説明

釣り竿

【課題】糸取付部材と保持用ホルダーとに簡単な改良を施すことで、製作負担を大きくすることなく、糸取付部材をガタツキなく、回転できる釣り竿を提供する。
【解決手段】釣り糸3が取り付けられる糸取付部4Aとその糸取付部4Aを支持する基端部4Cとを備えた糸取付部材4の糸取付部4Aを、穂先竿2の竿先端に取り付け固定してある保持用ホルダー5の挿通孔5Aに挿通支持させて、糸取付部材4を基端部4Cの軸線回りで回動自在に支持する。保持用ホルダー5内において糸取付部材4の基端部4Cと穂先竿2の竿先端との間に硬質のボール6を装入する。硬質のボール6を永久磁石で構成するとともに、糸取付部材4の基端部4Cを磁性体で構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り糸が取り付けられる糸取付部とその糸取付部を支持する基端部とを備えた糸取付部材の前記糸取付部を、穂先竿の竿先端に取り付け固定してある保持用ホルダーの挿通孔に挿通支持させて、前記糸取付部材を前記基端部の軸線回りで回動自在に支持してある釣り竿に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように、糸取付部材を、保持用ホルダーに挿通孔を介して取り付けている釣り竿においては、糸取付部材を保持用ホルダーの軸線を中心として回転を自在に行わせる為に、挿通孔とその挿通孔に挿通支持される糸取付部材の対応する部分との間には、間隙を設けてある (例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−289010号公報(段落番号〔0025〕〔0026〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
その為に、糸取付部材がガタツキを持って回転するところから、そのことが釣り糸を通して針係りした魚に影響を与えたり、釣り竿を通して釣り人の手に伝わり、釣り操作の趣を損ねることとなっていた。
このような場合に、挿通孔の孔径を糸取付部材の前記対応する部分の軸径と十分近接する径に製作して、殆ど間隙のない状態に切り換えることが考えられる。そうすると、却って、糸取付部材の回転に円滑さを欠くこととなる虞があるとともに、製作工程が増大し、製作精度として高度のものが要求されることとなるという製作負担が大きくなる虞がある。
【0004】
本発明の目的は、糸取付部材と保持用ホルダーとに簡単な改良を施すことで、製作負担を大きくすることなく、糸取付部材をガタツキなく、回転できる釣り竿を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
〔構成〕
請求項1に記載の本願発明の特徴構成は、前記保持用ホルダー内において前記糸取付部材の基端部と前記穂先竿の竿先端との間に転がり軸受体を装入し、前記転がり軸受体に永久磁石部を備えるとともに、前記糸取付部材の基端部に磁性体部を備えて構成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0006】
〔作用〕
つまり、転がり軸受体に備えた永久磁石部で糸取付部材の基端部を磁化して、糸取付部材を磁力で転がり軸受体に引き寄せ当接させることによって、糸取付部材の姿勢が安定し、挿通孔との間に間隙があっても、ガタツキなく糸取付部材を回転させることができる。それによって、糸取付部材の姿勢が安定するので、挿通孔とその挿通孔に挿通支持される糸取付部材の対応する部分との間隙を必要以上に狭めることはなく、それによって製作工程の増大、精密な製作技術を必要とすることなく、ガタツキのない糸取付部材の姿勢を確保できた。
【0007】
〔効果〕
上記したように、ガタツキを抑制できたので、そのガタツキが釣り糸を通して針係りした魚に影響を与えたり、釣り竿を通して釣り人の手に伝わり釣り操作の趣を損ねるといったこと抑制できる釣り竿を提供できるに至った。
【0008】
〔構成〕
本発明のうちの請求項2に記載の発明では、上記請求項1に記載の発明において、前記保持用ホルダーに磁性体部を装備してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0009】
〔作用効果〕
保持用ホルダーも磁化されるので、糸取付部材が保持用ホルダーの挿通孔の内周面に当接することとなる。これによって、糸取付部材における保持用ホルダーの挿通孔に挿通される基端部は、径方向にあってはその挿通孔に当接して支持されとともに、軸線方向にあっては転がり軸受体に当接して、姿勢が確保されている。
これによって、糸取付部材は転がり軸受体に当接するだけの場合に比べて更に姿勢が安定し、ガタツキなく回転可能である。
また、糸取付部材の基端部が保持用ホルダーの挿通孔の内周面に当接する状態は、拡大視すると、基端部が挿通孔の全周に当接しているわけではなく、挿通孔の内周面の周方向における一位相部分で接触しているだけなので、回転抵抗も全周に亘って接触している場合に比べて大きくはなく、糸取付部材の回転に与える影響は少ない。
【0010】
〔構成〕
請求項3に係る本願発明の特徴構成は、上記請求項1又は2記載の発明において、前記保持用ホルダー内において、前記転がり軸受体と穂先竿の竿先端との間にストッパ体を設け、前記ストッパ体に永久磁石部を備えてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0011】
〔作用効果〕
ストッパ体と転がり軸受体とで磁化線を発生することができるので、転がり軸受体単独で糸取付部材を磁化する場合に比べて強力に磁化力を及ぼすことができ、糸取付部材の姿勢安定化に一層寄与できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
図1には鮎竿や渓流竿などの釣り竿1が示されており、この釣り竿1は、先細りの中実棒状に形成した穂先竿2の先端部に、釣り糸3が取り付けられる糸取付部材4を、釣り竿1の軸線X周りに相対回動可能に備えて構成されている。
【0013】
図示は省略するが、穂先竿2は、軸線に沿って束ねたガラス強化繊維の束(500本〜1000本)に、熱硬化性樹脂を含浸させた後、ダイスより引き抜き、所定長さに裁断して中実棒状に形成し、その先端側ほど細くするための研削加工などを施して形成されている。
【0014】
ところで、穂先竿2の素材には、炭素繊維などを採用することも可能であるが、ここでは炭素繊維などに比較して弾性率が低く、柔軟性及び靱性の高いガラス繊維を採用してある。
【0015】
図1〜3に示すように、糸取付部材4は、釣り糸3が結び付けられる小径円柱状の糸取付部4Aと、この糸取付部4Aからの釣り糸3の抜け落ちを防止する一対の抜止部4Bと、穂先竿2に連結される大径円柱状の基端部4Cとを有するように形成されており、その基端部4Cが、樹脂などで筒状に形成された保持用ホルダー5を介して穂先竿2に連結されている。
【0016】
糸取付部材4は、磁性体部を備える必要があり、全体を磁性材料で構成することも可能であるが、糸取付部材4の一部としての基端部のみに磁性体を利用して構成してもよい。磁性材料としては、酸化鉄や酸化クロム等が使用できる。
ここで、磁性体とは、他物からの磁力を受けて磁性を帯びる物体をいい、狭義には強磁性体をいう。
【0017】
図1に示すように、保持用ホルダー5は、その先端部に、糸取付部材4の糸取付部4Aが挿通される挿通孔5Aと、糸取付部材4の基端部4Cを抜け止め保持する保持部5Bとを備え、その先端部に糸取付部材4の基端部4Cを内嵌させた状態で、その竿元側を穂先竿2の先端側に外嵌した後、その嵌合部の所定箇所が、穂先竿2に形成した一対の凹部2Aにカシメ処理によって係入されることで、穂先竿2の先端部に糸取付部材4を釣り竿1の軸線X周りに相対回動可能に連結保持する。
保持用ホルダー5としては、アルミニュウムやチタン等の軽量金属が使用される。
【0018】
保持用ホルダー5の内部において、穂先竿2の先端と糸取付部材4の基端部4Cとの間には、糸取付部材4の回転抵抗を低減させる転がり軸受体としての硬質のボール6が介装されている。
硬質のボール6は、永久磁石部を備える必要があり、全体を永久磁石材料で構成することも可能であるが、ボール6の外周面の一部に永久磁石を嵌め込み、外周面の他の部分には、耐摩耗性の高い硬質材料で構成してもよい。永久磁性材料としては、アルニコ、フェライト、ネオジュウム磁石等が使用できる。
ここで、永久磁石とは、外部から磁場や電流の供給を受けることなく磁石としての性質を長期に亘って保持し続ける物体をいう。
【0019】
図1に示すように、ボール6と穂先竿2の竿先端との間には、ボール6を受け止めるストッパ体7が設けてあり、このストッパ体7に永久磁石部を備えてもよい。これによって、ボール6とストッパ体7との磁力で糸取付部材4を引き付けるので、糸取付部材4のガタツキを強力に抑えることができる。
図1及び図2に示すように、保持用ホルダー5の保持部5Bの内側面と糸取付部材4の基端部4Cとの間に、滑りワッシャ11が設けてあり、摩擦抵抗の低減を図る構成を採っている。
【0020】
保持用ホルダー5に磁性体部を備えてもよい。つまり、保持用ホルダー5に磁性体部を備えると、ボール6によって磁化された糸取付部材4からの磁力の影響を受けて、糸取付部材4を保持している保持用ホルダー5が磁化される。これによって、糸取付部材4が保持用ホルダー5の挿通孔5Aの内周面に当接され、糸取付部材4のガタツキが一層抑制される。
【0021】
上記のような構成によって、硬質のボール6によって糸取付部材4が引き付けられるので、糸取付部材4と保持用ホルダー5の挿通孔5Aとの間に形成されている間隙に起因する糸取付部材4のガタツキが抑制される。この場合には、硬質のボール6と糸取付部材4の糸取付部4Aとが軸線方向に沿った位置で当接するだけであるので、糸取付部材4が軸線X周りで回転する際に抵抗が大きくならず、釣り操作時において糸取付部材4の回転機能が阻害されていないので、釣り糸3の絡みつきを抑制する機能を維持する。
【0022】
〔第2実施形態〕
ここでは、糸取付部材4として、リリアン製の糸取付部4Aを採用したものについて説明する。図3に示すように、糸取付部材4を、リリアン製の糸取付部4Aと、保持用ホルダー5内に収納された円盤状の基端部4Cと、基端部4Cから竿先側に向けて延出された棒状の連結部4Dとで構成し、連結部4Dの先端部分に膨出部4dを形成して、糸取付部4Aを膨出部4dに外嵌接着固定してある。
【0023】
基端部4Cと保持用ホルダー5の保持部5Bの内周壁面との間には、Oリング等の摩擦低減部材9が装着してあり、糸取付部4Aが基端部4Cの軸線回りで円滑に回転できるように構成してある。
尚、図示するように、糸取付部材4の基端部4Cとストッパ体7との間に、第1実施形態と同様の硬質のボール6を設けてもよい。そして、このボール6に永久磁石部を装備するようにしてもよい。これによって、糸取付部材4のガタツキを抑制することができる。
【0024】
〔その他の実施形態〕
糸取付部材4のガタツキのない別の構成について説明する。図2に示すように、糸取付部材4を保持用ホルダー5に回転自在に支持し、糸取付部材4の基端部4Cを受ける硬質のボール6を設ける点は、第1実施形態と同様である。
そしてここでは、ボール6と竿元側に設けたストッパ体7との間に、付勢バネ10を設けて、ボール6を糸取付部材4に当接する構成を採っている。このように、付勢バネ10の付勢力を糸取付部材4の基端部4Cの軸線X上に作用させることができるので、糸取付部材4の軸線X周りでの回転作動を抑制することが少なく、かつ、基端部4Cと挿通孔5Aとの間隙に起因するガタツキを抑制できる。
【0025】
〔別実施形態〕
〔1〕 転がり軸受体6としては、必ずしも、球状のボールでなくてもよく、ローラを周方向に複数個配置したものであってもよい。
〔2〕 転がり軸受体6に永久磁石部を備える構成としては、転がり軸受体の全部を永久磁石で構成してもよく、或いは、一部に永久磁石を埋め込む構成を採ってもよい。同様の構成は、ストッパ体7に永久磁石部を備える場合も同様である。
〔3〕 糸取付部材4に磁性体部を備える構成としては、糸取付部材4の全部を磁性体で構成してもよく、或いは、一部に磁性体を埋め込む構成を採ってもよい。同様の構成は、保持用ホルダー5に磁性体部を備える場合も同様である。
〔4〕 ストッパ体7は特になくてもよく、転がり軸受体6を直接穂先竿2の竿先端に当接させる構成を採ってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】糸取付部材を穂先竿の先端部に取り付け、転がり軸受体を永久磁石で構成した状態を示す縦断側面図
【図2】糸取付部材を穂先竿の先端部に取り付け、転がり軸受体とストッパ体との間に付勢バネを介在させた状態を示す縦断側面図
【図3】糸取付部材としてリリアンを使用したものに、本願発明を適用した状態を示す縦断側面図
【符号の説明】
【0027】
2 穂先竿
3 釣り糸
4 糸取付部材
4A 糸付部
4C 基端部
5 保持用ホルダー
5A 挿通孔
6 硬質のボール(転がり軸受体)
7 ストッパ体
X 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り糸が取り付けられる糸取付部とその糸取付部を支持する基端部とを備えた糸取付部材の前記基端部を、穂先竿の竿先端に取り付け固定してある保持用ホルダーに挿通支持させて、前記糸取付部材を前記基端部の軸線回りで回動自在に支持してある釣り竿であって、
前記保持用ホルダー内において前記糸取付部材の基端部と前記穂先竿の竿先端との間に転がり軸受体を装入し、
前記転がり軸受体に永久磁石部を備えるとともに、前記糸取付部材の基端部に磁性体部を備えて構成してある釣り竿。
【請求項2】
前記保持用ホルダーに磁性体部を装備してある請求項1記載の釣り竿。
【請求項3】
前記保持用ホルダー内において、前記転がり軸受体と穂先竿の竿先端との間にストッパ体を設け、前記ストッパ体に永久磁石部を備えてある請求項1又は2記載の釣り竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−61(P2010−61A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163385(P2008−163385)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】