説明

釣用ウェア

【課題】 雨天時等においても、長時間快適に装着し得る釣用ウェアの提供。
【解決手段】 表地材と裏地材との間に防水樹脂材が積層された三層構造の防水性布部材と、表地材の裏側に防水樹脂材が積層された二層構造の防水性布部材とから構成され、三層構造の防水性布部材および二層構造の防水性布部材どうしをその面方向に並べて端部どうしを縫着して形成されており、二層構造の防水性布部材が裾部に配置されている構成の釣用ウェア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣行の際に着用するレインスーツなどの釣用ウェアに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の釣用ウェア(レインスーツ)として、表地材と裏地材との間に防水樹脂シートが積層された三層構造の防水性布部材を用いてウェア本体を形成しているものがある(例えば下記特許文献1参照)。
このような釣用ウェアにおいて、防水性布部材を、裏地材を設けて構成することにより、防寒性や強度を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−221711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般的に裏地材は吸水性を有している。このため、水が袖口や裾口からウェア本体に浸入すると裏地材に染込んでしまい、この場合は染込んだ水のために着用者に不快感を与えることがある、といった課題がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み、雨天時等においても、長時間快適に装着し得る釣用ウェアの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の釣用ウェアは、表地材と裏地材との間に防水樹脂材が積層された三層構造の防水性布部材と、表地材の裏側に防水樹脂材が積層された二層構造の防水性布部材とから構成され、三層構造の防水性布部材および二層構造の防水性布部材どうしをその面方向に並べて端部どうしを縫着して形成されており、前記二層構造の防水性布部材が裾部に配置されていることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、裾部では、表地材の裏側に積層された防水樹脂材によって、裾部を構成する防水性布部材の表地材の裏側から水が染込むのが効果的に抑制されるから、水が裾部から入り易い環境下で釣用ウェアを着用者が着用しても、着用者は釣用ウェアを快適に着用し続けることができる。
【0008】
本発明の釣用ウェアでは、二層構造の防水性布部材が袖口部に配置されていることを特徴としている。
上記構成によれば、袖口部では、表地材の裏側に積層された防水樹脂材によって、袖口部を構成する防水性布部材の表地材の裏側から水が染込むのが効果的に抑制されるから、水が袖口部から入り易い環境下で釣用ウェアを着用者が着用しても、着用者は釣用ウェアを快適に着用し続けることができる。
【0009】
本発明の釣用ウェアは、上衣およびズボンから構成されており、二層構造の防水性布部材が上衣の裾部およびズボンの裾部(裾口)にそれぞれ配置されていることを特徴としている。
上記構成によれば、上衣においてはその裾部、ズボンにおいてはその裾部(裾口)での水の染込みが効果的に抑制されるから、着用者は釣用ウェアを快適に着用し続けることができる。
【0010】
本発明の釣用ウェアでは、防水樹脂材は透湿防水性生地であり、表地材が撥水加工された撥水性生地であることを特徴としている。
上記構成によれば、着用者の汗は透湿防水性生地および撥水性生地を通過して外部へ排出され、しかも撥水性生地によって水の浸入が効果的に抑制されるから、着用者は釣用ウェアを快適に着用し続けることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の釣用ウェアでは、二層構造の防水性布部材が裾部に配置されているから、裾部では、表地材の裏側に積層された防水樹脂材によって、裾部を構成する防水性布部材の表地材の裏側から水が染込むのが効果的に抑制され、水が裾部から入り易い環境下で釣用ウェアを着用者が着用しても、着用者は釣用ウェアを快適に着用し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態を示す釣用ウェアのうち上衣を示す正面側からの斜視図
【図2】同じく背面側からの斜視図
【図3】同じく前身ごろを開いて裏側を露出させた状態の正面側からの斜視図
【図4】同じく釣用ウェアのうちのズボンであって、裏返した状態の正面側からの斜視図
【図5】同じくズボンであって、裏返した状態の背面側からの斜視図
【図6】同じくウェア本体を構成する生地の拡大断面図であって、(a)は三層構造の防水性布部材の断面図、(b)は二層構造の防水性布部材の断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る釣用ウェアを、図面に基づいて説明する。
図1は釣用ウェアのうち上衣を示す正面側からの斜視図、図2は背面側からの斜視図、図3は前身ごろを開いて裏側を露出させた状態の正面側からの斜視図、図4は釣用ウェアのうちのズボンであって、裏返した状態の正面側からの斜視図、図5は裏返した状態の背面側からの斜視図、図6はウェア本体を構成する生地の拡大断面図であって、(a)は三層構造の防水性布部材の断面図、(b)は二層構造の防水性布部材の断面図をそれぞれ示す。
これらの図に示すように、釣用ウェア1は上衣2とズボン3から構成されている。
【0014】
まず上衣2について、図1ないし図3を中心に説明する。上衣2は上衣本体4を有する。上衣本体4は左右の前身ごろ5,6、後身ごろ10、左右の袖9、ネック部(カラー)9を有する。
左右の前身ごろ5,6は合せ目13,14に丈方向に沿うようスライドファスナ15のテープ部が縫着されている。また、左前身ごろ5,6に前立17が設けられている。この前立17はスライドファスナ15を閉じて合せ目13,14どうしを閉じた状態でスライドファスナ15,16の前側に位置する。これにより、スライドファスナ15の合せ目からの水の浸入を抑制するとともに、防寒の機能を有する。
【0015】
左右の前身ごろ5,6、後身ごろ10の裾端18に沿ってゴム紐(調節紐)20が通されており、ゴム紐20の途中部分が裾端18から引出されて、引出された部分がスライドストッパ21を通過するよう構成されている。
これによって、左右の前身ごろ5,6の合せ目13,14どうしを閉じた状態で、裾端18を着用者の胴周りにフィットさせ得るよう構成されている。
【0016】
左右の前身ごろ5,6および後身ごろ10は、第1防水性布部材25Aと第2防水性布部材26Aとの組合わせから構成されている。
第1防水性布部材25Aは、図6(a)に示すように、表地材27と裏地材28との間に防水樹脂材29が積層された三層構造の防水性布部材である。第2防水性布部材26Aは、図6(b)に示すように、表地材27の裏側に防水樹脂材29が積層された二層構造の防水性布部材である。また、防水樹脂材29は透湿防水性生地であり、表地材27は撥水加工された撥水性生地である。
【0017】
左右の前身ごろ5,6および後身ごろ10において、裾部35A(丈方向下部)は第2防水性布部材26Aによって構成されており、その上部(着用者の背や胸に相当する領域)は、第2防水性布部材26Aと互いに面方向(丈方向)に並べられた第1防水性布部材25Aによって構成されている。
第1防水性布部材25Aと第2防水性布部材26Aとは、左右の前身ごろ5,6および後身ごろ10の丈方向途中部分の縫着部39によって一体化されている。
【0018】
さらに具体的に、後身ごろ10における第2防水性布部材26Aの丈方向高さに比べて、左右の前身ごろ5,6における第2防水性布部材26Aの丈方向高さが高く設定されている。後身ごろ10における第2防水性布部材26Aと左右の前身ごろ5,6における第2防水性布部材26Aとは、丈方向に沿う段付部36によって連続するよう形成されている。
また、後身ごろ10における第2防水性布部材26Aの上辺26aは、幅方向中心側が丈方向上方に向けて凸となるよう湾曲して形成されている。
【0019】
図1および図2を参照して、上衣2において袖9の袖口は伸縮性が付与されている。また、図1は上衣2において片袖9の袖口部37を裏返した状態を示している。
両袖9において、袖口部37は帯状の第2防水性布部材26Aを袖口形成方向に筒状に形成することで構成されている。両袖9において、他の部分(着用者の腕から肩にいたる領域部分)は第1防水性布部材25Aによって構成されている。第1防水性布部材25Aおよび第2防水性布部材26Aは縫着部39によって一体化されている。
【0020】
次に、図4および図5に基づいて、ズボン3の構成を説明する。ズボン3はズボン本体40を有する。ズボン本体40は、互いに幅方向側部で丈方向に縫着された前身ごろ7,8、後身ごろ11,12、および腰周り部41から構成されている。ズボン本体40の履口部40aおよび裾口部40bには、伸縮性が付与されている。ズボン本体40の腰周り部41の幅方向中心には、丈方向に沿うようスライドファスナ16のテープ部が縫着されている。
【0021】
ズボン本体40もまた、第1防水性布部材25Bと第2防水性布部材26Bとを面方向に並べて端部どうしを縫着した縫着部39によって一体化されることで構成されている。
このうち第1防水性布部材25Bは、所定の強度を要する部分に配置されている。すなわち、着用者の膝に対応する領域およびその周辺部分と、着用者の臀部に対応する領域およびその周辺部分である。それ以外の部分には、第2防水性布部材26Bが配置されている。
【0022】
さらに具体的に、左右の前身ごろ7,8の一部を構成する第1防水性布部材25Bは、左右対称形状に形成されている。また、第1防水性布部材25Bは、それぞれ前身ごろ7,8のほぼ幅方向に等しい幅を有し、且つ裾部35Bおよび腰周り部41を除く丈方向長さを有する。
各第1防水性布部材25Bは、左右の側辺と下辺と上辺とを有して全体として丈方向に沿う帯状に形成されている。
特に、各第1防水性布部材25Bの上辺は、下方に向けて凸となるよう湾曲して形成され、幅方向外側端部42が幅方向内側端部43に比べて上方に位置した湾曲辺45を有している。前記上辺は、幅方向外側端部42からさらに外側にむけて急峻な角度で下降した下降辺46を有している。
【0023】
後身ごろ11,12の一部を構成する第1防水性布部材25Bは、背面視して略台形に形成されている。該第1防水性布部材25Bは左右の側辺と上辺と下辺とを有する。各側辺は下方ほど幅方向外側に位置するよう傾斜している。上辺は履口から所定量だけ丈方向下方に位置ずれしており、中心が最も下位になるようわずかに下方に向けて凸となるよう湾曲している。
下辺は、その中心部が又部47の中心から前身ごろ7,8側へ延出されて、該第1防水性布部材25Bは延出部48を有している。下辺において延出部48に対する両側は又部47の中心よりも下方にあって、下方へ凸となるよう湾曲している。
【0024】
ズボン本体40において、第1防水性布部材25B以外の部分が第2防水性布部材26Bである。すなわち少なくとも裾部35B、および着用者の腰部に相当する領域には第2防水性布部材26Bが配置されている。
なお、前身ごろ7,8の一部を構成する第1防水性布部材25Bにおいて、その側辺と、臀部に対応する第1防水性布部材25Bの側辺とは、一部どうしが前後方向で当接するようにして縫着されている(図5において領域Sで示している)。
なお、縫着部39の裏側にはシームテープが貼着されており、これによって縫着目から水が内部に浸入するのを防止した構造となっている。
【0025】
上記構成において、上衣2の裾部35Aおよび袖口部37は第2防水性布部材26Aで形成されている。また、ズボン3の裾部35Bは第2防水性布部材26Bで形成されている。
釣行において上衣2およびズボン3を着用者が着用して、例えば降雨があり、ズボン3の腰周り部が濡れたとする。そうするとズボン3の腰周り部41に接触する上衣2の裾部35Aの内側(装着者の身体側であって生地の裏側)には水が接触する。しかしながら、上衣2の裾部35Aは第2防水性布部材26Aで形成されており、第2防水性布部材26Aは表地材27の裏側に防水樹脂材29が積層された二層構造であり、防水樹脂材29は透湿防水性生地であり、表地材27は撥水加工された撥水性生地である。
このため、水が防水樹脂材29に接触しても、第2防水性布部材26Aに水が染込まない。したがって、降雨等があったとしても、上衣2の裾部35Aから上衣2の内側に水が浸入するのを確実に、しかも長時間防止することができる。よって、雨環境あるいはそれに近い環境下であっても、上衣2を快適に着用することができる。
【0026】
上衣2の袖口部37においては着用者の手(あるいは手袋)が濡れたりすると、袖口部37の内側に水が接触する。あるいは、着用者の腕の上げ下げ動作などにより袖口部37の内側に水が入り易い環境がつくられる。しかしながら、袖口部37は第2防水性布部材26Aによって形成されているから、水が袖口部分から内部へ染込むのを防止することができる。
【0027】
ズボン3においては、裾部35Bに第2防水性布部材26Bが配置されている。着用者の履いた靴が雨に濡れると、水が裾部35Bの内側に入り易い環境がつくられる。しかしながら、裾部35Bは第2防水性布部材26Bによって形成されているから、水が裾口部分から内部へ染込むのを防止することができる。
【0028】
さらに、上衣2およびズボン3において、第2防水性布部材26A,26B以外の強度を要する部分には表地材27と裏地材28との間に防水樹脂材29が積層された三層構造の防水性布部材である第1防水性布部材25A,25Bが配置されており、装着者の動きによっても釣用ウェア1の損傷を効果的に抑えることができ、しかも三層構造を用いていることにより保温性を確保することもできる。
なお、該保温性を確保するために裏地材28として、例えばトリコット生地が好適に用いられる。
【0029】
なお上記何れの実施形態においても、防水樹脂材29は透湿防水性生地であり、表地材27は撥水加工された撥水性生地であるから、外側からの水滴が内側へ浸入するのを抑え、しかも内側からの蒸気は外側へ排出することができるから、釣用ウェア1を長時間装着していても蒸れることがない。
特に、透湿防水性生地として、ポリテトラフルオロエチレンを延伸加工したフィルムとポリウレタンポリマーを複合化した生地が好適に用いられる。
【符号の説明】
【0030】
1…釣用ウェア、2…上衣、3…ズボン、4…上衣本体、9…袖、18…裾端、25A,25B,25C…防水性布部材、27…表地材、28…裏地材、29…防水樹脂材、35A…裾部、35B…裾部、37…袖口部、39…縫着部、40…ズボン本体、40a…履口部、40b …裾口部、50…フード、51…フード本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地材と裏地材との間に防水樹脂材が積層された三層構造の防水性布部材と、表地材の裏側に防水樹脂材が積層された二層構造の防水性布部材とから構成され、三層構造の防水性布部材および二層構造の防水性布部材どうしをその面方向に並べて端部どうしを縫着して形成されており、
前記二層構造の防水性布部材が裾部に配置されていることを特徴とする釣用ウェア。
【請求項2】
二層構造の防水性布部材が袖口部に配置されていることを特徴とする請求項1記載の釣用ウェア。
【請求項3】
釣用ウェアは上衣およびズボンから構成されており、二層構造の防水性布部材が上衣の裾部およびズボンの裾部にそれぞれ配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の釣用ウェア。
【請求項4】
防水樹脂材は透湿防水性生地であり、表地材が撥水加工された撥水性生地であることを特徴とする請求項1ないし請求項3記の何れかに記載の釣用ウェア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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