説明

釣竿

【課題】リールを取り外した場合に、合成樹脂製ナット部材を損傷させることなく保持できる釣竿を提供する。
【解決手段】前側に移動フードを配設したリール装着部を有し、前記移動フードの前側に合成樹脂製のナット部材18が連結されており、該ナット部材の前方に、前側グリップ部を設けており、該前側グリップ部の後端には保護リング20が配設された釣竿であって、前記保護リングは、80度以上の傾斜又は垂直な壁面である規制壁面20Aと、該規制壁面の竿後方側であって、外周面が竿の長手方向に沿って半径R1を有する当接面20Bとを有し、前記ナット部材のねじ山18Y先端の内径をR2とすると、R1≧R2であって、少なくとも保護リングの当接面側の縁部20Cかナット部材のねじ山の縁部が面取りされており、半径R1と半径R2の差は、前記合成樹脂製ナット部材の雌ねじ部が拡径しつつ前記当接面に乗り上げ可能な範囲であるよう構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リールを装着固定させるリール装着部を有する釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
リール装着部を有する釣竿において、該リール装着部の前方に前側グリップ部を設けた釣竿がある。また、釣り操作において両軸受型リール等のリールを固定したリール装着部を把持して操作することがあるため、その把持操作によってリール脚が不用意に緩まないよう、前後1対のフードの内の移動フードを前側に、固定フードを後側に位置させているものが多い。リールを取り外す場合は、前側フードである移動フードを前方に駆動させるべく、該移動フードに係合しているナット部材を回転させる。前記前側グリップ部はEVA等の発泡性樹脂やコルク材等の柔軟性部材を使用したものであるため、リールを取り外す際のナット部材の前端が前側グリップ部の後端部に当接することを繰り返すと、前側グリップ部の後端部が損傷する。そこで前側グリップ部の後端部に、金属製のリング部材を配設し、ナット部材の移動をこのリング部材で規制することで前記損傷を防止している。その一例が下記特許文献の図1に開示されている。
【特許文献1】特開2005−117931号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら、上記文献開示のリング部材では、ナット部材の前進を規制できるが、ナット部材を保持できない。また、リング部材の外周面が前方向に拡径しており、ナット部材はリールの前側に位置しているため、特に両軸受型リールを取り外す場合、該リールに隠れて直視し難いナット部材は、その先部が回転駆動されつつリング部材の拡径外周面に沿って乗り上げてしまい、合成樹脂製ナット部材の場合、その先部が拡径され、場合によってはナット部材が損傷する。更には、ナット部材の前方への移動をリング部材で規制しても、そのままで釣場移動をすると、その際にナット部材がガタついたり逆戻りする。
依って解決しようとする課題は、リールを取り外した場合に、合成樹脂製ナット部材を損傷させることなく保持できる釣竿の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の発明は、前側に移動フードを配設したリール装着部を有し、前記移動フードの前側に合成樹脂製のナット部材が連結されており、該ナット部材の雌ねじ部は、リール装着部の本体部に設けた雄ねじ部と螺合しており、該ナット部材の前方に、柔軟性部材を使用した前側グリップ部を設けており、該前側グリップ部の後端には金属又は合成樹脂材による保護リングが配設された釣竿であって、前記保護リングは、80度以上の傾斜又は垂直な壁面である規制壁面と、該規制壁面の竿後方側であって、外周面が竿の長手方向に沿って半径R1を有する当接面とを有し、前記ナット部材の雌ねじ部のねじ山先端の内径をR2とすると、R1≧R2であって、少なくとも保護リングの当接面側の縁部か又はナット部材のねじ山の縁部が面取りされており、半径R1と半径R2の差は、前記合成樹脂製ナット部材の雌ねじ部が拡径しつつ前記当接面に乗り上げ可能な範囲であり、前記保護リングの当接面の幅は、前記ナット部材の先端が前記規制壁面に当接した状態で少なくとも先端のねじ山が前記当接面に乗る寸法を有していることを特徴とする釣竿を提供する。
【発明の効果】
【0005】
保護リングの当接面の半径R1と合成樹脂製ナット部材の雌ねじ部のねじ山先端の内径R2とがR1≧R2であって、何れかの縁部が面取りされて雌ねじ部が拡径しつつ当接面に乗り上げ可能であるため、ナット部材が前記当接面に乗り上げれば、ナット部材の半径方向のガタが防止される。また、保護リングの当接面の幅は、前記ナット部材の先端が前記規制壁面に当接した状態で少なくとも先端のねじ山が前記当接面に乗る寸法を有しているので、ナット部材は前記当接面に乗り上げると共にナット部材の前端を保護リングの規制壁面に当接させることができる。従って、前方への移動が規制されるので、操作者(釣人)はナット部材を直視しなくてもナット操作の終了位置であることが認識できる。この終了位置でナット部材から手を離しても、ナット部材は静的に保持される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明につき図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明に係る釣竿の例としての船竿のハンドル部近くの側面図、図2は図1の要部拡大図、図3は図2のC部の拡大図、図4は図3とは異なる状態の図である。キャスティングロッドにおいて、中心部に、繊維強化樹脂製等の竿杆10を挿通させたハンドル部の後端部領域には、EVA等の発泡性合成樹脂やコルク等の柔軟性部材を使用した後側グリップ部RGを設けており、この幾分か前側には同様な柔軟性部材による中間グリップ部MGを設けている。この中間グリップ部の直ぐ前側にはリール装着部が設けられており、このリール装着部の直ぐ前側には金属や硬質な合成樹脂材の保護リング20を介在させて上記と同様な柔軟性部材の前側グリップ部FGが設けられている。
【0007】
リール装着部は、後側に固定フード14を、前側に移動フード16を配設しており、両軸受型リール22を装着させている。固定フードには、そのリール脚挿入部とは径方向反対側にトリガーTを設けている。移動フード16の直前にナット部材18を配設しており、このナット部材は、リール装着部の本体部12の外周に設けた雄ねじ部12Nと螺合する雌ねじ部18Nを形成している。このナット部材はその後端部において移動フードと相対回転可能に係合しており、また、移動フード16と本体部12とは、移動フードが本体部に対して前後移動のみ可能になるように凸部と長手方向凹部とによって係合している。
【0008】
従って、リール22を取り外す際に、ナット部材18を回転させつつ前方に移動させると移動フード16も共に前方移動する。このことによってリール22を取り外せる。この作業において、ナット部材18を所定量回転移動させると保護リング20に当接し、これによって前側グリップ部FGの後端部を損傷させないで済む。図3に現れているように、保護リング20の後端部外周は竿の長手方向に沿った半径R1の環状の当接面20Bである。一方、ナット部材18は、例えば、ABS樹脂、ナイロン等の一般的な合成樹脂材で形成されており、雌ねじ部18Nのねじ山18Yの先端内径は通常時R2であるが、力を加えれば拡径し得る。この実施例ではR1−R2=0.1mmである。保護リング20の後端縁部(当接面側縁部)20Cは適宜寸法面取りによって丸められているため、ナット部材を回転させることで内径R2のナット部材18の先端ねじ山18Yは当接面20Bに乗り上げることができる。
【0009】
保護リングの壁面であって、当接面20Bの前端位置には垂直な規制壁面20Aが設けられており、該壁面の外周外径は前記半径R1よりも寸法が適宜大きい。従って、ナット部材18はその回動によって当接面と押圧しつつ前進するが、図4に示すように、ナット部材前端が規制壁面20Aに当接すると前進が規制され、少なくとも1周分の先端のねじ山18Yが当接面に乗っている。釣人は装着したリ−ル22の後側から視認し難いナット部材を回転させてリール脚を緩めて行くと、上記の規制によってナット部材の前進が止められる。これにより、ナット部材を直視しなくてもリールを取り外せる他、緩めたナット部材が保護リングによって保持され、リールを外したままの状態で釣り場を移動しても、その際にナット部材のガタつきが防止されると共に、ナット部材と移動フードの逆戻りが防止され、次にリールを装着させる際に、迅速に装着作業が行える。
【0010】
上記実施例と異なり、保護リング20の後端縁部20Cに代えて、或いはこれと共に、ナット部材18の前端のねじ山18Yの前側縁部が適宜寸法面取りされていてもよい。また、本発明釣竿は船竿に限らず、その他の釣竿であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0011】
本発明はリール装着部を有する釣竿に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明に係る釣竿の例としてのキャスティングロッドのハンドル部近くの側面図である。
【図2】図2は図1の要部拡大図である。
【図3】図3は図2のC部の拡大図である。
【図4】図4は図3とは異なる状態の図である。
【符号の説明】
【0013】
12 リール装着部の本体部
16 移動フード
18 ナット部材
20 保護リング
20A 規制壁面
20B 当接面
FG 前側グリップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前側に移動フード(16)を配設したリール装着部を有し、前記移動フードの前側に合成樹脂製のナット部材(18)が連結されており、該ナット部材の雌ねじ部(18N)は、リール装着部の本体部(12)に設けた雄ねじ部(12N)と螺合しており、該ナット部材の前方に、柔軟性部材を使用した前側グリップ部(FG)を設けており、該前側グリップ部の後端には金属又は合成樹脂材による保護リング(20)が配設された釣竿であって、
前記保護リングは、80度以上の傾斜又は垂直な壁面である規制壁面(20A)と、該規制壁面の竿後方側であって、外周面が竿の長手方向に沿って半径R1を有する当接面(20B)とを有し、
前記ナット部材の雌ねじ部のねじ山(18Y)先端の内径をR2とすると、
R1≧R2であって、少なくとも保護リングの当接面側の縁部(20C)か又はナット部材のねじ山の縁部が面取りされており、半径R1と半径R2の差は、前記合成樹脂製ナット部材の雌ねじ部が拡径しつつ前記当接面に乗り上げ可能な範囲であり、
前記保護リングの当接面の幅は、前記ナット部材の先端が前記規制壁面に当接した状態で少なくとも先端のねじ山が前記当接面に乗る寸法を有している
ことを特徴とする釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−211981(P2008−211981A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49516(P2007−49516)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】