説明

釣竿用上栓

【課題】摘んで操作される保持部材と竿管が当付く弾性部材とが、強固に接着して一体化されている釣竿用上栓を提供する。
【解決手段】本発明の釣竿用上栓は、元竿管の先端開口部に装着され、保持部材50と、この保持部材50に接触面を介して接着固定され、前記元竿管の先端開口部に嵌合される弾性部材10とを有している。そして、保持部材50と弾性部材10のいずれか一方に、前記接触面に対して垂直な突出部54を設けると共に、他方に、その突出部54と嵌合する凹部14を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿の先端に装着される釣竿用上栓に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、複数本の竿管を振り出し式に構成した釣竿では、その仕舞寸法が短くなるように、大径竿管の内部に、順次、それよりも先側にある小径竿管を収納するよう構成されており、最終的に、手元竿管の内部に全ての竿管が収納された状態となる。そして、手元竿管の先端開口部には、収納した竿管が突出しないように、上栓が装着される。
【0003】
この上栓は、例えば、特許文献1に開示されているように、複数の部材によって構成されており、外部に露出して摘み保持される保持部材に、手元竿管の先端開口部に嵌合される弾性部材を一体的に固着することで構成されている。この場合、前記保持部材は、外観の向上、及び釣竿を保護する等の目的により、例えば、木、金属、合成樹脂等の硬質材料によって形成されている。また、弾性部材は、収納される各竿管の先端の開口縁や穂先竿管先端部が当付くことから、割れや破損等が生じないように、天然ゴム、合成ゴム等、柔軟性を有する材料によって形成されている。
【0004】
そして、上記した保持部材と弾性部材は、特許文献1に開示されているように、保持部材の中心領域に凸部を形成し、かつ弾性部材の中心領域に凹部を形成し、凸部と凹部を嵌合して接着することで両者は一体化されている。
【特許文献1】実開昭54−137594号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した従来の上栓構造では、保持部材と弾性部材の接着は、保持部材の中央領域に形成されている凸部と、弾性部材の中央領域に形成されている凹部を嵌合させ、これを接着剤によって固定するだけであるため、両者が剥離し易いという問題がある。特に、保持部材と弾性部材は、異なる材質で形成されていることから、接着面での剥離が生じ易くなっている。また、前記上栓は、収納されている竿管が運搬時等に上栓に与える衝撃に対しても、抜けない保持力で手元竿管の先端開口部に嵌合されることが必要であり、上栓を手元竿管に嵌め込む、又は抜き取るときには、前記保持力を上回る力が必要である。具体的には、指先で保持部材を摘み、軸に対して回転させながら弾性部材を嵌め込む、又は抜き取るときに、保持部材と弾性部材の接着面に大きな回転トルクが加わることとなる。前記接着面に加わる回転トルクが接着強度を上回ると、接着面の剥離現象が発生する。
【0006】
また、両者を接着により一体化する際、凸部と凹部との間で充分に空気が抜けていないことが多く、それにより保持部材と弾性部材を押し当てても空気圧による反発を受けて密着保持の妨げになったり、接着層に気泡部を発生させる等、接着面が密着していないことから、嵌合軸周面での相対回転を可能にさせ、接着力を低下する原因となる。この結果、剥離現象を助長してしまい、品質の安定性の面からも好ましくはない。
【0007】
本発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、摘んで操作される保持部材と竿管が当付く弾性部材とが、強固に接着して一体化されている釣竿用上栓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣竿用上栓は、外部に露出して摘み保持される保持部材と、この保持部材に接触面を介して接着固定され前記先端開口部に嵌合される弾性部材とを有するように構成されており、前記保持部材と弾性部材のいずれか一方に、前記接触面に対して垂直な突出部を設けると共に、他方に、その突出部と嵌合する凹部を形成したことを特徴とする。
【0009】
上記した構成の釣竿用上栓では、保持部材に弾性部材を接着する際、接着される接触面に対して、垂直な突出部と凹部が嵌合することで、最も効果的に両部材の相対的な回転が防止されるようになり、両者の接着剥離を抑制することが可能になる。また、そのような突出部と凹部を設けたことで、接着面積が増え、両者の接着固定力が向上して、接着剥離が抑制されるようになる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、摘んで操作される保持部材と竿管が当付く弾性部材とが、強固に接着して一体化されている釣竿用上栓が得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る釣竿用上栓の実施形態について説明する。
【0012】
図1及び図2は、本発明に係る釣竿用上栓の第1の実施形態を示す図であり、図1(a)は保持部材に弾性部材を接着した一部断面側面図、(b)は分解斜視図、そして、図2は図1に示す釣竿用上栓を示す図であって、(a)は保持部材の一部断面側面図、(b)は保持部材の平面図、(c)は弾性部材の平面図、(d)は弾性部材の一部断面側面図である。
【0013】
釣竿用上栓1は、例えば図示されていない振り出し式の釣竿の先端部分に装着されるよう構成されており、元竿管の先端の開口部に嵌合され、収納される竿管の損傷等を防止する弾性部材10と、この弾性部材10に接合され、外部に露出すると共に、摘んで操作される保持部材50とを備えている。前記弾性部材10は、天然ゴム、合成ゴムのような柔軟性を有する部材で形成され、元竿管先端の開口部に嵌合されるように、略円柱形状を成している。また、その外周面には、嵌合される元竿管との間で密着が防止されるように、略90°間隔で軸方向に延在する溝11が形成されている。
【0014】
前記保持部材50は、木、金属、合成樹脂等の硬質部材で形成されており、前記弾性部材10が取着される凹所51を備えた円柱形状を成している。
【0015】
前記弾性部材10の中心部には、軸方向(X方向)に延在する有底の嵌合穴12が形成されており、前記保持部材50の凹所51の中心部には、嵌合穴12に嵌合される円柱状の嵌合部52が突出形成されている。この場合、嵌合部52の外周面は、軸長方向(X方向)に沿って延出しており、かつ凹所51の底面は、X方向に直交する方向(Y方向)に沿って延出する面となっており、これら嵌合部52の外周面及び凹所51の底面は、両部材を固定するに際しての「接触面」を構成している。
【0016】
そして、前記保持部材50には、上記のように規定される接触面に対して、垂直となる突出部54が形成されると共に、弾性部材10には、突出部54と嵌合する凹部14が形成されており、両者を固定する際、突出部54と凹部14を嵌合して接着剤によって接着することで、両者は固定されるようになっている。
【0017】
具体的に、本実施形態における突出部54は、前記凹所51の底面に対して垂直になると共に、前記円柱状の嵌合部52の外周面に対して垂直になるように、嵌合部52の下方領域の外周に90°間隔で形成される壁状の突片によって構成されている。また、弾性部材10側に形成される凹部14は、そのような突出部54が嵌合できるように、嵌合穴12の周囲に十字形状に形成されたスリットによって構成されている。
【0018】
このような突出部54と凹部14は、従来のような、上記した「接触面」のみでの接着固定と比較すると、接着面積が増えることによる固定力の向上が図れると共に、「接触面」に対して垂直方向の固定によって両部材の相対回転を防止する役目を果たすことから、接着領域の剥離等が効果的に防止され、両者の接着固定力の向上が図れるようになる。すなわち、摘んで操作される保持部材50と竿管が当付く弾性部材10とが、強固に接着して一体化された釣竿用上栓が得られるようになる。
【0019】
なお、上記した構成において、弾性部材10に形成される有底の嵌合穴12に、軸長方向に沿って空気抜き用の溝部12aを形成しておくことが好ましい。本実施形態では、溝部12aは嵌合穴12の内面に180°間隔で形成されており、このような溝部12aを形成することにより、これが接着剤溜まりとなって、アンカー効果による接着力の向上が図れると共に、両部材の接着作業を安定して行うことが可能になる。なお、このような空気抜き用の溝部12aについては、上記した接触面の部分に形成されるものであれば良く、保持部材50側(円柱状の嵌合部52の外周面)に形成しても良い。
【0020】
このような溝部を形成することで、空気抜きを従来のように弾性部材の中心軸付近に穿設した構成と比較すると、以下のような利点が得られる。すなわち、弾性部材は、中竿や穂先竿管先端部が当付く面であり、特に、中心軸付近は極細径の穂先が当付くことから、割れや破損等を防止する上では、この部分に空気抜きを設けることなく上記したような溝部を形成する方が好ましい。また、このような位置に空気抜きを形成しないため、穂先竿が嵌り込むようなこともない。更には、実使用において、弾性部材に設けられた空気孔からの水の侵入を防止することができ、接着層の物性低下を防ぐことが可能となる。
【0021】
本発明は、弾性部材10と保持部材50を接着固定するに際し、上記したように定義される「接触面」に対して、いずれか一方に垂直な突出部を設けると共に、他方に、その突出部と嵌合する凹部を形成すること、換言すれば、両部材10,50を接着固定するに際し、両者の相対回転を規制できるような突出部と凹部が形成されるものであれば良く、その形状や形成位置等については、様々な構成で実施することが可能である。
【0022】
以下、そのような実施形態について具体的に説明する。
【0023】
図3は、本発明の第2の実施形態を示す図であり、(a)は保持部材の一部断面側面図、(b)は保持部材の平面図、(c)は弾性部材の平面図、(d)は弾性部材の一部断面側面図である。
【0024】
この実施形態では、弾性部材10側に、嵌合穴12の周囲に90°間隔で円柱状の突出部16を4箇所形成すると共に、保持部材50の凹所51の底面側に、そのような突出部16が嵌合されるように凹部56が4箇所形成されている。また、弾性部材10に形成される有底の嵌合穴12には、軸長方向に沿って、空気抜き用の溝部12aが形成されている。
【0025】
また、図4に示す第3の実施形態では、弾性部材10側の嵌合穴12の周囲に、矩形で壁状の突出部16を形成すると共に、保持部材50の凹所51の底面に、そのような突出部16が嵌合されるように凹部56が形成されている。また、弾性部材10に形成される有底の嵌合穴12には、軸長方向に沿って空気抜き用の溝部12aが形成されている。
【0026】
以上のように、突出部は弾性部材10側に形成しても良く、また、その形状については適宜変形することが可能である。
【0027】
図5は、本発明の第4の実施形態を示す図である。
【0028】
この実施形態では、保持部材50に形成されている円柱状の嵌合部52の先端面に、直径方向に沿って凹部57を形成すると共に、弾性部材10側に形成される有底の嵌合穴12の底面に、前記凹部57に嵌合する突出部17が形成されている。また、弾性部材10に形成される有底の嵌合穴12には、軸長方向に沿って空気抜き用の溝部12aが形成されている。
【0029】
また、図6に示す第5の実施形態では、前記第4の実施形態とは逆に、保持部材50に形成されている円柱状の嵌合部52の先端面に、直径方向に沿って突出部58を形成すると共に、弾性部材10側に形成される有底の嵌合穴12の底面に、前記突出部58に嵌合する凹部18が形成されている。また、弾性部材10に形成される有底の嵌合穴12には、軸長方向に沿って空気抜き用の溝部12aが形成されている。
【0030】
また、図7に示す第6の実施形態では、保持部材50に形成されている円柱状の嵌合部52の先端面に、十字状に凹部59を形成すると共に、弾性部材10側に形成される有底の嵌合穴12の底面に、前記凹部59に嵌合する十字状の突出部19が形成されている。また、弾性部材10に形成される有底の嵌合穴12には、軸長方向に沿って空気抜き用の溝部12aが形成されている。
【0031】
以上のように、突出部や凹部は、保持部材50に形成されている円柱状の嵌合部52の先端面に形成しても良く、また、その形状については、適宜変形することが可能である。
【0032】
図8は、本発明の第7の実施形態を示す図である。
【0033】
この実施形態では、保持部材50に形成されている円柱状の嵌合部52の外周面に、90°間隔で軸長方向に亘って延出する壁状の突出部60を形成すると共に、弾性部材10側に形成される有底の嵌合穴12の周囲に、前記突出部60が嵌合するように、十字状のスリットで構成される凹部20が形成されている。また、弾性部材10に形成される有底の嵌合穴12には、軸長方向に沿って空気抜き用の溝部12aが形成されている。
【0034】
また、図9は、本発明の第8の実施形態を示す図である。
【0035】
この実施形態では、保持部材50の凹所51を規定する円周壁51aの内周の底部側に、90°間隔で壁状の突出部61を形成すると共に、弾性部材10側の外周面に、前記突出部61が嵌合するように、スリットで構成される凹部21が形成されている。なお、この凹部21は、嵌合される元竿管との間で密着を防止する溝11と一致する位置に形成されている。また、弾性部材10に形成される有底の嵌合穴12には、軸長方向に沿って空気抜き用の溝部12aが形成されている。
【0036】
以上のように、突出部や凹部は、保持部材50と弾性部材10を、軸長方向に沿って嵌合させた際、両者の回転方向が規制できれば、その形成位置や形状は適宜変形することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す図であり、(a)は保持部材に弾性部材を接着した一部断面側面図、(b)は分解斜視図。
【図2】図1の釣竿用上栓を示す図であって、(a)は保持部材の一部断面側面図、(b)は保持部材の平面図、(c)は弾性部材の平面図、(d)は弾性部材の一部断面側面図。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す図であり、(a)は保持部材の一部断面側面図、(b)は保持部材の平面図、(c)は弾性部材の平面図、(d)は弾性部材の一部断面側面図。
【図4】本発明の第3の実施形態を示す図であり、(a)は保持部材の一部断面側面図、(b)は保持部材の平面図、(c)は弾性部材の平面図、(d)は弾性部材の一部断面側面図。
【図5】本発明の第4の実施形態を示す図であり、(a)は保持部材の一部断面側面図、(b)は保持部材の平面図、(c)は弾性部材の平面図、(d)は弾性部材の一部断面側面図。
【図6】本発明の第5の実施形態を示す図であり、(a)は保持部材の一部断面側面図、(b)は保持部材の平面図、(c)は弾性部材の平面図、(d)は弾性部材の一部断面側面図。
【図7】本発明の第6の実施形態を示す図であり、(a)は保持部材の一部断面側面図、(b)は保持部材の平面図、(c)は弾性部材の平面図、(d)は弾性部材の一部断面側面図。
【図8】本発明の第7の実施形態を示す図であり、(a)は保持部材の一部断面側面図、(b)は保持部材の平面図、(c)は弾性部材の平面図、(d)は弾性部材の一部断面側面図。
【図9】本発明の第8の実施形態を示す図であり、(a)は保持部材の一部断面側面図、(b)は保持部材の平面図、(c)は弾性部材の平面図、(d)は弾性部材の一部断面側面図。
【符号の説明】
【0038】
1 釣竿用上栓
10 弾性部材
12 嵌合穴
12a 溝部
14,18,20,21 凹部
16,17,19 突出部
50 保持部材
52 嵌合部
54,58,60,61 突出部
56,57,59 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
元竿管の先端開口部に装着され、保持部材と、この保持部材に接触面を介して接着固定され前記先端開口部に嵌合される弾性部材と、を有する釣竿用上栓において、
前記保持部材と弾性部材のいずれか一方に、前記接触面に対して垂直な突出部を設けると共に、他方に、その突出部と嵌合する凹部を形成したことを特徴とする釣竿用上栓。
【請求項2】
前記接触面に、軸長方向に沿って空気抜き用の溝部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の釣竿用上栓。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−54588(P2008−54588A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−235835(P2006−235835)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】