説明

鉄道車両の外幌装置

【課題】外幌を複数の外板部材で構成することで、構造が簡単で、各外板部材をスムーズに変位させ、気密効果を高める。
【解決手段】外幌3は、車体間外周方向に周方向に並ぶように第1および第2のリンクアーム13,14にて、自在継ぎ手17,18およびヒンジブラケット19,20を用いて前後車両の車体に支持され、かつ前後車両の車体間を塞ぐ複数の外板部材3Aを有し、前後車両の車体間の車体偏倚に応じて各外板部材3Aが変位する。各外板部材3Aの内側面には第1および第2のガイドレール部材15,16が平行に設けられている。第1のリンクアーム13の一端部が前後車両のうち一方の車両の車体に回転可能に、他端部が第1のガイドレール部材15にスライド可能にそれぞれ結合されている。第2のリンクアーム14の一端部が他方の車両の車体に回転可能に、他端部が第2のガイドレール部材16にスライド可能にそれぞれ結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連結器を介して連結される車両間の空間部全周を、外幌外板によって塞ぐ鉄道車両の外幌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道においては、通常、電車、気動車で複数の車両を連結器を介して連結して、列車として運用されるので、車両間には空間部が形成される。その空間部全周を外幌で塞ぐことが知られている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
しかしながら、そのような特許文献1,2に記載の外幌は全部又は一部が弾性材料で形成されていることから、耐久性が悪く、汚れやすい上に気密性が十分とはいえない。
【0004】
また、金属板のような硬質の一枚板によって形成される転落防止板を、中央保持機構が車両の動きに応じて作動して、車両間中央部に位置させるようにしたものも知られている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−117040号公報
【特許文献2】特開2009−196409号公報
【特許文献3】特開2004−262380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献3に記載の外幌は、金属板のような硬質の一枚板によって形成され、大きいため、それを支持する中央保持機構が大型化し、安定して動かすのが困難である。
【0007】
そこで、本発明は、外幌を複数の外板部材で構成することで、構造が簡単で、各外板部材をスムーズに変位させることにより気密性を高めた鉄道車両の外幌装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、(例えば連結器または連接台車を介して)連結される前後車両の車体間を塞ぐ鉄道車両の外幌装置であって、(i)前記外幌装置は、車体間外周方向に並ぶように2つあるいはそれ以上の第1および第2のリンクアームにて前記前後の車両の車体に支持され、かつ前記前後車両の車体間を塞ぐ複数の外板部材を有し、前記前後車両の車体間の間隔変化に応じて前記各外板部材が車体内方側と車体外方側との間を変位する構成とされること、(ii)前記各外板部材の内側面には、2つあるいはそれ以上の第1および第2のガイドレール部材が平行に設けられていること、(iii)前記第1のリンクアームの一端部が前記前後車両うち一方の車体に回転可能に、他端部が前記第1のガイドレール部材にスライド可能にそれぞれ結合されていること、(iv)前記第2のリンクアームの一端部が前記前後車両うち他方の車体に回転可能に、他端部が第2のガイドレール部材にスライド可能にそれぞれ結合されることを特徴とする。
【0009】
このようにすれば、前後車両の車体間の間隔変化に応じて第1および第2のリンクアームの一端部が回転し、他端部がガイドレールに沿ってスライド移動することで、各外板部材の位置が変化し、また、外板部材を金属製とすることもできるので、弾性材料で構成する従来のものと比較して、耐久性の向上を図ることもできる。
【0010】
特に、外幌を複数の外板部材で構成することで、構造が簡単で、各外板部材をスムーズに変位させることができる。
【0011】
この場合、請求項2に記載のように、前記第1および第2のリンクアームの一端部は、前記車体の表面に自在継ぎ手を介して支持されるヒンジブラケットに、前記車体の表面に平行な回転軸回りに回転可能に連結されていることが望ましい。
【0012】
また、請求項3に記載のように、前記第1および第2のリンクアームの一端部には、各々トーションスプリングが設けられ、前記トーションスプリングによって前記外板部材が前記車体表面に接触するように付勢されていることが望ましい。このようにすれば、車両がすれ違う際の走行風などによって各外板部材がばたつくことが防止され、低騒音化が図れる。
【0013】
請求項4に記載のように、前記第1および第2のリンクアームの他端部には、それぞれ逆方向に付勢する引張スプリングをさらに備え、各前記引張スプリングによって前記外板部材が前記両ガイドレール部材を介して前記車両間の中心位置に位置するように付勢されていることが望ましい。
【0014】
請求項5に記載のように、前記車体間外周方向に並ぶ複数の前記外板部材のうち2つの前記外板部材の一方は、他方の前記外板部材側の縁部に前記他方の外板部材側に延びるリップ状の弾性シール部を有する一方、他方は、前記一方の外板部材側の縁部に前記一方の外板部材側に延びるリップ状の弾性シール部を有し、それら両弾性シール部が重複した接触状態を維持して相対移動可能である構成とすることができる。
【0015】
請求項6に記載のように、前記各外板部材は、前記前後車両の車体側の前後縁部に前記前後車両の車体と接触するように配置されている構成とすることができる。このようにすれば、気密性が高まり、十分な気密効果が得られ、且つ外部からの騒音低減に有利である。
【0016】
請求項7に記載のように、前記前後車両の車体は、前記外板部材の前後縁部が位置する部分に対応する部位が弾性部材で形成されている構成とすることができる。このようにすれば、さらに気密性がより高まる。
【0017】
請求項8に記載のように、前記前後車両の車体の端部には、段部が形成され、前後車両の車体間を前記外板部材によって塞ぐ際には、前記車体の外側面と、前記外板部材の外側面とが略面一となるように前記前後車両の車体の段部間に収納される構成とされている構成とすることができる。
【0018】
このようにすれば、走行抵抗の低減に有利とされる。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、上記のように構成したため、前後車両の車体間の間隔変化に応じて第1および第2のリンクアームの一端部が回転し、他端部がガイドレールに沿ってスライド移動することで、各外板部材の位置が変化し、また、外板部材を金属製とすることもできるので、弾性材料で構成する従来のものに比べて、耐久性の向上を図ることもできる。
【0020】
特に、外幌を複数の外板部材で構成することで、構造が簡単で、各外板部材をスムーズに変位させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る鉄道車両の外幌装置が適用された鉄道車両を示す斜視図である。
【図2】図2(a)は前記外幌装置が取り付けられた状態を示す概略断面図(手前側(符号13,14側)が車内側、向こう側が車外側)、図2(b)は前記外幌装置を車内側から見た概略図である。
【図3】図3(a)は上下に並んで配置される2つの外幌ユニットの関係を示す図、図3(b)は図3(a)の前記2つの外幌ユニットの境界部分の断面図である。
【図4】車両間の間隔が増える場合のX軸方向についての動作を示し、図4(a)は図2(a)に対応する図、図4(b)は図2(b)に対応する図である。
【図5】車両間の間隔が減少する場合のX軸方向についての動作を示し、図5(a)(c)は図2(a)に対応する図、図5(b)は図2(b)に対応する図である。
【図6】図6(a)(b)はそれぞれY軸方向についての動作を示す図である。
【図7】Z軸方向についての動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に沿って説明する。
【0023】
図1に示すように、本発明に係る鉄道車両の外幌装置は、連結器(図示せず)を介して連結される前後車両1,2の車体1a,2a(図2参照)間の空間部S全周(前後車両1,2の側部の間、屋根部の間および台枠部の間)を、外幌3によって塞ぐものである。外幌3は、後述する、複数の外幌ユニット11の外板部材3Aによって構成される。つまり、前記外幌装置は、複数の外幌ユニット11によって構成される。そして、複数の外板部材3Aによって外幌3が形成され、これら複数の外板部材3Aが、前後車両1,2の車体1a,2a間の間隙である空間部Sの全周を埋めるような形にて取り付けられる。
【0024】
例えば車両側部において、空間部Sの外側を覆う外幌3は、複数の外板部材3Aが、前後車両1,2の車体1a,2a間の空間部Sを塞ぐように鉛直方向に並んで配置されている。
【0025】
各外板部材3Aは、外幌ユニット11の一部とされ、図2(a)(b)に示すように、外幌ユニット11を構成する第1および第2のリンクアーム13,14にて、自在継ぎ手17,18およびヒンジブラケット19,20を用いて前後の車両1,2の車体1a,2aに支持され、前後車両1,2の車体1a,2a間の間隔変化、つまり車体偏倚に応じて各外板部材3Aが、車体1a,2aと干渉して損傷しないように車体内方側と車体外方側との間を変位する構成とされている。
【0026】
また、外幌ユニット11は、各外板部材3Aの、車内側の内側面に平行に並んで設けられている第1および第2のガイドレール部材15,16を備え、第1のリンクアーム13の一端部(内端部)が前車両1の車体1aに回転可能に、他端部(外端部)が第1のガイドレール部材15にスライド可能にそれぞれ結合されている。また、第2のリンクアーム14の一端部(内端部)が後車両2の車体2aに回転可能に、他端部(外端部)が第2のガイドレール部材16にスライド可能にそれぞれ結合されている。
【0027】
具体的には、第1および第2のリンクアーム13,14の一端部13a,14aは、車体1a,2aの表面に自在継ぎ手17,18(例えば、ボールジョイント)を介して支持されるヒンジブラケット19,20に、車体1a,1bの表面に平行な回転軸回りに回転可能に連結されている。また、各リンクアーム13,14の他端部13b,14bは、各ガイドレール部材15,16にスライド可能に係合するスライダ(図示せず)を備え、前記他端部は、ガイドレール部材15,16との係合によって特定方向(レール方向)の相対移動が許容されている。また、各リンクアーム13,14の他端部13b,14bは、前記スライダに回転可能に連結されている。なお、自在継ぎ手17,18の動きを拘束し垂れ下がりを防止する板バネ(図示せず)がヒンジブラケット19,20の先端部付近に配置されている。
【0028】
そして、第1および第2のリンクアーム13,14の一端部13a,14aには、トーションスプリング21,22が設けられ、トーションスプリング21,22によって外板部材3Aが両ガイドレール部材15,16を介して車体1a,2a表面に接触するように弾性的に付勢される構成とされている。つまり、各リンクアーム13,14の一端部13a,14aは、ヒンジブラケット19,20に回転可能に連結されており、かつヒンジ軸(回転軸)にはリンクアーム13,14がヒンジ軸方向への移動を可能とするように間隙が設けられ、この間隙にはトーションスプリング21,22がリンクアーム13,14の一端部13a,14aの上下両側に設けられている。このトーションスプリング21,22は、外板部材3Aが車体1a,2a表面に接触させる向きに作用力が働くように設置されている。
【0029】
なお、各リンクアーム13,14とヒンジブラケット19,20とは、トーションスプリング21,22の作用力に対してある一定の位置にてリンクアーム13,14の位置が止まるようにストッパー25,26が設けてある。
【0030】
また、第1および第2のリンクアーム13,14の他端部13b,14bは、図2(b)に示すように、外板部材3Aに引張スプリング23,24を介してそれぞれ連結され、前記引張スプリング23,24によって外板部材3Aが両ガイドレール部材15,16を介して車両1,2間の中心位置に位置するように弾性的に常時付勢されている。
【0031】
外板部材3Aは矩形板状で、周囲(上下および左右)には弾性シール部3Aa,3Ab,3Ac,3Ad(例えば、ゴム製)を備え、上下の弾性シール部3Aa,3Abは図3(b)に示すように、リップ形状とされている。
【0032】
つまり、車両側部において周方向すなわち鉛直方向に並ぶ2つの外板部材3A,3Aについてみれば、図3(b)に示すように、それらの一方は、他方の外板部材側3Aの縁部に前記他方の外板部材3A側に延びる弾性シール部3Aaを有する一方、他方は、前記一方の外板部材3A側の縁部に前記一方の外板部材3A側に延びる弾性シール部3Abを有し、それら両弾性シール部3Aa,3Abが重複した接触状態(気密状態)を維持して相対移動可能である。
【0033】
また、各外板部材3Aは、前後車両1,2の車体1a,2a側の前後縁部に前後車両1,2の車体1a,2aと弾性的に接触する弾性シール部3Ac,3Adが設けられている。
【0034】
このように、複数の外幌ユニット11は、前後車両1,2の外側に向かって、第1および第2のガイドレール部材15,16、第1および第2のリンクアーム13,14、ヒンジブラケット19,20および自在継ぎ手17,18を介して、車両1,2間の空間部Sを埋めるような形にて車体1a,2a(構体)へ取り付けられている。そして、外幌ユニット11を前述した構造とすることで、それぞれの外板部材3Aが変位しても互いに干渉しないように取り付けられている。なお、これらの弾性シール部3Aa〜3Adによって気密性も向上する。
【0035】
続いて、例えば車両1,2の側部に設けられた外幌ユニット11が、車両1,2の偏倚入力に対してX軸、Y軸およびZ軸、並びにロール軸、ピッチ軸およびヨー軸についてどのように動作するかについて説明する(各軸については図1参照)。
(i)X軸(レール方向)
車両間は連結器を介して連結されているので、車両が加速する際あるいは減速する際には、図示しない前記連結器の緩衝器が伸びたり、縮んだりする。この偏倚入力に対して、外幌ユニット11は次のように動作する。
【0036】
停止時や定常走行時には、各外板部材3Aは車体1a,2aの外側面に接触している。また、リンクアーム13,14と外板部材3Aとの間には引張スプリング23,24が設置されているので、それらのスプリング力によって絶えず外板部材3Aは車両1,2間の中心位置に維持されることになる。この状態では、第1および第2のリンクアーム13,14は、ハの字状に配置されていることになる。なお、車体1a,2aの端部には、段部1aa,2aaが形成され、外板部材3Aによって車体1a,2a間を塞ぐ場合には、車体1a,2aの外側面と、外板部材3Aの外側面とが略面一となるように前後車両1,2の車体1a,2aの段部1aa,2aa間に収納され、高速走行時において走行抵抗が低減されるようになっている。
【0037】
そして、例えば、車両1,2間の間隔が増える場合(車両が加速する場合)には、車両1,2間の距離が増えるので、図4(a)(b)に示すように、ヒンジブラケット19,20間の距離が増し、ガイドレール部材15,16に沿ってリンクアーム13,14の一端部13b,14b(スライダ)が互いに離れる方向に滑っていく。その結果、外板部材3Aが車体1a,2aの外側面より離れて車体内方側に変位する。このとき、ヒンジブラケット19,20とリンクアーム13,14の間には、ある一定の位置にてリンクアーム13,14の開き(回転)を規制して止めるストッパー25,26を設けているので、外板部材3Aが車体内方に入りすぎたりすることはない。その結果、ストッパー25,26によってヒンジブラケット19,20とリンクアーム13,14とがなす角度は、180°未満とされる。また、リンクアーム13,14と外板部材3Aとの間には引張スプリング23,24が設置されているので、絶えず外板部材3Aは車両間の中心位置に維持されるようになっている。尚、車両間の距離が元に戻る場合は上記の反対の動作を行う。
【0038】
一方、車両1,2間の間隔が減少する場合(車両が減速する場合)には、前記緩衝器が縮んで、車両1,2間の距離が減少するので、図5に示すように、ガイドレール部材15,16に沿ってリンクアーム13,14の一端部13a,14a(スライダ)が互いに近づく方向に滑っていく。その結果、外板部材3Aが車体1a,2aの外側面と離れて車体外方側に変位する。そして、車両間の距離がある一定の値より小さくなると、ガイドレール部材15,16上のストッパー27,28にリンクアーム13,14が当たる。さらに車両間の距離が減ってくる場合には、リンクアーム13,14の他端部13b,14bの部位で折れ曲がり、外板部材3Aを車体外方側へ押し出すよう動作を行う。つまり車両間の距離が狭くなり過ぎて、外板部材3Aが存在するスペースがなくなってくると、リンクアーム13,14により外板部材3Aを車体外方側へ追いやられ、干渉が発生しないように動作する。
【0039】
また、車両1,2間の間隔が元に戻る場合は、上記の反対の動作が行われ、元の状態に復帰される。なお、車体1a,2aの端部には、案内傾斜部1ab,2abが形成され、外板部材3Aが車体外方側より車体内方側に入った場合に、外板部材3Aが案内傾斜部1ab,2abに接触することによって、車体内方側から車体外方側への、外板部材3Aの復帰変位がスムーズに行われる。
前述したように、ストッパー27,28は、外板部材3Aに取り付けられたガイドレール部材15,16の前記スライダの動きを制限することで、リンクアーム13,14の回転を促すようになっており、ストッパー27,28の位置が、隣り合う外幌ユニット11ごとに交互に異なるため、先にストッパー27,28に当たるリンクアーム13,14を有する外板部材3Aが車体外方に移動し、その後で、次にストッパー25,26に当たるリンクアーム13,14を有する外板部材3Aが車体外方に移動する。
このように、先にストッパー25,26に当たるリンクアーム13,14を有する外板部材3Aが車体外方に移動した後に、次にストッパー25,26に当たるリンクアーム13,14を有する外板部材3Aが車体外方に移動するため、同時に隣り合った外板部材3Aが同時に車体外方へ移動することがなく、スムーズな動きが可能となる。また外板部材3Aの上下にある弾性シール部3Aa,3Abが車体外方側と車体内方側とで隣り合い、先に車体外方に移動する外板部材3Aとその後で車体外方へ移動する外板部材3Aとの弾性シール部3Aa,3Abが車体外方側と車体内方側に交互に取付けられているため(図3(b)参照)、スムーズな動きが可能となる。
(ii)Y軸(枕木方向)
車両1,2間が枕木方向に動作する場合(台車が横動する場合)に対して、外幌ユニット11は次のように動作する。
【0040】
車両1,2間が枕木方向に相対的にずれてくると、図6に示すように、リンクアーム13,14の他端部13b,14bとヒンジブラケット19,20との連結部分およびリンクアーム13,14の一端部13a,14aとガイドレール部材15,16との連結部分における回転軸回りに相対回転し、前記ずれによる偏倚入力が吸収される。このとき、外板部材3Aと車両車体1a,2aの外表面は接触し続けている。
【0041】
車両間の枕木方向のずれが戻る場合には、上記の場合とは反対方向に相対回転して、元の状態に復帰する。
(iii)Z軸(高さ方向)
軌道(線路)の継ぎ目、台車の空気ばねの伸縮等によって生じる高さ方向の偏倚入力に対して外幌ユニット11は次のように動作する。
【0042】
車両間が高さ方向でずれて<ると、図7に示すように、ヒンジブラケット19,20が車体1a,2aに、任意の平面内で回転又は傾くことができる自在継ぎ手17,18にて連結されているので、外板部材3Aが斜めになることで、前記ずれによる偏倚入力が吸収される。また見かけの車両間の間隔とは異なり、実際には外幌ユニット11が取り付けられている点の間では距離が長くなるが、これについてはX軸方向での動作(ガイドレール部材15,16との関係動作)により吸収される。
【0043】
車両間の高さ方向のずれが元に戻る場合上記と反対の動作が行われ、元の状態に復帰される。
(iv)ロール軸(車両間の捩れ)
台車の空気ばねの左右高さが違ってくると、前後の車両がレール方向において捩れたような位置関係になる。この偏倚入力に関しては次のように動作する。
【0044】
車両1,2間の位置関係が捩れてくると、ヒンジブラケット19,20の車体1a,2a側の自在継ぎ手17,18が回転し、捩れを吸収するよう動作する。車両1,2間の捩れの回転中心は自在継ぎ手17,18の中心ではないので、外幌ユニット11の捩れ中心と車両1,2間の捩れ中心との距離に応じて車両1,2間の距離は増加する。つまり外幌ユニット11の取付間隔は見かけの車両間距離より長くなるが、これについてはX軸方向における動作が行われることにより吸収される。
【0045】
なお、ヒンジブラケット19,20はリンクアーム13,14との間にあるトーションスプリング21,22を介して外板部材3Aとヒンジブラケット19,20間で車体を挟み込む形でその位置を保持している。
【0046】
車両1,2間の捩れがもとに戻る場合には上記と反対の動作が行われ、元の状態に復帰される。
(v)ピッチ軸(山谷軌道による偏倚)
車両が山や谷といった変曲点を通過する際には車両間距離が屋根部で最も広く、また台枠付近で最も狭い状態になる場合や、反対に、両間距離が屋根部で最も狭く、また台枠付近で最も広い状態になる場合がある。このような偏倚入力に対して外幌ユニット11は次のように動作する。
【0047】
外板部材3Aにピッチ軸の偏倚が加わると、はじめに屋根部側の外板部材3AがX軸での動作及びヒンジブラケット19,20の自在継ぎ手17,18の回転を利用して動作を開始する。追って隣接する外幌ユニット11が次々に同じ動作を繰り返し、車両1,2を枕木方向外側から見た場合、車両1,2間の間隙がVの字のようになったとしても各外幌ユニット11が独立して動作することにより車両偏倚入力を吸収する。また、気密性についても外幌ユニット11の連続性があることから確保することが可能となる。
【0048】
車両1,2間の距離が元に戻る場合には上記と反対の動作が行われ、元の状態に復帰される。
(vi)ヨー軸(カーブ軌道による偏倚)
車両1,2が走行する軌道が直線状である場合(曲率半径が4000m〜6500m程度の曲線状の場合も含む)には、各外板部材3Aは車体1a,2aの外側面に接触している。また、リンクアーム13,14と外板部材3Aとの間には引張スプリング23,24が設置されているので、それらのスプリング力によって絶えず外板部材3Aは車両1,2間の中心位置に維持されることになる。
【0049】
車両がカーブを通過する際にはカーブ内側では車両間の距離が最も近く、外側では最も遠くなる。特に、車両基地などにおいて、小さな曲率半径の軌道が多くなる場合である。
【0050】
このような偏倚入力があった場合には外幌ユニット11は次のように動作する。
【0051】
車両1,2がカーブにさしかかかるとカーブ内側に設置してある外幌ユニット11は一斉にX軸の圧縮方向に動作する。また車体間折れ(前後車両間に生じる角度)に対してはヒンジブラケット19,20の車体1a,2a側に設置してある自在継ぎ手17,18の回転により動作を吸収する。また車両1,2間の距離が一定の値を超えると、X軸方向動作時に説明したように外板部材3Aは車両の外側面からせり出し、より狭い車両間距離に対応することが可能となる。他方、カーブの外側に設置してある外幌ユニット11も一斉にX軸引張の方向に移動する。この場合の車両1,2の折れに対してもヒンジブラケット19,20の自在継ぎ手17,18の回転により動作を吸収する。
【0052】
車両間の距離が元に戻る場合には上記と反対の動作が行われ、元の状態に復帰される。
【0053】
以上の動作により車両間の、6軸(X軸、Y軸、Z軸、ロール軸、ピッチ軸およびヨー軸)の偏倚に対して円滑に動作を行うことができる。尚、実際の車両の動作は上記各軸単独での動作はほとんどなく、各軸の動作の組み合わせによって車両1,2間の偏倚が吸収されることになる。
【0054】
本装置によって、高速走行可能な軌道上(例えば曲率半径4000m以上の軌道上)では、通常走行時の曲線軌道による変位や車両間の前後左右等の動揺によっても、外幌3(外板部材3A)と車体1a,2a間および外板部材3A同士の継ぎ目部分も隙間がなく密着しており、気密性に優れる。
【0055】
また、車庫内の急曲線軌道(例えば曲率半径200m程度の軌道)や渡り線軌道は、車体1a,2a間の前後の動きが大であるが、走行速度が遅く気密性を保持する必要がない。よって、外幌3(外板部材3A)と車体1a,2a間および外板部材3A同士の継ぎ目部分において、車体1a,2a間の距離が小さくなり接近する曲線軌道の内側では、図5(a)に示されるように、外板部材3Aが曲線軌道の中心側に移動する。よって、外板部材3Aが車体1a,2aと干渉することがないので、外幌3(外板部材3A)は変形することを防止できる。反対に、前記曲線軌道の外側では、図4(a)に示されるように、車体1a,2aと外板部材3Aと間に間隔を積極的にあけることによって、無理な力がかかることを防止し、外幌3(外板部材3A)が変形することを防止できる。また、同様に、急曲線軌道や渡り線軌道の部分において、車体1a,2a間の枕木方向において相互の動きが大である場合でも、図6(b)で示されるように、車体1a,2aと外幌3(外板部材3A)間に間隔をあけることによって、各外幌ユニット11に無理な力がかかることを防止し、各外幌ユニット11が変形することを防止できる。
【0056】
前記実施の形態では、車両側部において鉛直方向(周方向)に並ぶように配置される複数の外板部材3Aによって形成される、車両側部における外幌3の部分について説明しているが、屋根部や台枠部において周方向である水平方向に並ぶように配置される複数の外板部材によって形成される、屋根部や台枠部における外幌も、同様な動作を行うのはもちろんである。
【符号の説明】
【0057】
S 空間部
1,2 車両
1a,2a 車体
1aa,2aa 段部
1ab,2ab 案内傾斜部
3 外幌
3A 外板部材
3Aa〜3Ad 弾性シール部
11 外幌ユニット
13,14 リンクアーム
13a,14a 一端部
13b,14b 他端部
15,16 ガイドレール部材
17,18 自在継ぎ手
19,20 ヒンジブラケット
21,22 トーションスプリング
23,24 引張スプリング
25,26 ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結される前後車両の車体間を塞ぐ鉄道車両の外幌装置であって、
前記外幌装置は、車体間外周方向に並ぶように2つあるいはそれ以上の第1および第2のリンクアームにて前記前後の車両の車体に支持され、かつ前記前後車両の車体間を塞ぐ複数の外板部材を有し、前記前後車両の車体間の間隔変化に応じて前記各外板部材が車体内方側と車体外方側との間を変位する構成とされること、
前記各外板部材の内側面には、2つあるいはそれ以上の第1および第2のガイドレール部材が平行に設けられていること、
前記第1のリンクアームの一端部が前記前後車両うち一方の車体に回転可能に、他端部が前記第1のガイドレール部材にスライド可能にそれぞれ結合されていること、
前記第2のリンクアームの一端部が前記前後車両うち他方の車体に回転可能に、他端部が第2のガイドレール部材にスライド可能にそれぞれ結合されること
を特徴とする鉄道車両の外幌装置。
【請求項2】
前記第1および第2のリンクアームの一端部は、前記車体の表面に自在継ぎ手を介して支持されるヒンジブラケットに、前記車体の表面に平行な回転軸回りに回転可能に連結されている、請求項1記載の鉄道車両の外幌装置。
【請求項3】
前記第1および第2のリンクアームの一端部には、各々トーションスプリングが設けられ、前記トーションスプリングによって前記外板部材が前記車体表面に接触するように付勢されている、請求項1または2記載の鉄道車両の外幌装置。
【請求項4】
前記第1および第2のリンクアームの他端部には、それぞれ逆方向に付勢する引張スプリングをさらに備え、
各前記引張スプリングによって前記外板部材が前記両ガイドレール部材を介して前記車両間の中心位置に位置するように付勢されている、請求項1〜3のいずれか1つに記載の鉄道車両の外幌装置。
【請求項5】
前記車体間外周方向に並ぶ複数の前記外板部材のうち2つの前記外板部材の一方は、他方の前記外板部材側の縁部に前記他方の外板部材側に延びるリップ状の弾性シール部を有する一方、他方は、前記一方の外板部材側の縁部に前記一方の外板部材側に延びるリップ状の弾性シール部を有し、
それら両弾性シール部が重複した接触状態を維持して相対移動可能である、請求項1〜4のいずれか1つに記載の鉄道車両の外幌装置。
【請求項6】
前記各外板部材は、前記前後車両の車体側の前後縁部に前記前後車両の車体と接触するように配置されている、請求項1〜5のいずれか1つに記載の鉄道車両の外幌装置。
【請求項7】
前記前後車両の車体は、前記外板部材の前後縁部が位置する部分に対応する部位が弾性部材で形成されている、請求項7記載の鉄道車両の外幌装置。
【請求項8】
前記前後車両の車体の端部には、段部が形成され、前後車両の車体間を前記外板部材によって塞ぐ際には、前記車体の外側面と前記外板部材の外側面とが略面一となるように前記前後車両の車体の段部間に収納される構成とされている、請求項1〜7のいずれか1つに記載の鉄道車両の外幌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−103592(P2013−103592A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248232(P2011−248232)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)