説明

鉄道作業車両用伸縮レール装置のインターロック装置

【課題】収納時に可動レールを確実に固定すると共に、本線レールを短絡してから可動レールの伸長操作を可能にする一方、可動レールの伸長状態で本線レールの短絡解除操作を阻止すること。
【解決手段】鉄道線路に作業車両を移動させるために、固定レール1上に可動レール2を移動可能に設ける。固定レールの近傍にはレールロック部材7を設け、固定レール1に可動レール2を固定したロックピン17を抜け止めし、解除キー16で解除して抜き取り可能にする。解除キー16はレールロック部材7の解除操作により抜け止めする。収容ボックス8はレールロック部材7から抜いたロックピン17を収容する。短絡器9は短絡キー9aを抜くと本線レールRを短絡する。短絡キー9aと解除キー16とは一体を成し、レールロック部材7と短絡器9とを同時に操作できない。操作盤6はロックピン17を収容ボックス8に収納した状態で操作可能にするロック解除回路10を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道線路の側部に設けられた作業車両の保管場所から鉄道線路まで作業車両を移動させるために、鉄道線路とほぼ直交方向に交差するように伸縮可能に設けられるレール装置の誤操作を防止するインターロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道作業車両用の伸縮レール装置としては、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。これは、作業車両の保管場所に固定された固定レールの上に載せ置かれた可動レールを、必要時に引き出して所定位置までレールを延長するものである。可動レールは、固定レールの両端部に設けられたスプロケット間に掛け回されたチェーンの途上に結合し、このチェーンをモータ駆動で引き回すことにより、固定レール上で移動するようになっている。
【特許文献1】特開平6−193004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の作業車両用の伸縮レール装置は、比較的簡単なモータの制御操作で可働レールを伸長動作させるため、誤操作により可動レールを本線レール上に不用意に移動させてしまうおそれがある。これに対して、誤操作を防止するために、可動レールを固定レールに固定手段により固定し、この固定手段を解除しなければ操作盤を操作できないようにすることが考えられる。しかし、可動レールを動作させるにあたり、可動レールを伸長させる本線区間に鉄道車両の進入を禁止するために信号灯に停止表示用信号を送る必要があり、本線レールを短絡しなければならないが、固定手段の解除操作が可動レールの操作から独立した別の操作になるので、誤って、本線レールを短絡する前に可動レールを移動操作したり、可動レールを本線レール上に移動させた状態のまま短絡を解除する操作が可能となり、可動レールを本線レール上に配置したまま鉄道車両の往来を許容するおそれがある。
従って、本発明は、収納時に可動レールを確実に固定する一方、本線レールの短絡操作を行ってから可動レールの伸長操作を可能にし、また可動レールの伸長状態での本線レールの短絡解除操作を防止するインターロック装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、第1の発明においては、鉄道線路の側部に設けられた作業車両Cの保管場所Hに固定された固定レール1上に可動レール2を長さ方向に移動可能に載せ置き、この可動レール2をモータ3の駆動で移動させて固定レール1を可動レール2で延長することにより作業車両Cを保管場所Hから鉄道線路の本線レールRまで移動させる伸縮レール装置において、誤操作を防止するためにインターロック装置を設ける。インターロック装置には、伸縮レール装置で作業車両Cを乗り入れさせる本線レールRの所定区間の信号灯を停止表示させるために本線レールRを短絡する短絡器9を設け、また保管時に固定レール1に可動レール2を固定した施錠状態から解錠操作すると、本線レールを短絡した状態の短絡器9を操作不能にするレールロック部材7を設け、レールロック部材7の解錠状態において伸縮レール装置の操作盤を操作可能にするロック解除回路10を設けることにより、本線レールRの信号灯の停止表示がない状態での可動レール2の操作を防止する。
第2の発明においては、短絡器9には、これに差し込んで短絡操作する一方、これから抜き取って短絡解除操作する抜き差し可能な短絡キー9aを設け、レールロック部材7には、保管時に可動レール2を固定するために固定レール1及び可動レール2に抜き差し可能なロックピン17と、可動レール2を固定したロックピン17を保持し、ロックピン17の離脱を阻止するように施錠する固定錠15と、短絡キー9aに一体につながり、固定錠15を操作するために抜き差し可能で、固定錠15に差し込んだ解錠状態で抜け止めされて短絡器9への短絡キーの差し込みを不能とする解除キー16とを具備させ、操作盤の近傍には、固定レール1及び可動レール2から抜き取ったロックピン17を保持する収納ボックス8を設け、ロック解除回路10には、収納ボックス8がロックピン17を保持すると、伸縮レール装置の操作盤を操作可能に切り替えるスイッチ10aを設けた。
【発明の効果】
【0005】
本発明においては、収納時に可働レールを固定レールに確実に固定することができるし、本線レール上に可働レールを不用意に移動させてしまう誤操作を回避することができ、また可動レールを動作させるのに先だって、本線レールの鉄道車両の進入を禁止するための本線レールの短絡操作を必要とするので、本線レールを短絡する前の可動レールの移動操作を回避でき、また可動レールを本線レール上に移動させた状態での短絡解除操作を回避することができるから、安全に鉄道車両を運行させること、並びに安全に本線レール上に作業車両を移動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照して本発明の一実施例を説明する。図1,図2において、作業車両Cの保管場所の基礎B上には、図示しない鉄道線路とほぼ直交方向に固定レール1が敷設されている。可動レール2は、固定レール1の先端側に連続するように、鉄道線路の本線レールRと交差して延びるが、不使用時には固定レール1の上に重ね置くことができる。可動レール2は、図4(b)に示すように、ほぼ断面コ字状をなし、固定レール1の上に嵌め込まれる。可動レール2は、固定レール1の支持片1a上に可動レール2に軸支されたローラが転動する等により固定レール1上を軸線方向に自由に移動させることができる。
【0007】
固定レール1の基端側にはモータ3が設けられ、モータ3の出力軸に連結するスプロケット4aと、固定レール1の下部に軸支されたスプロケット4b,4c,4dと、固定レール1の先端部に設けられたスプロケット4eとにチェーン5が掛け回されている。可動レール2はチェーン5の途上に結合されており、チェーン5を引き回すことにより駆動される。
【0008】
インターロック装置は、図3に示すように、固定レール1の側部に設けられたレールロック部材7と、伸縮レール装置の近傍の操作盤6に付設されたロックピン収容ボックス8と、収容ボックス8に電気的に接続される操作盤6内のロック解除回路10とを備えている。
【0009】
短絡器9は、本線レールRを短絡操作するためのもので、短絡キー9aを短絡器9から取り外すと、本線レールRが短絡して、区間内への立ち入りを禁止するように信号灯を点灯して停止表示させる。なお、短絡器9は操作盤6の支柱から離れた場所に別体に設けてもよい。
【0010】
レールロック部材7は、図4乃至図8に示すように、ベースB上に直立して固定された固定板11にほぼ横方向に保持筒12が固着され、この保持筒12内に押しばね13を介して移動駒14が収容される。保持筒12の側部には固定錠15を備え、この鍵穴に解除キー16を差し込んで回転すると、保持筒12内に横方向から突出している係合片15aを引っ込め、この状態で解除キー16が引き抜けない構造になっている。保持筒12にはロックピン17が挿入され、ロックピン17の係合凹所17aが固定錠15の係合片15bの対応位置に至ると係合してロックピン17が抜け止めされ、この状態で解除キー16を抜き取ることが可能になる。ロックピン17は本線レールR,Rのそれぞれについて設けられ、係留紐で図示しないポールに引き留められている。解除キー16と短絡キー9aとは、レールロック部材7と短絡器9との距離よりも短い連係紐で一体につながれている。従って、解除キー16を固定錠15に差し込んだ状態で、同時に短絡キー9aを短絡器9に差し込むことができないこととなる。
【0011】
可動レール2を固定レール1上に収容した縮小位置におけるレールロック部材7の対応位置には挿通孔が設けられておりロックピン17を貫通させることができる。伸縮レール装置の操作盤6に付設された収容ボックス8には二本のロックピン17が収容される。
【0012】
収容ボックス8はロックピン17を収容するものであり、図10に示すように、ロックピン17を差し込んだ収納状態でONするスイッチ10aを内部に備え、操作盤6に備えたロック解除回路10内の接点を閉じることにより、操作盤6により可動レール2を操作可能にするように電気的に連係している。
【0013】
この伸縮レール装置は、鉄道線路R上を通過する鉄道車両の障害にならないように、不使用時には縮小状態にあり、可動レール2が固定レール1の上に重ね置かれている。この状態において、作業車両Cは、レール装置の基端側の保管場所Hにあって、横行用の車輪W1を可動レール2の上に載せて保管されている。使用時には、まず車両Cを付設のリフト装置により持ち上げ、可動レール2を自由にした状態で、チェーン5をモータ3により引き回し、可動レール2を固定レール1の上で長さ方向に移動させ、本線レールR上に交差するように延出させる。レール装置を延長させたら、作業車両Cの車体を下降させ、横行用の車輪W1を固定レール1の上に降ろし、これを固定レール1、可動レール2の上で転動させて鉄道線路Rの上まで移動する(図1,図2)。ここで再び車体を持ち上げ、チェーン5を反対方向に引き回して可動レール2を復帰させる。そして、作業車両Cの車体を下降させ、車輪W2を本線レールR上に降ろせば、作業車両Cは本線レールR上を所定の作業場所まで移動することができる。作業車両Cを保管場所に戻すときにはこれと反対の手順で作業を行う。
【0014】
この伸縮レール装置は、可動レール2が固定レール1の上に重ね置かれた保管状態において、レールロック部材7に装着されたロックピン17が両者を貫通して固定する。この状態ではロックピン17は固定錠15の係合片15bにより抜け止めされて引き抜くことができない。ここで、短絡器9から短絡キー9aを抜き取ることにより本線レールRを短絡させてから、短絡キー9aと一体の解除キー16をレールロック部材7の固定錠15に差し込んで解除位置に回転させ係合片15aを引っ込めると、ロックピン17が押しばね13により押し出される。このロックピン17を抜き取り、収容ボックス8に差し込むと、操作盤6のロック解除回路10のスイッチ10aの接点が閉じることにより、操作盤6で可動レール2を操作することができる。また、ロックピン17を収容ボックス8に差し込んだ状態では、レールロック部材7における移動駒14により保持筒12内への係合片15aの突出が阻止されるので、固定錠15に差し込んだ解除キー16は引き抜くことができないから、解除キー16と一体の短絡キー9aによる短絡器9の短絡解除の誤操作を回避できる。
【0015】
上記作業車両Cを保管場所に戻して、可動レール2を固定レール1の上に重ね置き縮小状態にしたら、操作盤6を閉じて収容ボックス8からロックピン17を引き抜き、ロックピン17を固定レール1及び可動レール2に挿通させレールロック部材7の保持筒12に差し込めば、固定錠15の係合片15aがロックピン17の係合凹所17aに落ち込み抜け止めされると共に、解除キー16を回転させて抜き取ることができる。そして、解除キー16と一体の短絡キー9aにより短絡器9の短絡解除操作を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、保管場所から鉄道線路まで作業車両を移動させるための伸縮可能なレール装置を、本線レールの停止信号灯を動作させてから安全に操作するのに有効である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】伸縮レール装置の概略的平面図である。
【図2】伸縮レール装置の概略的正面図である。
【図3】本発明に係るインターロック装置の概略的構成図である。
【図4】(a)は伸縮レール装置の先端部の概略的平面図、(b)は同じく概略的正面図である。
【図5】レールロック部材の平面図である。
【図6】レールロック部材の正面図である。
【図7】レールロック部材の側面図である。
【図8】レールロック部材の分解斜視図である。
【図9】(a)はレールロック部材の施錠状態の平面図、(b)は同じく解錠状態の平面図、(c)は同じくロックピンを抜き取った状態の平面図である。
【図10】ロック解除回路の回路図である。
【符号の説明】
【0018】
1 固定レール
2 可動レール
3 モータ
5 チェーン
6 操作盤
7 レールロック部材
8 収容ボックス
9 短絡器
9a 短絡キー
10 ロック解除回路
10a スイッチ
12 保持筒
15 固定錠
16 解除キー
17 ロックピン
R 本線レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道線路の側部に設けられた作業車両の保管場所に固定された固定レール上に可動レールを長さ方向に移動可能に載せ置き、この可動レールをモータ駆動で移動させて固定レールを可動レールで延長することにより前記作業車両を保管場所から鉄道線路の本線レールまで移動させる伸縮レール装置における誤操作を防止するインターロック装置であって、
前記作業車両を本線レールへ移動させる作業を行うために本線レールの所定区間を閉塞して信号灯を停止表示させるように本線レールを短絡する短絡器と、
保管時に前記固定レールに可動レールを固定して施錠され、解錠操作により本線レールを短絡した状態の前記短絡器を操作不能にするレールロック部材と、
前記レールロック部材の解錠状態において、操作盤を操作可能にするロック解除回路とを具備し、
本線レールの信号灯の停止表示がない状態で前記可動レールの操作を防止することを特徴とする鉄道作業車両用伸縮レール装置のインターロック装置。
【請求項2】
前記短絡器には、これに差し込んで短絡操作する一方、抜き取って短絡解除操作する抜き差し可能な短絡キーを備え、
前記レールロック部材は、保管時に前記可動レールを固定するために固定レール及び可動レールに抜き差し可能なロックピンと、
前記可動レールを固定レールに固定したロックピンを保持し離脱を阻止するように施錠する固定錠と、
前記短絡キーに一体に結合されており、前記固定錠を操作するために抜き差し可能で、固定錠に差し込んだ解錠状態で抜け止めされて前記短絡器への短絡キーの差し込みを不能とする解除キーとを備え、
前記操作盤の近傍には、固定レール及び可動レールから抜き取ったロックピンを保持する収納ボックスが設けられ、
前記ロック解除回路には、収納ボックスがロックピンを保持すると、伸縮レール装置の操作盤を操作可能に切り替えるスイッチを含むことを特徴とする請求項1に記載の鉄道作業車両用伸縮レール装置のインターロック装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−261147(P2008−261147A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104473(P2007−104473)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)