説明

鉄道作業車両用伸縮レール装置の付属物格納装置

【課題】 鉄道作業車両用伸縮レール装置の可動レールの作業終了時に付属物の未撤去状態を知らせること。
【解決手段】 付属物格納装置10を、伸縮レール装置の保管場所の近傍に設置される格納箱11と、伸縮レール装置の設置位置の線路脇に設置され、警告表示する表示灯と、表示灯を点灯制御する制御回路18とで構成する。格納箱11には伸縮レール装置の付属物7,8を保持するホルダ14,15を設ける。ホルダ14,15には、保持した付属物7,8を検知するリミットスイッチを設ける。制御回路18には、リミットスイッチがすべての付属物7,8を検知するとOFFするリレーと、伸縮レール装置が作業終了により可動レールを格納して停止状態になるとリミットスイッチが開いてOFFするリレーとを備え、これらのリレーの何れか一つがONすると表示灯12を点灯させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を鉄道線路の側部に設けられた保管場所から鉄道線路内に移動させるための伸縮レール装置による作業後に、鉄道線路内の未撤去の付属物による電車の運行障害を防止する付属物格納装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道作業車両用の伸縮レール装置として、例えば特許文献1に記載されたものが知られている。これは、保管場所に固定された固定レール上に可動レールを必要時に引き出してレールを延長し、鉄道線路内に作業車両を移動させるものである。可動レールは固定レール上で移動し、鉄道線路とほぼ直交方向に交差して本線レール上に載せ置かれる。本線レールの高さ位置に対して可動レールの高さが不足する場合には本線レール上にスペーサを取り付けてこの上に可動レールを載せ置く。また、作業車両を可動レールから本線レールに載せ替えるときに、作業車両の底部に付属の転車装置で車体を持ち上げて本線レールに載せるが、本線レールの高さ位置に対して転車装置による持ち上げ高さが不足する場合には、本線レール間にかさ上げ金具を渡して、この上に転車装置を載せ置いて車両を持ち上げる。これらのスペーサやかさ上げ金具は、伸縮レール装置の保管場所近傍に設置された格納箱に格納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−193004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の作業車両用の伸縮レール装置においては、スペーサやかさ上げ金具などの付属物が設置箇所によっては必ずしも使用する物でないので、作業車両の載せ替え作業を終えて可動レールを保管場所に格納したら、作業者が撤去し忘れるおそれがあるため、設置したままの付属物が列車の走行の障害になりかねず、事故の原因となるおそれがある。
従って、本発明の課題は、可動レールの格納時に鉄道作業車両用伸縮レール装置の付属物の未撤去を知らせて、付属物を確実に撤去する鉄道作業車両用伸縮レール装置の付属物格納装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明においては、上記課題を解決するため、鉄道線路の側方に設けられた保管場所の固定レール2から可動レール3を長さ方向に延長させて作業車両を鉄道線路の本線レールRに移動させるための伸縮レール装置1における鉄道線路内に設置される付属物7,8を付属物格納装置10に収納させる。付属物格納装置10は、伸縮レール装置1の近傍に設置される格納箱11と、付属物7,8の設置箇所の近傍位置において付属物7,8の未撤去状態を警告表示する表示灯12と、この表示灯12を点灯制御する制御回路18とから鉄道作業車両用伸縮レール装置1の付属物格納装置10を構成した。格納箱11には付属物7,8を格納したことを検知するリミットスイッチ16,17を設ける。制御回路18は、リミットスイッチ16,17により格納箱11から付属物7,8が離脱したら表示灯12を点灯制御する一方、付属物7,8を検知したら表示灯12を消灯制御する。
制御回路18には、付属物7,8が格納箱11に格納されると共に伸縮レール装置1の可動レール3が格納されて稼働停止状態になったら、表示灯を消灯させるリレーONXを設けた。
制御回路18には、夜間の伸縮レール装置1による作業の予め設定した開始時刻から終了時刻までの間に、表示灯12に対する制御を行うタイマTを設けた。
格納箱11に格納する付属物は、可動レール3を本線レールRの高さ位置に調整するために本線レールR上に設置するスペーサ7や、作業車両Cを本線レールR上に載せ替える転車装置C1を本線レールRの高さ位置に調整するために本線レールR間に渡されるかさ上げ金具8とした。
スペーサ7は、本線レールRに嵌合するように本線レールRの両側縁に沿って互いに対向して垂下する一対の係合片7bを設け、格納箱11内には、係合片7bに挟まれるようにスペーサ7に嵌合し、スペーサ7の嵌合状態で係合片7bの並びと直交方向にスペーサ7を間にして互いに対向する一対の立ち上げ片14cと、スペーサ7の載置面上に突出させたリミットスイッチ16とを具備するスペーサ用ホルダ14を設けた。
【発明の効果】
【0006】
本発明においては、作業車両を本線レールから撤収させて可動レールを保管場所に格納したら、スペーサやかさ上げ金具などの付属物を本線レールから撤去して格納箱に収めなければ、表示灯が消灯せず、この状態を作業者に認識させることができるので、付属品の撤去を確実に行うことができ、また接近する電車に確認させて列車運行の障害を回避でき、事故を未然に防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(A)は可動レールを格納した状態の伸縮レール装置の正面図、(B)は可動レールを引き出した状態の伸縮レール装置の正面図である。
【図2】(A)はスペーサの正面図、(B)は同側面図、(C)は同底面図である。
【図3】(A)はかさ上げ金具の平面図、(B)は同正面図である。
【図4】収納箱の平面図である。
【図5】収納箱の正面図である。
【図6】本発明に係る付属物格納装置の正面図である。
【図7】スペーサ用ホルダの斜視図である。
【図8】(A)は制御盤の内部の正面図、(B)は制御盤の側面図、(C)は同正面図である。
【図9】制御盤の回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して本発明の実施の一形態を説明する。
図1において、伸縮レール装置1は、保管場所の基礎B上に、鉄道線路の本線レールRとほぼ直交方向に固定レール2が敷設され、この固定レール2の先端側に可動レール3が本線レールRと交差するように延長する。可動レール3は不使用時に固定レール2の上に重ね置いて固定レール2と共に保管場所に格納される。可動レール3は、ほぼ断面コ字状をなして固定レール2上に嵌合しながらローラ等により延長方向へ自由に移動させることができる。可動レール3は、固定レール2の基端部のモータ4の出力軸に連結する駆動スプロケット5aと、固定レール2の先端部のガイドスプロケット5bとに掛け回されたチェーン6に結合されており、モータ4の駆動によりチェーン6を引き回して移動する。
【0009】
本線レールRの高さ位置に対して可動レール3の高さが不足する場合には、図1(B)に示すように、本線レールR上にスペーサ7を取り付けてその上に可動レール3を載せ置く。スペーサ7は、図2に示すように、本線レールRに上から嵌合するように本線レールRの両側縁に沿って互いに対向して垂下する一対の係合片7bを備えた断面略コ字状の鞍部7aと、その上面に固着された矩形のブロック部7cと、一方の係合片7bから水平に突出する取っ手7dとを備える。
【0010】
伸縮レール装置1により作業車両を線路内に移動させてから、作業車両の底部に付属する転車装置で車体を持ち上げて本線レールRに載せるが、本線レールRの高さ位置に対して作業車両Cの転車装置C1による持ち上げ高さが不足する場合には、図1(A)に示すように、本線レールR,R間にかさ上げ金具8を渡し、この上に転車装置C1を載せ置く。このかさ上げ金具8は、図3に示すように、本線レールRにそれぞれ載せ置いて本線レールRの内側側面に当接するストッパ板8bをそれぞれ有する一対の支持ブロック8aと、これらの支持ブロック部8a,8a間を結合する並行一対のチャンネル8c,8cとを備えている。
【0011】
付属物格納装置10は、図4乃至図6に示すように、伸縮レール装置の保管場所の近傍に設置される格納箱11と、伸縮レール装置1の設置箇所の近傍位置に設置される表示灯12と、格納箱11に収容物を収容したら表示灯12を消灯制御する一方、格納箱11から格納物を出したら表示灯12を点灯制御する制御盤13とを備えている。
【0012】
格納箱11は直方体状の本体11aの上部を錠付き天蓋11bにより取っ手11cを持って開閉可能で、アンカーボルトにより下部四隅の脚11dを地面に固定される。格納箱11の内部にはスペーサ7を保持する四つのホルダ14と、かさ上げ金具8を保持する二つのホルダ15とを備えている。
【0013】
スペーサ用のホルダ14は、格納箱11内の底部中央に長手方向へ延びる台座14aと、この台座14a上にほぼ等間隔に四つの受け台14bが設けられて構成される。図7に示すように、受け台14bには、係合片7c,7cに挟まれてスペーサ7が嵌合し、この嵌合状態で係合片7c,7cの並びと直交方向にスペーサ7を間に挟む互いに対向する一対の立ち上げ片14cと、上面中央から突出した接触片16aを有するリミットスイッチ16とを備えている。リミットスイッチ16は、受け台14b上にスペーサ7を載せ置くと、接触片16aが押し下げられてONする。
【0014】
かさ上げ金具用のホルダ15は、格納箱11内の底部の長手方向両端部にホルダ14の台座14aと直交方向にそれぞれ延びる一対の台座15aと、この台座15a上に間隔を置いて固定され、かさ上げ金具8の支持ブロック部8aを載せ受けるように両側縁部が立ち上がった二つの受け台15bとを備えている。受け台15bには、上面中央から上に向かって接触ローラ17aが突出したリミットスイッチ17が組み込まれている。このリミットスイッチ17は、受け台15b上にかさ上げ金具8を載せ置くと、接触ローラ17aが押し下げられてONする。
【0015】
図8に示すように、制御盤13は、格納箱11の一端部に取り付けられている。制御盤13には、電源ランプLを有する開閉蓋13aを備え、内部に漏電遮断器ELB、タイマーT、ヒューズF、リレー群R1,R2,R3,R4,ONXが組み込まれており、これらはリミットスイッチ16(LS),17(LS)と共に、図9に示すように、制御回路18を構成する。
【0016】
制御回路18は、外部電源Sに接続され、表示灯12の点灯、消灯の動作制御を行うものである。リレーR1は、タイマーTに予め設定された夜間の所定の作業開始時刻が到来すると、終了時刻までの作業時間の間ONする。リレーR2は、スペーサ7及びかさ上げ金具8がすべてのホルダ14,15に置かれたてリミットスイッチ16,17が閉じるとOFFする。リレーR3は、上り側線路について伸縮レール装置1が稼働状態になるとリミットスイッチLRが閉じてONし、伸縮レール装置1が可動レールを格納して停止状態になるとリミットスイッチLRが開いてOFFする。リレーR4は、下り側線路について伸縮レール装置1が稼働状態になるとリミットスイッチLRが閉じてONし、伸縮レール装置1が可動レールを格納して停止状態になるとリミットスイッチLRが開いてOFFする。リレーONXは、各リレーR1,R2(又はR3、R4の何れか一つ)がONするとONする。
【0017】
この付属物格納装置10においては、タイマTによる開始時刻前にはリレーR1がOFFしているので表示灯12は消灯している。作業開始時刻から終了時刻までの間では、タイマTによりリレーR1がONしている。このとき、伸縮レール装置1による線路と格納場所との間での作業車両の移動作業中であれば、伸縮レール装置1が稼働状態で、可動レール3が格納されておらず、リミットスイッチLRが閉じているから、リレーR3又はR4がONしており、表示灯12が点灯する。伸縮レール装置1を使用した作業車両の移動作業を終了して、伸縮レール装置1の可動レール3が格納された停止状態になると、リミットスイッチLRが開くから、リレーR3及びR4がOFFする。しかし、スペーサ7及びかさ上げ金具8が線路内に設置されたままであれば、格納箱11のホルダ14,15から離れており、リミットスイッチLSが開いているので、リレーR2がONしている。従って、表示灯12が点灯し続けているので、スペーサ7及びかさ上げ金具8を撤去していない状態を作業者や作業位置に接近する作業車両の運転士が認識する。線路内に残っているスペーサ7及びかさ上げ金具8を格納箱11のホルダ14,15に収めると、リミットスイッチLSが全て閉じるので、リレーR2がOFFする。従って、表示灯12が消灯するので、スペーサ7及びかさ上げ金具8を撤去した作業の完了状態を作業者や作業位置に接近する作業車両の運転士が認識する。ホルダ14は、スペーサ7の係合片7c,7cで前後に挟まれると共に、立ち上げ片14cによりスペーサ7を左右に挟むので、スペーサ7と嵌合して、スペーサ7の水平方向の動きを制限し確実に保持する。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、保管場所から鉄道線路まで作業車両を移動させるための伸縮可能なレール装置の付属物を、線路内から完全に撤去して格納したことを確認するのに有効な付属物格納装置である。
【符号の説明】
【0019】
1 伸縮レール装置
2 固定レール
3 可動レール
7 スペーサ
8 かさ上げ金具
10 付属物格納装置
11 格納箱
12 表示灯
13 制御盤
14 ホルダ
15 ホルダ
16 リミットスイッチ
17 リミットスイッチ
18 制御回路
R1 リレー
R2 リレー
R3 リレー
R4 リレー
T タイマ
R 本線レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道線路の側部に設けられた保管場所の固定レールから可動レールを長さ方向に延長させて作業車両を鉄道線路の本線レールに移動させる伸縮レール装置における鉄道線路内に設置される付属物を収納する付属物格納装置において、
前記伸縮レール装置の近傍に設置され、内部に前記付属物を検知するリミットスイッチを備えた格納箱と、
前記付属物の設置箇所の近傍位置において付属物の未回収状態を警告表示する表示灯と、
前記格納箱に前記付属物が格納されたことを前記リミットスイッチにより検知すると前記表示灯を消灯制御する一方、格納箱から前記付属物が離脱したら前記表示灯を点灯制御する制御回路とを具備することを特徴とする鉄道作業車両用伸縮レール装置の付属物格納装置。
【請求項2】
前記制御回路には、前記付属物が前記格納箱に格納されると共に前記伸縮レール装置の可動レールが格納されて稼働停止状態になると、前記表示灯を消灯させるスイッチを備えることを特徴とする請求項1に記載の鉄道作業車両用伸縮レール装置の付属物格納装置。
【請求項3】
前記制御回路には、夜間の前記伸縮レール装置による作業の予め設定した開始時刻から終了時刻までの間、前記表示灯に対する制御を行うタイマを備えることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の鉄道作業車両用伸縮レール装置の付属物格納装置。
【請求項4】
前記付属物は、可動レールを本線レールの高さ位置に調整するために本線レール上に設置するスペーサであることを特徴とする請求項1ないし3に記載の鉄道作業車両用伸縮レール装置の付属物格納装置。
【請求項5】
前記スペーサは、本線レールに嵌合するように本線レールの両側縁に沿って互いに対向して垂下する一対の係合片を備え、
前記格納箱内には、前記係合片に挟まれるようにスペーサに嵌合し、スペーサの嵌合状態で前記係合片の並びと直交方向にスペーサを間に挟む互いに対向する一対の立ち上げ片と、スペーサの載置面上に突出させた前記リミットスイッチとを具備するスペーサ用ホルダを備えることを特徴とする請求項4に記載の鉄道作業車両用伸縮レール装置の付属物格納装置。
【請求項6】
前記付属物は、前記作業車両を本線レール上に載せ替えるための転車装置を本線レールの高さ位置に調整するために本線レール間に渡されるかさ上げ金具であることを特徴とする請求項1ないし3に記載の鉄道作業車両用伸縮レール装置の付属物格納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−180532(P2010−180532A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22322(P2009−22322)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)