説明

鉄筋コンクリート造建物の構築方法

【課題】鉄筋コンクリート造建物を構築する施工期間を短縮する。
【解決手段】ある階の柱の構築作業、当該階の直上の階の梁の構築作業、及び当該階の直上の階の床の構築作業を含む当該階の立上り構築作業を各階について行うことにより鉄筋コンクリート造建物の構築する方法において、少なくとも一部の階を作業対象階として、作業対象階の各階の立上り構築作業のうち、柱の構築作業の少なくとも一部の作業、梁の構築作業の少なくとも一部の作業、及び床の構築作業の少なくとも一部の作業を先行作業とし、各階の立上り構築作業のうち、先行作業以外の作業を後行作業とし、作業対象階のうちのある階の先行作業(ステップN−1〜N−3)の少なくとも一部の作業と、当該階よりも下の少なくとも何れかの階の後行作業(ステップ(N−1)−1〜(N−1)−3)の少なくとも一部の作業と、を並行して行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラーメン構造からなる鉄筋コンクリート造建物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ラーメン構造からなる鉄筋コンクリート造の建物は、柱、梁、床を、夫々現場打ちコンクリート又はPC部材により形成することにより構築されている。図18は、従来の方法により、柱はPC柱部材を用いて構築し、梁はPC梁部材を用いて構築し、床は現場打ちコンクリート部材により構築する場合の作業の流れを示す図である。同図に示すように、このように、柱はPC柱部材、梁はPC梁部材、床は現場打ちコンクリート部材を用いた場合には、各階を作業対象階(=N階)として、以下のステップN−1〜N―5からなる立上り構築作業を各階について行うことにより、鉄筋コンクリート造建物を構築することができる(例えば、非特許文献1参照)。
【0003】
ステップN−1:PC柱部材を建て込み、N階の柱(NC)を構築する。
ステップN−2:PC梁部材を柱に接続し、N+1階の梁((N+1)G)を構築する。
ステップN−3:N+1階の梁((N+1)G)にN+1階の床((N+1)S)に当たる位置に床型枠を取り付ける。
ステップN−4:N+1階の床((N+1)S)を構成する床筋を配筋する。
ステップN−5:N+1階の床((N+1)S)を構成する床コンクリートを打設する。
【非特許文献1】社団法人 日本建築学会、「建築工事標準仕様書・同解説 JASS10プレキャスト鉄筋コンクリート工事 2003」、第4版、社団法人 日本建築学会、2003年2月、p.164-p.194
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、上記の方法では、各作業対象階(N階)におけるステップN−1〜N−5における立上り構築作業が完了するまで、次の階(N+1階)の作業を行っておらず、施工期間が長期化していた。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、鉄筋コンクリート造建物を構築する施工期間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鉄筋コンクリート造建物の構築方法は、ある階の柱の構築作業、当該階の直上の階の梁の構築作業、及び当該階の直上の階の床の構築作業を含む当該階の立上り構築作業を各階について行うことにより鉄筋コンクリート造建物の構築する方法であって、 少なくとも一部の階を作業対象階として、前記作業対象階の各階の立上り構築作業のうち、前記柱の構築作業の少なくとも一部の作業を先行作業とし、前記各階の立上り構築作業のうち、前記先行作業以外の作業を後行作業とし、前記作業対象階のうちのある階の前記先行作業の少なくとも一部の作業と、当該階よりも下の少なくとも何れかの階の前記後行作業の少なくとも一部の作業と、を並行して行うことを特徴とする。
【0007】
また、本発明の鉄筋コンクリート造建物の構築方法は、ある階の柱の構築作業、当該階の直上の階の梁の構築作業、及び当該階の直上の階の床の構築作業を含む当該階の立上り構築作業を各階について行うことにより鉄筋コンクリート造建物の構築する方法であって、少なくとも一部の階を作業対象階として、前記作業対象階の各階の立上り構築作業のうち、前記柱の構築作業の少なくとも一部の作業及び前記梁の構築作業の少なくとも一部の作業を先行作業とし、前記各階の立上り構築作業のうち、前記先行作業以外の作業を後行作業とし、前記作業対象階のうちのある階の前記先行作業の少なくとも一部の作業と、当該階よりも下の少なくとも何れかの階の前記後行作業の少なくとも一部の作業と、を並行して行うことを特徴とする。
【0008】
また、本発明の鉄筋コンクリート造建物の構築方法は、ある階の柱の構築作業、当該階の直上の階の梁の構築作業、及び当該階の直上の階の床の構築作業を含む当該階の立上り構築作業を各階について行うことにより鉄筋コンクリート造建物の構築する方法であって、少なくとも一部の階を作業対象階として、前記作業対象階の各階の立上り構築作業のうち、前記柱の構築作業の少なくとも一部の作業、前記梁の構築作業の少なくとも一部の作業、及び前記床の構築作業の少なくとも一部の作業を先行作業とし、前記各階の立上り構築作業のうち、前記先行作業以外の作業を後行作業とし、前記作業対象階のうちのある階の前記先行作業の少なくとも一部の作業と、当該階よりも下の少なくとも何れかの階の前記後行作業の少なくとも一部の作業と、を並行して行うことを特徴とする。
【0009】
なお、ある階の前記先行作業の少なくとも一部の作業と、当該階よりも下の少なくとも何れかの階の前記後行作業の少なくとも一部の作業と、を並行して行うとは、実際に作業が同時に行われている場合のみならず、先行作業の少なくとも一部の作業の作業開始から作業完了までの期間と、後行作業の少なくとも一部作業の作業開始から作業完了までの期間とが一部でも重なっている場合も意味するものである。
また、上記の構築方法において、作業対象階の各階の先行作業及び後行作業は、夫々の階について同じ様に決定してもよいし、夫々の階について先行作業及び後行作業を異なるように決定してもよい。
【0010】
また、前記柱はフルPC柱部材からなり、前記柱の構築作業は、前記フルPC柱部材の建て込み作業からなり、前記先行作業は、前記フルPC柱部材の建て込み作業を含んでもよい。
【0011】
また、前記柱は現場打ちコンクリート部材からなり、前記柱の構築作業は、柱筋の配筋作業、柱型枠の設置作業、及び柱コンクリートの打設作業を含み、前記先行作業は、少なくとも前記柱筋の配筋作業を含んでもよい。
【0012】
また、前記梁はフルPC梁部材からなり、前記梁の構築作業は、前記フルPC梁部材の建て込み作業を含んでもよい。
【0013】
また、前記梁はハーフPC梁部材にコンクリートが打設されてなり、前記梁の構築作業は、前記ハーフPC梁部材の建て込み作業及び梁コンクリートの打設作業を含んでもよい。
【0014】
また、前記梁は現場打ちコンクリート部材からなり、前記梁の構築作業は、梁筋の配筋作業、梁型枠の設置作業、及び梁コンクリートの打設作業を含んでもよい。
【0015】
また、前記床はフルPC床板からなり、前記床の構築作業は、前記フルPC床板の建て込み作業を含んでもよい。
【0016】
また、前記床はハーフPC床板にコンクリートが打設されてなり、前記床の構築作業は、前記ハーフPC床板の建て込み作業、床筋の配筋作業、及び床コンクリートの打設作業を含んでもよい。
【0017】
また、前記床は現場打ちコンクリート部材からなり、前記床の構築作業は、床型枠の設置作業、床筋の配筋作業、及び床コンクリートの打設作業を含んでもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鉄筋コンクリート造建物の構築作業のうち、一部の作業を先行作業とし、残りの作業を後行作業として、異なる階の先行作業及び後行作業の少なくとも一部を並行して行うため、施工期間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の鉄筋コンクリート造建物の構築方法の各実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の鉄筋コンクリート造建物の構築方法の作業の流れと、従来の構築方法の作業の流れとを比較するための図である。なお、同図には、一例として、柱はPC柱部材を用いて構築し、梁はPC梁部材を用いて構築し、床は現場打ちコンクリート部材により構築する場合の作業の流れを示している。従来技術の欄にも記載したように、従来は、鉄筋コンクリート造建物は、各階を作業対象階(=N階)として、N階の柱の構築作業(ステップN−1)、N+1階の梁の構築作業(ステップN−2)、及びN+1階の床の構築作業(ステップN−3〜N−5)からなる立上り構築作業を行うことにより構築していた。
【0020】
ここで、柱の構築作業とは、フルPC柱部材を用いる場合には、フルPC柱部材の建て込み作業をいい、現場打ちの場合には、柱筋の配筋作業、柱型枠の設置作業、及び柱コンクリートの打設作業をいう。
【0021】
また、梁の構築作業とは、フルPC梁部材を用いる場合には、フルPC梁部材の建て込み作業をいい、ハーフPC梁部材を用いる場合には、ハーフPC梁部材の建て込み作業、及び梁コンクリートの打設作業をいい、現場打ちの場合には、梁筋の配筋作業、梁型枠の設置作業、及び梁コンクリートの打設作業をいう。なお、ハーフPC梁部材を用いる場合には、必要に応じて梁型枠の設置作業を行ってもよい。
【0022】
また、床の構築作業とは、フルPC床板を用いる場合には、フルPC床板の建て込み作業をいい、ハーフPC床板を用いる場合には、ハーフPC床板の建て込み作業、スラブ筋の配筋作業、及び、床コンクリートの打設作業をいい、現場において構築する(以下、現場打ちという)場合には、床型枠の設置作業、スラブ筋の配筋作業、及び床コンクリートの打設作業をいう。
【0023】
これに対して、本実施形態の鉄筋コンクリート造建物の構築方法は、図1に示すように、作業対象階(N階)の柱の構築作業、作業対象階の直上の階(N+1階)の梁の構築作業、及び作業対象階の直上の階(N+1階)の梁の床の構築作業とからなる作業対象階(N階)の立上り構築作業を、先行して行う先行作業と後行して行う後行作業とに分け(図1に示す例では、ステップN−1〜N−3を先行作業とし、ステップN−4〜N−5を後行作業とする)、各階を作業対象階として、作業対象階における先行作業と、作業対象階よりも下の階の後行作業とを並行して行うものである。
【0024】
なお、本発明の鉄筋コンクリート造建物の構築方法では、以下の条件を満たすように先行作業と後行作業とをわけるものとする。
A:柱の構築作業において、フルPC柱部材を用いる場合には、フルPC柱部材の建て込み作業は先行作業として行わなければならない。
【0025】
B:柱の構築作業が、現場打ちの場合には、柱筋の配筋作業は先行作業として行わなければならないが、柱型枠の設置作業及び柱コンクリートの打設作業は先行作業又は後行作業の何れかとして行うことができる。ただし、個々の柱について、柱筋の配筋作業、柱型枠の設置作業、及び柱コンクリートの打設作業を、この順序で行われなければならない。
【0026】
C:梁の構築作業において、フルPC梁部材を用いる場合には、フルPC梁部材の建て込み作業は先行作業又は後行作業の何れとしても行うことができる、
【0027】
D:梁の構築作業において、ハーフPC梁部材を用いる場合には、ハーフPC梁部材の建て込み作業は先行作業、梁型枠の設置作業、及び梁コンクリートの打設作業は先行作業又は後行作業の何れとしても行うことができる。ただし、個々の梁について、ハーフPC梁部材の建て込み作業、梁型枠の設置作業、及び梁コンクリートの打設作業を、この順序で行われなければならない。
【0028】
E:梁の構築作業が、現場打ちの場合には、梁筋の配筋作業、梁型枠の設置作業及び梁コンクリートの打設作業は、先行作業又は後行作業の何れとしても行うことができる。ただし、個々の梁について、梁コンクリートの打設作業は、梁筋の配筋作業及び梁型枠の設置作業が完了した後、行われなければならない。
【0029】
F:ある階(例えば、N階)の梁の構築作業は、その直下の階(N−1階)の柱をフルPC柱部材を用いて構築する場合には、フルPC柱部材の建て込み作業が少なくとも完了していなければ行うことができず、また、直下の階(N−1階)階の柱を現場打ちにより構築する場合には柱筋の配筋作業が少なくとも完了していなければ行うことができない。
【0030】
G:床の構築作業において、フルPC床板を用いる場合には、フルPC床板の建て込み作業は先行作業又は後行作業の何れとしても行うことができる。
【0031】
H:床の構築作業において、ハーフPC床板を用いる場合には、ハーフPC床板の建て込み作業、スラブ筋の配筋作業、及び、床コンクリートの打設作業は、先行作業又は後行作業の何れとしても行うことができるが、個々の床について、この順序で行われなければならない。
【0032】
I:床の構築作業において、現場打ちの場合には、床型枠の設置作業、スラブ筋の配筋作業、及び床コンクリートの打設作業は、先行作業又は後行作業の何れとしても行うことができるが、個々の床について、この順序で行われなければならない。
【0033】
J:ある階(例えば、N階)の床の構築作業は、その階(N階)の梁をフルPC梁部材を用いて構築する場合には、フルPC梁部材の建て込みが完了していなければ行うことができず、その階(N階)の梁をハーフPC梁部材を用いて構築する場合には、ハーフPC梁部材の建て込みが完了していなければ行うことができず、その階(N階)の梁を現場打ちにより構築する場合には、梁筋の配筋作業が完了していなければ行うことができない。
本発明では、以上の条件A〜Jを満たすように、先行作業及び後行作業を決定するものとした。
【0034】
以下、上記の鉄筋コンクリート造建物の構築方法を、柱については現場打ちの場合と、フルPC柱部材を用いた場合とに分け、梁については、現場打ちの場合と、ハーフPC梁部材を用いた場合と、フルPC梁部材を用いた場合と、床については、現場打ちの場合と、ハーフPC床板を用いた場合と、フルPC床板を用いた場合とに分けて説明する。
【0035】
<柱:現場打ち、梁:現場打ち又はハーフPC、床:フルPCの場合>
以下、柱及び梁は現場打ちコンクリート部材より構築し、床はフルPC部材を用いて構築する場合について説明する。
図2A〜図2Dは、かかる場合の鉄筋コンクリート造の建物を構築する流れを説明するための図であり、図3は、かかる場合の鉄筋コンクリート造の建物を構築する流れを説明するためのフローチャートである。なお、図2A〜図2Dにおいて、構築が完了している箇所は灰色で示している。
【0036】
本実施形態において、各階の立上り構築作業のうち、その階の柱の配筋作業及び型枠設置作業、その直上の階の梁の配筋作業及び型枠設置作業、及び直上の階のふるPC床板の建て込み作業を先行作業とし、その階の柱及び直上の階の梁のコンクリート打設作業を後行作業とする。すなわち、N階を作業対象階とした場合に、N階の立上り構築作業のうちの先行作業(N階の柱筋の配筋及び柱型枠の設置作業、N+1階の梁筋の配筋作業及び梁型枠の設置作業、及びN+1階のフルPC床板の建込作業)と、N−1階の立上り構築作業のうちの後行作業(N−1階の柱、及びN階の梁のコンクリート打設)との少なくとも一部を並行して行うことにより施工期間を短縮する。
【0037】
以下、本実施形態の鉄筋コンクリート造の建物の構築方法を詳細に説明する。
図2Aに示すように、ステップ1100におけるN階の柱NCにおける配筋作業を行うにあたり、N−2階よりも下階の柱(N-2)C110の構築が完了しており、N−1階よりも下の階の梁 (N-1)G120の構築が完了しており、N階よりも下の階の床NSの建込作業が完了しており、N−1階の柱(N-1)Cの柱筋111の配筋作業及び型枠の設置作業が完了しており、N階の梁NGの梁筋121の配筋作業及び梁型枠122の設置作業が完了している。
【0038】
まず、図2Aに示すように、図3のステップ1100におけるN階の柱NCの柱筋111の配筋作業及びステップ1102におけるN階の柱NCの柱型枠112の設置作業を行う。なお、施工期間短縮のため、柱筋111は予め地上において組んだものを揚重機により揚重するとよい。
【0039】
次に、図2B及び図2Cに示すように、ステップ1104におけるN階の梁NGの梁筋121の配筋作業及びステップ1106におけるN階の梁NGの梁型枠122の設置作業を行うとともに、これと並行して、ステップ1110におけるN−1階の柱(N-1)Cの柱型枠112内へのコンクリート113の打設及びステップ1112におけるN階の梁NCの梁型枠122内へのコンクリート123の打設を行う。このように、本実施形態では、コンクリートの打設作業を作業対象階と異なる階で行うことにより、他の作業と作業空間が重なることがないため、並行して行うことができる。
【0040】
次に、図2Dに示すように、N+1階の床(N+1)Sを構成するフルPC床板130Aを建て込む。なお、建て込んだフルPC床板130Aは支持部材によりN階の床130に反力を取って支持すればよい。
【0041】
これにより、N−1階よりも下階の柱(N-1)C110の構築が完了しており、N階よりも下の階の梁 NG120の構築が完了しており、N+1階よりも下の階の床(N+1)Sの建込作業が完了しており、N階の柱NCの柱筋111の配筋作業及び型枠の設置作業が完了しており、N+1階の梁(N+1)Gの梁筋121の配筋作業及び梁型枠122の設置作業が完了した状態となる。このため、ステップ1100〜1112の各工程を各階について行うことにより、ラーメン架構からなる鉄筋コンクリート造の建物を構築することができる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態では、ステップ1104、1106におけるN+1階の梁筋121の配筋作業及び梁型枠122の設置作業と並行して、N−1階の柱及びN階の梁を構成するコンクリート113、123を打設する工程とを行うため、工期を短縮することが可能となる。
【0043】
なお、上記実施形態では、N階の立上り構築作業のうち、N階の柱の構築作業の一部の作業、N+1階の梁の構築作業の一部の作業、及びN+1階の床の構築作業を先行作業として行うものとしたが、本発明の実施形態はこれに限られない。例えば、N階の柱の構築作業の一部の作業及び、梁の構築作業の一部の作業のみを先行作業として行うことも可能である。
【0044】
図4はこのような場合の作業の流れを示すフローチャートである。このような場合には、ステップ1120〜ステップ1123において、N階の立上り構築作業のうち、N階の柱の柱筋配筋作業及び型枠の設置作業、N+1階の梁の梁筋の配筋作業及び梁型枠の設置作業を先行作業として行い、これ並行して、N−1階の立上り構築作業の後行作業であるN階の床を構成するフルPC床板の建込み作業、N−1階の柱及びN階の梁を構成するコンクリートの打設作業を行えばよい。
【0045】
さらに、N階の柱の構築作業の一部の作業のみを先行作業として行うことも可能である。図5は、このような場合の作業の流れを示すフローチャートである。このような場合には、N階の立上り構築作業のうち、N階の柱の柱筋配筋作業及び型枠の設置作業を先行作業として行い、これ並行して、N−1階の立上り構築作業の後行作業である、N階の梁の梁筋の配筋作業及び梁型枠の設置作業、N階の床を構成するフルPC床板の建込み作業、N−1階の柱及びN階の梁を構成するコンクリートの打設作業を行えばよい。
【0046】
このように、上記した作業順序の条件A〜Jを満たし、先行作業と後行作業との一部の作業を並行して行えば、施工期間を短縮することができる。
【0047】
なお、上記の実施形態では、梁筋の配筋を行った後、梁型枠を設置することとしたが、これに限らず、梁型枠を設置した後、梁筋の配筋作業を行ってもよい。すなわち、図3におけるステップ1104とステップ1106、図4におけるステップ1122とステップ1123、図5におけるステップ1132とステップ1133とを逆の順序で行ってもよい。
また、上記の実施形態では、梁を現場打ちにより構築する場合について説明したが、梁をハーフPC梁部材を用いて構築する場合には、図3のステップ1104、図4のステップ1122、及び図5のステップ1132における梁筋配筋作業に代えて、ハーフPC梁部材の建て込み工程を行えばよい。なお、梁型枠の設置作業が不要な場合には、図3のステップ1106、図4のステップ1123、及び図5のステップ1133の梁型枠の設置作業を省略すればよい。
【0048】
<柱:現場打ち、梁:現場打ち又はハーフPC、床:ハーフPCの場合>
図6は柱、梁を現場打ち、床をハーフPC床板を用いて構築する場合の作業の流れの一例を示すフローチャートである。同図に示すように、このような場合には、N階の立上り構築作業のうち、ステップ1140〜1148におけるN階の柱の柱筋の配筋作業及び柱型枠の設置作業、N+1階の梁の梁筋の配筋作業及び型枠の設置作業、及び、N+1階の床を構成するハーフPC床板の建て込み作業を先行作業として行い、これら先行作業と少なくとも一部の作業が並行するように、N−1階の立上り構築作業の後行作業であるステップ1150〜1156におけるN階のスラブ筋の配筋作業、N−1階の柱、N階の梁及びN階の床を構成するコンクリートの打設作業を行えばよい。
【0049】
なお、本実施形態では、ステップ1144における梁筋の配筋作業の後、ステップ1146における梁型枠の設置作業を行うものとしたが、これらの作業を逆の順序で行ってもよい。
また、本実施形態においても、上述した条件A〜Jに適合する場合であれば、先行作業の一部を後行作業として、又、後行作業の一部を先行作業として行うものとしてもよい。
【0050】
なお、上記の実施形態では、梁を現場打ちにより構築する場合について説明したが、梁をハーフPC梁部材を用いて構築する場合には、図6のステップ1144における梁筋配筋作業に代えて、ハーフPC梁部材の建て込み工程を行えばよい。また、ステップ1146の梁型枠の設置作業は、梁型枠が不要な場合には省略すればよい。
【0051】
<柱:現場打ち、梁:現場打ち又はハーフPC、床:現場打ちの場合>
図7は、柱、梁、床ともに現場打ちの場合の鉄筋コンクリート造建物を構築する場合のフローチャートである。同図に示すように、柱、梁、床ともに現場打ちにより構築する場合には、N階の立上り構築作業のうち、ステップ1160〜1168におけるN階の柱の柱筋配筋作業及び柱型枠設置作業、N+1階の梁の梁筋配筋作業及び梁型枠設置作業、及びN+1階の床型枠の設置作業を先行作業として行い、これと並行して、N−1階の立上り構築作業の後行作業である、ステップ1170〜1176におけるN階のスラブ筋の配筋作業、N−1階の柱、N階の梁、及びN階の床を構成するコンクリートを打設する作業を行えばよいこれにより施工期間を短縮することが可能となる。
【0052】
なお、本実施形態においても、ステップ1164における梁筋の配筋作業と、ステップ1166における梁型枠の設置作業とを逆の順序で行ってもよい。
また、本実施形態においても、上記の条件A〜Jに適合する場合であれば、先行作業の一部を後行作業として、又、後行作業の一部を先行作業として行うものとしてもよい。
【0053】
また、上記の実施形態では、梁を現場打ちにより構築する場合について説明したが、梁をハーフPC梁部材を用いて構築する場合には、図7のステップ1164における梁筋配筋作業に代えて、ハーフPC梁部材の建て込み工程を行えばよい。
【0054】
<柱:現場打ち、梁:フルPC、床:フルPCの場合>
図8は、柱を現場打ちとし、梁及び床をフルPC部材を用いて構築する場合の作業の流れを示すフローチャートである。
同図に示すように、梁及び床をフルPC部材を用いて構築する場合には、例えば、ステップ1200〜1206における、N階の立上り構築作業のうち、先行作業として、N階の柱の柱筋配筋作業及び柱型枠設置作業、N+1階の梁を構成するフルPC梁部材の建て込み作業、及び、N+1階の床を構成するフルPC床板の建て込み作業とを行い、これと並行して、N−1階の立上り構築作業の後行作業であるステップ1208におけるN−1階の柱を構成するコンクリートの打設を行えばよい。
【0055】
なお、本実施形態においても、上記の条件A〜Jに適合する場合であれば、先行作業の一部を後行作業として、又、後行作業の一部を先行作業として行うものとしてもよい。
【0056】
<柱:現場打ち、梁:フルPC、床:ハーフPCの場合>
図9は、柱を現場打ちとし、梁をフルPC部材を用いて構築し、床をハーフPC床板を用いて構築する場合の流れを示すフローチャートである。
同図に示すように、かかる場合には、例えば、N階の立上り構築作業のうち、先行作業として、ステップ1220〜1226のN階の柱の柱筋の配筋作業及び柱型枠の設置作業、N+1階の梁を構成するフルPC梁部材の建込み作業、及び、N+1階の床を構成するハーフPC床板の建込み作業を行い、これと並行して、N−1階の立上り構築作業の後行作業である、ステップ1228〜1232のN階のスラブ筋の配筋作業、N−1階の柱及びN階の床を構成するコンクリートの打設作業を行えばよい。このようにしても、施工期間を短縮できる。
【0057】
なお、本実施形態においても、上記の条件A〜Jに適合する場合であれば、先行作業の一部を後行作業として、又、後行作業の一部を先行作業として行うものとしてもよい。
【0058】
<柱:現場打ち、梁:フルPC、床:現場打ちの場合>
図10は、柱を現場打ちとし、梁をフルPC部材は用いて構築し、床を現場打ちとした場合の流れを示すフローチャートである。同図に示すように、本実施形態では、上記説明した図9に示す、柱を現場打ちとし、梁をフルPC部材を用いて構築し、床をハーフPC床板を用いて構築した場合のフローチャートにおけるステップ1226のN+1階のハーフPC床板を建て込む工程に代えて、ステップ1246のN+1階の床型枠を建て込む工程を行えばよい。
【0059】
なお、本実施形態においても、上記の条件A〜Jに適合する場合であれば、先行作業の一部を後行作業として、又、後行作業の一部を先行作業として行うものとしてもよい。
【0060】
<柱:フルPC、梁:現場打ち又はハーフPC、床:ハーフPC又は現場打ちの場合>
本実施形態では、柱はフルPC部材を用いて構築し、梁は現場打ちにより構築し、床はハーフPC部材を用いて構築する場合について説明する。
図11A〜図11Dは、かかる場合の鉄筋コンクリート造の建物を構築する流れを説明するための図であり、図12は、かかる場合の鉄筋コンクリート造の建物を構築する流れを説明するためのフローチャートである。なお、図11A〜図11Dにおいて、構築が完了している箇所は灰色で示している。
【0061】
本実施形態では、各階の立上り構築作業のうち、その階のフルPC柱部材の建て込み作業、及びその直上の階の梁の梁筋配筋作業及び梁型枠の設置作業を先行作業とし、その直上の階の床のハーフPC床板の建て込み作業、直上の階の床筋の配筋作業、直上の階の床コンクリートの打設作業、及び直上の階の梁コンクリートの打設作業を後行作業とする。すなわち、N階を作業対象階とした場合に、N階の立上り構築作業のうちの先行作業(N階のフルPC柱部材の建て込み作業、N+1階の梁筋の配筋作業、及びN+1階の梁型枠の設置作業)と、N−1階の立上り構築作業のうちの後行作業(N階のハーフPC愉快の建て込み作業、N階のスラブ筋の配筋作業、N階の床コンクリートの打設作業、及びN階の梁コンクリートの打設作業)と、を少なくとも一部を並行して行う。
【0062】
以下、詳細に本実施形態の鉄筋コンクリート造建物の構築方法を説明する。
図11Aに示すように、図12のステップ1300におけるN階のフルPC柱部材の建て込み作業を行うにあたり、N−1階よりも下階の柱(N-1)C210の構築が完了しており、N−1階よりも下の階の梁 (N-1)G220の構築が完了しており、N−1階よりも下の階の床(N-1)Sの構築作業が完了しており、N階の梁NGの梁筋221の配筋作業及び梁型枠222の設置作業が完了している。
【0063】
図11Aに示すように、まず、図12のステップ1300におけるN階の柱NCを構成するPC柱部材210Aの建て込み作業を行う。
【0064】
次に、図11Bに示すように、ステップ1306におけるN階の床NSを構成するハーフPC床板230Aを建て込む。この際、建て込んだハーフPC床板230AはN−1階の床(N-1)S230上に設けた支持部材240により支持する。
【0065】
次に、図11Cに示すように、ステップ1302におけるN+1階の梁(N+1)G1の梁筋221の配筋作業及びステップ1304におけるN階の梁型枠222の設置作業を行うとともに、これと並行して、ステップ1308におけるN階の床NSのスラブ筋231の配筋作業を行う。
【0066】
次に、図11Dに示すように、ステップ1310におけるN階の梁NGの梁コンクリート223の打設作業、及びステップ1312におけるN階の床NSの床コンクリート233の打設作業を行う。これらの作業は、上記のステップ1302及びステップ1304のN+1階の梁(N+1)G1の梁筋221の配筋作業及びN階の梁型枠222の設置作業と並行して行ってもよい。
【0067】
これにより、同図に示すように、N階よりも下階の柱NC210の構築が完了しており、N階よりも下の階の梁 NG220の構築が完了しており、N階よりも下の階の床NSの構築作業が完了しており、N+1階の梁(N+1)Gの梁筋221の配筋作業及び梁型枠222の設置作業が完了した状態(すなわち、図11AのN階をN+1階とした状態)となる。このため、ステップ1300〜1312の各工程を各階について行うことにより、ラーメン架構からなる鉄筋コンクリート造の建物を構築することができる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態では、ステップ1302、1304におけるN+1階の梁筋221の配筋作業及び梁型枠222の設置作業と、ステップ1308及びステップ1310におけるN階のスラブ筋231の配筋作業、N階の梁コンクリート223の打設作業を並行して行うため、施工期間を短縮することができる。
【0069】
なお、本実施形態では、ステップ1302において梁筋の配筋作業を行った後、ステップ1304において梁型枠の設置作業を行うものとしたが、これらの作業を逆の順序で行ってもよい。
また、本実施形態において、上記の条件A〜Jに適合する場合であれば、先行作業の一部を後行作業として、又、後行作業の一部を先行作業として行うものとしてもよい。
【0070】
なお、上記の実施形態では、床230をハーフPC床板230Aを用いて構築する場合について説明したが、床230を現場打ちにより構築する場合には、図12のステップ1306におけるハーフPC床板230Aの建て込み作業に代えて、床型枠の設置作業を行えばよい。
【0071】
また、上記の実施形態では、梁220を現場打ちにより構築する場合について説明したが、梁220をハーフPC梁部材を用いて構築する場合には、図12のステップ1308における梁筋221の配筋作業に代えて、ハーフPC梁部材の建て込み作業を行えばよい。
【0072】
<柱:フルPC、梁:現場打ち又はハーフPC、床:フルPCの場合>
図13は、柱をフルPC柱部材を建て込むことにより構築し、梁を現場打ちにより構築し、床をフルPC床板を建て込むことにより構築する場合の作業の流れを示すフローチャートである。
同図に示すように、柱をフルPC柱部材を建て込むことにより構築し、梁を現場打ちにより構築し、床をフルPC床板を建て込むことにより構築する場合には、例えば、N階の立上り構築作業のうち、先行作業として、ステップ1320〜1324において、N階のフルPC柱部材の建て込み、N+1階のフルPC床板の建て込み、及びN+1階の梁筋配筋を行い、これと並行して、N−1階の立上り構築作業の後行作業である、ステップ1326、1328において、N−1階の梁型枠設置及びN−1階の梁コンクリートの打設を行えばよい。このようにしても、施工期間を短縮できる。
【0073】
なお、本実施形態においても、上記の条件A〜Jに適合する場合であれば、先行作業の一部を後行作業として、又、後行作業の一部を先行作業として行うものとしてもよい。
【0074】
<柱:フルPC、梁:フルPC、床:ハーフPC又は現場打ちの場合>
図14は、柱をフルPC柱部材を用いて構築し、梁をフルPC梁部材を用いて構築し、床をハーフPC床板を用いて構築する場合の作業の流れを示すフローチャートである。
同図に示すように、このような場合には、例えば、N階の立上り構築作業のうち、先行作業として、ステップ1340〜1344において、N階のフルPC柱部材の建て込み作業、N+1階のフルPC梁部材の建て込み、及びN+1階のハーフPC床板の建て込みを行い、これと並行して、N−1階の立上り構築作業のうちの後行作業である、ステップ1346〜1348のN階のスラブ筋の配筋作業、N階の梁コンクリート打設を行えばよい。これにより、先行作業と後行作業の一部を並行して行うことができるため、施工期間を短縮することができる。
【0075】
なお、本実施形態においても、上記の条件A〜Jに適合する場合であれば、先行作業の一部を後行作業として、又、後行作業の一部を先行作業として行うものとしてもよい。
【0076】
<柱:フルPC、梁:フルPC、床:フルPCの場合>
図15は、柱、梁、床をフルPC部材を用いて構築する場合の作業の流れを示すフローチャートである。同図に示すように、このような場合には、N階の立上り構築作業のうち、先行作業として、ステップ1360、1362においてN階のフルPC柱部材の建て込み作業、及びN+1階のフルPC梁部材の建て込み作業を行い、これと並行して、N−2階の後行作業である、ステップ364における、N−1階のフルPC床板の建て込み作業を行えばよい。これにより、先行作業と後行作業の一部を並行して行うことができるため、施工期間を短縮することができる。
【0077】
<柱:2フロア分フルPC、梁:現場打ち、床フルPC>
上記した柱をフルPC柱部材を用いて構築する各実施形態では、1フロア分の長さを有するフルPC柱部材を用いているが、これに限らず、2フロア分の長さを有するフルPC柱部材を用いることも可能である。以下、柱は2フロア分の長さを有するフルPC柱部材を用いて構築し、梁は現場打ちにより構築し、床はフルPC床板を用いて鉄筋コンクリート造建物を構築する場合について説明する。なお、PC柱部材の接合箇所は、隣接する柱において異なる階に位置するようにする。本実施形態では、2フロア部の長さを有するフルPC柱部材を用いるため、各階の立上り作業における柱の構築作業として、隣接する柱の何れか一方の柱を構成するフルPC柱部材を建て込む作業を行うこととなる。
【0078】
図16A〜図16Cは、かかる場合の鉄筋コンクリート造の建物を構築する流れを説明するための図であり、図17は、かかる場合の鉄筋コンクリート造の建物を構築する流れを説明するためのフローチャートである。
【0079】
本実施形態では、N階を作業対象階とした場合に、N階の立上り構築作業のうち、先行作業として、片側のN階及びN+1階の柱を構成するPC柱部材の建て込み作業、N+1階の梁筋の配筋作業、N+1階の梁型枠の設置作業、及びN+1階のフルPC床板の建て込み作業を行い、これと並行して、N−1階の立上り構築作業の後行作業である、N階の梁コンクリートの打設作業を行うことにより施工期間を短縮する。
【0080】
以下、詳細に本実施形態の鉄筋コンクリート造建物の構築方法を説明する。
図16Aに示すように、図17のステップ1380における図中右側のN階及びN+1階の柱310を構成するPC柱部材310Aの建て込み作業を行うにあたり、図中左側の柱310はN階まで、図中右側の柱310はN−1階まで構築が完了し、梁320はN−1階まで構築が完了するとともに、N階の梁筋321の配筋作業及び梁型枠322の設置作業が完了しており、床330はN階まで構築が完了している。
【0081】
まず、図16Aに示すように、図17のステップ1380において、図中右側のN階及びN+1階の柱310を構成するPC柱部材310Aの建て込み作業を行う。
【0082】
次に、図16Bに示すように、ステップ1382におけるN+1階の梁(N+1)Gの梁筋の配筋作業及びステップ1384におけるN+1階の梁(N+1)Gの梁型枠322の設置作業を行う。なお、梁筋321の配筋作業は、予め、地組みした梁筋321を揚重装置などにより建て込むとよい。
【0083】
次に、図16Cに示すように、ステップ1386におけるN+1階の床(N+1)Sを構成するフルPC床板321Aの建て込み作業を行うとともに、これと並行して、ステップ1388におけるN階の梁NGを構成するコンクリート323の打設を行う。
【0084】
これにより、同図に示すように、図中右側の柱310はN+1階まで、図中左側の柱310はN階まで構築が完了し、梁320はN階まで構築が完了するとともに、N+1階の梁筋321の配筋作業及び梁型枠322の設置作業が完了しており、床330はN+1階まで構築が完了した状態(すなわち、図16Aの左右を反転し、N階をN+1階とした状態)となる。このように、ステップ1380〜1388の各工程を各階について行うことにより、ラーメン架構からなる鉄筋コンクリート造の建物を構築することができる。
【0085】
以上のように、フルPC部材を用いて柱310を構築する場合に、2フロア分の長さを有するフルPC柱部材を用いることも可能である。
【0086】
なお、本実施形態では、ステップ1382において梁筋の配筋作業を行った後、ステップ1384において、梁型枠の設置作業を行ったが、これらの作業を逆の順序で行ってもよい。
また、上記の実施形態では、隣接する柱において、フルPC柱部材の接合箇所が異なる階に位置するようにしたが、これに限らず、接合箇所が同じ階に位置するようにしてもよい。図18は、このような場合の鉄筋コンクリート造の建物を構築する流れを示すフローチャートである。
【0087】
同図に示すように、このような場合には、図17のステップ1380における片側のN階及びN+1階の柱を構成するフルPC柱部材310Aを建て込む作業に変えて、ステップ1400において、両側のN階及びN+1階の柱を構成するフルPC柱部材310Aを建て込む作業を行う。そして、フルPC柱部材310Aは2フロア分の長さを有するため、このステップ402の工程は、建物の2フロア分を構築する中で1回行えばよいので、例えば、Nが奇数の場合に実施し、Nが偶数の場合なら不実施とすればよい。このように、柱310を2フロア以上の長さを有するフルPC柱部材を用いて構築する場合には、フルPC柱部材の建て込み工程が、一部の階を作業対象階とした場合にしか行わないことがあるが、このような場合も本発明の鉄筋コンクリート造の構築方法に含まれる。
なお、図18に示す実施形態では、ステップ1402において梁筋の配筋作業を行った後、ステップ1404において、梁型枠の設置作業を行ったが、これらの作業を逆の順序で行ってもよい。
【0088】
なお、上記の各実施形態において、N階の立上り構築作業のうちの先行作業と、N−1階又はN−2階の立上り構築作業のうちの後行作業とを並行して行うものとしたが、これに限らず、N−1階よりも下の階の立上り構築作業のうちの後行作業であれば、N階の立上り構築作業のうちの先行作業と、並行して行うことができる。
【0089】
また、上記の各実施形態では、各階の立上り構築作業を先行作業と後行作業とに分けて、N階の立上り構築作業の先行作業と、N−1階よりも下の階の立上り構築作業の後行作業とを並行して行うものとしたが、これに限らず、上記の条件A〜Jが満たされれば、各階の立上り構築作業を3以上の作業に分けて、3以上の階においてこれらの作業を並行して行うものとしてもよい。
【0090】
また、上記の各実施形態において、作業対象階の各階の先行作業及び後行作業は、夫々の階について同じ様に分ける場合について説明したが、これに限らず、夫々の階について先行作業及び後行作業を異なるように分けてもよい。
【0091】
すなわち、例えば、床を現場打ちコンクリートで構築する際に、N階の立上り構築作業では床コンクリートの打設作業が後行作業に含まれるように、先行作業と後行作業とを分け、N−1階の立上り構築作業では、床コンクリートの打設作業が先行作業に含まれるように分けることができる。このような場合には、N階の立上り構築作業の先行作業として行うN階の床コンクリートの打設作業と、N−1階の立上り構築作業として行うN−1階の床コンクリートの打設作業とを並行して行うことができるが、このような場合も本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の鉄筋コンクリート造建物の構築方法の各工程と、従来の構築方法の各工程とを比較するための図である。
【図2A】現場打ちコンクリート部材より構築し、床はフルPC部材を用いて構築する場合の作業の流れを説明するための図(その1)である。
【図2B】現場打ちコンクリート部材より構築し、床はフルPC部材を用いて構築する場合の作業の流れを説明するための図(その2)である。
【図2C】現場打ちコンクリート部材より構築し、床はフルPC部材を用いて構築する場合の作業の流れを説明するための図(その3)である。
【図2D】現場打ちコンクリート部材より構築し、床はフルPC部材を用いて構築する場合の作業の流れを説明するための図(その4)である。
【図3】現場打ちコンクリート部材より構築し、床はフルPC部材を用いて構築する場合の工程を説明するためのフローチャートである。
【図4】柱の構築作業の一部の作業及び、梁の構築作業の一部の作業のみを先行作業とした場合の工程を説明するためのフローチャートである。
【図5】柱の構築作業の一部の作業のみを先行作業とした場合の工程を説明するためのフローチャートである。
【図6】梁を現場打ち、床をハーフPC床板を用いて構築する場合の工程を説明するためのフローチャートである。
【図7】柱、梁、床ともに現場打ちの場合の鉄筋コンクリート造建物を構築する場合の工程を説明するためのフローチャートである。
【図8】柱を現場打ちとし、梁及び床をフルPC部材を用いて構築する場合の工程を説明するためのフローチャートである。
【図9】柱を現場打ちとし、梁をフルPC部材を用いて構築し、床をハーフPC床板を用いて構築する場合の工程を説明するためのフローチャートである。
【図10】柱を現場打ちとし、梁をフルPC部材は用いて構築し、床を現場打ちとした場合の工程を説明するためのフローチャートである。
【図11A】柱はフルPC部材を用いて構築し、梁は現場打ちにより構築し、床はハーフPC部材を用いて構築する場合の作業の流れを示す図(その1)である。
【図11B】柱はフルPC部材を用いて構築し、梁は現場打ちにより構築し、床はハーフPC部材を用いて構築する場合の作業の流れを示す図(その2)である。
【図11C】柱はフルPC部材を用いて構築し、梁は現場打ちにより構築し、床はハーフPC部材を用いて構築する場合の作業の流れを示す図(その3)である。
【図11D】柱はフルPC部材を用いて構築し、梁は現場打ちにより構築し、床はハーフPC部材を用いて構築する場合の作業の流れを示す図(その4)である。
【図12】柱はフルPC部材を用いて構築し、梁は現場打ちにより構築し、床はハーフPC部材を用いて構築する場合の工程を説明するためのフローチャートである。
【図13】柱をフルPC柱部材を建て込むことにより構築し、梁を現場打ちにより構築し、床をフルPC床板を建て込むことにより構築する場合の作業の工程を説明するためのフローチャートである。
【図14】柱をフルPC柱部材を用いて構築し、梁をフルPC梁部材を用いて構築し、床をハーフPC床板を用いて構築する場合の作業の工程を説明するためのフローチャートである。
【図15】柱、梁、床をフルPC部材を用いて構築する場合の工程を説明するためのフローチャートである。
【図16A】柱は2フロア分の長さを有するフルPC部材を用いて構築し、梁は現場打ちにより構築し、床はフルPC床板を用いて鉄筋コンクリート造建物を構築する場合の鉄筋コンクリート造の建物を構築する流れを説明するための図(その1)である。
【図16B】柱は2フロア分の長さを有するフルPC部材を用いて構築し、梁は現場打ちにより構築し、床はフルPC床板を用いて鉄筋コンクリート造建物を構築する場合の鉄筋コンクリート造の建物を構築する流れを説明するための図(その2)である。
【図16C】柱は2フロア分の長さを有するフルPC部材を用いて構築し、梁は現場打ちにより構築し、床はフルPC床板を用いて鉄筋コンクリート造建物を構築する場合の鉄筋コンクリート造の建物を構築する流れを説明するための図(その3)である。
【図17】柱は2フロア分の長さを有するフルPC部材を用いて構築し、梁は現場打ちにより構築し、床はフルPC床板を用いて鉄筋コンクリート造建物を構築する場合の鉄筋コンクリート造の建物を構築する工程を説明するためのフローチャートである。
【図18】柱は2フロア分の長さを有するフルPC部材を用いて構築し、梁は現場打ちにより構築し、床はフルPC床板を用いて鉄筋コンクリート造建物を構築する方法において接合箇所が同じ階に位置するようにした場合の鉄筋コンクリート造の建物を構築する工程を説明するためのフローチャートである。
【図19】従来の方法により、柱はPC柱部材を用いて構築し、梁はPC梁部材を用いて構築し、床は現場打ちコンクリート部材により構築する場合の工程を説明するための図である。
【符号の説明】
【0093】
110、210、310 柱
111 柱筋
112 柱型枠
113 柱コンクリート
120、220、320 梁
121、221、321 梁筋
122、222、322 梁型枠
123、223、323 梁コンクリート
130、230、330 床
130A、330A フルPC床板
230A ハーフPC床板
231 床筋
233 床コンクリート
310A フルPC柱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ある階の柱の構築作業、当該階の直上の階の梁の構築作業、及び当該階の直上の階の床の構築作業を含む当該階の立上り構築作業を各階について行うことにより鉄筋コンクリート造建物の構築する方法であって、
少なくとも一部の階を作業対象階として、
前記作業対象階の各階の立上り構築作業のうち、前記柱の構築作業の少なくとも一部の作業を先行作業とし、
前記各階の立上り構築作業のうち、前記先行作業以外の作業を後行作業とし、
前記作業対象階のうちのある階の前記先行作業の少なくとも一部の作業と、当該階よりも下の少なくとも何れかの階の前記後行作業の少なくとも一部の作業と、を並行して行うことを特徴とする鉄筋コンクリート造建物の構築方法。
【請求項2】
ある階の柱の構築作業、当該階の直上の階の梁の構築作業、及び当該階の直上の階の床の構築作業を含む当該階の立上り構築作業を各階について行うことにより鉄筋コンクリート造建物の構築する方法であって、
少なくとも一部の階を作業対象階として、
前記作業対象階の各階の立上り構築作業のうち、前記柱の構築作業の少なくとも一部の作業及び前記梁の構築作業の少なくとも一部の作業を先行作業とし、
前記各階の立上り構築作業のうち、前記先行作業以外の作業を後行作業とし、
前記作業対象階のうちのある階の前記先行作業の少なくとも一部の作業と、当該階よりも下の少なくとも何れかの階の前記後行作業の少なくとも一部の作業と、を並行して行うことを特徴とする鉄筋コンクリート造建物の構築方法。
【請求項3】
ある階の柱の構築作業、当該階の直上の階の梁の構築作業、及び当該階の直上の階の床の構築作業を含む当該階の立上り構築作業を各階について行うことにより鉄筋コンクリート造建物の構築する方法であって、
少なくとも一部の階を作業対象階として、
前記作業対象階の各階の立上り構築作業のうち、前記柱の構築作業の少なくとも一部の作業、前記梁の構築作業の少なくとも一部の作業、及び前記床の構築作業の少なくとも一部の作業を先行作業とし、
前記各階の立上り構築作業のうち、前記先行作業以外の作業を後行作業とし、
前記作業対象階のうちのある階の前記先行作業の少なくとも一部の作業と、当該階よりも下の少なくとも何れかの階の前記後行作業の少なくとも一部の作業と、を並行して行うことを特徴とする鉄筋コンクリート造建物の構築方法。
【請求項4】
請求項1から3のうち何れかに記載の鉄筋コンクリート造建物の構築方法であって、
前記柱はフルPC柱部材からなり、
前記柱の構築作業は、前記フルPC柱部材の建て込み作業からなり、
前記先行作業は、前記フルPC柱部材の建て込み作業を含むことを特徴とする鉄筋コンクリート造建物の構築方法。
【請求項5】
請求項1から3のうち何れかに記載の鉄筋コンクリート造建物の構築方法であって、
前記柱は現場打ちコンクリート部材からなり、
前記柱の構築作業は、柱筋の配筋作業、柱型枠の設置作業、及び柱コンクリートの打設作業を含み、
前記先行作業は、少なくとも前記柱筋の配筋作業を含むことを特徴とする鉄筋コンクリート造建物の構築方法。
【請求項6】
請求項1から5のうち何れかに記載の鉄筋コンクリート造建物の構築方法であって、
前記梁はフルPC梁部材からなり、
前記梁の構築作業は、前記フルPC梁部材の建て込み作業を含むことを特徴とする鉄筋コンクリート造建物の構築方法。
【請求項7】
請求項1から5のうち何れかに記載の鉄筋コンクリート造建物の構築方法であって、
前記梁はハーフPC梁部材にコンクリートが打設されてなり、
前記梁の構築作業は、前記ハーフPC梁部材の建て込み作業及び梁コンクリートの打設作業を含むことを特徴とする鉄筋コンクリート造建物の構築方法。
【請求項8】
請求項1から5のうち何れかに記載の鉄筋コンクリート造建物の構築方法であって、
前記梁は現場打ちコンクリート部材からなり、
前記梁の構築作業は、梁筋の配筋作業、梁型枠の設置作業、及び梁コンクリートの打設作業を含むことを特徴とする鉄筋コンクリート造建物の構築方法。
【請求項9】
請求項1から8のうち何れかに記載の鉄筋コンクリート造建物の構築方法であって、
前記床はフルPC床板からなり、
前記床の構築作業は、前記フルPC床板の建て込み作業を含むことを特徴とする鉄筋コンクリート造建物の構築方法。
【請求項10】
請求項1から8のうち何れかに記載の鉄筋コンクリート造建物の構築方法であって、
前記床はハーフPC床板にコンクリートが打設されてなり、
前記床の構築作業は、前記ハーフPC床板の建て込み作業、床筋の配筋作業、及び床コンクリートの打設作業を含むことを特徴とする鉄筋コンクリート造建物の構築方法。
【請求項11】
請求項1から8のうち何れかに記載の鉄筋コンクリート造建物の構築方法であって、
前記床は現場打ちコンクリート部材からなり、
前記床の構築作業は、床型枠の設置作業、床筋の配筋作業、及び床コンクリートの打設作業を含むことを特徴とする鉄筋コンクリート造建物の構築方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図17】
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【図18】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−102914(P2009−102914A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276802(P2007−276802)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)