説明

鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器

【課題】操作手順の間違いが仮に発生したとしても、誤操作が受け付けられることをなくし、鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器の操作ミスを確実に防ぐ。
【解決手段】自動連結器12の制御手段20と電源との間に配置された継電器26により、自動連結器12の制御手段20と電源とをつなぐ回路を遮断することにより、自動連結幌14が解放位置にある場合を除く全ての状態において、自動連結器12の解結動作電源を絶ち、その動作を阻止する。この継電器26を、自動連結幌14及び自動連結器12の解結操作回路16に設置するに際し、新規車両のみならず、既存の車両の解結操作回路16に対しても、自動連結器12の制御手段20と、自動連結器12の解結操作スイッチ24とに特段の変更を加えること無く、信頼性の高いインタロック手段を構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、乗客の利便性の向上や線路容量の有効活用を図る等の理由から、列車が始発駅から終着駅まで運転する間に、異なる始発駅の列車あるいは異なる終着駅の列車と相互に分割併合しながら運転する、いわゆる多層建て列車の運行が行われている。
この多層建て列車の運行に充当される鉄道車両には、列車の分割併合作業を運転台の操作のみで円滑に行うことが可能な、自動連結器が装備されていることが多い。又、一部の車両では、併合運転時において乗客が併合された編成間を自由に往来することが出来るように、自動連結幌を装備した鉄道車両も広く運用されている。
【0003】
図4(a)には、二編成の鉄道車両10(10A、10B)の併合状態が示されている。二編成の鉄道車両10A、10Bは、先頭車両(最後尾車両)の妻面に設けられた自動連結器12(12A、12B)によって、機械的かつ制御的に連結されることで、二編成間の力の伝達と制御信号の伝達とを行うことが可能となっている。又、お互いの先頭車両の妻面に開口する通路が、自動連結幌14で連結されることで、走行中であっても、二編成間を自由に行き来することが可能となっている(例えば、特許文献1参照。)。
なお、図示の例では、一方の編成の鉄道車両10Aの自動連結幌14Aが、他方の編成の鉄道車両10Bの妻面に延びて、鉄道車両10Bに設けられた連結幌受け(図示省略)に結合する態様となっており、双方の鉄道車両10A、10Bに、自動連結器12及び自動連結幌14の解結操作回路が搭載されている。又、自動連結器12と自動連結幌14との操作盤は、運転台に設けられている。
【0004】
又、二編成の鉄道車両10(10A、10B)の分割時には、停車状態で、図4(b)に示されるように鉄道車両10Aの自動連結幌14Aを、もう一方の鉄道車両10Bの妻面から切離し、図4(c)に示されるように、一方の鉄道車両14Aの妻面にこれを格納し、妻面開口部の扉を閉じてロックした後、自動連結器12A、12Bを解放する。そして、前位編成が先に出発することで、二編成の鉄道車両10A、10Bは、図4(c)に示されるように離間し、別々の終着駅へと向かうこととなる。
図4において、模式的に示された自動連結器12には、いわゆる密着連結器が用いられることが多く、通常は、この密着連結器に電気的制御信号の授受に係る電気連結器及び電気解放器も併設されている。
【0005】
二編成の鉄道車両10(10A、10B)の分割作業の具体的手順は、図5に示される通りであり、以下に、順を追って説明する。
S10:二編成の鉄道車両10A、10Bが併合状態(図4(a)参照)で、駅に到着する。
S20:運転台からの操作により、解放作業を開始する。
S30:操作者により、自動連結幌の解結操作スイッチを解放位置へと切替える。
S40:二編成の鉄道車両10A、10Bの自動連結幌制御回路が連動し、所定のシーケンスに沿って自動連結幌14が解放される(図4(b)参照)。
S50:自動連結幌14の解放完了(図4(c)参照)を操作者が確認し、自動連結幌の解結操作スイッチを、停止位置へと切替える(具体的には、解結操作スイッチ解放表示灯(後述する)の点灯を目視確認して、停止位置へと復位させる。)。
S60:操作者により、自動連結器12の解結操作スイッチを、解放位置へと切替える。
S70:自動連結器12及びそれに併設された電気回路・空気回路が解放され、二編成間の切放しが行われる。自動連結器12の解放完了を操作者が確認し、自動連結器の解結操作スイッチを停止位置へと切替える。
S80:前位編成(例えば10A)の車両が出発し、二編成の鉄道車両10A、10Bが分離する(図4(c)参照。)。
S90:後位編成(例えば10B)の車両が出発する。
なお、二編成の鉄道車両10(10A、10B)の併合時には、上記と逆の作業手順となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−258710号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、自動連結幌14及び自動連結器12を備える鉄道車両10においては、特に、図5に示される分割作業時に、自動連結幌14の解放操作(S20)に先行して自動連結器12の解放操作(S60)を行ったり、自動連結幌14の解放完了(S50)前に自動連結器12の解放操作(S60)を行ってしまうと、自動連結幌制御回路の連動信号が解かれ、通信異常により自動連結幌14の解放が出来なくなり、その後の運行継続が困難になる恐れがあることから、操作者による列車の分割併合作業の熟練が、必要不可欠であった。又、限られた停車時間内に連結、解放の一連の動作を行う必要があることや、連結時と解放時とで、自動連結器及び自動連結幌の操作順が逆となること等から、ヒューマンエラーによる解放ミスを皆無とすることは困難である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、列車の分割併合作業における、操作手順の間違いが仮に発生したとしても、誤操作が受け付けられることはなく、操作者に誤操作の認識を促して、正しい操作手順へと導くことで、鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器の操作ミスを確実に防ぐことにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の態様)
以下の発明の態様は、本発明の構成を例示するものであり、本発明の多様な構成の理解を容易にするために、項別けして説明するものである。又、各項は、本発明の技術的範囲を限定するものではない。よって、発明を実施するための最良の形態を参酌しつつ、各項の構成要素の一部を置換し、削除し、又は、更に他の構成要素を付加したものについても、本願発明の技術的範囲に含まれ得るものである。
【0009】
(1)鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器であって、前記自動連結幌及び前記自動連結器の解結操作回路には、前記自動連結幌及び前記自動連結器の各々で独立した制御手段と、前記自動連結幌及び前記自動連結器の各々で独立した解結操作スイッチと、前記自動連結幌が解放状態にある場合を除く全ての状態において、前記自動連結器の動作を阻止するインタロック手段とを含む鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器(請求項1)。
本項に記載の鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器は、自動連結幌が解放状態にある場合を除く全ての状態、例えば、連結状態にある自動連結幌を解放する際に、自動連結幌の解放操作に先行して、自動連結器の解放操作を行ったり、自動連結幌の解放完了前に自動連結器の解放操作を行うといった誤操作がなされるような場合、インタロック手段によって、自動連結器の動作を阻止するものである。従って、かかる誤操作が受け付けられることはなく、操作者は、自動連結幌の解放完了後に自動連結器の解放操作を行うといった、正しい作業手順へと確実に誘導されるものである。
【0010】
(2)上記(1)項において、前記インタロック手段として継電器を備え、該継電器は、前記自動連結幌の制御手段からの電流を受けて、前記自動連結器の制御手段と電源とをつなぐ回路を遮断する態様で、前記自動連結器の制御手段と電源との間に配置されている鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器(請求項2)。
本項に記載の鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器は、自動連結器の制御手段と電源との間に配置された継電器により、自動連結器の制御手段と電源とをつなぐ回路を遮断することにより、自動連結幌が解放位置にある場合を除く全ての状態において、自動連結器の解結動作電源を断ち、動作を阻止するものである。しかも、この継電器を、自動連結幌及び自動連結器の解結操作回路に設置するに際し、自動連結器の制御手段と、自動連結器の解結操作スイッチとに特段の変更を加えること無く、信頼性の高いインタロック手段を構成するものである。
【0011】
(3)上記(1)、(2)項において、多層建て列車を構成する、各編成に係る鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器の解結操作回路に、前記インタロック手段が含まれる鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器(請求項3)。
本項に記載の鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器は、多層建て列車を構成する各編成のいずれにおいて誤操作をしても、自動連結器の制御手段と電源との間に配置された継電器により、自動連結器の制御手段と電源とをつなぐ回路を遮断することにより、自動連結幌が解放位置にある場合を除く全ての状態において、自動連結器の動作を阻止するものである。
【0012】
(4)上記(1)から(3)項において、前記自動連結幌の制御手段と電源とをつなぐ回路を任意に遮断する、スイッチが含まれる鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器(請求項4)。
本項に記載の鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器は、自動連結幌の制御手段に不具合が発生して、インタロック手段を構成する継電器が制御不能に陥るような場合であっても、スイッチ(遮断器のスイッチつまみを共用しても良い。以下同様。)によって自動連結幌の制御手段への電流を強制的に遮断することで、継電器を強制的に不動作状態(接続状態)へと切替える。そして、自動連結器の制御手段と電源とをつなぐ回路の通電を確保し、最低限、自動連結器の連結、解放操作を可能とするものである。
又、多層建て列車を構成する各編成の自動連結幌の制御手段に不具合が生じたような場合には、各編成の自動連結幌及び自動連結器の解結操作回路において、各々、自動連結幌の制御手段と電源とをつなぐ回路をスイッチで遮断することで、継電器への電源を遮断し強制的に不動作状態へと切替える。そして、各編成の自動連結器の制御手段と電源とをつなぐ回路の通電を確保し、各編成で独立して、最低限、自動連結器の連結、解放操作を可能とするものである。
【0013】
(5)上記(1)から(4)項において、多層建て列車を構成する、各編成に係る鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器の解結操作回路に、相互間の通信回路が含まれる鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器(請求項5)。
本項に記載の鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器は、正常時には、通信回路によって多層建て列車を構成する各編成に係る鉄道車両の、自動連結幌及び自動連結器の動作を連動させるものである。又、いずれかの編成に係る自動連結幌の制御手段に不具合が発生して、インタロック手段が制御不能に陥るような場合であっても、通信回路を介して、正常な編成に係る鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器の解結操作回路から、不具合が発生した編成の自動連結幌及び自動連結器の制御を行うものである。
【0014】
(6)上記(1)から(5)項において、前記自動連結幌及び前記自動連結器の各解結操作スイッチが、一体の操作盤上に、又は、互いに隣接して配置されている自動連結幌及び自動連結器(請求項6)。
本項に記載の鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器は、自動連結幌及び自動連結器の各解結操作スイッチが近傍に配置されることで、列車の分割併合作業を行う際の、各解結操作スイッチの操作が円滑に行われるものとなる。又、本発明では、インタロック手段により、誤操作によるヒューマンエラーを防ぐことができることに起因して、これらの操作スイッチを互いに近傍位置に置くことが可能となるものであり、迅速な解結操作に寄与するものとなる。
【0015】
(7)上記(1)から(6)項において、前記自動連結幌の制御手段には、プログラマブルロジックコントローラが用いられ、前記自動連結器の制御手段には、有接点リレー方式の制御盤が用いられていることを特徴とする自動連結幌及び自動連結器(請求項7)。
本項に記載の鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器は、自動連結幌の制御手段に、プログラマブルロジックコントローラ(以下、「PLC」という。)を用いることで、一定の信頼性を確保しつつ低コストを実現する。一方、多岐多様な動作を含む自動連結幌の動作を制御するには、有接点の継電器を用いた制御器では回路が大変複雑になる上、大型化により車両搭載が困難となることから、有接点の継電器を用いることは事実上困難である。又、マイコンを用いたコントローラを使うことが有効であるが、車両の制御伝送を司るような信頼性は不要である。そのため、自動連結幌の制御には一般のPLCを用いることが最良である。一般のPLCでは、ソフトウェアのエラーや、本体の故障は皆無とできないものの、PLCに継電器を接続し、そのb接点を用いてインタロックを構成することで、PLCの電源を断つことにより、インタロックを解除することを可能としたものである。
又、従来から、仮に電源が断たれても編成分離を起こしてはならないことから、解結操作回路は、電源がなければ連結を保持する機能を有している。一方、電源を遮断することで、信頼性を低下させずにインタロック手段を構成できるPLCを用いると、ソフトウェアのエラー、本体の故障は皆無とは出来ないものの、継電器のb接点を用いてPLCの電源を断つことで、インタロックを解除することを可能としたものである。又、本項に記載の構成を有する既存の鉄道車両に対しても、上記各項記載のインタロック装置を付加することで、上記所定の作用効果を得るものとなる。
なお、自動連結幌の動作については、例えば、駆動シリンダのブレーキ機能等により機械的にも信頼性が確保されるものであることから、自動連結幌の動作の信頼性が、自動連結器に比べて劣るわけではない。
【発明の効果】
【0016】
本発明はこのように構成したので、列車の分割併合作業における、操作手順の間違いが仮に発生したとしても、誤操作が受け付けられることはなく、操作者に誤操作の認識を促して、正しい操作手順へと導くことができる。そして、鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器の解結操作を、より確実に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態に係る、鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器の解結操作回路図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る、鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器の、自動連結幌及び前記自動連結器の各解結操作スイッチを示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る、鉄道車両の列車の分割併合作業を示すフローチャートであり、(a)は併合作業時を、(b)は分割作業時を示すものである。
【図4】(a)は二編成の鉄道車両の併合状態を、(b)は二編成の鉄道車両の分割中の状態を、(c)は二編成の鉄道車両の分割完了状態を示すものである。
【図5】従来の鉄道車両の列車の、分割作業を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分、若しくは相当する部分については、同一符号で示し、詳しい説明を省略する。
本発明の実施の形態に係る鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器は、分割併合される二編成の鉄道車両10(10A、10B:図4参照)の夫々に、図1に示される自動連結幌及び自動連結器の解結操作回路16(16A、16B)が設けられている。この解結操作回路16には、自動連結幌の制御手段18(18A、18B)及び解結操作スイッチ22(22A、22B)、自動連結器の制御手段20(20A、20B)及び解結操作スイッチ24(24A、24B)を備えている。二編成の鉄道車両10A、10Bの、自動連結幌及び自動連結器の解結操作回路16A、16Bの、回路構成は共通である。
なお、自動連結幌の制御手段18には、PLCが用いられ、自動連結器の制御手段20には、有接点リレー方式の制御盤が用いられている。又、解結操作スイッチ22、24は、鉄道車両10の運転台に設けられている。
【0019】
又、自動連結器の制御手段20(20A、20B)と電源(図示省略)との間には、自動連結幌の制御手段18(18A、18B)からの電流を受けて、自動連結器の制御手段20(20A、20B)と電源とをつなぐ回路を遮断する態様(b接点)で、継電器26(26A、26B)が配置されている。
この継電器26は、自動連結幌の解結操作スイッチ22が解放位置(図2参照)にある場合を除く全ての状態において、自動連結器の動作を阻止するインタロック手段を構成するものである。すなわち、多層建て列車を構成する、各編成に係る鉄道車両10(10A、10B:図4参照)の自動連結幌及び自動連結器の解結操作回路16(16A、16B)に、このインタロック手段が含まれるものである。
【0020】
又、解結操作回路16(16A、16B)には、自動連結幌の制御手段18(18A、18B)と、電源(図示省略)とをつなぐ回路を、操作者の操作により任意に遮断する、スイッチ28(28A、28B)が含まれている。又、各編成に係る解結操作回路16A、16B相互間の通信回路として、自動連結幌関連の通信線32(32A、32B)と、自動連結器関連の通信線34(34A、34B)とを備えている。図1中、符号30(30A、30B)は、自動連結器12(12A、12B:図4参照)に併設される電気解放器である。又、符号36(36A、36B)は、自動連結器の制御手段20(20A、20B)と電源とをつなぐ回路を任意に遮断する、スイッチである。
【0021】
更に、図2に示されるように、自動連結幌14(14A、14B:図4参照)の解結操作スイッチ22には、自動連結幌を解放(図4(c)参照)、連結(図4(a)参照)又は(任意の位置における)停止の、各状態へと操作するための、カムスイッチ22aが設けらている。そして、自動連結幌が解放状態にあることを示す解放表示灯22b、連結状態にあることを示す連結表示灯22c、及び、何らかの不具合が生じた状態を示す故障表示灯22dが設けられている。一方、自動連結器12(12A、12B:図4参照)の解結操作スイッチ24には、自動連結器を解放(図4(c)参照)、連結(図4(a)参照)又は(鉄道車両10の)運転の、各状態へと操作するための、操作レバー24が設けられている。又、自動連結器が解放状態にあることを示す解放表示灯24b、連結状態にあることを示す連結表示灯24cが設けられている。
なお、図2の例では、自動連結幌及び自動連結器の各解結操作スイッチ22、24が、一体の操作盤38上に配置されているが、必ずしも一体の操作盤38上に配置されていなくても良く、各解結操作スイッチ22、24が互いに隣接配置されていることが望ましい。
【0022】
ここで、図3を参照しながら、本発明の実施の形態に係る、二編成の鉄道車両10(10A、10B:図4参照)の分割併合作業の具体的手順を説明する。ここで図3(a)は併合作業の手順を、図3(b)は分割作業の手順を、各々示すものである。
S110:前位編成(例えば10A)が駅に到着する。
S120:後位編成(例えば10B)が前位編成に接近し、連結して駅に到着する。このとき、自動連結器12(12A、12B:図4参照)が互いに密着することで、機械的に結合した状態となる。
S130:操作者により、自動連結器の解結操作スイッチ24の操作レバー24a(図2参照)を、連結位置へと操作する。
S140:自動連結器12に併設された、電気解放器の電気回路、空気回路が接続され、自動連結器12は制御的にも結合した状態となる。なお、連結が完了すると、自動連結器の解結操作スイッチ24の連結表示灯24c(図2参照)が点灯する。この時点で、二編成の鉄道車両10A、10Bの、自動連結幌関連の通信線32(32A、32B)と、自動連結器関連の通信線34(34A、34B)が接続され、二編成の自動連結幌の制御手段18A、18B間、及び、自動連結器の制御手段20A、20B間の情報交換が可能となる。
S150:続いて、操作者により、自動連結幌の解結操作スイッチ22のカムスイッチ22aを、連結位置(図2参照)へと操作する。
S160:二編成の鉄道車両10A、10Bの解結操作回路16(16A、16B)が連動し、所定のシーケンスに沿って自動連結幌14が連結される。連結が完了すると、自動連結幌の解結操作スイッチ22の連結表示灯22c(図2参照)が点灯する。
S170:操作者により、連結表示灯22cの点灯を確認し、自動連結幌の解結操作スイッチ22のカムスイッチ22aから停止位置へと復位させる。
S180:二編成の鉄道車両10(10A、10B)の併合作業が完了する。二編成の鉄道車両10A、10Bによる併合運転を開始する際には、自動連結器の解結操作スイッチ24の操作レバー24aを運転位置(図2参照)へと切替える。
【0023】
S210:二編成の鉄道車両10A、10Bが併合状態(図4(a)参照)で、駅に到着する。
S220:操作者により、自動連結幌14の解結操作スイッチ22のカムスイッチ22aを解放位置(図2参照)へと切替える。
S230:二編成の鉄道車両10A、10Bの解結操作回路が連動し、所定のシーケンスに沿って自動連結幌14が解放される(図4(b)参照)。開放が完了すると、自動連結幌の解結操作スイッチ22の解放表示灯22b(図2参照)が点灯する。
S240:自動連結幌14の解放完了(図4(c)参照)を、操作者が、解放表示灯22bの点灯により確認し、自動連結幌の解結操作スイッチ22のカムスイッチ22aから停止位置へと復位させる。なお、この時点までは、二編成の鉄道車両10A、10Bの、自動連結幌関連の通信線32(32A、32B)と、自動連結器関連の通信線34(34A、34B)が接続され、二編成の自動連結幌の制御手段18A、18B間、及び、自動連結器の制御手段20A、20B間の情報交換が可能な状態にある。
S250:操作者により、自動連結器12の解結操作スイッチ24の操作レバー24aを、解放位置(図2参照)へと切替える。
S260:自動連結器12及びそれに併設された電気回路・空気回路が解放され、制御的に二編成間の切放しが行われる。開放が完了すると、自動連結器の解結操作スイッチ24の解放表示灯24b(図2参照)が点灯する。自動連結器12の解放完了を操作者が確認し、自動連結器の解結操作スイッチ24の操作レバー24aを、運転位置(図2参照)へと切替える。
S270:前位編成の車両が出発し、二編成の鉄道車両10A、10Bが分離する(図4(c)参照。)。
S280:後位編成の車両が出発する。
【0024】
さて、上記構成をなす、本発明の実施の形態によれば、次のような作用効果を得ることが可能である。すなわち、自動連結幌14が解放位置にある場合を除く全ての状態、例えば、連結状態にある自動連結幌14(図4(a)参照)を解放する際に、自動連結幌14の解放操作に先行して、自動連結器12の解放操作を行ったり、自動連結幌14の解放完了前に自動連結器12の解放操作を行うといった誤操作がなされるような場合、インタロック手段(継電器26)によって、自動連結器14の動作が阻止される。従って、かかる誤操作が受け付けられることはなく、自動連結幌14の解放完了後に自動連結器の解放操作12を行うといった、正しい作業手順(図3(b))へと確実に誘導されるものである。
【0025】
具体的には、自動連結器12の制御手段20と電源との間に配置された継電器26により、自動連結器12の制御手段20と電源とをつなぐ回路を遮断することにより、自動連結幌14が解放位置にある場合を除く全ての状態において、自動連結器12の解結動作電源を断ち、動作を阻止するものである。しかも、この継電器26を、自動連結幌14及び自動連結器12の解結操作回路16に設置するに際し、新規車両のみならず、既存の車両の解結操作回路16に対しても、自動連結器12の制御手段20と、自動連結器12の解結操作スイッチ24とに特段の変更を加えること無く、信頼性の高いインタロック手段を構成することができる。
【0026】
又、多層建て列車を構成する各編成のうち、一方の編成に係る鉄道車両10Aの、自動連結幌14A及び自動連結器12Aの解結操作回路16Aにおいて、自動連結幌14Aの制御手段18Aに不具合が生じたような場合であっても、解結操作スイッチ22の故障表示灯22dの点灯により、操作者は不具合の発生を認識することができる。そして、他方の編成に係る鉄道車両10Bの、自動連結幌14B及び自動連結器12Bの解結操作回路16Bを介して、不具合が生じた編成に係るインタロック手段26Aの作動制御を行い、自動連結幌14及び自動連結器12の解放操作を行うことが可能となる。
【0027】
又、多層建て列車を構成する各編成10A、10Bのいずれにおいて誤操作をしても、自動連結器12の制御手段20と電源との間に配置された継電器26により、自動連結器の制御手段と電源とをつなぐ回路を遮断することにより、自動連結幌14が解放位置にある場合を除く全ての状態において、自動連結器12の動作を阻止することができる。
【0028】
又、多層建て列車を構成する各編成の自動連結幌14A、14Bの制御手段18A、18Bに不具合が生じたような場合には、各編成の解結操作回路16A、16Bにおいて、各々、自動連結幌の制御手段18A、18Bと電源とをつなぐ回路をスイッチ28A、28Bで遮断することで、継電器26A、26Bへの電源を遮断し強制的に不動作状態へと切替えることができる。そして、各編成の自動連結器の制御手段24A、24Bと電源とをつなぐ回路の通電を確保することにより、各編成10A、10Bで独立して、最低限、自動連結器12A、12Bの連結、解放操作をすることが可能となる。
【0029】
又、正常時には、自動連結幌関連の通信線32(32A、32B)と、自動連結器関連の通信線34(34A、34B)とによって、多層建て列車を構成する各編成に係る鉄道車両10A、10Bの、自動連結幌14及び自動連結器12の動作を連動させることが可能であり、いずれかの編成に係る自動連結幌14の制御手段18に不具合が発生して、インタロック手段(継電器26)が制御不能に陥るような場合であっても、通信回路32、34を介して、正常な編成に係る鉄道車両、例えば10Aの自動連結幌14A及び自動連結器12Aの解結操作回路16Aから、不具合が発生した編成、例えば10Bの自動連結幌14B及び自動連結器14Aの制御を行うことが可能となる。
【0030】
このように、本発明の実施の形態に係る鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器によれば、たとえインタロック手段(継電器26)が制御不能となるような事態が生じても、三重の回復系を備え、適宜、いずれかの回復系を利用することにより、最低限、自動連結器12A、12Bの連結、解放操作をすることが可能となる。
加えて、自動連結幌14及び自動連結器12の各解結操作スイッチ22、24が近傍に配置されることで(図2参照)、列車の分割併合作業を行う際の、各解結操作スイッチ22、24の操作が円滑に行われるものとなる。又、インタロック手段(継電器26)により、誤操作によるヒューマンエラーを防ぐことができることに起因して、これらの操作スイッチを互いに近傍位置に置くことが可能となるものであり、迅速な解結操作に寄与するものとなる。
【符号の説明】
【0031】
10、10A、10B:鉄道車両、 12、12A、12B:自動連結器、14:自動連結幌、 16、16A、16B:自動連結幌及び自動連結器の解結操作回路、 18、18A、18B:自動連結幌の制御手段、 20、20A、20B:自動連結器の制御手段、 22、22A、22B:自動連結幌の解結操作スイッチ、 24、24A、24B:自動連結器の解結操作スイッチ、 26、26A、26B:継電器、 28、28A、28B:スイッチ、 32、32A、32B:自動連結幌関連の通信線、 34、34A、34B:自動連結器関連の通信線、 38:操作盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器であって、前記自動連結幌及び前記自動連結器の解結操作回路には、前記自動連結幌及び前記自動連結器の各々で独立した制御手段と、前記自動連結幌及び前記自動連結器の各々で独立した解結操作スイッチと、前記自動連結幌が解放状態にある場合を除く全ての状態において、前記自動連結器の動作を阻止するインタロック手段とを含むことを特徴とする鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器。
【請求項2】
前記インタロック手段として継電器を備え、該継電器は、前記自動連結幌の制御手段からの電流を受けて、前記自動連結器の制御手段と電源とをつなぐ回路を遮断する態様で、前記自動連結器の制御手段と電源との間に配置されていることを特徴とする請求項1記載の鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器。
【請求項3】
多層建て列車を構成する、各編成に係る鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器の解結操作回路に、前記インタロック手段が含まれることを特徴とする請求項1又は2記載の鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器。
【請求項4】
前記自動連結幌の制御手段と電源とをつなぐ回路を任意に遮断する、スイッチが含まれることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器。
【請求項5】
多層建て列車を構成する、各編成に係る鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器の解結操作回路に、相互間の通信回路が含まれることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の鉄道車両の自動連結幌及び自動連結器。
【請求項6】
前記自動連結幌及び前記自動連結器の各解結操作スイッチが、一体の操作盤上に、又は、互いに隣接して配置されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の自動連結幌及び自動連結器。
【請求項7】
前記自動連結幌の制御手段には、プログラマブルロジックコントローラが用いられ、前記自動連結器の制御手段には、有接点リレー方式の制御盤が用いられていることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の自動連結幌及び自動連結器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−126213(P2012−126213A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278250(P2010−278250)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【出願人】(000003377)東急車輛製造株式会社 (332)