説明

釣竿及びその製造方法

【課題】魚釣に用いられる釣竿及びその製造方法を提供する。
【解決手段】強化繊維に合成樹脂が含浸させられてなったプリプレグ層と、平滑な外表面を有し、且つ互いに重ならないように前記プリプレグ層の外表面に巻回されている高分子薄膜層と、前記高分子薄膜層の外表面に塗布されている消光層とが互いに焼結され一体化になったことを特徴とする釣竿ことを特徴とする釣竿及びその製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竿体及びその製造方法に関わり、特に、魚釣に用いられる釣竿及びその製造方法に関わる。
【背景技術】
【0002】
図6ないし図8に示すように、従来の釣竿は、振出タイプであれ並継タイプであれ、いずれも先細筒状の竿体からなっている。この竿体は、同時に図9のフローチャートを参照すると、一般には、強化材としてのカーボン繊維やガラス繊維等の強化繊維に合成樹脂を含浸させ製造したシート状又はテープ状のプリプレグ91を先細筒状のマンドレル92に巻回し(ステップ901)、そしてその最外層の外周面にOPP(二軸延伸ポリプロピレン)等の定型テープ93を交錯に重なるように螺旋状に巻回して(ステップ902)から、焼結炉に入れて焼結処理をし(ステップ903)た後、定型テープ93を剥離しマンドレル92を引き抜き(ステップ904)、そしてまた表面を研磨し(ステップ905)、消光材料を塗布・乾燥する(ステップ906)などのステップで製造される。
【0003】
しかしながら、上述の製造過程におけるステップ902の定型テープ93の巻回はその後のステップ903の焼結処理において内部のプリプレグ91を加圧し定型させるものであるが、図6ないし図8に示すように、その内部の合成樹脂の滲出しを防ぐために、巻回はその方向がマンドレル92の周方向とほぼ一致する上、互いに交錯的に重なるように行われるので、間隔置きに積層部94が形成され、且つ焼結の加熱により定型テープ93自身が収縮して半径方向の束縛力になってプリプレグ91に加え、プリプレグ91の強化繊維を合成樹脂の流動と共に、積層部94に入り込ませて積層部94を更に盛り込ませ、竿体の表面に瘤や段差を付けるようになり、それを除去するために焼結後の研磨加工が必要あり、手間がかかるのみならず、瘤や段差の所において強化繊維を切断し竿体の強度を低下させる結果を招く欠点もある。
【0004】
それに、研磨した竿体の表面の、太陽光の反射を防ぐための消光材料の塗布は、通常より厚くしなければならないので、コストを向上させるだけでなく、竿体の重さを増加し、ないし消光層自体の強さを弱める欠点をも来す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記に鑑みて、本発明は、繊維の切断による強度の低下を避けることができると共に、反射光の誘発を軽減し、消光剤の塗装強度をも向上させることができる釣竿及びその製造方法を提供しようとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、まず、強化繊維に合成樹脂が含浸させられてなったプリプレグ層と、平滑な外表面を有し、且つ互いに重ならないように前記プリプレグ層の外表面に巻回されている高分子薄膜層と、前記高分子薄膜層の外表面に塗布されている消光層とが互いに焼結され一体化になったことを特徴とする釣竿を提供する。
【0007】
そして、前記強化繊維として、カーボン繊維及びガラス繊維から選ばれた少なくとも一種が使われたものが好ましく、前記高分子薄膜層として、前記プリプレグ層の中にある合成樹脂より高い融点を有するものが使われたものが好ましい。更に、前記高分子薄膜層として、フッ素ポリマー薄膜と該フッ素ポリマー薄膜の背面に結合している接着剤層とからなったものがもっと好ましい。
【0008】
また、それに基づき、本発明は、更に、強化繊維に合成樹脂を含浸させてなったプリプレグで先細のマンドレルの外周にプリプレグ層を形成する第1工程と、高分子薄膜を互いに重ならないように前記プリプレグ層の外表面に巻回して高分子薄膜層を形成する第2工程と、前記高分子薄膜層の外表面に消光材料を塗布して消光層を形成する第3工程と、前記消光層の外表面に定型形材料を交錯的に重なるように螺旋状に巻回す第4工程と、前記高分子薄膜の融点以下の温度で前記プリプレグ層と前記高分子薄膜層と前記消光層とを互いに焼結し一体化させる第5工程と、前記定型材料及び前記マンドレルを取り除く第6工程とを備えることを特徴とする釣竿の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
上記構成による本発明の釣竿及びその製造方法は、プリプレグ層と、高分子薄膜層と、消光層とが互いに焼結され一体化になったことにより、各層間の接着強度が強くなったばかりでなく、表面処理による繊維の切断を避け、消光層の塗装厚さをも減少することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら,本発明に係る釣竿及びその製造方法の実施形態を説明する。
【0011】
まず、図4に示すように、本発明の実施形態としての釣竿は、強化繊維に合成樹脂が含浸させられてなったプリプレグ層1と、平滑な外表面を有し、且つ互いに重ならないようにプリプレグ層1の外表面に巻回されている高分子薄膜層2(図2参照)と、高分子薄膜層2の外表面に塗布されている消光層3とが互いに焼結され一体化になったものである。
【0012】
この実施例においては、プリプレグ層1における強化繊維として、カーボン繊維が使われたが、ガラス繊維またはカーボン繊維とガラス繊維との混合物が使われても良い。
【0013】
高分子薄膜層2として、フッ素ポリマー薄膜(デュポン株式会社製の黒色の不透光テフロン)とPVA(ポリビニルアルコール)樹脂からなっていて該フッ素ポリマー薄膜の背面に結合している接着剤層とからなったものが使われたが、薄膜の方はプリプレグ層1の中にある合成樹脂より高い融点を有するものであれば良く、接着剤の方は他にも各種の感圧型粘着剤または自粘性アクリル樹脂も使われうる。
【0014】
次に、本発明に係る釣竿の製造方法の実施形態を説明する。
【0015】
図5のフローチャートを主とし且つ図1〜図5をも参照しながら説明すると、まず、強化材としてのカーボン繊維やガラス繊維等の強化繊維に合成樹脂を含浸させてなったプリプレグで先細筒状のマンドレル5にプリプレグ層1を形成する(ステップ101)。
【0016】
そして、図1をも参照するように、高分子薄膜を互いに重ならないが、軸方向に沿って逐次に密接するようにプリプレグ層1の外表面11に巻回して高分子薄膜層2を形成する(ステップ102)。
【0017】
続いて、高分子薄膜層2の外表面21に消光材料を塗布して消光層3を形成する(ステップ103)。
【0018】
そして、図2をも参照するように、消光層3の外表面31に定型材料4を交錯的に重なるように螺旋状に巻回すことにより、高分子薄膜層2とプリプレグ層1とを周りから緊迫に包む(ステップ104)。ここで、該定型材料4はOPP(二軸延伸ポリプロピレン)で製造された薄膜状のものを採用することができるが、それに限らない。
【0019】
続いて、上述の巻回したものを焼結炉に入れて焼結処理を行う(ステップ105)。そうすると、焼結の加熱により定型材料4自身が収縮するが、高分子薄膜2は、図3に示すように、互いに重ならずに密接しているので、周りからの束縛力を均一に受け、その下方のプリプレグ層1とも、その上方の消光層3とも一体化になり、接着強度が顕著に向上する上、従来法のような強化繊維の移動もなく、消光層3を含めた外表面31が平滑になる。
【0020】
焼結後、定型材料4を剥離しマンドレル5を引き抜き(ステップ106)、竿体製品を得る。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の釣竿及びその製造方法は、高分子薄膜層を中間層として、焼結時のプリプレグ層と消光層とにかかる束縛力を均一にさせて従来法の表面になる瘤や段差を無くすので、表面処理の必要及びそれによる強度の損失がなくなる上、消光層の使用量及び竿体の重さなどの低減をも奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の製造方法における高分子薄膜層の巻回過程を説明するための側面図
【図2】本発明の製造方法における定型材料の巻回過程を説明するための側面図
【図3】図2の過程を施した後の本発明の製造方法による釣竿半製品の部分断面図
【図4】本発明における釣竿の実施形態の部分断面図
【図5】本発明の釣竿の製造方法例を示すフローチャート
【図6】従来の製造方法における定型テープの巻回過程を説明するための側面図
【図7】図6の過程を施した後の従来法による釣竿半製品の部分断面図
【図8】従来の釣竿の部分断面図
【図9】従来の釣竿の製造方法を示すフローチャート
【符号の説明】
【0023】
1 プリプレグ層
11 外表面
2 高分子薄膜層
21 外表面
3 消光層
31 外表面
4 定型材料
5 マンドレル
101〜106 ステップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化繊維に合成樹脂が含浸させられてなったプリプレグ層と、
平滑な外表面を有し、且つ互いに重ならないように前記プリプレグ層の外表面に巻回されている高分子薄膜層と、
前記高分子薄膜層の外表面に塗布されている消光層とが互いに焼結され一体化になったことを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記強化繊維として、カーボン繊維及びガラス繊維から選ばれた少なくとも一種が使われたことを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記高分子薄膜層として、前記プリプレグ層の中にある合成樹脂より高い融点を有するものが使われたことを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項4】
前記高分子薄膜層として、フッ素ポリマー薄膜と該フッ素ポリマー薄膜の背面に結合している接着剤層とからなったものが使われたことを特徴とする請求項3に記載の釣竿。
【請求項5】
強化繊維に合成樹脂を含浸させてなったプリプレグで先細のマンドレルの外周にプリプレグ層を形成する第1工程と、
高分子薄膜を互いに重ならないように前記プリプレグ層の外表面に巻回して高分子薄膜層を形成する第2工程と、
前記高分子薄膜層の外表面に消光材料を塗布して消光層を形成する第3工程と、
前記消光層の外表面に定型形材料を交錯的に重なるように螺旋状に巻回す第4工程と、
前記高分子薄膜の融点以下の温度で前記プリプレグ層と前記高分子薄膜層と前記消光層とを互いに焼結し一体化させる第5工程と、
前記定型材料及び前記マンドレルを取り除く第6工程とを備えることを特徴とする釣竿の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−110947(P2007−110947A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−304697(P2005−304697)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【出願人】(502045530)
【Fターム(参考)】