説明

釣り竿

【課題】超弾性材料で構成された芯材を用いた穂先部において、クラックを起こし難い被覆層を有する釣り竿を提供すること。
【解決手段】穂先竿の穂先部21は、穂先部21の形状を有する芯材22と、この芯材22の表面上に設けられた被覆層23と、穂先部21の外周面上に設けられており、釣り糸を案内する複数のガイド24とを有する。被覆層23は、芯材22の弾性変形領域内における変形時の伸び率と同等又はそれ以上である材料で構成される。ガイド24は、固定部材である固定糸24aにより被覆層23に固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釣り竿に関し、特に超弾性合金を用いた穂先部を備えた釣り竿に関する。
【背景技術】
【0002】
カワハギ釣り用の釣り竿は、穂先が局部的に曲がるという穂先に独特の調子が必要である。従来のカワハギ釣り用の釣り竿としては、穂先部の芯材をガラスやカーボンで構成したものがあった。しかしながら、例えば穂先部の芯材をガラスで構成した釣り竿では、上述した局部的に曲がって独特の調子を出すことはできるが、局部的な曲げを繰り返すことにより折れ易いという問題があった。この問題を解決するために、穂先部の芯材を超弾性材料で構成した釣り竿が開発された。
【0003】
【特許文献1】特開2001−37378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような釣り竿において、視認性を良くするために穂先部の芯材上に塗膜のような被覆層を形成する。しかしながら、この被覆層は、超弾性材料で構成された芯材と異なる伸びを示す。すなわち、芯材は超弾性材料で構成されているので伸び率が相対的に大きいが、被覆層は通常の塗料で構成されるため伸び率が相対的に小さい。したがって、このような釣り竿の穂先が局部的に曲がる際に、芯材の伸びに被覆層が追従できずにクラックを起こすことがある。
【0005】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、超弾性材料で構成された芯材を用いた穂先部において、視認性が良く、クラックを起こし難い被覆層を有する釣り竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の釣り竿は、穂先部を備えた釣り竿であって、前記穂先部は、超弾性材料で構成された穂先芯材と、前記穂先芯材の表面上に設けられており、前記穂先芯材の弾性変形領域内における変形時の伸び率と同等又はそれ以上である材料で構成された被覆層と、を具備することを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、芯材が超弾性材料で構成されているので、穂先が局部的に曲がるという穂先に独特の調子を発揮することができる。また、穂先芯材の表面上に設けられた被覆層が芯材の弾性変形領域内における変形時の伸び率と同等又はそれ以上である材料で構成されているので、芯材の曲げに追従することができ、被覆層のクラックを防止することができる。これにより、芯材を保護することができる。
【0008】
本発明の釣り竿においては、前記穂先芯材は、外径が0.5mm〜1.2mmの中実材であることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、弾性変形領域(加える力に比例して変形する性質を示す領域)が大きいので、過度の曲がりに対しても細径の部分の被覆層にクラックが発生し難くなる。
【0010】
本発明の釣り竿においては、前記被覆層は、20μmから200μmの厚さを有し、前記穂先部の先端から200mmの長さの範囲内に少なくとも部分的に設けられていることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、所定の範囲に適当な厚さの被覆層を設けるので、大きく変形する部分に厚い塗膜などを被覆層として形成しても被覆層にクラックが発生し難くなる。
【0012】
本発明の釣り竿においては、前記被覆層は、蛍光材料又は蓄光材料が混入されていることが好ましい。
【0013】
この構成によれば、釣り竿の穂先部における装飾性が向上すると共に、視認性が向上し、アタリを感知し易くなる。
【0014】
本発明の釣り竿においては、前記穂先部は前記被覆層に取り付けられた複数のガイドを有し、前記ガイドは前記被覆層に食い込んだ状態で前記ガイドを固定する固定部材を有し、前記被覆層は前記複数のガイドの領域に延在することが好ましい。
【0015】
この構成によれば、ガイドが被覆層に食い込んだ状態になっているので、ガイドが緩み難くなると共に、ガイドを固定する固定糸やテープなどの段差を小さくすることができ、穂先部の平滑性を向上させることができる。また、ガイドの固定力が向上するので、接着剤を使用してガイドを被覆層に圧着固定することが可能となる。このように接着剤でガイドを固定することにより、ガイドが被覆層から外れ難くなる。さらに、接着剤でガイドを固定する方法は、工程の削減にも繋がる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、穂先芯材の表面上に設けられた被覆層が芯材の弾性変形領域内における変形時の伸び率と同等又はそれ以上である材料で構成されているので、超弾性材料で構成された芯材を用いた穂先部において、クラックを起こし難い被覆層を有する釣り竿を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係る釣り竿の全体を示す図である。図中1は釣り竿を示す。この釣り竿1は、カワハギ釣り用の釣り竿であり、先端から穂先竿、中竿、及び元竿を含む竿体11と、元竿に連接するリール取り付け部12と、リール取り付け部12に連接する前方グリップ13と、前方グリップ13よりも手元側に位置する後方グリップ14とから主に構成されている。リール取り付け部12のリール載置面12aには、例えばリール(図示せず)が固定具15により装着される。
【0018】
図2は、図1に示す釣り竿の穂先部(図1中のA部)を示す部分拡大図である。穂先竿の穂先部21は、穂先部21の形状を有する芯材22と、この芯材22の表面上に設けられた被覆層23と、穂先部21の外周面上に設けられており、釣り糸を案内する複数のガイド24とを有する。
【0019】
芯材22は超弾性材料で構成されている。超弾性材料としては、超弾性合金や超弾性樹脂を挙げることができ、少なくとも3%の伸び率、好ましくは5%〜8%の伸び率を有するものが好ましい。具体的には、Ni−Ti系合金、Ni−Ti−Fe系合金、Ni−Ti−Cu系合金、Ni−Ti−Cr系合金などを用いることができる。ここで、本発明において伸び率とは、材料の引張試験のときの材料の伸びる割合のことで変形前の長さをL0、変形後の長さをL1としたときに(L1−L0)/L0×100(%)で示される値をいう。
【0020】
芯材22は中実材であり、外径が0.5mm〜1.2mmである。このような外径であると、弾性変形領域(加える力に比例して変形する性質を示す領域)が大きいので、過度の曲がりに対しても細径の部分の被覆層にクラックが発生し難くなる。ここで伸び率とクラックの関係を説明する。まず、芯材の外径と伸び率と曲率半径の関係を近似式で表すと、曲率半径≒芯材の半径/伸び率となる。例えば、芯材の外径が0.6mmで伸び率を6%とすると曲率半径は5mmとなる。すなわち、後述する被覆層23は、曲がりの頂点位置の外径と芯材の伸び率によって曲率半径が求められ、その曲率半径よりも小さな曲率半径まで弾性変形領域内で曲げた場合にクラックが発生しない材料で構成されているということである。なお、本実施の形態では、芯材22が中実材である場合について説明しているが、本発明においては、芯材22が中空材であっても良い。
【0021】
図3は、図2に示す穂先部の部分拡大図である。芯材22の表面上には、被覆層23が形成されている。この被覆層23は、芯材22を保護すると共に、装飾層として釣り竿の装飾性を向上させるために設けられ、図2及び図3に示すように、複数のガイド24の領域に延在するように設けられている。このように複数のガイド24間にまたがるように被覆層23を設けることにより、穂先部21の撓んでも弾性のある被覆層23が撓みを吸収することができ、被覆層23における撓みによるクラックの発生を防止することができる。また、このように複数のガイド24間にまたがるように被覆層23を設けることにより、ガイド24の固定力が向上すると共に、視認性が向上する。この場合、被覆層23は、少なくとも30mmの長さの範囲にわたって設ける。
【0022】
被覆層23は20μmから200μm、好ましくは30μmから160μmの厚さを有する。また、被覆層23は、穂先部の先端から200mmの長さの範囲内に少なくとも部分的(一部又は全体)に設けられる。このように、所定の範囲に適当な厚さの被覆層を設けることにより、大きく変形する部分に厚い塗膜などを被覆層として形成しても被覆層にクラックが発生し難くなる。被覆層23は、芯材22の弾性変形領域内における変形時の伸び率と同等又はそれ以上である材料で構成される。特に、これらの材料の伸び率は少なくとも超弾性合金の弾性変形領域内における変形時の伸びよりも大きいことが好ましい。具体的には、被覆層23は、伸び率が少なくとも6%、好ましくは少なくとも10%である材料で構成されていることが好ましい。このような材料としては、例えばゴム系又はウレタン系の材料を挙げることができる。被覆層23の形態としては、チューブや塗膜などを挙げることができる。
【0023】
このように、芯材22の弾性変形領域内における変形時の伸び率と同等又はそれ以上である材料で構成された被覆層23を芯材22上に有することにより、芯材22が変形したときに、被覆層23がその変形に追従して変形することができる。これにより、被覆層23の外面(本構成においてガイド24側)におけるクラックの発生を防止することができる。したがって、芯材22の弾性変形領域内における変形時の伸び率と、被覆層23を構成する材料の伸び率とを同等又は被覆層23の伸び率を大きくするように設定することにより本発明の効果が発揮される。
【0024】
被覆層23には、蛍光材料又は蓄光材料が混入されていることが好ましい。これにより、穂先部21の装飾性が向上すると共に、視認性が向上し、アタリを感知し易くなる。蛍光材料や蓄光材料を含む被覆層23は、視認性を考慮すると、蛍光材料や蓄光材料を30重量%以上含有する透明材料(例えば透明塗料)で構成されることが好ましい。蛍光材料としては、ZnSなどの蛍光顔料などを挙げることができ、蓄光材料としては、Al23、BaCO3、SrCl2などの蓄光顔料などを挙げることができる。
【0025】
なお、光が際立つように、芯材22と被覆層23との間に白色の塗膜を設けても良い。また、芯材22の表面上に蛍光材料や蓄光材料などを用いた装飾層を設けておき、その上に透明の被覆層23を設けて外部から装飾層を視認できるような構成にしても良い。また、被覆層23上には、他の層を設けないことが好ましい。
【0026】
ガイド24は、図3に示すように、被覆層23上に設けられている。それぞれのガイド24は、固定部材により被覆層23に固定されている。図3においては、固定部材として固定糸24aを用い、ガイド24を被覆層23上に載置し、ガイドの載置部24b上に固定糸24aを巻回することによりガイド24を被覆層23上に固定する。この固定糸24aの材料としては、綿、ナイロン(R)、ビニロン、ポリエステル、絹などを用いることができる。例えば、固定糸として綿糸を用いる場合、綿糸のサイズは、0.1mm〜0.23mm程度の外径を有することが好ましい。これは、100番〜30番程度に相当する。特に、外径が約0.17mmで50番(11.81テックス)であることが好ましい
【0027】
上記実施の形態においては、固定部材として固定糸24aを用いた場合について説明しているが、本発明においては、固定部材としてテープを用いても良い。この場合、テープとしては、合成樹脂テープ、布粘着テープ、プリプレグテープなどを用いることができる。これらのテープは、0.05mm〜0.3mmの厚さで、約1mm〜10mmの幅を有することが好ましい。また、上記実施の形態においては、ガイド24として、片側に載置部24bを有するものを用いた場合について説明しているが、本発明においては、両側に載置部24bを有するものを用いても良い。
【0028】
ガイド24は、固定部材が被覆層23に食い込んだ状態で固定部材により固定されることが好ましい。図4は、図2に示す穂先部へのガイドの取り付け状態を説明するための図である。図4から分かるように、ガイド24の固定部材である載置部24bが被覆層23に食い込んでいる。すなわち、載置部24bの下の被覆層は薄肉層23aになっている。このように、ガイド24の載置部24bが被覆層23に食い込んだ状態になると、ガイド24が緩み難くなると共に、固定糸24aを巻回した部分の段差を小さくすることができ、穂先部の平滑性を向上させることができる。なお、ガイド24の載置部24bの反対側(図中B領域)に枕糸(図示せず)を巻回しても良い。これにより、ガイド24の抜けを防止することができる。
【0029】
このような効果は、ガイド構成が異なっていても同様に発揮できる。図5は、図2に示す穂先部へのガイドの他の取り付け状態を説明するための図である。このガイド25は、固定部材である本体部25aと、本体部25aに取り付けられたステー部25bと、ステー部25bに取り付けられたリング部25cとから主に構成されている。本体部25aは、被覆層23の周囲にわたって設けられている。
【0030】
図5から分かるように、ガイド25の本体部25aが被覆層23に食い込んでいる。すなわち、本体部25aの下の被覆層は薄肉層23aになっている。このように、ガイド25の本体部25aが被覆層23に食い込んだ状態になると、ガイド25の固定力が向上する。これにより、接着剤を使用して圧着固定することが可能となる。このように接着剤でガイドを固定することにより、ガイドが被覆層から外れ難くなる。さらに、接着剤でガイドを固定する方法は、工程の削減にも繋がる。なお、ガイド25は、接着剤を用いて被覆層23に接着せずに、通常の移動ガイドとして使用しても良い。
【0031】
上記構成を有する釣り竿は、芯材が超弾性材料で構成されているので、穂先が局部的に曲がるという穂先に独特の調子を発揮することができる。また、穂先芯材の表面上に設けられた被覆層が芯材の弾性変形領域内における変形時の伸び率と同等又はそれ以上である材料で構成されているので、芯材の曲げに追従することができ、大きな変形を受けても被覆層の剥離やクラックを防止することができる。これにより、芯材を保護することができる。
【0032】
本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態で説明した数値や材質については特に制限はなく、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施の形態に係る釣り竿の全体を示す図である。
【図2】図1に示す釣り竿の穂先部(図1中のA部)を示す部分拡大図である。
【図3】図2に示す穂先部の部分拡大図である。
【図4】図2に示す穂先部へのガイドの取り付け状態を説明するための図である。
【図5】図2に示す穂先部へのガイドの他の取り付け状態を説明するための図である。
【符号の説明】
【0034】
1 釣り竿
11 竿体
12 リール取り付け部
13 前方グリップ、
14 後方グリップ
15 固定具
21 穂先部
22 芯材
23 被覆層
23a 薄肉層
24,25 ガイド
24a 固定糸
24b 載置部
25a 本体部
25b ステー部
25c リング部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穂先部を備えた釣り竿であって、前記穂先部は、超弾性材料で構成された穂先芯材と、前記穂先芯材の表面上に設けられており、前記穂先芯材の弾性変形領域内における変形時の伸び率と同等又はそれ以上である材料で構成された被覆層と、を具備することを特徴とする釣り竿。
【請求項2】
前記穂先芯材は、外径が0.5mm〜1.2mmの中実材であることを特徴とする請求項1記載の釣り竿。
【請求項3】
前記被覆層は、20μmから200μmの厚さを有し、前記穂先部の先端から200mmの長さの範囲内に少なくとも部分的に設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の釣り竿。
【請求項4】
前記被覆層は、蛍光材料又は蓄光材料が混入されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の釣り竿。
【請求項5】
前記穂先部は前記被覆層に取り付けられた複数のガイドを有し、前記ガイドは前記被覆層に食い込んだ状態で前記ガイドを固定する固定部材を有し、前記被覆層は前記複数のガイドの領域に延在することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の釣り竿。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−14608(P2006−14608A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−192952(P2004−192952)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】