説明

釣竿

【課題】尻栓を螺着した釣竿であって、度当て面による十分な回り止めを確保でき、尻栓の緩みを防止できる釣竿を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る釣竿1は、着脱可能に螺着した尻栓10を有する。釣竿1および尻栓10には、釣竿1に尻栓10を螺着した時に釣竿1と尻栓10とが互いに当接する度当て面20,30が設けられる。この場合、度当て面20,30は、釣竿の長手方向軸Oに直交する面に対して傾斜している。また、釣竿1および尻栓10の度当て面20,30には回り止め用の凹凸23,33が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着脱可能に螺着した尻栓を有する釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
釣竿においては、従来から、竿杆内へのゴミや水の浸入を防止するため、また、順次に収納された竿杆の脱落を防止するため、釣竿(元竿)の後端部に尻栓が取り付けられている。
【0003】
例えば、特許文献1に開示された尻栓付きの釣竿にあっては、釣竿の後端部の内側に螺子部(雌ねじ)が形成されており、尻栓の中央部に突設された螺子突起部(雄ねじ)を釣竿の前記螺子部(雌ねじ)に螺合することにより、尻栓が釣竿に取り付けられる。
【0004】
この特許文献1に開示された尻栓は、釣竿に螺着された時に、その螺子突起部の周囲の度当て面が釣竿側の度当て面に当接するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭54−182391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された尻栓付きの釣竿は、釣竿側の度当て面と尻栓側の度当て面とが正面に向かい合って当接し(度当て面同志が釣竿の長手方向軸と直交する面内でほぼ当接し)、したがって、度当て面を広くとりにくいため、度当て面による回り止めを十分に行なうことができない。そのため、尻栓が緩む可能性がある。
【0007】
本発明は、前記事情に着目してなされたものであり、その目的とするところは、尻栓を螺着した釣竿であって、度当て面による十分な回り止めを確保でき、尻栓の緩みを防止できる釣竿を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、着脱可能に螺着した尻栓を有する釣竿において、前記釣竿に前記尻栓を螺着した時に前記釣竿と前記尻栓とが互いに当接する度当て面を設け、前記度当て面が釣竿の長手方向軸に直交する面に対して傾斜していることを特徴とする。
【0009】
この請求項1に記載の発明によれば、釣竿および尻栓の度当て面が釣竿の長手方向軸に直交する面に対して傾斜しているため、度当て面による釣竿と尻栓との接触部分(接触面積)が増え(釣竿および尻栓の度当て面が釣竿の長手方向軸に直交する面と平行な特許文献1の場合と比べて)、釣竿に螺着した尻栓が回動し難くなる(度当て面による十分な回り止めを確保できる)。したがって、尻栓の緩みが防止される。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記釣竿および前記尻栓の度当て面がいずれも釣竿の長手方向軸周りに配されていることを特徴とする。
【0011】
この請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、釣竿の長手方向軸を中心とする尻栓の回動に伴う度当て面の回り止めを効果的に実現できる。
【0012】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記釣竿または前記尻栓の少なくともいずれか一方の度当て面に回り止め用の凹凸を設けたことを特徴とする。
【0013】
この請求項3に記載の発明によれば、請求項1または請求項2に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、度当て面の凹凸が相手側の度当て面に強く当たって尻栓の回動を効果的に防止できる。
【0014】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発明において、前記釣竿または前記尻栓の度当て面の少なくともいずれか一方が、釣竿に尻栓を螺着した時に撓む材料で形成されていることを特徴とする。
【0015】
この請求項4に記載の発明によれば、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の発明と同様の作用効果が得られるとともに、尻栓が螺合されると、少なくとも一方の度当て面が歪んだ状態で他方の度当て面に押圧されるため(互いに圧着するため)、尻栓の回動を効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、尻栓を螺着した釣竿であって、度当て面による十分な回り止めを確保でき、尻栓の緩みを防止できる釣竿を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る釣竿の概略側面図である。
【図2】図1の釣竿および尻栓の部分断面図であって、尻栓を釣竿に対して螺着する前の状態を示す断面図である。
【図3】図1の釣竿に対して尻栓を螺着した状態を示す要部断面図である。
【図4】図3のA−A線に沿う断面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る釣竿の概略側面図である。
【図6】図5の釣竿および尻栓の部分断面図であって、尻栓を釣竿に対して螺着する前の状態を示す断面図である。
【図7】図5の釣竿に対して尻栓を螺着した状態を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る釣竿の実施形態について、添付図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1ないし図4は本発明の第1の実施形態を示している。図1に示されるように、本実施形態の釣竿1は、竿杆2と、竿杆2の基部に設けられるハンドル5と、ハンドル5の基部に螺着される尻栓10とから成る。竿杆2には、その長手方向軸Oに沿って所定の間隔を隔てて複数の釣り糸ガイド3が設けられている。また、ハンドル5は、図示しないリールが着脱自在に取り付けられるリール取付部4を有する。なお、竿杆2の基部は、リール取付部4およびハンドル5内に挿通されて接着固定される。
【0020】
前述したように、ハンドル5の後端部には尻栓10が着脱自在に螺合されており、ハンドル5から尻栓10を外してハンドル5の後端部の孔の中の空間部内にバランサ(重り)等を収納できるようになっている。
【0021】
本実施形態において、ハンドル5は、釣竿の後端部を形成しており、木材やバルサ等の天然材料またはゴム、合成樹脂(例えば、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル、ナイロン、ABSなどの可撓性材料)から形成される。また、図2ないし図4に示されるように、ハンドル5には、その後端部から釣竿1の長手方向軸Oに沿って延びる螺子部を有する螺子孔21が形成されており、この螺子孔21に尻栓10が着脱可能に螺合される。なお、螺子孔21は、可撓性を有さない材料で形成されても良い。
【0022】
尻栓10は、ゴム、合成樹脂等の可撓性を有する材料(例えば、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル、ナイロン、ABS)から形成され、キャップ形状の栓本体35と、栓本体35から前方に突出する螺子杆32とを有している。栓本体35には、その周縁部に沿ってこれを1周するように前方に向けて周壁部36が突設されており、この周壁部36に囲まれた内側が凹部39となっている。周壁部37によって画定される凹部39の内側は、凹部39の内奥から周壁部37の上端(稜線部37)へ向かって立ち上がる傾斜面30(後述する度当て面を形成する)を有する土手状に形成されている。すなわち、傾斜面(度当て面)30は、釣竿1に取り付けた状態で長手方向軸Oに対し釣竿1の前端部に向けて長手方向軸Oから離れる方向に向かい、釣竿1の長手方向軸Oに直交する面に対して釣竿1の前端側に傾斜している(長手方向軸Oに対して所定の角度θを成している)。また、凹部39の中央には前方に向けて外周部に螺子部を有する前述した螺子杆32が突設されている。なお、螺子杆32は、可撓性を有さない材料で形成されても良い。
【0023】
周壁部37の内側の傾斜面30は、釣竿1側のハンドル5の後端(後述の度当て面20)に当接する度当て面を形成しており、釣竿1の長手方向軸Oを囲んで弧状に配されている(釣竿1の長手方向軸O周りに配されている)。また、この度当て面30には、周壁部37の内側に沿って1周するように、周壁上端(稜線部)37から凹部39の内奥側へ向けて回り止め用の凹凸部33(凸と凹とが交互に連なる)が形成されている。この凹凸部33は、尻栓10を形成する材料にしたがって可撓性を有する。
【0024】
一方、釣竿1側のハンドル5の後端の外周面には、釣竿1の後方から前方へ向けて螺子孔21側(長手方向軸O側)からハンドル5の外周側へと立ち上がる傾斜面20が形成されている。この傾斜面20は、尻栓10の度当て面30に当接する度当て面を形成しており、尻栓10の傾斜面30と同様に釣竿1の前端部に向けて長手方向軸Oから離れる方向に向かい、釣竿1の長手方向軸Oに直交する面に対して釣竿1の前端側に傾斜する(長手方向軸Oに対して所定の角度θを成す)とともに、釣竿1の長手方向軸Oを囲んで弧状に配されている(釣竿1の長手方向軸O周りに配されている)。また、この度当て面20には、その外周に沿って1周するように回り止め用の凹凸部23(凸と凹とが交互に連なる)が形成されている。この凹凸部23も、ハンドル5を形成する材料にしたがって可撓性を有する。
【0025】
したがって、以上のような構成において、釣竿1への尻栓10の装着は、ハンドル5の後端の螺子孔21に尻栓10の螺子杆32を差し込んで、ハンドル5の後端の度当て面20と尻栓10の周壁部37内側の度当て面30とが互いに当接するまで栓本体35を回動させて、螺子杆32を螺子孔21に螺合させることによって達成される。この時、栓本体35は、両者の度当て面20,30が近づくと、両者の凹凸部23,33同志が当たりながら回動するが、少なくとも尻栓10の凹凸部33が可撓性を有するため(両方の凹凸部23,33が可撓性を有してもよい)、この可撓性の凹凸部33が変形して凹凸23を避けながらこれに次第に深く係合していく。そして、度当て面20,30同志が当接した時点で栓本体35の回動が阻止され、それにより、尻栓10がハンドル5に対して装着される。
【0026】
なお、ハンドル5の度当て面20および尻栓10の度当て面30は、釣竿1の長手方向軸Oに対して釣竿の前方へ立ち上がる傾斜を有しており、共通する方向に傾斜し対向して当接するが、度当て面20,30同志が互いに変形しながら当接するため、各度当て面20,30の傾斜角θを同一にするか、あるいは、尻栓10側の度当て面30の方の傾斜角度をハンドル5側の度当て面20よりも浅くすることが好ましい。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、釣竿1および尻栓10の度当て面20,30が釣竿1の長手方向軸Oに直交する面に対して傾斜しているため、度当て面20,30による釣竿1と尻栓10との接触部分(接触面積)が増え(釣竿および尻栓の度当て面が釣竿の長手方向軸に直交する面と平行な特許文献1の場合と比べて)、釣竿1に螺着した尻栓10が回動し難くなる(度当て面20,30による十分な回り止めを確保できる)。したがって、尻栓10の緩みが防止され、ゴミが侵入し難い。また、凹凸が係合していると、水が浸入しても緩み難い。
【0028】
また、本実施形態では、尻栓10の螺子杆32は釣竿1の螺子孔21に螺合されると長手方向軸Oを中心に回動しながら尻栓10と共に長手方向軸Oの方向に移動し、釣竿1および尻栓1の度当て面20,30がいずれも釣竿1の長手方向軸O周りに配されて対向して当接しているため、釣竿1の長手方向軸Oを中心とする尻栓10の回動に伴う度当て面20,30の回り止めを効果的に実現できる。また、本実施形態では、釣竿1および尻栓10の度当て面2,30に回り止め用の凹凸部23,33が設けられているため、度当て面20,30の凹凸が相手側の度当て面に強く当たって尻栓10の回動を効果的に防止できる。更に、本実施形態では、尻栓10の度当て面30が釣竿に尻栓を螺着した時に撓む材料によって形成されているため(ハンドル5側もそのように形成されても良い)、尻栓10が螺合されると、度当て面30が歪んだ状態で度当て面20に押圧されるため(互いに圧着するため)、尻栓10の回動を効果的に防止できる。
【0029】
図5ないし図7は本発明の第2の実施形態を示している。図示のように、本実施形態の釣竿1Aは、複数の竿杆2が順次に収納された振り出し竿の形態を成しており、元竿2aの後端外周の螺子部51に尻栓10Aが被嵌するように螺合装着される。
【0030】
元竿2aの後端部には、外側から内側へと立ち下がる度当て面としての傾斜面50が設けられており、この傾斜面(度当て面)50には後端縁部で開口する切り欠き状の凹部53が設けられている。
【0031】
尻栓10Aのキャップ形状の栓本体63は、金属によって形成されており、内側底部にゴムや合成樹脂等の可撓性材料から成る度当て部材70が取り付けられている。この度当て部材70は、元竿2aの後端部の傾斜面(度当て面)5に当接する傾斜状の度当て面75と、元竿2aの内側に嵌合する嵌合部71と、元竿2aの凹部53に係合する係合突起72とを有している。
【0032】
また、両方の度当て面50,75は、長手方向軸Oに対し釣竿1の後端部に向けて長手方向軸Oから離れる方向に向かい、釣竿1の長手方向軸Oに直交する面に対して釣竿の後端側に傾斜する(長手方向軸Oに対して所定の角度θを成す)とともに、釣竿1の長手方向軸O周りに配されている。
【0033】
このような構成では、尻栓10Aを元竿2aの後端部外周に螺合すると、元竿2aの後端部の傾斜面(度当て面)50に度当て部材70の度当て面75が変形しながら当接し、係合突起72が変形しながら元竿2aの凹部53に係合して尻栓10Aの緩みが防止される。
【符号の説明】
【0034】
1,1A 釣竿
10,10A 尻栓
20,30,50,75 度当て面
23,33 凹凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱可能に螺着した尻栓を有する釣竿において、前記釣竿に前記尻栓を螺着した時に前記釣竿と前記尻栓とが互いに当接する度当て面を設け、前記度当て面が釣竿の長手方向軸に直交する面に対して傾斜していることを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記釣竿および前記尻栓の度当て面がいずれも釣竿の長手方向軸周りに配されていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記釣竿または前記尻栓の少なくともいずれか一方の度当て面に回り止め用の凹凸を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記釣竿または前記尻栓の度当て面の少なくともいずれか一方は、釣竿に尻栓を螺着した時に撓む材料で形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−24482(P2011−24482A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−173366(P2009−173366)
【出願日】平成21年7月24日(2009.7.24)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】