説明

釣り用衣服

【課題】ピンオンリールからの糸の繰り出しをスムーズに行うことができる釣り用衣服を提供する。
【解決手段】釣り用小物を支持するピンオンリール20を装着するためのピンオンリール装着片21が衣服本体に取り付けられた釣り用衣服であって、装着されたピンオンリール20の繰り出し糸の引き出しに伴って前記ピンオンリール装着片21が角度変更するように該ピンオンリール装着片21を前記衣服本体に揺動自在に取り付けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り用小物を支持するピンオンリールを装着するためのピンオンリール装着片が衣服本体に取り付けられた釣り用衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
上記ピンオンリールには、ケーシング内にバネにより巻き取り付勢された繰り出し糸が備えられている。そして、その繰り出し糸の繰り出し側先端に取り付けられたスナップに釣り用小物の一例であるラインカッターを取り付け、その取り付けられたラインカッターを身体の前方へ引き出すことにより、ケーシング内の繰り出し糸が繰り出されるようになっている。
ところで、上記ピンオンリールは、衣服に縫着されるピンオンリール装着片に装着されて使用される。そして、そのピンオンリール装着片は、それの外周縁の全周を衣服に縫着することにより固定されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−235225号公報(段落0012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成によれば、ピンオンリール装着片の外周縁の全周に渡って衣服に固定されているため、ピンオンリールからの糸の繰り出し方向が常に衣服と平行となる方向(上下方向)になっている。これに対してラインカッターを身体の前方へ引き出す際には、ピンオンリールからの糸の繰り出し方向が斜め前方に変更されてしまう。このため、ピンオンリールの出口部分に糸が接触しながら繰り出されることになり、糸の繰り出しをスムーズに行うことができない場合があった。
【0005】
本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、ピンオンリールからの糸の繰り出しをスムーズに行うことができる釣り用衣服を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の釣り用衣服は、前述の課題解決のために、釣り用小物を支持するピンオンリールを装着するためのピンオンリール装着片が衣服本体に取り付けられた釣り用衣服であって、装着されたピンオンリールの繰り出し糸の引き出しに伴って前記ピンオンリール装着片が角度変更するように該ピンオンリール装着片を前記衣服本体に揺動自在に取り付けたことを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、例えば釣り用小物を身体の前方へ移動させることにより糸が引き出されると、これに伴って、ピンオンリール装着片が揺動され、ピンオンリールの繰り出し糸の引き出し方向にピンオンリールの繰り出し方向が沿うようにピンオンリールを角度変更する。その結果、ピンオンリールの出口部分に糸が接触することがなく、ピンオンリールからの糸の繰り出しがスムーズに行える。
【0008】
また、本発明の釣り用衣服は、前記ピンオンリール装着片を取付部材に取り付け、その取付部材を前記衣服本体に取り付けることにより該ピンオンリール装着片を揺動自在に構成してもよい。
【発明の効果】
【0009】
ピンオンリールの繰り出し糸の引き出しに伴ってピンオンリール装着片が角度変更する構成にすることによって、ピンオンリールの繰り出し糸の引き出し方向に応じてピンオンリール装着片が角度変更することで、ピンオンリールの出口部分に糸が接触することがなく、ピンオンリールからの糸の繰り出しがスムーズに行える釣り用衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の釣り用衣服である釣り用上着の正面図である。
【図2】図1で示した釣り用上着のピンオンリール装着片にピンオンリールが取り付けられた状態を示す要部の正面図である。
【図3】図1で示した釣り用上着のピンオンリール装着片にピンオンリールが取り付けられた状態を示す要部の縦断面図である。
【図4】図3のピンオンリール装着片の角度が変更した状態を示す要部の縦断面図である。
【図5】釣り用衣服の前身頃の裏地にピンオンリール装着片が取り付けられている要部の背面図である。
【図6】図3のピンオンリール装着片を元に戻すための構成が備えられた他の実施形態を示す要部の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に、本発明の釣り用衣服の一例である袖なしの上着であるベストを示している。尚、釣り用衣服としては、袖のある上着であってもよい。このベストは、磯釣りの際に装着されるフローティングベストや、鮎釣りの際に装着される鮎釣り用ベスト等であり、ここでは、鮎釣り用ベストを示している。
【0012】
鮎釣り用ベストは、衣服本体を構成する前身頃1と、この前身頃1の左右両端に連結される後身頃2とを備えている。前身頃1は、左前身頃3Aと右前身頃3Bとからなり、これら左前身頃3A及び右前身頃3Bの左右方向中心部側端に備えさせたベスト着脱用スライドファスナー4を開閉操作することで身体にベストを着脱することができるようになっているが、他の構成であってもよい。つまり、ベスト着脱用スライドファスナー4にて着脱できる構成であるが、他の開閉手段を用いてもよいし、又、開閉手段を無くした構成、つまり頭から被って着るようなベストであってもよい。
【0013】
図1に示すように、前身頃1のうちの左前身頃3Aの上側部分に上ポケット5を備えるとともに、左前身頃3Aの下側部分に下ポケット6を備えている。又、右前身頃3Bの上側部分に上ポケット7を備えるとともに、右前身頃3Bの下側部分に左右方向において隙間のない状態で併設される左右一対の下ポケット8,9を備えているが、左右方向での幅を図のものよりも更に狭くして構成した3つ以上の下ポケットを右前身頃3B又は左前身頃3Aあるいは左右の前身頃3A,3Bの両方に備えさせて実施してもよい。又、前記ポケット5,6,7,8,9は、図の矢印で示すように下方から上方へ向かってスライドファスナー10,11,12,13,14のスライダー(図示せず)をそれに備えさせた摘み部10A,11A,12A,13A,14Aを持って移動操作することによって、ポケット5,6,7,8,9の開口を開放操作し、開放された状態のスライダーをそれに備えさせた摘み部10A,11A,12A,13A,14Aを持って上方から下方へ移動操作することによって、ポケット5,6,7,8,9の開口を閉塞操作するようになっている。尚、ポケット5,6,7,8,9の開口が閉じられた状態においてスライダー及び摘み部10A,11A,12A,13A,14Aのスライダー側部分を覆うためのカバー部材15,16,17,18,19を備えている。
【0014】
また、左前身頃3Aの上ポケット5よりも中心側(ベスト着脱用スライドファスナー4側)に、ピンオンリール20(図2参照)を装着するためのピンオンリール装着片21が設けられている。
【0015】
ピンオンリール装着片21は、合成樹脂等から形成され、略正方形状の本体部21Aと、この本体部21Aの中心部にドーム状に突出する突出部21Bと、この突出部21Bに後述するピンオンリール20の装着ピン20Pを上下方向又は左右方向に貫通させることができるように十字状に突出形成された針通し部21Cとを備えている。図3では、装着ピン20Pを針通し部21Cの上下の孔21a,21bに貫通させている。
【0016】
ピンオンリール20は、図2〜図4に示すように、ケーシング20A内にバネ(図示せず)により巻き取り付勢された繰り出し糸26を備え、その繰り出し糸26の先端にスナップ27を介して釣り用小物の一例であるラインカッター28が取り付けられている。釣り用小物は、ラインカッター28の他、ハサミやプライヤー、あるいは針外しやガン玉潰しなどであってもよい。また、それら釣り用小物の複数をピンオンリール20に装着して使用することもある。
【0017】
ピンオンリール装着片21は、図1〜図3に示すように、取付部材としての生地22に外周縁が縫着されている。この生地22は、ピンオンリール装着片21の左右幅と略同一の左右幅を有し、かつ、ピンオンリール装着片21の上下長さよりも長い寸法を有している。そして、生地22の下端にピンオンリール装着片21の下端を合わせた状態でピンオンリール装着片21の外周縁を縫着し、ピンオンリール装着片21の無い生地22の上端部22Aを左前身頃3Aの上生地23と下生地24との間に挟みこんでこれら3つの部材23,22A,24を縫着することによって、縫着部25を支点として生地22を介してピンオンリール装着片21が揺動できるように構成されている。尚、図1及び図2に示すように、取り付けられたピンオンリール装着片21の下方には、ピンオンリール20に連結されたラインカッター28を覆う横長状でゴム製などの伸縮部材でなる帯状片29の左右両端が縫着されている。
【0018】
従って、例えば釣り糸を切断する際に、ラインカッター28を身体の前方へ引き出すと、それに伴って、図4に示すようにピンオンリール20が取り付けられているピンオンリール装着片21が縫着部25を支点として生地22を介して衣服から離間する側に揺動するようになっている。その結果、ピンオンリール20の繰り出し糸26の繰り出し方向をピンオンリール20の引き出し方向に沿わせることができるため、繰り出し糸26をピンオンリール20からスムーズに繰り出すことができる。
【0019】
また、図5に示すように、左前身頃3Aの裏面の上側でベスト着脱用スライドファスナー4側に、前記と同一構成のピンオンリール装着片30が取り付けられている。このピンオンリール装着片30は、前記同様に生地31の下端にピンオンリール装着片30の下端を合わせた状態でピンオンリール装着片30の外周縁を縫着し、ピンオンリール装着片30の無い生地31の上端部31Aを丸めて、その丸めた上端部31Aを裏生地32に縫着することによって、縫着された上端部31Aを支点として生地31を介してピンオンリール装着片30が揺動できるように構成されている。また、左前身頃3Aの裏面には、ピンオンリール装着片30を覆う横長状でゴム製などの伸縮部材でなる帯状片33の左右両端が縫着されている。
【0020】
図5において、ピンオンリール装着片30に装着されたピンオンリール(図示せず)の繰り出し糸をピンオンリール装着片30の下方に形成された開口Kを介して左前身頃3Aの表側に通すことができるようになっている。開口Kは、衣服に形成された開口を閉塞するように左右一対の伸縮自在な生地34,35を開口の左右中央部で一部重複するように配置し、配置された生地34,35の外周縁を逢着することによって、縫着されていない生地34,35の遊端部同士を左右に押し広げることで形成されるようになっている。尚、ピンオンリール装着片30の上方には、ポケットの開口36Aを覆うカバー36を備えている。
【0021】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0022】
例えば、図6に示すように、ピンオンリール装着片21が常に前身頃の表面(元の位置)に戻るように、伸縮自在なゴムや樹脂あるいは生地等でなるシート部材37の一端37Aを生地22に縫着し、他端37Bを下生地24に縫着してもよい。このようにシート部材37を備えさせることによって、姿勢変更に伴ってピンオンリール装着片21がバタつくことがないようにしている。また、前記シート部材37は、ピンオンリール装着片21の角度が所定角度以上に変更されることを阻止するための阻止手段の機能も有している。つまり、ラインカッター28を身体の前方へ移動させると、それに伴って、ピンオンリール20が取り付けられているピンオンリール装着片21が縫着部25を支点として生地22を介して揺動することになるが、ピンオンリール装着片21の下生地24との角度が例えば45度(この角度は自由に変更できる)を越える角度にならないようにシート部材37が阻止し、不必要にピンオンリール装着片21が揺動されることがなく、適切な揺動を行わせることができる。尚、このシート部材37は一枚であってもよいし、複数枚であってもよい。
【0023】
前記実施形態では、ピンオンリール装着片21を上側の支点周りで揺動させるようにしたが、左右端の一方の縦(上下)軸周りで揺動させるように構成する、又は下側の支点周りで揺動させるように構成してもよい。
【0024】
また、前記実施形態では、ピンオンリール20をピンオンリール装着片21に装着ピン20Pを介して装着する構成にすることによって、装着ピン20P回り(縦軸回り)でピンオンリール20が多少回転可能になるため、ピンオンリール装着片21による揺動に加えて装着ピン20P回り(縦軸回り)での回動が増えることで、繰り出し糸26の引き出し方向に更に的確に対応することができ好ましいが、他の係止手段などを用いてピンオンリール20をピンオンリール装着片21に完全に固定してもよい。
【0025】
また、前記実施形態では、ピンオンリール装着片21を生地22を介して衣服本体に装着することによって、耐久面及び取付面の両方において有利になるが、ピンオンリール装着片21を衣服本体に直接装着するようにしてもよい。この場合、ピンオンリール装着片21の外周縁の一部を衣服本体に縫着して実施することになる。
【0026】
また、前記実施形態では、ピンオンリール装着片21を左前身頃3Aに取り付けたが、右前身頃3Bに取り付けてもよいし、左前身頃3A及び右前身頃3Bの両方に取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1…前身頃、2…後身頃、3A…左前身頃、3B…右前身頃、4…ベスト着脱用スライドファスナー、5,6,7,8,9…ポケット、10,11,12,13,14…スライドファスナー、10A,11A,12A,13A,14A…摘み部、15,16,17,18,19…カバー部材、20…ピンオンリール、20A…ケーシング、20P…装着ピン、21…ピンオンリール装着片、21A…本体部、21B…突出部、21C…部、21a,21b…孔、22…生地(取付部材)、22A…上端部、23…上生地、24…下生地、25…縫着部、26…糸、27…スナップ、28…ラインカッター、29…帯状片、30…ピンオンリール装着片、31…生地、31A…上端部、32…裏生地、33…帯状片、34,35…生地、36…カバー、36A…開口、37…シート部材、K…開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り用小物を支持するピンオンリールを装着するためのピンオンリール装着片が衣服本体に取り付けられた釣り用衣服であって、
装着されたピンオンリールの繰り出し糸の引き出しに伴って前記ピンオンリール装着片が角度変更するように該ピンオンリール装着片を前記衣服本体に揺動自在に取り付けたことを特徴とする釣り用衣服。
【請求項2】
前記ピンオンリール装着片を取付部材に取り付け、その取付部材を前記衣服本体に取り付けることにより該ピンオンリール装着片を揺動自在に構成したことを特徴とする請求項1に記載の釣り用衣服。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−142853(P2011−142853A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5596(P2010−5596)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】