釣糸ガイド
【課題】重量が軽く、比強度、比剛性及び撓み性に優れた釣糸ガイドを提供する。
【解決手段】本発明に係る釣糸ガイド1は、釣糸を挿通させるリング保持部3と、釣竿に固定される固定部5Bと、リング保持部3と固定部5Bとを連結し、かつ釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部8と、を具備した繊維強化合成樹脂製のフレーム2を有する。支脚部8は、リング保持部3から固定部5Bに向かって延びる傾斜状部8aを有すると共に、傾斜状部は、傾斜方向Dに指向する強化繊維を配設していることを特徴とする。
【解決手段】本発明に係る釣糸ガイド1は、釣糸を挿通させるリング保持部3と、釣竿に固定される固定部5Bと、リング保持部3と固定部5Bとを連結し、かつ釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部8と、を具備した繊維強化合成樹脂製のフレーム2を有する。支脚部8は、リング保持部3から固定部5Bに向かって延びる傾斜状部8aを有すると共に、傾斜状部は、傾斜方向Dに指向する強化繊維を配設していることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に装着されて釣糸を案内する釣糸ガイドに関し、詳細には、釣糸が挿通されるガイドリングを保持するフレーム部分に特徴を有する釣糸ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した釣糸ガイドは、釣竿の外周面に装着されるフレームと、フレームに止着され、実際に釣糸が挿通されるガイドリングとを備えた構成となっている。前記フレームは、例えば、特許文献1に記載されているように、ステンレスやチタン等の金属製の板材料をプレス加工することで一体形成するのが一般的となっており、フレームには、釣糸を挿通させるガイドリングを保持するためのリング保持部と、釣竿の外表面に装着するための固定部が一体形成されている。
【0003】
また、最近では、例えば、特許文献2に見られるように、釣糸ガイドの構成素材として繊維強化合成樹脂を用いることも提案されている。この特許文献2には、ガイドリングを保持するリング保持部と、釣竿に取り付けられる取付装着部(固定部)と、リング保持部と取付装着部との間に位置する脚部(支脚部)とを、繊維強化合成樹脂のプリプレグで一体形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−340661号
【特許文献2】特開2010−154860号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した特許文献1に開示されている公知技術では、フレームが金属材料で形成されているため、重量が重く、比強度、比剛性、撓み性等の性能が悪く、釣竿の性能の向上を図る上でネックとなっている。例えば、より軽量化が要求される釣竿では、上記したような釣糸ガイドを軸長方向に沿って多数装着すると、所望の性能が発揮できなくなってしまう。
【0006】
また、上記した特許文献2に開示されている構成では、釣糸ガイドの軽量化は図れるものの、繊維強化合成樹脂材を構成する強化繊維の配置態様については何等考慮されていないことから、上記の特許文献1に開示されている釣糸ガイドと同様、比強度、比剛性、撓み性等の性能が十分ではない。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、重量が軽く、比強度、比剛性及び撓み性に優れた釣糸ガイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に固定される固定部と、前記リング保持部と固定部とを連結し、かつ釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化合成樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドであって、前記支脚部は、前記リング保持部から前記固定部に向かって延びる傾斜状部を有すると共に、前記傾斜状部は、傾斜方向に指向する強化繊維を配設していることを特徴とする。
【0009】
上記した構成の釣糸ガイドは、釣糸ガイドを構成するフレームが、繊維強化合成樹脂材で構成されるため、軽量化が図れると共に、このような構造の釣糸ガイドを装着した釣竿は本来の特性を発揮し易くなる。また、釣糸が挿通されるリング保持部から釣竿(竿杆)に固定される固定部に向かって延びる傾斜状部を設けたことで、釣糸が絡み難く、竿先方向に抜け易いと共に、釣糸が絡まる等によって負荷が作用しても、その傾斜方向に指向した強化繊維が配設されていることから、その部分における撓み性が良くなり、比強度及び比剛性に優れた構成となる。
【0010】
なお、上記した構成において、支脚部は、釣糸が挿通される部分と、竿杆に固定される固定部とを連結する部分であり、釣糸からの負荷が大きく作用する部位である。また、支脚部は、挿通される釣糸を竿杆表面から離間させる部位でもあり、長手方向(釣竿が延出する方向であり、前後方向となる)に沿って傾斜した部分が該当する。傾斜状部は、片足ガイドとして構成される場合、1つ或いは幅方向(左右方向)に対になって形成されていても良く、両足ガイドとして構成される場合であっても、リング保持部に対して前後方向において、1つ或いは幅方向(左右方向)に対になって形成されていても良い。また、傾斜状部や固定部には、開口や切欠部が形成されていても良い。
【0011】
また、前記リング保持部は、繊維強化合成樹脂で構成されるフレームとは別体で形成されて釣糸を挿通させるガイドリングを取着する構成以外にも、リング保持部そのものを加工処理することで、別体としてのガイドリングを取着することなく、釣糸が挿通できるようにした構成を含む。
【0012】
また、傾斜状部の傾斜方向は、傾斜状部における略中心線が指向する方向によって規定され、配設される強化繊維は、そのような傾斜方向に一致するか、略一致するように配設されていれば良い。この場合、強化繊維は、傾斜方向に対して、±15度の範囲、好ましくは±10度の範囲内に配設されていれば良いが、リング保持部や固定部に近い位置では、これらの部分に合わせて形状調整や剛性の強度を調整する必要があるため、強化繊維の方向を±15度以上変化させても良く、例えば、±20度の範囲でも良い。さらに、傾斜状部における略中心線と竿杆の軸線とが交差する角度をαとした場合、角度αが30°以下になるときは、その1/2以内の範囲(例えば、αが30°のときは15°以内)で指向するようにすれば良い(図2参照)。
【0013】
また、上記したように傾斜方向に指向する強化繊維は、傾斜状部において複数の繊維強化合成樹脂層が積層されるケースでは、強化繊維が傾斜方向に指向した状態の層が存在していれば良く、そのような複数の層の中には、傾斜方向以外の方向に強化繊維が指向している層が存在していても良い。すなわち、少なくとも強化繊維が傾斜方向に指向している部分(層)が存在していれば、上記した、撓み性の向上、比強度、比剛性の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、重量が軽く、比強度、比剛性及び撓み性に優れた釣糸ガイドが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る釣糸ガイドの第1の実施形態を示す図であり、穂先竿に釣糸ガイドを装着した状態を示す図。
【図2】図1に示す釣糸ガイドの側面図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】図2のB−B線に沿った断面図。
【図5】図2のC−C線に沿った断面図。
【図6】本発明に係る釣糸ガイドの第2の実施形態を示す縦断面図。
【図7】本発明に係る釣糸ガイドの第3の実施形態を示す平面図。
【図8】図7に示す釣糸ガイドの側面図。
【図9】図8に示す釣糸ガイドを矢印方向から見た図。
【図10】本発明に係る釣糸ガイドの第4の実施形態を示す側面図。
【図11】図1に示す釣糸ガイドの製造方法の一例を説明する図(その1)。
【図12】図1に示す釣糸ガイドの製造方法の一例を説明する図(その2)。
【図13】図10に示す釣糸ガイドの製造方法の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から図5は、本発明に係る釣糸ガイドの第1の実施形態を示す図であり、図1は穂先竿に釣糸ガイドを装着した状態を示す図、図2は図1に示す釣糸ガイドの側面図、図3は図2のA−A線に沿った断面図、図4は図2のB−B線に沿った断面図、そして、図5は図2のC−C線に沿った断面図である。
【0017】
本実施形態の釣糸ガイド1は、釣竿の内、穂先竿杆の先端に装着される、いわゆるトップガイドとして構成されており、繊維強化合成樹脂製のフレーム2を有している。
【0018】
前記フレーム2は、環状に形成されガイドリング10を保持するリング保持部3と、釣竿である竿杆(穂先竿杆)Rに固定される固定部と、リング保持部3と固定部を連結する支脚部と、を備えている。この場合、固定部は、竿杆に対して固定される部分が該当し、例えば、竿杆の表面に対して固定されるもの、竿杆が嵌入して固定されるものが該当する。本実施形態の固定部は、竿杆Rが嵌入される部分として構成されており、具体的に、長手方向の中間部分に開口9を形成したことで、前後方向に分割された第1固定部と第2固定部とを備えた構造となっている。すなわち、固定部は、竿杆Rの先端が嵌入される孔(竿杆固定孔)5aを有する第1固定部5Aと、竿杆Rの先端側が挿通される孔(竿杆固定孔)5bを有する第2固定部5Bと、を備えた構造となっている。
【0019】
前記リング保持部3は、前記第1固定部5Aの上方(図2では下方となっている)に配置されており、釣糸が挿通される部分となる(釣糸挿通方向を矢印Xで示す)。上記したように、リング保持部3は、全体として略円形の外形状(環状)に形成されており、釣糸を案内するガイドリング10を嵌入、固定させるための開口3aを備えている。この場合、開口3aに嵌入、固定されるガイドリング10は、リング状に構成され、その内周面である釣糸案内面10a部分での摺動抵抗が小さい素材、例えば、チタン、アルミ、SUS、セラミックスなどによって形成されている。なお、「リング保持部」とは、上記したガイドリング10を装着して釣糸を案内する他、ガイドリングを装着することなく、開口3aで直接、釣糸を案内する構成も含む。
【0020】
前記固定部5A,5Bと環状に形成されたリング保持部3との間は、支脚部によって連結されている。ここで、「支脚部」とは、リング保持部3に挿通される釣糸を竿杆の表面から離間させる部位が該当しており、本実施形態の構成では、前記第1固定部5Aとリング保持部3との間に形成される第1支脚部7と、前記第2固定部5Bとリング保持部3との間に形成される第2支脚部8とを備えている。すなわち、本実施形態では、上記したように、固定部の中間部分に長手方向に沿うように開口9を形成しており、これに対応して支脚部にも、長手方向に沿って切欠きを形成しており、軸方向に複数の支脚部7,8を有する構成となっている。このため、開口9が形成される領域では、竿杆Rが露出した状態となっている。
【0021】
第1支脚部7は、前記リング保持部3と一体化されており、竿杆R(釣糸挿通方向X)に対して直交する方向に延出している。また、第2支脚部8は、図1に示すように、竿杆Rに対して対称となるように左右両側に設けられており、それぞれ、リング保持部3から第2固定部5Bに向かって延びる傾斜状部8aを備えている。すなわち、「傾斜状部」は、釣糸の挿通方向Xに所定の長さを有し、リング保持部側(リング保持部又はリング保持部を支持する第1支脚部)から第2固定部5Bに向かって延出した部分となる。
【0022】
なお、本実施形態では、フレームを、後述するように、繊維強化合成樹脂製の管状の部材を切り出すことで形成することから、第2支脚部8(傾斜状部8a)の外側表面は、図4に示すように、湾曲状となっている。また、左右それぞれに設けられた第2支脚部(傾斜状部)については、釣糸ガイドのタイプや釣竿に装着される位置などによって特定され、第2固定部5Bからの高さや、固定部5Bの孔5bからの左右への膨出量については、任意に設定することが可能である。
【0023】
そして、それぞれの傾斜状部8aには、傾斜方向に指向するように強化繊維が配設されている。この場合、傾斜状部の傾斜方向については、図2で示すように側面視した際、傾斜状部における略中心となる線D(固定部とリング保持部の中間領域において、略中心となる線;中心線Dとする)が指向する方向によって規定される。ここで、「指向する方向」について詳細に説明すると、傾斜状部8aは、釣糸が引っ掛かっても絡み難く、竿先方向に抜け易い構成とするのが好ましいため、リング保持部3や固定部5Bに近い位置ではこれらの部分に合わせて形状調整や剛性の強度を調整する必要があり、傾斜状部全てに亘って同一の傾斜方向とならない。すなわち、図2に示すように、第2固定部5Bに近い領域の表面は、凹状の緩傾斜8dとなっており、リング保持部3に近い領域の表面は、凸状の急傾斜8eとなって、最終的に傾斜が緩やかになってリング保持部3の頂部3cに移行しており、傾斜状部8a全てに亘って同一の傾斜方向とはならない。
【0024】
本発明では、釣糸が絡んでも抜け易く構成した傾斜状部8aに関し、釣糸が絡む等により負荷が作用しても、その傾斜方向に沿って強化繊維を配設することで、その部分における撓み性を良くして、比強度及び比剛性を向上するようにしている。このため、傾斜状部に配設される強化繊維については、そのような傾斜方向(中心線Dが指向する方向)に一致するか、略一致するように配設されているのが好ましいが、傾斜方向に対して、±15度の範囲、好ましくは±10度の範囲内に配設されていれば、そのような作用効果を奏することが可能である。ただし、リング保持部3や固定部5Bに近い領域では、上記したように、これらの部分に合わせて形状調整や剛性の強度を調整する必要があるため、強化繊維の方向については、前記中心線Dに対して±15度以上変化していても良い。
【0025】
また、本実施形態の構成では、第2支脚部8は、竿杆Rに対して対称となるように左右両側に形成されており、かつ、フレームを、繊維強化合成樹脂製の管状の部材を切り出すことで形成することから、左右それぞれの傾斜状部8aは、後述するように、傾斜方向に沿う強化繊維に加え、これと交差する方向の強化繊維を含んだ状態となっている。
【0026】
次に、上記したように構成される釣糸ガイド1の製造方法例を、図11及び図12を参照して説明する。
【0027】
上記した釣糸ガイド1を構成するフレーム2は、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグ(以下、プリプレグと称する)を巻回した管状の部材から形成される。この場合、上記した釣糸ガイドの固定部5A,5Bの領域、及びリング保持部3の領域は、図11及び図12に示すように、2つの管状部材が一体化されたもの(以下、一体化構造と称する)から形成される。すなわち、このような一体化構造は、径が異なる芯金に対して、それぞれプリプレグを巻回してこれを隣接配置しておき、更に隣接配置された2本の芯金に対してプリプレグを順次、巻回した後、加熱工程、脱芯工程を経て形成することが可能である。なお、巻回されるプリプレグは、強化繊維が一方向に引き揃えられた状態、或いは強化繊維を編成したシート状(織布状)にされたもの、テープ状にしたものであり、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)や熱可塑性樹脂(例えば、ナイロン)をマトリックス樹脂として含浸した構成となっている。また、強化繊維については、カーボン繊維、ガラス繊維などの無機繊維、アラミド繊維、ポリエーテルイミドなどの有機繊維、SUS、チタンなどの金属繊維を用いることができる。
【0028】
具体的に、上述した固定部5A,5Bの内層側は、細径の芯金M1に対して周方向に強化繊維を引き揃えたプリプレグ20を巻回することで形成され、リング保持部3の内層側は、芯金M1よりも太径の芯金M2に対して強化繊維を織布状にしたプリプレグ21を巻回することで形成される。そして、上記したようにプリプレグ20,21をそれぞれ巻回した芯金M1,M2は、図12に示すように、各プリプレグが接触するように隣接配置され、このように隣接配置された状態の芯金M1,M2に対し、プリプレグ24,25,26,27を両方の芯金の外周に順次巻回することで、リング保持部3の外層側、固定部5A,5Bの外層側、及び支脚部7,8が形成される。
【0029】
この場合、隣接配置した芯金M1,M2に対して巻回されるプリプレグは、最も内側の層となるプリプレグ24が周方向に強化繊維を引き揃えたものであり、その上の層となるプリプレグ25が傾斜方向に強化繊維を引き揃えたものとなっている。また、その上の層となるプリプレグ26は、プリプレグ25と交差する傾斜方向に強化繊維を引き揃えたものであり、最外層となるプリプレグ27は、強化繊維を織布状にしたものである。
【0030】
なお、隣接配置された状態の芯金M1,M2に対し、順に、プリプレグ24〜27を巻回する前に、芯金M1とM2の間に存在する窪み領域に、長手方向に沿って充填部材22を配置しておくことが好ましい。この充填部材は、合成樹脂を含浸した繊維束(繊維強化合成樹脂)、合成樹脂、軽量な材料(比重が2.0以下)等によって構成されており、このような充填部材22を配設することで、図3及び図5に示すように、固定部とリング保持部との間の隙間が埋まり、固定部における強度を向上することが可能となる。
【0031】
上記したように、芯金M1,M2を隣接して配置し、両者の窪みに対して充填部材22を充填し、その後、プリプレグ24〜27を順に巻回した芯金M1,M2は、テープ等によって保形され、加熱工程及び脱芯工程を経て、2本の管状部材が一体化された状態のもの(一体化構造)が成形される。
【0032】
そして、成形された一体化構造に対し、所定の位置を切り出すことにより、釣糸ガイド1のフレーム2が形成される(実際には、一体化構造は、軸方向に長いため、複数のフレームを形成することが可能である)。この場合、上記した芯金M1は、脱芯した後で最終的に竿杆Rが嵌入される固定部の孔5a,5bとなることから、竿杆Rの外径と略一致する外径を有するものが用いられる。また、上記した芯金M2は、脱芯した後で最終的にガイドリング10が取り付けられる開口3aとなることから、装着されるガイドリング10の外径と略一致する外径を有するものが用いられる。
【0033】
以下、一体化構造からフレーム2を切り出す方法について具体的に説明する。
まず、一体化構造に対し、軸長方向を横切る方向(交差する方向)に切り出しを行う。したがって、上記したように積層されたプリプレグによる繊維強化合成樹脂層は、そのまま径方向に積層された状態となる。次に、芯金M1を脱芯することで形成された管状体部分から、図2に示した開口9が形成されるように切り出しを行うと共に、芯金M2を脱芯することで形成された管状体部分から、第2支脚部8の傾斜状部8aが形成されるように切り出しを行う。
【0034】
このように、切り出しを行うことで、図3及び図5に示すように、上記したプリプレグ20によって第1固定部5A、第2固定部5Bの内層側が形成される。また、上記したプリプレグ21によってリング保持部3の内層側が形成される。すなわち、固定部とリング保持部は、独立した層であり、リング保持部の内層側は、図11に示したように強化繊維が織布状に配置されたもの(プリプレグ21)となる。また、固定部5A,5Bの内層側は、図11に示したように強化繊維が周方向に引き揃えられたもの(プリプレグ20)となる。
【0035】
さらに、固定部5A,5Bの外層側、リング保持部3の外層側、及び支脚部7は、ともに同じ繊維強化合成樹脂層で形成されており、内側から順に、周方向に強化繊維を引き揃えた層(プリプレグ24)、傾斜方向に強化繊維を引き揃えた層(プリプレグ25)、プリプレグ25による層の強化繊維と交差する傾斜方向に強化繊維を引き揃えた層(プリプレグ26)、強化繊維を織布状にした層(プリプレグ27)となる。
【0036】
なお、支脚部7の中心側の領域、及び固定部5Bの内層と外層との間には、充填部材22が配置された状態となっている。
【0037】
前記支脚部8(傾斜状部8a)は、上記した外層側の構成と同様、内側から順に、周方向に強化繊維を引き揃えた層(プリプレグ24)、傾斜方向に強化繊維を引き揃えた層(プリプレグ25)、プリプレグ25による層の強化繊維と交差する傾斜方向に強化繊維を引き揃えた層(プリプレグ26)、強化繊維を織布状にした層(プリプレグ27)によって構成される。
【0038】
上述したように、傾斜状部8aに配設される強化繊維については、そのような傾斜方向(中心線Dが指向する方向)に一致するか、略一致、乃至は傾斜方向に対して、±15度の範囲、好ましくは±10度の範囲内に配設されているが、そのように方向付けされる強化繊維については、プリプレグ25,26によって構成される。すなわち、左右両側に設けられるそれぞれの傾斜状部8aは、両プリプレグ25,26の内、一方のプリプレグが、傾斜方向に沿う状態となり、他方のプリプレグが、その傾斜方向に沿った強化繊維に対して交差する方向に指向する状態となる。従って、巻回するプリプレグ25,26については、最終的に一体化構造からフレームを切り出す際、その切り出す方向(傾斜状部の指向方向)を考慮して、強化繊維の引き揃え方向がそのような方向に指向するものを選択すれば良い。また、傾斜状部では、上記したように、芯金を利用して形成することから、強化繊維を芯金形状に沿って傾斜方向、更には、周方向、長手方向に配置できるため(図3において、傾斜状部では、強化繊維が径方向に指向するような配置とならない)、効率的に強度を向上することができる。
【0039】
上記したように、図1及び図2に示すようなフレーム形状は、一体化構造に対して、所定の位置を切り出すことで一体形成される。この場合、形成されるフレーム2の部位に応じて、巻回するプリプレグの構成を変えたり、軸長方向に沿うように部分的に補強プリプレグを積層する等して、肉厚を変えることが可能である。例えば、固定部の領域に沿って軸長方向に沿うように補強プリプレグを積層して肉盛りすることで、固定部における強度を向上することも可能となる。或いは、図3に示す竿杆とガイドリングの離間距離Lについては、プリプレグ20,21の肉厚や巻回数などによって調整することが可能であり、図4に示す支脚部8についても、プリプレグ24〜27の肉厚、巻回数、切り出し方向等によって、更に外側方向に広げることも可能である。
【0040】
前記一体化構造からフレームを切り出すに際しては、刃具による切り出しの他、プレス加工による切り出し、液体(ウォータージェット等)による切り出し等、任意の方法を採用することで、複数のフレーム2を切り出すことが可能となり、これにより、軽量で高強度の釣糸ガイド(フレーム)を効率良く製造することが可能となる。
【0041】
この場合、リング保持部3については、長手方向軸を横切る方向に切り出すことで形成されるため、径方向の内側から外側方向に向けて繊維強化合成樹脂層が積層された状態となっており、これにより、効率的にリング保持部の強度向上及び安定化と、小型化、軽量化が可能となる。また、リング保持部3の内層側は、織布状のプリプレグによって構成されているため、断面を見た場合、表層部分は強化繊維が蛇行した状態で露出(突出)する状態となり、これにより、そこに装着されるガイドリング10の外周面に対して強化繊維の一部が当接してガイドリング10を確実に安定的に保持することができる。
【0042】
次に、切り出されたフレーム2に対して表面処理を施す。例えば、バレル加工を施すことで、表面のバリを除去すると共に、表面の光沢が得られる程度に仕上げ研磨を施す。この研磨の程度については、釣糸ガイド1のサイズや形状、材質特性などによって研磨剤や研磨時間などを任意に調整することが可能である。このようなバレル加工等を施すことにより、強化繊維を切断することなく、フレーム2を研磨することが可能となり、強度の安定化が図れると共に、外観の優れた釣糸ガイドとすることが可能となる。
【0043】
なお、上記の研磨工程を施すに際しては、フレーム2の表面に強化繊維が一部露出しマトリックス樹脂が一部残るように研磨することが好ましい。こうすることで、研磨表面の光沢をより一層向上することが可能となる。
【0044】
次に、必要に応じて、フレーム2の全体又は一部分に被膜を形成する。例えば、外観向上やフレーム本体の保護のために塗装を行なうことや、金属やセラミックスを蒸着等することも可能である。
【0045】
そして、上記したように形成されたフレーム2のリング保持部3の開口3aにガイドリング10を取り付ける。ガイドリング10の取り付け方法は、圧入や接着、カーリング、その他、任意の固定方法を採用することが可能である。
【0046】
上記したように構成される釣糸ガイド1によれば、フレーム2が繊維強化合成樹脂材で構成されるため、軽量化が図れると共に、このような構造の釣糸ガイドを装着した釣竿は本来の特性を発揮し易くなる。特に、穂先竿のような部分では、より軽量化が図れるため、繊細な当たりを感知し易くなり、より釣竿の性能の向上を図ることが可能となる。また、釣糸が挿通されるリング保持部3から釣竿(竿杆)に固定される固定部5Bに向かって延びる傾斜状部8aを設けたことで、釣糸が絡み難く、竿先方向に抜け易いと共に、たとえ釣糸が絡まる等によって負荷が作用しても、その傾斜方向に指向した強化繊維が配設されていることから、その部分における撓み性が良くなり、比強度及び比剛性に優れた構成となる。
【0047】
なお、本実施形態では、傾斜状部8aは、竿杆の左右両側に形成されているため、フレームとしての強度の向上が図れると共に、各傾斜状部は、傾斜方向に指向する強化繊維に加え、それと交差する方向に指向する強化繊維を含む(プリプレグ24による周方向に指向した強化繊維、及びプリプレグ27による織布状にされた強化繊維を含む)ため、前後方向、回転方向、ねじれ等、複合的な負荷に対してバランス良く強化することが可能となり、効率的に軽量化、小型化が可能となる。なお、強化繊維が傾斜方向に引き揃えられたプリプレグ25,26については、強度バランスを考慮して軸長方向に対して同角度で互いに逆方向となるように設定しておくのが好ましい。
【0048】
また、本実施形態の釣糸ガイド1は、フレーム2を形成するに際して、固定部の中間部分に長手方向に沿うように開口9、及びこれに対応して支脚部にも、長手方向に沿って切欠きを形成して、軸方向に左右対称となるように複数の支脚部7,8を有する形状となっている。このため、開口9が形成される領域では、竿杆Rが露出した状態となっており、これにより、フレームの強度低下を防止しつつ軽量化が図れると共に、竿杆の撓り性を向上することが可能となる。
【0049】
また、上記した竿杆を固定する固定部における孔部領域周辺(竿杆の固定孔が形成される部分)では、プリプレグ20及びプリプレグ24〜27で形成されることとなるが、軸長方向に指向する強化繊維を少なくすることが好ましい(本実施形態では、プリプレグ27の一部の強化繊維が軸長方向に指向した状態となっている)。すなわち、孔部領域周辺となる固定部では、軸長方向に指向する強化繊維を少なくすることにより、固定部において、必要以上に剛性が高くなることを防止でき、応力集中によるガイド取付部分からの竿杆の破損を防止でき、釣竿の撓りバランスを向上することが可能となる。
【0050】
なお、固定部において、軸長方向に指向する強化繊維を含んでいても良いが、その場合、軸長方向に指向する強化繊維よりも、軸長方向に対して交差する方向(周方向、交差方向を含む)の強化繊維の量が多く配設されていれば良い。好ましくは、軸長方向の強化繊維の量は、固定部における強化繊維量の合計の1/3以下に設定されていれば良い。
【0051】
次に、本発明に係る釣糸ガイドの別の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態では、上記した実施形態と同一の構成部分については、同一の参照符号を付して、詳細な説明については省略する。
【0052】
図6は、本発明に係る釣糸ガイドの第2の実施形態を示す縦断面図である。
本実施形態の釣糸ガイド1は、穂先竿の先端に限られず、固定部の長さや固定孔の大きさ等、釣糸ガイドの取り付け位置に合わせ任意に設定することができ、竿杆の任意の位置で使用できる構成となっている。釣糸ガイド1を構成するフレーム2は、リング保持部3と、釣竿に固定される固定部5を備えており、固定部5には、竿杆が挿通、固定されるように竿杆固定孔5dが形成されている。また、リング保持部3と固定部5との間には、両者を連結する第1支脚部17、及び第2支脚部18が形成されている。
【0053】
前記第1支脚部17は、前記リング保持部3と一体化されており、釣糸の繰り出し時や巻き取り時に竿杆表面と接触しないように、上記した第1実施形態と比較して高く(釣糸挿通方向Xに対して直交する方向に高く)形成されている。また、第2支脚部18は、図2に示した構成と同様、竿杆に対して対称となるように左右両側に設けられており、それぞれ、リング保持部3から固定部5に向かって延びる傾斜状部18aを備えている(片方の支脚部のみが示されている)。
【0054】
ここで、傾斜状部18aに配設される強化繊維については、上記した実施形態と同様、中心線Dが指向する方向(傾斜方向)と一致、又は中心線Dに対して、±15度の範囲、好ましくは±10度の範囲内に配設されている。また、そのような傾斜方向に指向する強化繊維に加え、その強化繊維と交差する方向(周方向、軸長方向、傾斜方向を含む)の強化繊維を配設しても良い。
【0055】
前記固定部5と第2支脚部18との間には、開口19が形成されると共に、第1支脚部17に、開口19に連通する抜き孔17aを形成している。この場合、開口19は、左右方向(図面に垂直な方向)に貫通しており、固定部5の表面においても切り込み5bを形成して開口19を広く形成している。このように、フレーム2に抜き孔17aや開口19を形成しておくことで、フレーム2を軽量化することが可能となる。
【0056】
上記したようなフレーム構造は、図11及び図12で示したような製法を用いて形成することが可能である。この場合、本実施形態では、上記したように、第1支脚部17に抜き孔17aを形成することから、図12で示した芯金M1と芯金M2を隣接して配置する際、両者の間に、抜き孔形成用の芯材(図示せず)を配置しておけば良い。
【0057】
また、フレーム2を切り出す際には、リング保持部3を前方側に傾斜させても良い(図6においてθが傾斜する角度となる)。このように、リング保持部3を前方側に傾斜させることで、釣糸の引っ掛かりを効果的に防止すること可能となる。なお、リング保持部(ガイドリング)の傾斜角度θについては、特に限定されることはないが、通常、0°から40°の範囲で設定される。
【0058】
図7から図9は、本発明に係る釣糸ガイドの第3の実施形態を示す図であり、図7は平面図、図8は図7に示す釣糸ガイドの側面図、図9は図8に示す釣糸ガイドを矢印方向から見た図である。
【0059】
本実施形態の釣糸ガイドは、両足ガイドとして構成されており、フレーム2は、環状に形成されガイドリング10を保持するリング保持部3と、釣竿の表面に、糸巻き等によって固定される固定部とを備えている。この場合、本実施形態の固定部は、リング保持部3から、それぞれ釣竿の軸長方向に沿って前方(竿先側)、及び後方(元側)に延びる2本の板状突片5D,5Eによって構成されている。また、フレーム2は、固定部である板状突片5Dとリング保持部3とを連結する第1支脚部27と、固定部である板状突片5Eとリング保持部3とを連結する第2支脚部28とを備えている。
【0060】
前記リング保持部3と元側となる板状突片5Eとの間を連結する支脚部28は、上記した実施形態と同様、竿杆に対して対称となるように、左右一対設けられている。また、両支脚部28は、図8に示すように、それぞれ、リング保持部3から板状突片5Eに向かって延びる傾斜状部28aを備えている。前記板状突片5Eと第2支脚部28との間には、左右方向に貫通する開口29が形成されており、板状突片5Eの表面においても切り込みを形成して開口29を広く形成してフレーム2の軽量化を図っている。
【0061】
前記傾斜状部28aに配設される強化繊維については、上記した実施形態と同様、中心線Dが指向する方向(傾斜方向)と一致、又は中心線Dに対して、±15度の範囲、好ましくは±10度の範囲内に配設されている。また、そのような傾斜方向に指向する強化繊維に加え、その強化繊維と交差する方向(周方向、軸長方向、傾斜方向を含む)の強化繊維を配設しても良い。
【0062】
このような釣糸ガイドのフレーム2は、例えば、繊維強化合成樹脂製の単一の管状体を切り出すことで形成することが可能である。この場合、リング保持部3に対して前後に延びる固定部(板状突片5D,5E)は、竿杆表面に固着されるため、管状体から切り出し工程を行った後に、固定される竿杆表面の湾曲に一致するように切削加工(細部加工)が施される。
【0063】
上記した構成の釣糸ガイドによれば、リング保持部の前方側と後方側の両方に釣竿固定部(板状突片)5E,5Dが設けられるため、釣竿に安定して保持されて釣糸を安定して案内することが可能となる。また、環状のリング保持部3、支脚部27,28及び固定部となる板状突片5E,5Dは、例えば、複数の繊維強化合成樹脂層で形成された管状体を切り出し処理することで、そのまま形成できるため、釣糸ガイド全体として軽量化が図れると共に、比強度、比剛性、及び撓み性に優れた構成の釣糸ガイドを容易に製造することが可能となる。
【0064】
なお、管状体を構成する複数の繊維強化合成樹脂層(プリプレグ)については、異なる方向に強化繊維を指向させることで、フレームに対して様々な方向から負荷が作用しても、それらの方向の剛性については、軽量化を図りつつ効率良く高めておくことが可能となる。また、強度についても、複数の繊維強化合成樹脂層を有することで効率的に向上することが可能となる。
【0065】
図10は、本発明に係る釣糸ガイドの第4の実施形態を示す側面図である。
本実施形態の釣糸ガイドは、片足ガイドとして構成されており、フレーム2は、環状に形成されガイドリング10を保持するリング保持部3と、釣竿Rの表面に、糸巻き等によって固定される固定部とを備えている。この場合、本実施形態の固定部は、リング保持部3から、後方(元側)に延びる板状突片5Fによって構成されている。また、フレーム2は、板状突片5Fとリング保持部3とを連結する支脚部38を備えている。
【0066】
前記支脚部38は、板状突片5Fの竿先側を屈曲させてリング保持部3に連結される部分であり、上述した実施形態と同様、傾斜状部38aを備えている。また、リング保持部3は、釣糸挿通方向Xに対する垂直方向から所定の角度(θ)傾斜しており、釣糸を抜け易く構成している。
【0067】
傾斜状部38aに配設される強化繊維については、上記した実施形態と同様、中心線Dが指向する方向(傾斜方向)と一致、又は中心線Dに対して、±15度の範囲、好ましくは±10度の範囲内に配設されている。また、そのような傾斜方向に指向する強化繊維に加え、その強化繊維と交差する方向(周方向、軸長方向、傾斜方向を含む)の強化繊維を配設しても良い。
【0068】
なお、本実施形態の釣糸ガイドのフレームは、以下のように、複数枚のプリプレグを積層して金型によって形成することが可能であるため、積層されるプリプレグの内、強化繊維が一方向(釣糸の挿通方向Xと一致する方向)に引き揃えられているプリプレグを用いることで、強化繊維を傾斜方向に容易に一致させることが可能である。以下、図13を参照して、本実施形態の釣糸ガイドのフレームを形成する製造方法の一例を説明する。
【0069】
最初、フレーム2を構成する複数枚のプリプレグを所定形状に裁断し、これを複数層となるように重ね合わせる。重ね合わせるプリプレグの枚数(層数)や、個々のプリプレグの構成については特に限定されることはないが、フレーム2には、図10で示すように、複数の屈曲する部分が形成されるため、この部分を補強する補強層を配置しておくことが好ましい。
【0070】
複数枚積層されるプリプレグの内、少なくともその一部には、強化繊維が矢印方向に指向しているものが用いられ、これらのプリプレグが積層されて金型50にセットされる。この場合、金型50は、上下に型割りされる上型51と下型52によって構成されており(型割り位置を符号50Aで示す)、積層されたプリプレグは、下型52の所定位置にセットされる。上型51と下型52との間には、積層されたプリプレグがセットされる位置に応じて、内部空間、すなわちフレームの固定部(板状突片)5F、支脚部38、及びリング保持部3を成形するためのスペース50aが形成されており、その表面領域には離型剤がコーティングされている。前記スペース50aは、上型51及び下型52を押圧した際に、図10に示すフレーム2が形成されるように、フレーム2の肉厚、及び表面形状に対応した内面を有している。例えば、下型52には、積層されたプリプレグをセットした際、屈曲部(固定部と支脚部との間に形成される屈曲部)に対応する位置に、屈曲形成凸部52aが形成され、上型51には、屈曲形成凸部52aに対応して屈曲形成凹部51aが形成されている。
【0071】
なお、積層されるプリプレグは、一度に全体を重ね合わせた状態で下型にセットしても良いし、1枚ずつセットする等、複数回に分けて積層しても良い。このように複数回に分けることにより、強化繊維の動きを少なくして、精度良く下型52の所定位置にセットすることもできる。また、金型については、一例を示したに過ぎず、型割りの方向については、左右方向としたり、傾斜方向にする等、任意の形態にすることが可能である。さらには、リング保持部に対して予めガイドリングを位置合わせしておき、ガイドリングが装着されたフレームを同時成形するようにしても良い。
【0072】
そして、上記のように、複数枚のプリプレグを下型52にセットした後、上下型で型締めし、加圧、加熱してマトリックス樹脂を硬化して成形した後、成形品を金型50から取り出す。
次に、成形品から所定の形状となるようにフレームを切り出す。上記したように、プリプレグは、加熱硬化処理後に屈曲部が形成された板状体となっているため、プレス加工による切り出し、液体(ウォータージェット等)による切り出し、或いは刃具(エンドミル等)による切り出し等、任意の方法を採用することで、1枚の成形品から複数のフレーム2を切り出すことが可能となり、軽量で高強度の釣糸ガイドを効率良く製造することが可能となる。
【0073】
次に、必要に応じて細部加工を施す。この細部加工は、例えば、フレームのバリ除去や板状突片5Fの形状を釣竿に載置し易いように曲面状に形成したり、糸巻き・糸止めし易いように、固定部の端部を研磨等することが該当する。
【0074】
次に、フレームの表面処理を施す。例えば、表面研磨(バレル研磨等)や必要に応じて表面の光沢が得られる程度に表面処理を施す。この研磨の程度については、釣糸ガイドのサイズや形状、材質特性などによって研磨剤や研磨時間などを任意に調整することが可能である。このような表面処理を施すことにより、強化繊維を切断することなく、フレームを研磨することが可能となり、強度の安定化が図れると共に、外観の優れた釣糸ガイドとすることが可能となる。なお、このような研磨工程を施すに際しては、フレームの表面に強化繊維が一部露出しマトリックス樹脂が一部残るように研磨することが好ましい。こうすることで、研磨表面の光沢をより一層向上することが可能となる。また、必要に応じて、フレームの全体又は一部分に被膜を形成しても良い。例えば、外観向上やフレーム本体の保護のために塗装を行なうことや、金属やセラミックスを蒸着等しても良い。
【0075】
そして、上記したように形成されたフレームのリング保持部の開口にガイドリングを取り付ける。なお、ガイドリングの取り付けは、上記したように、フレームと同時成形しても良いし、表面処理の後に行っても良く、その間の任意工程時に行うことが可能である。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した構成に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
本発明は、釣糸ガイド1を構成するフレーム部分を繊維強化合成樹脂で構成すると共に、そのようなフレーム部分に、傾斜状部を有する支脚部を形成し、傾斜状部に配置される繊維強化合成樹脂の方向を傾斜方向に指向させたことに特徴がある。このため、フレームの形成方法については、上記したような製法に限定されることはなく、様々な方法を用いることが可能である。例えば、金型による成形の場合、金型に対して長繊維と合成樹脂を同時に注入したり、先に金型に強化繊維を配置しておき、後から合成樹脂を注入するような方法であっても良い。また、合成樹脂を含浸した強化繊維束(繊維束を糸条体にしたり、網物・組紐状にしたもの)を用い、これを金型に形成された溝部分に設置して形成するような構成であっても良い。また、強化繊維と合成樹脂を金型に同時に注入する場合、強化繊維の長さは3〜15mmの長繊維を使用すると良い。
【0077】
また、繊維強化合成樹脂材における強化繊維の種類や弾性率、樹脂含浸量、肉厚などの構成、及び積層状態等については、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0078】
さらに、釣糸ガイドについては、釣糸が挿通される各種のもの、例えば、固定ガイド、遊動ガイド、中通し式釣竿における導入ガイド等に適用することができ、その支脚部についても、第1から第3実施形態のように、複数存在するもの、或いは第4実施形態のように単一であるものなど、その構成についても特に限定されることはない。
【符号の説明】
【0079】
1 釣糸ガイド
2 フレーム
3 リング保持部
5,5A,5B、5D,5E,5F 固定部
8,18,28,38 支脚部
8a,18a,28a,38a 傾斜状部
10 ガイドリング
R 釣竿(竿杆)
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に装着されて釣糸を案内する釣糸ガイドに関し、詳細には、釣糸が挿通されるガイドリングを保持するフレーム部分に特徴を有する釣糸ガイドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記した釣糸ガイドは、釣竿の外周面に装着されるフレームと、フレームに止着され、実際に釣糸が挿通されるガイドリングとを備えた構成となっている。前記フレームは、例えば、特許文献1に記載されているように、ステンレスやチタン等の金属製の板材料をプレス加工することで一体形成するのが一般的となっており、フレームには、釣糸を挿通させるガイドリングを保持するためのリング保持部と、釣竿の外表面に装着するための固定部が一体形成されている。
【0003】
また、最近では、例えば、特許文献2に見られるように、釣糸ガイドの構成素材として繊維強化合成樹脂を用いることも提案されている。この特許文献2には、ガイドリングを保持するリング保持部と、釣竿に取り付けられる取付装着部(固定部)と、リング保持部と取付装着部との間に位置する脚部(支脚部)とを、繊維強化合成樹脂のプリプレグで一体形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−340661号
【特許文献2】特開2010−154860号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記した特許文献1に開示されている公知技術では、フレームが金属材料で形成されているため、重量が重く、比強度、比剛性、撓み性等の性能が悪く、釣竿の性能の向上を図る上でネックとなっている。例えば、より軽量化が要求される釣竿では、上記したような釣糸ガイドを軸長方向に沿って多数装着すると、所望の性能が発揮できなくなってしまう。
【0006】
また、上記した特許文献2に開示されている構成では、釣糸ガイドの軽量化は図れるものの、繊維強化合成樹脂材を構成する強化繊維の配置態様については何等考慮されていないことから、上記の特許文献1に開示されている釣糸ガイドと同様、比強度、比剛性、撓み性等の性能が十分ではない。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、重量が軽く、比強度、比剛性及び撓み性に優れた釣糸ガイドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に固定される固定部と、前記リング保持部と固定部とを連結し、かつ釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化合成樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドであって、前記支脚部は、前記リング保持部から前記固定部に向かって延びる傾斜状部を有すると共に、前記傾斜状部は、傾斜方向に指向する強化繊維を配設していることを特徴とする。
【0009】
上記した構成の釣糸ガイドは、釣糸ガイドを構成するフレームが、繊維強化合成樹脂材で構成されるため、軽量化が図れると共に、このような構造の釣糸ガイドを装着した釣竿は本来の特性を発揮し易くなる。また、釣糸が挿通されるリング保持部から釣竿(竿杆)に固定される固定部に向かって延びる傾斜状部を設けたことで、釣糸が絡み難く、竿先方向に抜け易いと共に、釣糸が絡まる等によって負荷が作用しても、その傾斜方向に指向した強化繊維が配設されていることから、その部分における撓み性が良くなり、比強度及び比剛性に優れた構成となる。
【0010】
なお、上記した構成において、支脚部は、釣糸が挿通される部分と、竿杆に固定される固定部とを連結する部分であり、釣糸からの負荷が大きく作用する部位である。また、支脚部は、挿通される釣糸を竿杆表面から離間させる部位でもあり、長手方向(釣竿が延出する方向であり、前後方向となる)に沿って傾斜した部分が該当する。傾斜状部は、片足ガイドとして構成される場合、1つ或いは幅方向(左右方向)に対になって形成されていても良く、両足ガイドとして構成される場合であっても、リング保持部に対して前後方向において、1つ或いは幅方向(左右方向)に対になって形成されていても良い。また、傾斜状部や固定部には、開口や切欠部が形成されていても良い。
【0011】
また、前記リング保持部は、繊維強化合成樹脂で構成されるフレームとは別体で形成されて釣糸を挿通させるガイドリングを取着する構成以外にも、リング保持部そのものを加工処理することで、別体としてのガイドリングを取着することなく、釣糸が挿通できるようにした構成を含む。
【0012】
また、傾斜状部の傾斜方向は、傾斜状部における略中心線が指向する方向によって規定され、配設される強化繊維は、そのような傾斜方向に一致するか、略一致するように配設されていれば良い。この場合、強化繊維は、傾斜方向に対して、±15度の範囲、好ましくは±10度の範囲内に配設されていれば良いが、リング保持部や固定部に近い位置では、これらの部分に合わせて形状調整や剛性の強度を調整する必要があるため、強化繊維の方向を±15度以上変化させても良く、例えば、±20度の範囲でも良い。さらに、傾斜状部における略中心線と竿杆の軸線とが交差する角度をαとした場合、角度αが30°以下になるときは、その1/2以内の範囲(例えば、αが30°のときは15°以内)で指向するようにすれば良い(図2参照)。
【0013】
また、上記したように傾斜方向に指向する強化繊維は、傾斜状部において複数の繊維強化合成樹脂層が積層されるケースでは、強化繊維が傾斜方向に指向した状態の層が存在していれば良く、そのような複数の層の中には、傾斜方向以外の方向に強化繊維が指向している層が存在していても良い。すなわち、少なくとも強化繊維が傾斜方向に指向している部分(層)が存在していれば、上記した、撓み性の向上、比強度、比剛性の向上を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、重量が軽く、比強度、比剛性及び撓み性に優れた釣糸ガイドが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る釣糸ガイドの第1の実施形態を示す図であり、穂先竿に釣糸ガイドを装着した状態を示す図。
【図2】図1に示す釣糸ガイドの側面図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面図。
【図4】図2のB−B線に沿った断面図。
【図5】図2のC−C線に沿った断面図。
【図6】本発明に係る釣糸ガイドの第2の実施形態を示す縦断面図。
【図7】本発明に係る釣糸ガイドの第3の実施形態を示す平面図。
【図8】図7に示す釣糸ガイドの側面図。
【図9】図8に示す釣糸ガイドを矢印方向から見た図。
【図10】本発明に係る釣糸ガイドの第4の実施形態を示す側面図。
【図11】図1に示す釣糸ガイドの製造方法の一例を説明する図(その1)。
【図12】図1に示す釣糸ガイドの製造方法の一例を説明する図(その2)。
【図13】図10に示す釣糸ガイドの製造方法の一例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1から図5は、本発明に係る釣糸ガイドの第1の実施形態を示す図であり、図1は穂先竿に釣糸ガイドを装着した状態を示す図、図2は図1に示す釣糸ガイドの側面図、図3は図2のA−A線に沿った断面図、図4は図2のB−B線に沿った断面図、そして、図5は図2のC−C線に沿った断面図である。
【0017】
本実施形態の釣糸ガイド1は、釣竿の内、穂先竿杆の先端に装着される、いわゆるトップガイドとして構成されており、繊維強化合成樹脂製のフレーム2を有している。
【0018】
前記フレーム2は、環状に形成されガイドリング10を保持するリング保持部3と、釣竿である竿杆(穂先竿杆)Rに固定される固定部と、リング保持部3と固定部を連結する支脚部と、を備えている。この場合、固定部は、竿杆に対して固定される部分が該当し、例えば、竿杆の表面に対して固定されるもの、竿杆が嵌入して固定されるものが該当する。本実施形態の固定部は、竿杆Rが嵌入される部分として構成されており、具体的に、長手方向の中間部分に開口9を形成したことで、前後方向に分割された第1固定部と第2固定部とを備えた構造となっている。すなわち、固定部は、竿杆Rの先端が嵌入される孔(竿杆固定孔)5aを有する第1固定部5Aと、竿杆Rの先端側が挿通される孔(竿杆固定孔)5bを有する第2固定部5Bと、を備えた構造となっている。
【0019】
前記リング保持部3は、前記第1固定部5Aの上方(図2では下方となっている)に配置されており、釣糸が挿通される部分となる(釣糸挿通方向を矢印Xで示す)。上記したように、リング保持部3は、全体として略円形の外形状(環状)に形成されており、釣糸を案内するガイドリング10を嵌入、固定させるための開口3aを備えている。この場合、開口3aに嵌入、固定されるガイドリング10は、リング状に構成され、その内周面である釣糸案内面10a部分での摺動抵抗が小さい素材、例えば、チタン、アルミ、SUS、セラミックスなどによって形成されている。なお、「リング保持部」とは、上記したガイドリング10を装着して釣糸を案内する他、ガイドリングを装着することなく、開口3aで直接、釣糸を案内する構成も含む。
【0020】
前記固定部5A,5Bと環状に形成されたリング保持部3との間は、支脚部によって連結されている。ここで、「支脚部」とは、リング保持部3に挿通される釣糸を竿杆の表面から離間させる部位が該当しており、本実施形態の構成では、前記第1固定部5Aとリング保持部3との間に形成される第1支脚部7と、前記第2固定部5Bとリング保持部3との間に形成される第2支脚部8とを備えている。すなわち、本実施形態では、上記したように、固定部の中間部分に長手方向に沿うように開口9を形成しており、これに対応して支脚部にも、長手方向に沿って切欠きを形成しており、軸方向に複数の支脚部7,8を有する構成となっている。このため、開口9が形成される領域では、竿杆Rが露出した状態となっている。
【0021】
第1支脚部7は、前記リング保持部3と一体化されており、竿杆R(釣糸挿通方向X)に対して直交する方向に延出している。また、第2支脚部8は、図1に示すように、竿杆Rに対して対称となるように左右両側に設けられており、それぞれ、リング保持部3から第2固定部5Bに向かって延びる傾斜状部8aを備えている。すなわち、「傾斜状部」は、釣糸の挿通方向Xに所定の長さを有し、リング保持部側(リング保持部又はリング保持部を支持する第1支脚部)から第2固定部5Bに向かって延出した部分となる。
【0022】
なお、本実施形態では、フレームを、後述するように、繊維強化合成樹脂製の管状の部材を切り出すことで形成することから、第2支脚部8(傾斜状部8a)の外側表面は、図4に示すように、湾曲状となっている。また、左右それぞれに設けられた第2支脚部(傾斜状部)については、釣糸ガイドのタイプや釣竿に装着される位置などによって特定され、第2固定部5Bからの高さや、固定部5Bの孔5bからの左右への膨出量については、任意に設定することが可能である。
【0023】
そして、それぞれの傾斜状部8aには、傾斜方向に指向するように強化繊維が配設されている。この場合、傾斜状部の傾斜方向については、図2で示すように側面視した際、傾斜状部における略中心となる線D(固定部とリング保持部の中間領域において、略中心となる線;中心線Dとする)が指向する方向によって規定される。ここで、「指向する方向」について詳細に説明すると、傾斜状部8aは、釣糸が引っ掛かっても絡み難く、竿先方向に抜け易い構成とするのが好ましいため、リング保持部3や固定部5Bに近い位置ではこれらの部分に合わせて形状調整や剛性の強度を調整する必要があり、傾斜状部全てに亘って同一の傾斜方向とならない。すなわち、図2に示すように、第2固定部5Bに近い領域の表面は、凹状の緩傾斜8dとなっており、リング保持部3に近い領域の表面は、凸状の急傾斜8eとなって、最終的に傾斜が緩やかになってリング保持部3の頂部3cに移行しており、傾斜状部8a全てに亘って同一の傾斜方向とはならない。
【0024】
本発明では、釣糸が絡んでも抜け易く構成した傾斜状部8aに関し、釣糸が絡む等により負荷が作用しても、その傾斜方向に沿って強化繊維を配設することで、その部分における撓み性を良くして、比強度及び比剛性を向上するようにしている。このため、傾斜状部に配設される強化繊維については、そのような傾斜方向(中心線Dが指向する方向)に一致するか、略一致するように配設されているのが好ましいが、傾斜方向に対して、±15度の範囲、好ましくは±10度の範囲内に配設されていれば、そのような作用効果を奏することが可能である。ただし、リング保持部3や固定部5Bに近い領域では、上記したように、これらの部分に合わせて形状調整や剛性の強度を調整する必要があるため、強化繊維の方向については、前記中心線Dに対して±15度以上変化していても良い。
【0025】
また、本実施形態の構成では、第2支脚部8は、竿杆Rに対して対称となるように左右両側に形成されており、かつ、フレームを、繊維強化合成樹脂製の管状の部材を切り出すことで形成することから、左右それぞれの傾斜状部8aは、後述するように、傾斜方向に沿う強化繊維に加え、これと交差する方向の強化繊維を含んだ状態となっている。
【0026】
次に、上記したように構成される釣糸ガイド1の製造方法例を、図11及び図12を参照して説明する。
【0027】
上記した釣糸ガイド1を構成するフレーム2は、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグ(以下、プリプレグと称する)を巻回した管状の部材から形成される。この場合、上記した釣糸ガイドの固定部5A,5Bの領域、及びリング保持部3の領域は、図11及び図12に示すように、2つの管状部材が一体化されたもの(以下、一体化構造と称する)から形成される。すなわち、このような一体化構造は、径が異なる芯金に対して、それぞれプリプレグを巻回してこれを隣接配置しておき、更に隣接配置された2本の芯金に対してプリプレグを順次、巻回した後、加熱工程、脱芯工程を経て形成することが可能である。なお、巻回されるプリプレグは、強化繊維が一方向に引き揃えられた状態、或いは強化繊維を編成したシート状(織布状)にされたもの、テープ状にしたものであり、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)や熱可塑性樹脂(例えば、ナイロン)をマトリックス樹脂として含浸した構成となっている。また、強化繊維については、カーボン繊維、ガラス繊維などの無機繊維、アラミド繊維、ポリエーテルイミドなどの有機繊維、SUS、チタンなどの金属繊維を用いることができる。
【0028】
具体的に、上述した固定部5A,5Bの内層側は、細径の芯金M1に対して周方向に強化繊維を引き揃えたプリプレグ20を巻回することで形成され、リング保持部3の内層側は、芯金M1よりも太径の芯金M2に対して強化繊維を織布状にしたプリプレグ21を巻回することで形成される。そして、上記したようにプリプレグ20,21をそれぞれ巻回した芯金M1,M2は、図12に示すように、各プリプレグが接触するように隣接配置され、このように隣接配置された状態の芯金M1,M2に対し、プリプレグ24,25,26,27を両方の芯金の外周に順次巻回することで、リング保持部3の外層側、固定部5A,5Bの外層側、及び支脚部7,8が形成される。
【0029】
この場合、隣接配置した芯金M1,M2に対して巻回されるプリプレグは、最も内側の層となるプリプレグ24が周方向に強化繊維を引き揃えたものであり、その上の層となるプリプレグ25が傾斜方向に強化繊維を引き揃えたものとなっている。また、その上の層となるプリプレグ26は、プリプレグ25と交差する傾斜方向に強化繊維を引き揃えたものであり、最外層となるプリプレグ27は、強化繊維を織布状にしたものである。
【0030】
なお、隣接配置された状態の芯金M1,M2に対し、順に、プリプレグ24〜27を巻回する前に、芯金M1とM2の間に存在する窪み領域に、長手方向に沿って充填部材22を配置しておくことが好ましい。この充填部材は、合成樹脂を含浸した繊維束(繊維強化合成樹脂)、合成樹脂、軽量な材料(比重が2.0以下)等によって構成されており、このような充填部材22を配設することで、図3及び図5に示すように、固定部とリング保持部との間の隙間が埋まり、固定部における強度を向上することが可能となる。
【0031】
上記したように、芯金M1,M2を隣接して配置し、両者の窪みに対して充填部材22を充填し、その後、プリプレグ24〜27を順に巻回した芯金M1,M2は、テープ等によって保形され、加熱工程及び脱芯工程を経て、2本の管状部材が一体化された状態のもの(一体化構造)が成形される。
【0032】
そして、成形された一体化構造に対し、所定の位置を切り出すことにより、釣糸ガイド1のフレーム2が形成される(実際には、一体化構造は、軸方向に長いため、複数のフレームを形成することが可能である)。この場合、上記した芯金M1は、脱芯した後で最終的に竿杆Rが嵌入される固定部の孔5a,5bとなることから、竿杆Rの外径と略一致する外径を有するものが用いられる。また、上記した芯金M2は、脱芯した後で最終的にガイドリング10が取り付けられる開口3aとなることから、装着されるガイドリング10の外径と略一致する外径を有するものが用いられる。
【0033】
以下、一体化構造からフレーム2を切り出す方法について具体的に説明する。
まず、一体化構造に対し、軸長方向を横切る方向(交差する方向)に切り出しを行う。したがって、上記したように積層されたプリプレグによる繊維強化合成樹脂層は、そのまま径方向に積層された状態となる。次に、芯金M1を脱芯することで形成された管状体部分から、図2に示した開口9が形成されるように切り出しを行うと共に、芯金M2を脱芯することで形成された管状体部分から、第2支脚部8の傾斜状部8aが形成されるように切り出しを行う。
【0034】
このように、切り出しを行うことで、図3及び図5に示すように、上記したプリプレグ20によって第1固定部5A、第2固定部5Bの内層側が形成される。また、上記したプリプレグ21によってリング保持部3の内層側が形成される。すなわち、固定部とリング保持部は、独立した層であり、リング保持部の内層側は、図11に示したように強化繊維が織布状に配置されたもの(プリプレグ21)となる。また、固定部5A,5Bの内層側は、図11に示したように強化繊維が周方向に引き揃えられたもの(プリプレグ20)となる。
【0035】
さらに、固定部5A,5Bの外層側、リング保持部3の外層側、及び支脚部7は、ともに同じ繊維強化合成樹脂層で形成されており、内側から順に、周方向に強化繊維を引き揃えた層(プリプレグ24)、傾斜方向に強化繊維を引き揃えた層(プリプレグ25)、プリプレグ25による層の強化繊維と交差する傾斜方向に強化繊維を引き揃えた層(プリプレグ26)、強化繊維を織布状にした層(プリプレグ27)となる。
【0036】
なお、支脚部7の中心側の領域、及び固定部5Bの内層と外層との間には、充填部材22が配置された状態となっている。
【0037】
前記支脚部8(傾斜状部8a)は、上記した外層側の構成と同様、内側から順に、周方向に強化繊維を引き揃えた層(プリプレグ24)、傾斜方向に強化繊維を引き揃えた層(プリプレグ25)、プリプレグ25による層の強化繊維と交差する傾斜方向に強化繊維を引き揃えた層(プリプレグ26)、強化繊維を織布状にした層(プリプレグ27)によって構成される。
【0038】
上述したように、傾斜状部8aに配設される強化繊維については、そのような傾斜方向(中心線Dが指向する方向)に一致するか、略一致、乃至は傾斜方向に対して、±15度の範囲、好ましくは±10度の範囲内に配設されているが、そのように方向付けされる強化繊維については、プリプレグ25,26によって構成される。すなわち、左右両側に設けられるそれぞれの傾斜状部8aは、両プリプレグ25,26の内、一方のプリプレグが、傾斜方向に沿う状態となり、他方のプリプレグが、その傾斜方向に沿った強化繊維に対して交差する方向に指向する状態となる。従って、巻回するプリプレグ25,26については、最終的に一体化構造からフレームを切り出す際、その切り出す方向(傾斜状部の指向方向)を考慮して、強化繊維の引き揃え方向がそのような方向に指向するものを選択すれば良い。また、傾斜状部では、上記したように、芯金を利用して形成することから、強化繊維を芯金形状に沿って傾斜方向、更には、周方向、長手方向に配置できるため(図3において、傾斜状部では、強化繊維が径方向に指向するような配置とならない)、効率的に強度を向上することができる。
【0039】
上記したように、図1及び図2に示すようなフレーム形状は、一体化構造に対して、所定の位置を切り出すことで一体形成される。この場合、形成されるフレーム2の部位に応じて、巻回するプリプレグの構成を変えたり、軸長方向に沿うように部分的に補強プリプレグを積層する等して、肉厚を変えることが可能である。例えば、固定部の領域に沿って軸長方向に沿うように補強プリプレグを積層して肉盛りすることで、固定部における強度を向上することも可能となる。或いは、図3に示す竿杆とガイドリングの離間距離Lについては、プリプレグ20,21の肉厚や巻回数などによって調整することが可能であり、図4に示す支脚部8についても、プリプレグ24〜27の肉厚、巻回数、切り出し方向等によって、更に外側方向に広げることも可能である。
【0040】
前記一体化構造からフレームを切り出すに際しては、刃具による切り出しの他、プレス加工による切り出し、液体(ウォータージェット等)による切り出し等、任意の方法を採用することで、複数のフレーム2を切り出すことが可能となり、これにより、軽量で高強度の釣糸ガイド(フレーム)を効率良く製造することが可能となる。
【0041】
この場合、リング保持部3については、長手方向軸を横切る方向に切り出すことで形成されるため、径方向の内側から外側方向に向けて繊維強化合成樹脂層が積層された状態となっており、これにより、効率的にリング保持部の強度向上及び安定化と、小型化、軽量化が可能となる。また、リング保持部3の内層側は、織布状のプリプレグによって構成されているため、断面を見た場合、表層部分は強化繊維が蛇行した状態で露出(突出)する状態となり、これにより、そこに装着されるガイドリング10の外周面に対して強化繊維の一部が当接してガイドリング10を確実に安定的に保持することができる。
【0042】
次に、切り出されたフレーム2に対して表面処理を施す。例えば、バレル加工を施すことで、表面のバリを除去すると共に、表面の光沢が得られる程度に仕上げ研磨を施す。この研磨の程度については、釣糸ガイド1のサイズや形状、材質特性などによって研磨剤や研磨時間などを任意に調整することが可能である。このようなバレル加工等を施すことにより、強化繊維を切断することなく、フレーム2を研磨することが可能となり、強度の安定化が図れると共に、外観の優れた釣糸ガイドとすることが可能となる。
【0043】
なお、上記の研磨工程を施すに際しては、フレーム2の表面に強化繊維が一部露出しマトリックス樹脂が一部残るように研磨することが好ましい。こうすることで、研磨表面の光沢をより一層向上することが可能となる。
【0044】
次に、必要に応じて、フレーム2の全体又は一部分に被膜を形成する。例えば、外観向上やフレーム本体の保護のために塗装を行なうことや、金属やセラミックスを蒸着等することも可能である。
【0045】
そして、上記したように形成されたフレーム2のリング保持部3の開口3aにガイドリング10を取り付ける。ガイドリング10の取り付け方法は、圧入や接着、カーリング、その他、任意の固定方法を採用することが可能である。
【0046】
上記したように構成される釣糸ガイド1によれば、フレーム2が繊維強化合成樹脂材で構成されるため、軽量化が図れると共に、このような構造の釣糸ガイドを装着した釣竿は本来の特性を発揮し易くなる。特に、穂先竿のような部分では、より軽量化が図れるため、繊細な当たりを感知し易くなり、より釣竿の性能の向上を図ることが可能となる。また、釣糸が挿通されるリング保持部3から釣竿(竿杆)に固定される固定部5Bに向かって延びる傾斜状部8aを設けたことで、釣糸が絡み難く、竿先方向に抜け易いと共に、たとえ釣糸が絡まる等によって負荷が作用しても、その傾斜方向に指向した強化繊維が配設されていることから、その部分における撓み性が良くなり、比強度及び比剛性に優れた構成となる。
【0047】
なお、本実施形態では、傾斜状部8aは、竿杆の左右両側に形成されているため、フレームとしての強度の向上が図れると共に、各傾斜状部は、傾斜方向に指向する強化繊維に加え、それと交差する方向に指向する強化繊維を含む(プリプレグ24による周方向に指向した強化繊維、及びプリプレグ27による織布状にされた強化繊維を含む)ため、前後方向、回転方向、ねじれ等、複合的な負荷に対してバランス良く強化することが可能となり、効率的に軽量化、小型化が可能となる。なお、強化繊維が傾斜方向に引き揃えられたプリプレグ25,26については、強度バランスを考慮して軸長方向に対して同角度で互いに逆方向となるように設定しておくのが好ましい。
【0048】
また、本実施形態の釣糸ガイド1は、フレーム2を形成するに際して、固定部の中間部分に長手方向に沿うように開口9、及びこれに対応して支脚部にも、長手方向に沿って切欠きを形成して、軸方向に左右対称となるように複数の支脚部7,8を有する形状となっている。このため、開口9が形成される領域では、竿杆Rが露出した状態となっており、これにより、フレームの強度低下を防止しつつ軽量化が図れると共に、竿杆の撓り性を向上することが可能となる。
【0049】
また、上記した竿杆を固定する固定部における孔部領域周辺(竿杆の固定孔が形成される部分)では、プリプレグ20及びプリプレグ24〜27で形成されることとなるが、軸長方向に指向する強化繊維を少なくすることが好ましい(本実施形態では、プリプレグ27の一部の強化繊維が軸長方向に指向した状態となっている)。すなわち、孔部領域周辺となる固定部では、軸長方向に指向する強化繊維を少なくすることにより、固定部において、必要以上に剛性が高くなることを防止でき、応力集中によるガイド取付部分からの竿杆の破損を防止でき、釣竿の撓りバランスを向上することが可能となる。
【0050】
なお、固定部において、軸長方向に指向する強化繊維を含んでいても良いが、その場合、軸長方向に指向する強化繊維よりも、軸長方向に対して交差する方向(周方向、交差方向を含む)の強化繊維の量が多く配設されていれば良い。好ましくは、軸長方向の強化繊維の量は、固定部における強化繊維量の合計の1/3以下に設定されていれば良い。
【0051】
次に、本発明に係る釣糸ガイドの別の実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態では、上記した実施形態と同一の構成部分については、同一の参照符号を付して、詳細な説明については省略する。
【0052】
図6は、本発明に係る釣糸ガイドの第2の実施形態を示す縦断面図である。
本実施形態の釣糸ガイド1は、穂先竿の先端に限られず、固定部の長さや固定孔の大きさ等、釣糸ガイドの取り付け位置に合わせ任意に設定することができ、竿杆の任意の位置で使用できる構成となっている。釣糸ガイド1を構成するフレーム2は、リング保持部3と、釣竿に固定される固定部5を備えており、固定部5には、竿杆が挿通、固定されるように竿杆固定孔5dが形成されている。また、リング保持部3と固定部5との間には、両者を連結する第1支脚部17、及び第2支脚部18が形成されている。
【0053】
前記第1支脚部17は、前記リング保持部3と一体化されており、釣糸の繰り出し時や巻き取り時に竿杆表面と接触しないように、上記した第1実施形態と比較して高く(釣糸挿通方向Xに対して直交する方向に高く)形成されている。また、第2支脚部18は、図2に示した構成と同様、竿杆に対して対称となるように左右両側に設けられており、それぞれ、リング保持部3から固定部5に向かって延びる傾斜状部18aを備えている(片方の支脚部のみが示されている)。
【0054】
ここで、傾斜状部18aに配設される強化繊維については、上記した実施形態と同様、中心線Dが指向する方向(傾斜方向)と一致、又は中心線Dに対して、±15度の範囲、好ましくは±10度の範囲内に配設されている。また、そのような傾斜方向に指向する強化繊維に加え、その強化繊維と交差する方向(周方向、軸長方向、傾斜方向を含む)の強化繊維を配設しても良い。
【0055】
前記固定部5と第2支脚部18との間には、開口19が形成されると共に、第1支脚部17に、開口19に連通する抜き孔17aを形成している。この場合、開口19は、左右方向(図面に垂直な方向)に貫通しており、固定部5の表面においても切り込み5bを形成して開口19を広く形成している。このように、フレーム2に抜き孔17aや開口19を形成しておくことで、フレーム2を軽量化することが可能となる。
【0056】
上記したようなフレーム構造は、図11及び図12で示したような製法を用いて形成することが可能である。この場合、本実施形態では、上記したように、第1支脚部17に抜き孔17aを形成することから、図12で示した芯金M1と芯金M2を隣接して配置する際、両者の間に、抜き孔形成用の芯材(図示せず)を配置しておけば良い。
【0057】
また、フレーム2を切り出す際には、リング保持部3を前方側に傾斜させても良い(図6においてθが傾斜する角度となる)。このように、リング保持部3を前方側に傾斜させることで、釣糸の引っ掛かりを効果的に防止すること可能となる。なお、リング保持部(ガイドリング)の傾斜角度θについては、特に限定されることはないが、通常、0°から40°の範囲で設定される。
【0058】
図7から図9は、本発明に係る釣糸ガイドの第3の実施形態を示す図であり、図7は平面図、図8は図7に示す釣糸ガイドの側面図、図9は図8に示す釣糸ガイドを矢印方向から見た図である。
【0059】
本実施形態の釣糸ガイドは、両足ガイドとして構成されており、フレーム2は、環状に形成されガイドリング10を保持するリング保持部3と、釣竿の表面に、糸巻き等によって固定される固定部とを備えている。この場合、本実施形態の固定部は、リング保持部3から、それぞれ釣竿の軸長方向に沿って前方(竿先側)、及び後方(元側)に延びる2本の板状突片5D,5Eによって構成されている。また、フレーム2は、固定部である板状突片5Dとリング保持部3とを連結する第1支脚部27と、固定部である板状突片5Eとリング保持部3とを連結する第2支脚部28とを備えている。
【0060】
前記リング保持部3と元側となる板状突片5Eとの間を連結する支脚部28は、上記した実施形態と同様、竿杆に対して対称となるように、左右一対設けられている。また、両支脚部28は、図8に示すように、それぞれ、リング保持部3から板状突片5Eに向かって延びる傾斜状部28aを備えている。前記板状突片5Eと第2支脚部28との間には、左右方向に貫通する開口29が形成されており、板状突片5Eの表面においても切り込みを形成して開口29を広く形成してフレーム2の軽量化を図っている。
【0061】
前記傾斜状部28aに配設される強化繊維については、上記した実施形態と同様、中心線Dが指向する方向(傾斜方向)と一致、又は中心線Dに対して、±15度の範囲、好ましくは±10度の範囲内に配設されている。また、そのような傾斜方向に指向する強化繊維に加え、その強化繊維と交差する方向(周方向、軸長方向、傾斜方向を含む)の強化繊維を配設しても良い。
【0062】
このような釣糸ガイドのフレーム2は、例えば、繊維強化合成樹脂製の単一の管状体を切り出すことで形成することが可能である。この場合、リング保持部3に対して前後に延びる固定部(板状突片5D,5E)は、竿杆表面に固着されるため、管状体から切り出し工程を行った後に、固定される竿杆表面の湾曲に一致するように切削加工(細部加工)が施される。
【0063】
上記した構成の釣糸ガイドによれば、リング保持部の前方側と後方側の両方に釣竿固定部(板状突片)5E,5Dが設けられるため、釣竿に安定して保持されて釣糸を安定して案内することが可能となる。また、環状のリング保持部3、支脚部27,28及び固定部となる板状突片5E,5Dは、例えば、複数の繊維強化合成樹脂層で形成された管状体を切り出し処理することで、そのまま形成できるため、釣糸ガイド全体として軽量化が図れると共に、比強度、比剛性、及び撓み性に優れた構成の釣糸ガイドを容易に製造することが可能となる。
【0064】
なお、管状体を構成する複数の繊維強化合成樹脂層(プリプレグ)については、異なる方向に強化繊維を指向させることで、フレームに対して様々な方向から負荷が作用しても、それらの方向の剛性については、軽量化を図りつつ効率良く高めておくことが可能となる。また、強度についても、複数の繊維強化合成樹脂層を有することで効率的に向上することが可能となる。
【0065】
図10は、本発明に係る釣糸ガイドの第4の実施形態を示す側面図である。
本実施形態の釣糸ガイドは、片足ガイドとして構成されており、フレーム2は、環状に形成されガイドリング10を保持するリング保持部3と、釣竿Rの表面に、糸巻き等によって固定される固定部とを備えている。この場合、本実施形態の固定部は、リング保持部3から、後方(元側)に延びる板状突片5Fによって構成されている。また、フレーム2は、板状突片5Fとリング保持部3とを連結する支脚部38を備えている。
【0066】
前記支脚部38は、板状突片5Fの竿先側を屈曲させてリング保持部3に連結される部分であり、上述した実施形態と同様、傾斜状部38aを備えている。また、リング保持部3は、釣糸挿通方向Xに対する垂直方向から所定の角度(θ)傾斜しており、釣糸を抜け易く構成している。
【0067】
傾斜状部38aに配設される強化繊維については、上記した実施形態と同様、中心線Dが指向する方向(傾斜方向)と一致、又は中心線Dに対して、±15度の範囲、好ましくは±10度の範囲内に配設されている。また、そのような傾斜方向に指向する強化繊維に加え、その強化繊維と交差する方向(周方向、軸長方向、傾斜方向を含む)の強化繊維を配設しても良い。
【0068】
なお、本実施形態の釣糸ガイドのフレームは、以下のように、複数枚のプリプレグを積層して金型によって形成することが可能であるため、積層されるプリプレグの内、強化繊維が一方向(釣糸の挿通方向Xと一致する方向)に引き揃えられているプリプレグを用いることで、強化繊維を傾斜方向に容易に一致させることが可能である。以下、図13を参照して、本実施形態の釣糸ガイドのフレームを形成する製造方法の一例を説明する。
【0069】
最初、フレーム2を構成する複数枚のプリプレグを所定形状に裁断し、これを複数層となるように重ね合わせる。重ね合わせるプリプレグの枚数(層数)や、個々のプリプレグの構成については特に限定されることはないが、フレーム2には、図10で示すように、複数の屈曲する部分が形成されるため、この部分を補強する補強層を配置しておくことが好ましい。
【0070】
複数枚積層されるプリプレグの内、少なくともその一部には、強化繊維が矢印方向に指向しているものが用いられ、これらのプリプレグが積層されて金型50にセットされる。この場合、金型50は、上下に型割りされる上型51と下型52によって構成されており(型割り位置を符号50Aで示す)、積層されたプリプレグは、下型52の所定位置にセットされる。上型51と下型52との間には、積層されたプリプレグがセットされる位置に応じて、内部空間、すなわちフレームの固定部(板状突片)5F、支脚部38、及びリング保持部3を成形するためのスペース50aが形成されており、その表面領域には離型剤がコーティングされている。前記スペース50aは、上型51及び下型52を押圧した際に、図10に示すフレーム2が形成されるように、フレーム2の肉厚、及び表面形状に対応した内面を有している。例えば、下型52には、積層されたプリプレグをセットした際、屈曲部(固定部と支脚部との間に形成される屈曲部)に対応する位置に、屈曲形成凸部52aが形成され、上型51には、屈曲形成凸部52aに対応して屈曲形成凹部51aが形成されている。
【0071】
なお、積層されるプリプレグは、一度に全体を重ね合わせた状態で下型にセットしても良いし、1枚ずつセットする等、複数回に分けて積層しても良い。このように複数回に分けることにより、強化繊維の動きを少なくして、精度良く下型52の所定位置にセットすることもできる。また、金型については、一例を示したに過ぎず、型割りの方向については、左右方向としたり、傾斜方向にする等、任意の形態にすることが可能である。さらには、リング保持部に対して予めガイドリングを位置合わせしておき、ガイドリングが装着されたフレームを同時成形するようにしても良い。
【0072】
そして、上記のように、複数枚のプリプレグを下型52にセットした後、上下型で型締めし、加圧、加熱してマトリックス樹脂を硬化して成形した後、成形品を金型50から取り出す。
次に、成形品から所定の形状となるようにフレームを切り出す。上記したように、プリプレグは、加熱硬化処理後に屈曲部が形成された板状体となっているため、プレス加工による切り出し、液体(ウォータージェット等)による切り出し、或いは刃具(エンドミル等)による切り出し等、任意の方法を採用することで、1枚の成形品から複数のフレーム2を切り出すことが可能となり、軽量で高強度の釣糸ガイドを効率良く製造することが可能となる。
【0073】
次に、必要に応じて細部加工を施す。この細部加工は、例えば、フレームのバリ除去や板状突片5Fの形状を釣竿に載置し易いように曲面状に形成したり、糸巻き・糸止めし易いように、固定部の端部を研磨等することが該当する。
【0074】
次に、フレームの表面処理を施す。例えば、表面研磨(バレル研磨等)や必要に応じて表面の光沢が得られる程度に表面処理を施す。この研磨の程度については、釣糸ガイドのサイズや形状、材質特性などによって研磨剤や研磨時間などを任意に調整することが可能である。このような表面処理を施すことにより、強化繊維を切断することなく、フレームを研磨することが可能となり、強度の安定化が図れると共に、外観の優れた釣糸ガイドとすることが可能となる。なお、このような研磨工程を施すに際しては、フレームの表面に強化繊維が一部露出しマトリックス樹脂が一部残るように研磨することが好ましい。こうすることで、研磨表面の光沢をより一層向上することが可能となる。また、必要に応じて、フレームの全体又は一部分に被膜を形成しても良い。例えば、外観向上やフレーム本体の保護のために塗装を行なうことや、金属やセラミックスを蒸着等しても良い。
【0075】
そして、上記したように形成されたフレームのリング保持部の開口にガイドリングを取り付ける。なお、ガイドリングの取り付けは、上記したように、フレームと同時成形しても良いし、表面処理の後に行っても良く、その間の任意工程時に行うことが可能である。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した構成に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
本発明は、釣糸ガイド1を構成するフレーム部分を繊維強化合成樹脂で構成すると共に、そのようなフレーム部分に、傾斜状部を有する支脚部を形成し、傾斜状部に配置される繊維強化合成樹脂の方向を傾斜方向に指向させたことに特徴がある。このため、フレームの形成方法については、上記したような製法に限定されることはなく、様々な方法を用いることが可能である。例えば、金型による成形の場合、金型に対して長繊維と合成樹脂を同時に注入したり、先に金型に強化繊維を配置しておき、後から合成樹脂を注入するような方法であっても良い。また、合成樹脂を含浸した強化繊維束(繊維束を糸条体にしたり、網物・組紐状にしたもの)を用い、これを金型に形成された溝部分に設置して形成するような構成であっても良い。また、強化繊維と合成樹脂を金型に同時に注入する場合、強化繊維の長さは3〜15mmの長繊維を使用すると良い。
【0077】
また、繊維強化合成樹脂材における強化繊維の種類や弾性率、樹脂含浸量、肉厚などの構成、及び積層状態等については、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
【0078】
さらに、釣糸ガイドについては、釣糸が挿通される各種のもの、例えば、固定ガイド、遊動ガイド、中通し式釣竿における導入ガイド等に適用することができ、その支脚部についても、第1から第3実施形態のように、複数存在するもの、或いは第4実施形態のように単一であるものなど、その構成についても特に限定されることはない。
【符号の説明】
【0079】
1 釣糸ガイド
2 フレーム
3 リング保持部
5,5A,5B、5D,5E,5F 固定部
8,18,28,38 支脚部
8a,18a,28a,38a 傾斜状部
10 ガイドリング
R 釣竿(竿杆)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に固定される固定部と、前記リング保持部と固定部とを連結し、かつ釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化合成樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドであって、
前記支脚部は、前記リング保持部から前記固定部に向かって延びる傾斜状部を有すると共に、前記傾斜状部は、傾斜方向に指向する強化繊維を配設していることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項2】
前記傾斜状部は、釣糸挿通方向を中心として左右両側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣糸ガイド。
【請求項3】
前記傾斜状部は、前記傾斜方向に指向する強化繊維の方向と交差する方向の強化繊維を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の釣糸ガイド。
【請求項4】
前記固定部及び前記傾斜状部の少なくとも一方には、長手方向に沿って開口が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項5】
前記固定部は、釣竿の竿杆が挿通される竿杆固定孔を備えており、
前記竿杆固定孔が形成されている部分では、軸長方向に指向する強化繊維よりも、軸長方向に対して交差する方向の強化繊維の量が多く配設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項6】
前記リング保持部にガイドリングを保持すると共に、その全周囲に強化繊維を配設し、
前記強化繊維の一部は、保持されるガイドリング外周面に当接していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項7】
前記固定部は、前記リング保持部の前後方向に、前記支脚部を介して形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項1】
釣糸を挿通させるリング保持部と、釣竿に固定される固定部と、前記リング保持部と固定部とを連結し、かつ釣竿表面から釣糸を離間させる支脚部と、を具備した繊維強化合成樹脂製のフレームを有する釣糸ガイドであって、
前記支脚部は、前記リング保持部から前記固定部に向かって延びる傾斜状部を有すると共に、前記傾斜状部は、傾斜方向に指向する強化繊維を配設していることを特徴とする釣糸ガイド。
【請求項2】
前記傾斜状部は、釣糸挿通方向を中心として左右両側に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣糸ガイド。
【請求項3】
前記傾斜状部は、前記傾斜方向に指向する強化繊維の方向と交差する方向の強化繊維を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の釣糸ガイド。
【請求項4】
前記固定部及び前記傾斜状部の少なくとも一方には、長手方向に沿って開口が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項5】
前記固定部は、釣竿の竿杆が挿通される竿杆固定孔を備えており、
前記竿杆固定孔が形成されている部分では、軸長方向に指向する強化繊維よりも、軸長方向に対して交差する方向の強化繊維の量が多く配設されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項6】
前記リング保持部にガイドリングを保持すると共に、その全周囲に強化繊維を配設し、
前記強化繊維の一部は、保持されるガイドリング外周面に当接していることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【請求項7】
前記固定部は、前記リング保持部の前後方向に、前記支脚部を介して形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の釣糸ガイド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−70666(P2012−70666A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217887(P2010−217887)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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