説明

釣竿

【課題】釣りの最中において筒状部材の外れ難い構造の釣竿を提供する。
【解決手段】穂先部10Hに釣糸を係止させるタイプの釣竿であって、穂先部に対して該穂先部の軸心回りに回転自在な回転体14を有し、該回転体の先部に、側方から見て環状の釣糸係止部16を設けており、該釣糸係止部の少なくとも一部を側方から覆うことができる位置で保持されると共に、該釣糸係止部を露出させる位置まで退避可能な筒状部材18を有し、該筒状部材を退避位置から引き出して前記釣糸係止部を覆った場合、該筒状部材の先端18Eの位置が、前記環状釣糸係止部の環状内側の孔領域15の範囲Zに位置しているよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣糸を結着(本願ではこれも係止の一態様とする)させたり、チチワを係止させたりする釣糸装着具を穂先部に有する釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
穂先部の釣糸装着具に釣糸を係止させる釣竿においては、その釣糸の係止が外れることを防止する必要がある。また、釣糸装着具や穂先部に釣糸が絡むことも防止しなければならない。これらの目的から本出願人は過去において下記各特許文献に示す出願を行っている。これら各公報に開示のように、釣糸係止部を側方から覆うことのできる筒状部材を退避可能に設けている。各公報の筒状部材を退避位置から引き出して装着させた状態において、この筒状部材の先端を、釣糸係止部又は釣糸が自由に側方に指向することを拘束する部位に対して、それらの位置よりも充分前方に位置させている。これは、筒状部材のその延伸部によって釣糸が穂先部の軸心方向に指向するため、釣りの操作中に釣糸が釣糸装着具や穂先部に絡み難いためである。
【特許文献1】特開平7−274779号公報
【特許文献2】特開2000−157108号公報
【特許文献3】特許第3775288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら、詳細は後述するが、筒状部材の上記延伸部が存在すると、釣り操作において、魚が掛かった場合、その魚の引きの力によって筒状部材の保持力を超える引下力が生じてしまい、釣糸係止部の覆いが外れてしまうことがある。この筒状部材が外れれば、係止された釣糸が不用意に外れ易くなる。また、釣糸が絡み易くなる。
依って解決しようとする課題は、釣りの最中において上記筒状部材が外れ難い構造の釣竿の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明では、穂先部に釣糸を係止させるタイプの釣竿であって、穂先部に対して該穂先部の軸心回りに回転自在な回転体を有し、該回転体の先部に釣糸係止部を設けており、該釣糸係止部の少なくとも一部を側方から覆うことができる位置で保持されると共に、該釣糸係止部を露出させる位置まで退避可能な筒状部材を有し、前記釣糸係止部の前側に該釣糸係止部の延長部であって、係止釣糸の側方への指向を拘束する部位が存在する場合は該拘束部位の先端位置、或いは該拘束部位を設けていない場合は、前記筒状部材を退避位置から引き出して保持させた場合、該筒状部材が前記釣糸係止部の先端位置よりも先側には延伸していないことを特徴とする釣竿を提供する。
【0005】
第2の発明では、穂先部に釣糸を係止させるタイプの釣竿であって、穂先部に対して該穂先部の軸心回りに回転自在な回転体を有し、該回転体の先部に、側方から見て環状の釣糸係止部を設けており、該釣糸係止部の少なくとも一部を側方から覆うことができる位置で保持されると共に、該釣糸係止部を露出させる位置まで退避可能な筒状部材を有し、該筒状部材を退避位置から引き出して前記釣糸係止部を覆った場合、該筒状部材の先端位置が、前記環状釣糸係止部の環状内側の孔領域の範囲に位置していることを特徴とする釣竿を提供する。
【発明の効果】
【0006】
第1の発明では、釣糸係止部の延長部であって、釣糸の側方への指向を拘束する部位が存在する場合、即ち、特許文献1の代表例のような構造の場合は、その拘束部位の先端位置、それ以外では、筒状部材は釣糸係止部の先端位置よりも先側には延伸していないため、後述する引下力が殆ど発生しない。
【0007】
第2の発明は第1発明の一形態であるが、釣糸係止部が環状に構成されている。この環状の内側である孔領域の範囲に、引き出されて保持された筒状部材の先端が位置するため、引下力が殆ど生じないで済む。また、環状の釣糸係止部であり、筒状部材先端が環状の孔領域に至っているため、係止させた釣糸が外れ難い他、釣り操作中に釣糸装着具や穂先部に絡み難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明につき図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る釣竿構造と従来釣竿構造との相違を説明するための原理図である。(a)は従来構造を示し、係止された釣糸30が、筒状部材18の先端に接触して折れ曲がっており、筒状部材の外側に位置する部位30’が獲物によって強く引かれた場合の模式図である。獲物によって引かれた際に外部の釣糸30’に作用する引張力をF1とする。一般に、筒状部材先端との摩擦力によって、内部の釣糸30に作用する引張力F2とは相違するが、概ね同じ程度の大きさである。従来の内部の釣糸30は、その係止位置に対して筒状部材18が前方に相当延伸しているため、(a)図のような傾斜関係となる。一方、釣りの際には釣竿を水平か、穂先を多少上向きに向ける程度であるため、筒状部材の延伸方向(穂先部の延伸方向)に対する外部釣糸30’の成す角度θの方向は精々図示の程度が小さい状態であり、通常はもっと大きな角度となる。
【0009】
従って、釣糸によって筒状部材に作用する引下力は、引張力F1の、筒状部材18の延伸方向成分(小さい)と、引張力F2の筒状部材の延伸方向成分(大きい)との和であり、主として後者の引張力F2による大きな引下力が原因して、釣りの最中に筒状部材が退避することがある。
これに対して、本願構造を採用すれば、(b)に示すように、内部の釣糸30の方向は大雑把に言って筒状部材の延伸方向に対して直交する方向に指向するため、引張力F2による引下力が殆ど作用せず、外部の釣糸30’の引張力F1による小さな引下力しか作用しない状態となる。従って、釣りの最中に筒状部材18が下がってしまう不都合が防止できる。
【0010】
図2は本発明の請求項2に係る発明の一形態であると共に、請求項1の一形態でもある例の部分断面による釣竿の側方から見た要部図である。エポキシ樹脂等の合成樹脂をマトリックスとし、炭素繊維等の強化繊維で強化した繊維強化樹脂製竿管の穂先部10Hの外周には、穂先部の軸線方向に延伸した金属製の保持部材12が固定されている。この保持部材の先端部には、その外側に被着されて回転自在に構成された金属製の回転体14が装着されている。この回転体の先部には、線条部14Bが幾分かの長さ穂先軸線方向に延伸し、その後、概ね円弧状か楕円状に曲げられた環状部14Cとなり、更にその先部は、該環状部14Cの始端部領域の上に、側面視でいって重合した重合部14Dに形成されている。この例では、環状部14Cと重合部14Dを合わせた部分が環状の釣糸係止部16である。
【0011】
前記回転体14は、保持部材12の所定の細径部に対応させて窪み14Aを形成することによりその位置を保持させている。但し、回転体は穂先部の軸線に対して回転できれば良く、その形態は問わない。一方、保持部材12の所定位置には細径領域12Aを設けており、金属製又は合成樹脂製の筒状部材18の後部領域18Aを前記細径領域12Aに位置させると退避状態となる。筒状部材18をこの退避状態に位置させておいて、釣糸のチチワ(図示せず)を前記釣糸係止部16に係止させる。この後、筒状部材18を前進させてその大径部18Kが回転体14の大径部14Kに嵌合して保持され、該筒状部材18は回転体14と一緒に回転する。然しながら、筒状部材を、回転体14ではなく保持部材12の所定位置に嵌合させ、筒状部材が回転しない構造でもよい。
【0012】
この筒状部材18が前進保持された状態を図3に図示している。この釣りの可能な状態では、筒状部材18の先端18Eは、環状の釣糸係止部16の孔領域15の前後方向範囲Zに位置している。従って、係止された釣糸が筒状部材18から外側に出る方向は、図1の(b)に図示した原理図状態又はこれに近い状態になり、獲物による釣糸の引きに対して筒状部材18は大きな引下力を受けず、安定する。また、筒状部材18の先端18Eがこの範囲Zに位置していれば、釣糸係止部16の環状である外郭形状のお陰で、この釣糸装着具全体の先部領域において、前側の大径部の後側が急に細くなるという領域が存在せず、釣り操作中に釣糸が絡むことが防止できる。具体的には、仮に釣り時において、図2の状態のように筒状部材18が後退し過ぎていれば、釣糸係止部16の基部は線条部14Bのみであるため、釣り操作時にこの線条部に釣糸が絡み易いが、実際には筒状部材18の先端18Eが図3に示すように範囲Z又はZ’に位置しているため、線条部14Bを覆っており、その先側は釣糸係止部16の環状部の後端部を除いた前半部であり、釣糸は絡み難い。
【0013】
また請求項1の発明では、筒状部材の先端18Eは、環状の釣糸係止部16の先端位置L1に至るまでの範囲に位置していてもよい。一方、筒状部材18は少なくとも釣糸係止部16の一部を側方から覆うことができる位置で保持されるため、先端18Eの実質的範囲はZ’の範囲である。この範囲でも、釣糸による筒状部材18の引下力は、図1の(b)に示す状態又はこれに近く、筒状部材18が安定する。
【0014】
図4は本発明の第2の釣竿形態例の要部を示す図である。回転体14の先部に線条部が設けられ、穂先部の軸線に対して傾斜方向に傾斜部14Bが延伸し、その後、概ね円弧状か楕円状に曲げられた環状部14Cとなり、その後はチチワの出入口を閉じるように前記傾斜部14Bに近接した出入口部14D’が設けられている。この環状部14Cが環状釣糸係止部16である。この場合の孔領域15は以下のようにして定める。環状部14Cは孔領域15側に中心を持つように曲がっているが、出入口部14D’は逆に外側に中心を持つ方向に曲がっている。従って、出入口部14D’の近くである環状部14Cの終端部から傾斜部14B又は環状部の開始部に亘って滑らかに閉じる円弧を描き、この仮想円弧で閉じられた領域を孔領域15とする。こうして図3と同様に、孔範囲Zと範囲Z’を定めることができる。
【0015】
請求項2の態様としては、筒状部材18の先端は図示の孔領域Zの範囲に位置し、請求項1の態様としては範囲Z’に位置させる。各作用効果も第1の形態例の場合と同様である。説明しない部分の構造や変形については第1の形態例と同様である。
【0016】
図5は本発明の第3の釣竿形態例の要部を示す図である。回転体14に設けた釣糸係止部16の前側に、該釣糸係止部の延長部である頭部14Tには、係止された釣糸30の側方への指向を拘束する溝の壁からなる拘束部位20が存在する。この例では、筒状部材18の先端は、拘束部位20の先端、即ち、頭部14Tの先端までの範囲に位置する。従って、拘束部位20から開放された釣糸30の作用によっても筒状部材18には引下力が作用しない。この例では、筒状部材18が頭部よりも前方には延伸していないが、拘束部位20の存在によって釣糸30が穂先部の延伸方向に沿うため、他の形態例よりも釣糸が更に絡み難い。説明しない部分の構造や変形については第1の形態例と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明は穂先部に釣糸装着具を有する釣竿に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明に係る釣竿構造と従来釣竿構造との相違を説明するための原理図である。
【図2】図2は本発明に係る第1形態例の部分断面による釣竿の側方から見た要部図である。
【図3】図3は図2の筒状部材の位置が異なる状態の図である。
【図4】図4は本発明に係る第2形態例の要部図である。
【図5】図5は本発明に係る第3形態例の要部図である。
【符号の説明】
【0019】
10H 穂先部
14 回転体
15 孔領域
16 釣糸係止部
18 筒状部材
Z 孔領域の範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穂先部(10H)に釣糸を係止させるタイプの釣竿であって、
穂先部に対して該穂先部の軸心回りに回転自在な回転体(14)を有し、
該回転体の先部に釣糸係止部(16)を設けており、
該釣糸係止部の少なくとも一部を側方から覆うことができる位置で保持されると共に、該釣糸係止部を露出させる位置まで退避可能な筒状部材(18)を有し、
前記釣糸係止部の前側に該釣糸係止部の延長部であって、係止釣糸の側方への指向を拘束する部位(20)が存在する場合は該拘束部位の先端位置、或いは該拘束部位を設けていない場合は、前記筒状部材を退避位置から引き出して保持させた場合、該筒状部材が前記釣糸係止部の先端位置よりも先側には延伸していない
ことを特徴とする釣竿。
【請求項2】
穂先部(10H)に釣糸を係止させるタイプの釣竿であって、
穂先部に対して該穂先部の軸心回りに回転自在な回転体(14)を有し、
該回転体の先部に、側方から見て環状の釣糸係止部(16)を設けており、
該釣糸係止部の少なくとも一部を側方から覆うことができる位置で保持されると共に、該釣糸係止部を露出させる位置まで退避可能な筒状部材(18)を有し、
該筒状部材を退避位置から引き出して前記釣糸係止部を覆った場合、該筒状部材の先端(18E)位置が、前記環状釣糸係止部の環状内側の孔領域(15)の範囲(Z)に位置している
ことを特徴とする釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−104415(P2008−104415A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−290708(P2006−290708)
【出願日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】