説明

金属酸化物の配合物

【解決手段】TiOおよび/またはZnOの存在によって悪影響を受ける構成要素と、別の要素がドープされたTiOおよび/またはZnOおよび/または還元ZnOとを含有する組成物を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物の配合物に関し、特にこのような酸化物を含有する化粧および局部的製薬的用途に好適なUV日焼け止め組成物、さらにはこの配合物を含有するポリマー状組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光線を浴びることに関する影響はよく知られている。したがって、UVAおよびUVB光に対する肌の露出は、例えば、日焼け、早期老化、および皮膚がんにつながる場合がある。
【0003】
一般的に、市販の日焼け止めはUV光を反射および/または吸収することができる成分を含んでいる。これらの成分には例えば、無機酸化物、例えば、酸化亜鉛および二酸化チタン、さらには有機日焼け止め剤がある。
【0004】
大部分の有機日焼け止め剤はUVA−UVBスペクトルの一部に渡る光しか吸収しない。その結果、UVA−UVBスペクトル全体をカバーする日焼け止め効果を得るためには、一般的に異なる有機日焼け止め剤の組み合わせを用いることが必要である。有機日焼け止め剤および日焼け止め組成物の他の成分はUV光に対して安定であるものもあるが、感光性であるおよび/またはUV光によって励起された後に組成物の別の構成要素を劣化させるものもある。
【0005】
二酸化チタンおよび酸化亜鉛は一般的に、「ミクロ化」または「超微粒子」(20〜50nm)粒子(いわゆる、ミクロリフレクター)として配合される。なぜなら、レイノルズ法によれば、そのサイズが入射光の波長の10%未満である粒子は光を散乱させ、その散乱光の強度は波長の4乗に反比例するからである。したがって、これらは、より長い可視光の波長よりも、UVB光(280または290〜315/320nmの波長を有する)およびUVA光(315/320〜400nmの波長を有する)を散乱させ、目には見えないが肌における日焼けを防止している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、二酸化チタンおよび酸化亜鉛は、効果的にUV光を吸収もするのだが、最初の形態の電子孔対を経て、過酸化物および水酸基ラジカルの形態へと移行し、順に組成物の他の成分にダメージを与える場合がある。結晶形態のTiOのアナタース形およびルチル形は、それぞれ、約385nmおよび400nmの光に相当する約3.23および3.06eVのバンドギャップエネルギーを有する半導体である(1eVは8066cm−2に相当する)。したがって、これらの酸化物は、良好な波長範囲を与える一方で、UVA有機日焼け止め、例えば、オキシベンゾンを含む有機日焼け止め剤の劣化を促進し、配合物の他の成分の劣化を招き得る。TiOおよびZnOの負の効果をコーティングによって低減しようとする試みもあるが、コーティングは不変的に有効というわけではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
今回驚くべきことに、本発明によれば、TiOおよび/またはZnOによって悪影響を受けるいずれかの化合物、特に有機日焼け止め剤の劣化は、これらを含む組成物が、「通常の」TiOおよび/またはZnOに加えて、またはこれに代えて、別の要素がドープされた酸化亜鉛または二酸化チタンおよび/または還元酸化亜鉛を含有すれば、阻止されうること見出した。言い換えれば、日焼け止め組成物等において、通常の二酸化チタンまたは酸化亜鉛単独よりもむしろ、これらのドープまたは還元材料を使用することによって、例えば、同量の有機日焼け止め剤ではUV光に対してより良好な保護性を与える組成物を提供することができ、またはより少量の有機日焼け止め剤しか含んでいなくてもUV光に対して同程度の日焼け止め効果を有する組成物を提供することができる。まさにドープおよび/または還元材料を導入することによって一日中保護性のある日焼け止めを提供することができる。
【0008】
したがって、本発明は、TiOおよび/またはZnOの存在によって悪影響を受ける(通常、当然のようにTiOおよび/またはZnOの存在中でUV光によって悪影響が引き起こされる)少なくとも1つの構成要素と、別の要素がドープされたTiOおよび/またはZnOおよび/または還元酸化亜鉛とを含有する組成物を提供する。
【0009】
いかなる条件下で、悪影響が生じるか否かは、一般的に背景事情が与えられれば当業者には明らかであろう。影響が負であるか否か、妥当な条件であるか否かは、製品および末端使用者が異なれば、当然異なってくるであろう。例えば、日焼け止めおよび化粧用の他の組成物および人体への局部的使用については、TiOおよび/またはZnOの存在中で組成物が、8時間、日中の地中海の太陽光に相当する強度または10mW/平方cmの強度の290〜400nmの波長のUV光に曝された場合に、発生する構成要素に対する悪影響に注目するであろう。人体に使用されない組成物、例えば塗料およびコーティング剤の場合には、構成要素における悪影響は、より長期間(例えば1週間、1ヶ月または1年)にわたって、またはより過酷な条件下に組成物が曝された後でしか現れないが、このことがまさに注目点となるであろう。好ましい実施の形態では、上に挙げる条件に曝された場合に、何らかの化学的変化(一般的に、組成物の機能的効果の低下につながる、またはその有効寿命を低下させる化学的変化)を起こす構成要素に注目する。
【0010】
一般的にTiOおよび/またはZnOによって悪影響を受ける成分は、フリーラジカル攻撃に感応性のものである。これらは本質的には安定でありうるが、この攻撃はホモリティックな結合解離エネルギーに関する。このような成分には、高分子体、例えばポリマーだけでなく、低分子体、例えばエチレン性不飽和部を有するもの、または不安定性水素原子(例えば3級水素原子)または他の不安定種(例えば塩素)を有するものがある。フリーラジカル攻撃は、低分子体または高分子体(例えばポリアミドまたはポリエステル)のアミドまたはエステル結合を分解する場合もある。
【0011】
TiOまたはZnOの存在は成分の物理特性の変化につながりうる。ポリマーと共に存在すれば、これは例えば、引っ張り強度または破断時の伸長の変化にであり、一方、低分子体と共に存在すれば、一般的にフリーラジカル攻撃がその化学構造に変化をもたらし、これは物理特性、例えば融点、沸点、粘度に変化をもたらし、その機能特性に変化をもたらし、場合によっては毒性を生じる。当然、これらすべての変化は、当業者が評価するものとして、測定される。
【0012】
本発明は特に、化粧用または製薬的用途に好適なUV日焼け止め組成物に適用可能である。「化粧用または局部的製薬的用途に好適なUV日焼け止め組成物」は、UV日焼け止め活性を有するいずれかの化粧用または局部的製薬的組成物を意味し、すなわち、その主たる機能が日焼け止めでなくてもよい組成物も含まれる。ドープTiO/ZnOまたは還元ZnOは、組成物においてUV日焼け止め活性を有する唯一の構成要素であってもよく、すなわち組成物は必ずしも有機UV日焼け止め剤を含有する必要はないと考えられる。しかし、組成物は、TiOおよび/またはZnOによって悪影響を受ける構成要素を含有するであろう。組成物はドープまたは還元されていないTiOおよび/またはZnOをも含有することができるものと理解される。
【0013】
劣化しうる有機成分は一般的にUV日焼け止め剤である。ある種の成分、典型的に有機日焼け止め剤は、UV光に曝された場合には、実質的にはこの光に対して安定であるが、二酸化チタンまたは酸化亜鉛の存在中でUV光に曝された場合には、劣化する。したがって、全幅にわたるスペクトルの日焼け止め剤を、このような組み合わせを用いて満足のいくように配合することはできない。しかし、ドープ二酸化チタンまたはドープまたは還元酸化亜鉛を(部分的にまたは全体的に)通常のTiO/ZnOに代えて使用すれば、有機日焼け止め剤が同じように劣化することはない。したがって、本発明はまた、二酸化チタンおよび/または酸化亜鉛の存在中でUV光によって悪影響を受ける有機日焼け止め剤を含有する日焼け止め配合物のUVスペクトルを拡大させる方法であって、配合物中にドープTiOおよび/またはドープまたは還元ZnOを導入することを包含する方法を提供するだけでなく、(未ドープTiOおよび/またはZnOの存在中で)UV光によって悪影響を受ける有機日焼け止め剤と、ドープTiOおよび/またはドープまたは還元ZnOとを含有する組成物を提供する。
【0014】
好ましい実施の形態では、本組成物は、別の要素がドープされた前記TiOおよび/またはZnOまたは還元酸化亜鉛を含有していないことを除けば同じ配合を有する組成物の、TiOおよび/またはZnOから誘導されるフリーラジカル攻撃によるUV吸収損失率よりも、少ない、好ましくは少なくとも5%少ないUV吸収損失率を有する。したがって、UVAおよび/またはUVBスペクトルの少なくとも均衡での(UV露光時の)UV吸収損失率がXであれば、ある量の劣化した有機成分はYの前記損失率を有し、ここで、YはXより好ましくは少なくとも5%大きいのだが、ある量のドープTiOおよび/またはZnOおよび/または還元酸化亜鉛はYからXへと前記損失率を低減させる。本発明はまた、TiOおよび/またはZnOによって悪影響を受ける1以上の有機UV日焼け止め剤を含有する日焼け止め組成物のUV吸収損失率を減らすための、ドープTiO/ZnOまたは還元酸化亜鉛の使用を提供する。本発明はさらに、TiOおよび/またはZnOの存在中でUV光によって劣化する1以上の成分を含有する有機UV日焼け止め組成物の効果を増大させる(安定性を改良する)方法であって、ドープTiO/ZnOおよび/または還元酸化亜鉛を組成物に導入することを包含する方法を提供する。劣化生成物(分解された化学物質)は時には有毒である。したがって、本発明はまた、ドープTiO/ZnOおよび/または還元ZnOを組成物に導入することを包含する、UV日焼け止め組成物中の有毒化合物の生成を減少させる方法を提供する。
【0015】
しかし、他の有機成分もフリーラジカル攻撃の影響を受ける場合があり、その劣化した生成物はUV日焼け止め剤の劣化を潜在的に引き起こす。
【0016】
しかし、この原理は化粧用品以外の組成物に適用してもよいことを言及しておかねばならない。UV光によって劣化しないが、UV光の存在中でTiOおよび/またはZnOに接触すれば、フリーラジカル攻撃によって劣化する特定の有機成分が組成物中に存在する場合には、その有機成分に変化が生じ、そして組成物の1以上の物理特性における変化を決定付けうる。物理特性を特定する技術を用いてこの変化を理解しても良い。このような物理特性には粘度、融点範囲および沸点範囲がありうる。
【0017】
吸収損失率は、ドープTiOおよび/またはZnOを有する組成物と有さない組成物の規定の厚さの試料に、適当な波長のUV光を照射し、所定期間、典型的には60分間にわたって組成物によるUV吸収を同定し、問題の波長に対してこの期間にわたるプロットを得、カーブの下側領域を同定し、そこから損失率を計算することによって決定されうる。明らかに、カーブの下側領域が小さいほど、損失も小さくなる。UVA吸収については、320〜400、特に340〜390nmの波長が考慮される。
【0018】
UV吸収損失におけるいずれの減少も有効であるが、一般的にドープ酸化物の存在が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、特に少なくとも20%および最も好ましくは少なくとも40%の量でUV吸収率を減少させることができることが望ましい。
【0019】
本発明の組成物は、化粧用途のためのものであり、例えば、口紅、例えば、しわ防止配合物を含むクリームの形態の肌のアンチエージング組成物、スクラブ、クリームおよびローションを含む剥離製剤、例えば、フェイスパウダーおよびクリームの形態のスキンライトニング組成物、クリームおよびローションを含む手用製剤、保湿製剤、髪を保護するための組成物、例えば、コンディショナー、シャンプーおよびヘアーラッカーさらにはヘアーマスクおよびジェル、ワイプ、ローションおよびジェルを含む肌洗浄組成物、アイシャドーおよび頬紅、スキントナーおよび血清さらには洗浄製品、例えば、シャワージェル、バブルバス、バスオイルを含む浴用製品であってもよいが、好ましくは日焼け止めである。この関係で、ここで使用されるように「化粧用UV日焼け止め組成物」という表現は、肌に適用されるいずれかの組成物を含み、洗浄製品のように肌に残渣を残してもよい。本発明の組成物は、UV光からの保護性を提供するいずれの常套の配合物として用いられてもよい。また、組成物は局部的適用に好適な製薬的組成物であってもよい。このような組成物は特に、UV光によって悪影響を受け、多様な光皮疹を引き起こす肌の疾患に苦しむ患者にとって有用である。
【0020】
本発明の組成物中に使用されうる有機日焼け止め剤には、UV光に対して保護性を与える常套の日焼け止め剤があるが、TiOおよび/またはZnOによって劣化する他の成分がないならば、日焼け止め剤自身がTiOおよび/またはZnOによって劣化する。好適な日焼け止め剤は、ガン研究のための国際機関によって公開されたキャンサー・プレベンション(Cancer Prevention)のIARCハンドブック(Handbook)、第5巻、サンスクリーン(Sunscreen)、リヨン、2001に掲載されており、次のものがある:
(a)パラアミノ安息香酸(PABA)、(UVB吸収剤)そのエステルおよび誘導体、例えば、アミルジメチル−;エチルジヒドロキシプロピル−;エチルヘキシルジメチル−;エチル−;グリセリル−;および4−ビス−(ポリエトキシ)−PABA、
(b)メチルシンナメートエステルおよびメトキシシンナメートエステルを含むシンナメート(UVB)の特にエステル、例えば、オクチルメトキシシンナメート、エチルメトキシシンナメート、特に2−エチルヘキシルパラ−メトキシシンナメート、イソアミルp−メトキシシンナメート、またはそのジイソプロピルシンナメートとの混合物、2−エトキシエチル−4−メトキシシンナメート、DEA−メトキシシンナメート(パラ−メトキシヒドロキシシンナメートのジエタノールアミン塩)またはα,β−ジ−(パラ−メトキシシンナモイル)−α’−(2−エチルヘキサノイル)−グリセリン、さらにはジイソプロピルメチルシンナメート;
(c)ベンゾフェノン(UVA)、例えば、2,4−ジヒドロキシ−;2−ヒドロキシ−4−メトキシ−;2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−;2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−;2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−;および2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチル−ベンゾフェノン、ベンゼンスルホン酸およびそのナトリウム塩;ナトリウム2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルホベンゾフェノンおよびオキシベンゾン;
(d)ジベンゾイルメタン(UVA)、例えば、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、特に4−tert−ブチル−4’メトキシジベンゾイルメタン;
(e)2−フェニルベンズイミダゾール−5スルホン酸UVBおよびフェニルジベンズイミダゾールスルホン酸およびその塩;
(f)アルキル−β,β−ジフェニルアクリレート(UVB)、例えば、アルキルα−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、例えば、オクトクリレン;
(g)トリアジン(UVB)、例えば、2,4,6−トリアニリノ−(p−カルボ−2−エチル−ヘキシル−1−オキシ)−1,3,5トリアジンさらにはオクチルトリアゾン、例えば、エチルヘキシルトリアゾンおよびジエチルヘキシルブタミドトリアゾン;
(h)カンファ誘導体(一般的にUVB)、例えば、4−メチルベンジリデンおよび3−ベンジリデン−カンファおよびテレフタリリデンジカンファスルホン酸(UVA)、ベンジリデンカンファスルホン酸、カンファベンズアルコニウムメトスルフェートおよびポリアクリルアミドメチルベンジリデンカンファ;
(i)有機顔料日焼け止め剤、例えば、メチレンビス−ベンゾトリアゾールテトラメチルブチルフェノール;
(j)シリコンベースの日焼け止め剤、例えば、ジメチコジエチルベンザルマロネート;
(k)サリチレート(UVB)、例えば、ジプロピレングリコール−;エチレングリコール−;エチルヘキシル−;イソプロピルベンジル−;メチル−;フェニル−;3,3,5−トリメチル−およびTEA−サリチレート(2−ヒドロキシ安息香酸および2,2’,2”−ニトリロトリス(エタノール)の化合物);
(l)アントラニレート(UVA)、例えば、メチルアントラニレートさらにはビスイミダジレート(UVA)、ジアルキルトリオレエート(UVB)、5−メチル−2−フェニルベンゾキサゾール(UVB)およびウロカニン酸(UVB)。
【0021】
いくつかの化合物は、UVAとUVBの両方に対して効果的である。これらには、アニソトリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾイルテトラメチルブチル−フェノールおよびドロメトリゾールトリシロキサン(メキソリル(Mexoryl)XL)がある。
【0022】
有機日焼け止め剤は典型的に、組成物中に組成物の重量に基づいて、0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%、および特に2〜5重量%の濃度で存在する。
【0023】
一般的に水性の組成物中には、好ましくは、金属酸化物は、約0.5〜20重量%、好ましくは約1〜10重量%、およびより好ましくは約3〜8重量%、特に約4〜7重量%、例えば、4〜6重量%、例えば、約5重量%の濃度で存在する。
【0024】
組成物は例えば、典型的に4000〜10,000mPasの粘度を有するローション、例えば、ジェル化ローション、ジェル、小胞状の分散体、クリーム、典型的に10,000〜20,000mPasの粘度を有する流動性クリームまたは20,000〜100,000mPasの粘度のクリーム、ミルク、パウダー、固形スティックの形態であってもよく、任意にエアゾールとしてパッケージされてもよく、泡またはスプレイの形態で提供されてもよい。
【0025】
組成物はこのような配合物に使用されるいかなる構成要素を含有してもよく、これには、脂肪性物質、有機溶媒、シリコン、増粘剤、液体および固体の皮膚軟化剤、保護剤、他のUVA、UVBまたは広帯域の日焼け止め剤、消泡剤、酸化防止剤、例えば、ブチルヒドロキシトルエン、緩衝剤、例えば、乳酸とトリエタノールアミンまたは水酸化物ナトリウムのような塩基、植物抽出物、例えば、アロエベラ、ヤグルマソウ、ウィッチ-ヘーゼル、ニワトコの花および胡瓜、活性増強剤、保湿剤、および湿潤剤、例えば、グリセロール、ソルビトール、2−ピロリドン−5−カルボキシレート、ジブチルフタレート、ゼラチンおよびポリエチレングリコール、香料、防腐剤、例えば、パラ−ヒドロキシベンゾエートエステル、界面活性剤、充填剤および増粘剤、隔離剤、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性または両性ポリマーまたはその混合物、推進剤、アルカリ性化または酸性化剤、100nm〜20000nmの粒子サイズを有する金属酸化物顔料、例えば、酸化鉄さらには常套の(未ドープ)TiOおよびZnOを含む着色剤およびパウダーがある。
【0026】
化粧用組成物の他の構成要素、例えば、幾分かの界面活性剤は、UV光の存在中である種の日焼け止め剤を劣化させる効果を有する場合がある。また、TiOおよびZnOも、ある種の有機日焼け止め、例えば、オキシベンゾンだけでなく酸化防止剤、例えば、ビタミン(例えば、ビタミンA、B、CおよびE)およびアンチエージング因子、例えば、ナイアシンアミド、レテノイドおよびコエンザイムMEQ10等を劣化させることで知られている。このような日焼け止めと共にドープTiOおよび/またはZnOおよび/または還元ZnOを使用することは特に有用であると評価されるであろう。これは、TiOおよびZnOは一般的に積極的なUV吸収効果を有するからである。したがって、ドープTiOおよび/またはZnOおよび/または還元ZnOを使用することによって、酸化防止剤をより少なく使用することができ、または配合物をより長く持続させうる。
【0027】
有機溶媒は典型的に、低級アルコールおよびポリオール、例えば、エタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセリンおよびソルビトールさらには塩化メチレン、アセトン、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−エチルエーテル、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドおよびテトラヒドロフランである。
【0028】
脂肪性物質は、オイルまたはワックスまたはその混合物、脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪性アルコール、ワセリン、パラフィン、ラノリン、水素化ラノリンまたはアセチル化ラノリン、蜜蝋、オゾケライトワックスおよびパラフィンワックスからなるものでもよい。
【0029】
オイルは典型的に、動物性、植物性、ミネラルまたは合成オイル、特に水素化椰子油、水素化キャスターオイル、ワセリンオイル、パラフィンオイル、パーセリン(Purcellin)オイル、シリコンオイル、例えば、ポリジメチルシロキサンおよびイソパラフィンから選択される。
【0030】
ワックスは典型的に、動物性、化石質、植物性、ミネラルまたは合成ワックスである。このようなワックスには、蜜蝋、カルナウバ、カンデリラ、さとうきびまたは木蝋、オゾケライト、モンタン蝋、微結晶ワックス、パラフィンまたはシリコンワックスおよび樹脂がある。
【0031】
脂肪酸エステルは、例えば、イソプロピルミリステート、イソプロピルアジペート、イソプロピルパルミテート、オクチルパルミテート、C12−C15脂肪アルコールベンゾエート(FINETEXからの「FINSOLV TN」)、3モルの酸化プロピレンを含有するオキシプロピレン化ミリスチンアルコール(WITCOからの「WITCONOL APM」)、カプリン酸およびカプリル酸トリグリセリド(HULSからの「MIGLYOL812」)である。
【0032】
組成物はまた、増粘剤、例えば、架橋または非架橋アクリル酸ポリマー、特に多官能性の薬剤を用いて架橋されたポリアクリル酸、例えば、GOODRICH社によって「CARBOPOL」の商品名で販売されている製品、セルロースまたはその誘導体、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、またはセチルステアリルアルコールと33モルの酸化エチレンを含有するオキシエチレン化セチルステアリルアルコールとの混合物を含有してもよい。
【0033】
望ましくは、水分散可能な二酸化チタンのオイル分散可能な二酸化チタンに対する重量比は1:4〜4:1、好ましくは1:2〜2:1、および理想的にはほぼ同じ重量比である。
【0034】
好適な皮膚軟化剤には、ステアリルアルコール、グリセリルモノリシノレエート、ミンクオイル、セチルアルコール、イソプロピルイソステアレート、ステアリン酸、イソブチルパルミテート、イソセチルステアレート、オレイルアルコール、イソプロピルラウレート、ヘキシルラウレート、デシルオレエート、オクタデカン−2−オール、イソセチルアルコール、エイコサニルアルコール、ベヘニルアルコール、セチルパルミテート、シリコンオイル、例えば、ジメチルポリシロキサン、ジ−n−ブチルセバケート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルステアレート、ブチルステアレート、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ラノリン、ココアバター、コーンオイル、綿実オイル、オリーブオイル、椰子核油、菜種油、紅花種油、月見草油、大豆油、ひまわり種油、アボカドオイル、ごま種油、ココナッツオイル、ピーナッツオイル、キャスターオイル、アセチル化ラノリンアルコール、ワセリン、ミネラルオイル、ブチルミリステート、イソステアリン酸、パルミチン酸、イソプロピルリノレート、ラウリルラクテート、ミリスチルラクテート、デシルオレエート、ミリスチルミリステートがある。
【0035】
好適な推進剤には、プロパン、ブタン、イソブタン、ジメチルエーテル、二酸化炭素、笑気がある。
【0036】
好適なパウダーには、チョーク、タルク、フラー土、カオリン、スターチ、ガム、コロイド状シリカ、ナトリウムポリアクリレート、テトラアルキルおよび/またはトリアルキルアリールアンモニウムスメクタイト、化学的に変性させたマグネシウムアルミニウムシリケート、有機的に変性させたモンモリロナイト粘土、水和アルミニウムシリケート、フュームシリカ、カルボキシビニルポリマー、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチレングリコールモノステアレートがある。
【0037】
本発明の組成物が日焼け止めである場合には、組成物は例えば、溶媒または脂肪性物質における懸濁液または分散体の形態であっても、またはエマルジョン(例えば、クリームまたはミルク)として、軟膏、ジェル、固形スティックまたはエアゾールフォームの形態であってもよい。エマルジョン(水中にオイルまたはオイル中に水タイプのエマルジョンでありうる)はさらに、乳化剤を含有してもよく、これには、陰イオン性、非イオン性、陽イオン性または両性界面活性剤があり;オイル中に水タイプのエマルジョンにとってはHLBは典型的に1〜6であるが、水中にオイルタイプのエマルジョンにとってはより大きい値、すなわち、6以上が望ましい。一般的に、水は80体積%まで、典型的に5〜80体積%の量である。使用することができる特定の乳化剤には、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート、グリセロールモノオレエート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノラウレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(2)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトール、蜜蝋誘導体、PEG200ジラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(3.5)ノニルフェノール、PEG200モノステアレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、PEG400ジオレエート、ポリオキシエチレン(5)モノステアレート、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(4)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(5)ソルビタンモノオレエート、PEG300モノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレン(8)モノステアレート、PEG400モノオレエート、PEG400モノステアレート、ポリオキシエチレン(10)モノオレエート、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(10)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(9.3)オクチルフェノール、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート、PEG600モノオレエート、PEG1000ジラウレート、ポリオキシエチレンソルビトールラノリン誘導体、ポリオキシエチレン(12)ラウリルエーテル、PEG1500ジオレエート、ポリオキシエチレン(14)ラウレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレン(20)セチルエーテル、ポリオキシエチレン(25)オキシプロピレンモノステアレート、ポリオキシエチレン(20)ソルビトールモノラウレート、ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル、ポリオキシエチレン(50)モノステアレート、およびPEG4000モノステアレートがある。場合によっては、乳化剤はシリコン界面活性剤、特にポリオキシエチレンおよび/またはポリオキシプロピレン側鎖を有し、典型的に10,000〜50,000の分子量を有するジメチルポリシロキサン、特にシクロメチコンおよびジメチコンコポリオールであってもよい。これらは公知の方法によって調製されるイオン性または非イオン性両親媒性液体の小胞状分散体の形態で提供されてもよい。
【0038】
水分散可能な二酸化チタンまたは酸化亜鉛と、オイル分散可能な二酸化チタンまたは酸化亜鉛の両方を用いることは効果的でありうる。ここで、その少なくとも一方はドープされており、酸化亜鉛の場合には還元されている。エマルジョンを肌に塗った場合、エマルジョンは油性領域と非油性領域に分かれる傾向にあることを見出している。水が蒸発した場合にオイル分散可能な粒子は油性領域にあり、したがって、保護されていない領域を残すこととなるであろう。この点は、エマルジョン中に親水性と疎水性の両方の粒子を有し、親水性領域にとどまるものもあれば、疎水性領域にとどまるものもあるようにすることによって、排除され得る。
【0039】
水分散可能な粒子は、未コートでも、または粒子に親水性の表面特性を付与するような材料でコートされてもよい。このような材料の例には、酸化アルミニウムおよびアルミニウムシリケートがある。疎水性表面特性を有するオイル分散可能な粒子は、金属石鹸、例えば、アルミニウムステアレート、アルミニウムラウレートまたは亜鉛ステアレートで、または有機シリコン化合物で適宜コートされる。
【0040】
本発明は、特にTiOおよび/またはZnOを含有しうるUV日焼け止め組成物に有効であるものであるが、本発明は、TiOおよび/またはZnOを含有しうる組成物全般に渡る。したがって、本発明はまた、ポリマー状組成物としての適用可能性も有する。「ポリマー状組成物」はここでは使用されるように、1以上のポリマー状材料を含有する組成物を意味する。組成物は固体でも液体でもよい。
【0041】
いくつかの場合には、本発明の組成物は、ドープされていないTiOおよび/またはZnO、ZnOの場合には還元されていないZnOを含有するであろう。典型的にこのような未ドープTiO/ZnOは顔料として存在し、一般的に少なくとも100nmの粒子サイズを有する。
【0042】
典型的な固体材料はポリマー状固体であり、これには、3次元物品、フィルムおよび繊維、さらには織物および布、例えば織物繊維および不織繊維から作られる衣類およびニット製品、さらには発泡物品がある。3次元物品には溶融形成法によって製造されるものがあり、これには押出し成形物品がある。本発明を適用することができる典型的な物品には、一般的に、家屋の外側用材料および建築材料があり、これにはブラインドおよびプラスチックカーテン、トレリス、パイプおよび樋、外装材および化粧張り、例えば波型シートに象られうる天井ボードおよびプラスチックの屋根材料、ドアおよび窓枠がある。他の物品には、広告掲示板等(例えば車体側面の掲示ボード)さらには車体本体および車体部品(例えば自動車、バスおよびトラック用バンパー)、さらにはボート用としても使用されうる屋根、さらにはボートの上層構造および船体およびさらには芝刈り機およびトラクターおよびヨットの本体、および容器(例えばボトル、缶、ドラム缶、バケツおよび油や水の貯蔵容器)がある。他の物品には庭用備品がある。
【0043】
本発明を適用することができるフィルムには、自己支持、さらには非自己支持フィルム、例えばコーティングがある。本発明を適用することができる自己支持フィルムには、写真フィルム、包装フィルムおよび典型的には広告フィルムとしての印を付けたプラスチックフィルム(広告掲示板上に適用することもできる)がある。このようなフィルムはこのような製品にとって常套的な1以上の構成要素を含有しうる。したがって、写真フィルムは1以上の染料または染料カップラーおよび任意にハロゲン化銀を含有する。
【0044】
コーティング組成物は、典型的に塗料およびワニスであり、いくつかのワニスでは活性構成要素として、塗料では担体としてポリマーを含有し、さらに、コーティング組成物は、家具用光沢剤、ワックスおよびクリームである。これらは水性であってもよく、または非水性、すなわち有機溶媒を含有してもよい。このコーティング組成物は防水剤の形態であってもよい。これらのコーティング組成物はこのような製品に常套的な1以上の構成要素を含有することができる。
【0045】
本発明の組成物に使用することができるポリマーには、天然および合成ポリマーがありこれらは熱可塑性であっても、または熱硬化性であってもよい。
【0046】
好適なポリマーはホモポリマーであっても、またはコポリマーであってもよく、コポリマーは、ランダム、ブロックまたはグラフトコポリマーでありうり、ポリマーは架橋されうる。このようなポリマーは飽和でも不飽和でもよい。典型的なポリマーには、アルキレンポリマー、例えばエチレンおよびプロピレンポリマー、典型的にホモポリマー、例えばポリエチレンフォームがあり、例えばPTFE、シロキサンおよびスルフィドポリマー、ポリアミド、例えばナイロン、ポリエステル、アクリレートおよびメタクリレートポリマー、例えばポリ(メチルメタクリレート)、さらにはPET、ポリウレタン、例えば発泡体、ビニルポリマー、例えばスチレンポリマー、例えばABS、例えばポリスチレン発泡体、塩化ビニルポリマーおよびポリビニルアルコールがある。フッ素化ポリマー、例えばPTFEおよびフッ化ポリビニリデンを使用することができる。ポリマーは、エポキシ樹脂さらにはフェノール性樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂およびポリエステル樹脂を用いて熱硬化性となりうる。
【0047】
使用することができる天然ポリマーには、セルロース性ポリマーがあり、これには例えばでんぷん、多糖類、リグニン、およびポリイソプレン、例えば天然ゴムがある。
【0048】
用途別の典型的ポリマーには次のものがある:
(a)ポリエステル、ポリアミド、例えばナイロン、アクリル(繊維および布用);
(b)ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン(ボトル等用);
(c)ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル(フィルム用)(包装材のように非活性)。
【0049】
ポリマー状組成物は、その組成物に特徴的な通常の添加要素を含有することができ、これには、無機および有機顔料、例えば「通常の」TiOおよび/またはZnO、充填剤および増量剤さらには光安定剤、典型的にはヒンダードアミン安定剤がある。添加要素はそれ自身が攻撃を受けやすい場合もあり、その劣化した成分は潜在的に組成物のポリマーまたは他の成分の劣化を招く。
【0050】
「物理因子」を指標としても良く、これは、UV光によって悪影響を受ける組成物の測定可能な物理特性値を意味する。TiOおよび/またはZnOが引き起こしたフリーラジカル攻撃によって悪影響を受けうる物理特性の例には、劣化、続いて、強度、例えば塗料および織物および写真では色変化、例えば写真フィルムでは安定性がある。
【0051】
したがって、物理因子の低下率をXとする場合、ある量の劣化した成分はYの前記低下率を有し、ここで、YはXより好ましくは少なくとも5%大きいのだが、ある量のドープTiOおよび/またはZnOおよび/または還元酸化亜鉛はYからXへと前記損失率を低減させる。本発明はまた、ポリマー状組成物またはその構成要素の物理特性の低下率を減少させるための、ドープTiO/ZnOおよび/または還元ZnOの使用をも提供する。さらに本発明は、TiOまたはZnOによって劣化する1以上の成分を含有する組成物、またはこのような成分の物理特性の安定性を改良する方法であって、ドープTiO/ZnOおよび/または還元ZnOを組成物に導入することを包含する方法を提供する。
【0052】
色変化率は、ドープTiOまたはZnOまたは還元ZnOを有する組成物と有さない組成物の試料に太陽光または可視光を照射し、所定期間にわたって組成物のスペクトル反応を測定し、放出波長における変化を同定することによって決定されうる。例えば退色試験機を用いた加速エージング試験が、この目的に使用されうる。
【0053】
本発明の物品の強度損失率は、引っ張り特性(例えば、破断時の伸長またはヤング率
)を、標準的な装置、例えばインストロン(Instron)社のテスターを用いて測定することによって同様に決定され得り、ここでも加速エージング操作は有効である。
【0054】
波長変化や他の物理因子におけるいずれの減少も有効であるが、一般的にドープ酸化物の存在が少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも15%、特に少なくとも20%および最も好ましくは少なくとも40%の量で変化率を減少させることが望ましい。
【0055】
ポリマー状組成物では、金属酸化物は好ましくは、約0.5〜20重量%、好ましくは約1〜10重量%、およびより好ましくは約3〜8重量%の濃度で存在する。
【0056】
酸化物粒子用のドーパントは、好ましくはマンガン(例えば、Mn2+特にMn3+が特に好ましい)、バナジウム、例えば、V3+またはV5+、クロムおよび鉄であるが、使用することができる他の材料には、ニッケル、銅、錫、アルミニウム、鉛、銀、ジルコニウム、亜鉛、コバルト、ガリウム、ニオビウム、例えば、Nb5+、アンチモン、例えば、Sb3+、タンタル、例えば、Ta5+、ストロンチウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、モリブデン、例えば、Mo3+、Mo5+、またはMo6+、さらにはシリコンがある。マンガンはMn3+として、コバルトはCo2+として、錫はSn4+さらにはMn2+として、存在するのが好ましい。これらの金属は、単独で、または2または3以上組み合わせて導入されてもよい。さらに、これらのドープ酸化物の詳細は、WO99/60994号公報、さらにはWO01/40114号公報に見られ得る。
【0057】
ホスト格子中における第2の成分の最適量は繰り返し実験によって決定されてもよいが、粒子が着色しないように十分低くすることが好ましい。0.1mol%以下程度の低い量、例えば、0.05mol%、または1mol%以上程度の高い量、例えば、5mol%または10mol%が一般的に用いられ得る。典型的な濃度は0.5〜2重量mol%である。
【0058】
これらの粒子は、ドープ酸化物および塩を調製する標準的方法のいずれか1つによって得られうる。したがって、これらは、ホスト格子(TiO/ZnO)の粒子を、塩(例えば、塩化物)または酸素−含有陰イオン(例えば、パークロレートまたはニトレート)の形態の第2の成分と、溶液または懸濁液(典型的には水溶液)中で混合し、次いでこれを典型的には少なくとも300℃の温度で焼成することによる焼成技術によって得られうる。ドープ材料を調製するのに用いてもよい別の方法には、j.Mat.Sci.(1997)36,6001−6008に記載されるタイプの沈殿法があり、ここでは、ドーパント塩の溶液とホスト金属(Ti/Zn)のアルコキシドの溶液を混合し、その混合溶液を次に加熱してアルコキシドを酸化物に変位させる。加熱は、ドープ材料の沈殿が得られるまで続けられる。さらに詳細な調製法は前述の特許明細書に見られ得る。
【0059】
ルチル形のチタニアはアナタース形に比べてより光に安定であることで公知であり、したがって、好ましい。
【0060】
還元酸化亜鉛粒子(すなわち、酸素イオンに比べて過剰の亜鉛イオンを有する粒子)は、還元性雰囲気中で酸化亜鉛粒子を加熱して還元酸化亜鉛粒子を得ることによって容易に得られうる。この還元酸化亜鉛粒子はUV光、特に390nm以下の波長を有するUV光を吸収し、緑、好ましくは約500nmで再放射する。この還元酸化亜鉛粒子は、電子および/または正に帯電した孔の、粒子表面への移行を最小限にした還元酸化亜鉛を含有し、前記粒子が水性環境においてUV光に暴露された場合に、先に議論したような水酸基ラジカルの生成を実質的に減らすようにしていると、理解されるであろう。
【0061】
還元性雰囲気は、酸素含有量を減らしまたは水素含有量を増やした空気でありうるが、好ましくは水素と不活性ガス、例えば、窒素またはアルゴンの混合物である。典型的には、水素濃度は、バランス不活性ガス、特に窒素を用いて、1〜20体積%、特に5〜15体積%である。好ましい還元性雰囲気は約10体積%の水素と約90体積%の窒素である。酸化亜鉛を、この雰囲気中で500℃〜1000℃、一般的に750〜850℃、例えば、約800℃で、5〜60分間、一般的に10〜30分間加熱する。典型的に、約800℃に約20分間加熱する。
【0062】
還元酸化亜鉛粒子は吸収性コア内に過剰のZn2+イオンを有すると考えられる。これらは局所的状態であり、例えば、バンドギャップ内に存在してもよい。これについてのさらなる議論はWO99/60994に見られ得る。
【0063】
粒子の平均一次粒子サイズは一般的に、約1〜200nm、例えば、約1〜150nm、好ましくは約1〜100nm、より好ましくは約1〜50nmおよび最も好ましくは約20〜50nmである。粒子サイズは好ましくは、最終製品の着色を生じさせないように選択される。したがって、ナノ粒子がしばしば用いられる。しかし、ある実施態様では僅かに大きい粒子、例えば、100〜500nm、典型的に100〜400または450nm、特に150〜300nmおよび特に200〜250nmを用いることができる。これらは例えば、認められないほど肌を白くすることなく、肌の不完全さを良好にカバーする。
【0064】
粒子が実質的に球形である場合には、粒子サイズは直径を用いて表される。しかし、発明は非球形である粒子をも含み、このような場合には、粒子サイズは最も大きい寸法を示す。
【0065】
本発明で使用される酸化物粒子は無機または有機コーティングを有してもよい。例えば、粒子を、アルミニウム、ジルコニウムまたはシリコンのような元素の酸化物、特にシリカでコートしてもよい。また、金属酸化物の粒子を1以上の有機材料、例えば、ポリオール、アミン、アルカノールアミン、ポリマー状有機シリコン化合物、例えば、RSi[{OSi(Me)}xOR(ここで、RはC〜C10アルキルであり、Rはメチルまたはエチルであり、xは4〜12の整数である)、親水性ポリマー、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロースおよびキサンタンガムまたは界面活性剤、例えば、TOPOでコートしてもよい。このようなコーティングは、少なくともある程度、ドープ粒子の有しうる色を隠す効果を有することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiOおよび/またはZnOの存在中でUV光によって悪影響を受ける構成要素と、別の要素がドープされたTiOおよび/またはZnOおよび/または還元ZnOとを含有する組成物。
【請求項2】
ドープまたは還元されていないTiOおよび/またはZnOを含有する請求項1による組成物。
【請求項3】
ドーパントはマンガン、バナジウム、クロムまたは鉄である請求項1または2による組成物。
【請求項4】
ドーパントはMn3+である請求項3による組成物。
【請求項5】
ドーパントは0.05〜10mol%の量で存在する前出の請求項のいずれか1つによる組成物。
【請求項6】
ドーパントは0.5%〜2重量mol%の量で存在する請求項5よる組成物。
【請求項7】
ドープ二酸化チタンを含有する前出の請求項のいずれか1つによる組成物。
【請求項8】
二酸化チタンはルチル形である前出の請求項のいずれか1つによる組成物。
【請求項9】
還元酸化亜鉛を含有する請求項1または2による組成物。
【請求項10】
組成物中のドープまたは未ドープTiOおよび/またはZnOは無機または有機コーティングでコートされる前出の請求項のいずれか1つによる組成物。
【請求項11】
0.5〜20重量mol%のドープTiOまたはZnOまたは還元ZnOを含有する前出の請求項のいずれか1つによる組成物。
【請求項12】
ドープまたは還元酸化物は1〜200nmの粒子サイズを有する前出の請求項のいずれか1つによる組成物。
【請求項13】
ドープまたは還元酸化物は100〜500nmの粒子サイズを有する請求項1〜11のいずれか1つによる組成物。
【請求項14】
UV日焼け止め組成物である前出の請求項のいずれか1つによる組成物。
【請求項15】
化粧用途に好適である前出の請求項のいずれか1つによる組成物。
【請求項16】
別の要素がドープされた前記TiOおよび/またはZnOまたは前記還元酸化亜鉛を含有していないことを除けば同じ配合を有する組成物のUV吸収損失率よりも、少なくとも5%少ないUV吸収損失率を有する請求項14または15による組成物。
【請求項17】
TiOおよび/またはZnOによって悪影響を受けるUV日焼け止め剤を含有する前出の請求項のいずれか1つによる組成物。
【請求項18】
有機日焼け止め剤は、パラアミノ安息香酸、そのエステルまたは誘導体、メトキシシンナメートエステル、ベンゾフェノン、ジベンジロメタン、アルキル−β,β−フェニルアクリレート、トリアジン、カンファ誘導体、有機顔料、シリコンベースの日焼け止め剤または2−フェニルベンズイミダゾイル−5スルホン酸またはフェニルジベンズイミダゾイルスルホン酸である請求項14〜17のいずれか1つによる組成物。
【請求項19】
UVA吸収損失のUVB吸収損失に対する割合の変化率は、存在するTiOおよび/またはZnOがドープされていないことを除けば同じ配合の組成物よりも少ない請求項16〜18のいずれか1つによる組成物。
【請求項20】
UVA吸収損失率が低下したために前記割合の変化率がより大きくなる請求項19による組成物。
【請求項21】
0.1重量%〜20重量%の有機日焼け止め剤を含有する請求項14〜20のいずれか1つによる組成物。
【請求項22】
1以上の脂肪性物質、有機溶媒、シリコン、増粘剤、保護剤、UVB日焼け止め剤、消泡剤、保湿剤、香料、防腐剤、界面活性剤、充填剤、隔離剤、陰イオン性、陽イオン性、非イオン性または両性ポリマー、推進剤、アルカリ性化または酸性化剤、着色剤または金属酸化物顔料、ビタミン、酸化防止剤、アンチエージング因子および安定剤を含有する請求項14〜21のいずれか1つによる組成物。
【請求項23】
日焼け止めである請求項14〜22のいずれか1つによる組成物。
【請求項24】
ローション、ジェル、分散体、クリーム、ミルク、パウダーまたは固形スティックの形態である請求項14〜23のいずれか1つによる組成物。
【請求項25】
水分散可能およびオイル分散可能なTiOおよび/またはZnOを含有する請求項23または24による組成物。
【請求項26】
ポリマー状組成物である請求項1〜13のいずれか1つによる組成物。
【請求項27】
TiOおよび/またはZnOによって悪影響を受ける構成要素は物理特性について変化を受ける請求項26による組成物。
【請求項28】
物理特性とは引っ張り強度である請求項26〜27による組成物。
【請求項29】
物理特性とは色である請求項26または27による組成物。
【請求項30】
ポリマー状材料は熱可塑性である請求項26〜29のいずれか1つによる組成物。
【請求項31】
ポリマー状材料は熱硬化性である請求項26〜29のいずれか1つによる組成物。
【請求項32】
3次元物品の形態である請求項26〜31のいずれか1つによる組成物。
【請求項33】
フィルムの形態である請求項26〜31のいずれか1つによる組成物。
【請求項34】
写真フィルムの形態である請求項33による組成物。
【請求項35】
コーティング組成物の形態である請求項26〜31のいずれか1つによる組成物。
【請求項36】
塗料またはワニスの形態である請求項35による組成物。
【請求項37】
TiOおよび/またはZnOによって悪影響を受ける構成要素はエチレン性不飽和化合物または不安定性水素原子を含むものである前出の請求項のいずれか1つによる組成物。
【請求項38】
実質的に先に記載された請求項1による組成物。
【請求項39】
化粧用UV日焼け止め組成物においてTiOおよび/またはZnOによって悪影響を受ける1以上の有機UV日焼け止め剤の濃度を減らすための、請求項1〜6および10のいずれか1つで定義されたドープまたは還元TiO/ZnOの使用。
【請求項40】
TiOおよび/またはZnOによって悪影響を受ける有機UV日焼け止め剤を含有する日焼け止め組成物のUV吸収損失率を減らすための、請求項1〜6および10のいずれか1つで定義されたドープまたは還元TiO/ZnOの使用。
【請求項41】
TiOおよび/またはZnOによって劣化する1以上の成分を含有する有機UV日焼け止め組成物の効果を増大させる方法であって、請求項1〜6および10のいずれか1つで定義されるように、組成物中にドープまたは還元TiO/ZnOを導入することを包含する方法。
【請求項42】
TiOおよび/またはZnOによって悪影響を受ける有機UV日焼け止め剤を含有する日焼け止め配合物のUVスペクトルを拡大させる方法であって、請求項1〜6および10のいずれか1つで定義されるように、配合物中にドープTiOおよび/またはドープまたは還元ZnOを導入することを包含する方法。
【請求項43】
TiOおよび/またはZnOの存在によって毒性化合物を生成する構成要素を含有するUV日焼け止め組成物において、毒性化合物の生成を減らす方法であって、請求項1および4〜7のいずれか1つで定義されるように、ドープTiOおよび/またはドープまたは還元ZnOを導入することを包含する方法。
【請求項44】
組成物の1以上の成分に対するしてTiOおよび/またはZnOによる悪影響を減らす方法であって、請求項1〜6および10のいずれか1つで定義されるように、組成物中にドープまたは還元TiO/ZnOを導入することを包含する方法。

【公表番号】特表2007−516199(P2007−516199A)
【公表日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−518341(P2006−518341)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【国際出願番号】PCT/GB2004/002891
【国際公開番号】WO2005/002538
【国際公開日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(301062455)オクソニカ リミテッド (6)
【Fターム(参考)】