009−210318)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】