説明

釣竿

【課題】リール緩みの少ない釣竿を提供する。
【解決手段】リール装着本体20Hと一対のフードFA,FBを有するリール装着部20を設けた釣竿において、前記移動フードFAは、リール装着本体に設けた駆動ナット用雄ねじと螺合した駆動ナットNAによって釣竿の長手方向に駆動される構造であり、前記駆動ナットのナット端面であって、前記移動フードとは前記長手方向反対側のナット端面と対向する対向端面を有し、前記駆動ナット用雄ねじと同じ軸線を中心軸線とする他の雄ねじと螺合する緩み止めナットNBを具備し、前記駆動ナットの前記ナット端面の部位と前記緩み止めナットの前記対向端面の部位とには、これらが係合し合う凹凸部KO,KTを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール装着部を有する釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
駆動ナットを使用して移動フードを送る方式のリール装着部において、移動フードを含む一対のフードによってリールの足を挟持固定する。しかし、釣り操作においてリールに種々の力が作用すると、フードを介して駆動ナットにも力が作用して該駆動ナットが緩む。こうしてリールの固定が緩む。これを防止するために、緩み止めナットを追加することが行われている。しかし、緩み止めナットの単純な追加では効果が少なく、下記特許文献1においては、駆動ナットと緩み止めナットの各ねじを互いに逆方向のねじに形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−173020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
緩み止めナットの締め込みに際しては緩み止めナットの端面で駆動ナットを押圧するが、リール装着部の有する不可避的隙間ガタの存在により、駆動ナット等が傾斜し、緩み止めナットの端面と、対向する駆動ナット端面の各面が一致せず、一点において当接する状態となる。従って、駆動ナットを押圧する作用が小さく、緩み止めナットが存在しても充分に緩み止めがなされ得ないという問題がある。また、上記特許文献1の手段もリールの緩み止めに役立つが、これ以外にもリールの緩み止め効果の高い構造が考えられる。
依って解決しようとする課題は、リール緩みの少ない釣竿を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑みて第1の発明は、リール装着本体と、少なくとも一方を移動フードとする一対のフードを有するリール装着部を設けた釣竿において、前記一方の移動フードは、リール装着本体に設けた駆動ナット用雄ねじと螺合した駆動ナットによって釣竿の長手方向に駆動される構造であり、前記駆動ナットのナット端面であって、前記一方の移動フードとは前記長手方向反対側のナット端面と対向する対向端面を有し、前記駆動ナット用雄ねじと同じ軸線を中心軸線とする他の雄ねじと螺合する緩み止めナットを具備し、前記駆動ナットの前記ナット端面の部位と前記緩み止めナットの前記対向端面の部位とには、これらが係合し合う凹凸部を設けたことを特徴とする釣竿を提供する。
【0006】
第2の発明では、第1の発明の凹凸部は、何れかのナットに設けられて前記軸線を中心軸線とした環状の凹部と、前記軸線を中心軸線とした環状に設けられているか又は前記軸線の周りに角度間隔を設けつつ複数個配設した凸部とを有するよう構成する。
第3の発明では、第2の発明の凹部と凸部は前記軸線の方向に沿ってテーパになっており、緩み止めナットが駆動ナットに近づくに従って、係合する凹部と凸部間の隙間が小さくなるよう構成する。
【0007】
第4の発明では、第1〜3の発明の駆動ナット用雄ねじと前記他の雄ねじとのピッチが異なり、他の雄ねじのピッチの方が小さいよう構成する。
第5の発明では、第1〜4の発明の駆動ナット用雄ねじと前記他の雄ねじとは逆ねじの関係になっているよう構成する。
第6の発明では、第1〜5の発明の緩み止めナットは前記駆動ナットよりも小径に形成されているよう構成する。
【発明の効果】
【0008】
第1の発明では、駆動ナットと緩み止めナットの対向面部に互いに係合し合う凹凸部を設けているため、係合して緩み止めナットが駆動ナットを押圧し易い。また、リールと移動フードを介して種々の力が駆動ナットに伝わっても、この駆動ナットには緩み止めナットが係合しており、駆動ナット単独では緩むことができない。その分、リールが緩み難い。
【0009】
第2の発明では、凹部が環状で、凸部が環状又は円周方向に分散して設けられており、凹部と凸部が係合した状態では、駆動ナットが傾斜しても、凹部と凸部の係合箇所は一か所ではなく、円周方向複数個所になる。従って、駆動ナットを押圧する作用を大きくでき、緩み止め効果が高くなる。
第3の発明では、テーパ形状故、両ナットを互いに近づけて必ず凹部と凸部とが押圧接触するように容易に設定できる。
【0010】
第4の発明では、駆動ナット側のねじピッチよりも緩み止めナット側のねじピッチが小さいため、駆動ナットが緩もうとしても、係合している緩み止めナットが駆動ナットの緩みを規制する作用を果たす。
第5の発明では、逆ねじの作用によって、駆動ナットが緩もうとしても、係合している緩み止めナットが駆動ナットの緩みを規制する作用を果たす。
第6の発明では、緩み止めナットの径が小さいため、釣人の手等がこれに不用意に接触する恐れが少なく、駆動ナットの緩みを規制する作用を維持できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を添付図面を用いて更に詳細に説明する。図1は本発明に係る一実施形態例としての釣竿の側面図、図2は図1のB部の拡大縦断面図、図3は図2の要部の図2とは異なる形式の部分断面図、図4は図2の矢視線D−Dによる横断面図である。繊維強化樹脂製の竿杆10の手元部近くにリール装着部20を設け、その前方に釣糸ガイドG1、G2、G3、G4が設けられている。リール装着部20はリール装着本体20Hを有し、この中に竿杆10を挿通させて接着固定している。この例のリール装着本体20Hは3つの本体部分H1,H2,H3で構成されている。竿杆は中実でも環状でも、また、継ぎ合わせ式でもよい。
【0012】
本体部分H1はリール足載置面20Sを設けており、その前後に固定フードFBと移動フードFAとを対向配置している。この例での移動フードには駆動ナットNAが一体化されており、この駆動ナット内周の雌ねじは、前記本体部分H2外周に設けた雄ねじN2と螺合する。また、この駆動ナットの移動フードの存在する側とは反対側の端面部に緩み止めナットNBを係合させて使用する。この緩み止めナット内周の雌ねじは、前記本体部分H3外周に設けた雄ねじN3と螺合する。
【0013】
このように前記の3つの本体部分H1,H2,H3が順次長手方向に連結固定されてリール装着本体20Hが形成されている。ここで第2の本体部分H2の外径は第3の本体部分H3の外径よりも大きく構成されており、夫々の領域に螺合する駆動ナットと緩み止めナットは、後者の外径が小さく構成されている。このため、緩み止めナットは不用意に回動され難い。また、この例では第2の本体部分H2の雄ねじN2と第3の本体部分H3の雄ねじN3とはねじの方向が反対方向である逆ねじの関係になっている他、中心軸線が一致している。逆ねじ故、駆動ナットに対する緩み止めナットの緩み止め効果が高くなる。
【0014】
駆動ナットNAの前記緩み止めナット側の端面部には、前記中心軸線(竿杆10の中心軸線でもある)を中心として環状凹部KOが形成されている。この例では、環状凹部を区画形成している外周壁面と内周壁面とは図2において竿杆の中心軸線に平行な凹部である。また、この凹部と対向する緩み止めナットNBの端面部には、前記中心軸線を中心とした環状凸部KTが設けられている。この環状凸部を区画形成している外周壁面と内周壁面とは図2において竿杆の中心軸線に平行である。なお、この例の環状凸部に代わって、円周方向に離散的に配設された複数個の凸部としてもよい。
【0015】
上記のような環状凸部や複数個の凸部とし、これを駆動ナットNAの端面部の環状凹部に係合させた場合、リールRの足RAから移動フードFAが力を受け、この移動フードに一体化されている駆動ナットNAが既述の不可避的な各種隙間に起因して傾斜しても、凸部が凹部に挿入係合しているため、凸部と凹部の各対向壁面同士が押圧し合う位置は、従来技術で述べたような一か所ではなく、互いに離隔した2か所以上となる。環状凸部の場合は180度反対側である2か所又は2か所以上である。
【0016】
更に、緩み止めナットNBの環状凸部KTの端面には、この例では円周方向に90度間隔で配設された4個の小突起TBが設けられている。一方、駆動ナットNAの環状凹部KOの底面には、前記小突起が嵌り込める小窪部TAが90度間隔で4箇所に設けられている。緩み止めナットを回転進行させると、小突起TBを含む環状凸部KTの端面が駆動ナットNAの環状凹部KOの底面に当接し、これを押圧して緩み止め効果を高め、その環状凸部KTを駆動ナットNAの環状凹部KOに係合させ、更に前記小突起TBを小窪部TAにも係合させると、駆動ナットが単独で緩むことを更に強く防止できる。
【0017】
図5は本発明に係る他の実施形態例としての釣竿の要部拡大縦断面図である。図2の例と異なる事項を主に説明する。主たる相違点は3点ある。一つは、移動フードFAと駆動ナットNAは別部品として形成されており、周知の係合構造によって駆動ナットの回動操作によって移動フードが竿杆の中心軸線方向に駆動される。第2の点は、リール装着本体20H’が1つの部品で構成されており、雄ねじ部H4は本体部分H1よりも小径であって、雄ねじ部の範囲は一定外径であり、1つの方向の雄ねじのみである。
【0018】
第3の点は、駆動ナットの環状凹部KO’を区画形成している外周壁面と内周壁面とは平行でなく、緩み止めナットに向かって広がる先拡がりテーパ状である。一方、緩み止めナットの環状凸部KT’は駆動ナットに向かって狭まる先細テーパ状である。このため、環状凸部KT’を環状凹部KO’に挿入係合させて行くと、各環状部が径方向に必然的に押圧し合う。このため、駆動ナットに対する緩み止め効果の信頼性が高くなる。
【0019】
以上の各実施形態例における凹部と凸部を設ける部材を入れ替えてもよい。また、各ねじは同じピッチであったが、これを変え、緩み止めナットの螺合する領域の雄ねじのピッチを、駆動ナットの螺合する領域の雄ねじのピッチよりも小さくすると、更に緩み止め効果が高まる。また、一対のフードは、一方のみが移動フードであったが、両方とも移動フードであってもよい。この場合、一方の移動フードのみにつき本願発明構造を有していればよいし、両方本願発明構造を有していてもよい。また、各実施形態例で述べた変形例は、他の実施形態例にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、リール装着部を有する釣竿に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明に係る一実施形態例としての釣竿の側面図である。
【図2】図2は図1のB部の拡大縦断面図である。
【図3】図3は図2の要部の図2とは異なる部分断面図である。
【図4】図4は図2の矢視線D−Dによる横断面図である。
【図5】図5は本発明に係る他の実施形態例としての釣竿の要部拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 竿杆
20H,20H’ リール装着本体
FA 移動フード
KO 環状凹部
KT 環状凸部
NA 駆動ナット
NB 緩み止めナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール装着本体と、少なくとも一方を移動フードとする一対のフードを有するリール装着部を設けた釣竿において、
前記一方の移動フードは、リール装着本体に設けた駆動ナット用雄ねじと螺合した駆動ナットによって釣竿の長手方向に駆動される構造であり、
前記駆動ナットのナット端面であって、前記一方の移動フードとは前記長手方向反対側のナット端面と対向する対向端面を有し、前記駆動ナット用雄ねじと同じ軸線を中心軸線とする他の雄ねじと螺合する緩み止めナットを具備し、
前記駆動ナットの前記ナット端面の部位と前記緩み止めナットの前記対向端面の部位とには、これらが係合し合う凹凸部を設けたことを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記凹凸部は、何れかのナットに設けられて前記軸線を中心軸線とした環状の凹部と、前記軸線を中心軸線とした環状に設けられているか又は前記軸線の周りに角度間隔を設けつつ複数個配設した凸部とを有する請求項1記載の釣竿。
【請求項3】
前記凹部と凸部は前記軸線の方向に沿ってテーパになっており、緩み止めナットが駆動ナットに近づくに従って、係合する凹部と凸部間の隙間が小さくなる請求項2記載の釣竿。
【請求項4】
前記駆動ナット用雄ねじと前記他の雄ねじとのピッチが異なり、他の雄ねじのピッチの方が小さい請求項1〜3の何れか1記載の釣竿。
【請求項5】
前記駆動ナット用雄ねじと前記他の雄ねじとは逆ねじの関係になっている請求項1〜4の何れか1記載の釣竿。
【請求項6】
前記緩み止めナットは前記駆動ナットよりも小径に形成されている請求項1〜5の何れか1記載の釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−193780(P2011−193780A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−63525(P2010−63525)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】